月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想歴史 『風が吹けば・・・』

 

 

第10話 1917年 『盛者必衰の・・・』

 人が権力を求めると、

 利害の一致する体制と、不利益となって敵対する反体制に分かれ、

 人が富を求めると、

 利権に預かる少数の富裕層と、利権から外れた多数の貧困層が生まれる。

 国家が法を整備し、社会基盤を安定させようとすると、

 自動的に差別と貧富の格差が生まれる。

 社会格差の対象は、世襲、地域、人種、宗教、職種など国と地域によって様々であり、

 格差から生じる軋轢を押さえつけ、国民国家を保つは、至難といえる、

 権力を保つため、圧政、反逆、外征、内戦を繰り広げつつ国家の分裂を防ぎ、

 国民の傲慢、嫉妬、暴食、色欲、怠惰、貪欲、憤怒を正し、

 民の反感、反発、無気力、無能を防ぎつつ国力を増強する。

 国家は、他国の謀略、外圧、侵略を防ぎ、

 国内の反抗を凌ぎ、蜂起を鎮圧しつつ、忠誠と奉仕を国民に強制し、

 他国の干渉を退け、

 自らの国力で道路、橋、鉄道、艦船、発電所など近代化を成し遂げ、

 軍事的脅威から国家の独立を勝ち得えるのである。

 

 

 イギリス人は、外征と支配を勝ち取ることでパックスブリタニカを成し遂げ、

 世界最強と言われる国際的な地位を保っていた。

 そして、そのイギリスを興した原動力は、確かにイギリス人にあった。

 大航海で先行するスペイン、ポルトガルを追い付き、

 競り合うオランダ、フランスを追い落としを成した力は、人によるものだった。

 イギリスが世界各地で勝ち得た植民地は大きく。

 イギリスの産業革命は、1760年から興った毛織物工業から始まる。

 大英帝国の覇権は、アメリカ合衆国の独立で一時低迷。

 しかし、イギリス産業と海洋支配は、ナポレオンの大陸封鎖に耐え、

 最終的にナポレオンの覇権を挫く事に成功する。

 イギリス海洋支配は1850年以降に頂点に達し、

 世界の陸地の4分の1を支配し続けた。

 とはいえ、莫大な富を集約しても、貧富の格差は広がるばかりであり、

 貴族社会の世襲、権威主義、莫大な富は、貴族を尊大にさせ、

 貴族意識は、大多数の国民を蔑視し、平民を卑屈にさせ、

 社会を貴族と非貴族の二つに切り離してしまう、

 産業革命で利便性が高まると貴族たちは、安楽で贅沢であろうとし、

 イギリス国民の傲慢、嫉妬、暴食、色欲、怠惰、貪欲、憤怒を増長させ、

 海運業など汚い仕事や投機に近い冒険を忌み、

 衰退がはじまろうとしていた。

 貧富の格差は広がり、治安は悪化しつつあった。

 フランス革命の国民による王朝の殺害は、イギリス貴族をして恐れさせ、

 自由民主主義の台頭と、アメリカ合衆国の宗主国イギリスの排斥、

 二つの事件は、イギリス階級社会の軋轢を崩壊させ兼ねなかった。

 イギリス貴族は、権勢を守り、富を内向きに誇ることに夢中になった。

 工業技術の発達は、富の集約に引き寄せられた事で大成し、

 蒸気機関を有する艦船と鉄道で結実する。

 支配の分離と富の分配を避け、海外投資は縮小し、

 植民地搾取は吸い上げるばかりとなって増大し、

 現地民のイギリス人に対する反発も大きくなっていく、

 そして、自業自得とはいえ、

 技術革新のたびにスタートラインが引き戻させられた。

 鉄と石炭を原料とする工業力を国家基盤に置くなら、

 パックスブリタニカは、成り立たなくなっていた。

 ドイツ帝国は、国内統一を果たすと、

 鉄鉱石と石炭生産を背景にした工業力を興していく、

 “ドイツ統一は、自由主義でなく、鉄と血によって解決する”

 ビスマルク宰相の言葉は、ドイツ帝国を体現し、

 増加する人口と溜めこんだエネルギーを国外に向けようとしていた。

 ドイツの鉄鋼生産は、イギリスの2倍に達し、海外膨張に乗り出していく。

 アメリカ合衆国も、国民の自由と権利を保障することで民衆の活力を最大限に集め、

 アメリカの鉄鋼生産は、イギリスの4倍に達し、追い抜いていた。

 無尽蔵と思える資源、労働者、市場がアメリカ合衆国を支え、

 国力は急速に増大していた。

 鉄は国家なりと単純に計算するなら、

 ドイツ帝国は、イギリスの2倍強の軍艦を建造できるということであり、

 アメリカは、イギリスの5倍以上の軍艦を建造できることだった。

 世界第2位と第3位を合わせた海軍力の同等以上を目指した、

 イギリスの国防大綱の二国標準主義は、完全に崩れ・・・

 

 

 日本は国力増大に伴い、官僚は、聖域を拡大しつつあった。

 国民に物乞い官僚と非難され、

 政府にボイコット官僚と囁かれ、

 一般的に恐喝官僚と恐れられていた時代。

 良しにつけ、悪しきにつけ、

 人が我が侭を押し通そうとするときの過程と言える。

 しかし、役職上、自制しないと国が傾く事があり・・・・

 01/14

 装甲巡洋艦 筑波 爆沈

筑波型装甲巡洋艦 2隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離 水上機 兵員
18000 160×23×8 31000 28 10kt/10000海里 2機 564
50口径234mm3連装2基 50口径120mm連装砲8基   50口径356mm連装艦首・艦尾砲
筑波、生駒

