月夜裏 野々香 小説の部屋

   

20XX年 日本沈没 『龍の魂魄』

        

 

 

第05話 08月 『へぇ〜』

 人工的に需要を起こす手法で戦争があった。

 第二次世界大戦中、アメリカが使った手であり、

 挙国一致で、国民に需要を蒔き起こし、生産を増大させる国家経済戦略。

 日本沈没は、それが適用される。

 日本経済は、日本沈没で弱るどころか、生産が起こり始める。

 現代病でキリギリス型で自滅していくかと思えば、さにあらず、

 まだ、アリ型の気質が残され、それが、喚起されてしまったらしい。

 日本列島が沈没するはずなのに世界中から資源が買い漁られていく。

 そして、オムツから移民船まで・・・

 戦後直後、行われていた昔懐かしい統制経済。

 傾斜経済によって、需要と供給が一気に加速していく。

 アフリカ諸国、南米諸国は、日本の移民を求め、

 日本企業の誘致と引き換えに資源を放出していく。

  

  

 南極大陸

 砕氷艦しらせ

 後方に “おおすみ”、“しもきた” が白い氷の世界を進む。

  

輸送艦 LST4001 おおすみ

輸送艦 LST4002 しもきた

 

 

 オーストラリアが入港をごねた為、

 移民物資を満載させたタンカーに洋上補給させ、

 護衛艦隊が南極へと取り付いていた。

 アメリカ海軍の艦艇が離れて監視する。

 「・・・アメリカさんは妨害しないのかな」

 「道義的にできないでしょうが、口実があれば、やりそうですね」

 「ロビー活動は?」

 「日本の金でアメリカも南極に進出するという感じでしょう」

 「アメリカ人に南極に来る動機がありませんよ」

 「アメリカのフロンティアスピリットも消えたかな」

 「もう消えているでしょう。醜い金の亡者ですよ」

 「国内の反対勢力は?」

 「自衛軍で作った某組織で都合の悪い反政府、親米、親中、親ロ、親韓、親朝を根絶やしです」

 「一応、日本沈没をはかなんで自殺という形にしていますがね」

 「それは、せいせいするな」

 「基本的人権で安心していたのでしょう。反日情報は筒抜けでしたからね」

 「売国者を10万人殺しても残りの日本民族が生き残るのなら儲けものだ」

 「10万人のために1億人を海に沈めるわけには行かない」

 「多分、もっと、死ぬでしょう。というより、6000万くらい見殺しですね」

 「人口を綺麗なピラミッドにして見せますよ」

 「砕氷艦の建造は?」

 「2万トン級を建造しています。地震が増えているので建造期間を合わせて、それが限度でしょう」

 「あとは、大型の船舶を改造し、工場を移してしまった方が安全だな」

 「中国は?」

 「反日だったのが、ここに来て、混乱しているようです」

 「ざまあみろ」

 「値を吊り上げようとしても日本だけが戦時以上の人工需要を作っていますし」

 「親中派は、ほとんど、死んでいるので接点を維持しようと、必死ですよ」

 「・・・・しかし・・・・・寒いな」

 「ここに住めるんですかね」

 「日本と一緒に沈没したくないのなら、住むだろうな」

 「どうやって、生活していくんだ」

 「発電しないとな」

 「アメリカが反発しているぞ。南極の氷が溶けるってね」

 「溶けないようにするよ」

 「どうやって?」

 「魔法瓶方式で、やるしかなかろう」

 「高くつきそうだな」

 「日本民族は、命の値段で、いくら出すだろうな」

 「需要は、腐るほどある」

 「働く動機もある。命がけで働くのに、お金が、いくら必要かな」

 「人件費を省くのか、全体主義も、ここに極まれりだな」

 「邪魔な、在日韓国人も、在日朝鮮人も逃げ出していった」

 「日本沈没万歳だよ」

 「不良日本人も処分できて。国債も、何とかなりそうだし」

 「重荷になっていたお年寄りも片付けられる」

 「しかし、6000万か・・・・」

 「人口は、増えるよ」

 「伝統が少し怪しくなるが醜いしがらみも消して、新規巻き直しで・・・・・」

  

  

