第32話 1939年 『うよたん、さよちん』
風光明美な山景が広がり、
近代的なビル群が並び建てられていく、
国防上の懸念と別の要因、
経済効率とか、費用対効果で
鷲の国章を付けたドイツ飛行船が何隻も日本上空を滞空し、
大量の物資を山岳地へと降ろしていく、
国防上の地の利を危うくしてでも公共投資と、
そこから派生するであろう再生産産業と、隙間産業の相乗経済に国運が賭けられる。
この世界に善悪の衝突は存在しない、
存在するのはエゴと利権の衝突であり、
利権の衝突を調整する権力と、力任せに無理強いを強いるエゴと暴力である。
関東大震災により、高天原(入笠山)遷都で、
日本のオリンピックが再建途上の東京になるか、
新首都の高天原になるか、
日本古来の伝統文化が集まる京都になるか、
荒れに荒れ、
結局、計画都市東京に落ち付いたのもエゴと暴力の衝突と権力の調整だった。
そこには、正義も悪も存在しない、
東京再開発
ドイツ帝国東ゲルマニアの欧州型計画都市群にコンプレックスを感じつつ、
そして、清国の大規模な清華文化再興に圧倒されつつも、
日本古来の日本庭園やワビサビな美観を生かし、江戸城を中心に計画都市を建設していた。
国と市政のごり押しの土地収用と、東京市民の反発の中、
膨大な予算が注ぎ込まれ、和洋折衷で近代的な景観の都市が作られていた。
学校の子供たち
「うよたんの嘘つき、再開発させないようにするって言ったじゃないか」
「お、お父さんに言ったんだけど、仕方がないって言うんだからしょうがないじゃないか」
「おれんち。国に取られちゃうんだぞ」
「さよちん・・・」
「酷いよ」
「く、国から、お金が出るって・・・」
「お父さん、職場が遠くなるし、辞めないといけないって」
「それに、もう、みんなと会えなくなるじゃないか」
「仲間をバラバラにしてまで強行するなんて・・・」
「人と人の絆千切って計画都市したって、そんなのただの箱じゃないか」
「「「「・・・・」」」」
東ゲルマニアの土地収用は、朝鮮人の淘汰で行われ、
清国の土地収用は、選挙と殺戮戦で行われ、
日本の土地収用は、僅かばかりの購入資金と税制上の特典で賄われた。
高天原 (入笠山)
土建族たち
「おい、あのスピットファイア編隊はなにを威圧してるんだ」
「作業の邪魔だろう。戦闘機をどこか、ほかに行かせろ」
「軍の跳ねっ返り連中でしょう」
「ふっ ヤクザじゃあるまいし。そんな甘いものじゃないな」
「ヤクザもそうだが、軍上層部の意思が反映しているよ」
「鉄砲玉ですね」
「まったく、軍は、ダムを作らんといかんのがわからんのか」
「地の利がドイツに筒抜けですから面白くないのでしょう」
「飛行船は、こちらが指定した航路を進んでいるよ」
「軍は、国民にいい格好しいで予算を増やしたいのでしょう」
「アホどもが・・・」
「現在の開発は15か所以上で、内陸部が多いですからね」
「国防を預かる者なら気が気じゃないでしょう」
「そのいくつかは、航空基地とレーダーサイト用も兼ねてるはずだ」
「山岳地にレーダー基地は、わかりますが航空基地だと不便では?」
「軍の土地収用は横暴で厚かましいし、非国民扱いするから人気がない」
「特に航空基地は広い土地を必要とするから、レーダー基地のついで飛行場もと、思ったのだろう」
「日露戦争後、軍も肩身が狭くなりましたね」
「近代化を推し進めようと思うなら予算を集中しなければならないし」
「近代化させるなら軍より効率のいい部門はたくさんある」
「だいたい、電力がなければ日本の工業化は出来ない」
「電力量が工業生産力と比例してることも知らんのか」
スピットファイア編隊がバンクしながら去っていく、
「馬鹿どもが・・・」
「どこの省も、予算がポストと利権を保障しますからね」
「軍属も、冠婚葬祭と老後の安寧が絡んでますから軍拡狙いでしょう」
「ふん、発電ダムの方が内需拡大で就業率も稼げる」
「掛け捨て軍事保険より、再生産可能な電力産業の方が日本の国益になるよ」
「そういえば、住宅公団の予算増加もありそうですね」
「はぁ? 家庭は3世代だろう。連綿と続く伝統と家族意識が大切なのだ」
「そんな詰まらんものに予算を流すわけにいかない」
「家が増えた方が電力消費も増えるのでは?」
「ん・・・んん・・・それも・・そうだな・・・工場ばかりより、国民全体も味方につける方がいいな」
「じゃ 僻地の産業誘致と合わせて、都市計画を検討しつつダム建設を推し進めるか・・・」
「いいですね」
「そうとも、馬鹿どもに予算は渡せん」
「軍もエリートが集まってるのですがね」
「優秀? 国防より組織防衛と私利私欲に走られたら始末に悪い」
『『『『誰のことですか・・・』』』』
上空のドイツ飛行船 船橋
ドイツ人たちが地上を見下ろしていた。
「意外に人口がおおいな」
「総人口は7200万だそうです」
「寄って掛かって大事業か」
「東ゲルマニア開発も日本の土建業に頼り切りですしね」
「東ゲルマニアの国土開発が終われば土建事業は縮小する」
「日本の土建会社も斜陽になるな」
「いえ、日本海運は賃金格差を利用して、独占状態ですし」
「東ゲルマニア以外。インド自治領開発、ベルギー領コンゴ開発を請け負っていますし」
「外需需要が終わったら、内需に切り替えられるかと」
「それだって、限界があるだろう」
「土建業の組織肥大化で非生産部門が拡大してからになるかと」
「それはどのくらいになりそうなんだ」
「4D機関の推測では、日本の外需低迷まで30年、内需低迷まで30年の60年とみてるようです」
※ 4D (ドイツ銀行、ディスコント・ゲゼルシャフト、ドレスデン銀行、ダルムシュタット銀行)
「上空から見る限り、そう言えなくもない、発展だな」
「生活水準は比較的低いようです」
「滅私奉公か・・・」
「生活用品と嗜好品で贅沢を覚えれば意識も変わり、数値も変わるかと」
「東ゲルマニアに来るまでは、黄色い猿の中に入っていくようなものだったが侮れないな」
「ですが反英気運が少し高まっているようですし、日英離反が成功すれば、ドイツは有利になるかと」
「ジャパンカードは使えるだろう」
「もっとも資源と市場の大きなチャイナカードも捨てがたいがね」
「潜在的な脅威は、ロシア、アメリカ、清国、日本の順だと思われます」
「写真は撮っておけよ。特に山道はな」
「はっ」
日本海軍 大綱 | |||||