 赤レンガの住人たちが調査のため同型艦の生駒に搭乗する。

 艦首に立つと先端が薄いアルミで作られているのが分かる。

 間違って艦主砲が撃たれても砲弾は、アルミ板を吹き飛ばして、飛んでいく。

 縦列に2連装砲身が埋め込まれ砲口部が固定され、

 閉鎖機側が下降することで仰角が得られ、上昇することで砲身は水平となっていく。

 筑波の爆沈は、弾薬庫らしく、ほぼ水平に沈んでおり、

 艦首側・艦尾側の大砲では、なさそうに思えた。

 「・・・放火だよね」

 「たぶんね」

 「また言われるよ」

 「なぁなぁは、ないかな」

 「無理そう・・・」

 「昔は、和を尊ぶ同好会日本だったじゃないか」

 「近代化で競争が激しくなって、殺伐としてきたからね」

 「軍隊は、先任主義と年功序列で規律重視。波風立てずで競争のない社会がいいよ」

 「大陸権益防衛がないと陸軍は頼りにされてないし」

 「海運業は、採算で収益を上げてるし、海軍叩きが始まりそうだな」

 「もう、どうしようもないな」

 「「「・・・・」」」

 

 

 01/17

 アメリカ合衆国がデンマークからヴァージン諸島を2500万ドルで買収

 

 

 02/02

 第4次日英同盟調印

 日本はイギリス規格を採用し、共通化が図られた。

 比較的安い価格でエンフィールド小銃60万丁、

 ヴィッカース重機関銃5万丁の供給を受ける。

  口径 銃身/全長 装弾数 重量g 初速 発射速度 射程距離
エンフィールド 7.7mm×56R 640/1130 10 3900 744m/s   918m
ヴィッカース重機関銃 7.7mm×56R 720/1100 250 50000   450〜600 740m
エンフィールド改 7.7mm×56R 640/1100 10 3700 700m/s   618m
               

 3.7インチ山岳榴弾砲(94mm砲)、4インチ榴弾砲(101mm砲) 

 4.5インチ榴弾砲(114.3mm砲)、4.7インチ砲(119mm砲)、

 60ポンド・5インチ砲(127mm砲)、6インチ砲(152.4mm)、  

 QF BL 8インチ榴弾砲(203.2mm砲)

 他にも各種口径砲があり、

 イギリス規格を採用する約束で、一部、大砲と弾薬の供給を受け、

 日本製の大砲が製造されても、同じ砲弾を使うことが義務付けられる。

 無論、日英同盟の強化は選択の余地が狭まり、

 良い面もあれば悪い面もあった。

 斜陽の大英帝国と噂されており、

 既に最盛期は去っていると言っても過言でなく。

 パックスブリタニカは隆盛極める権勢でなく、

 形骸化された既得権益の上に座した病める老害ともいえた。

 そのイギリスは、東アジアの成り上がり、日本帝国と組んでいた。

 これは、国際情勢の流れで形成された歴史的な選択肢の一つであり・・・

 銃声が響く

 日本で試作されたエンフィールド改だった。

 減装弾は700m/sほどで、反動が小さく命中させやすかった。

 「お辞儀しやがる、38式に比べて射程が短くなるな」

 「減装弾だからね。イギリスのもあるよ。744m/s」

 「トラックを撃ち抜く時に使うべきだろうね」

 「38式はどうするの?」

 「予備として保管するか」

 「レジャーとか、狩猟用で人気があるから調整しながら売ればいいよ」

 

 

 もし、人が権力と富を得て成功しようとするなら、

 余計に働き収入と地位を得ようとする。

 成功者は、地位と名誉と財産を手にしやすくなっていく、

 しかし、相続する者もなく、運もなく、才覚もなく、

 怠惰な者が過分な欲望を果たそうとすると、

 邪魔なライバルを蹴落とし、

 時に不正腐敗に手を染める、

 さらに非人道的で外道な方法で利益を上げる。

 その結果、利害関係から、加害者と被害者が現れるのである。

 それは、人でなく、国家でも同じだった。

 日本が成功を望まず、

 周辺諸国の悪意と脅威に晒されていなければ、

 日本が後進国で満足していたならば、

 富の格差も同好会の如く緩やかだったと考えられる。

 しかし、列強の悪意と脅威に対し、我を張り、傀儡でなく独立を保ち、

 対等であろうとするなら選択肢は狭められた。

 日本が武力に対し、武力で対するより、

 植民地支配の支援で利銭を稼ぐは、数少ない選択肢の一つと言える。

 列強各国は、日本の付加価値と採算性の良さを利用し、

 他の列強に対し、優位に立とうと、日本企業への発注を増やしていた。

 海援隊

 「屈辱的だな」

 「屈辱じゃない職業を選ぶのは、別の人間に屈辱を押し付けるようなものだ」

 「しかし、外国との開発事業契約は、対等な政策と思えませんよ」

 「だが労働輸出は、海運業、生糸産業と並んで、日本が競争力を持つ分野だよ」

 「それに対等になるための開発事業だ」

 「外貨を稼げる間、日本の公共設備を整えるべきだろうね」

 「しかし、道をコンクリートで舗装するなんて勿体ない気もするね」

 「列強の主要都市は、そんなモノだよ。石畳もあるし」

 「石畳か・・・かっこいいな」

 「東ゲルマニアがそんな感じだから、真似したいね」

 

 

