第02話 1909年 『波 及』
ヴィルヘルム2世の気紛れ、ドイツ帝国の政策変更により、
極東ロシア海軍と清国海軍は、再建され、
日本は、窮地に立たされる、
南満州で得られるはずの鉄道株の60パーセントをハリマン資本に売却しなければならず。
大連
この日、南満州鉄道の筆頭株主となったハリマンは勝ち誇り、
役員総出で南満州鉄道、施設権益会議に参席していた。
「ふっ 日本も、ざまぁないな」
「散々 我々から借款しておきながら、恩知らずに約束を反故」
「そして、露清艦隊再建で窮地に陥って、慌てて南満州鉄道の権利を売るとは」
「弱小国家サルどもが粋がるからだ」
「国防で黄色い猿が泣きついてきたら、どうしてやるか」
「日本国内の鉄道も買い取っても良いのでは、国防のために投げ出すかもしれませんよ」
「ふっ 鉄がなければ国は守れんよ」
「しかし、日本人は働かせるには、丁度いいのでは?」
「あははは・・・ 国防を餌に日本人を働かせて、全部、奪ってやる」
「サルどもが身の程を知れば良い」
「さて、とりあえず、事業拡大を餌に日本代表を騙くらかして、資金を出させてやるか」
「日本では、他人のふんどしで相撲を取るというそうですよ」
「ふっ このまま、アメリカの保護国に転がり込んでくるかもしれませんね」
ははは! ははは! ははは!
ははは! ははは! ははは!
がちっ!
「おっ! 日本の株主が来たようだ」
ハリマン鉄道役員は、扉を開けて入ってきた白人たちに肝を潰す。
「やぁ ハリマン君。我々が新しい4割株主だ」
プロイセン王国鉄道の役員が楽しげに微笑み、目の前に座る。
「もちろん、我々のP8形機関車を使ってくれるだろう?」
「・・・・」 絶句
「朝鮮半島、遼東半島、山東半島を鉄道で繋げねばならんからな」
「・・・・」 唖然
「よろしく頼むよ。筆頭株主のハリマン君」 にやり
「・・・・」 呆然
日本は、南満州鉄道の持ち株40パーセントをドイツ帝国に売却。
日本は大陸から撤退したのだった。
日独権益交換協定調印 |
||||
ドイツ帝国 | 日本 | |||
北東ニューギニア (約60万人) | 242476ku | ⇔ | 朝鮮半島(朝鮮人約1200万人) | 219000ku |
マーシャル諸島、パラオ、マリアナ諸島、 | (済州島・巨済島・ウルルン島を除く) | |||
ミクロネシア |
702ku |
遼東半島(3462ku) | ||
ナウル | 南満州鉄道株4割 | |||
ビスマルク諸島、ソロモン諸島北部、 | ||||
パプアニューギニア北部地域 (カイザー・ヴィルヘルムスラント)、 |
||||
西サモア、(199ku) | ||||
|
249500ku |
日独権益交換協定調印は、国際社会を騒然とさせる。
ドイツ帝国は、山東半島の権益地と合わせ、朝鮮半島に足場を構築してしまう。
また遼東半島+南満州鉄道の4割権益を保有してしまう。
ドイツ帝国は、戦略的にロシア帝国を挟撃する地政学的な優位性を確立し、
同時に山東半島、遼東半島、朝鮮半島で黄海と渤海を押さえ、
中国市場に絶好の戦略基盤を得てしまう。
日本人代表たち
「日本は、日清・日露戦争で得た朝鮮半島と遼東半島と南満州鉄道を失った事になります」
「大使、本当に良かったんですか?」
「ドイツは数十年かけ、山東、遼東、朝鮮の三半島をドイツの領土にしてしまうだろう」
「日本は、その年月で北東ニューギニアの開発を進められるさ」
「ドイツは、潜水艦の建造に力を入れてるようです」
「朝鮮半島にドイツの潜水艦が配備されると困るのでは?」
「ドイツめ、清国とロシア帝国に戦艦24隻を売却したことを後悔させてやる」
「極東ドイツが清国艦隊とロシア極東艦隊の矢面に立つ事になりますからね」
「そういうことだ」
「でも何で西サモアを付けてくれたんだろう。要求してないのに」
「日米の対立を望んでいるんじゃないのか?」
「それは困る」
「まぁ ホワイトフリートは帰還したのだから大丈夫だろう」
「ドイツが朝鮮半島をアメリカやロシアに売り渡さなければいいですがね・・・」
「げっ それはまずい・・・」
北ニューギニア移民経済は、日本の金本位制の足枷になっていく。
大規模な土木建設工事を行うのに日本の “金” 保有量は少な過ぎたのだった。
「金本位制を廃止すると外国製品が買えなくなるよな」
「銀交換紙幣を別に出すか」
「金銀複本位制は産出量比の差額で介入されて、困ることになるよ」
「だから、金銀の交換比を変動にしてしまえばいいよ」
「んん・・・ 高額貨幣を出すのは?」
「高額貨幣で政府が管理通貨制度を調整するのか・・・」
「銀の含有量が大きければ、問題あるまい」
「偽造されると厄介だがな」
「移民経済を支えるためには、とにかく、大量の金が要るってことだよ」
ドイツ植民地帝国は、1884年から始まる。
1908年以降、10年かけて投資された予算総額が1年で消費され、
入植者2000〜5000人だったドイツ植民地に、ドイツ建設軍将兵10万が上陸する。
