月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想歴史 『風が吹けば・・・』

 

 

第19話 1926年 『強者は格差を強要し、弱者は公平を願う』

 サラエボ事件で両親を失ったゾフィー・フォン・ホーエンベルク(25歳)は、

 高天原(入笠山)の山頂から辺りを見渡していた。

 「イツキ。ここが日本の首都?」

 「らしいね」

 「・・・見晴らしは良いけど、何もないわね」

 「引っ越しは始まったばかりだよ」

 「土木作業ばかりね」

 「皇居で、昼食を出してくれるって」

 「そう、じゃ 着物でも着ようかしら」

 「きっと似合うと思うよ」

 長男ホーエンベルク公マクシミリアンは、ハンガリー王を受け継いでおり、

 長女ゾフィーは、ハンガリー王の姉であり、

 資格だけはありそうだった。

 もっともオーストリア・ハンガリー帝国は、治安悪化で、

 ハンガリー王でさえ、安易に城から出ることが出来ない。

 国を守るための城から、

 国民から王を守るための城になってしまった王国。

 その王国は、守る価値があるのだろうか。

 そして、そんな王国と手を結ぶ価値はあるだろうか、

 ロシア帝国は、共産主義勢力の押さえ込みに成功し、

 産業が大きくなっているらしい。

 こうなると、大国は強い。

 オーストリア・ハンガリー帝国は、再建できるだろうか。

 

 

 

 

 元々 人口比の関係で、金本位制など出来ない国家だった。

 公共投資と農馬と農業機械の増加で、兼業農家は増え、

 円の増刷が続き、所得は増えつつあったものの、

 食管予算の調整でスーパーインフレは、辛うじて押さえられていた。

 そして、海外需要に応えるため、薄利多売と設備投資は続き、

 日本の工業は、ドイツとイギリスと、

 アメリカの工業機械とライセンス生産と発注によって拡大していく。

 40000トン級 客船 “うらしま太郎丸” が出航していく、

 

テネシー型戦艦 2隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離
32600 190.3×29.7×10.3 26800 21 10kt/6000海里
50口径356mm3連装4基 38口径127mm連装砲16基   56口径40mm×56
テネシー、カリフォルニア

 テネシー 艦橋

 「提督。日本の大型商船です」

 「追いかけろ」

 「まともに大型客船と追い駆けっこしても、戦艦の方が先に息切れしますよ」

 「油なら捨てるほどあるよ」

 「ですが、良いんですか、アメリカ人の乗客もいるんですよ」

 「日本人に危機感を持たせて、軍事費の負担を大きくしてやるだけだ」

 「そういえば、日本の海軍少将に頼まれてましたね」

 「まったく、貧乏で姑息な連中だな」

 「アメリカ海軍も、日本海軍に頑張ってもらえないと、老後が不安ですよ」

 「だよな。物価が上がると厳しいからな」

 「まったくです」

 「まぁ 余りしつこくし過ぎると、ドイツ潜水艦に撃沈されそうだがな」

 「日英独で利害が一致していますからね」

 「日本が英独海外資産防衛の採算性を保っているのだから、当然といえば当然か」

 「日本も便乗でインドにとりついてますよ」

 「まぁ 貧しい日本人くらいのものだ」

 「棄てるモノもなく移民出来る国民を持つのはな」

 「御苦労なことです」

 「・・・アメリカのフロンティアは終わっちまったからな」

 「ドイツ人の移民も減ってるし、モンロー主義で覇権も終わっているよ」

 「どこかの国が、噛みついてくれるならアメリカ人も結束出来て、奮起できるのですが・・・」

 「そんな気前がいい国はいないよ。日本は期待していたんだがな」

 「日清戦争、日露戦争の狂犬振りは、フェイクでしたかね」

 「んん・・・どこかで流れが、変わっちまったな」

 「少なくとも日本経済は羽振りは良いようですし」

 「威勢の良い軍人は、インドの自治区に押し込んでいるようです」

 「暴れてくれたら面白いがね」

 「自治区に自分の家族もいるのですから、逃げだせませんし、無理かと・・・」

 「自分の家族も一緒にだと聖域に逃げ込めず、無茶はできないか・・・」

 

