月夜裏 野々香 小説の部屋

   

20XX年 日本沈没 『龍の魂魄』

        

 

 

第09話 12月 『むぅ〜』

 アフリカ大陸

 欧米諸国は、アフリカ大陸に高い製品を売りつけ、安く資源を買い上げていた。

 日本人のアフリカ移民は、その関係を崩され、

 逆にアフリカ大陸の製品が欧米諸国に流れてくることになった。

 かなり困ってしまうが状況は、そちらに向かっており、

 それを押し止める手段も狭められていた。

 アフリカ諸国は、世界の国民総生産で底辺を占め、

 日本人移民に好条件を出す国が多かった。

 ナミビア、アンゴラ、コンゴ、カメルーン、ナイジェリア、モーリタニア、

 モザンビーク、タンザニア、ケニア、エチオピア、マダガスカルなどなど

 日本人が来れば、税金が入ってくるだけで、アフリカ大陸でトップに躍り出るのだから嬉しい。

 日本軍が配備されれば、アフリカ大陸屈指の最強国。

 国際外交政治でも欧州列強と並んで表舞台。

 アフリカ初の新幹線も、その国が基点になって始まる。 

 ほとんどの国が日本民族を第一級種族認定、特別自治も承認。

 アメリカに行っても、欧州に行っても、胸を張れる。

 黒人の夢なのだから、なにが、なんでも、という気になる。

 

 中国人や韓国人は

 “日本人が、アフリカ諸国を占領しようとしている”

 と騒いで冷水を被せる。

 しかし、日本人が他のアフリカ諸国へ行った場合。

 そして、特に隣国に行かれると怖い、と、考え直す。

 隣国とのGDPが一夜にして引っくり返ってしまうと取り返しが付かない。

 程度の低い産業レベルの移転でもアフリカ大陸市場を席巻できる品質があった。

 日本人の代表は出された条件を本国に送ると、のんびりと、観光する。

 

 農地を持っている日本人は、どうしても移民したがらないものの、

 農地があれば移民しやすく。農業移民という形は多い。

 当然、メガフロートで海上生活する者にとって日本食は、食べたく。

 一定の品質が確保できるなら南米大陸産でも、アフリカ大陸産でも安い方から買うのが良いに決まっている。

 というわけで最初は、農業移民、基幹産業など、

 インフラ整備という形で移民が始まり。

 信用と自治権が拡大するにつれ、

 工業関係の移民も増えていく。

 

 

