第12話 1919年 『全ては己がために・・・』
01/05
初期の資本主義は、劣悪な環境下で労働を強いられる。
貧富と階級の格差は広がり、
国内に不満の火種は存在する。
地位と名誉を求める者は富を求め続け、
歯止めが起こるまで、他者との間に格差を求めるのである。
闇経済に武器弾薬が流通するだけで武装蜂起が起き、
ロシア帝国とオーストリア帝国で、民族共産主義による一連の反政府独立運動が起こった。
これら共産主義主導の独立運動は、支配層と被支配層の抗争であり、
支配層と結託したマフィアの白色テロと、
警察軍の鎮圧によって、徐々に終息していく、
ドイツ帝国でも、スパルタクス共産組織が結成され、地下活動が始まる。
近代化は資本の集中が求められる、
機会の平等は与えられても、均等な社会などあり得ないのである。
初期資本主義に対し、社会主義運動は必然的に起こる反応であり、
社会主義運動と妥協がなされるか、
妥協し得ず、共産主義運動に至るか、権力層と一般層の関係による。
権力者と資本家から傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲といった要素が消えるか、
労働者に一定水準の生活保障が得られるまで続く。
もっとも労働者と農民層の大多数は、理想を追って命懸けで戦うより、
必要最低限の生活補償がなされ、
最低層でない満足が得られるのなら平穏を求め、現状の生活にとどまることを望む。
新しい民族共産主義の波は、労働者と農民が政府、もしくは王朝を打倒し、
労働者と農民が政権を担う。
聞こえこそ、いいものの、
どこの馬の骨とも分からない口先だけの綺麗事に同調できるのは、少数派であり、
生きていけない者か、復讐に燃える者、理想と野心を持つ者でなければならず、
労働者と農民の政府がどのようなものか、想像外だったと言える。
どちらにしろ、権力の座に付けば、保身のため動くのであり、
味方を作れば、同時に敵をも作るのである。
誰が地域代表に選出されるのかの段階で少数による支配であり、
今とそれほど変わらない比率であり、
さらに国家代表に選抜された時点で、権力抗争が行われており、
新しい特権階級とか、新興貴族が形成され、庶民と言い難い存在となるのである。
一般的な庶民感覚でいうなら、
暴力革命は、速い話し、民衆を扇動しての国家転覆とか、国家反逆罪とか、反乱罪であり、
違法、暴力で革命を起こそうとするなら、血生臭いこと間違いなしで、
流血騒ぎになると推測するだけだった。
国家は、基本的に貧困層の水準に気を配れるのなら安定を保てるのだった。
オーストリア・ハンガリー帝国とロシア帝国で民族共産革命が粛清されていくと同様、
ドイツ帝国内の共産主義者も粛清されていた。
ベルリンのホテル
アメリカ人とフランス人
「やっぱり、貴族社会で急進的な民主化は無理かな」
「共産主義自体、実験的要素が強過ぎた」
「しかし、王様のいない共和国としてはだ。君主制民主主義の増大は、面白くないよ」
「既得権益に毒された政体がいいはずがない」
「フランス人としては、そう思いたいだろうね」
「アメリカ人もだろう」
「まぁ そう言えなくもないよ」
03/01
原生林とゴツゴツとした花崗岩の合間を清水が流れていた。
険しい山岳地帯、僅かな平野部に点々と家屋が建設されていく、
大自然とバロック・ロココ調の建築物は、違和感を感じさせつつも欧州のようであり、
ドイツの群落と予想させる。
東ゲルマニア(朝鮮)半島のゲルドパンツァベルゲ(金剛)山と呼ばれる一帯だった。
ドイツ人らしい気質なのか、ゴミの管理は厳しく。
自然に溶け込むよう計算された建物は、景勝地と調和していた。
ドイツ帝国の諸侯たちが集まっていた。
「清々しいじゃないか、別荘に丁度良い」
「本当に自然のままだな。コテージを作っても利益になりそうだ」
「そうだなぁ」
「それより、朝鮮人が暴れてるらしいよ」
「また、自分で自分の首を絞める・・・」 苦笑い
朝鮮独立運動
ドイツ帝国本国で急進的な共産主義運動が起きたように半島も、
独立と民主主義化を望む声が強まり、民衆が立ち上がり、
機銃掃射が四方から撃ち込まれ、朝鮮民衆が撃ち倒されていく、
「やれやれ、どこもかしこも民衆が騒ぎやがる」
「民族主義と共産主義が結び付いて、勢いがついているんじゃないか?」
「みんなで分け合う政体か、何を考えているんだか」
「分け合うじゃなくて、みんなに分けてもらうジリ貧に気付かない限り続きそうだ」
「気付いても続くと思うよ」
「どうせ、アメリカ人か、フランス人が薄っぺらで詰まらない意地を輸出しているんだろう」
「不安なんだろう、王様のいないない政体に自信が持てないんだよきっと」
「いやだね。やりくちが姑息過ぎて」
「もう、スラムごと焼却処分したくなってきた」
「それいい!」
03/21
階級が固定された無能な権威主義と労奴・農奴の労使関係、
この関係では、付加価値の高い成果は得られない。
近代化は、農民潰しによる大規模農法と労働者の量産が求められた。
旧態依然とした封建社会が階級を保ったまま、無理やり近代化しようとすると、
消極的な搾取労働に積極的な成果を強いることになり、歪みが大きくなっていく。
さらにオーストリア・ハンガリー帝国は、優位民族が存在し、内紛のさなかにあった。
そこに民族共産革命勢力という凶暴な伝染病が蔓延し、活動を始める。
少数民族は、主流民族に対する権利の要求と同時に、
権力と私財を奪おうとする共産主義勢力と戦わなければならない羽目になった。
結果的に民族の糾合を阻害された少数民族は、弱体化し、
オーストリア・ハンガリー帝国は、空中分解から救われたことになった。
少数諸国と民族共産勢力の内紛は、拡大し、泥沼化。
チェコスロバキア、ハンガリー、クロアチアの支配層は、自らの権力と私財を守るため、
