月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想歴史 『風が吹けば・・・』

 

 

第16話 1923年 『大英帝国植民地補完計画』

 日本 首相官邸

 「やれやれ、食管予算で農民の生活底上げをしたと思ったら」

 「今度は食管予算を引き下げながらインド移民か」

 「日独同盟を防ごうとする、イギリスの悪意も感じます。断れないのですか?」

 「国益を追求すれば民を殺してしまうこともある」

 「民の利益を追求してしまうと国益を殺してしまうこともある」

 「国家間の対立を緩和しながら、民の利益を求めるのは難しい」

 「国にも民にも無理を強いるかもしれないな」

 「日英同盟は、そこまでの価値があると?」

 「日本産の資源は、労働力しかない」

 「そして、ロシア帝国、東ゲルマニア、アメリカ合衆国、清国に包囲されている」

 「イギリスとの同盟は、イギリスだけでなく」

 「イギリスの植民地権益とも繋がっている」

 「インド入植は、イギリスとの強い絆になるだろう」

 「入植条件がいいのは、そういうことですか?」

 「そんなところかな」

 「通りで気前がいいと思いました」

 「日英同盟堅持は、党で引き継がれた国策だよ」

 「イギリスの詐欺にあってる気分ですよ」

 「水力発電用地と都市用地の接収はできている」

 「発電ダムと都市を建設すれば、そこそこに収入になるし」

 「鉄道の運営が任されるなら、生活はできる気がするね」

 「インド人の反発は大丈夫でしょうか?」

 「インド人は、ほかのイギリス領に入植している」

 「格安船賃が祟ったかな」

 「船賃で外貨を稼ごうとするからですよ」

 「ほかに外貨を稼ぐ手段がないだろう」

 「ほとんどの資本家が海運株を購入して」

 「それで外貨を得て外国製品を購入している」

 「それに東ゲルマニア入植需要は大きい」

 「インドの山岳部と河川の源流を抑えられるのなら悪くはありませんが・・・」

 「国民も所領を増やしたがっているし」

 「インド植民は、悪くないと思われているよ」

 「自分が移民するのでなければですがね」

 「イギリスの保障もあるし、二人三脚でやっていけると思うがね」

 「だといいのですが」

 「それより、建設師団の創設で1200万。年間維持費700万か・・・」

 「土木建設機械は、銃器より高いですからね」

 「さらに建設資財費は別途です」

 「民間に任せる方が良さそうな気もするがね」

 「インド入植と開発は、危険を伴いますし、軍でないと・・・」

 「それに要塞は軍機にも関わりますし、建設師団に頼るところ大ですからね」

 「んん・・・物価上昇分と外貨会得から逆算すると、4つほど創設できそうだが・・・」

 「そうですねぇ 開発が済めば、建設師団を解体すれば良いですし」

 「問題は清国の増強振りか・・・」

 「いったいどのくらい資源があるんだ」

 「利己主義な国ですから、列強が上手く御しているようです」

 「だと良いがな」

 「少なくとも、日本人より対中政策は上手いような気がします」

 「あははは・・・」

 

 

 

 基本的に日本人の入植は、内陸部の要衝とされ、

 大英帝国植民地保持の布石となった。

 日本人街は、1000kuと決められており、

 佐渡島の854kuより、少し大きかった。

ヒマラヤ山脈 東西 インダス川 平城京  
ガンジス川 ヤムナ川 平安京  
ゴマティ川 飛鳥京  
ヴィンディヤ山脈 東西 ヤムナー川 因幡京  
    ナルマダ川 青龍京  
サトプラ山脈 東西 タープティー川 白虎京  
東ガーツ山脈 南北 ゴーダヴァーリー川 玄武京  
西ガーツ山脈 南北 マハナディ川 朱雀京 黄龍京
クリシュナ川 鳳凰京 瑞亀京
カヴェリ川 麒麟京  

