第03話 1910年 『光の世界と闇の世界』
暗く、臭い、闇の中、
犯罪の温床、悪の巣窟が広がっていた。
醜く、品性の欠片もないケルベロス、トロール、ゴブリン、オークがうごめき、
餓えた魔物たちは、家々を襲い始める。
「きゃー! 助けてぇ〜!」
「あははは、泣き喚いて、命乞いをしろ」
あれぇ〜〜〜!!!!!
闇の世界は広がり、勢力を増して光の世界を押し潰しつつあった。
闇が世界を支配しようとしていた。
光の世界は輝きを増しながら縮小していく、
掠奪者が刃物を振り上げ、いたいけな少女に・・・
「やめろ!」
「誰だ。お前たちは?」
「俺は、光の勇者パワー」
「俺は、光の魔法使いロウ」
「わたしは、光の弓師ウエルフ」
「俺は、光の番人フラッタリー」
「邪魔をするな!」
光の弓師ウエルフの矢が魔物を追い詰め、
光の魔法使いロウが呪縛魔法を掛け、
光の番人フラッタリーが魔物を襲撃を防ぎ、
光の勇者パワーの剣が魔物にとどめを刺していく、
そして、天空から光が差し込み、
天帝の声が聞こえる。
“光の勇者たちよ”
“闇の世界が3人の王によって統一され、力が増している”
“光の世界は力を付ける前に滅び、無に帰してしまうであろう”
“戦うのだ。光の戦士たちよ”
“悪の勢力。闇王ツリーゼン、魔王ディズィーズ、妖王パヴァティを倒すのだ”
「「「「御意」」」」
光の勇者たちは、闇の世界を冒険し、
正義、友情、勝利の方程式で、現れる悪魔、妖魔、獣たちを断罪していく、
光の勇者たちは、闇王ツリーゼンと戦い、
魔王ディズィーズの襲撃をかわし、
妖王パヴァティの罠を掻い潜る。
しかし、倒しても倒しても新たな悪魔、妖魔、獣群が現れ、正義の道を阻む。
そして・・・
「追い詰めたぞ、闇世界の支配者たち」
“くっそぉ〜”
“おのれ、光の勇者どもめ”
「観念しろ」
そのとき、天空から光が差し込む。
“待て、光の勇者たちよ”
「天帝!」
“もうよい”
“時は満ち、光の世界は、近代化の下地を育てることができた”
“闇王ツリーゼン、魔王ディズィーズ、妖王パヴァティよ”
“““・・・・・”””
“必要な事だったとはいえ、これまで、よく、耐えてくれた”
“新しい天の法により、闇の世界にも光を灯す事にしよう”
光の世界から光が降り注ぎ、
闇の中で、うごめいていたケルベロス、トロール、ゴブリン、オークは光に包まれ、
人の姿へと変わっていく、
「に、人間だ!」
「魔物が人間に・・・」
「こ、これは、いったい!」
“光の勇者たちよ”
“お前たちは、貧しい者を忌み嫌うあまり目が曇らされていたのだ”
“サンの国は、次の脅威まで富の格差を小さくできるであろう”
映写機がカラカラと回り、弁士の語りが終わる。
「「「「「・・・・・」」」」」
初期の資本主義は、近代化整備のため、搾取率が高く労働環境も悪い、
自然に光と闇の世界を作る。
1割も満たない権力富裕層は光の世界。あるいは正義の世界と呼ばれ、
9割を占める貧困層は闇の世界。あるいは悪の世界と呼び、疫病神の様に恐れられた。
貧富の格差が広がり、臭く、醜く、品性の欠片もない貧困層(トロール)は急速に増えて行く。
光の世界が眩しくなるにつれて、闇の世界も広がり、
共産主義が浸透しやすかった。
しかし、日本は、食管法の採用で最低米価が定まり、
農民層の収入は安定。
貧困層の底上げは、共産主義のワクチンとなったものの、
国権的で先鋭的な重工業近代化は失墜。
民権主導の軽工業底上げ産業へと移行していく。
大日本帝国は、極東ロシア海軍、清国海軍の再建により、
政治外交軍事上の窮地に陥る。
南満州鉄道権益6割のハリマン売却で外交上のバランスをたもうとしたものの足りず。
日独権益地交換で大陸権益を放棄し、活路を南洋新領土に求める。
さらに自由民権運動を押さえるため、食管予算を成立させ、内政を安定させつつ、
ドイツ極東移民需要に応じ、日本経済の活性化を試みていた。
とはいえ、欧米列強の軍事的な圧力に屈しない、最低限の戦力は必要だった。
建造中の戦艦の薩摩、安芸。
巡洋戦艦の鞍馬、伊吹の大規模な改造を余儀なくされる。
各種副砲は剥ぎ取られ、
艦首側に背負い式に305mm連装砲2基を配備。
辛うじて、ドレッドノート型と称されるに値する艦艇となっていた。
もっとも、代償として、副砲以下の大砲、魚雷が剥がされていく。
薩摩型戦艦 | 2隻 | |||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | 兵員 | |
22000 | 160×25×8.2 | 21600 | 22 | 10kt/10000海里 | 664 |
45口径305mm砲連装3基 | 45口径120mm単装砲8基 | ||
薩摩、安芸 |
鞍馬型巡洋戦艦 | 2隻 | |||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | 兵員 | |
