月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想歴史 『風が吹けば・・・』

 

 

第13話 1920年 『八八艦隊計画』

 01/02

 ロシア革命に失敗した共産主義は、新大陸アメリカへも渡り、

 根を張り、己が国家にせんと、うごめき、のたうちまわっていた。

 それは、相続の権利無き者たちが宿主を殺し宿木を乗っ取ろうとする、

 一種の心に巣食う伝染病のようなものであり、

 利己主義を追求した集団恐慌にも似ていた。

 そして、個人資本の権利を認め、

 保障することによって成り立つアメリカ合衆国にとって、伝染病そのものと言えた。

 とはいえ、真っ当な国家の統治者は国家の繁栄を望み、

 同時に国民の幸福を望むのである。

 国家の繁栄の手段としての資本主義であり、

 国民の幸福の手段としての民主主義だった。

 そして、勝ち組の資産家の欲望と、

 負け組の労働者、農民の最低限の衣食住を考え、

 双方の分水量を決めるのが政府であり、

 アメリカ司法長官パーマーは、赤狩りを始めていた。

 ニューヨーク

 黄色人種は、キョロキョロと周りを見回し積み上げられた商品の山を見て、

 ウールワースビル(241.4m)を見上げて驚いていた

 大量生産は、資本、労働者、土地と資材の集中を必要とする。

 しかし、アメリカ国内の実情は、繁栄と裏腹に闇を隠していた。

 賃金と待遇の向上が求められると収入が鈍化し、資本力が失われていく。

 アメリカで労働、資本、土地、資材を抱え込まない、金融産業が進んだのも、

 不良就労者の自己主張の煩わしさから解放されたい気持ちの反映とも言えた。

 そして、彼らの中には、金融支配できるなら、

 アメリカ産業の空洞化もいとわない勢力が台頭する。

 「どうだろう。フィリピンの開発事業に参入してくれないだろうか?」

 「ええ、まぁ 対価さえ頂ければ・・・」

 そう、日本も国内開発のため、

 他国の開発事業を進めるという、危険な賭けを続ける。

 資本主義者が馬鹿にされる行為の一つで、

 自分を殺そうとする者に拳銃を売る場合がある。

 売らなければ産業を維持できず、売れば殺されるかもしれない。

 これは、二者選択なのである。

 資源を保有せず、金もない日本が国内開発をする選択肢は限られており、

 日本国内開発を進めなければ列強の座からずり落ちてしまうのだった。

 そして、日本の首を絞めるかのような、フィリピン開発にも応ずるのである。

 アメリカ資本は、自己主張の強いアメリカ人労働者に頼らない、生産力を手に入れる、

 これは、アメリカ人労働者がボイコットしても無駄であるという保険と意思表示にほかならず。

 資本家が権力を維持する手段の一つと言えた。

 「アメリカ人労働者が恭順で自己主張しないなら海外投資しなくても良かったのにな・・・」

 誰モノが好き好んで海外事業をしたがるわけではない。

 ある国の資本家は、資源がないから、

 ある国の資本家は、労働運動に嫌気がさしてである。

 少なくとも日本資本は海外需要に応えられる程度の自己資本を有し、

 経験を積み重ねノウハウを手にしていた。

 そして、日本は、ダムを建設し、港湾、道路を整備し、鉄道を敷く度に、

 莫大な外貨か、

 利権を手に入れるのだった。

 そして、その外貨と利権は、日本産業の維持拡大と、歳入に反映され、

 大規模な国内開発に結び付いた。

 

 

 清国 紫禁城

 明代から続く中国大陸の首府は、いま尚、機能していた。

 ここに清国皇帝の愛新覚羅溥儀(14歳)と総理大臣の宋教仁が住み、

 清国の国政を担っていた。

 そして、清国国会議事堂もあった。

 「いまこそ、奪われている租界地を買い戻し、軍事拡大による完全回復を行うアル」

 鷹派の議員が叫ぶ。

 「それであるのに賠償してまで奪い返した租界地をもう一度、返還するなど・・・」

 「これは、売国としか思えないアル」

 「失地回復は、国民の声アル。政府は、国民の声に耳を傾けるアル」

 「」

 「」

 紫禁城を降りる階段で一人の議員が倒れた。

 周りの者たちが集まり、心臓発作として処理される。

 「死んだアルカ?」

 「死んだアル」

 「よく効く薬アル〜」

 「こいつ馬鹿アル。漢民族の事、わかっていないアル」

 清朝を打倒し、狂犬を発動できる大統領制を執れなかったツケが支払わされていた。

 

 