 神戸

 造船所

 「・・・・工場船は・・・・意外と、少なくて済むもんなんだな」

 「結局、1億人が生きていく為の虚構で作られたサービス産業経済が多い」

 「日本の基幹産業に限定すれば、効率よく、合理的に機能的にコンパクトに収まる」

 「とにかく、器だけなら、問題なく作れるよ」

 「浮遊海上工場か」

 「中国大陸と朝鮮半島から、離れられると思うと、なんか、嬉しいな♪」

 「うん、心が弾むね」

 「朝鮮が補償問題で騒いでいるようだが、日本の在韓資本を凍結するとか」

 「バカな国だ」

 「まったく」

  

  

 国連

 日本が非人道的国家で、いくつかの国を名指し、

 非難すると、ほとんどの国が賛同する。

 日本の味方をする方が利益が大きいと計算したのだろうか。

 それまで、弱気だった日本政府が挙国一致を利用し、一気に巻き返していく。

 外国勢力も日本国内に反対勢力がなければ、日本の野党世論やハネッ返りを利用して切り崩せず。

 日本民族に対する同情票が世界中から集まっていく。

  

  

 ホワイトハウス

 数人の男たちが集まっていた。

 「・・・日本をどうするか」

 「キリスト教団体は、総じて、日本に対し、同情的です」

 「献金も集めているようです」

 「善意を金に変える連中だな」

 「どうせ、半分は、ポケットに入れるんだろう」

 「それでも、半分は、日本に届くのでは、大変な金額ですよ」

 「ひも付きにしたいね」

 「日本沈没で、日本を取り巻く情勢が大きく変わっている」

 「まず、アメリカの国益で言うと日本の優良企業数百社の誘致を目指したが失敗した」

 「引き抜きも失敗している」

 「我が国のエージェントを殺されて黙っているのは問題では?」

 「事故ということで知らぬ存ぜぬを押し通されるよ」

 「日本に利用できる世論はないし、下手に手を出せば反米感情が高まる」

 「カミカゼアタックは、困ります」

 「その気になれば、核ミサイルを一週間で作れる国ですから」

 「それで、日本企業を奪うのは悪くないがね」

 「下手をすると、ソ連や中国に流れてしまう恐れがある」

 「そういった節を見せているので?」

 「“日本は、国益を最優先にする” と、最後通牒を渡されたよ」

 「つまり、アメリカが日本に対し、利益を追求するなら手段を選ばない、ということですかな」

 「いまは、日本は、存亡の危機にある」

 「下手に手を出すと、アメリカの不利益のほうが大きくなるだろう」

 「・・・日本国内に利用できる団体がないのであれば、恩を売る方が得策かもしれないな」

 「ええ、自棄になって、何をしでかすか、わかりませんし」

  

  

 中国

 ここでも数人の男たちが集まっている。

 「・・・日本の技術、資本、資材が欲しいある」

 「しかし、これまでの経緯から、中国は、信用されていないある」

 「アメリカとソ連を煽って、日本への圧力を強めさせるある」

 「そうすれば、日本は、中国になびくある」

 「日本の技術と資本があれば21世紀は、中国の時代ある」

 「日本の親中組織が根こそぎ、自殺させられているある」

 「白色テロある。日本人、汚いある。人権蹂躙ある」

 「なんとしても、日本民族をばらばらにして、根こそぎ奪うある」

 「親中組織を再建するある」

  

  

 ロシア

 ここでも数人の男たちが集まっている。

 「・・日本人は、どういう条件ならロシア人になるだろうか」

 「主権、領土、国民ですよ」

 「それ以外は?」

 「自由でしょう」

 「ロシア人としての自由なら与えられる。土地はあるのだ」

 「日本の技術があればロシアは、アメリカに勝る国になります」

 「んん・・・日本沈没でジプシーや乞食のように弱ってソ連に来るかと思えば、アフリカだと」

 「自分を高く買わせようというのなら成功しているようです」

 「アフリカなら日本民族を特権民族にしても欲しがるかと」

 「日本国内の親ロ組織は?」

 「根こそぎ、やられていますよ」

 「日本人も怯えて、エージェントとの接触を避けています」

 「・・・アメリカと中国を煽って、日本をロシアに取り込もう」

 「それで、ロシアは、アメリカを追い抜く」

  

  