18000 | 160×23×8 | 24000 | 23 | 10kt/10000海里 | 564 |
45口径305mm砲連装3基 | 45口径120mm連装砲8基 | ||
鞍馬、伊吹 |
赤レンガの住人たちが、建造中の戦艦をながめていた。
「随分とすっきりしたな。他の国ではカメ形に外側に主砲を亀甲型配置している」
「背負い式にすると重量物の重心が上に上がる」
「だから主砲塔を中心線上に配置しないと転覆しやすいからね」
「重量の問題で、副砲を外す結果になった」
「軍艦である前に船ってことか」
「船である前に軍艦だと思わないのか?」
「まさか、そんな妄想癖はないよ」
「次の河内、摂津は24000トン級になるよ」
「50口径305mm砲4基で前後2基背負い式になりそうだな」
「どちらにしろ。こういうゴタゴタは、やめにして欲しいね」
「ドイツがロシアに前ド級戦艦15隻を売却するからだ」
「あと、清国に前ド級戦艦9隻を売却した」
「いや、ドレッドノート型を開発したイギリスが悪い」
「トン数の割に兵装が小さくないか」
「北東ニューギニアまで行くのは大変なんだよ」
「なるほど・・・」
「どちらにしろ、欧米のド級戦艦には勝てそうにないな」
「むしろ、大陸に深入りしかねない陸軍を削減できて良かったと思うね」
「しかし、半島の石炭の輸入が不安定になって、機帆船が増えてしまったのが痛いね」
「帆船にエンジンを付けると燃費を抑えられるし、ニューギニアまで行きやすいんだよ」
「国が積極的に回帰することないと思うがね」
「持ち船がある方が渡航しやすいんだよ」
ドイツ帝国の朝鮮併合は、ドイツ人口移動だけでなく、軍の大規模な移動も進む。
それは、ドイツ本国が著しく脆弱な状態に置かれることを意味した。
ドイツ帝国は独墺同盟(1879年)を結んでいたものの、
露仏同盟(1894年)に挟撃され、英仏協商(1904年)、
さらには、英露協商によって、ドイツ包囲網(英仏露三国協商)が形成され、
ドイツ帝国は、工業化により、強国となりつつあったとはいえ、
外交戦略上、閉塞状態にあった。
狡猾なイギリス、小賢しいフランス、兵力底無しのロシア帝国と対峙するのは危険過ぎた。
ドイツ陸軍アルフレート・フォン・シュリーフェン伯爵・元帥・参謀総長は、苦肉の策を発案。
広大な国土を持つロシア帝国の動員が遅れると予測がついていた。
そこから、考えられた戦略は、開戦当初から全力でフランスを壊滅させ、
取って返す刀で、ロシア帝国に当たるというものだった。
しかし、ヴィルヘルム2世は、艦隊の売却によって、大海軍法、反英主義、膨張主義を放棄。
戦艦24隻・海防戦艦8隻の売却は、日本を窮地に追い込み、
それが日独権益地交換に至る。
ドイツ帝国は一旦放棄したはずの日の当たる場所を得ることに成功。
世界戦略で朝鮮・山東半島併合は悪くないとしても、
極東ドイツ移民は、人口減であり、ドイツ本国防衛で苦戦を強いられる。
シュリーフェン・プランの破綻だった。
シュリーフェンの後継者である、
ヘルムート・ヨハン・ルートヴィヒ・フォン・モルトケ伯爵参・謀長は窮し、
シュリーフェン・プランの放棄となった。
代案は、フランス国境のアルザス=ロレーヌと東部の東プロシアの要塞化だった。
ドイツ国防省は、防衛線の構築を計画し、
西部のヒンデンブルク・ライン
東部のグンビンネン・ライン
東西二つの防衛線を構築していく。
敵の第一撃を削ぎ、弱体化した時に反攻するものだった。
シュリーフェン・プランと違うのは、大規模な戦線構築が必要だったことにあった。
アメリカ・ドイツ租借地 遼東半島 大連港
アメリカ合衆国ハリマン鉄道は、遼東半島と南満州鉄道権益の6割を保有し、
残りの4割をドイツ帝国プロイセン鉄道が保有していた。
大連港をドイツ船舶とアメリカ船舶が埋め、物資を降ろしていく。
極東ドイツ権益拡大によって、アジア・極東情勢は安定しつつあり、
支配の安定は、貿易の拡大を求めさせ、
日本人を含め、各国の代理人が利益を上げようと大連に集まっていた。
この地でも、力を発揮できたのは、ユダヤ人と言えた。
「いや、日本人には参ったよ」
「赤字の南満州鉄道を経営させて」
「中国人に南満州鉄道に平行線鉄道を建設させて」
「両方とも収益2分の1で赤字にさせるだろう」
「あとは、女々しく利権にしがみつく日本と中国に金を貸し付けて財政を共倒れさせて」
「満州も、中国も、日本も、全部、アメリカ資本の狩り場にしてやろうと思ったのによ」
「手を引きやがんの」
「それどころか、日本は、自分の持ち株をドイツに売っちゃうんだぜ」
「くっそぉ〜 満州鉄道詐欺計画を台無しにしやがって・・・」
酒場
ドイツ人たちと日本人
「なんだ。日本人もユダヤ人に騙されたのか?」
「・・・・」 しょんぼり
「まぁ 毎度のことだから、気を落とすな」
「・・・・」 ぐっすん!