オーストリア軍に支援を要請。
しかし、オーストリア内でも民主化と反貴族勢力が拡大していた。
そして、オーストリア・ハンガリー帝国は、民族共産主義掃討のため、
ドイツ帝国に救援を要請する。
オーストリア・ハンガリー帝国の内部崩壊を救ったのはドイツ軍派遣軍だった。
貴族と地主たち
「階級闘争か・・・」
「これで、あいつらを大人しくさせられるだろうか」
「とにかく、鎮圧した後、妥協しないと、度々武装蜂起されたら困る」
「もっと早く、妥協していたら良かったんじゃないのか」
「これほど酷くなると思わなかったんだ」
「それに封建社会は、支配か、無法地帯か。領民に舐められると駄目なんだ」
「貴族と地主層もかなり殺されたし、余剰土地を分配できる」
「共産勢力を根絶やししたら、領民の権利を認めて和解しよう」
「・・・しょうがないか」
ドイツ軍と連合したオーストリア軍は、民族独立組織を虱潰しに破壊していく。
そして、反乱を起こした独立運動家は処刑。
領民の権利を認めつつ、
各民族・宗教・民族・文化・言語ごとに細分化た自治区に押し込められていく。
ドイツ規格兵器の使用が決めつけられ、
シュワルツローゼ重機関銃(8mm×56R)など全て輸出させられてしまい。
チェコの工場で、(7.92mm×57)系に改造させられてしまう。
「持ち直したようですね。カール1世陛下」
「感謝します、ウュルテンベルグ大公」
将軍は、ドイツ軍人でありながらオーストリアの大公でり、
ドイツとオーストリアの民族的差異を象徴するような立場だった。
「この際、少数民族のいくつかを処分して、後顧の憂いを断ちましょう」
「利権の方は・・・」
「まぁ 決められたモノは頂く事になるでしょうな」
「決められた範囲でお願いしたいですな」
「ええ、陛下、無論です」
オーストリア・ハンガリー帝国は、民族共産主義が荒れ狂い、
屋台骨が崩れつつあった。
帝国崩壊を防いだのは、ドイツ帝国派遣軍であり、
ハプスブルク家は、オーストリア・ハンガリー帝国の国益の一部をドイツ帝国に売り渡し、
ドイツ系以外の庶民生活は、さらに悪化していく。
ドイツ帝国兵士たち、
「ったくぅ 闇市場に流れた武器弾薬のおかげで嫌な思いしたぜ」
イギリスでインド独立運動を抑圧するローラット法が制定
03/23
イタリア
ベニート・ムッソリーニが “戦士のファッショ” 後のファシスト党を結成
個人と個人の戦い、
企業と企業の戦い、
多くの場合、生存競争で勝つは、敵の生産能力を奪い、己が生産能力を守り、
敵を労働者、消費者とすることで、生存圏を拡大することである。
戦争は、互いに軍事力をぶつけ、戦いに勝つことで勝敗を決するものではない。
戦争の最終目標も、敵の生産能力を奪うことである。
平時も、戦時も、戦いの最終目標は同じ、敵の生産力を潰し、
己が生産力を拡大し、敵を労働者、消費者とすることである。
そして、誤解されているのは、市場拡大が必ずしも利益に結び付かない事であり、
まして、戦場で勝ち、
占領地を増やす事を国家の最終目標としているとしたら愚かといえた。
敵の生産力を支配する。
あるいは、生産力を奪い、
あるいは破壊しなければ、真に勝った事にはならないのである。
そして、戦争によらずとも経済の力によって、彼我の採算性で敵の市場を席巻し、
敵の生産力を弱体化させ、
遂には、その産業を滅ぼすことも可能だった。
そして、生産力を奪われた植民地があった。
インド
植民地支配も場の支配に過ぎず、利益に直結するのは一時的であり、
イギリスのインド支配も、特権が怠惰になるにつれ、負担が増したのである。
そして、真に利益を求めようとするなら、
誰もが避けたがる特権構造に切り込みを入れないとならないのである。
イギリスがインドに日本人街を建設させ、
インド支配を強めたのは、特権構造に切り込みを言えることなく、
植民地維持を貫きたがっただけと言える。
インド発祥の仏教は、遠くシルクロードを越え、
変貌しつつ、極東の島国で大成した日本仏教が本家インド仏教とまみえる。
歴史的な現象と言えたものの、
本家インド仏教を代表する仏教はインドに存在せず。
仏教の歴史・体系でいうなら、
末娘の日本仏教が、本家インド仏教に接ぎ木しようとしていた。
日本人街は、産業の牙城と同時に、日本仏教の牙城であり、
この時代もっとも精力的な新興宗教 大本の足場でもあった。
その宗教が生きているか、死んでいるかで言うなら、
庶民に物理的・世俗的な迷惑がかかろうと、精神的・神聖的な指針が生まれようと、
既得権に依存する教団は、生きる屍であり、
既得権を得ようともがく教団は生きているといえる。
どちらにせよ、宗教は、民衆の精神と規範を正し、
言語、文化、人種の枠を超えて、嘘、盗み、人殺しを抑制し、
コミュニティーを形成する。
権力を補完しつつ癒着しやすい傾向にあり、
唯物史観、唯物思想、共産主義に対するワクチンの一つといえた。
無論、ミイラ取りがミイラということもあり、世俗化したり、
宗教間の利害対立を生み、争いの焦点ともなった。
04/06
マハトマ・ガンジーが第1次サティヤーグラハ(非暴力・不服従)運動を開始する。
「私は、あなたがた日本人に悪意を持っているわけではありません」
「あなたがた日本人はアジア人のアジアという崇高な希望を持っていました」
「しかし、今では、それも帝国主義の野望にすぎません」
「そして、その野望は、実現することはなく」
「アジアを解体する張本人となってしまうかも知れません」
「世界の列強と肩を並べたいというのが、あなたがた日本人の野望でした」
「しかし、もっとも近い同族の住む半島を売り渡し」
「欧米列強の植民地支配に手を貸す」
「これらのことで、実現するものでないはずです」
「あなたがたは、いかなる訴えも耳を傾けようとはしない」
「ただ、金にのみ耳を貸す民族と聞いています」