艦種 | 隻 | 排水量 | 速度 | 主兵装 |
|
戦艦 | 4 | 30000 | 28 | 305mm連装砲4基 固定50口径410mm連装2基 |
金剛、榛名、比叡、霧島 |
戦艦 | 1 | 26000 | 23 | 50口径305mm連装4基
固定50口径356mm連装2基 |
摂津、 |
2 | 22000 | 22 | 50口径305mm連装3基
固定50口径356mm連装2基 |
薩摩、安芸 | |
巡洋戦艦 | 2 | 18000 | 25 | 鞍馬、伊吹 | |
装甲巡洋艦 | 前ド級戦艦改造⇒装甲巡洋艦 12隻 | ||||
2 | 22000 | 26 | 50口径234mm3連装2基
固定50口径305mm連装2基 |
姫神、白神 | |
10 | 20000 | 26 | 香取、鹿島 | ||
妙高、那智、足柄、羽黒、 | |||||
高雄、愛宕、摩耶、鳥海 | |||||
装甲巡洋艦改装 1隻 | |||||
1 | 18000 | 28 | 50口径234mm3連装2基
固定50口径305mm連装2基 |
生駒、 | |
28 | |||||
装甲巡洋艦 → 空母 | |||||
5 | 17000 | 28 | 50機 | 鳳翔、瑞翔、燕翔、蒼翔、龍翔 |
日本の海軍工廠
イギリスの中古艦艇が並ぶ中、
日本海軍将校が艦艇の国産化を目指して吠えていた。
しかし、既にネルソン型戦艦4隻の回航が決まっており、
そのための改装要項も決まっていた。
ネルソン型戦艦は、日本海軍の意向が働いた高速戦艦として、
イギリス海軍で高い評価がされ、同系の拡大改良艦4隻が建造されていた。
扶桑(ネルソン)型戦艦 | 4隻 | |||||
排水量 | 全長×全幅×吃水 | hp | 速度 | 航続距離 | 兵員 | |
34000 | 227×32.3×8.8 | 90000 | 28 | 16kt/7000海里 | 1200 |
45口径356mm砲3連装3基 | 53口径120mm連装16基 | CMB40ft×2 | 水上機×6 |
ネルソン(扶桑)、ロドニー(山城)、ドレーク(伊勢)、スミス(日向) |
日本が国産に拘らず日英同盟に固執し続けたことは賛否両論があった。
そうならなかった場合の仮定は推測に過ぎず、
外交戦略上のセンスが正しいと思うよりなかった。
どちらにせよ、日本産業の利権構造は民需主導であり、
軍需産業は大義名分があっても再生産不能な戦時保険でしかなく、
金の生らない木に投資したがる酔狂人は軍需利権がらみか、
偏執的なまでの主戦派だけだった。
そして、少ない軍事費を巡り、軍需産業が凌ぎを削る。
日本の航空工廠
日本最大の生産機は、DC3輸送機だった。
航続距離は2400km弱だったことから、ほぼ1000km毎に飛行場が建設され、
日本と瑞樹(北東ニューギニア)州を結ぶ離島にも飛行場が建設されていた。
初期投資を惜しまなければ航空機だけで離島経済を維持できると中島飛行機の某社長は豪語し、
4発大型輸送機の開発を検討していた。
そして、工場では、日の丸を描いたスーパーマリン スピットファイアが出荷される。
「飛行場建設にいくら掛けをかけてるんだか、飛行機を製造できなくなるぞ」
「DC3で民間主導にできるなら航空機産業を拡張できるだろう」
「それで、正面戦力は後回しか」
「問題は軍事費の陸海空の比率だよ」
「ライセンス生産の具合は?」
「エンジンと一部の部品を除けばほぼ生産できるかと」
「やはりエンジンのライセンス生産がネックか」
「ロールス・ロイスのマーリンエンジンは、ハードルが高過ぎるよ」
「ブリストルのハーキュリーズは?」
「直径1320mmで1290馬力は悪くないよ。改良する余裕があるし、性能も向上するだろう」
「黎明期の航空機開発をイギリスに依存するのは納得できないな」
「採算性は数だよ。4発爆撃機ハリファックスのライセンス生産も検討してるし」
「それに同盟依存で経済成長してるのだから我慢すべきだろう」
「イギリスが信用できるならね」
「イギリスも単独では、アメリカ、ドイツに勝てないと気付いてる」
「インドの利権を考えるなら、日本との同盟依存は大きくなることがあっても小さくなることはないよ」
「しかし、イギリス人の傲慢さは鼻に付く」
「もっとイギリスから工業を学ぶべきだね」
「いま中途半端に増長して縁を切っても、国際情勢で不利になるだけだ」
「空冷のハーキュリーズか、セントーラスで戦闘機を開発しておくべきだと思うね」
「セントーラスは、直径1405mmだろう。戦闘機向きじゃないよ」
「イギリスは、稼働率向上のため空冷は4発機で使うそうだ」
「爆撃機だって1線級は水冷だろう。工業力の高さを鼻に掛けやがって」
「日本だって工業力は伸びてるんだがな」
「伸びてるのは土建と造船だよ。航空機産業の様な繊細な部品は後回しだ」
「開発中の双発戦闘機ボーファイターは?」
「嫌じゃないけど、戦闘機は単発機で開発したいな」
「流行りだろう、双発の重戦闘機・・・」
「どちらでもいいからエンジンのライセンス生産率は100パーセントにしてくれ」
「いざという時に困る」
「いざという時に困りそうなのは、イギリスの方だろうな」
「日本は、ロシア、東ゲルマニア、清国、アメリカの勢力に囲まれてる万全とは言い難いよ」
「航空戦になりそうな東ゲルマニアは動けないと思うけどな」
「地政学的に勢力均衡にさせたのが良かったのかも」
「それだって、拮抗できる戦力があってのこそだろう」
西日本、要衝、海峡にチェーン ホーム レーダーが立ち並ぶ、
航空機の性能向上は、例え戦艦でも安全に海を航行できなりつつあると認めさせ、
艦隊族の利権と、軍人の慣性と惰性も切り替えを強要させていた。
某紡績工場
日本の外貨収入の主力は、海運と土建に移行していた。
製造が単純で質の良いツルハシ、スコップ、鍬、鉈、土建機材は国外へと輸出され、
さらに綿糸、衣服を売るより紡績機械を売るなど、軽工業品輸出も伸びようとしていた。
そして、日本の明治大正昭和初期の外貨収入を支えた紡績機械は斜陽を迎えつつあった。
大量の紡績機械を抱えた旧財閥系企業は、トカゲの尻尾切りをするか選択を迫られる、
関係者たち
「・・・不換金不況により列強は国内産業の保護を強め」
「後進国は紡績機械拡大に伴って、我が国の紡績産業は斜陽になるだろう」