そして、10倍に増えた植民地予算に引き摺られ、ドイツ人入植が増加していく。
その様子は “10万都市を移設している” と表現され、
黄海・渤海をドイツ商船が行き来する。
この時期、ハンブルク・アメリカ汽船会社の商船隊は総トン数136万トンに達し、
総数206隻。1隻換算なら6000トン級商船でアジア航路に不足はなかった。
ドイツ造船業は、商船を建造し、
ドイツと植民地、周辺諸国を何度も往復していく。
もう一つ、ドイツの極東移民は、シベリア鉄道も加わる。
ロシア帝国は、極東ドイツの増強に繋がり、将来的に挟撃されると知りつつ、
莫大な利益を当て込んで見送る。
シベリア鉄道の輸送量増大は、シベリア鉄道経営を黒字にさせ、
複線化に繋がり、ロシア帝国の税収にも反映された。
ドイツ帝国
植民地帝国各地に城塞都市が建設され、
ドイツ植民地帝国の中核となっていく。
とはいえ、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の植民地政策は赤字を広げ、
やりくりのためか、基幹産業が軌道に乗った後、
ドイツ帝国諸侯に所領を分配が決められていく。
プロイセン王国、バイエルン王国、ヴュルテンベルク王国、ザクセン王国、
バーデン大公国、メクレンブルク=シュヴェリン大公国、ヘッセン大公国、
オルデンブルク大公国、ザクセン=ヴァイマル=アイゼナッハ大公国、
メクレンブルク=シュトレリッツ大公国、
ブラウンシュヴァイク公国、ザクセン=マイニンゲン公国、アンハルト公国、
ザクセン=コーブルク=ウント=ゴータ公国、ザクセン=アルテンブルク公国、
リッペ侯国、ヴァルデック侯国、シュワルツブルク=ルードルシュタット侯国、
シュヴァルツブルク=ゾンデルスハウゼン侯国、ロイス(弟系)侯国、
シャウムブルク=リッペ侯国、ロイス(兄系)侯国、
そして、ドイツ帝国の新参、旧南部連合である、
バイエルン王国、
ヴュルテンベルク王国、
バーデン大公国
は、積極的に新天地に移民しようとしていた。
ドイツ帝国 ベルリン王宮
ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世は、推測される未来予測図を見て、
領有 面積(ku) | 利権 面積(ku) | 軍(万) | 人口(万) | ||
北欧 | ドイツ帝国 | 54万0857 | 4700 | ||
朝鮮半島 | 東ゲルマニア | 21万0000 | 100 | 1000 | |
遼東半島 | 3462+1万2500 | 10 | 100 | ||
山東半島 | ホーエンツォレルン | 4万0552 | 11万6700 | 20 | 200 |
カメルーン | 南ザクセン | 79万0000 | 10 | 100 | |
東アフリカ | 南ヴュルテンベルク | 99万4996 | 10 | 100 | |
南西アフリカ | 南バイエルン | 83万5100 | 10 | 100 | |
トーゴランド | 南バーデン | 8万7200 | 10 | 100 | |
ドイツ帝国 | 350万2167 | 12万9200 | 6400 |
どうしたものかと思いふける。
ドイツ統一によって、プロイセン王国は、相対的に弱体化していた。
そして、植民地への移民が進めば、植民地は強靭になるものの、
ドイツ帝国本体は、相対的に低減する。
それはそれとして、時代の流れとして受け入れるべきなのだろう。
ドイツ帝国は、伝統的な封建貴族主義者もいれば、自由主義者も根強く、拡大傾向にあった。
自由主義者は、自由を求めドイツ帝国の支配圏の及ばない、アメリカ合衆国へと移民する。
むしろ、大国アメリカ合衆国を強めさせるなど、愚か者のすることであり、
貴族社会を残しつつ、民主自由区を拡大する予定でもあった。
しかし、やり過ぎれば、一気に議会制民主化の流れに向かうため、
用心深く利権を守り、人事を魚化していた。
北東ニューギニアと日本の半島・大陸利権を交換したものの、
中国大陸の潜在的な利益と脅威は大きかった。
ドイツ帝国は、極東三半島を近代化させられるなら、極東ドイツによって、国際的な地位を押し上げることができた。
問題は、極東三半島の独立を防ぐことだった。
イギリスと同じ轍を踏まない事で、地政学上、独立はないと思えた。
「相対的にフランスが強くなりそうだな」
「推測通りでしたらドイツ帝国4700万、フランスは3950万となります」
「もっと強くなるのは、ロシアだな」
「はい、人口1億3000万は、越えているかと」
人口比は国力の一端を示した。
無論、国力の全てではない。
一人当たりのGDPでさえ、
貧富の格差が小さければ近代化は停滞し、
逆に貧富の格差が大き過ぎれば社会は不安定になった。
ロシア帝国は、脅威ではあるが、積極的な侵略はないと考えられた。
ドイツ領南西アフリカ (ナミビア) 835100ku