 02/02

 真新しく塗装された戦艦ドレッドノートが呉のドックから引き出されていく、

 イギリス海軍将兵も、日本での補修と休息は、信頼できるらしく。

 多少、ジメジメしても香港や威海衛より利便性が良く、

 観光地も多く、過ごしやすかった。

 極東情勢を海軍で例えるなら、

 休眠中のロシア極東艦隊、

 機能不全の清国艦隊、

 やっとこ日本艦隊、

 高稼働のイギリス東アジア艦隊とドイツ帝国ゲルマニア艦隊といえた。

 日本の権力層と富裕層の生業が民需系であり、

 イギリスに隷属していると怒る急進派右翼は少数派だった。

 日本がイギリスの植民地でないことは日章旗が揚がっていることであり、

 ユニオンジャックの旗はイギリスの軍艦か、

 イギリス大使館・領事館。

 そして、ホテルくらいにしか揚がっていないことにあった。

 ドレッドノート 艦橋

 「オライオン型戦艦4隻が回航されてくるらしい」

 「では、次は、オライオン型4隻が?」

 「んん・・飛び抜かすことになるが、たぶんそうなるかもしれないな」

 「この際、イギリスも清国に旧式戦艦を売却して、地の利を増やしてはどうです?」

 「清国は、もう、興亡の峠を越えている」

 「東アジアの勢力均衡は成り立っているし」

 「戦艦は値崩れしている。地の利は得られないだろう」

 「九龍半島の譲渡くらい狙えるのでは?」

 「どうだろうな」

 「中国の資源採掘は増大している」

 「領土売却より、資源売却の方が政治生命で痛手な小さい」

 「逆に資源売却で権益の返還を求めるだろう」

 「ですが清国に租界地を返還しても、もう一度、租界地を作って欲しいと・・・」

 「清国政府は、自分たちが上手くやれるから返還を求めているのではないよ」

 「民衆に返還を求めさせて、賠償を支払う時、私腹を肥やし」

 「自らの権益拡大で民衆から搾取する」

 「そして、民衆が怒るともう一度、租界地を作って欧米に返還する時に私腹を肥やす」

 「この繰り返しで私腹を肥やすのが目的だ」

 「じゃ 儲けているのは・・・」

 「中国の腐敗官僚と我々だ」

 「民衆は良いように希望を持たされ、怒らされ、そのエネルギーで働かされている」

 「中国人民は、辛いですね」

 「いや、もう痛みに快感を覚えているかもしれないな」

 「というわけで、面倒見の良いことをしなくても、我々に利権が脅かされることは少ないな」

 「柳に風ですか?」

 「日本には良い諺があった “勿体ないことをする” そういうことだ」

 「・・・・」

 

 

 04/20

 アントワープオリンピック開会(9月12日まで)

 

 

 欧州の戦争回避は、国際社会の平和共存を足し、

 日本の海上輸送と国外就労は、採算効率の向上と、

 新たな産業と収益をもたらした。

 そして、国家と資本家層の思惑とは、別の慣性が働く、

 国民は、衣食住で満足であれば、戦争を強いられる事を拒み、

 戦略物質の輸出入も増えて行く。

 アメリカは、ヘリウムガスのドイツ売却を承認。

 独米飛行船空路協定が結ばれる。

 ホワイトハウス

 「ドイツ帝国にヘリウムガスを売却するのは、まずいのではないか?」

 「ドイツ系アメリカ人は、有力者が多いし、票数も少なくないよ」

 「事故もほとんど起きていないだろう」

 「ヘリウムの方が積載量を減らせて売れば利益になる」

 「アメリカが持っていてもしょうがないからね」

 「ツェッペリンを買えないのか?」

 「それとこれとは別だそうだ」

 「けっ」

 「飛行機で撃墜できるよ」

 「だと良いけどな、洋上にいる飛行船を撃墜するのは至難の業だよ」

 「どちらにしろ、ドイツ帝国に対抗し、イギリス人とフランス人の植民地移民が増えているらしい」

 「アメリカ合衆国に移民してくるのは、3流の民族になりそうだな」

 「アメリカの国力が低下しそうですね」

 「・・・日本人の移民を増やすか?」

 「日本人も瑞樹州移民がメインです」

 「じゃ 中国人か・・・腐敗官僚の避難地を作ってやるだけで、口座が膨らむらしい」

 「手土産を一杯持ってきそうですね」

 「ふっ 第一級市民だな」

 「でも不正腐敗が増えそうですし、あまり入れたくないですね」

 「そうだな」

 「しかし、日本とドイツ帝国は強くなってる。不安だな」

 「全体主義は強いように見えても特定セクトが利権を押さえ、国民を支配しています」

 「強圧的な既得権と保身で弱者の人権を貶めてますし」

 「権威が失墜すれば、同時に士気も崩壊しやすく脆いはず」

 「堅いばかりで粘性のない鋼か。柔らかく粘性の強い鋼かの違いだな。長短ありだ」

 「民主主義は、一旦、攻撃されれば国民への攻撃と見なします」

 「無類の強さを発揮しますよ」

 「だが浸透戦略には弱い」

 「日本とドイツの戦意が弱いと、逆に崩壊しそうだな」

 「封建社会が個体。君主制議会主義は液体」

 「民主主義と自由資本主義は気体のようなところがありますからね」

 「それは、仕方がないでしょう」

 「仕方がないか・・・」

 

 

 対馬海峡沖

 水中124トン級ホランド型一号潜水艦

 1905年、アメリカから購入した潜水艦だった。

 無人有線リモコンで潜水艦を海中に走らせ駆逐艦で撃沈する、

 665トン級樺型駆逐艦8隻で爆雷を投下する実験だった。

 東ゲルマニアのUボートは40隻を数え、

 日本海軍の対潜作戦も力が入る。

 どの駆逐艦が潜水艦を操っているのか、知らされておらず。

 仮に知られていたとしても、有線リモコンであるため、後方とは限らなかった。

 2隻ずつ4組に分かれ、ソナー音を打ちながら、探しまわる。

 駆逐艦は、イギリス製ソーナーを持ってしても潜水艦を発見できず、爆雷も投下できず。

 海上をウロウロするのみ、

 ソナーで聞こえるのは、自艦の発する音や僚艦の機関音やスクリュー音ばかり、

 イギリス海軍でさえソナーによる発見率を1割としていたほどだった。

 「・・・酸素が尽きるまで海上で待ち構えるしかないのかな」

 「もっと低音のエンジンじゃないと良く分からないな。駄目だろう」

 「ドイツ帝国海軍は、潜水艦を何隻持っているんだ?」

 「たしか・・・全体で150隻ほどとか」

 「・・・全部、極東に来たら日本はお終いだな。ロクなことしやがらねぇ」

 「おい、潜水艦に音を出させてみろ」

 「はっ」

 コーン〜!