 福岡 仮官邸

 資料が山積みにされていた。

 日本にある資財は多い。

 民間・官庁関係機の飛行機とヘリコプターを合わせただけで2000機を越えている。

 防衛省の物だと別に650機以上。

 自動車、鉄道貨車など、何でこんなに多いのかわからないほど、多い。

 日本が沈没する前、国外に売却するか、

 別の物、たとえばメガフロート関連に加工する。

 可能な限り、基幹産業を保持したまま、メガフロートを建造し、日本列島から避難すべき。

 理想的な移民構想をコンピューターで作っても人間は理想的にできておらず。

 あれこれ我が侭を言いながら遅延気味。

 元々、自然災害は、どのように進んでいくのか簡単に計算できず。

 地震予知は推測と近似値ばかり。

 それでも、最新のデーター解析で絶えず試算が繰り返され、

 日本列島が沈んでいく様子がコンピューターグラフィックに映されていく。

 「・・・本当に、こうなってしまうのかね?」

 「太平洋の北側から沈んでいくであろう、が、シミュレートされています」

 「ですが、ゆれ戻りもあるので、一概に正鵠と言えません」

 「固有振動数を伴った地震で列島のメガリスが圧壊」

 「液状化しつつ、崩れ落ちると、こうなってしまうのか・・・」

 「メタンハイドレートの気化も温暖化と直結、大きな環境破壊につながりそうです」

 「残存群島が少し残って、採掘権が維持できそうだ」

 「希少金属も、おいしいだろう」

 「しかし、問題は、大量のメタンハイドレートの気化をどうするか、だろうな・・・」

 「・・・総理。南極移民船団が南極に到達したそうです」

 「早いな」

 「アメリカとソ連の砕氷艦を借りましたので・・・」

 「金の力というのは、恐ろしいな」

 「南極の主権と領土化は条件付ですが手応えが、ありそうです」

 「アメリカだけですが・・・」

 「アメリカが承認なら、あとは、どうでもいいよ」

 「南極は、本籍地みたいなもので、現住所は別」

 「日本自治区だ。条件は、やはり、希少資源やメタンの採掘か?」

 「当面は、メタンでしょう」

 「あれが大気中に溢れ出すと相乗効果で温暖化ですから」

 「もっとも、量が量です。南極大陸で貯蔵ですがね」

 「その南極のメタン貯蔵も共同監視か・・・」

 「当然かと」

 「南極大陸のシールド工法は上手く行きそうかな」

 「大陸全体が、氷で埋まっていますからね」

 「海岸へ向かって氷が移動していても表面上だけですし」

 「南極中心へ向かって掘れば、悪影響は小さいかと」

 「ん・・・悪くないのか・・・」

 「淀んでいるような場所や深々層は動かないのでシールド工法で一気です」

 「しかし、魔法瓶方式で空間を作れても、インフラ整備や人の生活という点で厳しいな」

 「基本的に居住空間というより、メタンハイドレートの貯蔵庫のようなものですから」

 「しかし、主権と領土承認は、後回しだろうか?」

 「そうですね。秘密協定を結ぶとしても公開するのは日本本土が沈んでから、という感じでしょうね」

 「とりあえず。すり合わせ、すべきだろうな」

 

 