「しかし、我が国の明治、大正、昭和の近代化を足し、外貨を獲得させたのは紛れもなく紡績産業である」
「日本は、その外貨によって日清日露戦争で国防を支え、戦線で日本軍を勝利させたのである」
「利潤薄れたとはいえ、救国たる紡績産業を終わらせるわけにはいかない」
「幸いにも日本の海運と土建開発は、世界市場を一手に握っており」
「我が国の紡績産業の輸出ルートは残されている」
「水力発電計画によって電力は安定しつつあり、電圧の変化、漏電、停電もほとんどなくなってきている」
「より細く、より強く、よりキメ細かい綿糸の量産は可能である」
「そして、優れたブランド衣類なら外資得とくの道はあるはずだ」
「よって、ここに十二試紡績機計画の成功と、世界最高水準である零式紡績機を発表する」
「「「「おー」」」」
ぱち ぱち ぱち ぱち
ぱち ぱち ぱち ぱち
南沙群礁
太平島(0.43ku)は、1922年に日本軍が占領、
東西1.3km×南北最大400mの細長い島に要塞砲が設置され、
その後、台湾(高雄)とシンガポールを結ぶ中継飛行場として、
全長1200m×全幅50mの滑走路が建設されていた。
南沙航空基地は、日英同盟の中継基地といってもよく、
戦略的な要衝となっていた。
新兵装のチェーン ホーム レーダーが配置されつつあった。
「戦艦より要塞か」
「少なくとも数百機の航空機を運用できるし、自衛できるだけの要塞砲はあるよ」
「戦艦は遊兵にならず済むよ。同盟受けもいい」
「航空機の方が展開が早いと思うよ」
「少なくとも3週間もあれば、移動を完了させられる」
「敵艦隊に囲まれて3週間後だと壊滅してるだろう」
「そう思うなら、戦艦部隊で真珠湾に突撃かましてみろよ」
「「「・・・」」」
「敵の要塞は有用で強大に見えて、味方要塞は無用で貧弱に見えるもんだ」
エチオピア
アディスアベバとイタリア領ソマリアに至る途上の渓谷が銃声と爆炎に包まれ、
周辺の尻の赤い猿の群れが慌てふためき、気勢を上げていた。
大軍であるはずのイタリア軍は混乱し、
わざと一角に逃亡できる場所を作っているのに逃げようともしない、
猿の群れが勢いよく擦り抜けていく、
そのうちの一匹が地雷を踏んでしまって吹き飛ぶと、
イタリア軍は、完全に包囲されたと勘違いし、
次々と手を上げ、降伏していく、
「「「「・・・・」」」」
予定が狂うと敵より、味方の方が混乱する。
「広瀬中佐・・・」
「なんだ・・・我々より大軍なのにどうするんだ・・・」
「取りあえず、援軍が来る前に武装解除させないと・・・」
「そうだな」
イタリア軍の勢力圏で起きた出来事であり、
イタリア軍輸送部隊は、武装解除させたのち解放し、
戦利品のトラック56台。L3豆戦車25両、32口径47mm砲32門、
フィアット レベリM1914重機関銃(6.5mm×52)65丁、
ブレダM30軽機関銃276丁
短機関銃ベレッタ1938A 4丁
カルカノM1891 (6.5mm×52) 14000丁
ベレッタM1934 (9mm×17) 216丁、
そして、大量の弾薬と食料が手に入る、
もっとも、連隊で武器を満足に使える者がいないのが難点だった。
さらに、ちょっとした遠征のつもりが、大量の戦利品で身動きが取れなくなり、
ゲリラ部隊として致命的となっていた。
広瀬と仲間の日本人たちは、日本から見捨てられていたものの
エチオピアの広瀬連隊は、国際社会で有名になっていた。
そして、チャコ戦争が終息すると、戦訓を欲しがる列強が武器を広瀬連隊に横流し、
さらにエチオピア解放後の利権を巡り、追加の支援を受けていた。
「参ったな。また部隊を分けるか?」
「分散し過ぎると、指揮系統がバラバラになって、統制できなくなるのでは?」
「そうなんだよな・・・」
「しかし、拠点に戦利品を持ち帰るまで、誰かがゲリラ戦で牽制しないと・・・」
「捨てるのは惜しい戦力ですからね」
「まったくだ」
広瀬連隊は、協力してくれる村にゲリラ訓練小隊と武器を置き、
戦利品を拠点にまで移動させる、
エチオピア人は白人の侵略軍に戦いを挑むエチオピア軍広瀬連隊に協力し、
広瀬連隊は、エチオピア人民の海を自由に泳ぎ、ゲリラ戦を繰り返した。
多くのエチオピア人は、武器を手にすると果敢にイタリア軍に戦いを挑み、
イタリア軍を苦戦させる。
「大佐。いいんですか、エチオピア人に武器を渡して?」
「まぁ 戦車とトラックと大砲のほとんどを持っていけたらいいだろう」
「機関銃以下半分は、置いていってもいいだろう」
「国家復権後、人民統制が執れなくなりますよ」
「弾がある間は、統制が執れないかもしれないがね」
「連隊だけで戦っても勝てそうにないし、人民戦線にしないとしょうがないよ」
「どうせ、連隊だけでは使いこなせそうにないし」
日本の伝統文化の中で歴史を学ぶと、
日本教育の中で、刻印を押したように似た気質が形成される。
太閤の刀狩のせいか、統制のとれない民間人に武器を渡し、
侵略軍に抵抗する気概を持つ日本人は少ない、
それが善悪の指標のようになり、国情として許せない部分が生じる、
しかし、海外生活の長い海援隊出身者は、そういった感性を分離し、切り離しやすかった。
イタリアのエチオピア支配は、広瀬連隊の活躍によって急速に衰え、
エチオピア情勢は、混迷を深めていく、
植民地は、搾取地から投機の場へと国際情勢の流れが移行していた。
原因はドイツ帝国にあった。
帝国と貴族特権の維持のため民主主義者の放逐と植民地の属州化を結び付ける、
このことは同時にドイツ系のアメリカ移民を制限することに加え、
属州の近代化に伴って、ドイツ帝国のグローバル化にもつながった。
その発端が東ゲルマニアの併合にあったとしたら、
日本の国際歴史上最大の影響といえる、
むろん、ドイツ帝国がロシア帝国、清国に戦艦を売却したことに起因するのだが・・・
対抗上、日英同盟もインド投資しなければならず。
日本資本のインド投資は、急速に拡大していた。
ヒマラヤ山脈 | 東西 | インダス川 | 平城京 | ||
ガンジス川 | ヤムナ川 | 平安京 | |||
ゴマティ川 | 飛鳥京 | ||||
ヴィンディヤ山脈 | 東西 | ヤムナー川 | 因幡京 | ||
ナルマダ川 | 青龍京 | ||||
サトプラ山脈 | 東西 | タープティー川 | 白虎京 | ||
東ガーツ山脈 | 南北 | ゴーダヴァーリー川 | 玄武京 | ||