 「わかるか?」

 「5時方向・・・距離400m・・・深度・・・30m・・・」

 「各艦で測定した海域に着色弾を撃て」

 「はっ」

 4隻からそれぞれに着色弾が撃ち出される。

 「潜水艦を浮上させろ。確認する」

 「はっ」

 甲板に立って、海原を見ると海中に潜む潜水艦の恐怖は本物になる。

 それは、海軍将兵の多くが感じるところでもあった。

 しかし、潜水艦は高価な買物であり、

 対潜訓練すら貴重だった。

 退役を見計らって爆雷を投下し撃沈するか。

 各駆逐艦が不規則な距離の海中標的物を引っ張り、

 ソナーで探知して撃沈するなどしかなく、

 潜水艦の恐怖と別に、

 根気を必要とする訓練は乗員に嫌われやすかった。

 「・・・ソナー測定もばらつきがあるし、浮上した位置も違うな」

 「やっぱり、駆逐艦は戦艦に向けて魚雷を撃ちたいですよね」

 「もっと潜水艦の撃沈査定を高くして出世に反映させないと、やる気でないな」

 「でも潜水艦撃沈の証拠って難しいですよね」

 「そうなんだよな。いくら潜水艦が怖くても、やるきでんわ」

 「艦長・・・」

 見張り員が空を指差した。

 東側の洋上を見ると、

 いつの間にか、ドイツの飛行船が浮かんでいる。

 「・・・帰還する」

 そう、対馬海峡は日独国境であり、

 戦争になれば戦場となった。

 

 

 04/23

 オスマン帝国アンカラ

 ムスタファ・ケマルを議長とする大国民議会開催。

 

 

 04/25

 ロシア帝国

 民族共産独立蜂起が続いていた。

 ロシア諸侯は、所領を奪われまいと命懸け掃討鎮圧作戦を展開。

 しかし、既得権だけで社会の上層階級にいるロシア軍の指揮は、連携が悪く稚拙であり、

 叩き上げのコサック部隊の方が効率が良かったりする。

 この民族独立勢力の鎮圧作戦は、敵味方に数百万の犠牲者を出してしまう。

 また、近代国家軍として満足いくものでないにもかかわらず。

 掃討作戦そのものは成功していた。

 とはいえ、成功と言えない成功であり、

 一部無能な将校によって指揮された部隊が殲滅されることもあり、

 ロシア帝国のロシア国民共有救済地を僅かに増やした。

 

 共産主義者が権力構造を破壊し、

 再分配によって、弱者救済を目的としているなら、

 共産主義者は、自分たちの生活保障のために戦っているのであり、

 共感するものであり、味方でさえあった。

 もっとも彼ら共産主義者が、ロマノフ王朝よりマシとは限らず、

 また、宮使えの悲しさか、ロシア軍は、敵対している。

 なので真剣なのは貴族将校と追随者であり、

 大多数のロシア軍兵士は白けていた。

 ロシア軍の戦意の低さは、守るべき生活保障がないからであり・・・

 ロシア士官たち

 「ドイツ軍の方が上手く鎮圧作戦を行っているようだが?」

 「ドイツ人の教育は、真似できないよ」

 「それにドイツ帝国は、諸侯と軍隊の昇段格差がロシア帝国より小さいからね」

 「平民上がりの将軍がいるほどだ」

 「いいなぁ〜」

 「まぁ ロシア軍に小細工はいらないよ」

 「督戦隊と囚人部隊で突破口を開いて、数で押切ってが最高の戦術だけどね」

 「だけど、貴族ばかりがいい生活だろう。もう少し自由が欲しいよ」

 「もっと学校教育して欲しいね」

 「人口がいくらいると思ってるんだ」

 「俺らより頭の良い人間はごまんといるし」

 「ロシアで民衆に知恵を付けさせるのは危険だぞ」

 「貴族以上にできの良い人間も、ごまんといるからね」

 「貴族たちは、それが怖いんだよ」

 「余計な知恵が付いていない純朴な農民と労働者が一番安心ということか・・・」

 

 