日本人たちが動きを見守る。
「ヒンズー教か・・・」
「実に身に抓まされるねぇ」
「干渉するのか?」
「いや、一応、イギリス側で、同情するという感じかな」
「なんか、インドは、火中のクリを拾ったような気もするね」
「なにはともかく、イギリス領の中なのだから、反英はまずいよ」
「ちっ どうもイギリス人は、信用できねぇ」
「あははは・・・」
「インド人は、もっと信用できねぇ」
「あははは・・・」
「日本人同士、団結できて良いんじゃないか」
「甘い! 日本人は、フラフラしているから、どっちかと組もうとするよ」
「ったくぅ〜 ロクでもねぇ」
04/13
インド アムリットサルで独立運動が起こり鎮圧されていく、
日本人たちが暴動を眺めていた。
「やっぱり、インドの戦争協力でもない限り、イギリス行政は優位か」
「インド人だって、バラモンとカースト支配ばかりじゃ 嫌なんだろう」
「内政が酷いと、内憂外患か」
「日本だって、外圧を利用して士農工商を潰したよ」
「士農工商を潰したのは、民衆を味方に付け明治政府を正当化する方便だよ」
「薩長だって、四民平等はお為ごかしで、本音は、いやだっただろうよ」
「まぁ 平民だってエタ・ヒミンと同列は嫌そうだったからね。ロクでもねぇよ」
「じゃ インドもその過程にあるわけか」
「インドはどうかな・・・」
瑞樹州で関南守備軍が創設され、
上陸した日本駐屯基地が整地されていく。
政府関係者たち
「指揮官に演習の裁量権を与えて大丈夫か?」
「軍部は、暴走して予算獲得を狙わないだろうな」
「地域限定なら大丈夫だろう」
「南のオーストラリア領守備隊と西のオランダ領守備隊は大人しいよ」
「だいたい、国内開発等閑なのに、予算欲しさの軍が暴走じゃ ばか丸出しだよ」
「出世と昇級。世間体しか頭にないと無理じゃないかな」
「ちっ どいつもこいつも・・・」
「官僚の暴走を止めるなら人事権を奪うか、予算を絶って日干しにするしかないね」
「政治家に官僚の人事権を取られると、法が捻じ曲げられやすくなるし」
「犯罪を犯した政治家を捕まえらんねぇ」
「それに利益誘導の民主主義で選ばれた政治家が正しいとは限らないだろう」
「特権と聖域潰しだよ」
「権力分散は独裁防止で、選択の余地はないからね」
「なんか、権利の潰し合いで、脳無し日本になりそうだ」
「別に戦争したいわけじゃなし」
「当分は日英同盟で堅持で、外貨を稼ぎながら内向きの開発でしょう」
「まぁ 南洋の防備は必要だし、軍艦を沈められるよりマシかも」
「しかし、こう・・雨ばかりじゃ カビ臭いと、かなわんよ」
「やっぱり、山の上の方が涼しいかもね」
「水力発電は良いとして、問題は、自給自足と鉱物資源の開発かな」
05/04
清国は、資源を売却することで近代化する。
少なくとも、労働搾取だけで近代化しなければならない日本より有利といえた。
ただ、中華思想的な傲慢さがあり、利己主義であったこと、
中国官僚の不正腐敗が産業の種籾まで食い潰してしまうこと、
日欧米露に対し、社会制度と近代化で後塵であったこと、
これらが複合的に合わさり、
中国大陸が持つ資源と労力と資本を発揮し得なかった。
これは、国家の礎である民の信頼関係が前提で必要であり、
一定以上のモラルが求められたのである。
清国の民主化が進むと急速な近代化のため、
多くの資源が捨て値で輸出され、強制的な労働と搾取も同時に行われる。
清国の不正腐敗は、他国のそれをはるかに上回り、
他国が10の投資で1が搾取され、9の成果を上がる、
中国は10の投資で9が搾取され、1の成果しか上がらず。
中国官僚たちは自衛のため、
私財を国外の銀行口座に移してしまうのだった。
とはいえ、清国が大国である所以は、その10に一つ1の成果で十分な進歩がみられ、
発電所、造船所、鉄道、工場が建設されていく、
発電所建設現場
アメリカの資本家たち
「また追加の建設と修理だって」
「自分でやりたがるから、任せたけど、本当にいい加減だな」
「自分で壊してもう一度、修理させて一部を自分のポケットに入れちゃうんだよ」
「中国って偉大だねぇ」
「10倍の建設費で私腹を肥やして銀行口座に隠してしまうんだから」
「まぁ 良いけどね」
「また反欧米運動が起こるかも・・・」
「そん時は引き揚げれば良いよ」
「しばらくしたら、また賠償して、資源を売り捌いて、近代化しようとするから」
「面倒見の良い日本人を押さえとけよ」
「あいつらバカだから漢民族に同情して、すぐ助けようとしやがる」
「日本人は、瑞穂州開発で忙しそうだし。大陸から排除しているから大丈夫だろう」
「問題は、近代化の遅れで、清国が旧式戦艦を購入しようとしていることかな」
「清国は日本海軍と違って、改装できなさそうだからな。それほど怖くないよ」
「問題はどの国のを買うかだろう」
「ドイツ海軍?」
「そういえば、ナッサウ型戦艦の代替のヘルゴラント型戦艦4隻を建造してたな」
「いや、購入はイギリス海軍という事もある。日本じゃ買い支えられないほど建造してるからね」
「イギリスも植民地を守るために必死だな。見てて見苦しいよ」
「いや、日本海軍という払い下げ海軍があるから建造しているんだよ」
「あれじゃないのか、水魚の交わりの関係」
「ちっ 厄介だな。何とか、日英同盟を破棄させたいよ」
ドイツ帝国は、ナッサウ型戦艦4隻の代艦ヘルゴラント型戦艦の建造を進めていた。
いくらイギリス海軍と争う事をやめ、
大海洋艦隊の建造を諦め、潜水艦を主力としても、
水上艦隊は必要だった。
そして、必要最低限の戦艦を建造する。
当然、建造するのは
イギリス海軍27000トン級リヴェンジ型戦艦5隻。
アメリカ海軍32000トン級ニューメキシコ型戦艦3隻。
米英の最新鋭戦艦を超える戦艦だった。
外洋の植民地を活用する戦艦であるため、
高速であり、耐波性良好であり、航洋性のある戦艦が望まれる、