西ガーツ山脈 | 南北 | マハナディ川 | 朱雀京 | 黄龍京 | |
クリシュナ川 | 鳳凰京 | 瑞亀京 | |||
カヴェリ川 | 麒麟京 |
水力発電所を中核とした日本自治都市が広がっていた。
石炭、鉄鉱石だけでなく、
金、ダイヤモンド、チタン、クロム、マンガン、ボーキサイトなどの
資源採掘が成功するにつれ、
その膨大な電力は商工業を発展させ、生産力を伸ばし、
自治都市と自治都市を繋ぐ鉄道を連結させて日系ネットワークを構築し、
交通と流通を増大させた。
送電された電力は、イギリス領と藩王国領の近代化を促進させ、
インドの産業全体を底上げしていた。
日本人の移民者は、イギリスの居住者を上回り、
イギリス人の新居住者は安全と利便性を求め、日本自治都市に住む事が多く。
日英同盟は、連携しつつインドの基幹産業を押さえてインド独立を防ぎ、
且つ、インド産業による英印日同盟の強化を画策していた。
ムンバイ港
内陸の発展に伴い、巨大な造船所が建設されつつあった。
日英の関係者は、インド産業の発展が国内産業に打撃を与えることを知っていた。
特定産業で利権を持つ者たちは、本国の産業を削ぐことになっても私腹を肥やすことができ、
且つ、同盟全体では、列強に対し優位になることから、渋い顔をしつつも胸を撫で下ろす。
「日英同盟が戦争に巻き込まれない限り、インド独立はなさそうだな」
日英同盟が戦争に巻き込まれた時、インド独立と引き換えに妥協を強いられる、
「あれは?」
インド軍兵士によって、インド人が60000t級日本客船に乗せられていく、
「南ヴュルテンベルク(東アフリカ)行きの船だな」
「インド人を輸出するのか?」
「ダリットだよ」
「ドイツ人もインド人の方が黒人より抵抗が少ないらしい」
「それにダリッドも、インドにいるよりドイツ海外領地が楽だそうだ」
「遂に連邦以外にも人身売買か・・・」
「藩王がやってることだよ。ダリットも、少数言語者も邪魔らしい」
「まぁ インド国内が整理されていいけどね」
「ところで、日本は24000t級イラストリアス型空母を何隻か、購入したいとか」
「さぁ とりあえず4隻くらい欲しがってると思ったけど」
「豪儀だな」
「戦艦8、空母8、巡洋艦16、駆逐艦80、潜水艦80に整理する話しを聞いたな」
「もっとも、予算上、どうなるやら・・・」
「日本も厳しいのか?」
「まぁ 産業界は強いし、航空産業も強くなってる」
「問題は、開発が大きくなるほど回収までの年月が大きくなるからな」
「ドル箱造船と金の生る木の土建開発次第か」
「ドイツのアフリカ開発を助けるのは癪に障るがね」
「インド人輸出でインド開発も進むからね。要はどちらの開発が早いかだよ」
「インド人によってアフリカ大陸が開発されるのも悪くないでしょう」
「そういえば、チャコ戦争で失った人口を埋めるため、インド人入植を進めるそうで?」
「ボリビアとパラグアイは、日本も投資しやすいはずですよ」
「ブラジルと違ってナショナリズムを発揮できるだけのエゴを出す余裕もない」 にやり
自分が何者なのか、
記憶を喪失した人間がそうであるように
自己のアイデンティティを喪失した個人は活力を失う、
国家を形成する国民も似ていた。
国民としてのアイデンティティが形成されていなければコミュニティを作れず、
国家は、孤立し集団を結束できず総力を発揮できない、
南米諸国の多くが強い個人と弱い国家忠誠の中に取り残されていた。
ある意味、国家的なアイデンティティの形成途上であり、
遅ればせながらも、日本人の独自色を国家形成に刷り込める情勢にあった。
ブラジル
ブラジル東北部の日本資本は、水力発電の電力と鉱物資源を掘り当て、
ブラジルでも有数の資産を作り出していた。
軍政を敷いたヴァルガス大統領も日本資本を有望な資金源とし、
権力基盤に組みこんでいく、
代償として日本人の独自性と権力中枢への道が開かれるものの
気質的に生かせないでいた。
イッペーの並木が街路沿いに連なり、黄色、白、淡紅紫の仄かな色を賑わせ、
紅い鳥居が時折、道をまたぐ、
日系人たち
「なんか、微妙に日本っぽくないぞ」
「まぁ いいじゃないか」
「どちらかというと、ボリビアとパラグアイ入植の方が有利な気がするんだがな」
「戦争で人口が減ったらしいからな」
「しかし、これだけの利権があるとな・・・」
「それより、最近、インド人の入植が多いような気がするな」
「インド独立を狙う藩王が少数言語者を海外に出してると聞いたな」
「むしろ、日英同盟でインド統治しやすいようにインド人を移民させてるのでは?」
「酷いことするな」
「カーストの下っ端は、喜んでると聞いたけど」
「大丈夫かな。無茶苦茶になりそうだな」
「同盟さえよければ、世界がどうなってもいいんじゃないか」
「インドも忌み嫌う下っ端がいなくなると、自分が下っ端になると気付くだろうし」
「ふっ そういうのも面白いんだけどね」
ナイジェリアはイギリスの保護領だった。
ドイツ領南ザクセン(カメルーン)と南バーデン(トーゴランド)に挟まれ、
不利な状況にあったものの、世界最大のデルタの広がっており、
肥沃な土壌がナイジェリア経済を支え、アフリカ最多の人口2900万を誇っていた。
ドイツの海外地投資が始まると、
イギリスも搾取経済から投資回収経済に移行して対抗せざるを得なくなり、
インド人ダリットを入植させ、産業を拡大させる、
ニジェール川とベヌー川の北に広がるマンビラ高原(標高1800m級)は涼しく、
イギリスの拠点は、涼しい高原のアブジャに移転していく、
日本人たち
「アフリカ大陸のインドって感じだな」
「それでも日本より人口が少ないよ」
「少なくともドイツ領南ザクセンや南バーデンより有利だな」
「それでもイギリス人が住むには近代化が足りないそうだ」
「それで水力発電所?」
「そういうこと。日本も自治都市を作っていいってさ」
「また内陸かよ」
「沿岸部は渡さないだろうな」
「しかし、高原地帯まで物資輸送で飛行船を使えないのは厳しいな」
「ドイツは、イギリス連邦の空輸を嫌がるからね。地道に鉄道で運ばないと」
「なんか、労働奉仕都市にされそうだ」
「どこに住んでも労働は必要だよ。ただイギリスに搾取されるだけだ」
「日本も口先だけの引き籠もり右翼がいるから、こういうとこに追いやりたいね」
「ふっ 日本も少しは静かになるか」