 

 

 日本 軍需工廠

 日本軍将校たち

 「やれやれ、軍艦より金を作れる商船」

 「装甲車より利益誘導しやすいバス、トラックか」

 「どいつも、こいつも、金に目が眩みやがって、世知辛いなぁ」

 「金の亡者ばっかりだ」

 「国が滅んでからでは、遅いというのに・・・」

 「そういえば、外国人の入国が増えてるから」

 「水洗トイレと上下水道の予算が増えるってよ」

 「ありえねぇ 外国人追い出せよ」

 「それ、まずいだろう」

 「追い出して軍事独裁」

 「まぁ 漢の夢だな」

 

ヴィッカース・クロスレイ装甲車
重量 全長×全幅×全高 hp 速度 航続距離 装甲 機銃 乗員
4.85 5.01×1.88×2.61 50 64 128 5.5mm 7.7mm×2 4

 攻守全般で使える装甲車は、植民地において効果があった。

 「随分、早く製造できるようになったじゃないか」

 「アメリカのTフォード車を見学に行ったおかげですよ」

 「なるほど、先進国との差は、資源だけじゃないわけか」

 「一つの自治区に200両ですから、18ヵ所で3600両くらいでしょうか」

 「んん・・・現地は、むしろトラックか、ブルドーザーを欲しがっているようだが」

 「さっさと開発したいという感じかな」

 「貨車用貨物船が建造中だから、それが完成すれば、収益も大きくなりそうだけどな」

 「だけど、民間自動車の量産ができないと利益が怪しいし」

 「民間に金を取られると、戦車を造れなくなる」

 「安い労働者が欲しいのだが、食管予算のせいで上手くいかんな」

 「もっと食管予算を削って兼業農家にさせれば良いのに」

 「選挙があるだろう。そう簡単に最大多数の農民を敵に回せるものか」

 「ちっ 農民どもが近代化の足を引っ張りやがる」

 「もっと欧米諸国に留学生を出して、自助能力を付けろということでしょう」

 「自己改革ほど面倒で、厄介なことはないからな。この辺で我流を通したいよ」

 「しかし、識字率が高いだけじゃ・・・」

 「まぁ 蓄積されたノウハウが圧倒的に少ないからな」

 

 

 清国 北京 紫禁城

 資源を売却し、人民を搾取する。

 民主化したとはいえ、強圧政治に変わりなく、

 どちらも無茶ができ、それだけ日本より有利だった。

 清国の足を引っ張っていたのは、不正腐敗の比率が大きかったこと、

 それがなければ、いまの国際情勢は成り立たない。

 清国の自業自得なのだが、余りにも膨大な資源と労力と国土であり、

 私利私欲率9割で公益性1割で反映されただけでも、上昇率は大きく。

 日本が私利私欲1割で公益性9割が国家に反映されても負けるのである。

 日本を含め、欧米列強諸国とも清国の文盲と腐敗ぶりに感謝するよりない。

 ホテル

 「学校が建設されている」

 「まだ数が少なくて、官僚と富裕層の子供しか入れないな」

 「だが確実に識字率が向上する」

 「漢字のみって、どうなの?」

 「支配階級が地位を保つためのシステムと言えるね」

 「日本みたいに平仮名片仮名が混ざると楽なんだが・・・」

 「いっそ、日本も表音文字だけにしろよ」

 「それも不便そうだな」

 「便利だろう。表音文字」

 「それはどうかね。冷静に判断できるのは、日本人だけだと思うけど」

 「・・・・・」 にゃ〜

 

 

 

 ドイツ帝国

 この時期のドイツ帝国は、人口減と鉄資源の輸出によって弱体化しており、

 東西の防衛線

 西部ヒンデンブルク・ライン(600km)