ダイヤモンド、石炭、銅、亜鉛、錫の鉱物資源と農業用地の可能性があった。
ドイツ帝国の大規模な投機は、二つの可能性を支えられる。
北の港ウォルビスベイは、南アフリカの飛び地となっていた。
しかし、南のリューデリッツにドイツ軍10万が上陸すると発電所、要塞、鉄道、港湾を建設。
ブラジル・アルゼンチンから買ってきた河水が貯水池に流されていく。
そして、資本に引き摺られるようにドイツ人移民が増加していた。
リューデリッツ港
ドイツ商船隊が停泊している中、数隻のUボート潜水艦が入港していた。
U93型潜水艦 | ||||||||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 最大速度 | 航続距離 | 50cm魚雷 | 砲 | 機雷敷設 | 深度 | 乗員 | |
水上 | 840 | 71.6×6.3×4.86 | 1200 | 16.8kt | 7kt/16705km | 6筒×12 | 105mm×1 | 100m | 36 | |
水中 | 1000 | 600 | 8.6 | 4kt/96km | 88mm×1 | |||||
UE2型潜水艦 | ||||||||||
水上 | 1164t | 81.5×7.4×4.2 | 2400 | 14.7kt | 8kt/25715km | 4筒×14 | 150mm×2 | 2筒×42 | 75m | 40 |
水中 | 1512t | 1200 | 8kt | 4.5kt/64.8km | 88mm×1 |
U93型潜水艦 艦橋
「各植民地に潜水艦40隻、将兵10万の配備か、それで、植民地が守れるのかな」
「軍隊で制圧しながら植民地を開拓しているのだから本気なんだろう」
「北のカメルーンとトーゴがドイツ本国に近いんだがな」
「あそこは熱いからね。涼しそうなところは火山だし」
「じゃ 南西アフリカを除くと東アフリカか」
02/09 モロッコに関する独仏協定締結
03/08 度量衡法改正公布(尺貫法・メートル法に加えてヤード・ポンド法も公認)
ドイツ領東アフリカ領(994996ku)
ドイツ建設軍10万が上陸。
そして “まるで戦争” と言われるような開拓が開始されていた。
ドイツの投資が急増していくにつれ、
タンガ、ダルエスサラームのドイツ人も急速に増えていく。
ドイツ商船隊は、イギリスの妨害もないことから、植民地の開発を進めていた。
東アフリカでもっとも過ごしやすいビクトリア湖は、ドイツ人入植が急速に増えていく。
タンガ港
ドイツ植民地帝国には潜水艦が配備されていた。
港には、潜水艦4隻が停泊していた。
膠州湾租借地 552ku + 山東半島(40000ku)中立地帯。
1889年、開設開港、もっとも新しいドイツの利権で東アジアの足場だった。
そして、もっとも期待されている利権だった。
この地にドイツ建設軍30万が上陸。
中立地帯は、ドイツ軍のみ移動可能で、ドイツ風の都市を建設していく。
そして、ドイツ海外領で最大の投資がされたのは、さらに新しい権益地。
ベルリン日独権益交換協定調印でドイツ帝国に編入した朝鮮半島だった。
ドイツ人入植者は、シベリア鉄道を越え、
ユーラシア大陸を横断し、朝鮮半島へ向かっていく。
ドイツ帝国は、船舶を利用して、陸軍将兵80万を朝鮮半島に上陸させ、
一部を遼東半島に上陸させてしまう。
ドイツ領朝鮮半島219000ku (1200万人) ⇔ 日本領ニューギニア242476ku (60万人)
その後、ドイツ軍は、朝鮮・遼東・山東半島の膨大な労働力(朝鮮人・漢民族)を使役。
ドイツ領 朝鮮・山東半島を開発していく。
ベルリン
参謀本部
「戦艦を建造と、潜水艦と植民地投資の赤字」
「赤字の度合が同じなら、どっちがいいか、計算すべきだろうな」
「本国の利益にならないような気がするが」
「植民地に城塞都市が建設されたら、投資を控えれば良いさ」
「あとは、勝手に大きくなっていくから自立させれば良い」
「まだ、始まったばかり、自立できるか、怪しいね」
「現地民を搾取してでも自立するだろうよ」
「諸侯は、朝鮮半島への移民が多いようだ」
「やはり、シベリア鉄道でドイツ本国と行き来しやすい事が大きいのでしょう」
「分家が大成するかは、微妙だがね」
「人口が6000万に膨れ上がったのだ」
「1000万くらいを移民させたところで問題ないだろう」
「我々にとって必要な資源が中国大陸にある。どうしても手に入れたいな」
「まったく」
「しかし、ロシアに戦艦を売却したのは、失敗でしたね」
「いや、戦艦売却が原因で、極東権益の安定の結果に繋がるのなら、それほど悪い手ではなかった」
「日本の外交戦略によって悪手にさせられた気がするね」
「なるほど、日本も手強いですな」
ウラジオストック港
ニコライ2世(ドイッチュラント)型戦艦 | 5隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
