第03話 06月 『ふっ』
日本は、富士山の大噴火で大打撃を受けた。
時折、震度3程度の地震が起こる。
富士山は、上半分が吹き飛び、
小噴火と噴煙。火砕流を流すだけ。
首都東京の機能は、完全にストップ。
福岡に避難した日本政府は国家再建を進めていく。
難民救済は、二の次。
日本沈没。
日本が、生き残る術を考えなければ、日本民族滅亡。
いっそ潔く滅亡したほうが子孫は、楽かもしれない。
しかし、それを決めるのは、子孫。
新首相官邸は、某インテリジェントビルが使われ。
皇族も、仮の居を構える。
高度情報化建築物と呼ばれるだけあって、情報を集めるのに有利だった。
内閣と主要な官僚が集まって情報を収集する。
「・・・総理」
「ああ、日本が沈没することを伝えた方がいいのか、伝えない方がいいのか」
「国際協力は、あまり期待できないかと」
「かもしれないな」
「1億もの人間を移民させてくれる国など・・・・」
「・・・1億は、もう、いないかもしれないな」
「まだ、1億は、いるようですが・・・」
インテリジェントビルだけあって、その種の情報は、ぼちぼち、なんとか集まる。
「総理、アメリカは、なんと?」
「・・・一人当たり、いくらだそうだ。持参金かな」
「いくらと?」
「まだ日本沈没とも言ってない。向こうも提示していない。前段階の交渉中だよ」
「・・・生きている間に亡国の憂き目に会うとは、思いませんでしたよ」
「・・・果たして、そうでしょうか?」
「・・・どういう意味かね。財務大臣」
「日本の国債・・・・どうなると思いですか?」
・・・・滑稽な事に、なんとなく笑いが込み上げてくる。
富士山周辺から関東にかけて、大打撃を受けた。
被害総額は莫大だった。
そして、失った借款も莫大といえる。
引受人は、関東が圧倒的に多く。
天災のせいにしてしまえるのなら不可抗力で政府に責任はない。
「・・・しかし、国家再建費用は?」
「日本が沈没するのに再建費用が必要ですか?」 篠原学内閣参事官
「・・・・・・」
「では・・・・どういった・・・」
「国債は、海の底に置くとして」
「日本にある全ての資産を国外に持ち出すしかありませんね」 篠原学内閣参事官
平時の山本尚之総理大臣
乱世の野崎亨介内閣官房長官といわれ、
しかし、他人の評価など当てにならないもの。
あまり目立たなかったはずの、篠原学内閣参事官がしたり顔。
「し、しかし、それは・・・・・」
「どの道、日本列島が海に沈んでは、価値がなくなります」
「それなら国外に持ち出すほうが日本民族にとっても有益かと」
「しかし・・・どこに?」
「北アメリカ、南米諸国、アフリカ諸国。日本の技術と日本人を欲しがる国は多いはずです」
「条件のいいところを選べばいいだけです」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
「すぐに近代国家にして見せますよ」
「「「「・・・・・・・・」」」」
「し、しかし、1億もいるんだぞ」
「・・・・助けられるだけ、助ければ良いのでは」
「無理は、無駄に繋がりますから、何か、方策を考えて見ますよ」
「す、すぐには思い浮かばんのかね。篠原参事官」
「・・・どなたか、良い方策が浮かんだ方は?」
「「「「・・・・・・・」」」」
・・・・・・
小野寺俊夫、阿部玲子
いい年をした若い男女が2人。
大自然の恐怖と戦いながらの逃避行。
助け合いながら逃げていくうち、
第一印象も変わってくる。
まあ、普段と違って、良い男、良い女に見えたり。
雰囲気が良くなったとき。
起こるべくして、起こることも、起こったりもする。
こういう状況では、学歴、年収、地位、名誉、財産は、置き去り。
本能が優先される。
生き残ることが出来たのは、小野寺のおかげだろうか。
雰囲気が良くなった2人は、関東に戻り、
壊れた家を立て直す。
最初、殺伐としていた生存者も協力し合ったりする。
何しろ、非常用備蓄食料。
そして、あちらこちらの店に食料、物資があって、人間の方が少ない。
一時は、腐るからと出来合いのもが配られ、
それでも余ってしまい。