 東部グンビンネン・ライン(1000km)によって守られていた。

 基本的に鉄筋コンクリートの水増し防衛であり、

 それでも、イギリスより鉄材で優位だったのである。

 ドイツ帝国は極東とアフリカ大陸植民地の増強と、

 オーストリア・ハンガリー帝国、ブルガリア、トルコ帝国3国同盟と、3B政策の成功により、

 ベルリンからペルシャ湾のバスラまでを鉄道によって結びつけ、

 地中海のオーストリア・ハンガリー海軍とトルコ海軍を強化してしまう。

 その結果、ドイツ帝国は、イギリスの地中海・インド洋権益を脅かしていた。

 ベルリン 参謀本部

 ドイツ軍将校たち

 「どうやら、ドイツは、イギリスを圧倒できそうだな」

 「イギリス海軍の方が圧倒的に強くないかね」

 「だが、飛行船と潜水艦の脅威の方が大きいだろう」

 「飛行船120隻と潜水艦240隻でかね」

 「もう、戦艦の時代ではないだろう」

 「イギリスより、アメリカ合衆国の方が怖いな」

 「ドイツ人のアメリカ移民は、急速に減ってるから大丈夫だろう」

 「だがドイツ帝国内の民主主義勢力は増大しているだろう」

 「自由市でな」

 「大きな問題だ」

 「いまは良い、帝国が脅かされるわけでもない」

 「だと良いがな」

 「それにドイツ系アメリカ人といっても、その比率はユダヤ人が多い」

 「そういえば、ロシアのユダヤ人も一部、アメリカへ向かっているようだ」

 「ロシア帝国は、ラスプーチンの貴族潰しでうまみが減ったかな」

 「それをドイツ帝国で真似をされては困るな」

 「いまのところ、大丈夫だろう」

 「イギリスの巻き返しは、インドのようだが」

 「最近、インドでセメントが採掘されたらしい」

 「セメントか・・・」

 「日本は、旅順クラスの要塞をインド18ヵ所に建設する気でいる」

 「それでインド独立を防ぐわけだ」

 「まぁ こっちもアラブ・イスラムの独立を防ぐため、トルコ帝国に要塞を建設してやらないと」

 「ふっ どいつもこいつも、足を引っ張りやがる」

 

 

 オーストリア・ハンガリー帝国

 ウィーン

 敵の存在が国家の結束を強める。敵の不在が内紛の元凶になった。

 それは、支配者である強者が被支配者である弱者に対し、

 格差をさらに開く事で生まれる反発であり、

 近代化を促進しようと思うなら、労働者と農民の生殺与奪権を握り、

 さらに資本、土地を集中しなければならなかった。

 それは、単一国家でも同様であり、

 さらに多人種国家、多民族国家、多言語国家、

 多宗教国家、多文化国家の集まりであれば、それだけ不利となった。

 ドイツ人とハンガリー人は、帝国全体の過半数を超えたことで、安定性は増したものの、

 敵の不在は、内紛に繋がる。

 オーストリア・ハンガリー帝国の当面の敵は、ロシア帝国とイタリアであり、

 それで、国内を統一していたのだった。

 結局、オーストリア帝国の権力体制が支配のための支配から、

 近代化のための支配に変わったところで、国民生活の苦しさは変わらず、

 国家反逆の芽は常に渦巻いていたのだった。

 オーストリア貴族たち

 「ロシア軍のセルビア駐留は、好都合な気がしますね」

 「んん・・・ギリシャは、イギリスよりだな」

 「国内の裏切りを何とかしないと・・・」

 「最近、日本人の留学生が増えて、動きも活発になっている気がするが」

 「日本は船を持っているからね」

 「移民は、日本商船を使いやすいし、しょうがないのでは?」

 「オーストリアの方が鉄が多いはず」

 「国境を陸地で接しているから国防と反乱防止に使わないと」

 

 

 

 