13191 | 127.6×22.2×8.22 | 16000 | 18 | 12kt/4800海里 |
40口径283mm砲連装2基 | 40口径170mm砲14門 | 450mm魚雷5基 |
ニコライ2世、アレクサンドル3世、アレクサンドル2世、ニコライ1世、アレクサンドル1世、 |
パーヴェル1世(ブラウンシュヴァイク)型戦艦 | 5隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
14167 | 128×22×7.9 | 17000 | 19 | 10kt/5000海里 |
40口径283mm砲連装4門 | 35口径170mm砲14門 | 450mm魚雷5基 |
パーヴェル1世、イヴァン6世、エリザヴェータ、ピョートル3世、エカチェリーナ2世、 |
インペラートル(ヴィッテルスバッハ)型戦艦 | 5隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
12798 | 126.8×22.7×8.2 | 15000 | 17 | 10kt/5000海里 |
40口径234mm砲4門 | 35口径150mm砲18門 | 450mm魚雷5基 |
インペラートル、ピョートル1世、エカチェリーナ1世、ピョートル2世、アンナ、 |
ロシア極東艦隊は、まだ、訓練が始まったばかり、
個艦の性能を発揮させるまで半年。
艦隊運用に半年が見込まれた。
しかし、最大の問題は、前提となる海軍士官が足らず。
養成に数年を要することと言える。
海軍士官抜きでは、戦艦も張り子の虎に過ぎず。
個艦性能も、艦隊運用も騙し騙しといえた。
救いがあるとすれば、日本海軍は財政難であること、
清国海軍より人材で勝っていることだった。
ピョートル大帝湾
ドイツ海軍士官の監視の下、戦艦 ニコライ2世がヨタヨタと走る。
将兵は、操艦のくせがつかめておらず。
時々、停止し、ドイツ海軍士官を憮然とさせ。
ロシア軍将兵が機関の調整を行う。
そう、極東ロシア海軍は、訓練途上だった。
艦橋のロシア海軍士官たち
「ロシア帝国海軍が再建したと思ったら、朝鮮半島がドイツ帝国領とはね」
「ロシア皇帝は、朝鮮半島に手を出さないと?」
「いま、ドイツとの開戦は避けたいらしい」
「実情を知ってるのか、知らないでいるのか、わからないが助かるね」
「政治的な思惑だよ」
「ふっ 士官から育てないといけないとはな。再建というには程遠い」
「だが、日本将兵は、三笠を自沈させたそうじゃないか」
「日本も無理をしている証拠だな」
「まぁ ロシア軍将兵が優秀だとしても。艦隊勤務に慣れた将兵は、日本が多い」
「当分、日本艦隊に勝てないよ」
「内情を教えなければロシア海軍は再建したと、日本と清国が思ってくれるさ」
「素人はともかく、実務者がそう思うわけないだろう」
「政治家の大多数は、素人だよ」
「そして、皇帝主権であれ、国民主権であれ、素人が国政を決める」
「だが、このままではロシア帝国は、東西ドイツに挟撃される」
「日本への攻撃は?」
「日本と敵対すれば、ドイツが利するよ」
「ドイツ人にキャスティングボードを渡すべきじゃないな」
「それに軍艦があれば、日本を支配できるとは限らないだろう」
「極東ロシア軍は、陸軍を日本本土に上陸させるだけの船舶がない」
「それに上陸させた部隊を食わせられるだけの船さえない」
「ドイツ海運は持って持ってそうだな」
「ドイツは、朝鮮、山東、遼東の半島権益が自立するまで戦争は避けるよ」
「だと良いがね」
ロシア帝国ウラジオストック艦隊の再建は、大日本帝国を窮地に陥れる。
ロシア極東艦隊は、日本海軍とほぼ同数に近く、
日本の外交政策を親米英寄りにさせ、
さらに朝鮮半島とドイツ領ニューギニアの権益を交換する機略を執らされ、
太平洋で得た北島ニューギニア領開発へ投資するのだった。
もっとも、再建された極東ロシア海軍、清国海軍に備え、
また、朝鮮半島のドイツ領に対し、少なからず防衛力が必要となり、
対馬、津軽、宗谷、関門の海峡要塞も強化されていく。
とはいえ、議会で決まった軍事予算内で、求められる大砲の砲数と設置数が決められ、
不足する予算を柔軟に解決しようとすると、取捨選択が迫られ、
取捨選択による軋轢で、軍内部は不協和音が多い様だ。
東京湾
香取型戦艦 | 2隻 | |||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | 兵員 | |
15950 | 139×23.8×8.2 | 16000 | 18.5 | 10kt/10000海里 | 864 |
40口径305mm砲連装2基 | 45口径254mm砲4門 | 45口径152mm砲12 | 450mm魚雷5基 |
香取、鹿島 |
イギリスで建造された香取型戦艦は、日本海軍に期待されている。
とはいえ、不意に陰る雲行きさえ、
日本の未来を不安で押し潰そうとしているかのように思わされる。