 新設された4個建設師団がインドに上陸し、

 発電ダムを建設し、都市予定地を整地していく、

 建設場所はインド大陸で1ヵ所、セイロン島で1ヵ所増えて、12か所に及び、

 合計すると1万2000kuに及び。

 いずれも河川を挟んだ山岳地だった。

 そして、装甲列車だけでは不安なのか、

 日本はイギリスから装甲車を購入したり、

 自動車、あるいはバスの鉄板の厚みを増やしたり、

 機銃を載せたりする。

オースチン装甲車
重量 全長×全幅×全高 hp 速度 航続距離 装甲 機銃 乗員
5.2 4.9×2×2.58 50 55 200 5.5mm 7.7mm×2 5

 

 

 日本人たち

 「インドの水力発電は、推定600億KWだと」

 「すげぇ」

 「ガンジス川とインダス川は、大河だからな」

 「鉱物資源も多い」

 「鉄鉱石、石炭、ボーキサイト。金、ダイヤモンド」

 「チタン、クロム、マンガン、トリウム」

 「雲母、銅、石油、天然ガス、アスベスト、亜鉛、石灰石が期待できそうだ」

 「労力は安く上がりそうだし」

 「開発できたらアメリカといい勝負できそうだな」

 「じゃ 開発して、産業を興すか」

 「しかし、イギリスの取り分も少なくないからな」

 「自分じゃ 開発しないくせに搾取だけはしやがる」

 「取り敢えず、新種の企業なら、ダリットを雇えて安く上げられるはず」

 「カースト様々というべきかな」

 「しかし、原野が多いのは嬉しいねぇ」

 「インド人口3億2000万で日本の6倍近いからね」

 「人口密度は日本の方が大きくないか?」

 「それにインド人は他の植民地に移民させられているし」

 「僻地なら閑散としている」

 「だが、意外に近代化している藩王国もあるようだ」

 「近代化を意識しているのは、ハイデラバード藩王国と」

 「あと、マイソール藩王国、トラヴァンコール藩王国の3つだな」

 「朱雀京、鳳凰京、麒麟京、黄龍京、瑞亀京は」

 「西ガーツ山脈側とハイデラバード藩王国に挟まれてやばいな」

 「イギリスは、その3藩王国の押さえを日本にやらせたいんだろう」

 「やれやれ、東ゲルマニアのおかげで、日本本土も大変だというのに」

 「だから、だろうね」

 「イギリスは、インドを鎹に日英同盟を維持し」

 「対ドイツの備えをするつもりだろう」

 「逆に言うと戦争未満なら、日本はかなり得なはずだな」

 「そうなるな」

 

 

 ムスリム(イスラム)教 ハイデラバード(ニザーム)藩王国は、

 インド最大の藩王国にしてイギリス最大の盟友だった。

 ミール・オスマーン・アリー・カーン藩王(37)は、

 日本の動きを探らせていた。

 「藩王。日本人は、イギリス行政区の山岳地に取り付いたようです」

 「日本は建設師団を持っているのか」

 「はい、鉄道輸送と合わせて」

 「最新式の土木建設機械を導入しているようです」

 「水源を抑えられるのは面白くないが・・・」

 「水力発電を起こし、こちらにも送電してくれるとか」

 「ニザームの圏外になるが、影響力は大きいだろうな」

 「イギリスは、イギリス海外植民地をインドに負担させ」

 「インド植民地運営を日本に負担させようとしていると思われます」

 「日本の代表は来るのか?」

 「はい、領事館を置きたいとか」

 「イギリスと共同統治を狙うつもりかな」

 「いえ、送電と電気料金のこと、あるいは、商品と資材の輸出入かと」

 「んん・・・藩王専売なら日本と仲良くしたいな」

 「開発で協力し合えるのであれば、双方の利益になるかと」

 「イギリスは、非協力的だからな」

 「それにニザームは、イスラム教で周りから孤立している」

 「日本と仲良くして近代化すべきだろうな」

 

 

 