ヒマラヤ山脈 東西 インダス川 平城京  
ガンジス川 ヤムナ川 平安京  
ゴマティ川 飛鳥京  
ヴィンディヤ山脈 東西 ヤムナー川 因幡京  
    ナルマダ川 青龍京  
サトプラ山脈 東西 タープティー川 白虎京  
東ガーツ山脈 南北 ゴーダヴァーリー川 玄武京  
西ガーツ山脈 南北 マハナディ川 朱雀京 黄龍京
クリシュナ川 鳳凰京 瑞亀京
カヴェリ川 麒麟京  

 

 1000kuの広さはインドにとって、小さな点に過ぎない。

 だからと言って、価値のない土地でもない。

 とはいえ、インドは、統一された事がなく、

 そのインド人の共同意識は、酷く歪であり、

 さらにカーストの枠組みに囚われ、

 狭い藩王国内。あるいは言語圏にとどまっていた。

 まして、イギリス行政区画内は、イギリスの主権で、どうにでもなる事であり、

 日本に譲渡された日本人街18ヵ所は、急速に力を付けて行く。

 平安京

 インダス上流に発電所が建設され、

 区画整理が進むと日本人の入植がはじまる。

 城郭神社仏閣は、まだ、初期の段階であり、

 日本人であるというアイデンティティを保つためのモノでしかない。

 内陸で孤立しても、そこそこ産業が育てば、周辺に影響力を及ぼし、市場も確保できた。

 防衛は、小銃と機関銃を除くと、50口径102mm艦砲が配備されていた。

 日本軍は、旧式イギリス艦の艦砲を購入し、

 砲台を築いて拠点防衛することが多かった。

 建設場の日本人たち、

 「学校か、いまは、日本本土でも必要なんだがな」

 「こっちに来れば、土地が配られるし、資本投資も進んでいる」

 「産業が安定すれば、日本にいるより、生活も楽になるよ」

 「関東大震災は、大丈夫なのか」

 「さぁ そんな事より、平安京の方が心配だよ。下手をするとインド人に押し潰される」

 「インド人はバラバラだよ。それにイギリス人も、インドに入植してるじゃないか」

 「インドは、意外と安定しそうだな」

 「なんか、イギリス人のインド支配の踏み台か、礎石にされそうだな」

 「水源を押さえているし、電力を確保できれば、発電の収入で取引も大きくなる」

 「それに工業力が大きくなれば、資源を押さえて、街の防衛力も高められるだろう」

 「隣の平城京と飛鳥京と鉄道を結べて、御都合主義的に上手くいけばな」

 「軍事的には自立できるはずだよ」

 「おかげで日本本土は軍事的に縮小中だ」

 「日本人街が軌道に乗るまで時間がかかるからね」

 「イギリスは、清国の成長を警戒して、ビルマ側にも日本人街を作らせるか、検討してるらしい」

 「日本人街があるとイギリス人も過ごしやすいらしいからね」

 「あいつら、良いように利用しやがって」

 「人を働かせて肥え太るのが好きなんだよ」

 

 

 