「日本の予算をしゃぶり尽くすまで外征しないと思うよ」
「さらにいうなら愛する郷土を出たがらないと思うね」
「広瀬連隊に対する対応を見てたらよくわかる」
「とりあえず、自給自足できるだけの地域なら文句はないけど」
「イギリスは植民地の近代化と維持を同時にするなら日本と組むしかないと考えてるようだし」
「イギリス人が移民するとしてもカナダの方が好みだし」
「日本人の条件は悪くないよ」
「投機が出遅れても十分に追い越せるし、ドイツ領を引き離せるだけの土壌はあるよ」
「しかし、インドより原始的だな」
「搾取ばっかりしてたみたいだ」
「だけど、穀倉地帯だし、穴を掘れば資源が出てくるかもしれないな」
「日本から遠し、採掘は当たり外れがあるし、山師に賭ける余裕はないな」
「当たれば、イギリスに売って、インドの利権と交換してもらえばいいだろう」
「まぁ そういう方法もあるか」
ゲルマニア半島 21万0000km
遼東半島 3462km + 1万2500km
山東半島 11万6700km
東アジアのドイツの国土は、併合した東ゲルマニアのみであり、
遼東半島(南満州鉄道)と山東半島は清国領で強い権限を持つ租借地に過ぎない、
清国は、ドイツ帝国という狼に領土を投げ渡すことで戦艦群を購入し、
ドイツ・アメリカ・ロシアの北東権益以外の国土を守り切ったと言える、
ドイツ帝国は、ロシア帝国のシベリア鉄道と、海路の両方を利用し、
東ゲルマニアの近代化を推し進め、近代化に成功しつつあった。
なぜ成功したかというと、
ドイツ帝国の鉄鋼生産は、日英同盟を合わせた鉄鋼生産とほぼ同量、
アメリカの75パーセント。ロシア帝国の143パーセント・・・
東ゲルマニア半島の近代化は、鉄の振り分けで可能だった。
無論、鉄材だけが発展の要因とは限らないものの、
ほかの項目を含めると、日本は、さらに分が悪い状況へと押しやられてしまう。
ソウルブルグ
川幅650mに及ぶ漢江がソウルブルグを南北に分け、十数本の橋が都市を一つに繋げていた。
ドイツ語でブルグは、城と城砦を意味し、
ブルグらしくしようとドイツ人は思ったのか、
立法、行政、司法の三つの城が中心に建設され、陸橋で繋がれていた。
欧州は、街並み全体を調和させる傾向があり、
特にドイツ人は重厚な景観を好み、その嗜好は、ソウルブルグにも生かされていた。
区画ごとにゴシック様式、ロココ様式、ロマネスク様式の家屋が群れなして連なり、
並木に挟まれた石畳の街路が直線を進み、ときに緩やかなカーブを描いた。
ソウルブルグの街並みを形成する。
ドイツ文字で描かれた堅物な広告が控え目に、それでいて存在感を出していた。
風格の良い八頭身の群れは、街を行き交い、
カフェテラスでビールを口に含む白人たちは、大昔から住んでいるように振る舞っている。
欧州のベルリンを見て来た者は “ベルリンと見紛う” といい、
“地方は、まだまだのようだが” と付け加え、
“ノイ・シュプレー川(漢江)の川幅は、シュプレー川の11倍あるな” と足す。
川幅が広い方がいいという決まりはない、
しかし、人は水がなければ生きられず、
河川経済と用水量の大きさは、都市の可能性と比例する、
東ゲルマニアは、ドイツ本国の帝政が届きにくく、
ドイツ工業資本主義、ドイツ民族社会主義の総本山と化しつつあった。
その気風は、あくまでも国家民主主義であり、
ドイツ帝国の貴族主義を淘汰しつつ、
統制の弱いアメリカ型資本主義と自由民主主義を打倒する気負いがあった。
既に東アジアで日本に次ぐ工業生産力があり、
ソウルガルドは外周に向かって公共施設を伸ばしていた。
大陸の資源と市場を席巻し、日本の産業を追い抜く勢いがあった。
その東ゲルマニアの政策の中心にアドルフヒットラー首相がいた。
“東ゲルマニアは、世襲された権威に対し、盲目的に膝を屈するべきではない”
“脆弱な植民地であってはならない・・・”
“ドイツ帝国本土と肩を並べ、追い抜く気概を持ち・・・”
“東アジア全域の盟主となるべきである・・・”
拍手喝采
ソウルに日本人がいることは珍しくない、
日本領巨済州島からソウルまで420kmほど、
東ゲルマニア鉄道で3時間の行程に過ぎず、
東ゲルマニアの公共工事は、日本の土建業界のマルク箱であり、
日独貿易は、毎年の如く貿易量を増やしていた。
演説から離れたカフェテラスに日本の防諜関係者たちがいた。
「実に実感できる演説だねぇ まるで映し鏡だ」
「言ってる場合か、民族覇権主義じゃないか、脅威と思えよ」
「ていうか、日本にも、そういう輩がいるじゃないか」
「日本はいいんだよ」
「はあ、どこまで独り善がりなんだよ」
「国家安寧のためだろう」
「国家だぁ 政府と利権団体は醜悪すぎるよ」
「ふん、権力者は保身と面子ばかりで、ろくなもんじゃない」
「連中に媚び売ったって組織防衛と歪な癒着で、自殺者の山ができるだけだぜ」
「ふっ 軍事産業に傾倒すると、自殺者じゃなく、死傷者と餓死者の山ができそうだけどな」
「そ、そこまで酷くはなかろう」
「よくいう、文句ばっか言ってるだろう」
「そ、そりゃ 軍内の派閥には、いい加減、頭にくるがね」
「いまの政治の党利党略の離合集散にも嫌気がさす」
「まぁ ほかの国も似たようなものだよ」
「それに反ヒットラー勢力も少なからずいるようだ」
路地裏から、こそこそと演説を覗き込んでる連中たちがいた。
いかにも反ヒットラー勢力と目つきだけでわかる。
「・・・ヒットラー人気は、7対3くらいだろうね」
「ドイツ皇帝に睨まれてるし、ドイツ貴族と利権からあぶれた連中が巻き返しを図ってるし・・・」
「どちらにしろ、世界で外国資源に依存しなくていいのは、アメリカとロシアとイギリスの3国だけ」
「小国は身の程をわきまえ、搾取されても清く慎ましく生きろってこった」
「ヒットラーが日本に侵略してきたらどうするんだよ」
「ヒットラーは泳ぎが苦手だと思ったがね」
「あいつの絵を褒めてやれば攻めてこないと思うよ」
「あんな独創性のない絵をどう褒めりゃいいんだ?」
「華僑はべた褒めしながらヒットラーから絵を買っていくぞ」
「けっ ヒットラーが権力を握ったとたん、オベッカ使いやがって」
「国が守れるなら、それくらいやっても安いもんだ」
「国っていうのはな。軍事力で守るんだよ」
「なんで、独裁者に、上目遣いで、ご主人様って、媚び売らにゃならんのだ」 ばん!