 ホワイトハウス

 大統領と数人のスタッフ。

 「・・・日本の深海調査船の報告ですと、核爆弾でプレートを崩し」

 「地震の固有振動数を変更するという計画は、問題になりそうです」

 「・・・メタンハイドレート?」

 「はい。実質、核爆発でマントルの周期的な固有振動数が変わるか、不明ですし」

 「メタンハイドレートの気化が早まるのは確実」

 「・・・・」

 「さらに核爆発が引き金となり」

 「海底大地震を招く結果になれば、アメリカ西海岸は、大打撃です」

 「メタンの採掘は?」

 「メタン採掘でもっとも進んだ技術を持つのも」

 「貯蔵できる場所を持つのも日本の大和メタン会社ですから」

 「それに、メタンを吸蔵しても、保管は、日本に委ねるしかないかと・・・」

 「・・・結局、日本の思惑に乗るしかないのか?」

 「そのようで・・・」

 「アメリカも南極に行けばよかろう」

 「アメリカ人には動機がありませんから、動機がないければ・・・」

 「結果は、想像付くと思われますが」

 「それぐらい、想像付くよ。腹が立つだけだ」

 「確かに・・・」

 「アメリカの日本人町の建設は?」

 「自治権付ですか」

 「面白くはないが、その方が交易で遅れを取らずに済む」

 「アメリカ合衆国が善良な大国であるという誇りも保てる。恩も売れる」

 「人質で採掘権も取りやすいですしね」

 「そういうことだ」

 「主要各国とも日本民族をバラバラにして消失させるより」

 「自治権付の日本人町建設で妥協する動きを見せている」

 「我を張るより、日本人町で日本人を人質」

 「産業の根幹を避難させたメガフロート日本も圧力をかけられるはずです」

 「落としどころは、そうなりそうだ・・・あと・・・極東の利権は?」

 「韓国と台湾の高台は、押さえているので少し不足気味です」

 「日本列島を失っても防衛線だけは、保てるかと」

 「問題は、太平洋の被害で利権体制が崩れてしまうことだ」

 「利権がなければ、防衛線も維持しにくい」

 「太平洋沿岸は、日本沈没の余波で総浚いです」

 「アメリカ西海岸もそうですが中国と半島は大打撃のはず」

 「中国艦隊は、揚子江の内陸側へと移動を開始しているようです」

 「日本のメガフロートは、日本が沈没した後、もう一度、太平洋に戻り」

 「利権を再確保できるわけか」

 「はい、メガフロートの移動だけで済みますから、そうなりそうです」

 「・・・信じられん?」

 「本当に日本は、沈没するのか?」

 「なぜ、国土が、沈もうとしているのに、こんなに手強くなるんだ。ありえんだろう」

 「挙国一致で反体制派も根こそぎですし、開き直っているだけでは?」

 「国内の分断工作ができないと物事を有利に進められないな・・・」

 「残念です」

 「大和メタン株式会社の株、買わないと駄目だろうな」

 「いっそ、日本のアメリカ国債を段階的に償還する方が良いのでは?」

 「相当な額があるぞ」

 「80兆円ほどですな」

 「しかし・・・」

 「このまま持ち続けても泥棒扱いされるだけで、いい事ありませんよ」

 「んん・・・」

 「結局、それが日本沈没という状態でも対外的に日本経済を保障していると見られていますから」

 「・・・何しろドル建てですからね」

 「んん、日本の輸出攻勢でアメリカの財政は厳しいぞ・・・」

 「ですが日本沈没需要で違う需要が起きてますし」

 「80兆円は、自治権付きの日本人町に使われれば・・・・」

 「な、なるほど」

 「最終的には、アメリカ全体に波及しますよ」

 「んん・・・80兆円でか・・・」

  

  

 南極大陸

 港がない場所に物資を積載するのは、かなりの苦労が必要になる。

 しかし、氷海の沖合いには、日本の船団だけでなく、アメリカ艦船も少なくない。

 アメリカの強襲揚陸艦は、明らかに日本からの物資を運んでいた。

 雪上車は、全長7m、全幅3.5m、車高3.3m、総重量11トンだったものが、軽量化で10t。

 来年度は、性能そのままで、総重量8トンになる予定だった。

 予算が増えて、金さえ掛ければ、それなりの物が製造できる。

 強風域の南極大陸は、軽ければいい、というものでもない。

 しかし、軽ければ、H47ヘリコプター(12トン可)で雪上車を降ろすことができた。

 その車両が次々に降ろされていくと、壮観。

 これほどの規模で南極上陸が行われる動機は、日本沈没以外にありえない。

 また、メタンハイドレートの気化という危機意識と、

 メタンの保管場所という意図がなければ、アメリカは、支援しない。

 諸外国も通常なら妨害するはずが、それもなく、渋々と見逃す。

 

 

 

 ロサンゼルス空港

 黄色人種の家族が大きな荷物を抱えて降りてくる。

 日本人かと思えば、韓国人だったり、中国人だったり。

 それも、有力者ばかり。

 日本沈没の煽りで津波を受けると思っての逃亡。

 よくよく考えれば日本沈没の余波なら、太平洋岸の西海岸も津波が届く。

 逃亡するなら東海岸側が良いに決まっている。

 とはいえ、西海岸にアジア人の伝があっても、

 東海岸に伝がある者は、少数派。

 そして、伝の先は、一人っ子政策の結果、追い出されたり、半島からの逃亡者ばかり。

 頼っても金蔓にされてしまうだけ。

 「日本人は、いないニダ」

 「日本は、収容所列島ある♪」

 「死ぬまで働かされるニダ」

 「逃げられないある」

 「哀れに海に沈んでいくニダ♪」

 「日本沈没〜!!! 万歳〜!! 万歳〜!! 万歳〜!!」

 「日本沈没〜!!! 万歳〜!! 万歳〜!! 万歳〜!!」

 「日本沈没〜!!! 万歳〜!! 万歳〜!! 万歳〜!!」

 ちなみにアメリカの日本人町は、メキシコ湾側に建設されていた。

 「・・・あ〜 みなさん、アパートは、こちらです」

 なぜか、日本人が案内したりする。

 「お、日本人がいる。逃げてきたあるか?」

 「いえ、こっちの在住です。今日は、アルバイトで・・・」

 「自分は、日本沈没の煽りで、半島にも津波が来ると思って逃げてきたニダ」

 「とても知恵があるニダ。自尊心ニダ」

 「他の人にも、教えた方が、いいのでは?」

 「それは駄目ある」

 「そうニダ」

 「まず、このアメリカで基盤を作って後から来た者を迎え」

 「カモにして、一稼ぎするニダ」

 「それが知恵ニダ。それが韓国の自尊心ニダ」

 「そ、そうですか・・・」

 「いっぱい尊敬するといいある」

 「はぁ・・・」

 「アメリカで我が世の春を謳歌するニダ」

 「なるほど・・・」

 「日本沈没〜!!! 万歳〜!! 万歳〜!! 万歳〜!!」

 「日本沈没〜!!! 万歳〜!! 万歳〜!! 万歳〜!!」

 「日本沈没〜!!! 万歳〜!! 万歳〜!! 万歳〜!!」

 不正腐敗で人を出し抜き、

 自分だけが生き残ったりを知恵だと考えるタイプは少なくない。

 みんなで、がんばって式の英知は裏切られやすかったりする。

 アメリカは、人種の坩堝、いろんな人種と価値観が集まってくる。

 その中で、一番、たくましく、荒々しく、ハングリーなのが韓国人と中国人だった。

 「いっぱい尊敬すると良いニダ♪」

 