 ロシア帝国

 ロシア貴族が縮小し、ユダヤ人が経済の実権を握り始めると、

 経済が活性化し、農奴だったロシア人は、少しずつ自作農民、労働者となっていく。

 ラスプーチン伯爵は、労働環境の改善と農民の略取を防ぐことに目を光らせるだけで良かった。

 ロシア帝国のいくつかの宮殿が学校として、改装運営され、

 平民の子供にも教育が生き届くようになっていく、

 識字率が高まれば、より、付加価値の高い生産が可能になっていく、

 日本との交換留学生が増えたのも、日露戦争から20年が経過した、この頃であり、

 関東大震災に対し、ロシア帝国が少なからず支援を申し出たからと言えた。

 ラスプーチン伯爵とユダヤ人

 「ユダヤ人どもは儲けているようだな」

 「ユダヤ人は、ロシア貴族と違って、無私の忠誠や搾取など求めませんし」

 「労働の対価は支払いますから」

 「嬉しいねぇ 出来れば、もっと謙虚な商才を持つ種族にロシア経済を任せたいものだ」

 「人は利益がなければ動きませんよ。例え、お金持ちでもね」

 「全部とは限らんだろう」

 「ええ、ラスプーチン伯爵。あなたは例外のようで・・・」

 「わたしは、ロシアとロシア人が好きなのだ」

 「ロシアは天候不順だけで餓死者続出の国ですよ」

 「だから鉄道網を敷こうとしているのだ」

 「でしたら皇帝に我々に投資するように要求すべきでしょ」

 「餓死者を野晒しにして、宝物を眠らせるなど、許すべきではないですな」

 「君らユダヤ人のように金を上手に使えるロシア人は少ないのだよ」

 

 

 

 ブラジル サンパウロ

 南米は反米意識が強く、ドイツ帝国、日本の南米資本投資に対し、

 アメリカ資本家たちは、いくつかの問題で頭を悩ませていた。

 「日本人たちは農業移民だったはずでは?」

 「日本人の移民団も、貧相なイタリア人と同じで農奴にされると思ったのにな」

 「日本が軍艦を売って、ブラジルの利権を得ようとするとは思いませんでした」

 「日本人め。我々の裏庭でいらん事を・・・」

 「妨害しますか」

 「ブラジルの国土は広い、我々が介入しても土地の高騰を招くだけだ」

 「それにドイツ帝国の資本も絡んでくるとまずいし」

 「ロシア帝国資本も活発化しているから刺激するのは危険だ」

 「日本商船隊は、安くて便利ですからね」

 「アメリカ資本も利用している。日本は敵にするより利用するべきです」

 「ちっ 誰だ。日本人に知恵を付けさせたのは」

 「そういえば、日本は、ポルトガルに留学生を出していたような・・・」

 「日本人は日清日露で勝って、傲慢になると思ったが?」

 「ドイツの戦艦売却で懲りたのでは? 軽く戦力が引っ繰り返されましたからね」

 「ちょっと軍艦を売られただけで、大人しくなりやがってヘタレが」

 「軍艦の大きさと数でしか、物事を判断できないのでしょう」

 「力の信望者め」

 「ホワイトフリートで脅したからです」

 「あれは、軍拡で自滅させようとしただけで、親善だろう」

 「日本人がそう受け取るなら親善でしょうね」

 「日本の海外留学が増えてから、世情に明るくなったのか?」

 「かもしれません」

 「土地に縛られ、権威主義の強い日本で世代交代を促進させるような投資。あり得んな」

 「日本は、利権が構築されると、制度上、続きますからね」

 「んん・・・農業移民はともかく、南米資本投資で好き勝手されるとまずい」

 「ブラジルの人口は、3000万ほどですからね」

 「ブラジルは、資本力と移民種族の比率で、どうにでもなる国情だぞ」

 「日本は人口が増えつつありますし」

 「平均年齢が若いので金さえ動けば動きやすいかと」

 「まさか日系ブラジル人がブラジルの政治を動かすとは思えないが」

 「彼らの気質だと、主導権を発揮するより、保守派で院政したがりますからね」

 「想像性に乏しく、器量は、小さいが頭数と資本の比重が増えると始末に負えないな」

 「ええ」

 「なにか、対策を練るべきだろうな」

 「ええ、しかし、問題は日独英の利害が一致している節があるので・・・」

 「・・・・」

 