長期保存できるように油で揚げられたりする。
なんと、恐ろしいことに、一時的なのだがインスタント食品山積みで余り。
いったい、何人が、死んだのやら。
第7艦隊、護衛艦隊、横須賀基地の迎撃で主要な基幹産業は無事。
発電所が動いていて電気も通っている。
さすが原子力発電所というべきだろうか。火山弾から生き残ったのは奇跡。
あとになって、自衛隊とアメリカ軍が迎撃したと知る。
何はともあれ、しばらく燃料は要らない。
たんに送電出来ない場所があるだけともいえる。
それでも、時折、地震と余震で地割れが起こる。
国勢で言うと日本の円は、円安、3分の1以下。
しかし、日本人が地道に復興している姿が外国のマスメディアに映ると、
各国の復興支援が始まる。
痛ましい事件の割りに犯罪が少なく、助け合っている。
実は、物資と食料を必要としない死者が、あまりにも多いせいだった。
そして、日本への復興支援金も支援物資も消耗品だけ、
残りは、送らせずにプールさせてしまう。
そして、世界は、日本に余裕があると勘違いしてしまう、
各国上層部も疑心暗鬼で、強気に出たと勘違いされ、
円安が止まって、少し上向いてしまう。
マスコミは、日本政府の判断に喧々諤々。
しかし、「円安が、とまっただろう」と言われ、退いていく。
むしろ、支援金で恵んで貰うより、
円高を維持して買う方が、はるかに利益が大きかったのだ。
円が紙くずにならず。
必要なものを海外で買えるのだから・・・
自衛隊は、富士山の爆発にさいし、
それなりに機能していた。
第7艦隊の支援もあった。
護衛艦隊も、防空隊も、可能な限り、重要拠点を守り、復興支援をする。
そして、戦力維持のために航空自衛隊は、直ちに分散し、別の基地に移動。
護衛艦隊も火山弾の弾道を観測し、回避することが出来るらしく。
弾切れながら、無事に佐世保に移動していた。
東部方面隊は、それなりの損害を出した。
東京上空、重要施設の防空だけは、成功したらしい。
横須賀港も、機能だけは、失っていなかった。
しかし、更に噴火の可能性もあることから。
佐世保基地で、護衛艦隊、及び第7艦隊が再編成されていく。
こんごう
横須賀 配備艦隊 | ||||
旗艦 | DDH143しらね | 5200t | ||
第61護衛隊 | DDG174きりしま | 7250t | ||
DDG171はたかぜ | 4600t | |||
第5護衛隊 | DD111おおなみ | DD110たかなみ | 4650t | |
第1護衛隊 | DD107いかづち | DD102はるさめ | DD101むらさめ | 4550t |
横須賀 地方総監部 | ||||
第21護衛隊 | 「はつゆき」 | 「しらゆき」 | 「さわゆき」 | 2950t |
第41掃海隊 | 「すがしま」 | 「のとじま」 | 「つのしま」 | |
特務艇「はしだて」 | 輸送艇「2号」 | 多用途支援艦「すおう」 | 砕氷艦「しらせ」 | |
佐世保 配備艦隊 |
||||
旗艦 | DDH144くらま | 5200t | ||
第62護衛隊 | DDG173こんごう | 7250t | ||
DDG178あしがら | 7700t | |||
DDG170さわかぜ | 3950t | |||
第06護衛隊 | DD104きりさめ | DD109ありあけ | 4650t | |
第02護衛隊 | DD103ゆうだち | DD112まきなみ | DD157さわぎり | 4650t |
佐世保 地方総監部 |
||||
第23護衛隊 | 護衛艦「いそゆき」 | 護衛艦「はるゆき」 | 護衛艦「あさゆき」 | |
第26護衛隊 | 護衛艦「おおよど」 | 護衛艦「せんだい」 | 護衛艦「とね」 | |
第3ミサイル艇隊 | ミサイル艇「おおたか」 | ミサイル艇「くまたか」 | ミサイル艇「しらたか」 | |
第43掃海艇 | 「いえしま」 | 「まえじま」 | 「まきしま」 | |
第46掃海隊 | 「もろしま」 | 「ゆりしま」 | 「ひこしま」 | |
ブルー・リッジ