 日本列島

 地震が続いていた、

 日本の生産は、再構築しながら大きくなっていく。

 もちろん、利権の関係で反発はあった。

 しかし、なぜか、中核になっていた者が消えてしまうと、

 いつの間にか、まとまっていく。

 治安維持法という、公式的な法案はなかった。

 白色テロに、そういった手続きは必要ない。

 実のところ、人減らししたいのだから遠慮なく殺される点で恐怖政治。

 一応、自由主義国なので一定の思想も

 “日本の資源を利己主義的に売国しなければ・・・”

 限定で認められていた。

 もちろん、日本国内で、レベルの低い技術がアフリカ諸国に向けて移動していく。

 日本で並みの技術でもアフリカ諸国にとって、最高度の技術。

 日本で中学生レベルの学力でも、

 アフリカ狩猟民族の村長より上なのだから、

 教育の力は、実に恐ろしい。

  

  

 アメリカのリゾート地

 いくつかの特許がアメリカに売られ、

 売った日本人が木陰で悠々とくつろいでいた。

 日本でも良く知られた有名人。

 しばらく、くつろいでいた・・・

 銃声が轟き、

 男の眉間に穴が開いて、死んでしまう。

 アメリカでは、お金を払うと人を殺してくれる人間が見つかる。

 彼の死で日本は、利益を受けないが日本で報道される。

 そして、国民を結束させていく。

 反発する者はいた。

 しかし、日本沈没と地震、余震が続くと意識も変わる。

 “裏切り者に死を・・・”

 “売国者に死を・・・”

 個人が己の才覚や能力、投資で得た利益を外国に売って保身を図っただけ。

 自由資本主義社会では許される。

 しかし、民族存亡が関わってくると。功労者、功績者すら殺されていく。

 日本民族の多くは、他国で特権を受けられない者たちであり。

 ねたみ、ひがみ、嫉妬で成功者の足を引っ張る醜い者たちだった。

  

  

 某工場

 余震が終わると作業がはじめる。

 耐震設計だったが限度がある。

 隣の印刷工場は、二階に重たい印刷機を置き。

 一階に製本機械を置いていた。

 一瞬にして死傷者を出して潰れてしまう。

 作業効率を考えてしたことなのだろうが、社員の安全保障を軽視した災禍。

 合理性と機能性を追求するあまり、人命軽視の企業は、少なくない。

 他にも、非常階段を途中で壊し、

 ごみ処理場を作っている工場もあり、

 地震で火事、社員が逃げられず焼け死んでいたり。

 拝金主義の犠牲も少なくなかった。

 地震と人災により、日本の人口は、徐々に減っていく。

  

 工員が部品を批判気味に見つめる

 「・・・歪みが出ているな」

 「済みません」

 中途採用の少し若い工員

 「余震で、工作機械に歪みが出ているだろう」

 「それを加味して、作るしかない。精密な部品だから、神業になるよ」

 古参の工員が、工作機械を調整し、

 製品を作って、測定器にかけると、恐ろしい事に仕様書通りの数値で収まる。

 “常識的にありえないだろう”

 しかし、名人は、可能にしてしまう。

 「「・・・・・・」」 絶句

 「体で覚えるまでやるしかないよ」

 社長がやってくる。

 「・・玄さん。新しく、二人、入れるから、頼むよ」

 「一度に4人は、ないでしょう」

 「すまんね。頼むよ」

 「ずっと、人件費をケチってきて、いまさらですからね」

 批判的に元ニートらしき若者たちを見つめる。

 「あはは・・・・急に人件費が浮いてね」

 「衣食住とも共産主義ですな。まるで・・・」

 「天皇がいるんだから、律令制と行ってくれよ」

 「まぁ 同じ共産主義でも命がけなら労働意欲で違ってくるか・・・」

 「そりゃそうでしょうが」

 「じゃ 死にたくなかったら、仕事を覚えるんだぞ」

 「「「「はい」」」」

  

 

 

 