「ったくぅ いくら良い物を造れても、物の価値を決めるのは、いつもユダヤ人だ」
「物に値札を付けるのはユダヤ人だからね」
「あいつらは、金の使い方が上手い。魔法使いならぬ。金使いだな」
『お前らドイツ人だって、物使いじゃないか』
「奴らの金の使い方は、まるで錬金術か、魔法だよ」
「ドイツ人も、その魔法が使えず。いつもユダヤ人に負ける」
「ユダヤ人は、どうしてそんな魔法が使えるようになったんだ」
「国がないからさ。国に保護されていないから、金で身を守ろうとする」
「国を失ってから蓄積された金融ノウハウは大きいだろうね」
「資本主義は、ユダヤ人の牙城だよ」
「水魚の交わりで言うなら」
「魚は資本主義でユダヤ人。水は民主主義で、それ以外だな」
「面白くない」
「ドイツ帝国は、法によって資本主義を規制し」
「ユダヤ人のまじない商法から、ドイツ人の資産を守らなければならない・・・」
「よっ!」
いつの間にか初老のユダヤ人が酒場に入ってくると、
負け犬たちに呼びかける。
「「「・・・・」」」
「ひ・さ・し・ぶ・り」
「「「・・・・」」」
「つまり、ドイツ人は、法によって保護されている限り」
「ユダヤ人のような金使いにはなれないわけだ」 けらけら
「「「「・・・・・」」」」 むっすぅううう〜
別の席
「南極に行くんだ」
「ほぉ 日本人もやるじゃないか」
「それは何に?」
「なんだ? 白瀬は、スキーも知らずに南極探検に行くつもりか?」
ロシア人ピョートル・クズミッチ・コズロフの探検家が小馬鹿にしたように面白がる、
というか、あきれ果てる。
日本人の発想は、1902年の八甲田雪中行軍遭難事件から、あまり変わっていない。
「我々も、一緒に行くかね。手伝ってやれるぞ」
ロシア帝国は戦艦15隻を購入しても練度が低く。
さらに日本戦艦より質で劣っていた。
さらにドイツ帝国が三半島に取り付き、
清国の立憲君主制が進むと、
日本との関係も考えはじめる。
世界最大のロシア帝国は、慌てなくても良いのだ。
南樺太 (3万6090.3ku)
相対的に低下した日本海軍を補うため、陸軍第二守備師団が創設されていく。
北緯50度線は東西105kmに達し、ほとんどが山岳地帯と言えた。
ロシア軍の侵攻に対するというより、
社会基盤整備を目的とした建設師団とも言えた。
そして、師団を維持するため豊原100万都市建設が進められる。
第二師団は、夏の間に三角屋根の宿舎を建設していく。
「・・・とはいえ、人口100万人を支えるような産業じゃないんだけどな」
「漁業・林業・農業。あと、製紙業、炭鉱くらいか」
「食管予算で、農民たちが家を改築、新築しそうだから、林業は流行りそうだけど」
「工場は?」
「炭鉱があるから発電所は建設できそうだけどね」
「問題は、冬か・・・」
「免税で、なるべく大きな宿舎を建設すべきだろうね」
「上下水道が整備だし、ここなら長屋の10倍はマシだね」
この時期、食管予算で資本を手に入れる農民層の購買力を当てにして、
各種の産業が伸びようとしていた。
05/19
男が黒くて太いモノを若い女性の前に突き出した。
「いや!」
「は、はやく、これを口に銜えるんだ」
「い、いや!」
「いいから、銜えろ!」
「で、でも、あなたが・・・」
「お前が好きなんだ。だから銜えて欲しい」
男が無理やり女の口に黒いモノを押し付け・・・
「でも、わたし・・・ぅ・・」
女は黒く太いモノを口に入れる。
「さぁ はやく・・・ぅぅ・・・」
男は必死に息を止め堪える。
「・・・ぅぅ・・・だ、駄目だ・・・」
そして、白く、長いモノが夜空を横切っていく
「ぅ・・・く、空気が、空気がなくなる〜! ・・・・・」
!?