赤レンガの住人たち
「清国海軍の戦艦9隻と海防戦艦8隻は、清国独立を保つ上で役に立つだろう」
「清国海軍は旧式艦艇が多い、問題は、ロシア戦艦15隻の練度かな」
「いまのところ、大丈夫たと思うぞ」
「だがロシア極東艦隊に通商破壊作戦をやられると困るぞ」
「そういえば、速度は平均15ノット以上だったな。商船隊は逃げ切れない」
「日本海運は、補助金で商船隊18ノットを要求している」
「海運の赤字補填を国にやらせるなよ」
「海峡の要塞砲を強化する方が良くないか」
「金があればね」
「金と前例がなければ何もできん、お役所なところが腹が立つ」
「金があれば、悪しき前例を改めるべきだろうね」
「・・・薩摩、安芸、鞍馬、伊吹はどうするの?」
「大改装中だよ。元々、無理があったんじゃないか。国産で戦艦の建造なんて」
「それは言えるね。河内、摂津は?」
「延期だよ。たぶん、建造するとしたら、副砲を全部取っ払う事になるかもしれないな」
「のんびりだな」
「金がないからね」
「日本海側に鉄道を建設するのは、後ろ向きじゃないのか」
「戦艦の射程は限度があるからね」
「海上や海岸を支配できても内陸まで届かない」
「ロシア軍が1個師団を上陸させる頃、日本軍3個師団で囲んでいる」
「それに装甲列車なら上陸してきた敵に砲弾の雨を降らせられる」
「狭軌が狭過ぎるのでは、大砲を撃ったら引っくり返るわい」
「もっと大きな狭軌に変えろよ」
「それ言うと、軍の予算が食われる」
「後ろ向きが情けなか」
「とりあえず。アメリカが対ソ戦の矢面なら良いよ」
軍艦と軍艦で撃ち合うより、
浮沈の要塞で沈む軍艦と撃ち合う方が効率が良かった。
もっとも、軍艦は戦力を集中できる、
また、要塞は遊兵の最たるもので、余程の要衝でなければ建設されない。
そして、艦隊を分散され、不利な陣営で戦わされるより、
最初から要塞で分散している方がよいと考えられていく。
日露戦争の戦費は日本経済に重くのしかかり、
満州利権の満州利権の60パーセントをアメリカに引き渡しても不足だった。
時折、軍需の扇動に利用され、納得できない遺族関係者が立ち上がる。
そして、占領地利権に土地狂った軍需層と扇動された遺族に、理性的な声は通用しない。
アメリカに媚びを売ったと思われた。
“英霊の血を返せ!”
のプラカードが街路を押し進んでいた。
「・・・国力の差を理解すべきなんだろうがね」
「譲歩するとアメリカに占領される不安は大きいよ」
「じゃ なぜ、アメリカ合衆国は、メキシコ、カナダ、中南米を占領しないのだ?」
「メキシコと、中南米は、日本よりはるかに弱いのに」
「・・・・」
不正腐敗、匪賊、盗賊、人間不信、利己主義がとぐろを巻く中国大陸。
支那人民は、魑魅魍魎とか、百鬼夜行の類で、
大陸支配は、恐怖と利権でしかなされない。
西太后の飽くなき支配欲は、清朝を衰えさせ行く末を歪めさせていた。
その西太后死去後も、清朝は、大陸支配のため、
山東半島のドイツ帝国権益を認め、遼東半島(4割)権益も承認し、
ドイツ戦艦9隻、海防戦艦8隻を購入。
さらにドイツ軍装備を購入していた。
清国紫禁城
清朝の第12代皇帝宣統帝(せんとうてい)愛新覚羅溥儀(あいしんかくら ふぎ)は、1906年誕生の3歳児で、
清国は、1906年に立憲政府への移行に向かいつつあったものの、
清国の実権は醇親王(じゅんしんのう)愛新覚羅 載灃(あいしんかくら さいほう)など、皇族内閣に握られていた。
地方軍閥は、清朝の統制から離脱しつつあり、
清朝の命脈と求心力は、清国海軍再建と、
ドイツ軍装備をした3つ海軍師団により、辛うじて保たれていた。
清国北洋艦隊は、海軍部尚書、薩鎮氷(さつ ちんひょう)に率いられていた。
旧式とはいえ、10000トン級前ド級戦艦9隻は、中国沿岸で国威を示し、
3700トン級海防戦艦8隻は、揚子江を支配していた。
海軍は、力の信望者である列強の侵食を止め、
清朝の権力を保つことに成功していたのである。
清国は、旧態依然とした封建社会であったものの、
2000人にも及ぶ日本留学生の登用で、清国維新めいた改革も進む。
そして、崩れつつある清朝を立て直すため、
子飼いの軍閥(ドイツ軍新装備)に大規模な反乱掃討と、鎮圧戦を勅認し、
清朝権力体制を強化させようとしていた。
清国海軍 上海港
勇壮な戦艦に国旗が翻っていた。
太祖(カイザー・フリードリヒ3世)型戦艦 | 5隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
11599 | 125.2×20.4×8.2 | 14000 | 17 | 10kt/4500海里 |
40口径240mm砲連装4門 | 35口径150mm砲15門 | 450mm魚雷6基 |
太祖、太宗、崇徳、聖祖、世宗 |
高宗(ブランデンブルク)型戦艦 | 4隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