 大西洋横断海底電線布設、

 この計画は、1852年から始まり1865年に一応の成功をしていた。

 そして、時代は、北大西洋から北太平洋へ、

 東京 日独米海底通信電線協議

 アメリカ合衆国は、太平洋を越えて遼東半島に繋がる海底電線を欲した。

 ドイツ帝国もロシア帝国経由だけの通信は、外交戦略上の選択を狭められ、

 安全保障上も不利と判断する。

 そもそも、ロシア帝国は信用できず、海洋から有線通信を望むのは当然と言える。

 もっとも、それを成すだけの国力がドイツ帝国にあった。

 情報通信は、国家間の利害を超えるほど重要であり、

 足場が極東にあれば、その要求も強まってしまう。

 もっとも日本の場合、大陸との海底電線は施設され、

 瑞樹州との海底電線がより重要だった。

 「海底電線を敷かせるのは構わないよ」

 「だけど、日本も海底電線の技術が欲しいよね」

 「うん」

 この時代、日本は後進国だった。

 鉄も石炭も少なく、工業力で蓄積できるノウハウの量も桁違いだった。

 権威主義と年功序列は、秩序的な統制で好都合だったものの、

 柔軟な発想、新しい発明を埋もれさせる要因となった。

 上が無策無能だと、絶望的な状況に陥り、

 上が馬鹿だと、収拾がつかないほど悪化していく、

 日本は、貧しさの余り近代化させるだけの資本格差を作れない、

 国内資源は海外より購入するしかなく、

 人材を育てる教育者すら絶対数で不足し、育っていなかった。

 貧しい社会では、権力者は最後の最後まで実権を握り続ける、

 熟練工も保身のため、技巧と技能を一子相伝にしてしまう。

 人口増加による貧困で土地収用の制約は大きく。

 農政が進んだのは、大陸権益とドイツ領との交換後であり、

 未開地が増えてからだった。

 そして、未開地に対する投資は、莫大な予算を必要としていた。

 当然、国防費の比率は押し下げられてしまう。

 装甲も大砲も模倣したものを複製するしかなく、

 日進月歩の機械や機関に関する依存度は、さらに大きかった。

 軍政的な抑圧が軽減されていくと、

 大砲や装甲より、共有率の高い機械類の類が優先され、

 中古戦艦・装甲巡洋艦を購入する代わり、

 機械、機関だけは最新のモノが購入されていく。

 

 

 

 日本 呉

 赤レンガの住人たち

 「これか、払い下げになる軍艦」

 「日英同盟の御祝儀じゃないの?」

 「筑波爆沈の穴埋めにはなるよね」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 「・・・全長は、このままで良いのかな」

 「機関室の容積次第だよ」

 「まぁ こいつも兵装落とし、機関を強化。内装を一新で使えると思うけどね」

 「いま時、装甲巡洋艦なんて、流行らないと思うよ」

 「そりゃ トレンドは、装甲減らした高速小艦艇で戦艦に雷撃特攻だからね」

 「というより、76.2mmとか、47mm砲とか、対魚雷艇じゃないの?」

 「中型艦は、暗中模索だね」

 「というか、中型艦は、どれにも対応しないと駄目だろう」

 「日本は通商破壊艦だから・・・」

マイノーター型装甲巡洋艦 3隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離
14600 158.19×22.71×7.92 27000 23 10kt/10000海里
50口径234mm砲連装2基 50口径191mm砲10門 50口径76.2mm砲16門 450mm魚雷5門
マイノーター、シャノン、ディフェンス

 

デューク・オブ・エジンバラ型装甲巡洋艦 2隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離
13550 154.09×22.4×7.92 23500 23.25 10kt/10000海里
45口径234mm砲6門 50口径152mm砲10門 50口径47mm砲22門 450mm魚雷3門
デューク・オブ・エジンバラ、ブラック・プリンス

 

 改装要項は、だいたい決まっていた。

 「機関は強化するとして・・・一番大きいのは、機関45000馬力」

 「そうなると・・・50口径152mm3連装2基。水上機搭載か・・・」

 「機関が大きくなるたびに兵装が減らされるな」

 「イギリスのレナウン型巡洋戦艦は30ノット以上だ」

 「戦艦に追いかけられて撃沈だと、通商破壊はできないよ」

 「ちっ! イギリスめ、日本に旧式を払い下げて、新型で艦隊編成する気だな」

 「まぁ それくらいじゃないと、日英同盟堅持は無理なんじゃないか」

 「ドイツと組んだ方が得な気がしてきた」

 「ドイツが欲しいのは鉄鉱石、石炭、石油、希少金属で残念ながら日本にないよ」

 「ドイツは清国と組みたがるだろうな」

 「というより、山東半島の完全併合を狙っていると思うよ。あそこ中立地帯だから」

 「清国は、民主化しているけど内向きの搾取体質は相変わらずだし」

 「日本以上に国権を発動し難いようだ」

 「一度解体しないと難しいかも」

 「むしろ、清国は、今のままの方が助かる」

 「じゃ ドイツ帝国は、米英仏露が清国を解体するのを高みの見物すればいいのか」

 「ドイツ帝国は、半島に足場があって、余裕だな」

 「大陸に足場のない日本は、日和見だよ」

 「良いんじゃない。大陸に毒されてなくて」

 「しかし、重油燃焼機関の艦船が増えると、アメリカべったりになるぞ」

 「給油艦も建造しなくちゃ 15000トン級から20000トン級くらい」

 「なるべく燃料消費を抑えられるようにしないと」

 「ディーゼル機関とか、電気推進にすべきだろうね」

 「基地防衛を強化して、装甲巡洋艦と潜水艦の通商破壊戦で、のらりくらりか・・・」

 「ドイツ帝国が相手だと、そうもいかないぞ」

 「ドイツ帝国は、日本と戦うかな。背後がロシアだぞ。しかも日英同盟を結んでる」

 「少なくとも上陸作戦用の大型揚陸艦がいるよね」

 「玄界灘だったら、橋頭堡さえ作れば、漁船でも大丈夫」

 「橋頭堡なら巨済島があるか」

 「真っ先に攻撃されそうだ」

 「だな」

 「少なくとも戦争になれば、イギリスの兵器・武器弾薬が使えるのがうれしいね」

 