 ブラジル

 この頃、日本は、ブラジルに格安の駆逐艦を輸出できるめどが立っていた。

 700人弱の数少ない日本人移民団は、

 当初、コーヒー園で働いていたものの、

 日本資本は、適当な足場を作っており、

 日本資本のブラジル参入もインド入植と似た手法が検討される。

 いわゆる、水力発電所と水田開発、

 その後、資源開発と各種産業に至る。

 この方式は、一部手直しされ、

 ブラジルの日本人移民団に対して適応された。

 無論、軍事的な側面はなく、純資本投資だったものの、

 水力発電が推し進められ、

 日本からの余剰物資が送られ、

 早期に発電と農業事業が軌道に乗ると、

 資源開発の投資が検討される。

 ブラジルに寄港する定期船は、日本資本のブラジル進出を可能にさせ、

 日本資本の資源開発参入を容易にさせてしまう。

 

 

 日本 呉

 あらゆる艦艇の中で、最大射程を誇り、

 その射程内の艦艇全てに致命傷を与え、

 自らは、自身が保有する火力以上の砲撃を受けなければ沈没に至らない。

 戦艦は、制海権を支配する上で大きなアドバンテージを保つことができた。

 とはいえ、戦艦でさえ無敵ではない、

 その仕様が計画に遡上する前に霧消させてしまう天敵が存在する。

 多くの国家が、その天敵に膝を屈し、

 日本も、また、その敵に敗北し、

 戦艦建造を断念したのだった。

 赤レンガの住人たち

 「んん・・・敵は、客船、鉄道、道路」

 「上下水道、発電所、学校、海外投資か・・・」

 「庶民は、持家、自転車、ラジオを目標に働いているし」

 「だから、庶民に人生計画を立てられるような可能性と」

 「夢を与えちゃいかんと言ったんだ」

 「イタリア人とか、フランス人みたいな」

 「権利ばかり主張する弱い国になりそうだな」

 「だから食管予算に反対したんだ」

 「どいつも、こいつも、打算で所帯染みて動きやがらねぇし」

 「自分で限界を作って楽をしやがる」

 「んん・・・このまま庶民生活を向上させるとまずい気がする」

 「どいつも、こいつも、戦艦の建造より。どんな庭木を植えるか気にするからな」

 「日本はもっと貧しいはずだったがな」

 「最近、景気が良過ぎますからね」

 「何とか、戦艦建造分を捻りだしたいがな」

 「イギリスは、巡洋艦重視ですからね」

 「C型軽巡洋艦を売りつける気ですよ」

 「陸はインドに負担させて、海は日本に負担させるつもりか」

 「むかつきますね」

 「くっそぉ〜 忌々しい」

 「いつまでイギリスの傀儡を続けにゃならんのだ」

 「日本が国力を付けるまででは?」

 「国力じゃなく戦力だろう」

 「政府はそう思ってないみたいですけどね」

 「ちっ バカ政府が」

 「利権構造の神輿に乗った政治家じゃなく」

 「学門閥のキャリアで国を作りてぇ」

 「最終的には軍門閥か?」

 「うん」

 「まぁ どんなバカ政府でも、国民の意思が反映された結果だし」

 「国民だって選挙で意志の反映されない軍人に国政を任せるバカはいないよ」

 「ふっ まだ労働組合の延長で国のトップが決まる共産主義の方が民主的か」

 「どうだかな」

 「利益追求より労働条件重視」

 「その上、票集めの慣れ合いじゃ企業は回らないと思うよ」

 「労働意欲は減退するし」

 「まず設備更新の蓄財も出来ない気がするね」

 「しかし、結局、現れなかったな。共産主義国家」

 「ロシア帝国は、ギリギリ乗り切ったような気がするね」

 「だけど、ユダヤ人に経済を任せてから、かなり産業が伸びてるぞ」

 「んん・・・」

 

 

 

 帝都東京は、近代化が進み、繁栄しつつあった。

 大正デモクラシーの気運は高く、

 薩長の藩閥政治打破の護憲運動の動きも強い。

 喫茶店で男たちがコーヒーを飲み、新聞を読みふける。

 “海外雄飛 大日本帝国は愛国の徒 求む”