 ドイツ帝国南バーデン領(トーゴランド) 8万7200ku

 西のイギリス領ガーナ。

 北のフランス領ブルキナファソ、東のフランス領ペナンに挟まれ、包囲されている。

 ギニア湾に面した海岸幅は50kmもなく、

 南北約550km。内陸の東西幅約150kmの細長い領土どであり、

 地政学的に死地と言えるもののリン鉱石、石灰石、鉄鉱石、大理石を産出。

 セメント、製粉、繊維、飲料、石鹸、ヤシ油の加工も進んでいく。

 採掘権と利権があれば、その生産で数十万のドイツ人が豊かに暮らせるのであり、

 余剰資本が作られれば近代化も行われる。

 細く狭く領地で港湾が作られ、発電所が建設され、鉄道が走り、

 工業生産品が作られると、周辺植民地へ輸出することができた。

 英仏とも、国境全てを見張るわけにもいかず、

 流れ込むドイツ製品に市場と資源を奪われていく。

 ドイツ帝国南バーデン総督府は、トーゴ高原の高台に建設されていた。

 標高700mでは、涼風もたかが知れており、熱帯雨林の湿気で汗が滲む。

 エウェ族、ミナ族、カブレ族の代表たちが出ていく。

 彼らの多くは巨大な飛行船を見るだけで神の使者だと思い込み、

 統治は容易になった。

 代表者は豊かな生活を送っており、

 その代表者に部族を支配させ、互いに仲違いさせ、鎮圧させていた。

 「なぁ 我々、地球人もあのようなのかもしれないな」

 「なぜです」

 「一部の特権者を優遇し、仲違いさせて、全体を衰えさせている」

 「そして、いつの間にやら、異邦人に全てを奪われている」

 「人類の人口は増えていますよ」

 「それに日本人は当てはまらないようです。SFですね」

 「まぁ そうだな」

 「そういえば、日本に商船を発注した方が安く建造できるそうですよ」

 「日本の労働者は哀れだな」

 「ですが国は富みますね」

 「よく反乱がおきないものだ」

 「軍事拡大と違って、民主主導ですからね。再生産も大きく、社会資本も増大しています」

 「何より、換金紙幣でない強みもありますから」

 「日本の資本家は、よく怒らないものだな」

 「市民革命を経験していないので権威に弱いようです」

 「ふっ・・・北部は乾燥して住みやすいが運河が欲しいな」

 「浚渫して、潜水艦が遡れるくらいの方が良い」

 「どの部族にやらせますか?」

 「そうだなぁ エウェ族でいいか。気の利いた服でも渡せば、やってくれるだろう」

 ドイツ帝国の植民地軍は、精強であり、

 その気になれば、南バーデン(トーゴ)と南ザクセン(カメルーン)を繋げることができそうだった。

 

 

 南バイエルン(南西アフリカ) 835100ku

 沿岸部

 豊富なダイヤモンド採掘で南バイエルンの開発は進んでいく。

 リューデリッツ港の浚渫が進むと大型船の入港が可能になり、

 南米から大型タンカーで運ばれた河川水が水送管を流れ、

 屋根付き石畳の巨大な人工湖を水で溢れさせてしまう。

 内陸部

 カプリビ回廊は、南バイエルン北東部を450kmほど東に延びた領地だった。

 この回廊部分は水資源の豊かな地域が伸び、ドイツ移民も集まりやすく。

 海岸線沿いに砂漠が広がっていても、飛行船を使うと内陸開発は進む。

 ドイツ人は、運河を南大西洋側に向かって掘り進め、

 インド洋に向かって流れ込むザンベジ川と

 その支流を南大西洋側へ押しやろうと計画していた。

 ドイツ風の町並みは広がり、

 砂漠の中でも湖水があればそこに拠点を作ることができた。

 ドイツ植民地は、工業化と近代化が進み、

 工業生産力で周辺植民地を圧倒する。

 象、キリン、ライオン、カバ、水牛が郊外側へと押しやられ。

 それでも川にワニがうろついており、

 子供たちは、遠巻きに望遠鏡で覗き込んで面白がっていた。

 南バイエルン総督府

 「まだ、南アフリカの方が強そうだな」

 「ほとんど黒人なのでは?」

 「白人は13パーセントだ」

 「アフリカ人76パーセント、カラード(混血)9パーセント、インド人2パーセント」

 「アフリカ人に武器を渡せば、勝手に自滅すると思いますが」

 「だがイギリス領はインド人の比率が増える傾向にある」

 「では、イギリスは、インド人で南アフリカの統治を?」

 「あと、日本人も増える可能性も高くなるな」

 「では、日本人をイギリスの植民地の権益圏に引き込み、防衛を分担させる気で?」

 「かもしれないが、どうかな」

 「軍事力を背景にして植民地経営をするのは、難しいだろう」

 「イギリスも人口の1000万を植民地経営のため、移民させる傾向が強まっているそうです」

 「1000万か。欧州戦争が起きていたら死んでいたかもしれない数値だな」

 「まさか、そんなには死なないでしょう」

 「機関銃の掃射を見れば、ありうるだろうよ」

 「イギリス領は広大過ぎます」

 「人口を振り分けたくらいでは、維持できるかどうか・・・」

 「だから、インド人と日本人を使っているのだろう。フランスとも共闘気味だ」

 英仏植民地は我田引水に搾取されるだけの地域で工業力は育っておらず、

 ドイツ帝国は植民地だけの力でアフリカを支配できるだけの陣営を整えられていく。

 

 

 南バイエルン(南西アフリカ)の一角にイギリス領が存在する。

 イギリス領ウォルビスベイ

 ドイツ領南バイエルンに囲まれた天然の良港ウォルビスベイがイギリス領として残されていた。

 ドイツが飛行船で内陸を開発し、

 リューデリッツ港の浚渫が進むとウォルビスベイは、相対的に価値を低下させていく、

 そして、南バイエルン(南西アフリカ)の開発が進むにつれ、

 ウォルビスベイ港の価値は、さらに低下すると思われていた。

 港に日本海軍の17000トン級装甲巡洋艦 三笠と朝日が入港していた。

 交替で降りる日本軍将兵は、砂漠を面白がっていたりする。

 三笠 艦橋

 「こりゃまた。随分な場所だな」

 「なんでも、イギリスは、オランダへの嫌がらせでウォルビスベイを占領したそうです」

 「リューデリッツ港側の方が発展していたな」

 「ドイツ帝国は、大型船で家を輸送して、飛行船で空輸しますからね」

 「飛行船で、同じ場所で家を量産できるのなら速いだろうな」

 「イギリスは焦っているようですし」

 「感心している場合ではないかもしれませんよ」

 「イギリスが焦せった方が良い取引ができる」

 「気付かれない程度、斜に構えていればいいさ」

 「な、なるほど」

 

 

 

 07/12

 ズィームニイ・ドヴァリェーツ(冬宮)

 玉座の間

 「・・・伯爵。反乱を起こした独立勢力の自治を拡大せよというのかね」

 「彼らを必要以上に殺戮していると思われます」

 「また屈伏しており、以前にまして、恭順と忠誠を誓っております」

 「その以前に増しての恭順と忠誠に免じ、恩赦を与えても良いかと」

 「んん・・・」

 「まぁ 以前に増す恭順と忠誠を約束するのであれば少しばかりの自治を認めてもよかろう」

 諸侯は、自治拡大で利権が減らされている事にムッとし、

 殺意の籠もった視線を伯爵に向けたりするものの、何も言わない。

 ラスプーチンの煌びやかな服装がそうさせているのであり、

 ニコライ二世との信頼関係に食い込めないためであった。

 ロシア帝国はバルト三国、フィンランドにおける自治権拡大を承認する。

 