アメリカ第7艦隊 横須賀配備艦隊 |
|||
航空母艦 | ジョージ・ワシントン (CVN-73) | ||
揚陸指揮艦 | ブルー・リッジ (LCC-19) | ||
タイコンデロガ級巡洋艦 | カウペンス (CG-63) | シャイロー (CG-67) | |
アーレイバーク級駆逐艦 | カーティス・ウィルバー (DDG-54) | ジョン・S・マッケーン (DDG-56) | フィッツジェラルド (DDG-62) |
ラッセン (DDG-82) | マスティン (DDG-89) | ステザム (DDG-63) | |
ミサイルフリゲート | ゲアリー (FFG-51) | ||
アメリカ第7艦隊 佐世保配備艦隊 |
|||
強襲揚陸艦 | エセックス (LHD-2) | ||
ドック型輸送揚陸艦 | ジュノー (LPD-10) | ||
ドック型揚陸艦 | トートゥガ (LSD-46) | ハーパーズ・フェリー (LSD-49) | |
掃海艇 | ガーディアン ( MCM-5) | パトリオット (MCM-7) | |
セイフガード級救難艦 | セイフガード (ARS-50) | ||
佐世保
佐世保の工廠の能力を上回るほどの艦船がひしめき合う。
一時は、呉という話しもあったものの、
中国海軍の動きを用心しなければならず。
富士山から遠いほうが良いと佐世保となった。
埠頭
二人の士官が艦隊を眺めていた。
「・・・では、本当に?」
「ええ」
「そうか・・・・海将は、なんと」
「・・・泰然自若として、と」
「ふっ ははは」
「笑い事?」
「海上自衛隊は、国を守るためにある」
「しかし・・・・・」
「意義付けが、変わるかもしれませんね」
結城達也(デコ広)、田所エリ。倉木美咲
他人の子供もコブ付きというのだろうか、
それでも結城は、カッコいいところを田所エリに見せることができた。
カッコ良いといっても、周りの男たちがだらしなく。
結城は、たまたま、普通だっただけ。
そういう、切っ掛けで関係が出来てしまう。
子供がいるので、コソコソと・・・
そして、東京
結城達也(デコ広)、田所エリ。倉木美咲は、小野寺俊夫、阿部玲子と運良く合流。
二組とも雰囲気で、わかってしまうのか、
思わず含み笑い。
「結城。もう、子供を作ったのか?」
「げっ!」
「小野寺。ま、まさか、ほら、あの喫茶店の子さ。両親も、あそこにいたらしい・・・・・」
最後まで言わなくても大体わかる。
「子連れで、逃げ回るとは、たいしたものだ」
「ま、まあな」
「それより、酷いことになったな」
「ああ、いまのところ。食料は、あるようだが・・・・・」
遺体処理は、忙しい。
早くしないと腐敗して伝染病の原因になってしまう。
手っ取り早い方法で川に流されたり。燃やされたり。
おかげで人の焼ける臭いが辺りに篭る。
「夏でなくて良かったが、いつ終わるかわからないな」
「火災は、思ったより酷くないな」
火災も、起きたが雨上がりのおかげか、火災は広がらなかったらしい。
「これから、どうする?」
「そうだな。田所博士にこれを届けないとな」
小野寺がブツを見せる。
「小野寺。よくもって逃げたな」
ただたんにエリちゃんに渡すとトンずらされそうだから、
内ポケットに入れていたに過ぎない。
いまとなっては、どうでも良くなったものの、
田所博士に手渡すのが筋だろうか。
「っで、田所博士は?」
「・・・家には、いなかったよ」
「・・・・・・・」 エリが、泣きそうになる。
父が言ったことが正しかったなら、このまま、別れるのは辛すぎた。
「俺たちも探し回ったんだけどな」
「結婚の許しを貰うためか?」
「あはは・・・」
エリの表情を見ると笑えない。
「エリちゃん。きっと、生きているさ」
「でも、家は、無事だったのに誰もいないなんて・・・・・」
「携帯は?」
「わたしのは、まだ回復していないみたい」
「お父さんが、行きそうなところって、知ってる?」
「・・・仲、悪かったから」
「「「・・・・・」」」
公園、
生き残った不良が数人。配給されたパンを食べていた。
震災で毒気が抜かれたのか、元不良。