「そんな日本なんて守る価値もなかろう」
「はぁ? どうしてお前らは高飛車になるか、卑屈になるかの二者選択しかないんだ」
「の、伸るか反るかの時だろう」
「ドイツの飛行船が、どれだけ日本の山頂に建設資材を空輸してると思ってるんだよ」
「そうそう、飛行船は、一度に100t以上を降ろせるからな」
「費用対効果を考えるなら、選択肢がない」
「日本の国土開発はドイツの飛行船に頼ってるといっても過言じゃないね」
「いい加減、飛行船を日本上空を飛ばせるのは、やめろ、地の利が全てドイツに明るみだ」
「日本だって、東ゲルマニアの公共事業で山河を調査してるだろう」
「日本は、東ゲルマニアに野心はないぞ」
「もういいよ。後は外務省に任せて、武官は引っ込んでろ」
「「そうそう」」
「「・・・・」」 ぶっすぅ〜
救いがあるとするなら日本の鉄鋼生産量はイギリスを抜いている、
しかし、それは賃金格差からくる売却用鉄鋼であって、
国内へ向けられるリターンは、総生産の10パーセントに過ぎない、
そして、東ゲルマニアの生産力が向上するにつれ、日本の輸出産業は鈍化の兆しを見せていた。
世界不換金恐慌の中、
日本の海運と開発興業は、急速に業績を伸ばし、
手を広げていても砂上の楼閣であり、
決して盤石な経済基盤の上に立つものではなかった。
いわゆる、科学技術は借り物、資源メジャーではなく、市場も海外に依存している、
アメリカがくしゃみをすれば日本が肺炎を起こし、
ドイツ帝国が咳をすれば、日本が貧血を起こし、
イギリスが経済封鎖するだけで日本産業は、生命線を断たれた。
日本が近代化を成している背景は、日英同盟の連帯保証と、
日本の格安で品質が認められた労働力と商品サービスがあった。
この脆弱にして惰弱で不安定な状況に我慢ならない一派が存在する、
いわゆる右翼勢力と呼ばれる人たちで、国防上の理由から他国依存を望まず、
日本民族のアイデンティティを鼓舞し、
経済的独立と生存経済圏の拡大を望み始める。
そして、東ゲルマニアの独裁者と似たような恐怖感を持ち、
似たような価値観で、似たような扇動をしている、
とはいえ、先行き不透明であっても、
現状の日本は、貿易を拡大するほど鉄が得られ、
開発できる瑞樹(北東ニューギニア)州があり、
銃を取るなら鍬を取れの気風が強い社会であり、
多くの水飲み百姓が我が土地を得るため、インドの自治都市へ向かい、
あるいは、瑞樹州へと船出していた。
満洲
北満洲 ロシア権益、
南満州 アメリカ6割権益+ドイツ4割権益
3つの勢力が長春駅で交差し、衝突し、火花を散らしていた。
満洲は米独露の中国大陸に対する楔であり、
日本を含めた東アジア全域に対する米独露の橋頭堡でもあった。
そして、満洲開発は、皮肉なことに日本産業を底上げする要因になっていた。
そう、日本の労働資源を利用しなければ米独露の満洲権益は成り立たない、
それが日本の強みであり、勢力均衡戦略の一端でもあった。
長春駅は、米独露の警備員が立ち並び、多様な人種が行き交う
日本人たち
「随分、朝鮮人が増えたな」
「東ゲルマニアから追い出されたのだろう」
「教育がされてなさそうだが」
「1910年にドイツに併合されてから29年だ」
「まともな教育をされていない朝鮮人が主流を占めればどうなるかな」
「併合以前も国民教育はされてなかっただろう」
「そうだったっけ」
「封建社会だから上層部だけ、いまじゃ その上層部も残されていない」
「朝鮮人は、英語、ドイツ語、ロシア語、中国語を覚えないと生きていけなくなるな」
「日本は、朝鮮半島を併合したら同化政策で教育するはずだったがね」
「ドイツが戦艦を売却しなければそうなってたかもしれないな」
「いま思うと、日本の半島と中国大陸の利権放棄は正解だと思うね」
「際どい綱渡りをしてるように思うが?」
「そうでもなかろう」
ロシア兵に朝鮮人が殴られていた。
“日本人ニダ! 日本人ニダ!”