 日本人移民団は、元々 コーヒー園で働くはずだった。

 しかし、日本資本のブラジル進出と結びつくと、

 水力発電建設と合わせて土地を購入し、

 土木建設業と各種産業を興していく、

 さらに日本人の就労移民も行われる、

 日本資本の権益地、

 日本人政府筋の人たち、

 「これが軍艦で買った土地?」

 「買ったと言っても権利だけだよ。インドと違って主権はブラジル」

 「日本人は皮被りが多いから、国境の向こうに出ると民族的に萎えやすいからな」

 「外国じゃ自己主張が生きている証みたいなものだし」

 「日本だと自己主張は叩かれやすいからね」

 「しかし、資源が当たれば大きい」

 「資源ねぇ 列強が剥れてたぞ」

 「ブラジル海軍が強くなっても日本は、直接脅威を受けにくい」

 「しかし、ほかの国は、影響を受けるだろうね」

 「大型艦艇じゃなければ大丈夫だろう」

 「まぁ 駄目でも移民者は左団扇だろうね」

 「農民をぬるま湯に入れるなよ。人間はすぐ腐る」

 「上も下もじゃ どうしようもないですからね」

 「その辺の手綱は、執れるでしょう」

 「しかし、日本は、いつの間に山師みたいな賭けができるようになったんだ」

 「オックスフォードで学んで、鉱物メジャーで働いた日本人が、ここで出るとか」

 「ちっ あふぉが、学歴とか、コネがあるだけで信じやがる」

 「山師がともかく。お偉い人が言ったからは、日本人らしくていいじゃないですか」

 「まぁ 鉱物資源が出なくても、水力発電でも、それなりか」

 

 

 

 冬の入笠山

 冬季前まで昼夜なく交替制で造成され、

 建設されていた家屋に生活用具が押し入れられていく、

 冬の間は、ほとんど下山しているものの、

 あちらこちらに即席木賃宿の群れが作られ、

 大工事だったことを物語っていた。

 コンクリートばかりでは味気ないと、

 僅かに穴の開いたタイルに肥料とタネが入れられていた。

 夏になれば草が生え、緑がコンクリートの壁を覆うらしい。

 政府関係者たち

 「さっみぃいいいい〜!!!」

 「東京だって、冬は寒いし、雪も降るよ」

 「東京都は寒さの度合いが違うよ。首都で遭難する人間も出そうだ」

 「むしろ死んで欲しい議員もいるけど」

 「ていうか、このくらいの山を登れない議員は、辞めてもらった方がいい」

 「でも山頂削るじゃん」

 「まぁ 首都だから、これくらい必要って広さがあるからね」

 「低くなってもしょうがないよ」

 「崩落止めは大丈夫だろうな」

 「ボーリングも一応やるし、段階的に落としていくし」

 「木々が埋まった部分は、大丈夫だろう」

 「問題は、その上かな」

 「大型ローラーがいるね。鉄筋コンクリートも」

 「スキーはできそうだな」

 「大切なのはスキーじゃなくて、政治、行政だよ」

 「それより、富士山はどこ?」

 「・・・あれ」

 「他の山が邪魔して、裾野が見えねぇ〜」

 「モチベーションさがる〜」

 「しかし、ツェッペリン飛行船って、凄いよな100トン近い物資を降ろしていくんだからな」

 「だいたい、一度に2個師団分の食料くらいか・・・」

 「重量級の機材を運んで来れるのが嬉しいねぇ」

 「上下水は?」

 「あそこだ。人口湖を造るから急場でもなんとかなるよ」

 「まぁ 一応首都だし、最悪でも、それだけは、十分にやっておかないと」

 

 

 

日本海軍 大綱
艦種 排水量 速度 主兵装

 

戦艦 1 26000 23 50口径305mm連装4基

固定50口径356mm連装2基

摂津、

2 22000 22 50口径305mm連装3基

固定50口径356mm連装2基

薩摩、安芸
巡洋戦艦 2 18000 25 鞍馬、伊吹
装甲巡洋艦 前ド級戦艦改造⇒装甲巡洋艦 12隻
2 22000 26 50口径234mm3連装2基

固定50口径305mm連装2基

姫神、白神
10 20000 26 香取、鹿島
妙高、那智、足柄、羽黒、
高雄、愛宕、摩耶、鳥海
装甲巡洋艦改装 1隻
1 18000 28 50口径234mm3連装2基