「あれ? 息ができる」
この時代、ゴム・チューブは少なく貴重品だった。
噂に惑わされた人間も多く。
ハレー彗星を余裕をもって楽しみ、
眺めることができた人間は幸せといえた。
大日本帝国の歳入3憶弱。日露戦争の戦費17憶。
列強への借款でようやく戦い抜き・・・
しかし、ドイツが大洋艦隊諦めると国際情勢が変わる。
前ド級戦艦15隻をロシア帝国に売却して、極東ロシア艦隊再建。
前ド級戦艦9隻、海防戦艦8隻を清国に売却して、清国海軍再建。
首相官邸
日本軍将校が陳情に来ていた。
「・・・海戦で敗北すると、そうなれば、万事休す」
「万事休す?」
「こ、国民が動揺することになりますし・・・」
「海戦で敗北すると日本国民は、戦意喪失するというのか?」
「い、いえ、そういうわけでは・・・」
「では、海戦で敗北すると帝国軍は、戦意喪失するというのか?」
「い、いえ、そういうわけでは・・・」
「ではなんだ?」
「海軍が敗北すると、日本本土が艦砲射撃されますし・・・」
「敵艦隊に艦砲射撃されると帝国軍は、負けるというのか?」
「いえ、艦砲射撃をされると国民に被害が・・・」
「日本国民は、艦砲射撃されると、戦わず降伏するというのか?」
「いえ、艦砲射撃をされた後は、本土に上陸されますし・・・」
「敵軍に上陸されると帝国軍は、負けるというのか?」
「いえ、上陸されると国民に被害が・・・」
「日本国民は、艦砲射撃される、敵軍に上陸されると、戦わず降伏するというのか?」
「い、いえ、そういうわけでは・・・ただ、国民が政府と帝国軍を不審するのではと・・・」
「じゃ 日本は、艦砲射撃され、上陸されると、日本国民と帝国軍は敵国に寝返るのか?」
「ま、まさか」
「それとも、敵前で日本国民同士で、不様に反目し合い、反乱が起きるとでも?」
「い、いえ、決して、そのような・・・」
「口実があれば帝国軍は下剋上するってか!」
「まさか、そんな」
「じゃ なんだ?」
「ですから、国防のため、軍事費の増大を・・・」
「はあ?」
「よ、予算を・・・」
「国を守ってやるから、金よこせってか?」
「いや、ですから・・・」
「貴様は、ヤクザか? あー!!」
「あ、あのう・・・日露清の戦力比が・・・」
「ふざけるな!!!!」
「社会資本を引きぬいて、食えなくなった国民は首をくくれってか?」
「ま、まさか」
「食べさせられなくなった子供は間引きで、娘は身売りしろってか!」
「い、いえ、そんな」
「貴様。まさか、財閥から金もらってないだろうな?」
「め、滅相もない」
「貴様。国に生活費が保障されているからって、デタラメするなよ」
「も、もちろんです」
「だったら、金を使わず頭を使え」
「は、はい」
「現予算で、日本を守れない無能なら、やめてしまえ!」
「・・・・」 ごっくん!
「予算を獲得できないから無能じゃないぞ」
「予算を取捨選択で削れない奴を無能というんだ」
「そんなに国を守りたかったらな」
「田畑売った金持ってくるか。辞職願を持ってこい!!!」
「・・・・」 しょんぼり
貧乏国日本、どこの省に対しても十分な予算はなかった。
『ちくしょう。金をくれない政府は無能だ』 × 複数の省の官僚たち & 財閥
国防上、窮地に陥った日本は、日英同盟の緊密化を図るため、
さらには38式歩兵銃をリー・エンフィールドへと換装。
口径 | 重量g | 銃身長/全長(mm) | 装弾 | 初速 | 射程 | |
リー・エンフィールド | 7.7mm×56R | 3.9 | 640/1130 | 10 | 744m/s | 918m |
38式 | 6.5mm×50 | 3730 | 797/1276 | 5 | 762m/s | 460m |
イギリス海軍の駐留を容認。
さらに艦齢8年度イギリス戦艦購入などを検討する。
農家
政府は決められた食管予算を割り振り、
税を除いた分を全国米生産量に対し支払う、
農民は生産比に応じて収益を得る、
一旦、農民層に資金が集まり、
農民たちが買い物に出かけると、
資本家たちは政府予算から、一斉に農民資本に意識が向かい、
商売で資金を回収していく。
これまでと、逆の経済システムについていけない資本家は急速に力を失って淘汰され、
対応できた資本家は、農民の衣食住需要に合わせ、業績を伸ばしていく。
政府も一旦、農民に渡した金を回収しようと、
交通、通信、輸送、学校など、公共投資を行い、需要を喚起させていく。
意外なことに、金の上下の流れが定まると、
農民たちは、付加価値の高い、米以外の商品作物を求め始め、
多種多様な食材も流通し、漁業、林業、住建、サービス業も増大していく。
日本の金本位制は、完全に崩れ、管理通貨制度に移行。
政府は、米の生産量、農民層の貯蓄率と消費需要を計算しつつ、
食管予算と税率を決めて行くだけで良かった。
政府、国内の金と銀を独占し、特定の資本家と取引を行い、
対外貿易で債務・債権で運用するようになっていく。
大蔵省
「こんなに赤字国債を先送りして大丈夫なのか?」
「極東ドイツ権益地の公共投資に入札できれば、金になるはずだよ」
「結局、安く上げるところに発注するから」
「だけど一旦膨れ上がった生産力はな・・・」
