第14話 1921年 『誰がための平和』
ドイツ帝国とオーストリア・ハンガリー帝国は移民政策を推し進めていた。
資本を流出させながらも、一人当たりの資産は増え、
共産主義勢力の放棄は鎮まっていく、
両国とも国内が落ち着くにつれ、西側と地中海が気になってしまう。
そして、ロシア帝国も、欧州危機が去り西方の軍事緊張が低下し、
国内の共産主義の放棄と反乱を片付けると、
米独権益の脆弱な極東が気になり、極東ロシア軍を増大させる。
長春
清国最強の北洋軍閥は、直系、皖系、奉系、晋系、馮系に分裂し抗争していた。
米独露の北洋分裂工作と幇助があったか、
それは、想像するところであり、
奉天軍閥率いる張作霖(ちょう さくりん)も、米独露の利害と対立を利用し、
満州権益の独占を狙おうとしていた、も、想像するところといえた。
事実がどうあれ、北洋軍閥は分裂させられて抗争し、
独米露3ヵ国は、戦争を回避しつつ、権益地を広げていく。
米独露は、自国軍を使うこともなく、
特定の馬賊を雇い、奉天軍閥の急所を突き、切り崩した。
満州最強の兵装を装備しているのは奉天軍閥でなく、
米独露子飼いの馬賊集団だったりする。
馬賊は商隊の振りをし、20台の馬車と一緒に長駆していた。
舗装されてない満州荒野で活躍できるのは車より機動性の良い馬であり、
馬車に乗せた重機関銃だった。
列強に雇われた彼らは線路沿いに展開し、列車の運行を守った。
最強の奉天軍が列車にチョッカイを掛けようとしたとき、
より、リスクの小さい馬車商隊に出会い、
目標を変えて突っ込んでくる。
4000m・・・3000m・・・・2000m・・・1500m・・・
馬車に潜ませた重機関銃10丁の掃射が始まると、
射程内に入っていた襲撃部隊1500人は壊滅、
逆に奉天軍の馬と装備品は馬賊に奪われ、馬車に乗せられていく。
白人将校が点数を付けていた。
「旦那、どうアルカ?」
「そうだな。戦果から経費と弾薬消費量を差し引いて・・・缶詰500箱分かな」
「アイヤ〜」
「もっと情報を集め、効率良く撃退するのだな」
列強雇われ馬賊は、バッタ屋の様な事もしていた。
奉天軍閥の情報をもっとも知っているのは中国人であり、
郷に入れば郷に従うべきであり、
独米露は、斜に構えつつも権益を守るため共闘していたのである。
米独・南満州鉄道
ドイツ系の機関車が北上していた。
日本人のウェイトレスが車内販売で回ってくる。
この種の仕事は、日本人がつきやすいらしい。
日本製ビールに混ざって、
ドイツ製ビールの割合がふえていた。
たぶん、工場も軌道に乗っているのだろう、
以前よりドイツ製が増えていた。
いずれは、ゲルマニア製が主流になるだろう。
日本の新聞記者は、満州の光景を書きとっていた。
“アメリカ系馬賊は白。ドイツ系馬族は黒の巾を好んで身に着け”
“露系馬賊は紫の巾を身に付けている”
“さながら、昔の黄巾党のようでもある”
“保有している武器は、重機関砲と最新の小銃であり”
“烏合の衆と言い難く、重武装の精鋭部隊の様にも思えた”
“元々、馬賊の発祥は、我が村の擁護を目的とした任侠集団である”
“記者が接触した馬賊には、この気質が強く残っていた”
“もっともスポンサーが農村から資本力のある米独露に移行しており”
“我が村にとって英雄でも、清国にとって裏切りである”
“結局 「誰にとっての平和」 が定まるまで人は戦いをやめられないのである”
“とはいえ、満州の治安は良くなっており、穀物生産量は増加している”
“また満州鉄道に付随する米独鉄道関連施設は増加しつつあり”
“東ゲルマニアと遼東半島から製品が流れ込んでいる”
“日本製品は10分の6ほどで縮小気味である”
“これは、ゲルマニアの工業製品が急増しているためであり”
“ゲルマニア製品を持って満州に移民する朝鮮人が増えたためと言える”
“ゲルマニア・ドイツ軍による、朝鮮人3・1独立運動殲滅戦の暗い側面といえた”
“今後、ゲルマニアの工業力が大きくなると、製品の生産量は拡大していく”
“清国消費者の購買力は増大ししつつあり”
“安かろう悪かろうの日本製品は市場から締め出される傾向にある”
“日本は工業力を高め、国際競争力を身につけなければ経済成長も低迷していくだろう”
“時に日本が南満州鉄道権益を一人占めしていたら、という、仮定が世評に上る”