「・・人が減って、なんか、すっきりしたな」
「うじゃうじゃいたからな」
「俺たち、どうなるんだろうな?」
「・・・農家でもやってみるか?」
「お百姓さんか・・・」
「なんか、いいよな・・・これだけ死んだら、土地も、余ってるだろうな」
「でも、やったこと、あんの。おまえ」
「・・・・無いけど」
「出来んのかよ」
「出来るか、どうかやって、みればいいだろう」
「そういえば、種売っていた店があったな」
航空自衛隊は大混乱にあった。
それでも無駄な飛行場建設と言われた、飛行場が多い事が幸いする。
F-15J/DJ。F-2支援戦闘機。F-4EJ改戦闘機。
RF-4E/EJ偵察機。E-2C早期警戒機。E-767早期警戒管制機。
C-1。C-130H。U-4輸送機。CH-47輸送ヘリコプター。ボーイング747政府専用機
救難機U-125A。救難ヘリUH-60J。
もちろん、自衛隊機だけでなく。
民間航空機2400機も中部エリア。関東エリアから避難。
富士山から離れた航空基地や飛行場に溢れる。
そして、機材は、ともかく、
高度な航空管制システム、運用ノウハウを知る人材の移動は遅れる。
住民が戦闘機、支援戦闘機の離着陸に反対している飛行場にも緊急避難で着陸していた。
国防の重大事。
当面の航空基地を選定すると。
C130輸送機が必要とする人材と機材を運び込む。
少なくとも国民より、慌てておらず。
それなりの機能を保ち、
航空機の多くが噴火した富士山から離れた飛行場へと退避できた。
これは、自衛隊と米軍が要衝の迎撃にある程度、成功していたことによる。
某飛行場
慌しく整備が進んでいく。
パイロットと整備士
「・・・・・いくつかの部品が足りないな・・・」
「工場が火山弾にやられている。代替工場を決めるしかないな」
「予算は、あったっけ?」
「ていうか、お払い箱かも・・・・」
「ははは・・・・」
「生活どうするんだよ」
「いまの政府じゃ 見込みなさそうだけどな」
「まったく。不正腐敗ばかりで、どうしようもないからな」
駿河湾、相模湾
自衛艦が援助物資の補給と救援。
そして、必要な機材の輸送を開始する。
富士山は、5合目辺りから、綺麗に消えて、火砕流を噴出している。
いまだ、冷めやらずだが、噴火はおさまって。
時折、地震がおきていた。
輸送艦 LST4001 おおすみ |
輸送艦 LST4002 しもきた |
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富士山の周辺は、被害も大きく、
現在進行形で火砕流の被害を受けていた。
それは、箱物と呼ばれ、
官僚が田舎に作った建物の中に避難民が収容されていく。
それも限度があった。
自衛艦が、ここに来ている主要な目的の一つは、基幹産業の避難があった。
重要な部品が、いくつか作られており、
これを避難させるのが主目的。
被災者や避難住民にとっては、いささか、面白く無い状況といえたものの優先してしまう。
とはいえ、東名高速も、中央自動車道も、寸断され、
船による救出が、安全だった。
きりしま
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です。
富士山の噴火のあと、地震も、少しばかり小康状態
「・・・あ・・・まただ」
「・・・んん、震度・・・3.2」
「いや、震度3.4」
・・・・ラジオの自沈警報が流れる・・・・・
「・・・あたり♪ 震度3.2」
「くそぉ〜」
以前より、微震とか、多いのですが、富士山の大噴火のおかげで感覚が麻痺。
中規模地震が日常になってしまいます。
ですが、人間の感覚というのは、なかなか、ファジーです。
アリの集団で、一生懸命に働いているのは、2割。だそうです。
ちなみに人間社会も、2割の人間が、8割近い利益を上げているとか・・・
これを一時的にでも、4割とか、6割に出来れば・・・・・・・・
第03話 06月 『ふっ』 |
登場人物 |
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