「極東ドイツ産業が大きくなって需要がなくなったとき、困るよ」
「その時は、採算性と工業力が身についてるから余剰資本で国内投資すれば・・・」
「そういうのをね、自転車操業とか、一寸先は闇とか言うんだよ」
「だって、近代化したいだろう」
「んん・・・食管予算か。良かったのか悪かったのか」
「農民向けの需要と、政府予算頼りの需要を当て込んだ資本家に分かれるだろうね」
「農民も、地域ごとの豊作と不作で収益が変わりそうだな」
「企業も農地開拓で安定収入を目指すかもしれないね」
「競争力の強い企業が参入だと、農民の配分が減るかも」
「しかし、金融を上手くやっても、日本に鉄と石炭はないよ」
「ドイツの移民需要で鉄と石炭は、入ってくるそうだ」
「しかし、ドイツが製鉄所を建設したら万事休すかも」
「本家が相手だと、分家の八幡製鉄所も勝てないだろうな」
「どうかな、清国は、極東ドイツを恐れ、鉄と石炭を日本に輸出している」
「極東ドイツという輸出先も増えたし」
「生糸のアメリカ・極東ドイツ輸出で、当分は、しのげるだろう」
「しのげればいいな」
東京湾
16000トン級客船ドイッチュラント 船橋
「お金持ち連中は、三半島の開発が進むまで日本で骨休めか」
「バイエルン王国、ヴュルテンベルク王国、バーデン大公国の侍従の話しだと、軽井沢は良いところですよ」
「しかし、朝鮮人労働者より、日本人労働者の方が使いやすいのは本当だろうか?」
「宣教師の報告が本当か、確認しなければなりませんね」
「日本人労働者を使うと高く付きそうだな」
「三半島合わせれば、約25万3000kuで欧州ドイツの約半分」
「あと3000万から5000万は、人口を増加させられますよ」
「取り敢えず、公共工事とは別に200万戸は建設しないと」
「それと、朝鮮の住宅は信頼できないことが多いようです」
「駐日ドイツ大使フォンシュワルツェンシュタインを殺害したのだから」
「・・・朝鮮人を使うのは面白くないがね」
「監視付きで、土地の造成くらいでしょう」
「どうせ、朝鮮人は、酷使して、絶滅させるのだろう」
「ええ・・・」
極東ドイツ権益拡大は、欧州・アジア航路を拡大させ、
その余波は、需要を作り、ドイツ資本と日本資本の交易に繋がる。
北ニューギニア
セビック川とラム川のを中心に日本の農業移民が進み、
鉄道が施設されていく。
車体幅の限度は、だいたい軌間の2.6倍未満になっていた。
1067mmは3000mm。
標準軌1435mmであれば、3700mmと限度が決まってしまう。
そして、日本は北ニューギニアの鉄道を標準軌1435mmで建設していく。
西のバニモから東のブナまで東西1400kmの路線が計画され。
さらに内陸側にも4000kmの線路が計画される。
そう、内陸防衛で問題となったのは、装甲列車であり、
大砲の大きさだった。
ラエ港
戦艦 “敷島”
装甲巡洋艦 “春日” “日進”
商船隊が並び、
多数の機帆船がラエ川を遡っていく。
「暑過ぎる〜」
「標高1500mを超えると涼しくなるよ」
「はぁ〜」
日本軍海軍将兵は、青々とした山頂を見上げる
「大日本帝国の国力では、手にあまりそうだな」
「もう、メッキが剥がれているのだから “大” はいらないと思うよ」
「夜郎自大の妄想癖を育てるだけだよ」
「き、気持ちの問題じゃないの」
「気持ちねぇ〜 見栄っ張り過ぎて、逆に恥ずかしくなるわ」
「とりあえずだ。発電用のダムを造るのが先決だな」
「日本以上の水力発電になるはずだ」
「電気がないと人が寄り付かないからね」
「逆に言うと電気があれば、人は寄り付くね」
「後は、30万規模の都市を10ヵ所ほど作れば自動的に増殖しないか?」
「田畑と家を整備すれば人は来るよ。特に貧民層の1000万はね」
「1000万だと、だいたい200万戸だ。連中のために予算を使うのを渋ってる勢力があるよ」
「不動産関係をやると動く金が大きいからヤクザが関わってくるからな」
「介入させないようにするには、規律の高い警官を配置すればいいけどね」
「いや、どっちかって言うと裏で動いている連中がいるからな」
「ヤクザを近所に住まわせるだけで土地・家賃価格を下落させるから、人によっては便利に使う」
「人に迷惑をかけても金になるなら笑いが止まらんだろうね」
「土地を下落させてやれば、良いさ」
「土地の下落を嫌ってる人間もいるからね」
「どちらにしろ、余裕ができたら高原側に生活の拠点を移して、城下町でも造るか」
「平安京とか、平城京が良いよ」
「それか、同心円で環状線の形で・・・」
「でも、こういうところは、伝染病が怖いからね」
「原住民もね」
「まぁ 朝鮮半島と違って、人口が少ないから何とかなるでしょう」
「しかし、戦意低そうな島だな」
「軍事費が増大しないと、兵隊は増えない」
「兵隊が増えないと兵数当たりの地位はないから、出世できそうにないね」
「師団長のやつ、根性ねぇから軍事費増大もなさそうだし、出世も見込み薄すだな」
「そういえば、食管予算のおかげで、不作買い占めで儲けられないって、おじきがぼやいてたっけ」
「儲かるの?」
「そりゃ 不作の時に米を買い占めれば、ぼろいよ」
「数年分の利益が転がり込むから、やめられねって」