“これは列強に対し、日本が排他的権益圏を構築する偉業であり”
“作者の感想では、いささか、夜郎自大、困難と言わねばならない”
“日本は、資源、市場、消費の対外依存が高く、資金力が劣る事は明らかであり”
“日本の覇権は、列強に警戒されはずであり”
“輸出規制を受け、現在より、軍事的圧力が強まると予想される”
“極東ドイツの利権は拡大していた時代であり”
“ロシア極東艦隊と清国艦隊が再建され、ホワイトフリートが来航していた時代でもある”
“無理な軍事的緊張は、日本の軍事費を増大せしめ”
“社会資本は根こそぎ軍部に失われたと考えられる”
“日英同盟があったとしても産業は痩せ衰え、情勢不利であり”
“日本が排他的権益圏を構築する前に押し潰されていた可能性は高い”
“当時も今も軍人は、次男坊、三男坊であり”
“所領から排斥された者であり”
“持たざる者の気質を思えば軍部が暴走する可能性は高かったのである”
“拡大する軍事費で国家財政が破綻し、自滅する可能性も危惧ではなかった”
“日本の幸運と救いは外圧への妥協と、日独権益交換に帰結する”
“また、無責任かと思える借金先送りの内需拡大政策と食管予算”
“経済的な繁栄と二律背反で国防が等閑にされているのは確かであるものの”
“瑞樹州移民とドイツ、イギリス、アメリカ、清国との貿易は拡大傾向にあり”
“日本経済は安定し成長しているのである”
03/04
第29代アメリカ大統領ウオレン・G・ハーディング就任
北大西洋 サルガッソ海
無風の空と海流もなく海藻が漂う海ばかりが広がっていた。
帆走で走る大航海時代は死の海であり、
近代になっても海藻がスクリューに絡みつくため避けられやすい海域だった。
飛行船は索敵能力で優れているものの悪天候に弱く、
航続距離18000kmに達しているため、
安全に飛行できるサルガッソ海は好都合な空域だった。
飛行船 L71
「時計回りの気流で北大西洋をクルクル回るのも悪くないがな」
「嵐は苦手なんですがね」
「だがヘリウムガスのおかげで、かなり安心だな」
「アメリカも、良く売る気になったものです」
「アメリカは資源大国でも、工業技術を移民に依存している」
「戦争でもあって、欧州から大きな移民でもない限り、急成長はない」
「ヘリウムガスを売りたくなるくらい、焦っているのだろう」
「アメリカの総人口は、1億を超えているそうですが」
「だが軍事費増大を嫌っている国だ」
「我がドイツ帝国もですよ」
「まぁ 他に入用のモノが多いからな」
04/08 国有財産法・借地法・借家法公布。
清国海軍は、前ド級戦艦15隻、海防戦艦11隻は、海軍のみならず、
清国再建の象徴だった。
国家の主権と威信を自国民と他国民に見せつけ、
清国が盤石であると見せつける。
上海
済南(エルツヘルツォーク・カール)型戦艦 | 3隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
10472 | 126.24×21.78×7.51 | 18000 | 20.5 | 10kt/4000海里 |
40口径240mm連装砲4基 | 42口径190mm12基 | 45口径66mm砲12基 | 450mm魚雷2基 |
47mm8基 | |||
済南、西安、銀川 |
太祖(カイザー・フリードリヒ3世)型戦艦 | 5隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
11599 | 125.2×20.4×8.2 | 14000 | 17 | 10kt/4500海里 |
40口径240mm砲連装4門 | 35口径150mm砲15門 | 450mm魚雷6基 |
太祖、太宗、崇徳、聖祖、世宗 |
高宗(ブランデンブルク)型戦艦 | 4隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
10013 | 115.7×19.5×7.8 | 9000 | 16 | 10kt/4500海里 |
40口径283mm砲連装2基 | 35口径283mm砲連装1基 | 35口径105mm砲6門 | 450mm魚雷6基 |
高宗、仁宗、宣宗、文宗 |