波の抵抗を減らすため自然と全長が伸び、
ディーゼル機関電気推進機関が望まれた。
無論、技術的にクリアしておらず、次期に持ち越されていた。
ドイツ帝国 キール造船所
ヘルゴラント型戦艦 | 4隻 | |||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | 兵員 | |
34000 | 240×30×10 | 120000 | 27 | 10kt/10000海里 | 900 |
47口径381mm砲連装4基 | 50口径105mm連装砲8基 | 水上機3機 | |
ヘルゴラント、オストフリースラント、チューリンゲン、オルデンブルク |
ヘルゴラント型戦艦4隻は、飛行船用の相互補給装置が備えられていた。
微風以下限定でも戦艦の上空に飛行船が浮いている意味は大きく。
ドイツ海軍は、索敵で仮想敵とする艦隊より有利といえた。
また、戦艦というより巡洋戦艦に近く、
高速戦艦というべき艦種に近付いていた。
「植民地の産業が軌道に乗るまで年月がかかるからな」
「ドイツも米英旧式戦艦を払い下げと改修で繋いでいく方法もあるけどね」
「米英も安心で通商は自由だからか? 絶対嫌だ」
「まぁ 日本と違ってイギリスの倍以上の鉄鋼生産だ。そこまでせずとも良いだろう」
「日本も中古戦艦を手間暇かけるのは煩わしそうだな」
「石炭、鉄の少ない日本は、選択肢が少ないからね」
「プライドが邪魔しないのなら、だろう?」
「まぁな、どうせ、黄色人種に守るような体面なんてないだろう」
「しかし、ヘルゴラント型戦艦は、ナッサウ型戦艦の倍近いな」
「潜水艦を主力にして、こうやって、最強最高の戦艦を年月を開けて建造するのも手だろうな」
「イギリスがいくら戦艦を持っていても、その時々で高性能戦艦を建造するだけでいい」
「イギリスは慌てて対抗できる戦艦を建造するから疲弊する」
「・・・・もう少し幅が欲しいところだが、20000トン級戦艦なら軽く撃沈できるだろう」
「生憎、植民地の修理用ドックがこのサイズ何でね」
「もっとドックを大きくしろよ」
「戦艦を建造できなくなるよ」
「ちっ あっちもこっちも金を欲しがりやがる」
「まぁ そんなものでしょう」
この時代の自動車は、鉄と燃料で余裕のあるアメリカが主流だった。
自動車発祥の欧州でさえ、自動車は一般的ではなく、
1769年、フランス、蒸気自動車制作。
1827年、イギリス、定期バス運行。
1886年、イギリス、電気自動車制作。
1891年、ドイツ、ガソリンエンジン車制作。
1907年、フォードT型車が量産。
日本初のガソリン自動車タクリー号(8馬力)作成。
1911年、イギリス、馬車が消え、公共自動車バスに切り替わる。
1912年、日本でフォードT型車によるタクシーが運行。
この頃、自動車は、公共機関のモノであり、大金持ちの所有物だった。
南極探検隊のスコットの雪上車が壊れてなければ機械は、信頼されていたかもしれず。
欧州危機の折、戦争が起っていたなら機械産業が大きくなり、
機械に対する認識も変わり、自動車の台数も増えていたと考えられたりする。
しかし、欧州貴族社会は、馬車が主流であり、
自動車に対する偏見がなければ、もう少し、広まっていた可能性もあった。
その他、様々な理由で日本の自動車産業も、ゆるやかに伸びていく。
工業社会は熱意、想像力、経験、資源、資本、蓄積された技術の総量によって決まる。
そして、自動車社会の拡大が緩やかである方が後進国にとって有利であり、
巻き返しの機会も増えた。
日英同盟の絆が深まるにつれ、
イギリス製の自動車や公共バスが日本で増え始めていた。
若者は、見ることで新時代を実感し、啓発され、想像力を掻き立てられていく。
自動車会社
「器は薄っぺらな鉄板だから作れても、エンジンは模倣するしかないな」
「海軍もそうだってよ」
「旧式戦艦を購入する時、新型機関も一緒に購入しているらしい」
「大砲を減らし、馬力を倍に増やしているだけだと」
「それじゃ 国産が弱いってことか?」
「民間船は、製造が楽だし、模倣したモノをたくさん作っているから大丈夫なんだと」
「じゃ ガソリンエンジンを作れる人間をもっと増やすしかないだろうな」
「ガソリンエンジンは、模倣と工夫で発達していったっていうし」
「日本は、燃料がないから、電気自動車も悪くないぞ」
「電気自動車か、瑞樹州は発電用ダムを造れるからいいけど日本は、微妙だな」
組み上げられた国産エンジンのピストンの隙間から火線が飛び出していく。
「駄目じゃん」
「あははは・・・」
黎明期の日本製造業は、欧米諸国と比べ、
治金技術で劣り、加工精度で劣り、人材の層でも劣っており、耐久時間が短かった。
それでも国内企業を保護しつつ、
粗製濫造品を国民に押し付けなければ国内製造業は成長しえず、
国家も国民も甘んじて負担しなければ近代国家となれないのだった。
イギリス領インド
ガンジス川河口 ダッカ 郊外
広告塔代わりの日本人部隊がガンジス川の砦の一つに配備される。
ロシア帝国を撃ち破った日本軍を使い、インドの独立運動を押さえ込む作戦であり、
イギリスにとって実験的な試みだった。
無論、利権分けが行われ、
民需限定の無関税で日本製品がインドに流れ込むことになった。
砦の見張り台。
新型8式小銃(7.7mm×56R)が立て掛けていた。
機関銃はそのまま使えても、
小銃は反動が大き過ぎてエンフィールド小銃を使いこなせなかった。
口径 | 銃身/全長 | 装弾数 | 重量g | 初速 | 発射速度 | 射程距離 | |
エンフィールド | 7.7mm×56R | 640/1130 | 10 | 3900 | 744m/s | 918m | |
ヴィッカース重機関銃 | 7.7mm×56R | 720/1100 | 250 | 50000 | 760m/s | 450〜600 | 740m |