「じゃ 薄利多売で、しこしこ稼ぐしかないじゃん」
「商人は寡頭化できないと市場が安定しないし、聖域に入れないから辛いよね」
「だろうね」
アメリカ・ドイツ租借地 遼東半島
大連港
ミシシッピ型戦艦 | 2隻 | |||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | 兵員 | |
13000 | 116.43×23.47×7.49 | 10000 | 17 | 10kt/5750海里 | 744 |
45口径305mm砲連装2基 | 45口径203mm連装砲4基 | 44口径178mm8門 | 533魚雷×2 |
ミシシッピ、アイダホ |
ミシシッピ 艦橋
「いやはや、せっかく、中国大陸に取り付いたかと思ったら、ドイツと満州鉄道経営とはね」
「やれやれ、日本人もやってくれるよ」
「しかもドイツ領の山東半島と朝鮮半島に挟撃されてしまうとはな・・・」
「とりあえず、ドイツ移民需要は大きそうだな」
「日本に発注するのが、一番安い気がするな」
「ドイツもそうしているようだ」
「日本に満州開発をやらせて、経営不能にさせて、掠め取るんじゃなかったのか?」
「大陸鉄道経営じゃ 常套手段だったのにな・・・日本人にバレたかな?」
「日本人を未開人に毛が生えた程度と思って舐めてかかったからだ」
「まさか、自分で開発しなければならないとはね」
「まぁ ドイツと手を組んで開発なら、悪くないだろう」
「だと良いが・・・」
「日本人の姦計でヤバい場所にドイツ帝国と手錠を繋がれたみたいで、俺は嫌だね」
「あははは・・・」
「薩摩型2隻、鞍馬型2隻は、かなり強い艦艇らしいぞ」
「主砲が1.5倍で50割増しだったな」
「ドレッドノート型は305mm連装砲5基で10門。主砲換算だと、2.5倍。比べれば低いものだ」
「全長が伸ばされているようだが機関が狭められているのか」
「主砲を1基増やして、副砲を剥がし、余計なモノを両舷側に配置したらしい」
「不都合は?」
「元々、船体が長い方だから、それほど、深刻でなさそうだ」
「アメリカ海軍は改造しなくてもいいのか?」
「アメリカは、鉄も石炭も腐るほどある、新しく建造する方がいいだろう」
朝鮮人が追い立てられ、
ドイツ駐留軍が家屋を建設していく。
マルクが流通し、朝鮮のお金は価値のないモノにされていた。
日独親善半島旅行ツアーが組まれていた。
生存圏が追い詰められた朝鮮人の知り合いができると、
「ここにもいくニダ」
「ここにもいくニダ」
「いや、もういかないと」 ドイツ人
「うん」 日本人
「ケンチャナ、ケンチャナ」
と、日程を捻じ曲げ、
旅行のスケジュールがチグハグになっていく。
「駄目ニダ」
「友達ニダ!」
「駄目ニダ」
「友達ニダ!!」
「駄目ニダ」
「友達ニダ!!!」
「わ、わかったニダ・・・」
「良かったニダ。間にあったニダ」 鼻高々、エクスタシー〜!!
『朝鮮人は、いつもこんなことやってるのか』
『うん、昔から、仕切るのが好きなんだ』
『というか、自己満足と優越感を得るため、自業自得で危機的状況を作ってないか?』
『思い通りになると、自尊心が震えるほど嬉しいらしいよ』
『日本人は、スケジュール通りに進めることで評価され』
『朝鮮人は、規則を捻じ曲げることで評価されるんだな』
『押しの強さなら朝鮮人は、アジア一かもね』
はぁ〜 × 2
08/22 ドイツ帝国が朝鮮併合。
平壌は戒厳令下にあった。
ドイツ軍が朝鮮人を鎮圧し、
独韓代表が独韓併合の調印を行う。
日本人がオブザーバーとして見ていた。
知己の一進会が助けて欲しげな表情を向け、
日本人は知らんぷり、
外を見るとゴミ溜めの様な世界が広がっていた。
ドイツ人がゴミ溜めの世界を綺麗にしてくれるのなら、何でも良いという気分にさせる。
「大使を殺すと、占領なんて酷い話しだ」
「未開人と思われたのだろう」
「アメリカもアジア人をインディアン程度にしか思っていない」
「これで、極東に第二のドイツ帝国が建設されるな」
「朝鮮半島が青島の様に綺麗になるのなら歓迎ですがね」
「朝鮮半島は禿山ばかりだからな」
「オンドルで根こそぎ出そうですよ」
「そりゃ 寒い時にオンドルは気持ちが良いがね」
「根っこまで抜かれると、山は禿げるだろうな
「日本の企業が電熱でオンドルを東北・北海道でやってみるとか」
「感電しないのか?」
「さぁ・・・」
「民間も資金繰りがついて羽振りが良くなったモノだ」
「軍事費削減と米換金制度で、社会資本と労働者で余裕が出来たのでしょう」
「農民に金を渡して、政府が税で、商人が商売で集めるわけか」
「本当に回っているのかね」
「衣食住を中心に社会基盤が拡大しつつあるようです」
「だと良いがね」
「しかし、国際情勢を見ると、ドイツ帝国は、黄海・渤海を支配してしまうな」
「南満州鉄道のアメリカもさぞ窮屈でしょうな」
「威海衛のイギリスもだろう」
「どうするか見ものだな」
調印が終わり、
ぱちっ ぱちっ ぱちっ ぱちっ
ぱちっ ぱちっ ぱちっ ぱちっ
ドイツ帝国は圧倒的な国力で三半島(山東・遼東・朝鮮)を開発し、
近代化を推し進めようとしていた。