開封(ハプスブルク)型戦艦 | 3隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
8960 | 114.5×21.2×7.4 | 13300 | 19 | 10kt/3600海里 |
40口径240mm砲3基 | 42口径150mm12基 | 45口径70mm砲10基 | 450mm魚雷2基 |
44口径47mm6基 | 33口径47mm2基 | ||
開封、大連、南京 |
重慶(ブダペスト)型戦艦 | 3隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
5878 | 99.22×17×6.6 | 8500 | 15.5 | 10kt/2200海里 |
40口径240mm砲4基 | 40口径150mm6基 | 44口径47mm6基 | 450mm魚雷2基 |
33口径47mm2基 | |||
重慶、南寧、南昌 |
八旗(ジークフリード)型海防戦艦 | 8隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | |
3741 | 86.15×14.9×5.46 | 5000 | 15 | 10kt/3500海里 |
35口径240mm砲3基 | 30口径88mm砲10基 | 450mm魚雷3基 | |
正黄、鑲黄、正白、鑲白、正紅、鑲紅、正藍、鑲藍 |
しかし、国家が如何に虚勢を張ろうとも現実に人と人が向き合うと、
実利的な力関係がモノを言うのだった。
それは、どっちが信用でき、どっちが情報を握り、
どっちが権限を持ち、どっちが実力があり、
どっちが利口か、どっちの能力が上か、
どっちが金を持ち、どっちがモノを持ち、
どっちが人脈を持ち、どっちが金脈を持っているか、
どっちが強みがあり、どっちが弱みがあるか、
人間同士の力関係に至るのである。
中国の資本家は、欧米列強との取引で成功し、
政治・軍事・警察権力を握り、
他者の生殺与奪を握ることを目指した。
中国社会は、ゼロサム世界であり、
勝ち残らった者が全てを制し、負けた者は奪われる世界だった。
100万票を集めるか、
100万テールを作るかであり、
野党の安全は保障されていない。
つまり、中国社会は命と権力と財産を守るため、貿易特権から他者を排除しようとし、
性急に利益を得なければならず、
欧米列強だけでなく、日本とも取引をするのだった。
そして、漢民族は、労働の正当な対価を得ようと租界地で仕事を探す。
白人は味方を欲し、金払いがよく、搾取されず済むからだった。
言葉を覚えるなら伝道所に行くのが最善であり、賃金も跳ね上がる。
中国官僚と富裕層は、離反する中国民衆に手足をもぎ取られ、
金に目の眩んだ労働者は列強になびき、手先となっていく、
清国は、中国権益を奪う先兵を生産するキリスト教の妨害をし、
個人の自由、信教の自由を要求する欧米列強と清国の間で摩擦が生じる。
かといって、欧米列強が中国官僚・富裕層を通じ労働者を集めると、
漢民族の労働者は、二重三重に搾取される。
こうなると欧米列強は損をするため、アヘンを中国民衆に売ることを覚え、
軍閥同士を戦わせ、漁夫の利を狙い、利潤を上げていく。
また武器弾薬を民衆に売ると、中国富裕層は身を守るため、
護身用の武器弾薬を大量に購入するのである。
こうして、中国資源は、国外へと流れていく。
清国政府は、可能な限り、武器弾薬と麻薬の密輸を止めようとするものの、
生きる希望も、生き甲斐もない、中国民衆が聞くわけもなく。
また、軍属同士の疑心暗鬼が薄まる事もなく、
横流しで身を立てることも伝統だったのである。
なので欧州列強は、利益に引き込まれ、
中国民衆に求められて居座っているのであり、
そこに清国が列強を排斥できない側面も存在する。
上海、日本人の商人が列強の商人と取引していた。
中国で鉄鉱石と石炭を購入し、日本で製鉄し、加工、輸出する。
とはいえ、中国の鉄鉱石は、量こそ多いものの、
採算性は低かったのである。
街並みが広がり、一つ一つの家々は大きくなり、
スラム街も広がっていた。
「こりゃまた、しばらく見ないうちに大きくなったものだ」
「中国の大都市の一部は、日本に並ぶほど発展しているよ」
「資源は莫大。虐げることができる人口も日本の10倍を超えている」