10013 | 115.7×19.5×7.8 | 9000 | 16 | 10kt/4500海里 |
40口径283mm砲連装2基 | 35口径283mm砲連装1基 | 35口径105mm砲6門 | 450mm魚雷6基 |
高宗、仁宗、宣宗、文宗 |
八旗(ジークフリード)型海防戦艦 | 8隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
3741 | 86.15×14.9×5.46 | 5000 | 15 | 10kt/3500海里 |
35口径240mm砲3基 | 30口径88mm砲10基 | 450mm魚雷3基 | |
正黄、鑲黄、正白、鑲白、正紅、鑲紅、正藍、鑲藍 |
そして、国旗とは別に “扶清滅倭” “扶清滅洋” の文字が翻る。
海防戦艦 正黄
僅か3741トン級と小型ながら、
欧米諸国の租界地に35口径240mm砲3基を向ける。
国家レベルの約束であるため、口実がなければ、撃つことはなかったものの、
口実さえあれば、欧米諸国の代理人に火砲を浴びせることができた。
純粋な戦力が国威を証明する。
正黄 艦橋
清国北洋艦隊、海軍部尚書 薩鎮氷(さつ ちんひょう)が立っていた。
「せっかく日本をいじめてやろうと思ったのに、日本は半島から逃げたある」
「台湾、琉球にちょっかいを掛けてやればいいある」
「その前に国内の滅洋をしたいある。あいつら清国の癌ある」
「ドイツ帝国は、戦艦を売却して弱っているある」
「山東半島を攻撃すれば、欧米列強に口実を与えるある」
「それにドイツ帝国に残っているド級戦艦は、もっと強いある」
「悔しいある」
「でも、これだけの戦艦があれば、列強の浸透を排することができるある」
「・・・無性に租界地の白人に大砲を撃ちたくなったある」
「もっと策略を使うある。ドイツ帝国、日本、ロシアを戦わせて漁夫の利を得るある」
「バカみたいに戦うのは日本だけで良いある」
「でも日本は、少し変わったある」
「んん・・・ 日本が大陸から退いたのは意外ある。姑息なくせに小癪ある」
「でも最大の問題は、清朝ある」
「第二次、戊戌の変法(ぼじゅつのへんぽう)(1898年)の可能性は高いある」
「しかし、漢民族は力にしか従わないある」
「日本人と違って紙切れに従わないある」
「それは、文盲が多くて字が読み書きできないからある」
「それに立憲政治は軍閥支配を脅かすある。抵抗が強いある」
清国艦隊が欧米列強の租界地、租借地の近海に出没する。
力の信望者は、力を見せつけられると礼儀正しく、紳士的なっていく。
欧米列強とも、権益を保持しようと前ド級戦艦を清国に派遣する。
とはいえ、ほとんどの列強は、中国沿岸近くに海軍の拠点がなく、
居続けることができない。
上海
13000トン級戦艦ミシシッピ、アイダホ
戦艦ミシシッピ 艦橋
アメリカ訪問艦隊は、清国艦隊と睨み合う
「清国艦隊の戦艦は9隻か、アメリカ人の保護どころか、負けそうだな」
「怖いのは、3700トン級の八旗型海防戦艦8隻ですよ」
「揚子江中流をあの海防戦艦に守られたら、手が出せない」
「練度が低いのが救いだが」
「今度は、ドイツ軍将校が就いているようです」
「座礁で自滅する可能性が低いわけか」
「マニラに艦隊基地を建設するので、もう少し戦艦を増援できるかもしれませんね」
「ふん、ばかばかしい。押し売り強盗ではあるまいし」
「艦隊を派遣して、どんな製品を売れば、利潤を上げられるというのだ」
「確かに割に合いませんね」
「ドイツ帝国の裏切りで列強は大損だ」
清国海軍は、国軍としての規範が曖昧であり、練度が低い、
戦力としての体もなかった。
しかし、清国戦艦が大砲を向けれると、
我が物顔で踏ん反り返っていた欧米人が大人しくなっていく。
日本首相官邸
先行きが不透明になると、権力配分者、縁故、根回し的な利害関係者だけでは不足し、
超常的な力があるとされる僧侶や山伏が呼ばれたりする。
それは別段珍しいことではなく、時には知識人であったりもする。
そして、首相官邸に怪しげな僧が呼ばれる。
「これは、腹黒和尚。よく来られた」
「田舎寺の僧侶を呼ばれるとは、なにか、お困りようですかな」
「日独権益交換であれこれ、疑問視されてまして・・・」
「なるほど、権力基盤が怪しくなっているわけですな」
「お、和尚!」
「まぁ まぁ 歯に着せず、言って貰う方がお互い分かり合えて良いでしょう」
「いつも、いつも、尻拭いで呼ばれてますからな。慣れましたよ」
「これからは、事前に呼んだ方が良かったですかな」
「自らの良識と裁量で国家を安寧させるのは、総理のお役目だ」
「坊主は、そこまで、傲慢ではありませんよ」
「そう言われると助かりますな」
「しかし、せっかく呼ばれましても、困ったことになっているような気はしませんが」
「それは、我々の行く末? それとも日本国の行く末ですかな?」
「どちらともです」
「し、しかし、野党は、騒いでますし、国民も浮足立っておりますし」