ドイツ人は、元々の名称に
“リン” “ガルト” “ブルク” “ゼン” “ルッツ” “デン”
を付けたり、
故郷に由来のある名称を付けたり、地名を変えて行く。
ソウルはソウルブルグとなり、
ピョンヤンはピョンゼンにされ、
プサンはプサンガルトにされてしまう。
ドイツ風のロマネスク様式、ゴシック様式、ロココ様式の建物が次々に建設され、
そして、日本との賃金格差は大きく、日本に資材が発注される。
極東ドイツの近代化を恐れた清国は、日本に鉄と石炭を輸出し、
国力を整備しようと試み、
日本は、綱渡りながらも外貨と鉱物資源を輸入し、
近代化を推し進めていた。
ポナペ島 (330ku、標高798m)
自給自足できる島を守ることは、それほど難しいわけではない。
山頂付近に戦艦の主砲を配置するだけで十分と言えた。
日本軍将校たち
「戦艦を建造する方が好みなんだがね」
「生憎、日本本土の近くにロシア帝国、ドイツ帝国、アメリカ合衆国が迫っていてね」
「戦艦を派遣するのは、ほぼ不可能なんだよ」
「なるほど」
「それに大陸から引き揚げて陸軍が余剰でね」
「ポナペなら標高798mだ。100km先でも見渡せる」
「見晴らしが良くても、射程は25000mちょいか」
「いや、戦艦なら仰角25度だけど、要塞だと重量の制約がないからね」
「山頂近辺に上げて、仰角45度なら、もっと射程を延ばせるよ。35000mはいけそうだ」
「山頂まで誰が大砲を持ち上げると?」
「まぁ 上手くやるでしょう」
「・・・で・・・何基配置するつもりだ?」
「8基。それだけあれば、守れるだろう」
「戦艦の建造費の3割から4割は、兵装だぞ。つまり、8基だと、2隻分の建造費か」
「燃料は消費しなくてもいいし、訓練費用も省ける」
「まぁ 上陸作戦はできないだろうね。十分ではあるよ」
「あとは、トラック、パラオ、サイパン、テニアン、ロタ・・・」
「随分あるな」
「日本と北ニューギニアを繋ぐ回路だからね」
「随分、余裕だな」
「実のところ、1基1000トンでも4基で8000トンで済む」
「後は潜水艦でも配備しとけば守れるだろう」
「戦艦は?」
「公共投資で金を取られて、戦艦の建造が河内と摂津で打ち止めになりそうでな」
「何で?」
「アメリカとドイツ帝国の発注が増えてな、早急に電力を作りたいんだと」
「やれやれ、窓際で干された部署に金が回ってくるとはね」
「日本沿岸の大砲は全てこっちに移されてくるよ」
「地元から離れると、嫌がるんじゃないか? 出世街道から外れる」
「そんな生活保障狙いの地縛霊軍官僚は、辞めていいよ」
関東大水害
死者・行方不明者数1379人、
全壊・流出家屋約5000戸、床上・床下浸水約51万8000戸、
堤防決壊7266箇所
役所の人たち
「酷い台風だったねぇ」
「でも、北東ニューギニア移民の弾みになるよ」
「だと良いけど」
「再建はどうするんだろう」
「10パーセントくらいは余裕あるらしいから」
「食管予算の繰越金とか、年末調整分でやり繰りするかも」
「刈り入れ前だから、もっと余裕があるかも」
「ふっ」
ブラジル
サントス港
日独権益地交換後、
日本政府は、ブラジル移民より、北東ニューギニア移民に力を入れ始めていた。
もっとも、第一陣800人は、そのまま、サントス港に到着し、
農場に移民していく。
とはいえ、日本政府は、中国大陸の足場を失い、
生存圏の保障を求めて、大国ブラジルに関心を示し、工作員を送り込む。
工作員たち
「あれが、ブラジルの戦艦か・・・」
「イギリス製だよ」
19280トン級ミナス・ジェライス型戦艦
45口径305mm連装砲6基、50口径120mm単装砲22基、37mm砲8基
戦艦ミナス・ジェライス、サン・パウロの2隻が遊弋していた。
「薩摩型戦艦45口径305mm連装砲3基で22000トン級だからな」
「ミナス・ジェライス型戦艦は、世界最強の戦艦に分類されるね」
「作戦能力は薩摩型の方があるよ」
「だけど、ブラジルもお金持ちだな」
「アメリカがアルゼンチン向けに戦艦を建造したらしいよ」
「27720トン級リバダビア型戦艦2隻。完成は1915年だそうだ」
「どちらにしろ、アメリカとイギリスは戦艦の建造で大儲けだ。羨ましいね」
「南米でブラジルとアルゼンチンで戦争する気かな」
「どうだろう。一周りしたけど、政府はともかく、ブラジル国民は・・・」
「ふっ ブラジル人は、国家のために死ぬ気はないな」
「日本じゃ非国民は、村八分で生き地獄だけど、これだけ広ければ、大丈夫だろう」
「というより、ラテン系の気質だな」
「しかし、南米諸国と貿易しようと思えば、10000トン級の商船じゃないと厳しいな」
「南米諸国との取引自体信頼性に欠けるし」
「それを含めると、6000トン級の笠戸丸じゃ採算に合わないか」
「笠戸丸自体がイギリス製で、ロシアの捕獲船だろう」
「まぁ 日本もようやく6000トン級商船隊の建造が始まったばかりだ」
「もっと大型の商船を作るべきだが、ブラジルにも足場が欲しい」
「アジアの利権から追い出されたし。移民した日本人でブラジルに足場を築くか」
「まぁ それが良いかもしれないが、大型商船が必要になるな」
