月夜裏 野々香 小説の部屋

   

20XX年 日本沈没 『龍の魂魄』

        

第04話 07月 『まじ?』

 国連総会

 「・・・残念ながら5年以内に日本列島が沈没することが、明白になりました」

 「「「「「「「「・・・・・??・・・・・・・・・・」」」」」」」」」

 「そこで、世界各国への移民を許されたい」

 「直ちに我が国にある全ての資材、資産、人材を輸送いたします」

 「「「「「「「「・・・・・・?????・・・」」」」」」」」」

 国際連盟脱退の松岡洋右全権大使も、これほど注目を浴びただろうか。

 少なくとも日本が移民する国は、国力が増大することはわかる。

 浮き足立つ、アフリカ諸国。

 そして、南米諸国。

 豊かな国は、そうでなくても。

 日本の移民を受け入れれば、近代化が約束される。

 上手くいけば先進国の仲間入り。

 多民族国家の国にすれば、いまさら人種一つ増えたところで、どうにでもなる。

 どの道、混乱した政情なのだ。

 日本人の入植なら、かえって政情が安定する可能性すらある。

 “白人に生まれてこないのであれば、日本人として生まれたい”

 という、考えも、ないことはない。

 「・・・また。日本列島沈没の折。移民枠が足りなくなる恐れもあります」

 「また、今後も、日本民族としての結束を保つためにも、南極大陸への移民を計画しています」

 「「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」」」

 これも、絶句する。

 大慌てで反対する国は、韓国、北朝鮮、中国。

 チリ、アルゼンチン、オーストラリア、南アフリカ、ニュージーランド

 しかし、人でなしを見るような目で見られると、消極的反対という程度に退いていく。

 

 

  南極条約

   南極地域の平和的利用(軍事的利用の禁止)

   科学的調査の自由と国際協力

   南極地域における領土主権、請求権の凍結

   核爆発、放射性廃棄物の処分の禁止

   条約の遵守を確保するための監視員の設置

   南極地域に関する共通の利害関係のある事項についての協議の実施

   条約の原則及び目的を助長するための措置を立案する会合の開催

 

 “南極に移民するな”

 と、どこにも書いていない。

 領土の主張が出来ないだけ。請求も出来ない。

 日本の代表は、移民すると言っただけ。

 中国が拒否権を発動しても、

 その気になれば、員数の決まっていない監視員にすればいいだけ。

 問題は、南極移民が可能なのかどうかであり、

 南極を知っている者なら疑問しかわかない。

    

 とはいえ、日本代表の答弁が終わると、

 アフリカ・南米諸国の代表は、日本の代表と交渉しに集まってくる。

 単純に日本人としての人権が保障されるのであれば、その国の法で保障する。

 特別な、自治や日本民族擁護法が必要とあれば相談に応じる、という感じだ。

 何しろ、日本の国力なら普通に分配しても、アフリカで、あれば抜きん出てトップ。

 日本が保有する兵器が配備されただけで、南アメリカ大陸最強、アフリカ大陸最強。

 というより、南半球最強。

    

 欧米諸国、ロシア、中国も動揺する。

 日本に都合がいい条件を提示するのは、アフリカ諸国に決まっていた。

 法律以上に身贔屓されたら条件闘争で負ける。

 日本の土建屋が移籍するだけで、

 その国は、近代化が約束される。

 一時は、南極移民に反対した中国も上手いこと、

 近代化のための施設や機械類を手に入れようと、

 日本代表に近付き、声を掛ける。

 日本代表は、のらりくらり。

 日本沈没

 と世界に広がっても、

 日本の移民政策と。

 そして、アメリカに対し毅然とした態度が取られたこと。

 南極へ移民するハッタリで日本民族と日本政府は、存続すると錯覚されてしまう。

 円ドル為替は、小刻みに震えるだけで安定。

 元々、株も、為替も、先物も、錯覚や錯誤で、

 上下するのだから現象として珍しく無い。

   

  

 日本 福岡

 首相官邸 (某インテリジェントビル)