「・・・いまじゃ アメリカ合衆国とロシア帝国が朝鮮人を利用しているらしいな」
「アメリカ資本主義とロシア帝国主義の衝突か・・・」
「ドイツは困るだろうな」
「ドイツはシベリア鉄道も使ってるからね」
「キーパーソンであり、不利な状況でもある」
「東ゲルマニアという橋頭堡があるなら戦えるだろう」
「ロシア帝国は、ユダヤ人を中心に資本主義が巻き返している」
「国力は増強されつつあるから、そうでもないさ」
He100
1100馬力 重量2070kg/全備重量2500kg
全長8.20m×全幅9.40m 翼面積14.5u
速度668km/h 航続距離900km
30mm×1 7.92mm×2
小型の機体に強力な水冷エンジンを装備、
主翼をわずかに逆ガルさせて主脚重量を稼ぎ、
楕円形の翼端は空力特性を向上させていた。
上昇力とロールの優れた戦闘機であり、
海外州を含めた初のドイツ帝国空軍戦闘機となった。
He100が生産性に優れたライバル機Bf109を下した理由は、主脚の幅が広く、
離着陸し易かったからといわれる。
機械的な品質の高さと安心感は、ドイツ帝国空軍の精強さを体現させていた。
もっとも、ドイツ帝国の空を支配し、
世界の空を席巻したのは、ハインケルの戦闘機でなく、
ただ空に浮かび、優雅に大量の人員と物資を空輸できる巨大なツェッペリン飛行船だった。
飛行船を擁護したのはドイツ海軍であり、
海外州の開発を強行しているドイツの資本主義者、民主主義者の勢力だった。
ドイツ海軍の飛行船は、強力なレーダーを船体に外壁に張り巡らし、220km四方を索敵できた。
飛行船が航空機の攻撃に脆弱であることは、アメリカからヘリウムを購入できるようになってからも変わりなく、
ドイツ海軍所属の飛行船は、他国の航空基地を避けるように飛ぶ、
もっとも、飛行船に限らず、
艦艇も、他国の基地航空戦力を避けて航行するため、
飛行船だけの脆弱性とは言えず、
飛行船は、索敵能力と速度と航続距離で巡洋艦の役割を十分に果たしていた。
中部太平洋、
周囲1000kmに島陰のない洋上、
280m級ツェッペリン飛行船二隻が上下に浮かび、
上の飛行船から下の飛行船に空中補給を行っていた。
ドイツ帝国は、この方法で飛行船の行動力を飛躍的に高めてしまう。
もちろん、ドイツ輸送船からでも補給できた。
しかし、平時はともかく、
戦時ともなれば空中補給は重視される。
飛行船の性質上、ドイツ海軍とドイツ空軍の双方の人員が出向し、
どちらかが船長となり、もう一人が副船長となった。
「ギュンター艦長。補給完了しました」
「そうか、では南太平洋へ行くとするか」
「最大の難関、沖縄列島を越えてしまえば、どこにでもいけますよ」
「そういえば、沖縄列島にもチェーンホームレーダーを配備するそうです」
「帝国より、イギリスのレーダーが優れているのは信憑性があるのかね」
「ドイツ参謀本部の見解です」
「では、飛行船も高速化が必要になるな」
「それだと、燃料消費が激しくなるのでは?」
「100t以上の積載能力があるといっても、ほとんどレーダーの重量が占めている」
「どの道、空中補給を受けなければ長居はできないし」
「順風を利用して飛ぶのならむかしの帆船みたいなものだからな」
「航続距離より生存性の高い速度を好むよ」
「問題は、航空機の性能が向上して、飛行船が負けそうな事ですかね」
「空母と大型飛行艇は、飛行船の天敵になりそうだな」
「艦艇搭載の水上機でさえ、飛行船を撃墜できるでしょうね」
「特に日本の17000t級空母鳳翔、瑞翔、燕翔、蒼翔、龍翔は脅威だな」
「仮にこちらが先に発見できたとしても、味方の潜水艦に位置を知らせるか」
「距離を取って、離れるしかないな」
「味方の潜水艦は、浮上できる安全な海域が分かるだけでもいいようですがね」
「むしろ、太平洋に艦隊基地を欲しがっているというべきだろうな」
「せめて、西サモアを日本に渡すべきじゃなかったかもしれませんね」
「まったくだ」
ペルシャ湾は、面積約260ku、平均深度90m・・・
狭い海であるにもかかわらず、列強の油送船が行き交う、
戦略的な価値で人材が送り込まれ、鍔迫り合いで軍艦が派遣される、
列強の油田を巡る謀略と工作は苛烈を極め、
その結果、砂丘広がる浜辺で釣り竿を垂らしす人たちがいた。
異国の地で身の丈で生活すると、国家的な背景がどうあれ、
その地で楽しみを見出してしまう、
また、身大で現場に立つと別の価値観も育ってしまう。
「意外と大きいのがたくさん釣れるじゃないか」
バケツに入り切れないほど魚が釣れ、
仕方なく、ナイフで切り分け、串刺しで焼き始める、
「・・・魚群が濃いんじゃないか」
「ああ、潜ってみたら魚は多かった。それに・・・」
「・・・・」
「向こうの連中も潜ってたよ」
「ドイツ人?」
「ああ・・・」
「何か、企んでいるのか?」
「いや、暑いからだろう、それに、すごく、綺麗な海中だったよ」
「「「「・・・・」」」」
「網漁してる近くで釣り竿垂らしてたら間違いなくドイツ側に疑われそうだな」
「一緒に網引っ張ってたら、バスラが見えないじゃないか」
「しかし・・・・42000t級ビスマルク型戦艦を派遣してくるとはな」
「日英同盟はアラブ独立を画策中だから牽制だろう」
「パイプラインで内陸から油送できるんだからバスラに艦隊を送り来なくても・・・」
「費用対効果で怪しげな戦艦を見せてでも、アラブの利権を守りたいのだろう」
「ドイツは、自動車産業を庶民レベルに下ろせるか中東油田にかかってるからね」
「日本もだよ」
「中東油田は、それだけ大きいってことだろう」
「しかし、30000t級金剛(オライオン)型で対抗しても見劣りするな」
「まぁ 戦艦は見せるためでもあるからね・・・」
「戦えば・・・」
「・・・戦っても勝ち目はないな」
「たぶん、今度受け取る34000t級扶桑(ネルソン)型でも負ける」
「中古じゃ勝てんさ」
「イギリスの40000t級キングジョージ5世型なら対抗できそうだけどな」
「日本海軍の要望は?」
「ああ、ネルソン型高速戦艦の拡大改良型になったよ」
「それは助かるね。12年物で一番苦しくなるのが機関と速度だからな」
「イギリスはディーゼル電気推進の研究はしているのか?」
「さぁ しかし、ディーゼル電気推進は、日本客船が進んでいるかもしれないな」
「アメリカは?」
「アメリカも進んでいるようだけどね。工業の最先端はドイツとイギリスだろうな」
「だといいがね。アメリカ合衆国の国力は総合一位だよ」
「ドイツと日英同盟が狙っているのがアメリカ合衆国の南米化だよ」
「それはいいけど、ロシアが怖くならないか?」
「ドイツが牽制してくれると思ってるようだ」
「それで、イギリスは安心して外洋に出たがってるわけか」
「たぶんね」
「ふ〜ん しかし、中東は、暑いな」
「ああ、熱い・・・」
はふ はふ はふ はふ
「塩は持って来たけど、醤油と生姜とニンニクも持ってくればよかったな」
「こう暑いと梅肉もいいぞ」