 

 清国

 民主化した清国は、以前の様に清朝で膠着していない。

 清国中央軍と清国中央警察が政治的中立に移行すると、

 金と集票を力付くで奪い取った者たちによる政権交代が可能になっていた。

 それが勝者の集中と敗者の衰退の落差が激しくても、

 資本主義と民主主義の一形態と言えなくもない。

 現在、清国の焦点は、海外港を沿岸港にとどめるか、

 揚子江の奥深くまで認めるかでもめていた。

 沿岸港でとどめれば、清国中央の国内統治と収益確保で安泰であり、

 内陸の押さえは万全となった。

 しかし、揚子江沿岸の軍閥にすれば、うまみが減るのである。

 蘇州(上海郊外)

 負けた地域の住人たちが強制立ち退かされ、

 抵抗する何千という者が森へ引き出されて消され、

 発電ダムが建設されていく。

 立ち退かされた者は糧と私財を失い、労働者となるか、農奴になるしかなかった。

 しかし、ある意味、一番早い近代化の方法であり、

 列強各国の代理人たちは、軍警察の領民に対する冷酷無情な仕打ちに目を見張る。

 「いやぁ 実に凄まじい」

 「・・・・・」 ごっくん! × ドイツ、日本、ソビエト

 「このバイタリティが海に向かわないことを祈るばかりだ」

 「いまのところ、清国内の派閥抗争と中央と地方の抗争に明け暮れてますよ」

 「矢面に立つのは、東ゲルマニアですか? 大変だ」

 「鴨緑江は越えさせませんよ。別段入植地に困っているわけでもありませんし」

 「ドイツの技術なら半島の生産力でも十分、黒字でやっていけますよ」

 「日本はどうです?」

 「清国はお得意様ですから・・・」

 「いまのところはね」

 「厄介なのは、露米独権益のある満州では?」

 「北洋軍閥は金で押さえてますよ」

 「そう、いずれ・・・」

 

 07/14

 中華民国で北洋軍閥同士の戦争が起こる(安直戦争)。

 清国海軍

 戦艦 高宗 艦橋

 「北洋軍閥は、何のために争っているのだ」

 「権力闘争でしょう」

 「清国海軍の発言力が増すだけだというのに」

 「欧米列強を引き込んでいるのでは?」

 「なるほど、相変わらず、内憂外患だな」

 

 

 イギリスは、海外植民地向けのインド駐留軍を派遣し、

 日本駐留軍をインドに配置する。

 日本の海外拠点は、イギリス植民地を補完する形で配置され、

 日本経済は、生糸産業以外の部品製造など軽工業が発達していく。

 そして、そういった場所に派遣されるのが装甲巡洋艦だった。

 元12674級ペレスヴェート型改装艦 17000トン級装甲巡洋艦 周防、肥前。

 全長が延長され、馬力が向上し、

 若干兵装が落とされ、50口径234mm3連装2基となっていた。

 戦艦から装甲巡洋艦に落としたものの、

 使いやすさが増しており、

 容易に動かせるだけの稼働率を発揮できた。

 最新鋭の大型戦艦に及ばないものの、

 元戦艦だけあり、小型戦艦としての威容を誇っていた、

 強力な電力と通信能力で、現地イギリス軽巡部隊を統括することもあった。

 コロンボ港

 周防(ポベーダ) 艦橋

 イギリス海軍将校と日本海軍将校

 「なるほど・・・旧式とはいえ、元戦艦を流用しただけはあるな」

 「大きいだけですよ」

 「いや、兵装が減らされても作戦能力、通信能力、居住性、防御力、耐波性の向上は捨てがたい」

 「インド国民に見せるためですか」

 「イギリス政府に頼まれているからね。インド人に日章旗を良く見せてやってくれ」

 「しかし、大型の装甲巡洋艦に爆雷投射装置を装備しているとはな」

 「小回りが利かなくても、機関だけは新しいので無理が利きますからね」

 「それに艦体が大きいと、たくさん載せられますし、駆逐艦も少ないので・・・」

 「砲撃戦をあまり考えていないように思えるが?」

 「戦艦相手は、考えていませんね」

 日本は小国だった。

 「軽巡洋艦以下も日本に払い下げた方がいいかな」

 「いえ、国産出来るだけの力は持たせたいものですから」

 「日本は、商船建造に力を集中した方がよかろう」

 「まぁ そういう意見も強いようですが・・・」

 「30000トン級客船を建造したそうじゃないか」

 「欧米の60000トン級商船に比べれば些細な規模ですよ」

 「しかし、30隻は、大風呂敷だな」

 「おかげで軍部は、冷や飯ですよ」

 「そういえば、サラエボ事件で軍拡だったのに」

 「総動員が収まって、ケチになったからな」

 

 