「本当に騒いでるのは、日独権益交換ではありませんな」
「日独権益交換は口実で。本当は自由民権運動でしょう」
「では、日独権益交換は、収まると?」
「農民から米を買って上げなさい。それで収まる」
「い、いやそれでは徳川幕府以来続いた」
「いえ、歴代幕府が続けた農民政策の生かさず殺さずが崩れてしまう」
「それにそのような金は政府にない」
「金は作ればよろしかろう。米価は、国が総量決めて、生産に応じて割り振ればよい」
「国家は税で天引き」
「資本家も農民にサービスすることで金の流れができる」
「んん・・・」
「詐欺の要領じゃよ。よくやってるじゃろう」
「んん・・・ しかし、腹黒和尚。それでは重農主義となってしまう」
「近代化は重商主義でなければ・・・」
「ある家の妻は、いつも隣の家と比較して、貧しいとか、腹を立て」
「自らは隣の裕福な妻の真似をし、自らを省みず働く事もなく、夫を罵り、子供に辛く当たる」
「その家は、食べて行くには、十分な所領がある」
「しかし、見えを張って贅沢をしたがる妻のせいで、家の中は、火の車、地獄になっていく」
「近代化、近代化という人間も、そういう妻と同じように見えるの」
「お、和尚! 総理に対し、口が過ぎますぞ」
「やれやれ、どうやら、嫌われたらしいの・・・」
「貧乏寺の僧は、田舎に引き取らせていただくよ」
僧侶は、首相官邸を出て行く。
日独権益交換は、日本国民の間で疑問視され、是非が付かず。
反発は、徐々に収まりつつあった。
少なくとも露清連合の矢面に立つのは、入植の始まったドイツ帝国に対してであり、
日本は、ドイツ帝国を支援しつつ、新領地の開拓を進めるのだった。
限られた軍事予算で軍の近代化が求められ、
南方開拓を行うため、再編成がされていく。
攻守に対応し得る師団編成から、建設守備旅団へと移行しつつあった。
「南樺太1個師団。北海道2師団。東北1個師団。関東2個師団」
「関西2個師団。中国1個師団。九州1個師団。台湾1個師団。ニューギニア1個師団」
「近衛師団を含めて、計13個師団か・・・」
「随分とすっきりしましたね」
「残りの13師団、14師団、15師団、16師団は、建設師団に変更か」
「といっても開拓師団といえるもので、政府が開拓事業を行い、小作人に払い下げます」
「地主は手足をもぎ取られるな。反発は?」
「総人口5000万。機械化を押し進めつつ、南洋に900万の小作人を移民させます」
「トラクターとかい言うやつか」
「余ってる軍馬に引かせる方が良くないのか?」
「無論ではありますが舶来物ですし、試してからの方が・・・」
「しかし、米補助貨幣制度は、使えるのかね。コメの品質は?」
「米の品質基準は定めています。一定の味は保てるかと」
「んん・・・ だが、ここにきて、重農主義は、まずいのではないかね」
「総理が試算してくれといった事で、官僚に言われては困りますよ」
「腹黒和尚のいうこと、真に受けてみるのも・・・」
「我々は、関わりたくないので、やるなら、総理の独善ということにしてください」
「そうもいくまい。不備はないかね」
「米の換金を政府が保証すれば、おのずとコメの増産が見込めますし」
「商人は、農民の持つ資本を得るために働くと思われます」
「農民に鉄と金が流れるのは・・・」
「だから、換金を保障する政府に必要とする税金を納めさせるんですよ」
「農民は、収入を得るために米を国に上げ、収穫に比例して税を取り立てるんです」
「なんか、一旦、金を渡して税で取り上げるのは、腹黒和尚の言うとおり、詐欺的だな」
「そうしないと政府と農民の格差が作れませんし」
「商人ばかりに美味しい思いをさせるのは・・・」
「しかし、金本位制でなければ、海外との取引は」
「どのみち、金も銀も必要な貨幣経済で足りないのです」
「変動相場で取引させればいいのでは?」
「どうせ、新領は、一旦は、口分田制ですし、いまは、移民を増やすべきでしょう」
「ふっ まるで・・・ 律令制国家日本だな」
「この際、五月蠅い社会運動家を新領に押し出してしまうべきでしょう」
「それで収まれば良いがな」
「米を輸出できる程度、増産が見込めれば外貨になると思われます」
「米の輸出ねぇ〜」
「ドイツ権益地でしたら、米より、麦、あるいは、ホップが良いかもしれませんが」
「それに日本は、人口が増えているので、自給自足は必要かと」
「このまま座して自給率を低下させれば、ロシア、清国の圧迫を受け」
「諸外国に日干しにされるでしょう」
「んん・・・」
ビスマルク諸島
徴用船から日本陸軍の整地部隊降りていく。
植民地の交換によって、日本は将兵60000と軍馬13000頭を先行投入し、
新領地に開拓事業を開始する。
開発で最重要は発電であり、水力発電の建設が進められていく。
耕作地で必要なのは、水路と道だった。
水路と道を塞げば土地は死ぬ。
農民たちの我田引水による利権の殺し合い。
土地の殺し合いによる経済損失は計り知れない。