 

 

 清国最強の北洋軍閥は、袁世凱の死後、大きく5つに分裂する。

 中国大陸には10以上の軍閥が覇を競っており、

 近代化に必要な組織力と後ろ盾があれば、大きく躍進できる可能性があった。

       
奉系 張作霖 満州 (奉天、黒竜江省、吉林省) アメリカ・ロシア・ドイツ権益
馮系 馮玉祥 西北地区 河北省、内モンゴル(綏遠省) ロシア権益
直系   揚子江中下流域及び直隷 イギリス・フランス・アメリカ権益
国民党 孫文 上海  
皖系 段祺瑞 安徽省、浙江省、山東省、福建省、陝西省 ドイツ権益
晋系   山西省 アメリカ権益
  李宗仁 広東省・広西 フランス権益
       

 中国東北部 満州

 長春は、アメリカ・ドイツ権益(南満州鉄道)とロシア権益(東清鉄道)の接点だった。

 ドイツ人の東ゲルマニア移民は、東清鉄道を越えていくため大動脈でもあった。

 ホテル

 白人たちがいた。

 一人は専制皇帝の臣民、

 一人は立憲君主の国民、

 一人は自由資本主義者。

 「ゲルマニアは、最終的にどの程度の国になるのかな?」

 「まぁ 4000万〜4500万は住めそうだな。市場規模は小さいが周りは後進国だ」

 「第2ドイツ帝国か。本当に極東に足場を造るとはね」

 「しかも、中国海軍を再建させた代償で利権を一人占めか、やってくれたよ」

 「東ゲルマニアのおかげでアメリカ合衆国は、ドイツ人の移民が減ったよ」

 「ドイツ人の民主主義者だって、ドイツと地続きの方が安心だし」

 「自由市を作ればドイツ人も移民しやすいだろうよ」

 「まぁ 貴族社会ばかりだと息が詰まるからね」

 「だけど、これだけ離れていると利害不一致で本国と仲違いもあるだろう」

 「まぁ 東西ドイツ連合という形になっていくだろうね」

 「ロシア帝国は、少し、落ち着いてるのかい?」

 「微妙・・・」

 「ドイツ移民輸送でシベリア鉄道は、儲かってるだろう」

 「かなりね。でもドイツが大型客船を建造してから郵便物の方が多くなった」

 「ロシアの共産主義者は?」

 「落ち着いたけど、まだ蔓延ってるよ」

 「最近はオーストリアにも共産主義が出没してそうだけど」

 「近代化は、資本の集約でする、いまどき、反資本主義なんて流行らないよ」

 「限度があるし、国民に理解があればね」

 「ロシアの場合は、既得権益の打倒と資本の再分配だったんじゃないの?」

 「どこかの大貴族を二つ、潰したから、それで凌いでいるよ」

 「イギリスは、ロシアの南下を恐れているようだけど?」

 「ロシア帝国の東西はドイツ帝国に押さえられているし」

 「南は日英同盟で押さえられている」

 「しかし、日独関係が強化されているから、それも微妙かな」

 「権益分けでもするのかな」

 「植民地防衛の負担を軽減するためには、そうせざるを得ないと思うよ」

 「ところで、中国をどうしよう」

 「いまのところは軍閥で切り崩しているけど」

 「少数民族にも拠点を作るべきだろうね」

 「チワン族、満州族、回族、ミャオ族、ウィグル族」

 「トゥチャ族、イ族、モンゴル族、チベット族・・・」

 「ん・・・まだ、軍閥で切り崩す方が楽だと思うよ」

 

 

 東ゲルマニア(朝鮮)

 ゴシック・ロココ調の巨大教会、ゲルマニア歌劇会場が建設されていた。

 台風に驚いていたドイツ人も数年経って慣れたのか、

 広場で金髪碧眼の大男たちが一つのボールを追いかけていた。

 日本人観光客は、手軽に欧州を楽しめるドイツ文化に注目する。

 日本では、英語と並びドイツ語熱も高まっていた。

 時折、白人の差別的な視線に晒される。

 「・・・白人の差別にいつまで耐えなければならないのかね」

 「ドイツは朝鮮併合で、白人至上主義が強まったんじゃないか」

 「日本人は、アジアでも白人に媚びながら生きていかなければならないのかね」

 「白人同士が仲間割れしないのなら日本が欧米列強に勝てるわけないじゃないか」

 「もうしばらく、臥薪嘗胆すべきだと思うね」

 「いつまでだよ」

 「せめて、瑞樹州の人口が5000万位になるまで我慢すべきだと思うよ」

 「せめて、まともな軍艦を建造できるまでか」

 「それと・・・」

 一人が指を立てる。

 数秒後、人工的な日陰が通り過ぎて行く、

 「・・・飛行機と飛行船か・・・」

 「もうしばらく、イギリスの犬でいるべきだと思うよ」

 「日本でもプロサッカーチームとか、交響楽団とか、作りたいもんだな」

 

 

 