 外面の良い人間は、身内に苦労させる。

 こういう人間は、珍しくない。

 身の丈を考えず見栄と自己満足で借金を重ね、身代を磨り潰したり、

 家庭だけで納まるのであれば良いものの、

 国家レベルで列強と張り合いになると、国民は税に殺される。

 07/16

 八八艦隊計画案が議会を通過する。

 とはいえ、羽振りのいいものではなく、

 イギリス製12年物の戦艦・巡洋戦艦8隻、巡洋艦8隻の購入。

 そして、改装による八八戦艦整備計画だった。

 購入価格も原価償却率など決められ、日英相互補償関係が進み、

 安定需要と安定供給の利害関係で日英同盟が強まっていく、

 イギリス海軍は、3年間で戦艦2隻、巡洋艦2隻建造するだけで、

 12年で戦艦・巡洋戦艦8、巡洋艦8隻となり、

 日本に最新機関と補修部品、治具を売却すると建造費の半分を回収することができた。

 イギリスは日本海軍好みの高速艦型で建造するだけで、

 12年未満の最新鋭の高速戦艦8隻と巡洋艦8隻を常に就役させることができた。

 そして、日英同盟海軍が合わさると新旧合わせて戦艦16隻、巡洋艦16隻の規模になる。

 無論、最低限の規約であり、

 日本は、国情や許せば、国産で戦艦、巡洋艦を別途に建造することもできた。

 

 

 呉 造船所

 イギリスから補修部品と治具が届く。

 国産で造れない事もない、

 しかし、細々とした資材を全部造ることになれば生産力を奪われ、

 日本商船隊の生産に支障をきたした。

 商船隊の建造は国産で建造可能であり、

 薄っぺらな船体は、ヘタレな国産工作機械でも容易に建造できた。

 品質と規格が統合され、総トン数も大きくなる。

 何より、商船であれば、外貨収入という収益が見込まれた。

 1900年以前の船舶がイギリスの中古船か、新型船に更新されていく。

 余力は、改良や新規開発に向けられていた。

 赤レンガの住人たち

 「外国製の工作機械があるだろう」

 「外国製の工作機械は、心臓部を除けば、マザーマシンで工作機械を製造しているよ」

 「ちっ」

 「商船隊の速度は上げた方がいいよ。潜水艦に撃沈されて文句を言われたくない」

 「損益分岐点もあるから、あまり機関に金をかけられないよ」

 「商船隊も、イギリスの中古にしてもらうか」

 「まさか、軍艦は生モノでも、商船は採算ギリギリまで使い切るよ」

 「八八艦隊は、1912年度艦からで、1924年のオライオン型戦艦4隻からだね」

 「全盛過ぎてるじゃないか」

 「まぁ 働き盛りだろう。心機一転で大改装すれば、持ち直せるよ」

 「いまのうちに改装要項でも考えておくかな」

オライオン型戦艦 4隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離 兵員
22000 177×26.8×7.3 27000 21   900
45口径343mm砲連装5基 50口径105mm連装砲16門 魚雷×3  
オライオン、モナーク、コンカラー、サンダラー

 「そうだねぇ やっぱり、全長を伸ばして、主砲塔を1基減らして、機関を3倍くらいしたいね」

 「レナウンが120000馬力だから、それでいいよ」

 「全長を伸ばして砲塔1基と区画を減らしても機関室に入らないだろう」

 「せいぜい90000馬力か」

 「巡洋戦艦には追い付かれる、水雷戦隊には逃げられる。役に立つのか?」

 「機関室に入らないかな」

 「じゃ 主砲塔2基を剥がすか。通商破壊なら主砲塔3基でも十分じゃないか」

 「通商破壊にぴったりでも寂しぃ」

 「どうせ、343mm砲じゃ勝てないよ」

 「それに高速の巡洋戦艦から逃げ切る必要があるからね」

 「主砲塔を減らすか、口径を小さくするしかないよ」

 「主砲は8門くらい欲しいよ、50口径305mmに換装する手もある」

 「追いつかせない手はあるよ。艦首と艦尾の砲は50口径410mm砲?」

 艦首・艦尾縦列連装砲は日本独自であり、

 最高軍事機密になっていた。

 「ああ」

 「もっと大きな大砲を載せられるんじゃないのか」

 「410mm砲弾なら撃沈できるし、初速が速い方が命中率が上がる」

 「購入時期の24年になれば機関も、もっと進歩しているんじゃないか」

 「まぁ それはあるかも」

 「でも、水の抵抗があるから35ノット以上の戦艦なんて意味無いと思うよ」

 「だよねぇ」

 「ぱっぱり、飛行機の時代かなぁ」

 「まぁ 少し損をしているようでも同盟戦略では悪くないかな」

 「いや、民間需要は、うなぎ登りらしいし、総合だと、かなり得だと思うぞ」

 「問題は清国の近代化だよな。そっちの方が怖いよ」

 「それは言える。時々、民衆が暴発して賠償問題で大損しているらしいけど」

 「戦艦を持っていると民衆も虎の威を借りて、強気になるんだろうな」

 「示威だけで撃てないだろう」

 「張り子の虎なのに・・・」

 「清国戦艦を修理したんだっけ」

 「まったく、あっちこっちぶつけるわ、防錆で手抜きしてるわで酷いものだったよ」

 「おかげでキール無しでも戦艦を建造できそうだよ」

 「本当か?」

 「まぁ 船体全部で構造を支えるんだけどね。今後、商船で取り入れられそうだ」

 「しかし、随分、張り込んだじゃないか」

 「マイノーター装甲巡洋艦の1隻を空母に改造なんて?」

 改装予定

古鷹(マイノーター)型装甲巡洋艦 2隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離
17000 170×22.71×7.92 54000 28 10kt/10000海里
50口径152mm砲3連装2基 50口径76.2mm連装砲8基 爆雷×2×50 水上機×3
古鷹(マイノーター)、加古(ディフェンス)

 

鳳翔(マイノーター)型空母 1隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離
17000 200×25×7.92 54000 28 10kt/10000海里
艦載機50機 50口径76.2mm連装砲8基    
鳳翔(シャノン)

 

青葉(デューク・オブ・エジンバラ)型装甲巡洋艦 2隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離
17000 170×22.4×7.92 81000 30 10kt/10000海里
50口径152mm砲3連装2基 50口径76.2mm連装砲8基 爆雷×2×50 水上機×3
青葉、衣笠