8式小銃 | 7.7mm×56R | 640/1100 | 10 | 3700 | 700m/s | 618m | |
基本的にエンフィールド系で互換性があった。
日本軍は、射程より、命中率を重視し、弱装弾を使用する。
そして、イギリス仕様の強装弾は、衝撃が大きいものの、撃つことができた。
8式小銃の規格品質は、38式歩兵銃より格段に優れ、
部品の共有化も進んでいた。
折り畳まれた銃剣は、騎兵銃仕様であり、芸術的な美しさも見せていた。
もっとも強装弾は、反動が強過ぎて命中率が下がり、
弱装弾は、反動が弱くても初速が小さいことから弾道が、お辞儀しやすかった。
日本軍上層部の本音は、小口径尖突形状弾思考だったものの、
同盟戦略上の選択と言えた。
「蒸しあぢぃぃ〜」
「軍隊を配置して商売したって、利潤なんて、たかが知れているんじゃないの」
「軍事費と貿易は別会計だからね」
「まぁ 貿易商の使用料なんてたかが知れているし」
「じゃ 結局、国税で支払われるんじゃないか」
「重商主義なんて、どこの国でも、そんなもんだよ」
「やだねぇ」
「まぁ この砦に関しては、イギリス負担らしいけどね」
「お金持ちぃ〜」
「日本がドイツと組むんじゃないかって、イギリスも必死なんだよ。きっと」
「良い気味、良い気味」
08/08
第三次アフガン戦争、
アフガニスタンとイギリスがラワルピンディ条約を締結
08/19
アフガニスタンは、イギリス領に組み込まれる。
イギリス将校に案内される日本人たち
「どうだろう。この辺は、いいところだぞ」
『どこがだよ』
『ロシア帝国に国境が接してるじゃないか』
『ヤバくない?』
『なんか、イギリスが負けると巻き込まれ損な気がしてきた』
『だいたい、横柄なくせに面倒事をこっちに押しつけやがって』
『利権は、どうなんだ』
『悪くない』
『って、良くないとも取れるだろう』
『ロシア帝国と戦争なんてした日にゃ御破算だからね』
『少しは、当てにされているのか?』
『そりゃ 工業さえ整備すれば、小銃と機関銃くらいなら量産できるからね』
『じゃ 日英印同盟軍で戦線を維持するわけだ』
『力関係が変わってしまうような大きな戦争は困るよ』
『日本が有利なら良いけど』
『主導権を執れず、ズルズルなのが嫌なんだよ』
『でも、イギリスと組んでたら、たなぼたの場合もあるよ』
『なら良いけど』
地中海
イギリスにとって地中海は、スエズ運河とインド洋に至る海域であり、
どうしても押さえたい海だった。
現在、この地中海に巨大海軍国はなく、
地中海に面したフランスは、植民地防衛のため、
イギリスと敵対する意欲を失っていた。
イタリアは、国力が小さく、工業化で遅れ、
イタリア人は、個人のためであれば誰よりも勇壮だったものの、
国家のために死ぬといった気概はなかった。
オーストリア・ハンガリー帝国は、ハプスブルク王朝大事であり、
アドリア海に閉じ込められ、海軍の再建は、後回しだった。
トルコ帝国もアラブ・イスラムの離反を防ごうと躍起になっており、
こちらも海軍の再建は、進んでいなかった。
イギリスは、地中海航路を自由に往来しており、
脅威として上げられるとしたら、
小規模ながらも、ドイツ駐留艦隊だけと言えた。
人は戦争を嫌い、支配を好む。
そして、人が好む支配欲が、他者の人権と利権を侵害し、
人の望まない争いを引き起こし戦争に至る。
争いの結果は、当事者双方にとって最悪の結果を招きやすく、
漁夫の利を狙う第三者の手に利益が転がり込みやすかった。
そして、憎しみの積み重ねられると、この構造を知っていようと争いは止まらないのである。
オーストリア・ハンガリー帝国
民族共産主義の掃討が終わり、
領民の権利が拡大した後も反貴族運動は収まらなかった。
そして、独墺安全保障に反発した民衆が立ち上がり、
独墺軍によって殲滅されていく、
貴族と地主たち
「ロシア帝国と違って、貴族の縮小に失敗してるからな」
「一般民衆を敵にするのはまずいよ」
「一人当たりの権利は拡大しているし、農地も増えている。何が不満なんだ」
「武器を持っていたら使いたくなるんだよ」
「しかし、民衆の武装蜂起を潰すと、今度は民衆同士の潰し合いで犯罪が増える」
「それくらいなら我慢だね」
「しかし、いったい誰が横流ししたんだ」
「イタリアとか、ロシアとか、だろう。ドイツ製とチェコ製だってあった」
「スイス製もあったな」
「あいつら・・・・」
反貴族運動が強くなるほど、帝国国益がドイツ帝国に切り売りされていく、
そして、狩りだされた反貴族勢力は強制労働となり、
ロシア国境沿いに堡塁が建設させられ・・・
オーストリア・ハンガリー帝国権益は、ドイツの手に渡されていく、
この時期、オーストリア軍の軍服は、ドイツ軍の軍服に似たモノになっていた。
ホーフブルク宮殿
「オーストリア・ハンガリー帝国は、持ち直せそうですね」
「ドイツ軍の介入で勝ちは決まったようなものです」
「藪蛇にならなかったのが奇跡だ」
「チェコ人、マジャル人、ポーランド人の反逆が少なかったのが救いだな」
「まぁ 諸民族は状況が不利に引っくり返れば裏切り、密告してくるからね」
「どちらにしろ、諸民族は反旗を起こして国益を損なわせ、裏切り・・・」
「なんと愚かな事をするのか」
「ドイツ帝国を喜ばせているだけではないか」
「諸民族もハプスブルク朝を支えていれば浮かぶ瀬もあったというのに・・・」
「平等で公平な連邦にしなかったからでは?」
「ドイツ系の傲慢が、それを許さなかったのだ」
「ハプスブルク朝は、彼らドイツ系によって支えられている」
「他の民族ではオーストリア・ハンガリー帝国を保てない、駄目なのだ」
「このままでは、ドイツ帝国の傀儡にさせられてしまいそうですね」
「愚か者どもが・・・」
ドイツ帝国がオーストリア・ハプスブルク帝国崩壊を防いだのは善意ではない、
