月夜裏 野々香 小説の部屋

   

20XX年 日本沈没 『龍の魂魄』

        

 

 

 

第07話 10月 『げっ!』

 富士山が爆発して、5ヶ月。

 その後も、地震と余震があって被害続出。経済的に苦しい。

 しかし、日本沈没まで間がある。

 日本沈没で人工需要を起こし、

 統制経済で衣食住を維持し、失業率は限りなくゼロに近い。

 実態は、刑務所にいるようなもので収容所列島そのまま。

 しかし、国民意識は、なぜか、意欲的で諸外国のマスコミ関係者が目を見張る。

 負傷者が次々、病院や体育館に運ばれ、

 ベットは、満杯。

 血塗れの患者が並べられていく。

 ここで、まず、なされるのが最大多数を助けるため、切捨ての選択。

 もし、医師と看護婦が重傷者に取られてしまうと、

 助けられる数倍の負傷者を見殺しにすることになった。

 重傷者は、長期療養すれば回復することができたとしても、

 運が悪かったと見殺しにされていく。

 その光景を外国のマスコミが追っていく。

 

 配給センターも行列ができていた。

 意外と食料物資が残っているのか、貨幣経済も成り立っていた。

 しかし、地震と津波の悲惨な被災地を映し、

 さては、と、マスコミが暴動を探しても見つからない。

 外国のマスコミは辺りを探し回る。

 そして、今世紀、もっとも、間抜けな質問がレポーターから発せられる。

 「すみません。暴動は、どこで、やっていますか?」

 「・・・さぁ そのうち、テレビで、映るんじゃないですか?」

 と返事。

 まさか、自前で報道する義務のある外国マスコミ機関が、

 国内のテレビを前に座っているわけにも行かず。

 探し回るが見つからない。

 「警察だ!」

 慌しく移動する警察を見つけ後ろについていく。

 ようやく、暴動と思って映すと、しょうもない酔っ払いだったり。

 ケンカの仲裁だったり。小さな強盗だったり。盗難事件だったり。

 仕方なく、ホームレスを探そうとすると仕事中だったり。

 「・・・プロデューサー。まずいですよ。映像になりませんよ」

 「・・・・・」

 「こんなの流したら、本国の方が犯罪が多いじゃないですか」

 「・・・韓国の暴動を映して、日本ということにしよう。見かけが似ている」

 「いや、それは、まずいでしょう」

 「じゃ 暴動映画を作ろう」

 「火炎瓶とか投げてもらって、放水してもらって、それで、日本ということに・・・」

 「・・・・」

 頭を抱えるプロデューサーが切れる。

 「・・おい、あんた!」

 「働いても日本沈没で助かると思っているのか」

 「助かるのは、一部の特権階級だけなんだよ」

 「それ、わかっているのか!」

 プロデューサーが、そばを歩いていた日本人の男性に言うと、

 「・・・・」 きょと〜ん

 「日本沈没で半分以上の日本人は、死ぬんだよ」

 「あんたは、自分が助かると本当に思っているのか!」

 「さぁ」

 「・・・・・」

 結果を重んじる欧米人は、過程を重んじる日本人を理解しにくい。

 むろん、日本人にも欧米型の人間もいるが少数派。

 さらに全体の空気に呑まれ、事勿れ、大人しく流されてしまう。

 死ぬとわかっても、それが無駄な努力でも、

 仕事があれば、それで、自分を紛わせ、誤魔化し、働き続ける。

 その気質が功を奏してしまう。

 世の中、なにが幸いするか、わからない。

  

  