 「大型艦じゃないと離着艦が難しいだろう」

 「鳳翔の大砲が寂しぃ」

 「軍艦というより、艦載機運用の実験艦だから、大砲がなくても良いくらいだ」

 「戦力として運用が確実なら、空母を建造できるかもしれないな」

 「いや、手持ちの装甲巡洋艦を空母に改造させられると思うよ」

 「くっそぉ〜 予算日照りが続きやがる」

 「とりあえず、上手く言ったら、隼翔、燕翔で揃えられるかも」

 「じゃ 古鷹(マイノーター)型装甲巡洋艦2隻の改装は後回しにするか」

 「青葉(デューク・オブ・エジンバラ)型装甲巡洋艦2隻も、後回しでいいかも」

 「んん・・・砲撃戦に参加させず、索敵と後方支援で旗艦をさせる方法もあるね」

 「んん・・・」

 「それより、潜水艦は?」

 「んん・・・ドイツが2500トン級潜水艦を建造しているらしい」

 「でかいな」

 「イギリスも1000トン級だし、フランスも、アメリカも似たようなものだ」

 「飛行船といい、潜水艦といい。ドイツ帝国の技術は突出してるよ」

 「アメリカとイギリスがドイツ帝国を警戒しているくらいが良いよ」

 「黄色人種の日本が目の敵にされずに済む」

 「まぁ そういうのはあるかも」

 各国の海軍とも潜水艦に対する警戒感は強く、対処を研究していた。

 しかし、潜水艦作戦の演習そのものが困難といえた。

 まさか、人が乗り込んでいる潜水艦に対し、爆雷を投下するわけにもいかず。

 有線潜水艦による標的潜水艦も旧式潜水艦で行うしかなかった。

 

日本海軍 大綱
艦種 排水量 速度 主兵装

 

戦艦 1 26000 23 50口径305mm連装4基

固定50口径356mm連装2基

摂津、河内

2 22000 22 50口径305mm連装3基

固定50口径356mm連装2基

薩摩、安芸
巡洋戦艦 2 18000 25 鞍馬、伊吹
装甲巡洋艦 前ド級戦艦改造⇒装甲巡洋艦 19隻
2 22000 26 50口径234mm3連装2基

固定50口径305mm連装2基

姫神、白神
10 20000 26 香取、鹿島
妙高、那智、足柄、羽黒、
高雄、愛宕、摩耶、鳥海
7 17000 25 敷島、朝日、三笠、
石見、肥前、周防、相模、
装甲巡洋艦改装 11隻
1 18000 28 50口径234mm3連装2基

固定50口径305mm連装2基

生駒、筑波
3 14600 23 45口径152mm3連装2基

固定50口径305mm連装2基

古鷹、加古
2 13550 23 青葉、衣笠
6 13500 26 八雲、吾妻、出雲、磐手、春日、日進
  36        
装甲巡洋艦 → 空母
  1 17000 28 50機 鳳翔

 戦艦に勝てない軍艦は、軽防御高速と雷撃を重視で考える。

 しかし、別の戦略も育っていく、

 高価で数少ない戦艦を相手にせず、通商破壊を主任務とし、

 あるいは、中小艦艇キラーとして戦う戦略であり、

 非艦隊決戦思想を成すものであった。

 軍艦で商船、中小艦艇を撃沈するのなら、高価な戦艦でなくてもよく。

 鋼材の生産力で圧倒的に劣る日本は、イギリスの植民地防衛を負担しつつ、

 同盟戦略、勢力均衡で、国防政策を進めていく。

 

 

 済州島

 標高500mの高原に50口径305mm連装砲台が配備されていた。

 敵艦撃沈より、上陸作戦を防ぐことを主眼としており、

 さらなる大口径化も見越し、基礎が造られていた。

 「381mm砲対応の砲塔なんて、良いのかよ」

 「砲身も肉厚に造ってるし、地上配備は楽だねぇ」

 「とりあえず、海岸線は守れるな」

 「どんな大軍でも、泳いで上陸する羽目になったら戦えないだろう」

 「中口径以下は、軍艦用か」

 「いや、中古で買った戦艦に艦首と艦尾に固定の大型砲を装備させるらしい」

 「当たるの?」

 「さぁ 日本は、軍艦より、客船らしいからな」

 「30000トン級商船を30隻なんて、べらぼうじゃないか」

 「戦争が怖くないのかね」

 「イギリスとドイツの移民と植民地を助けて、収益を得るんだと」

 「ちっ 欧米諸国の丁稚じゃないか」

 「日清・日露戦争で戦ったからって、血走る事もないだろう」

 「まぁ 本当に銃を向け合うのは嫌だけどな」

 

 

 

 赤レンガの住人たち

 日本陸海軍は、戦後軍縮が続く厳しい財政の中、

 可能性を信じ、投資を行う。

ブリストル F.2 ファイター
重量/全備重 hp 全長×全幅×全高 翼面積 速度 航続距離 ビッカース ルイス 乗員
975/1474 275 7.87×11.96×2.97 37.62 198m/h 593km 7.7mm×1 7.7mm×1 110kg 2

 

ハンドレページ O/400
重量/全備重 hp 全長×全幅×全高 翼面積 速度 航続距離 ルイス 乗員
3856/6060 360×2 19.16×30.48×6.71 153.1 157m/h 1120 7.7mm×2 900kg 4