 09/30 東京湾で大津波、関東大水害

 死者・行方不明者数1324人、

 全壊・流出家屋約36500戸、床上・床下浸水約303000戸。

 「7年前より酷いかな」

 「まぁ、人口が密集していたし、いい勝負かな」

 「少しは、南方移民が増えれば良いけど」

 「しかし、みんな東京が好きだねぇ」

 「権威が好きなんだよ。中央集権だからどうしても金が東京に集まる」

 「需要が人を呼び、供給が人を呼ぶ」

 「なるほど、地方分権は、もう少し、交通と通信が発達してからかな」

 「既得権にしがみつくのは中央も地方も同じだよ」

 「奪おうとする者と奪われまいとする者で戦っているようなものか」

 「こじれると地方勢力が結びついて、戦国時代だからね」

 「まさか・・・」

 

 

    領有 面積(ku) 利権 面積(ku) 軍(万) 人口(万)
北欧 ドイツ帝国 54万0857     4700
朝鮮半島 東ゲルマニア 21万0000   100 1000
遼東半島     3462+1万2500 10 100
山東半島 ホーエンツォレルン 4万0552 11万6700 20 200
カメルーン 南ザクセン 79万0000   10 100
東アフリカ 南ヴュルテンベルク 99万4996   10 100
南西アフリカ 南バイエルン 83万5100   10 100
トーゴランド 南バーデン 8万7200   10 100
 
ドイツ帝国 350万2167 12万9200   6400

 

 

 東ゲルマニア(朝鮮)

 ドイツ人の移民が増えるに従い、ゲルマニアの近代化が進み、

 産業が増していく。

 日本は極東随一の工業国の座が揺らごうとしていた。

 とはいえ、ゲルマニアは、大国の清国やロシア帝国の国力を助けるわけにもいかず、

 日本産業を工業化の踏み台として利用し引き上げてしまう。

 ドイツ人は二つの半島で支配者として君臨していた。

 朝鮮民族は罠にかけられ、力で捻じ伏せられ、

 強制労働に送られ、収奪の限りを尽くされ、

 多くが満州へと逃れていく

 日本人観光客は、朝鮮人に同情し、

 朝鮮人は日本人に見られたくないのかコソコソと逃げていく。

 ホテル

 「まぁ 伝道所の人間は、なにかと朝鮮人の肩を持つがね」

 「朝鮮人を信用しないことだ」

 「あいつら我田引水の塊で、話しても振り回されて損するだけだ」

 「日本でも言うだろう、釣った魚にエサをやらない」

 「いや、それは、別の意味で・・・」

 「同じだよ。朝鮮人は良くしてやると突け上がる生き物でね」

 「一度、権利を認めると怠惰で成長しない」

 「見栄と自己主張と嘘ばかりの傍若無人な豚になるよ」

 ドイツと利権交換(1908年)した後、

 残された済州島と巨済島の朝鮮人は薄まってしまい、

 日本人は朝鮮人と関わりが少なく、

 当然、日本人も朝鮮人の本質を知る者も少ない。

 しかし、夫婦的な例えを持ち出されると

 “そうかもしれない”

 と妙に納得してしまう日本人たちがいた。

 ドイツ人は、全世界全人類共通の夫婦の関係で例え、自己正当化してしまう。

 どちらにしろ、東ゲルマニア(朝鮮)の主権はドイツ帝国にあり、

 各国とも自国植民地の主権に口出しして欲しくないためか、

 他国の内政干渉を控える傾向があり・・・

 「それに朝鮮人は、みんなドイツ帝国が日本を占領すればいいと囁くから五月蠅くてね」

 「なるほど・・・」

 正義は通用しない。

 

 ホーエンツォレルン(山東)半島

 東ゲルマニア(朝鮮)併合後、

 半島開発の主軸は、自国領に併合した東ゲルマニア(朝鮮)半島に移動していた。

 イギリス租借地の威海衛を除く山東半島全域(4万0552ku)がドイツの租借地であり、

 労働と資源獲得で有望であり、ドイツ軍だけが移動できた。

 そして、ドイツ帝国は山東半島の会得も望んでいたのだった。

 ドイツ帝国は、囲い込み。

 買収、恫喝、恐喝など、あらゆる手段を講じ、要衝、有力地を押さえ、

 ホーエンツォレルン(山東)半島全域の利権も手中に収めていく、

 「ドイツ帝国なら中国大陸を支配できるのでは?」

 「いっそ、大陸全土を中立地帯にしてはどうです」

 「そうアル。きっと神の意志が働いてるアル」

 「そうですよ。東アジアの治安と安全をドイツに任せましょう」

 ドイツ人は、国際情勢と彼我の国力と戦力を鑑み、

 列強の手に乗らず、

 富める者ケンカせずで堅実に山東半島の国土化だけを狙う。

 ドイツ中立地帯と清国の格差と垣根を押し広げ、

 半島防衛線を着実に構築していく、

 大陸と違い、半島であれば迂回されることもなく、防衛線を形成することができた。

 そして、山東半島の先端部に要塞が建設され、

 大砲が設置されようとしていた。

 自重256トン、約133口径210mm砲。

 砲弾を発射すると、

 音速を超える砲弾が1600m/s、成層圏を越えて130km先に落ちた。

 この大砲は、東ゲルマニア(朝鮮)半島側にも配置され、

 ゲルマニアと山東半島の200kmの中間を射程内に収めてしまう。

 ここで問題となるのは実用性や有用性より海峡を全て射程に収めたという事実であり、

 それを可能にした技術力の高さだった。

 

 