 「政府は、海外移民を増やしたがってるぞ」

 「けっ 嘘付きの詐欺師どもが綺麗事言いやがって」

 「海外投資で国家資産どころか」

 「個人の資産まで持っていかれたら国力が減る」

 「それに市場と消費者が減って、物価も上がる」

 「領土が広がったからってな」

 「地主、大家、資本家は家賃収入と労働搾取で成り立ってるんだ」

 「農民と労働者を簡単に手放したりするものか」

 「邪魔者が減ったら、資本を引いて、土民にするつもりだよ」

 「しかし、現に移民を推奨してるぜ」

 「好きだとか、お前のためだとか、甘言言うのは詐欺師の常套文句だよ」

 「本当に相手のため、国民のため、いうのなら薬みたいに不味いもんだ」

 「総論賛成各論反対ってやつだろう」

 「疎ましい次男以下の棄民政策だよ」

 「ロクな投資もせず、邪魔者を追い出してしまうのが狙いだな」

 「少なくとも、残った者は所領は守れるし」

 「国家や資本家が要衝を買い取れば倍になるからね」

 「なるほど、薩長の既得権益者が反社会的な勢力を追い出したがっているわけか」

 「バカどもが、それに乗っていくんだ」

 「薩長も自分の聖域を作ると」

 「今度は、身内同士が大同小異の派閥で奪い合うことになる」

 「それくらい、気付けばいいのに」

 「それに気付くようなら、もっとマシな利益誘導位するだろう」

 「要は、農民が乗るか、だろう」

 「んん・・・船が行き来してるからな」

 「現地を見て安心すれば動くかもしれないがね」

 「どちらにしろ、未開地に追い出されるのは辛かろう」

 「水力発電所と、町を作ってからだと」

 「また、国家予算を持って行きやがる」

 「国民に渡すといろんな格差が縮まるから、海外投資したいんだよ」

 「けっ どこまでも、変わらんなぁ・・」

 !?

 「な、なんだぁ?」

 

 土煙が濛々と大地を覆い、

 炎の竜巻が家々 物々 人々を吹き上げ、撒き散らし、

 大地を舐めつくしていく、

 地震は昼食前(AM11:58)から始まった。

 大半の家が最初の大きな揺れに耐えられず、

 次の揺り返しで、ほとんどの家が崩れていく、

 火元は困らず、あっという間に帝都全域を延焼させ、

 人々は、我先に逃げだしていく、

 死者・行方不明者 14万2800人

 負傷者 10万3733人

 避難人数 190万人以上

 住家全壊 12万8266戸

 住家半壊 12万6233戸

 住家焼失 44万7128戸(全半壊後の焼失を含む)

 その他 868戸

 09/01 関東大震災発生

 

 

 ズタボロの首相官邸

 帝都再建計画

 「再建は40億くらいはいるな」

 「いっそ、区画整理のみ行って、遷都してはどうでしょう」

 「遷都か・・・」

 「京都に戻すか」

 「既得権益者に国政が阻害されるかもしれません」

 「それはまずい」

 「では、既得権益者のいない場所で・・・」

 「んん・・・首都の機能で必要最小限のモノといえば、そう多くないからな・・・」

 「それはそうと、予算が問題になりそうです」

 「予算か・・・軍事費は削減だな」

 「左遷先の要塞は建設できたし、旧式艦艇は廃棄した方がいいだろう」

 「ですかね・・・」

 「建設師団は、どうされますか?」

 「そうだな。建設師団だけは、新設した方がいいだろうな」

 

 

 

 