「こういう国の上層部は、神のごとくなんだろうな」
「100万テールか、100万票で清国国会議員か。楽しそうだな」
「なんか、民主主義で議員視点の見方って嫌じゃないか」
「金を搾り取られて、1票を入れる有権者の見方が正しいとは思えないがな」
「だけどなんか民主主義と違うよな」
「天子主義だね」
「奪うことに躊躇のない世界だからな」
「日本だと長子が相続しやすいから」
「恨みを避けるため先祖供養とかやるけど」
「中国は均等相続制だから殺伐感も、その辺かな」
「いや、人口が多いから、不作になった時の反動じゃないかな」
「子供の可能性を信じるなら均等相続制なんだけどな」
「あっという間に食べられなくなるんじゃない。だから匪賊になりやすい」
「それなら日本だって次男坊以下が匪賊だろう」
「日本の平均世帯人数が5人くらいだろう、普通に考えると一人余るか、余らないかだよ」
「中国の場合、女子を間引きする場合が多いから、そっちの方が大きいかも」
「んん、身につまされる気がする」
04/11 日本でメートル法公布
とある場所
「はぁ メートルだぁ〜」
「みたいですよ」
「尺は?」
「使わないんじゃないの?」
「あり得ねぇ〜」
「じゃ・・・」
「そんなもんで家が建てられるか。無視」
ワシントン
男たちが悪だくみを進めていた。
無論、国民に選出させるため最大公約数的な公益は外せないものの、
優先順位は、自由資本主義、民主主義国家らしく、
私利私欲 > 利権団体 > 国益 > 同盟国 だった。
富を求めて荒らぶる社会は、敵国の弱体化と収奪すらも求めた。
「長期的な展望に立てば資源と人口の多い大国、ロシア、清国、ブラジルも脅威となる」
「だが、当面の敵性国家は、ドイツ帝国、イギリスなど工業力の強い国だろうな」
「開発に力を削がれているので、現段階では、脆弱かと」
「しかし、日英同盟。独墺同盟。英仏露協商は、目障りだな」
「ええ、ですが破棄させたとしても、利害関係で、もっと不利な同盟が結ばれるかもしれません」
「んん・・日独同盟は面白くないない」
「工業力でアメリカを追いつめるとしたらドイツ帝国が一番強力だな」
「いまのところ、アメリカ産業の捌け口になりそうなのは、清国だが」
「それが確保されるのなら、事を起こさぬともよいだろう」
「やはり、ドイツ系の移民が減ると厳しいですからね」
「まぁ 自由と資本主義。民主主義を求める人間は多い」
「あとは、力のある者を移民させれば勝てると思うがね」
列強各国の鉄鋼生産(100万トン) | |||||||
アメリカ | ドイツ | イギリス | ロシア | フランス | 墺 | イタリア | 日本 |
42.3 | 21 | 9.2 | 5 | 2.7 | 3.1 | 0.73 | 1 |
42.3倍 | 21倍 | 9.2倍 | 5倍 | 2.7倍 | 3.1倍 | 0.73倍 |
鉄は国家だった。
軍艦、銃器・火器だけでなく、
船舶、鉄道、工場、製鉄所、発電所、鉄筋建物など、鉄がなければなされなかった。
さらに鉄鋼より容易に生産できる粗鋼生産は、さらに開きがあり、
粗鋼生産を含めるのなら、日本は最下位に転落してしまうのである。
仮にドイツ帝国は、鋼材の半分を1年間、東ゲルマニアに送るだけで、
日本でいうところの10年分の鋼材となり、
それで、東ゲルマニア産業基盤を整えることができた。
無論、鉄量を国土の広さで割ったり、人口で割ったり、で比重が変わったりするものの、
この時代、列強は、鉄を生産することで国家基盤を豊かにし、国を守り、
鋼を輸出することで、莫大な富を得て、国内に富を還元していたのである。
鋼を生産できない国は、鋼を生産できる国に勝ち目がなく、
もし、鉄を生産できず、国民国民の意識が育っておらず、
部族意識のままとどまっていたら、植民地化されているか、
亡国の危機にあるといえた。
特にドイツとイギリスで生産される鋼は、錆びと強靭さで定評があり、
高品位鋼材の生産性が良く、量を質で補っていた。
しかし、アメリカ合衆国の生産量は圧倒的であり、
世界中に植民地を有する覇者イギリスも、適し得なくなるのは確実であり、
如何に潜在能力の高いドイツ帝国であっても、不利であり。
当然、日本は、どれほど上手く鋼を振り分けても太刀打ちできないのである。
閣議
「あのぉ〜 国防予算は・・・」