 それまでニーズに合わせた小種多様少量で、

 百花争乱に生産されていた高額物資が小種大量生産の低額物資へと切り替わってしまう。

 不平不満はあっても同じものをたくさん作るほうが生産量当たりの員数を減らせた。

 そして、減らせた員数をインフラ整備に転向。

 技能レベルで多少問題があっても員数だけは確保。

 そのおかげで日本の通信、電力、上下水道のインフラは、地震と余震が断続的に続いても機能していた。

 治安も、それなりに維持されている。

 富士山爆発による死者が多かったのか、

 まだ、物資の方があまっていた。

 各国の船が日本に資源を降ろし、

 戦時経済以上の挙国一致と経済統制のせいか、

 異常に安い製品が海外へ運ばれていく。

 日本経済は、日本沈没を前にして、なお平然と経済活動ができる不思議と、

 品質は信頼され、為替相場も持ち直してしまう。

 そして、相乗効果なのか、信頼を維持しようとする意欲が働き、

 モラルは落ちない。

  

  

 結城達也(デコ広)、田所エリ、倉木美咲。

 小野寺俊夫、阿部玲子

 人は、一人では、生きていけない、

 恋人同士、他人同士の奇妙な共同生活が始まったりする。

 ラジオからは、地震情報が引っ切り無しに伝えられていく。

 地震と余震の後、

 水道の水が止まる

 「・・・また水が止まっちゃった」

 仕方なく、溜めている水を使い始める。

 「でも、服が洗えないよ・・・電話だ・・・」

 「・・・田所博士!」

 「お父さん!」

 「いま、娘さんと代わります・・!・・えっ! 小野寺と、すぐ来い?・・・」

 ばっ!

 娘が携帯を取り上げる

 「ちょっと! お父さん!・・・」

 『結城君! 自衛隊の車が、そっちに行く。準備して、すぐに乗れ! ・・・』

 「・・・これから、自衛軍の車が来るって・・・」

 生死不明だったはずの父は、実の娘を、ほったらかし、

  

   

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 月夜裏 野々香です。

 日本民族存亡の危機なのですが、渡る世間は、鬼ばかり、

 他国に同情を期待しても無駄です。

 利用できるものは、利用して、生存権を確立しましょう。

 えげつなくても大多数が生き残るべきでしょうか。

 花と散っていくべきでしょうか。

 自由と生命。どっちを選択するか、でしょうか。

 一時的に自由を失っても生き残れば、自由を得られるかもです。

 死ねば、自由もありませんし。

 桜は好きですが、これまで、です。

 

AOE-424 補給艦 はまな

 

DD-172 護衛艦 しまかぜ

 

DD-171 護衛艦 はたかぜ

 

J28E 護衛艦 ひえい

 

DDH-141 ヘリコプター搭載護衛艦 はるな

 

 

横須賀 配備艦隊
旗艦 DDH143しらね     5200t
第61護衛隊 DDG174きりしま     7250t
  DDG171はたかぜ     4600t
第5護衛隊 DD111おおなみ DD110たかなみ   4650t
第1護衛隊 DD107いかづち DD102はるさめ DD101むらさめ 4550t
         
横須賀 地方総監部
第21護衛隊 「はつゆき」 「しらゆき」 「さわゆき」 2950t
第41掃海隊 「すがしま」 「のとじま」 「つのしま」  
  特務艇「はしだて」 輸送艇「2号」 多用途支援艦「すおう」 砕氷艦「しらせ」
         

佐世保 配備艦隊

旗艦 DDH144くらま 5200t
第62護衛隊 DDG173こんごう 7250t
DDG178あしがら 7700t
DDG170さわかぜ 3950t
第06護衛隊 DD104きりさめ DD109ありあけ 4650t
第02護衛隊 DD103ゆうだち DD112まきなみ DD157さわぎり 4650t

佐世保 地方総監部

第23護衛隊 護衛艦「いそゆき」 護衛艦「はるゆき」 護衛艦「あさゆき」
第26護衛隊 護衛艦「おおよど」 護衛艦「せんだい」 護衛艦「とね」
第3ミサイル艇隊 ミサイル艇「おおたか」 ミサイル艇「くまたか」 ミサイル艇「しらたか」
第43掃海艇 「いえしま」 「まえじま」 「まきしま」
第46掃海隊 「もろしま」 「ゆりしま」 「ひこしま」

 

こんごう

 

 

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第04話 07月 『まじ?』

第05話 08月 『へぇ〜』

第06話 09月 『ほお〜』

登場人物