同じ君主制民主主義の崩壊を防ぐためと、
オーストリア・ハンガリー帝国の権益を得るためだった。
そのいくつかの利権の中、
アドリア海に面して3つの島があった。
パラグルジャ島―65km―スシャツ島―44km―ムリェト島
帝国ダルマチア領であり、クロアチア人の住む世界であり、
アドリア海の東岸の入りくねった狭い土地と島々から成り立っていた。
パラグルジャ島(全長1400m×幅200m。0.4209ku) アドリア海の中央の小島。
スシャツ島(4.6ku) 中間島
ムリェト島(全長37km×幅3km。100ku) ダルマチア南端の根拠地
そこにドイツ軍の基地が建設され、僅かなクロアチア人が追い出されてしまう。
根拠地のムリェト島は軍艦のような形をしており、
ドイツ軍は、発電所、空港、軍港、要塞を建設していく、
軍事的な意味合いも大きく、
ダルマチア領は、イタリアが未回収領地として狙っていた領地であり。
ドイツ領の出現は、オーストリア・ハンガリー帝国の保全と安全保障とも直結していた、
これら3つの島に45口径381mm砲が配置され、
飛行場が建設されようとしていた。
3つの島に1500トン級Uボートと800トン級水雷艇が配備されると、
地中海で覇を競うイギリス、イタリア、フランスの脅威となっていく。
もっとも、ドイツ帝国の目当ては地中海市場であり、
ドイツ人が商才に長け、そこに商業用地を置けば、大きな利益が見込めた。
オーストリア帝国軍港トリエステは、ドイツ語権益とイタリア語文化の間で不安定であり、
ムリェト島に海軍工廠を建設すると、
最大の顧客は、オーストリア・トルコ海軍になりそうだった。
オーストリア海軍、
戦艦7隻、装甲巡洋艦8隻、巡洋艦10隻、駆逐艦27隻、水雷艇46隻、潜水艦6隻
フィリブス・ウニティス型戦艦 | 4隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
20000 | 152.2×28×8.5 | 26400 | 20.3 | 10kt/4200海里 |
45口径305mm砲3連装4基 | 50口径150mm砲12門 | 50口径70mm砲18基 | 533mm魚雷4基 |
フィリブス・ウニティス、テゲトフ、プリンツ・オイゲン、セント・イシュトヴァーン |
ラデツキー型戦艦 | 3隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
14508 | 137.5×24.6×8.1 | 20000 | 20.5 | 10kt/4000海里 |
45口径305mm砲連装2基 | 50口径240mm連装砲4基 | 50口径100mm砲20基 | 450mm魚雷3基 |
37mm4基 | |||
エルツヘルツォーク・フランツ・フェルディナント、ラデツキー、ズリーニ |
ドイツ帝国は地中海諸国の海軍が協力であっても構わず、
むしろ好都合なことから、得意分野の工業力でオーストリア海軍とトルコ海軍を強化。
間接的な地中海支配を企んでいた。
ムリェト島の上空、
巨大な飛行船が浮く。
ドイツ帝国の勢力圏には必ず飛行船が浮いており、諸外国を圧倒する。
全長250m×全幅41m級飛行船は、100トン空輸で植民地開発を進めており、
ドイツ帝国は、飛行船300隻30万トン空輸体制も目指していた。
この数値は、イギリス商船隊の輸送能力と比べると些細なトン数に過ぎない。
しかし、速く、直接、目的地へ降ろせる強みは絶大だった。
ドイツ海軍 Uボート 艦橋
「・・・良いねぇ 青い空、青く透けた海 って、殺す気か」
「地中海の平均深度は1500mくらいあるよ」
「それだって、透明度が高いと発見されやすくなる」
「イギリスとフランスがドイツ海運の妨害をしないのは、Uボートを恐れているからだよ」
「地中海は狭過ぎる。透明度が高過ぎる。波静かで天候が良過ぎる」
「潜水艦にとっては最悪だな」
「アドリア海の制海権なら600から800トン級高速水雷艇で十分な気がするね」
「というより、もう少し、樹木を育てるべきだろうね。そうすれば海がもっと豊かになりそうだ」
「土地が痩せているからな」
「スシャツ島とパラグルジャ島(全長1400m×幅200m、0.4209ku)は、どうするの?」
「スシャツ島はともかく、パラグルジャ島は幅100kmもないアドリア海の中央の島だ」
「だがアドリア海の中央だ。要塞化すれば大きいだろうね」
「イタリアが怒ってオトラント海峡を封鎖したら事だよ」
「アルバニアがウンとは言わないと思うね」
「こじれると大変では?」
「飛行船は便利だよ。オーストリア帝国領空を飛べるようになったし」
「まともな港がなくても100トン単位で物資を降ろせる」
「それも、気付かれないほど速く輸送できるからね」
「また言われそうだな。ドイツ人は美しい島を台無しにする無粋な連中だってな」
「まぁ もう目の敵にされてるからな・・・」
水上戦闘機ハンザ・ブランデンブルク W.29 | |||||||
重量/全備重 | 馬力 | 全長×全幅×全高 | 翼面積 | 速度 | 航続距離 | 7.92 mm機銃 | 乗員 |
1000/2100kg | 150 | 8.07×13.57×3.38 | 32.2 | 175km/h | 4時間 | 固定×2 | 2 |
後部×1 |
アドリア海を挟み、イタリア空軍と対峙するドイツ空軍の水上戦闘機が着水してくる。
天候が穏やかで波静かな地中海は、水上飛行機、水上飛行艇が使いやすかった。
そして、意外にもこの時代、陸上機より、
離陸距離を自由に伸ばせる水上機の方が高速機になりやすかった。
1913年に始まったシュナイダー・トロフィー・レースは水上機の最高速度争いであり、