「ったくぅ〜 鉄橋を建設するだけで泣きたくなるわい」 無視
「鉄筋コンクリートで水増ししても勝てん・・・」
「鉄そのものは増えないからね」
「東ゲルマニアはともかく、清国も製鉄所を作るのだろか」
「まずいぃ〜」
「山東半島は、ホーエンツォレルンだっけ? 鉱物資源が採れるらしいよ」
「たしか・・・ドイツ人に聞くと、金、天然イオウ、石っこう・・・」
「石油、ダイヤモンド、マグネサイト、コバルト、ハフニウム、花崗岩・・」
「塩化カリウム、石墨、滑石、ベントナイト、石灰岩・・・」
「あと、石炭、天然ガス、鉄、重晶石」
「ケイソウ土、ジルコン、ボーキサイト、耐火粘土も有望・・・」
「じゃ 三半島の社会基盤が整ったら、日本は一気に引き離されるわけだ」 涙
「頭いてぇ」
「あのぉ〜 国防予算は・・・」
「ここは、産業で引き離される前に貿易を拡大した方が良いだろう」
「収益を日本国内産業に還元しておくべきだろうか」
「作れるうちに公共投資しないと、後になるほど不利になりますね」
「北東ニューギニアの瑞穂州開発は?」
「いまのところ、唯一の希望だけど・・・」
「開発には金がかかるよ。割り振りが効かない」
「商船隊は?」
「収益は悪くないよ」
「三半島―日本―ハワイ―サンフランシスコ―パナマまでの太平洋航路」
「パナマ―ニューヨーク―ロンドン―ドイツ帝国までの北大西洋航路は、収益が見込める」
「それは助かるね」
「あのぉ〜 国防予算は・・・」
「あと、インド洋周りのドイツとイギリス植民地航路も定期航路が軌道に乗れば大きい」
「イギリスが日本・インドと組んで植民地を押さえるなら、海外貿易でも有利になるだろう」
「植民地を抱え込みすぎて、成長率で不利では?」
「まぁ それでも、日本国民の労働力は潰しが利くからね。何とかなりそうだ」
「あと、客船の修復ドックも必要ですね」
「それに清国海軍の修復も引き受けることになりそうですし」
「またぶつけたのか」
「そのようです」
「んん・・・予算がいるなぁ」
「「・・・・」」
「じゃ 今日はここまで」
がたがた がたがた がたがた がたがた
「「・・・・・」」 ため息、
しょんぼり × 2
呉
E型潜水艦 | |||||||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | HP | 速度 | 航続距離 | 武装 | 魚雷 | 乗員 | ||
水上 | 667/807 | 55.17×6.91×3.81 | 1600 | 14 | 10kt/6035km | 47mm砲 | 457mm×5門 | 10 | 30人 |
水中 | 840×2 | 9 | 5kt/121km |
「高かったよ〜」
「足元見やがって」
「ドイツが戦争で負けていたら、安く手に入ったかもしれないのに・・・」
「だけど、ドイツ潜水艦は、E型潜水艦の倍の大きさだぞ」
「イギリスだって、J型は1820トン級、K型は2566トン級」
「潜水艦と航空機は、国産開発を進めた方がいいだろうな」
「予算がなかったんじゃないかな」
「世知辛いな」
「イギリスの植民地防衛を担わなかったら、買えなかった代物だよ」
西サモア サバイイ島(1708ku) ウポル島(1125ku)
年間平均気温が26〜27度。
乾季(5〜10月)と雨季(11〜4月)
年間降水量2500〜3000mm。
水力発電所が建設されると、電線が埋設され、島全体に行き渡る。
さらに電力を得ようと思えば、火力発電が考えられ、
さらなる予算が求められる。
最小限の電力を得られると港湾設備が整備され、
船舶の入港が増え始めていた。
日本はサモアに肩入れしていた。
もっとも、自給自足させ、
さっさと手を引きたがっていたからに他ならない。
「雨が多いな」
「山頂の方が涼しそうだが」
「山頂の方が雨が多いよ」
「水力発電は良いけど、それだけじゃな」
「電力と資源さえあれば産業は興せるよ」
「資源がないだろう」
「アメリカ領サモアの方が発展してないか?」
「アメリカ領サモアの方が港湾が良くてね」
「人口では勝てるだろう」
「問題は国際港で使うならアメリカ領サモアだってことだよ」
「でかい島な割に不利だな」
ロンドン
日本がイギリス艦艇の払い下げ購入を決めると、