 南満州鉄道

 アメリカとドイツは覇権を競いつつ、東アジアで共闘していた。

 とはいえ、ドイツ人とアメリカ人は明確な違いがあった。

 アメリカ人は、多くの人種によって構成され、

 アメリカ憲法以外のアイデンティティのない個人の集まりに過ぎず、

 南満州鉄道権益を採算ベースで追及していた。

 アメリカは、ドイツ帝国より土地に対する執着が少なく。

 遼東半島も収入確保の足場としか考えていなかった。

 アメリカとドイツは、清国官僚と華僑に有利な取引を持ちかけ、

 清国支配から離れた中立地帯の権益を増やしていく。

 権益拡大の餌で武器弾薬を清国に売却しての取引となるため、

 危険な賭けでもあった。

 旅順要塞のドイツ軍将校たち

 「最終的に満州権益を清国に進呈して、山東半島と遼東半島を会得する感じかな」

 「国家的な足場を構築できれば、一旦退いても、持ち直せるだろう」

 

 

 インド洋

 13500トン級装甲巡洋艦 日進、春日

 1904年イタリア製だった。

 完成当時、7700トン級だった艦艇は、日本海軍で大改装されて13500トン。

 全長は150mまで伸ばされ、

 25000馬力機関に換装されて26ノット、

 50口径152mm3連装2基、50口径76.2mm砲8門を主兵装とし、

 インド洋を航行していた。

 日本の装甲巡洋艦は、魚雷を装備しておらず、対戦艦戦闘で劣っていた。

 しかし、細長い軍艦は沖で大きく見えるため、目的を達成できた。

 “大英帝国は、ロシア帝国を降した日本帝国を従属させている”

 日露戦争で有色人種が取り戻しかけた自信は根底から崩れ、

 イギリスは、植民地の独立勢力、後進国の反英勢力に対し、威圧を与えることができた。

 この傀儡の日本海軍を利用した砲艦外交は、イギリスが各種諸経費を支払って損はなく、

 植民地の独立運動を沈め、

 植民地支配を確固たるものにさせるため効果的だった。

 途中、ドイツの客船や輸送船と擦れ違い。

 ドイツ海運の動きが大きくなっていることも分かる。

 春日 艦橋

 「ドイツ帝国も修理用ドックを植民地に作っているらしい」

 「戦争準備かな」

 「まさか」

 「だけど、海外にドックがなければ、戦争が起きても、ドイツ本国は身動きが取れないよ」

 「ドイツ海運を植民地に避難させないと」

 「戦争できる体制を整えているわけか」

 「日本も、瑞穂州にもう一つ日本の分身を作れば、戦争しやすいだろうよ」

 「瑞穂州が独立戦争しかけてきたら困るがね」

 「あはは・・・」

 「・・・提督。ムンバイ港です」

 「ようやく付いたか、入港する」

 「インドも辛そうですね」

 「大きな国土なのにバラバラだからな。カーストは士農工商より酷いし」

 「まぁ 日本も相手の家柄で結婚を反対することがありますけど、宗教で、それをやるとは・・・」

 「宗教で禁止されているから悪くないという言い分もある」

 「それ、自己正当化でいいですね」

 「結局、階級の世襲は、競争力を失わせてしまうから、構わないけどね」

 「問題は、インドの内陸に日本人街が譲渡されるということかな」

 「どこまで本気なんですかね」

 「利権分けで、日独同盟を防ぎたいのだろう」

 「まぁ イギリスにしたら悪夢でしょうけどね」

 「実のところどうなんですかね」

 「ドイツの移民需要は大きいらしいよ」

 

 

 日本 某工場

 ロールス・ロイス・ファルコンV 水冷V型12気筒275hp

 ロールス・ロイス・イーグル8 水冷V型12気筒360hp

 2種類の水冷エンジンがライセンス製造されていた。

 将校たちは試す換えす部品を見比べ、批判的な表情を見せる。

 「・・・もう少しまともに作れないのか?」

 「電圧を安定させて、工場を大きくして、工作機械を単機能化させられればね」

 「金ない、土地ない、小粒な市場しかない」

 「お前が人件費払ってくれるならやっても良いがね」

 「・・・・」 ぶっすぅうう〜

 赤レンガの住人たち

 東ゲルマニアの存在は、日本の国防を根底から変えてしまう。

 九州・四国・沖縄列島・台湾防衛の割合が増加し、

 科学技術的な困窮の余り、イギリスとの同盟関係は強化される。

戦闘機 ブリストル F2ファイター
重量/全備重 HP 全長×全幅×全高 翼面積 速度 航続距離 機銃 爆弾
975/1474kg 275 7.87×11.97×2.97 37.62 198km 593km 7.7mm×2 110
爆撃機 ハンドレページ O/400
3856/6060 360×2 19.16×30.48×6.71   156km 1120km 7.7mm×2 900

 「どうよ?」

 「どうよと言われても、凄いんだか凄くないんだか」

 「日本じゃ作れないから、ほかの列強と比べてもしょうがないだろう」

 「ドイツ製は、機銃同調装置がついてるらしいよ」

 「とりあえず、複製が作れない限り、ドイツ製も作れないと思うよ」

 「イギリスの植民地権益を守るために働かされて、これとはね」

 「ドイツ帝国の分身がアフリカに3つ、東アジアに3つ作られている」

 「発電所、製鉄工場、鉄道、造船所も増えている」

 「イギリスじゃなくても慌てるだろうよ」

 「独清同盟は結ばれていないだろう。そんなに慌てることかな」

 「まぁ こっちが神経質になって戦雲高めてもアメリカの利するところだけどね・・・」

 「そういえば、ドイツ帝国は、日本と組みたがっている節があるぞ」

 「東ゲルマニアが独り立ちするまで、タダのリップサービスだよ」

 「いま、一番、戦争したくない時期か」

 