 

 日本人町

 異民族のため、

 自治権を有する町を国内に作るというのは、通常少ない。

 日本の国内に他国民を住まわせて、自治権まで、与えるようなもので、小国では、無理。

 単一民族でも無理。

 大陸国家で多民族国家ならでは、それも、特別な事情がなければ、ありえない。

 そして、日本は、特別な条件のほとんどをクリアしていた。

 人畜無害で有益さが目立つ日本民族は、勤労勤勉で、

 日本沈没による挙国一致と経済統制で、世界一のお金持ち。

 さらにメタンハイドレートの気化という世界トンデモ災厄に見舞われ、

 同情票+我が身かわいさも含んで、ようやく可能にした僥倖。

 日本人が落としていくお金も日本人町で稼がれ、

 そこで得られる税金と経済波及効果も、おいしい事ばかりで、悪くない。

 メキシコ湾

 「やっぱり、日本人町は、城下町でしょう」

 「いいのかな」

 「自治権があるんだから、アメリカに税金払って、戦争と外交さえしなければ、大丈夫です」

 「そうですね・・・」

 「やっぱり、姫路城がいいですよ。あれは、映える」

 「まぁ そうでしょうが・・・」

 「どうせ、海の底に沈むのなら持ってくるのがいいでしょう」

 「観光収入も当てにできますよ」

 「あと、ハリケーンも通るので日本とそっくり」

 「・・・・・」

 「あ、ハリケーンは、防波堤さえ、きちんとすれば問題ないはずですよ」

 「あと、厳島神社、京都の金閣寺、銀閣寺、清水寺。東京タワー」

 「全部、アメリカに持ってくるといいです」

 「ひろ〜いですから。皇居も大丈夫です」

 「いや、皇居は、ちょっと・・・」

  

   

  

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 固有振動数を伴った地震、発熱によるメタンハイドレートの気化。などなど。

 いろいろ、合わせても、この日本列島。

 田所先生が、どんなに天才でも、こりゃ 沈まんわ。

 というのが正直な感想。

 日本沈没は、フィクションとして、楽しんでくだされば、です。

 

 

 

  

AOE-424 補給艦 はまな

 

DD-172 護衛艦 しまかぜ

 

DD-171 護衛艦 はたかぜ

 

J28E 護衛艦 ひえい

 

DDH-141 ヘリコプター搭載護衛艦 はるな

 

 

 

 

 

 

横須賀 配備艦隊
旗艦 DDH143しらね     5200t
第61護衛隊 DDG174きりしま     7250t
  DDG171はたかぜ     4600t
第5護衛隊 DD111おおなみ DD110たかなみ   4650t
第1護衛隊 DD107いかづち DD102はるさめ DD101むらさめ 4550t
         
横須賀 地方総監部
第21護衛隊 「はつゆき」 「しらゆき」 「さわゆき」 2950t
第41掃海隊 「すがしま」 「のとじま」 「つのしま」  
  特務艇「はしだて」 輸送艇「2号」 多用途支援艦「すおう」 砕氷艦「しらせ」
         

佐世保 配備艦隊

旗艦 DDH144くらま 5200t
第62護衛隊 DDG173こんごう 7250t
DDG178あしがら 7700t
DDG170さわかぜ 3950t
第06護衛隊 DD104きりさめ DD109ありあけ 4650t
第02護衛隊 DD103ゆうだち DD112まきなみ DD157さわぎり 4650t

佐世保 地方総監部

第23護衛隊 護衛艦「いそゆき」 護衛艦「はるゆき」 護衛艦「あさゆき」
第26護衛隊 護衛艦「おおよど」 護衛艦「せんだい」 護衛艦「とね」
第3ミサイル艇隊 ミサイル艇「おおたか」 ミサイル艇「くまたか」 ミサイル艇「しらたか」
第43掃海艇 「いえしま」 「まえじま」 「まきしま」
第46掃海隊 「もろしま」 「ゆりしま」 「ひこしま」

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ 

第08話 11月 『なっ!』
第09話 12月 『むぅ〜』
第10話 01月 『まぁ 〜』

登場人物