新領地には、既得権益もなく、過去の経緯もなかった。
理想的な形で農耕地が建設されていく。
そして、土地を生かすため、第13建設師団が土地を開発していた。
朝鮮半島
景福宮にドイツ帝国の国旗が翻る。
朝鮮人民衆は、ドイツ人の将官に媚を売りつつ、
「ドイツ帝国、朝鮮、ロシア、清国の4ヵ国で、小日本を支配すれば、勝てるニダ」
「ドイツ帝国のアジア支配は、盤石ニダ」
小日本打倒を囁きかけ、去っていく
隣室から、ため息混じりの小男が呼ばれ、
「朝鮮人たちは、日本を支配したがってるぞ」
「言うと思いました・・・」
「どうしたものかな」
「ドイツ人による朝鮮半島の完全支配を容認しろと?」
「日本にとって得では?」
「ドイツにとってもでしょうね・・・」
10/26
南満州ハリマン・日本鉄道の建設は、ロシア帝国にも影響を与える。
それだけでなく朝鮮半島に権益を持つドイツ帝国も大きな利害となった。
伊藤博文、駐日ドイツ大使フォンシュワルツェンシュタイン。
駐日アメリカ大使グリスコム、ロシア蔵相ウラジーミル・ココツェフ
非公式会談が行われ・・・
ハルピン駅で銃声が響いた。
安重根が駐日ドイツ大使フォンシュワルツェンシュタインを射殺。
この朝鮮人による駐日ドイツ大使射殺事件は大騒動となり、
朝鮮権益拡大の口実をドイツ帝国に与える。
山東半島の権益拡大の切っ掛けとなった宣教師レベルの殺害でなく、
一国の代表を故意に殺害したのだった。
ドイツ帝国の朝鮮人殲滅計画を加速させてしまう。
安重根とその一味は捕らえられ、
場所柄、日独米露間で尋問される。
日本人の多くは、江戸時代生まれが多数派を占め、
明治維新のゴタゴタで浪花節とか、愚かな事に免疫があったりする。
なので、彼らを “韓国独立とアジア憂国。忠君愛国の士” という声もあり、
“低い視点狭い視野で狂信的な私情で暴発し、国難を作った愚か者”
という声もあがる。
駐日ドイツ大使は、カービン銃の銃弾で銃殺されていたにもかかわらず、
安重根が保持していたのは、拳銃という怪しい証言もあったり、
アメリカ系のキリスト教徒なのだからと、アメリカが疑われたり。
ドイツ帝国は、この暗殺事件を切っ掛けに朝鮮半島を併合させてしまう。
11/11 米海軍が真珠湾基地を建設
真珠湾
白レンガの住人たち
「日本とドイツの朝鮮半島と太平洋領を交換をどう思うね」
「日本側のアプローチのようです。情報部の判断では、混戦の計だとか」
「確かにドイツ帝国は、失いたくない海外領土を得てしまっている」
「数十年はドイツ帝国のウィークポイントとなりそうです」
「だが、その後は?」
「仮に3000万のドイツ人が住み着き、高度な近代国家を建設したとしたら・・・」
「国際外交戦略上、大きな特典となりそうです」
「ドイツは戦艦売却で山東半島の権益を広げ」
「日本は、朝鮮権益と北ニューギニア権益と交換か、日本人もロクな事をしないな」
「日本が独自の判断で東アジアに勢力均衡を作りだしたとすれば、面白いかもしれません」
12/04 大韓帝国の政治結社一進会が韓独合邦を要求する声明書を発する。
東京
「朝鮮半島は酷い事になったね。暗殺事件で権益どころか、亡国ものだよ」
「まぁ 少なく事も責任の所在は、暗殺した朝鮮人にあるからね」
「朝鮮人は、この手の謀略が好きで、強いものについて裏切るから」
「そういえば、ドイツ人に日本を占領して征服すべきだと囁いてるらしい」
「やっぱり」
「しかし、どうも怪しいな、1897年の曹州教案(そうしゅうきょうあん)事件と酷似してるような」
「自作自演で朝鮮半島の領有化か」
「というより、いろんな勢力が動いてる気がするね」
「しかし、ドイツ軍が朝鮮半島を権益地とするだけでなく、併合してしまうのは・・・」
「しょうがないよ。ユーラシア大陸をまたいで二つのドイツ帝国か、どうなることやら」
「それより、太平洋領の開発は?」
「入植は進んでいるよ。こっちは、入植者人口次第で領土化できる」
ソウル
ドイツ軍が朝鮮人の殲滅作戦を開始していた。
駐日ドイツ大使フォンシュワルツェンシュタインを暗殺した朝鮮民族の弾圧だった。
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月夜裏 野々香です。
ドイツ皇帝の心変わりは、全世界に対する影響が大きいようです。
さすが大国。
日本でいくら頑張っても、さざなみ。
腹黒和尚
まぁ なんというか、仏教に反していない範囲での助言でしょうか。
たぶん、不特定多数の坊さんが困窮する農民を助けたいと思っていたと思います。
自由民権運動の高まる中、
対応に窮した藩閥政府が腹黒和尚の言う事を真に受けます。
日本経済は、これまでの金の流れを逆転させました。
米融金融・循環方式
農民層がお金を持ち、政府と資本家がサービスで資本を回収していきます。
第01話 1908年 『皇帝ヴィルヘルム2世の心変わり』 |
第02話 1909年 『波 及』 |
第03話 1910年 『光の世界と闇の世界』 |