固定50口径305mm連装2基

生駒、
  28        
装甲巡洋艦 → 空母
  5 17000 28 50機 鳳翔、瑞翔、燕翔、蒼翔、龍翔

 日本海軍で10000トン級以上の軍艦は33隻しか存在しない。

 いずれも旧式化しており、

 主力水上艦艇は、航路警備を目的とした10000トン級以下の巡洋艦へと移行していた。

 一方、島礁要塞の施設と兵装は、充実していく、

 ある程度の大きさの島になれば、発電ダムが造られ、

 自給自足が可能になり、

 街が建設され、公共設備と娯楽施設が整備されると、

 余暇が過ごしやすくなり、

 左遷の地から、避暑地と化していく、

 

 サモアに水力・地熱発電所が建設され、小さな工場が造られ、

 オーストラリアの仕事を受注してしまう。

 大した部品でないものの、アメリカから買うより安価だった。

 軍官僚たち

 「どいつもこいつも、弛みやがって・・・」

 「だから、軍艦から島に予算を移すのを嫌だと言ったんですよ」

 「んん・・・自爆事件で、それどころじゃなかったからな」

 「ったくぅ〜 失態や犯罪が露見しそうなったとか」

 「昇級できなかったからって、軍艦を道連れにするか、普通」

 「あの頃は、生きる道が閉ざされて、荒んでましたからね」

 「軍の生きる道の方が閉ざされてるわい」

 「どこかの国に攻めてきてもらわないと・・・」

 「清国は引き籠っているし」

 「東ゲルマニアは、あと50年くらい動けん」

 「ロシア帝国は、急速に国力を伸ばしているが、東より、西の方が気になるだろう」

 「アメリカ合衆国は脅威だが満州権益に意識がいってる」

 「インドで暴走とか」

 「まさか、孤立した山岳に立て篭もって戦えるわけがない」

 「日本軍もそこまで馬鹿じゃないですか?」

 「孤立していることで、規律が保たれている節もあるな」

 「むしろ、日本の勢力圏より、インド日本街の軍人は頼られている」

 「日本だって、北のロシア、東のアメリカ、西の東ゲルマニア、清国に囲まれているのですがね」

 「生憎、敵対関係にある国は存在しない」

 「むしろ、有力な貿易国家だ」

 「軍事的緊張が小さすぎるんですよ。締まりがない」

 「貿易で儲かっているから軍事的緊張を強くしたくないそうだ」

 「このままでは、人材、資材、予算とも劣化しそうですよ」

 「んん・・・」

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 史実と比べ、兵員と利権を確保できない軍部の政治的影響力は小さいようです。

 日本政府は、外貨収入で見込みが立ったのか、

 関東大震災にもめげず入笠山へ遷都、

 むしろ、インド、ブラジルと手広く、外資会得の外交政策を進めているような、です。

 

 

 地熱発電

 世界初は1904年イタリアだそうです。

 日本は1925年、大分県別府で成功です。

 

 

 なんとなく、国土が広く、一塊のアメリカ合衆国、清国、ロシア帝国は有利。

 海運に頼ったイギリス、ドイツ帝国、日本、フランスは、やや不利でしょうか。

 

    領有 利権 人口
面積(ku) 面積(ku) (万) (万) (万)
北欧 ドイツ帝国 54万0857     4720  
朝鮮半島 東ゲルマニア 21万0000   100 2800 500
遼東半島     3462+1万2500 10 200  
山東半島 ホーエンツォレルン 4万0552 11万6700 20 700 500
カメルーン 南ザクセン 79万0000   10 200  
東アフリカ 南ヴュルテンベルク 99万4996   10 200  
南西アフリカ 南バイエルン 83万5100   10 200  
トーゴランド 南バーデン 8万7200   10 200  
 
ドイツ帝国 350万2167 12万9200   9290 1000

 

 

  

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第18話 1925年 『首都 高天原』
第19話 1926年 『強者は格差を強要し、弱者は公平を願う』
第20話 1927年 『軍艦造っても金になんねぇ』