 

 

 ロシア帝国の冬は身が凍る、

 天候の不順は餓死と直結し、

 食料の蓄えがなければ飢え、寒さで凍死する者も少なくない。

 ズィームニイ・ドヴァリェーツ(冬宮)

 仰々しい扉が開けられ、

 一人の貴族が憮然と回廊へと飛び出した。

 貴族風の煌びやかな服装に着替えさせられ、

 髭を整えさせられ、

 グリゴリー・ラスプーチン(47)は、目の前の女性と向かい合う。

 「“我らの友” のおじさん。その服、似あってる♪」

 アナスタシア皇女(17)が面白がる。

 「皇女。何という事をするのだ」

 「皇帝との約束の時間に遅れては困るのだぞ」

 「急げば、まだ間に合うわ」

 「こんな服装で尊敬されたいとは思わん」

 「駄目よ。殺されかけたでしょ」

 「それとこれとは別だ」

 「同じよ。ロシア人は中身じゃなくて、服を尊敬するもの」

 「やれやれ、最近の娘と来たら」

 「ロシア民族は、もっと高潔で偉大な民族なのだぞ」

 「“我らの友” のおじさん」

 「ロシア人は信じられないくらい、馬鹿で愚かで浅はかよ」

 「おじさんが殺されていたら、後の世までロシア帝国の災厄」

 「悪魔と契約者、怪僧ラスプーチンにされるところだったんだから」

 「バカバカしい。私に、そんな力があるものか」

 「あとで、わたしの高潔で偉大な外反母趾も見てね」 ヒソヒソ

 「ったくぅ わかったよ。ドイツ帝国の王国と縁談だったな」

 「フランス語が得意なのに・・・」

 「フランスに王族はいないだろう。釣り合わん」

 「イギリスでも良かったのに・・・」 ぶつぶつ

 「姉上たちが嫁いだのだから、バランスのためにドイツ帝国なのだろう。良くあることだ」 にや〜

 「・・・・」 ぶっすぅうう〜

 べぇ〜

 嫁ぎ先が王族とはいえ、若い娘が新しい環境に追いやられるのだ。

 不安なのだろう。

 「お急ぎを、ラスプーチン」 ユダヤ人秘書ア・シマノウィッチ

 「・・・」

 ラスプーチンは治癒の力を持っており、自らの致命傷すらも回復させてしまう。

 彼は、ロマノフ家の秘密の諸問題も処理していた。

 ラスプーチン伯爵の悪癖は、元々、国政に影響のないレベルが多く、

 誹謗中傷は、服装が変わっただけでロシア貴族の醜悪な森の中に埋もれ消えて行く、

 

 旧ユスポフ公爵と旧ロマノフ大公の領地で食料の配送と配給が始まり。

 穀物価格は徐々に引き下げられ、ユダヤ商人は呻き、

 ロシア帝国は、経済を好転させつつ、庶民も飢えから僅かに遠のいていく。

 フェリックス・ユスポフ公爵、

 ドミトリー・パヴロヴィチ大公。

 二人の起こしたラスプーチン暗殺未遂事件は、ロシア帝国に転機をもたらした。

 ユスポフ公爵とパヴロヴィチ大公は、帝位簒奪を企んだ裏切り者として国外に追放され、

 彼らの膨大な所領はロシア国民の共有地、共有資源として還元されてしまう。

 人心を失い崩壊しつつあった帝国は、彼ら二人の愛国心の発露、

 その所業と功績により救われてしまう。

 ニコライ二世は、恐るべき回復力を見せたラスプーチンに伯爵丈を与え、守ったのだった。

 「我らが友、ラスプーチン伯爵 “神の人” と呼ばれる事を成してみせるが良い」

 「御意」

 ニコライ2世はユスポフ公爵とパヴロヴィチ大公の資産を取り上げ、

 ロシア国民救済をラスプーチン伯爵に担わせ、

 ロシア帝国ロマノフ王朝は、民衆の信望を回復しつつあった。

 

 