インド
マイソール藩王国 ハイデラバード(ニザーム)藩王国 マドラス藩王国
バスター藩王国 バジャール藩王国 ジョードプル藩王国
コーチン藩王国 トラヴァンコール藩王国 ジュナーガル藩王国
アワド藩王国 ポルパンダール藩王国 プドゥコッタイ藩王国
ホルカール藩王国 コッチ・ビハール藩王国 ダール藩王国
パタウディ藩王国 コールハプール藩王国 バローダ藩王国
ダルバンガ藩王国 シェール・シャー藩王国 インダウル藩王国
シャン藩王国 クッチ・ビハール藩王国 ジュナガル藩王国
ヴァラナシ藩王国 パンダリーコット藩王国 デーワース藩王国
ベンガル藩王国 パンダリーコット藩王国 ワーラーナシ藩王国
ボーポール藩王国 コッチ・ビハール藩王国 ラダク藩王国
ボーパール藩王国 テーリ・ガルワール藩王国 トプール藩王国
ビルバリ藩王国 ラジャスターン藩王国  
パキスタン
カラート藩王国 バハーワルプル藩王国 マクラン藩王国
ラスベラ藩王国 カイルプール藩王国 カラン藩王国
アンブ藩王国 チトラル藩王国 ディール藩王国
スワート藩王国 バルーチスタン藩王国 フンザ藩王国
シンド藩王国 バハーワルプール藩王国 ナガール藩王国
ラス・ベラ藩王国 チョリスタン藩王国 シックゥ藩王国
     

 

 

 ロンドン

 首相官邸

 「日本の関東大震災の様子は?」

 「はい、首都は壊滅と聞いております」

 「んん・・・同盟国として支援しなければならんだろうな」

 「新たにインド入植地を6ヵ所増やしてはどうでしょう?」

 「んん・・・それでは、日本の負担が増すではないか?」

 「国際社会生存税ですよ」

 「日本も背伸びするからには、払ってもらわなければ・・・」

 「ふっふふふ はははは・・・」

 「日本の入植都市をもっと増やし、インド独立を阻止すべきです」

 「しかし、日本にインドを乗っ取られることはないだろうな」

 「日本の利権は、内陸部の河川と要衝ですし」

 「イギリスの配当を考えれば収益は増大しつつあると思われます」

 「んん・・・アメリカとドイツの国力は急上昇だからな」

 「バランス上、やむえないのか」

 イギリスは、日本の関東大震災救済の名目で、

 インド領6ヵ所6000kuを日本に譲渡してしまう。

 いずれもインド北辺に近い内陸部であり、

 一応、高原に位置し要衝であり、有力な河川を有しているものの、

 孤立しており、鉄道施設も日本持ちだった。

 日本の入植は、ネパールの独立を防ぐ切っ掛けとも、

 欧州で戦争がおこならなかったため、当然だとも言われている。

 日本のイギリス領インド入植地は18ヵ所に達し、

 孤立しているものの、

 日本のインド権益は、急速に増大していく。

 

 

 

 東ゲルマニア首都 ソウルブルグ (ソウル)

 東ゲルマニア(朝鮮)半島、遼東半島、山東半島を結ぶ鉄道が開通していた。

 途中、アメリカ権益地と清国領を通過するものの、

 3つのドイツ権益地は繋がり、

 開発が進むにつれ、ドイツ人の入植は加速していく、

 さらにオーストリア・ハンガリー帝国からの入植も急増し、

 極東に白人世界が作られていく。

 総督府

 「日本の関東大震災に対し、何らかの支援をすべきだろうか」

 「とりあえず、日本側にどういった支援が必要なのか聞いてみては?」

 「高く付くのではないか」

 「少し恩義に着せた方が良いかと」

 「日本人は恩知らずではないのか?」

 「いえ、朝鮮人よりは義理堅いかと」

 「だと良いがね」

 「船賃を高くされるより、良いかもしれません」

 「んん・・・日本の船賃で東ゲルマニアの入植が速まっているようなものか」

 

 