日本の軍政・軍令官が常駐するようになっていた。
下請けで購入するのは日本であり、価格面を考慮すると、
日本の意向は、無視できなくなっていた。
「ネルソン型は、高速型を望みたい」
「しかし、所定の性能を考えれば・・・」
「中古を買わされる側としては、高速型である方が望ましいのですよ」
「まぁ そうでしょうが・・・」
日本はネルソン型の仕様を変更させてしまう。
ネルソン型戦艦 | 4隻 | |||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | 兵員 | |
34000 | 216.4×32.3×9.1 | 45000 | 23 | 16kt/7000海里 | 1314 |
45口径406mm砲3連装3基 | 50口径152mm連装砲6基 | 53口径120mm6基 | 622mm魚雷2基 |
水上機×2 | |||
ネルソン、ロドニー、ドレーク、スミス |
↓↓ ↓↓
ネルソン型戦艦 | 4隻 | |||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | 兵員 | |
34000 | 227×32.3×8.8 | 90000 | 28 | 16kt/7000海里 |
45口径356mm砲3連装3基 | 53口径120mm連装16基 | CMB40ft×2 | 水上機×6 |
ネルソン、ロドニー、ドレーク、スミス |
CMB40ftは12メートル級魚雷艇(120馬力)であり、
魚雷2本。機関銃2基。
35ノットの高速を発揮した。
艦尾から出撃、帰還させるため、柔軟性のある作戦も期待できた。
「専用の水雷艇母艦を建造した方がいいような気もするが」
「戦艦と同行できる水雷母艦を建造するの?」
日英同盟によって、イギリス海軍は底上げされ、
アメリカは、民主的な理由で軍事的な拡大が難しく。
ドイツ帝国も、植民地開発と潜水艦配備を重視していた。
フランスとイタリアは、国力不足であり、
ロシア帝国とオーストリア・ハンガリー帝国は、海軍より陸軍。陸軍より近代化だったのである。
そして、国権の強い日本でさえ、鋼の割り振りがつかず、
軍事的な覇権は思いもよらないのだった。
列強各国には、それぞれに思惑があり、弱点があった。
アメリカ合衆国は、自由資本主義の民間活力で、欧州諸国を追い抜き、
圧倒的な国力で国際舞台で成り上がりを目指していた。
イギリスは、日本・インドを使って植民地を保ちつつ、
ドイツ帝国を牽制し、アメリカの移民誘導によるアメリカ合衆国のラテン化を目指していた。
ドイツ帝国は、極東三半島とアフリカ植民地の近代化と自国領編入によって、
大国化を目指し、日の沈まない大国となろうとしていた。
フランスは、植民地防衛で破綻していた。
イタリアは、民族的な憂鬱によって、低迷していた。
オーストリア・ハンガリー帝国は、少数民族の2分の1政策と、
ドイツ植民地移民で一息ついており、辛うじて国体は保たれていたのだった。
ロシア帝国は、富を吸い上げ過ぎた貴族の改易を強行しつつ、
ロマノフ王朝とロシア人の関係改善に努めていた。
日本は、大陸から撤収しつつも、経済主導で産業を立て直し、
勤労勤勉な国民を酷使、搾取しつつ近代化を図ろうとしていた。
清国は、君主制議会制民主主義へと移行したものの、
ゼロサムの度合いが大きく、敗者は徹底的に奪われ、死滅させられていく。
モラルと民意が低く、不正腐敗が横行し、
資源の売却と国民の搾取で無理やり近代化していた。
11/12 ワシントン国際会議開催(〜1922年2月6日)
英・米・独・墺・露・仏・日・清・伊・
問題を抱えながらも9ヶ国は、紛れもない列強であり、
自由貿易に関する国際会議が開かれていた。
なぜアメリカで会議が行われたかというと、
ドイツ帝国、オーストリア・ハンガリー帝国の東ゲルマニア移民であり、
清国の民主化しつつあった。
世界経済の重心はアメリカ合衆国と欧州を挟んだ北大西洋から、
太平洋と北大西洋を挟む、北アメリカ合衆国に移ってしまったと言える。
因みにブラジルとアルゼンチンは、今回、呼ばれなかった。
自由貿易は、聞こえこそいいものの、
“モラル” “制度” “産業” “資源” “人口” “資本” “軍事”
強いカードを持っている国は強く、