 数刻後

 「陛下、ラスプーチンは危険です」

 「好色家や馬泥棒が帝国を滅ぼすというのかね」

 「・・・・」

 「それとも神の目を盗んで悪魔が我がロシア帝国に害をなそうとしているのかね」

 「陛下は、ユスポフ公爵とロマノフ大公を追放し」

 「公爵と大公領をラスプーチン伯爵に任せておられます」

 「公爵と大公領は大罪を犯したため追放し、所領をロシア国民の共有地としたのだ」

 「ラスプーチン伯爵は、上手くやっておるように思うぞ」

 「しかし、ラスプーチン伯爵が民衆を扇動し、帝国を欲するような事があれば・・・」

 「もし、危険というのなら誹謗中傷などせず、大逆の証拠を上げるがよかろう」

 「それに、あの者が権力を手にしたのは、昨今ではないか」

 「それも決して大きくない領地の伯爵に過ぎない」

 「己が領民の搾取を誤魔化すため」

 「怪しげな男に全ての責任を擦り付ける既得権益者こそ、ロシア帝国の害なのだ」

 「害のお前たちがラスプーチンを悪党というのなら」

 「お前たちより悪党なのだろうな」

 「い、いえ・・・」

 「日本は庶民に近い下級士族が革命を起こし」

 「いまの近代日本を作ったそうだ」

 「庶民に通じた者が上に立つことで国を近代化させ、強く大きくした」

 「しかし、それは一時的な事、欲に目が眩めば権力と富が世襲化し」

 「膠着する社会は、貧富の格差と差別を作り、衆愚化は免れません」

 「ラスプーチンにロシアの改革ができるのなら、やらせて置くがいい」

 「それで、ロシア国民が大人しくなるのなら好都合だ」

 「「「「・・・・」」」」

 「諸侯・・・日本の近代化は、既得権益者を潰した貯金で成していることを忘れるな」

 「「「「・・・・」」」」 たら〜

 ニコライ二世は気付いていた。

 ロマノフ朝を支えるはずの貴族諸侯は、争って庶民から財を吸い上げ、

 庶民の不満の矛先を皇帝と怪僧ラスプーチンに向けている。

 これは保身と同時に裏切りだった。

 ロシア国民は1億5000万を超えている。

 国民から税を吸い上げ合法的に殺すか、

 貴族の既得権益を破壊して、貧富の格差でバランスを執るよりなかった。

 貴族諸侯の所領をいくら潰しても足りない。

 しかし、ユスポフ公爵とロマノフ大公の追放と、

 公領共有地化で、ロシア民衆の感情は緩和しつつあった。

 ニコライ二世は、庶民の情勢を知るに付け、

 もう、一つ、二つ、大貴族を潰し、

 ロマノフ朝の評判を立て直しても良いと考えていた。

 ニコライ二世が信任するラスプーチンの人気が好転すると、

 ラスプーチンを登用したニコライ二世の信任も回復していく。

 共有地の庶民救済が大きくなると、

 ロシア貴族諸侯の領民に対する搾取が目立ち、

 血の日曜日以降のロマノフ王朝への憎悪が軽減され、

 逆に共産主義に対する風当たりが強くなっていく。

 ロシア革命勢力の原動力は、領主の搾取、寒さ、飢えであり、

 怪しげな怪僧などではなかった。

 その原因の一旦は、ロマノフ家と貴族諸侯の搾取に違いなく。

 原因の一部緩和されるのなら状況は変わっていく。

 ロシア帝国は、辛うじて国民の反逆を押さえたとしても別の要素もあった。

 欧州危機で生産された余剰武器が密輸され、国内外に溢れつつあった。

 それほど大きな危機でなかったものの、

 ロシア国内に不穏な動きを見せていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダニエル書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 バビロン王ネブカドネツァルよ、

 あなたの見た夢は、こうです。

 大いなる像があなたの前に立っていました。

 その像は大きく光り輝き、恐ろしい外観をもっています。

 その像の頭は純金、胸と両腕とは銀、腹とももは青銅。

 すねは鉄、足の一部は鉄、一部は粘土です。

 あなたが見ておられたとき、

 一つの石が人手によらずに切り出され。

 その像の鉄と粘土との足を撃ち、これを砕きました。

 こうして、金、銀、青銅、鉄、粘土は、みな共に砕け、

 夏の打ち場のもみがらのよう風に吹き払われ、あとかたもなくなり。

 その像を撃った石は、大きな山となり、全地に満ちました。

 

 今、その解き明かしを、王の前に申しあげましょう。

 王よ、あなたは諸王の王であって、天の神は、あなたに国と力と勢いと栄えとを賜い、

 ことごとく治めさせられました。

 あなたは金(王)の頭です。

 あなたの後にあなたに劣る銀(貴族)の国が起ります。

 また第三に青銅(官僚)の国が起って、全世界を治めるようになります。

 第四の国は鉄(軍隊)のように強いでしょう。

 鉄は、すべての物を壊し砕くからです。

 鉄がこれらをことごとく打ち砕くように、その国は壊し砕くでしょう。

 あなたは、その足と足の指を見られました、

 その一部は陶器師の粘土(商人)、一部は鉄(軍隊)であり、分裂した国をさします。

 しかし、あなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、

 その足の指の一部は鉄の強さがある国でしょう。

 その足の指の一部は粘土のようにもろい国でしょう。

 あなたが鉄と粘土との混じったのを見られたように、

 それらは婚姻によって互に混ざるでしょう。

 しかし、鉄と粘土とは相混じらないように相合することはありません。

 それらの王たちの世に、天の神は一つの国を立てられます。

 これはいつまでも滅びることがなく、その主権は他の民にわたされず、

 かえって、これらのもろもろの国を打ち破り滅ぼすでしょう。

 この国は立って永遠に至るのです。

 一つの石(?)が人手によらずに山から切り出され、

 金(王)、銀(貴族)、青銅(官僚)、鉄(軍隊)、粘土(商人)の像を打ち砕いたのです。

 大いなる神は、この後に起るべきことを王に知らされたのです。

 その夢は、真であって、この解き明かしは確かです。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 大日本中古製戦記でしょうか。

 大英帝国の払い下げ兵器で頑張ります。

 もう薄っぺらなプライドは捨てました。

 英ポチです。

 盛者必衰の理は、ドイツの政策変更と、日本のせいで延長です。

 

 

 

  ※アメリカ合衆国は、デンマーク領ヴァージン諸島を2500万ドルで買収

    史実だと、1ドル=2円なので5000万円です。戦艦1.5隻分でしょうか。

    この頃、金本位制を捨てて、日本の国家予算が10億弱。

    価格的にこんなもんなんでしょうか、

    日本の中国・満州・朝鮮半島権益とか、

    北ニューギニアの売買金額の参考にしました。

 

 貴族世界は延命し、聖書の預言も延長するかもです。

  

 

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第09話 1916年 『離合集散の予感』
第10話 1917年 『盛者必衰の・・・』
第11話 1918年 『赤い小妖怪たち』