 山東半島 イギリス領 ポート・エドワード港 (威海衛) 285ku

 山東半島が準ドイツ領となったことで、

 寂れていたはずのイギリス租借地の価値をはね上げてしまう。

 とはいえ、遼東半島の返還を条件とした25年の租借地であり、

 ドイツ領側より租借条件が悪かったのである。

 イギリスは、清国と交渉するも租借期間の延長に応じられず、

 旨みのない租借地として残されていた。

 とはいえ、米独が遼東半島の租借地を返還することなど考えられず、

 租借期限は99年に延び、中立地帯はさらに伸びていた。

 なので追記された条項で、

 イギリス租借地も自動的に99年の租借となるのである。

 華僑資本は、中立地帯に沿って、

 対欧米、対清に対し、治外法権の利権を確保していた。

 何の事かというと、無税・無規制地帯である。

 既得権益を増大させて私腹を肥やし、

 泡銭を稼いでいたのだった。

 日本の30000トン級客船 “かんりん丸” が入港する。

 日本経済を支えていたのは、日本海運だったりする。

 日本商船は、不換金の円で働かされる日本人によって管理運用されており、

 客は白人が多く、

 支払いは、当然、外貨となった。

 日本客船は、マルク箱、ドル箱、ポンド箱が詰まった宝船だったのである。

 日本客船は、太平洋、インド洋、大西洋、地中海を行き来し、

 世界中から船賃(外貨)を稼ぎまくっていた。

 日本中に海運専門学校が建設され、

 将来有望な職業として、もてはやされたのだった。

 船橋

 「40000トン級の “あまぎ丸” は、助かったそうじゃないか」

 「客船は、建造が速いからね。運よく、ドックを出た後だったらしい」

 「30000トン級30隻に引き続き、40000トン級16隻か」

 「大型であるほど収益率がいいからな」

 「だけど、南米航路で採算性を良くしようと思えば、もっと、大型がいいらしいよ」

 「近場の清国との取引だと、もっと収益性が良さそうだけどね」

 「んん・・・清国か・・・」

 「清国が強くなると日本は、微妙に困るからな」

 「ふっ まったく、まったく」

 「かといって、東ゲルマニアが強くなっても怖いし」

 「まったく、まったく」

 

 

 清国

 上海に清国艦隊が並ぶ、

 旧式とはいえ、戦艦15隻、海防戦艦11隻を有する艦隊であり、

 欧米諸国の侵食から清国の国益を防いでいた。

 10472トン級済南(エルツヘルツォーク・カール)型戦艦 済南、西安、銀川

 11599トン級太祖(カイザー・フリードリヒ3世)型戦艦 太祖、太宗、崇徳、聖祖、世宗

 10013トン級高宗(ブランデンブルク)型戦艦 高宗、仁宗、宣宗、文宗

 8960トン級開封(ハプスブルク)型戦艦 開封、大連、南京

 5878トン級重慶(ブダペスト)型海防戦艦 重慶、南寧、南昌

 3741トン級八旗(ジークフリード)型海防戦艦

        正黄、鑲黄、正白、鑲白、正紅、鑲紅、正藍、鑲藍

 もっとも、国益を売り渡しても

 私腹を肥やそうとする官僚は多く、内憂外患といえた。

 

 8960トン級開封(ハプスブルク)型戦艦

 大連 艦橋

 「台湾の別荘は、どうあるか?」

 「とっても良いある、台湾は住み心地が素晴らしいある」

 「では、自分も、台湾に口座を作るある。次の修理はいつあるか」

 「治ったばかりある。当分は駄目ある」

 「艦の調子はどおあるか?」

 「困った事に調子いいある」

 「それは困ったある」

 「高雄で修復するたびに、金が懐に入るある」

 「修理しないと懐に金が入らないある」

 「少し壊すある」

 「来月監査が入るある。いまはまずいある」

 「では監査役に金を掴ませて、その後、壊すある」

 