長距離を自由に滑走できる水上機は、高速機型の機体でも十分飛翔させることができた。
オスマン・トルコ帝国
一時、欧州最強最大勢力だったオスマン・トルコ帝国も近代化で失速してしまう。
イスラム法は、金融経済を抑制するため、資本家が育たず、
資本運用が出来ないでいた。
ロシア帝国の南下で前時代的なトルコ軍の実力が暴かれ、
東欧の支配地は独立していく。
トルコは近代化を望むほどイスラム教から離れ、
アラブ・イスラムの反発が大きくなっていく。
アラブの反乱は、オスマン・トルコ帝国の屋台骨を砕こうとし、
イスラム教からの離脱は、トルコ人の精神的支柱を揺さぶる。
近代化のため、大量の穀物と資源が西欧に輸出されていく、
しかし、西欧経済に依存し過ぎたことにより、
肥料と農薬を使った近代農法で遅れ、
欧米列強の市場介入により財政は破綻していく、
オスマン帝国は、瀕死の病人の如く焦り、
ドイツ軍の協力を得ることで、アラブの反乱を挫いていく。
ドイツ軍の一斉射撃がアラブ族長軍を撃退していく。
ドイツ軍将校とトルコ軍将校。
「まさか赤の他人と共謀して、遠い縁戚を殺戮しなければならないとはな」
「骨肉の争いは、信頼の分だけ、憎しみも倍増ですからね」
「利害関係の少ない他人と共謀して身内を責める、世の中そんなもんですよ」
「それに彼らだって、フランスとアメリカから武器と弾薬を購入している」
「ふっ 良くある話しでも、国家間でそれをやると辛い」
「なんなら、引き上げますか?」 ドイツ軍将校。
「いや、このまま殲滅してくれ」
ドイツ外人部隊は、独立を図るアラブ・イスラム軍を鎮圧していく。
09/10
独墺安全保障条約調印。
不平等条約であり、
オーストリア・ハンガリー帝国でドイツ規格の兵装が使われることになった。
反貴族蜂起を行った勢力は有力者ごと潰され、落ち着き始める。
10/28 アメリカ合衆国で禁酒法が否決される。
ホテルのロビー
権力者とか、資本家とか、
「まいった、まいった。一度、火を付けた民衆を沈めるのは月日がかかるよ」
「教会もすぐに言い分を変えられないからね」
「まぁ 戦争にならないのなら、酒を制限しても穀物輸出は必要じゃないから」
「欧州で戦争が起きてれば、穀物輸出で国力を大きくできたのに・・・」
「戦争が起きなかったものはしょうがないよ」
「しかし、大きな利潤を上げられないとクライアントが怒るよ」
「クビになりたくなければ、どこか・・・戦争でも起きないかな・・・」
「ドイツ人の移民が少ないと真面目な人間が減るよね」
「取り合えず、東欧から移民を集うか、産業を大きくできる」
「東欧か・・・気質で微妙だな・・・」
「アメリカの科学技術は、ドイツ、イギリスに比べて遅れている」
「個人の才覚を生かせるのはアメリカだよ」
「移民して来る者は、食いっぱぐれが多いよ」
「つまり、悪いやつ、脳無し、貧しい者・・・」
「個人の才能を最大限生かせても世代が一回りか、二回りしないと」
「イギリスとドイツは、既得権が強く、成果報酬が低過ぎる」
「資本主義は、成功報酬を増やすことで人を集め」
「共産主義は、強制的に成果報酬を還元させられるて、意欲が衰える」
「資本主義のアメリカが勝つよ」
「個人の成功も欲望なら、公平も欲望だよ」
「公平は、やっかみだろう」
「人のやっかみは大きいよ。成功できるのは、ほんの一握りだけだ」
「じゃ やっかみを誤魔化さないと社会運動が激しくなる」
「やはり戦争でも起きないと、大きな収益にはならんな」
「狂犬じゃあるまいし、戦争したからといって戦争する国なんかなかろう」
「日本には、期待していたんだがな。失望したよ」
「日本は、国内外の利害を超えて、帝国主義国家の需要に応えているよ」
「まさか、国際経済で肉を切って骨を断つ国が出るとはな」
「世界中の列強相手のか、効率の良いことだ」
ロビーの壁際、男たちがいた。
「また悪巧みか」
「アメリカは君主がいないから国民さえ御せれば怖いモノ知らずだ」
「官僚は、権力者に従うしかない」
「日本の長官は、官僚任せだってよ。羨ましいねぇ」
「長官じゃなくて、大臣だろう」
「たいしてかわんねぇよ」
「政策のことは知ってるんじゃないのか?」
「御神輿らしいよ。知ってるのは、選挙での勝ち方と予算の利益誘導」
「政策を知ってる大臣が立つと、官僚が追い出しに掛るそうだ」
「そんな官僚。クビ切ればいいだろう」
「できないんじゃないの」
「すげぇ 羨ましい、悪いことできる」
「無理だろう。アメリカは、政治家の方が頭が官僚より頭が良くて」
「日本は、官僚の方が政治家より頭がいい」
瑞樹州(北東ニューギニア)
いくつもの河川が蛇行しながら緑の大地が広を分けていた。
毎日のように熱帯雨林特有の土砂降りのスコールが降り、
表土を押し流していく、
晴れ間は、サウナの如くで、人が住む上で最悪の環境と言えた。
ニューギニアの山岳は、標高が高く、水量が多く、
本格的に発電ダムが建設されるなら、発電量は日本本土をはるかに超え、
十分な電力が得られるなら事情が変わり、
開発が進めば、水上都市が建設されていく、
日本がこの地に投資をするのは、増大する人口を逃すためであり、
瑞樹州を第二の日本にするためだった。
例え欧米列強でも、日本と瑞樹の連携なら対応しやすかった。
鉄橋建設工事
「入植の先住権利を、もっと認めて欲しいよね」
「それやると後から入植する者が搾取されるだろう」
「先に苦労して入植しているんだから、うまみが欲しいよ」
「程々にしてくれよ。搾取が酷いと、第二の祖国が失速する」
「まぁ そうだろうけどねぇ」
「そういえば、インドに人材が取られるらしいよ」
「追加のインド駐留部隊か。不良国民を出せよ」
「そいつらを海外に出すと日本の評判が落ちる」
「ちっ 上手くいかないな」
「移民すると一時的に苦労が大きくなる」
「人は、生活水準を落とすのを死ぬほどいやがるというのに・・・」