弱いカードしか持っていない国は自由貿易するだけで敗北するのである。
なので、当然、関税をかけたいのであるが内圧的な欲求も強いのである。
「やっぱり、自由貿易だよ。国民は、安くていいものを求めている。当然だね」
「この、どあほうが、他国に生殺与奪権を握らせるバカがどこにいる」
「一定の関税規制は必要だろう」
“““““““ふ、札がきれん〜〜〜””””””
列強といえど、独り善がりな関税をしつつ、
必要な戦略物資を望む国は多く。
そういった国は、国民に無理を強いるしかなかったのである。
アメリカ合衆国
ワシントンに至るポトマック川の河口
列強各国の戦艦が浮かんでいた。
33400トン級戦艦ミシシッピ、
28000級戦艦ラミリーズ、
34000級戦艦ヘルゴラント、
27340トン級戦艦プロヴァンス、
26000トン級戦艦摂津、
20000トン級戦艦テゲトフ、
23088級戦艦ジュリオ・チェザーレ、
10472トン級戦艦済南、
24664トン級ヴォーリャ
貿易関税に関する協議を行うためであり、
摂津 艦橋
「・・・我の張り合いか、くっだらない」
「こいう場合、戦艦で来るのは、国際慣例みたいなものだよ」
「客船の方が居心地いいと思うがね。少なくともプールがある」
「まぁ そうでしょうが・・・」
列強は戦艦に外交官を載せて出航させたのだった。
アメリカ合衆国 | ニューメキシコ型戦艦 | 3隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | ||
33400 | 190.2×32.3×9.44 | 27500 | 21 | 10kt/3600海里 |
50口径356mm砲3連装4基 | 25口径127mm8基 | 56口径40mm40基 | 70口径20mm40門 |
魚雷×2 | |||
ニューメキシコ、ミシシッピ、アイダホ |
イギリス | リヴェンジ型戦艦 | 5隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | ||
28000 | 190.3×27×8.7 | 40000 | 23 | 10kt/4200海里 |
42口径381mm砲連装4基 | 45口径152mm14基 | 45口径76.2mm2基 | 40口径47mm2門 |
魚雷×4 | |||
リヴェンジ、レゾリューション、ラミリーズ、ロイヤル・ソヴァレン、ロイヤル・オーク、 |
ドイツ帝国 | ヘルゴラント型戦艦 | 4隻 | |||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | 兵員 | ||
34000 | 240×30×10 | 120000 | 27 | 10kt/10000海里 | 900 |
47口径381mm砲連装4基 | 50口径105mm連装砲8基 | 水上機3機 | |
ヘルゴラント、オストフリースラント、チューリンゲン、オルデンブルク |
日本 | 摂津型戦艦 | 2隻 | |||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | 兵員 | ||
26000 | 180×25×8.2 | 25000 | 23 | 10kt/10000海里 | 764 |
50口径305mm砲連装4基 | 45口径120mm単装砲8基 | 水上機3機 | |
摂津、河内 |
オーストリア・ハンガリー帝国 | フィリブス・ウニティス型戦艦 | 4隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | ||
20000 | 152.2×28×8.5 | 26400 | 20.3 | 10kt/4200海里 |
45口径305mm砲3連装4基 | 50口径150mm砲12門 | 50口径70mm砲18基 | 533mm魚雷4基 |
フィリブス・ウニティス、テゲトフ、プリンツ・オイゲン、セント・イシュトヴァーン |
フランス | プロヴァンス型戦艦 | 3隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | ||
27340 | 165.8×26.9×9.8 | 29000 | 20 | 10kt/4700海里 |