 統制された労働集約、生産集約が進んでいく。

 ライバル企業や職種の熟練工が肩を並べ、仕事をする。

 企業秘密だった事柄が融合し、

 統合されてしまうと相乗効果で合理的になったり、

 機能的になったり、効率がよくなったりで生産性が増してしまう。

 8時間労働だった仕事が、24時間になると、単純計算で3倍になる。

 戦時中のアメリカで、10000t級リバティ船を起工後、4日+15.5時間で進水させたことがあった。

 造船の最短記録を塗り替えたことから、恐怖の伴う人工需要の結果といえる。

 気付けば、GDP(国内総生産)は、4倍に跳ね上がり、

 アメリカを抜いて、トップに躍り出て、さらに暴走していた。

 地震で破壊されたインフラも、かなり早いうちに修復されてしまう。

 日本企業は円が強かろうと弱かろうと、安い製品を売り、

 いくらでも、原料を買っていく。

 中国も、アメリカも、日本の急速な内需拡大は、癪に障るとしても、

 メガフロート建造と海外移民需要に向けられていく。

 福岡 仮官邸

 「い、いまのは、随分、揺れたな」

 「・・・総理、やはり、阿蘇噴火だそうです」

 「九州もか・・・」

 「総理、こっちは、風上側で偏西風も外れています」

 「こっちに火山弾は届かないようです」

 「総理、メガフロートに移る方が安全かもしれませんね」

 数種類のメガフロートがプロジェクターで映されていた。

 標準的なサイズは、6000m×1000m・・・・

 普通、海岸から水平線までの距離は約5km。

 全長は、それより長い。

 しかし、基幹産業となるメガフロートは、さらに幅が広く大きくなろうとしていた。

 最大は、6000m×4000m。

 メガフロートの模型が10個ほど、南大西洋の比較的、穏やかな洋上に浮かんでいる。

 何のことはない。

 地震、時化、嵐、津波など対策が問われても、

 海流と天候が安定した海域を選択すればよく。

 耐久年数も伸ばすことができた。

 「メガフロートができるまで間があるだろう」

 「それに総理大臣が先に逃げるのは癪だろう。かっこ悪すぎる」

 「その方が、次の総理大臣は、メガフロートで指揮を取りやすいかと」

 「わかっておるが、それでも、もう少し、本土にいたい。たとえ、死んでもだ」

 「ですが、次の総理は困ると思います」

 「日本が沈んでいく速度も、速まりますし・・・」

 「ここは、危機管理上、総理に泥を被ってもらう方が・・・」

 「だから移さないと、言ってないだろう。もう、少し待て」

 「はぁ」

 「工期は?」

 「およそ、2.5年ですが最近の生産能力だと1年未満でいけそうです」

 「もっとも、それも、地震しだいですが」

 「・・・日本の主要な基幹産業をメガフロートに効率良く収められればよし」

 「海外移民者も、いずれは、という気になるな」

 「人口密度で言うと日本は、ku当たり、322.6人というところ・・・」

 「あ、減ってました。250人でした。阿蘇の噴火で、もう少し減っているかもしれません」

 「イギリス並というところか」

 「要は、どの程度の床面積で、メガフロートを建造できるかです」

 「カプセルホテル方式で計算すると、相当な人口密度を確保できると思います」

 「自動車は、年間1000万台くらい作っていましたからね」

 「カプセルは、いくら素材を良くしても自動車より、安いものでしょう」

 「やはり軽くて丈夫な方が良いのか」

 「メガフロートといっても浮きものですから。軽い方が良いのは、無論です」

 「あと、消費経済に悪影響が出そうですが長期的に使うつもりで建造でしたら」

 「基礎は、しっかり、でしょうか」

 「特に淡水化プラント、製鉄、発電、基幹工場など・・・あと、基幹産業は、全て、ここに・・・」

 「ふ そばに職場があると、本当に収容所だな。生産性が上がりそうだ」

 「日本沈没で死ぬのと、どっちが、良いか、でしょう」

 「生きていれば、海外に移民して、自由に生きていける様に、したいですね」

 「公の部分で余裕がある方が良いのか?」

 「それとも個の分野で、余裕を持たせた方が、いいのか?」

 「そうですね」

 「人それぞれで分かれると思いますので」

 「メガフロート単位で特性を出すほうが良いかもしれません」

 「夫婦とか、家族とか、いるはずだ。家族構成とかは?」

 「それなりに余裕のあるセミダブルクラスのカプセルにするとして」

 「ホテルくらいなら運営できると思いますが」

 「アツアツでなければ、その方が気が楽でしょう」

 「プライバシーは、気になるところだが・・・」

 「限度は、ありますが」

 「なるべく、ストレスにならない環境は作れると思います。予算しだいですが」

 余震で、インテリジェントビルが揺れる。

 「・・・時間も、だろう・・・」

  

  

  

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 月夜裏 野々香です。

 「立てよ国民〜! ジーク・ジャパン〜!!!」

 いや、ガンダムを意識しすぎて、そっちへ引っ張られてしまいます。

 

 

 ごぉおおおおお〜

 「お母さん、逃げないと・・・」

 「いやいや、他の世界になんか行きたくない。この日本で死ぬ!」

 「あ、そう・・・」

 ぽっちゃん〜!

 あと、日本列島と一緒に沈みたがる国民の比率がどの程度いるやら、

 多ければ多いほど、好都合だったり・・・

 それぞれの大洋で気候が安定した海域にサイド・コロニーが建設されるかも・・・

  

  

AOE-424 補給艦 はまな

 

DD-172 護衛艦 しまかぜ

 

DD-171 護衛艦 はたかぜ

 

J28E 護衛艦 ひえい

 

DDH-141 ヘリコプター搭載護衛艦 はるな

 

 

 

 

 

 

横須賀 配備艦隊
旗艦 DDH143しらね     5200t
第61護衛隊 DDG174きりしま     7250t
  DDG171はたかぜ     4600t
第5護衛隊 DD111おおなみ DD110たかなみ   4650t
第1護衛隊 DD107いかづち DD102はるさめ DD101むらさめ 4550t
         
横須賀 地方総監部
第21護衛隊 「はつゆき」 「しらゆき」 「さわゆき」 2950t
第41掃海隊 「すがしま」 「のとじま」 「つのしま」  
  特務艇「はしだて」 輸送艇「2号」 多用途支援艦「すおう」 砕氷艦「しらせ」
         

佐世保 配備艦隊

旗艦 DDH144くらま 5200t
第62護衛隊 DDG173こんごう 7250t
DDG178あしがら 7700t
DDG170さわかぜ 3950t
第06護衛隊 DD104きりさめ DD109ありあけ 4650t
第02護衛隊 DD103ゆうだち DD112まきなみ DD157さわぎり 4650t

佐世保 地方総監部

第23護衛隊 護衛艦「いそゆき」 護衛艦「はるゆき」 護衛艦「あさゆき」
第26護衛隊 護衛艦「おおよど」 護衛艦「せんだい」 護衛艦「とね」
第3ミサイル艇隊 ミサイル艇「おおたか」 ミサイル艇「くまたか」 ミサイル艇「しらたか」
第43掃海艇 「いえしま」 「まえじま」 「まきしま」
第46掃海隊 「もろしま」 「ゆりしま」 「ひこしま」

 

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第06話 09月 『ほお〜』
第07話 10月 『げっ!』
第08話 11月 『なっ!』

登場人物