 「・・・・良かったのかね。アメリカを無視して」

 「同盟国だから。ですか?」

 「ああ」

 「同盟国らしい行動が出来れば、同盟国と、認めますよ」

 「アメリカが妨害しないかね」

 「無視しても、無視しなくても、妨害の総量は、それほど変わりませんよ」

 「それより、アメリカの子飼いで無いことを移民国に知らせるべきです」

 「日本民族が生きていけるかどうか・・・・・」

 「アフリカ諸国の選択にもよりますよ。既に満足いく条件も出ていますから・・・」

 「民主的な手続きを取れば日本民族が政府を作る可能性もあるのだぞ。彼らが認めるだろうか」

 「彼らが欲するのは豊かな生活です」

 「彼らの方が日本民族になりたがる可能性もあります」

 「世界中、どこにでもいけるパスポートを持っているのは日本人くらいですから」

 「・・・・・だといいが」

 「あとは、財界をどれだけ押さえられるかです」

 「先進国は、産業基盤を根こそぎ自国へか?」

 「先進国だけではなく、中国、韓国、インドもでしょう」

 「日本の経済基盤は、バラバラにされてしまうな」

 「そうなれば、日本に残るのは、残骸」

 「大多数の日本人は、沈む日本に惨めに取り残され、いやな思いをするでしょうね」

 「・・・そういう場合は・・・」

 「白色テロでしょうな」

 「・・・・・」

  

  

 

 日本人は、どうやら好かれている節がある。

 というより、持参金が大きいのだろうか。

 鴨ネギという感じだろうか。

 先進国でさえ涎を流さんばかりという。技術もある。

 日本民族は、要らないが、あんたと技術だけ来ないか、となる。

 少ない日本人なら、いくらでも優遇できる。

 そして、企業には企業の事情があって、それを優先する。

 欧米諸国で近代的で、優雅で保障された生活と我が人生・・・・・

 それが、有利な条件ならなおさら、

 某社ビルから出て行く東洋人と白人が祖国に帰還する前に不慮の事故にあったり。

 日本で不慮の事故で死んでいく経営者が増えていく。

 諸外国も、日本人数百万の人権を認めて移民させて国内を混乱させるより、

 有望企業を移籍させ、残りを野垂れ死にさせる方が良いと考える。

 それは、それで、外国の国益だった。

 心当たりのある国から、日本に抗議が殺到するが知らぬ存ぜぬ。

 日本政府が、こういった事をするのは珍しい。

 しかし、国家存亡なら、それは、それで、ありなのだろうか。

   

 

 

 しかし、各国のビジネスマン、日本の経営者が次々と不慮の事故にあい、

 死んでいけば、誰でも見当が付く。

 むろん、これまで通り、

 政府官僚機関に賄賂、官僚への接待攻勢が通用するかと思えば、さにあらず。

 秘密警察が創設されているのか、

 政府官僚すら消されて、行方不明者の数を増やしていくだけ。

 口実さえあれば、そういった事を許される機関が自衛軍の中に組織されていた。

  

 動機は、ともかく、自由と引き換えで、日本民族の結束も固まっていく。

 とはいえ、移民するのも、お金がかかる。

 一番、安く買える場所は、砂漠。

 可能な限り、イスラム圏は、避けたいものの、

 文化的に西洋化しているトルコなら我慢。

 もっとも、こっちが、移民したい、といっても向こうが拒否すれば、おしまいだった。

  

 そして、日本沈没なのに、なぜか、うまみがある。

 移民支度金が日本の国庫に振り込まれなければならない。

 これが、とんでもなく大きい。

 どのくらい大きいかというと。

 全部集めると国債を軽く償還できるくらい。

 もう一つ、お金持ちだからと先に行っても荒れた土地が広がるだけ。

 若者を先に行かせ、環境を整えさせないと、どうにもならないと想像つく。

 政府は、余ったお金を集め、若者で開拓団を組織し、移民先に向かわせる。

 当然、資金は、多い方がいい。

 そして、沈没するはずの国に資源が集まってくる。

 円安で買えないだろうと思えば、どうも、そうでは、ないらしい。

 その辺のからくりは・・・・・・・・

  

  

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 月夜裏 野々香です。

 ちょっといやな感じの日本になってしまいました。

 公にはなっていませんが、わかる人は、わかる。

 特に経営者は、まっとうに生きようと、

 改心し、懐かしい響きのある挙国一致です。

 緊急避難でも挙国一致が嫌いな人は、社会から消されていきます。

   

 日本の海外移民計画が始まります。

 アフリカ諸国は、日本の誘致合戦を始めます。

 ブラジルは、日系人が多いので、どうしたものか、です。

 アルゼンチンにだけは、負けたくない、感じです。

 原作と違うのは、日本が最初からアフリカ狙いというところでしょうか。

 アフリカ人も、日本の男♪ 日本の女♪ という感じかもです。

 日本人は、若く見られるので少しくらい年がいってても、わからないかもです。

 

 

みょうこう

 

 

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