 紫禁城

 「日本は天罰が当たったある」

 「いまのうちにアジアの盟主に返り咲くある」

 「まず裏切り者が多過ぎるある」

 「不正腐敗官僚を片付けないと、清国再建は難しいある」

 「どいつもこいつも、私腹を肥やすある」

 「やっぱり、清国ごと潰してしまえば良かったある」

 「漢民族の国民性ある。余り関係ない気がするある」

 「漢民族は、私益が国益に勝る世界一素敵な民族ある」

 「日本と同じように金に任せて軍隊で、アジアの覇権を握るあるか?」

 「土地からあぶれた穀潰しの腕力バカは危険ある」

 「無責任な暴走と天井知らずの国潰しある」

 「成り上がりの浅ましい支配欲と保身と権謀術数ばかりある」

 「愛国心なんて嘘ある」

 「自分を犠牲にして国家と国民を守るより」

 「自分の名声と地位と予算を守るためある」

 「国家と国民を犠牲にするある」

 「どうせ、大敗しても事勿れで責任逃れするある」

 「血税を食って余生を生きるに決まってるある」

 「そんな連中に国権を委ねるのはバカのすることある」

 「日本はそういう国ある」

 「日本は、経済中心に変わっているある」

 「どこの勢力が実権を握っても同じある」

 「漢民族は、組織に殉じてバカを見る意思薄弱な日本民族と違うある」

 「だ、だから、清国は悲惨ある」

 「・・・そうだったある」

 

 

 

 潜水艦ほど、艦長の戦略と、乗員の士気と技量、幸運とによって支えられ、

 戦局を左右する艦艇は存在しない。

 潜水艦は、敵海軍戦力を沈め、

 海上交通網を破壊し、継戦不能に追いやり、

 海上の制海圏を引っくり返してしまう可能性を秘めていた。

 各国海軍関係者とも、建造費が高い高いと呻き、ボヤキながらも注目し、

 研究しなければならず、

 身を切るような取捨選択をしつつ、潜水艦の予算を振り分ける。

 そして、上がどう言おうと、下が喚こうと、利権団体の圧力を撥ね退け、

 予算を取り振り分けた海軍国家だけが、

 次の時代を担える戦力を揃えられた。

 呉

K級潜水艦 1隻
  排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離 魚雷 乗員
水上 1980 103.3×8.1×5.2 10500 24 10kt/9254km 102mm×2 4×2 16 59
水中 2566 1440 8.5 5kt/101km  

 日本軍将校たち

 「震災前に買って良かったな」

 「うんうん」

 「危なく、買えなくなるところだったよ」

 「しかし、震災で量産できそうにないぞ」

 「っくっそぉおお〜 日本は、天に呪われていやがる」

 「朝鮮人がアジアの同胞を売ったから天罰だと喜んでいるらしいよ」

 「売ったんじゃねぇ 交換したんだ」

 「あははは・・・」

 「だけど、インドに鳥居を作るからって、潜水艦の量産を削るか、普通」

 「正確には城郭神社仏閣です」

 「陸軍と某仏教団体の陰謀だな」

 「客船でインドを支配できるものか」

 「少なくとも、軍艦よりモノを運べますがね」

 「装甲車や装甲列車も作り過ぎだ」

 「あと、土木建設機械も・・・」

 「でも、インド入植がなかったらイギリスの潜水艦・・・」

 「買えなかったかも・・・」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 とりあえず、

 日本は、関東大震災にもめげず、外貨を稼ぎまくります。

 インド領の入植地は、いろいろと問題ありです、

 ですが日英同盟堅持なら、日本の利益になりそうです。

 世界大戦がなかったので、イギリスのインド支配は強固なまま、

 インドの近代化が進めば、利便性が増し、

 イギリス本国で貴族社会を嫌い、

 貧富の格差を嫌ったイギリス人のインド入植も増えるかも、

 

 

    領有 面積(ku) 利権 面積(ku) 軍(万) 人口(万)
北欧 ドイツ帝国 54万0857     4720  
朝鮮半島 東ゲルマニア 21万0000   100 2800 500
遼東半島     3462+1万2500 10 200  
山東半島 ホーエンツォレルン 4万0552 11万6700 20 700 500
カメルーン 南ザクセン 79万0000   10 200  
東アフリカ 南ヴュルテンベルク 99万4996   10 200  
南西アフリカ 南バイエルン 83万5100   10 200  
トーゴランド 南バーデン 8万7200   10 200  
 
ドイツ帝国 350万2167 12万9200   9290 1000

 

 

  

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第15話 1922年 『売国じゃないよ、売民だよ』
第16話 1923年 『大英帝国植民地補完計画』
第17話 1924年 『入笠山遷都』