「南洋移民の予算は大きい。大型商船の建造はできるさ」
アメリカ合衆国の移民経済は、巨大客船を建造させた。
そして、ドイツ帝国の極東ドイツ建設も巨大客船需要をもたらしていた。
客船を安く作り、人と物資を運べば金が転がり込む。
イギリスが巨大貨客船を建造すると列強も巨大船を建造し、利益を得ようとする。
客船 モーリタニア 1906年〜 | |||||
排水量 | 全長×全幅 | hp | 速度 | 乗務員 | 乗客 |
31938 | 240.8m×26.8m | 68000 | 28 | 802 | 2165 |
日本人たちが乗っていた。
「欧米諸国より安く客船を建造出来れば収益になるわけか」
「農民に金を渡すから、資金回収用で客船も必要になるし」
「ふっ 軍艦が造れねぇ」
「客船だって30000トン級なんて、建造したことないだろう」
「イギリスの新型客船オリンピック型は52000トン級だそうだ」
「勝てねぇ」
「しかし、喜望峰回りの大型客船の需要が大きければ・・・」
「極東ドイツの移民を助けてしまうことになるな」
「面白くはないが金になる」
「日本の造船所を考えると、25000トン級客船がせいぜいだな」
「まぁ 客船の船殻なら、戦艦の装甲より、容易に製造できるだろう」
「問題は日本経済の金の流れが変わったことだ」
「国民の意識が工業化より、農業重視に向かうことだよ」
「人材も資本も資材もそちらに流れる」
「食管予算で相場を決めるのは政府だし、農民を縛るのは自由だ」
「それほど、酷くはないだろう」
「しかし、戦艦より、客船に意識が行くようじゃな・・・」
「戦艦は金を作れない。だけど、客船は金を作れるだろう」
「黒字ならね」
「ドイツ人の数千万の移民だよ。日本の南洋移民を合わせれば大きいだろう」
「それに三半島の食料生産が軌道に乗るまで、食糧輸出は弾みが付く」
「農業に力を入れるのも悪くないだろう」
「日本経済が欲しいのは金だからね」
「農業も、鉄と石炭で作るようになるさ」
日本の某工場
ドイツ人が専用の機械で批判気味に部品を検査していた。
「もう少し、均一に作れよ」
「済みません」
「電圧が安定してねぇ」
「水力発電所を建設してるそうです」
「いつ完成するんだよ」 あきれ
「・・・・」
「火力発電所を造れ、まだ早い」
P8形機関車の部品が製造がされていた。
日本の工業力は、初期だったにもかかわらず、
心臓部以外であれば、なんとか、ドイツの規格部品を製造することができた。
ドイツ極東権益需要が電力需要の呼び水になり、水力発電建設が推し進められ、
日本の工業製品規格を向上させ、
日本の鉄道を狭軌1067mmから標準軌1435mmに変えさせていく。
代々木練兵場
アンリ・ファルマン機(フランス製)の徳川好敏大尉と、
グラーデ機(ドイツ製)の日野熊蔵大尉は、日本初飛行に成功する。
「予算が付くかな?」
「敵に上陸されたら、こいつで地上支援すれば、勝てるかも」
「じゃ その線で予算を・・・」
「軍はピリピリしてるから、無理そう」
「軍艦より、客船か・・・」
「ドイツ極東需要は、そんなに大きいのか?」
「さぁ ドイツ人は1000万くらい移住して」
「総生産の3分の1くらいのを投入するらしいから」
「そんな、移住需要なんて極東ドイツ産業が出来上がるまでだろう」
「それを過ぎたら、設備投資した産業は供給先を失って、社員の首切り」
「下手をしたら倒産だよ」
「その時は、軍であろうと民であろうと自業自得だよ」
「諦めて半分の首切って、潰して、低賃金からやり直すだろうな」
「それだって、供給先が見つかるか、別だろう?」
「農民層が金を持ち始めたからね。そっちの需要に流れそう」
「ますます、軍に人材も金も回ってこねぇ」
「その代り、政府は、戦争になったら武器を配るから民兵で戦えだと」
「嫌だぜ、素人に後ろから撃たれるの、あぶねぇ」
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月夜裏 野々香です。
史実で日本にスキーが導入されたのは遅く、
1911年 オーストリア軍のレルヒ少佐を招いてからです。
教わることに金をケチるとロクな事になりません。
少なくとも、白瀬の南極探検は、国の資金援助とスキーは得られそう。
もっとも練習不足は目に見えているので、史実より少しだけマシな程度か。
この時期のスキー術は、杖1本だけ。
世界的にみると大きな変革は、ドイツ帝国のシュリーフェン・プラン放棄でしょう。
やっぱり、ドイツ帝国が変わると世界の変革が大きいこと大きいこと。
そして、ドイツ極東移民は、ドイツ系アメリカ移民を減少させて弱体化、
極東ドイツ圏需要は、商船需要、鉄道重要を興し、
日本経済のカンフル剤になるでしょうか。
この世界の大日本帝国。
食管予算と公共投資で予算を食われてしまい。
日本帝国国防大綱。
海軍 日 > 露 > 清 > 独 (西太平洋限定)
陸軍 守備師団13個 + 建設師団4個 + 民兵(小銃 200万丁分)
空軍 まだまだ
第02話 1909年 『波 及』 |
第03話 1910年 『光の世界と闇の世界』 |
第04話 1911年 『満韓喘惜(まんかんぜんせき)』 |