45口径340mm砲連装5基 | 55口径139mm砲22門 | 60口径47mm砲18基 | 450mm魚雷4基 |
機雷×40 | |||
ブルターニュ、プロヴァンス、ロレーヌ |
イタリア | コンテ・ディ・カブール型戦艦 | 4隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | ||
23088 | 176.9×28×9.46 | 31000 | 21.5 | 10kt/4800海里 |
50口径305mm砲3連装3基 | 50口径120mm砲18門 | 50口径76.2mm砲13基 | 40口径76.2mm砲6基 |
450mm魚雷×3 | |||
コンテ・ディ・カブール、ジュリオ・チェザーレ、レオナルド・ダ・ヴィンチ |
清国 | 済南(エルツヘルツォーク・カール)型戦艦 | 3隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | ||
10472 | 126.24×21.78×7.51 | 18000 | 20.5 | 10kt/4000海里 |
40口径240mm連装砲4基 | 42口径190mm12基 | 45口径66mm砲12基 | 450mm魚雷2基 |
47mm8基 | |||
済南、西安、銀川 |
ロシア帝国 | インペラトリーツァ・マリーヤ型戦艦 | 3隻 | ||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | ||
24664 | 169.4×28×9 | 27000 | 21.5 | 10kt/4000海里 |
52口径305mm3連装砲4基 | 55口径130mm20基 | 60口径70mm砲8基 | 450mm魚雷4基 |
インペラトリッツァ・マリーヤ、インペラトリッツァ・エカテリーナ・ヴェリーカヤ、ヴォーリャ |
ポトマック川河畔
関係者たちが居並ぶ9隻の戦艦群を見ていた。
「ブラジルとアルゼンチンは呼ばれなかったみたいですね」
「あそこは、失速中だからね」
「くっそぉ〜 日本の平和主義者どもに、この光景を見せてやりたいよ」
「摂津。負けてるよね」
「負けている上に、河内が爆沈したのも面白くない」
「しかし、脅威の質としては、潜水艦も戦艦も変わらないような気がするがね」
「潜水艦は割高で安くないよ」
「戦艦より安い」
「成果確認ができていない」
「ドイツは、最高レベルの飛行船80隻と潜水艦180隻を就役させている」
「正直言って、戦艦以前に勝てる気がしないよ」
「まぁ 対戦艦より、対潜水艦か、対航空戦か」
「ついでに言うと、どっちに対応できるだけの金はない」
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月夜裏 野々香です。
ドイツ帝国、
オーストリア・ハンガリー帝国からの移民も増えて、
鉄の量も圧倒的です。
東ゲルマニアの産業と近代化は、急速に進みそうです。
日本 ぴ〜 ん〜 ち〜
領有 面積(ku) | 利権 面積(ku) | 軍(万) | 人口(万) | 墺 | ||
北欧 | ドイツ帝国 | 54万0857 | 4720 | |||
朝鮮半島 | 東ゲルマニア | 21万0000 | 100 | 2800 | 500 | |
遼東半島 | 3462+1万2500 | 10 | 200 | |||
山東半島 | ホーエンツォレルン | 4万0552 | 11万6700 | 20 | 700 | 500 |
カメルーン | 南ザクセン | 79万0000 | 10 | 200 | ||
東アフリカ | 南ヴュルテンベルク | 99万4996 | 10 | 200 | ||
南西アフリカ | 南バイエルン | 83万5100 | 10 | 200 | ||
トーゴランド | 南バーデン | 8万7200 | 10 | 200 | ||
ドイツ帝国 | 350万2167 | 12万9200 | 9290 | 1000 |
第13話 1920年 『八八艦隊計画』 |
第14話 1921年 『誰がための平和』 |
第15話 1922年 『売国じゃないよ、売民だよ』 |