「というより、生活水準を落とすくらいなら殺したくなるよ」
「余程の資本投資をしないと人は移民で動かないよ」
「まぁ 楽をするために楽をするというか、卑劣な奴ほど楽をしたがるからね」
「そんなのどこにでもいるよ」
「しかし、もっと鋼材がいるな」
「錆びは?」
「雨が多いからな。どうしても錆びやすいよ」
「塩分が少ないなら、ステンレスが良いかもね」
「製造費が高くないか?」
ステンレスの材料は、鉄、クロム、ニッケルであり、
熱処理加工は、さらに困難だった。
「発電所で電力さえ作ってしまえば、何とかなるよ」
「発電所と送電機器もステンレスで作った方がいいな。錆びそうだ」
「・・・・」
ブラジル
コーヒー生産州サンパウロ州の農園主と畜産・酪農州ミナスジェライス州の農園主。
二つの州が交互に連邦大統領を出すカフェ・コン・レイテ体制が崩れようとしていた。
日本の入植者は、コーヒー農園から次第に水力発電ダムと、
鉱山を握る企業体へと移行し、有力な日系基盤を構築していく。
独立採算制で利益を上げられるようになった日系企業は、日本へ資源を売却し、
日本商品を購入。南米市場に参入していく、
日系新聞社
「ポルトガル語併用は、紙面の無駄にならないか?」
「人は情報を欲しがるからね」
「全部は無理でも大まかに分かるようにすべきだよ」
「ポルトガル人の攻撃をかわしたいのなら、日系人を理解して貰うのが一番か・・・」
「上層部に配れるくらいは、ポルトガル語を併用したい気もするが」
「やはり、権力層か・・・」
「国を動かしているのは権力者さ」
「マスメディアの力なんて、事実を書くぐらいの力しかない」
「ペンで民衆を立ち上がらせたり」
「暴動を起こさせたり出来るなんて考えてるやつは、お花畑の間抜け」
「アメリカくらい民主主義ならマスメディアも強いだろうけど」
「それだって、事実誤認を書けば断罪されるし」
「国民を扇動するような事を書けば潰されるよ」
「まぁ 事実を書いても権力者がヤバいと思えば潰されるし、強行すれば殺される」
「せいぜい、政府より穏便に、民衆向けに正確な記事を書いて済ませることだね」
「んん・・・」
「お気に召せば、ブラジル政府に気に入られる」
「まぁ ヨイショは得意だけどね・・・」
「問題は、カフェ・コン・レイテ体制に対する姿勢だな」
「とりあえず。政府寄りに利益と不利益を書いとけばいいだろう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です。
史実と違って、共産主義勢力が衰滅させられていきそうです。
ドイツ帝国は植民地経済で躍進、
オーストリア帝国は、ドイツ帝国の保護国化でしょうか、
ロシア帝国は自助能力を発揮して保全。
貴族世界は三者三様で命脈を保ちます。
日本産業は、先鋭的な成長でなく、
平均均衡で量的な拡大を目指しているようです。
ブラジル移民者たちの愛憎、
史実では棄民だったので、日本に対する気持ちは、愛憎染みている気がします。
結果的に日本に依存せず、独立した気質になりやすく、という感じです。
この仮想歴史では、企業進出と歩調を合わせたので、愛憎は少なく、
思慕という感じでしょうか。
世界初のラジオ放送は、1906年。
日本のラジオの発信は、1925年からです、
この時代のマスメディアは、新聞でしょうか。
ブラジルも新聞のみ、
当時の新聞の力は、今と違って弱いものでした。
第4権力と騒がれたのも、真っ当な民主主義国家になってからです。
でも民主化した後も実態は、料亭密会政治であり、
公けに国民に政策判断を委ねられた事例は少ないと思われます。
まして、この時代、
基本的人権もなく、報道の自由なんてありません、
また信教の自由もありません。
権力者は、いまより簡単に検閲、差し止め出来た時代です。
新聞は、官報の代行。
クライアントの広告、
社会記事などのプラスアルファでしかなく、
報道は自立しておらず、
政府のプロパガンダなわけです。
ブラジルの日系資本が大きくなり、
就労者が増えると機関誌が発刊されます、
もちろん、新聞の力は、まだ小さく、
ブラジルで価値を得るには、政府よりで事実を書く以外にないわけです。
そして、イニシアチブが民衆の側に移るにつれ、
民衆寄りの内容が強くなっていくわけです。
マスメディアが事実を事実のまま報道している間は、信用され、
夜郎自大になっていると信頼を失い、
国民から向かれるわけです。
なので、この時代、日系新聞は、ブラジル政府寄り、
そして、事実を書いていくだけで精いっぱいであり、
可能な限りポルトガル語を増やして、新聞市場を広げて行く、
でしょうか、
そして、日系社会は、ブラジルを中立化させられるほどの力を持たせられるでしょうか。
領有 面積(ku) | 利権 面積(ku) | 軍(万) | 人口(万) | ||
北欧 | ドイツ帝国 | 54万0857 | 4700 | ||
朝鮮半島 | 東ゲルマニア | 21万0000 | 100 | 1000 | |
遼東半島 | 3462+1万2500 | 10 | 100 | ||
山東半島 | ホーエンツォレルン | 4万0552 | 11万6700 | 20 | 200 |
カメルーン | 南ザクセン | 79万0000 | 10 | 100 | |
東アフリカ | 南ヴュルテンベルク | 99万4996 | 10 | 100 | |
南西アフリカ | 南バイエルン | 83万5100 | 10 | 100 | |
トーゴランド | 南バーデン | 8万7200 | 10 | 100 | |
ドイツ帝国 | 350万2167 | 12万9200 | 6400 |
第11話 1918年 『赤い小妖怪たち』 |
第12話 1919年 『全ては己がために・・・』 |
第13話 1920年 『八八艦隊計画』 |