 カカシで作った防衛線が造られていた。

 雲間から、飛行機の爆音が聞こえ近付いてくる。

 ブリストルF2ファイターが地表の目標を機銃掃射し、

 標的のカカシを薙ぎ倒していく。

 「「「「「おぉおおおお〜!」」」」」

 「良いねぇ〜」

 そして、ハンドレページ O/400が爆弾を投下すると、

 黒い物体が放物線を描き、

 戦線を構築していたカカシを吹き飛ばされていく。

 「「「「「おぉおおおお〜!」」」」」

 「良いねぇ〜」

 「機銃掃射で将兵は浮き足だし、爆撃で機関銃が潰されたら戦線は突破されるな」

 「んん・・・歩兵も砲兵も、上空から狙われたら辛いよね」

 「やれやれ、どうしたものか」

 「将兵減らして飛行機を配備したくなるな・・・」

 「「「「・・・・」」」」

 「しかし、飛行機は高過ぎる、費用対効果は疑問だな」

 「「「「・・・・」」」」

 「内地・島礁防衛は、大丈夫かね」

 「敵前上陸作戦ができる軍隊は、世界中を探してもイギリスくらいのはず・・・」

 「だがドイツは50000トン級商船を建造してるぞ」

 「東ゲルマニアは、まだ戦争できる状態じゃないらしい」

 「だといいがね」

 「しかし、発電所とか、土木建設ばっかりだな」

 「発電所と流通を整備して、後は、歳入を当てにするって手法じゃないの」

 「信用できねぇ どうせ、あれこれ、付けたしながら予算を巻き上げるに決まってる」

 「くっそぉ〜 あいつらでかい顔しやがって、国防を後回しにしやがる」

 国防は、地上、海上だけにとどまらない時代へ向かおうとしていた。

 各国の軍指導部は、次の戦争で飛行機と潜水艦が主力兵器になると知っていた。

 そして、新たな時代の流れに沿おうと予算を練り始める。

 無論、プラス・アルファで求めるのであり、

 潜在的な可能性があったとしても簡単に仲間を追い出し、

 予算を振り分けられるものではなかったのである。

 それでも、後ろめたさを感じつつ、

 予算の上澄み分と仲間の首を切って高価な飛行機を購入し・・・

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 お待たせいたしました日本海軍待望。夢の八八艦隊です。

 イギリスの12年もの中古品ですがこの際、目を瞑りましょう。

 イギリス製だと、体格の関係で日本海軍将兵は広々と使え、

 居住性が良さそうです。

 財政と生産力で余力があり、

 日本商船隊600万トンは、1隻当たりのトン数が大きく、速くなりそう。

 日本大型高速商船隊でしょうか。

 

 

 さて、気になるのは、イギリスの植民地帝国は、持ち堪えられるか、です。

 イギリスが植民地を手放した主要な原因は、第一次世界大戦と第二次世界大戦です。

 つまり、この二つの戦争さえ防げるなら、イギリスの植民地帝国は延命。

 そして、日本の寄生経済も維持できるかと思われます。

 もちろん、民族尊重のプライドより、金という意思を貫き通せれば、ですが、

 

 

 さて、この頃の日本で、30000トン級商船隊30隻。90万トンが建造できるか、です。

 88艦隊16隻の建造費は6億。一隻当たり3750万円。

 しかし、価格を低めに設定しつつ実は・・・

 で、一番安いはずの長門の建造費4390万円という上乗せぶり。

 なんというか、相変わらずの作為というか、

 官僚仕事というか、どんぶり勘定です。

 さらに改造費を足すと5000万〜6000万に跳ね上がり、

 それとは別に年間維持費300万〜400万ほど。

 もう、なんですか、造らなければ売国、造れば亡国みたいな。

 16隻の総トン数67万2600トンだと、1隻当たり4万2037トン。

 ここで30000トン級30隻だと90万となので戦艦16隻分より総トン数で大きくなります。

 しかし1トン/円でいうなら商船は、建造でハードルが低く歩留まりも良く、安く造れます。

 豪華客船であっても5分の1から6分の1ほどでしょうか。

 なので、戦艦で換算すると18万〜15万トンなので4隻から5隻分でしょう。

 あとは、需要です。

 いくら器を作っても需要がなければ、赤字で潰れるか、

 ヘタレな放漫産業を守るため、税金で維持することになるでしょう。

 これは、心配なさそうです。

 東ゲルマニア移民需要が大きく、

 英独植民地投資が輪を掛け、日本の海外開発事業で補完します。

 対米生糸産業もあるでしょうし、

 食管予算で自己資本を得た農家の農地転売による社会資本拡大で、

 軽工業も発達させられ、国内の客層も得られそうです。

 あとは、建造費と維持運営費と耐久年数と

 乗客・積荷から上がる収益で回収していきます。

 競争率が激しくても建造と運営時の賃金差で、外国船より安く。

 日本商船の人気が保てれば利益は大きいと思われます。

 

 当然、ドイツ人とオーストリア(少数民族)の移民が急増すると。

 東ゲルマニアは、急速に国力を高めて行くことに、

 あとは、日独のGDP産業競争です。

 

 

 人口を増やしました。

 たぶんこれくらい増えているんじゃないかと。

    領有 面積(ku) 利権 面積(ku) 軍(万) 人口(万)
北欧 ドイツ帝国 54万0857     4720
朝鮮半島 東ゲルマニア 21万0000   100 2800
遼東半島     3462+1万2500 10 200
山東半島 ホーエンツォレルン 4万0552 11万6700 20 700
カメルーン 南ザクセン 79万0000   10 200
東アフリカ 南ヴュルテンベルク 99万4996   10 200
南西アフリカ 南バイエルン 83万5100   10 200
トーゴランド 南バーデン 8万7200   10 200
 
ドイツ帝国 350万2167 12万9200   9290

 

  

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第12話 1919年 『全ては己がために・・・』
第13話 1920年 『八八艦隊計画』
第14話 1921年 『誰がための平和』