「「「んん・・・」」」
4つの勢力が中東の油田利権を巡って衝突していた。
日英同盟はアラブ独立を支援し、
独・伊・ドナウ・トルコ同盟は、トルコのアラブ支配を支援し、
ロシア帝国はクルドを支援し、
アメリカ合衆国は最先端の油田技術と資本による干渉を試みていた。
日英同盟と独伊同盟は、鉄道産業からの脱却、
自動車産業を中心とした機械産業への大規模投資が可能になるため、
中東利権は、国家産業の命運を賭ける意気込みといえた。
そう、石油産業もないのに自動車産業に移行すると梯子を外される、
国家産業だけでなく、政策決定の命運までアメリカ合衆国に握られる、
そして、油田を握るアメリカ合衆国は、他国の生殺与奪権を手放さないため中東に干渉し、
ロシア帝国も漁夫の利狙いでクルド独立運動に加担し、勢力を中東に伸ばそうとしていた。
数千万の人口を支える食料を自給できる地域があるとする。
それはあくまでも地域であって、国家ではない、
国家は、数千万人分の食料を奪い、労働させることで体を成した。
なぜ、支配に魅力を感じ、権力を巡る戦いが行われ、戦国時代を経たのかにも通じる。
封建社会は、食料を収奪することで領民を直接支配し、
近代は、商品作物の発達と生産集中による自給自足の淘汰が進み、
貨幣経済による間接支配へと移行していく、
収奪率が大きいほど国家権力は強大となり、比例するように民衆に憎まれていく、
支配層と被支配層の間で歪な差別と人権闘争が繰り返され、妥協がなされ、
法の公正とサービスを条件にした水準で落ち着く、
“領土が増えると国は豊かになる”
“公共投資をすると国は豊かになる”
この二つは幻想のように付きまとい、人々を扇動してしまうことがあった。
しかし、国は国民支配維持しながら大事業を行うとき、
より大きな収奪を行わなければならず、
ときには特定の階層と産業のみ、恩恵を受けた。
そして、回収まで年数が必要だったり、
赤字ばかりの掛け捨て投資だったり・・・
庶民は、広がった地域格差と貧富の格差の中に取り残されることもあった。
敢えて言うなら、
“領土が増えても国民は豊かになると限らず”
“公共投資をしても国民の過半数は豊かになると限らない”
そして、赤道以南に対する日本の壮大な国家事業は、回収の見込みもないまま、
掛け捨てが行われていた。
ニューアイルランド(ノイ・メクレンブルク)島(13000ku)、
ニューブリテン(ノイ・ポンメルン)島(36514ku)、
列強に無地主認定されると発見した国が名前を付け、
占領した国が名称が書き換える。
領地交換した国は、北の細長い島を滴碧(るいりょく)と名付け、
南の“ノ”状の島を青煙(あおけむり)と名付けた。
これは、壮大な勘違いといえた。
水飲み百姓の間接的な希望に過ぎず、
脆弱な社会基盤から、なけなしの資本、資材、機材、人材を開発地に奪われいく、
それは、身を切られるような痛手となるため、
半島と北東ニューギニア交換の後、
30年以上に渡って多くの予算と人員と資材・機材が北東ニューギニアに流され、
日本人の移民人口は800万・・・
そして、仮に鉄材の量でいうなら、ドイツ領東ゲルマニアの10分の1に過ぎず、
それでさえ、日本内地経済の猛烈な反対を押し切って続けられていた。
人口が広がりコミュニティが薄れると流通の負担が増し、採算効率は悪化する。
産業は資本回収が遅れ、
採算非効率を埋めるほどの資源を産出しない限り、利益は上がらない、
仮に利益を上げることができたとしても不自然で特定の産業に偏ってしまう危険性があった。
そして、いまだ北東ニューギニアに見るべき資源は発見されておらず。
領土拡大は、海運と海外開発で得た利益を浪費させ、
内地の近代化と国土開発と産業の足枷のように思われていた。
関係者たち
ラバウルから540kmもの距離を隔てた青煙(ニューブリテン)島の南端まで続く鉄道を見つめる。
例え総延長10000kmでも採算が合うのなら希望が持てた。
しかし、たった540kmでも採算が合わなければ大損でしかなく、
瑞樹(北東ニューギニア)州の路線3000kmと合わせてもまったくの赤字だった。
この赤字の補填は、日本海運と海外領地開発で得た外貨に頼っていた。
そして、さらなる投資と人口増加が継続されなければ瑞樹州経済は破綻し、
恐慌は、日本の内地まで巻き込む恐れがあった。
「せっかく稼いだ外貨を辺境に投資することになるとはね」
「一種の国防だよ」
「国防なら軍事費に賭けろよ。国産兵器は、国家と国民の誇りだ」
「そこに住んで生活を賄い」
「文化的なコミュニティを何世代も続けられ、今日より明日の未来が開かれていると信じられる」
「そう思うから命懸けで守りたいと思うようになる」
「人は、見通しのない搾取をされ続けられたり、原野を守るために命懸けになれない」
「ふっ 国民総保身か。人は生活水準を下げることを死ぬほど嫌がる」
「貧乏人だけでなく、お金持でもそうだ。一旦、権利と生活を向上させてしまうと大変だと思うぞ」
「それは諸刃の剣だよ」
「豊かな生活を守る気概が国防に繋がる」
「もし、生活苦が続くようなら一か八かに賭け、現政体に不信任しかねなくなるよ」
「日本の生活水準はそれほど悪くないと思うがね」
「それはどうかな。一旦軍需に傾けば、特定産業の利権は強くなり歯止めが利かなくなる」
「しかも再生産不能な掛け捨て軍事保険だと、日本はじり貧だ」
「日本をじり貧にさせているのは、瑞樹州だと思うけどな」
「ダムは整備したし、発電は軌道に乗ってる。あとは、自助努力で近代化できるだろうよ」
「そうは思えんね。吸血鬼のように内地の予算を頼るんじゃないのか」
「そんなの地方だって同じだろう」
「地域格差があり過ぎるからな」
「中央で余計に取って過疎地に投資しないとますます、地域格差が大きくなる」
「ではそうしてもらいたいね」
「瑞樹州は取り過ぎだ」
「初期投資は大きいほど早く軌道に乗せられる」
「初期投資をケチると勢いが削がれて、後々まで近代化がずれ込む」
「内地をスッカラカンにしてか」
「南満州なら回収の見込みは立つが、瑞樹州では見込みなしだな」
「だいたい、内地にない物を瑞樹州に持っては来れんぞ」
「さらにいえば、内地経済を犠牲にすると貧困層と自殺者が増えるんだよ」
「当分は内地に我慢してもらうしかないね・・・」
40000トン客船 “はなさかじじい丸”
鋼鉄の箱モノがラバウル港に入港する。
港湾設備は、大型客船がようやく着岸できる程度だったものの、
日本でいうなら地方港のレベルに過ぎない、
開発速度は、工業化が進む東ゲルマニアに比べて、はるかに劣り、
米独露の満洲より規模にも劣っている。
いまだ、瑞樹州は、いまだ農業社会であり、
工業化の兆しは、発電ダムと鉄道だけだった。
客船を降りる移民者たちは、火口から立ち昇る白煙に不安を覚えつつ、
割り当てられた土地へと向かっていく、
「救いがあるとしたら、軍事的な緊張が低いことかな」
「「「「・・・・」」」」 ため息
アメリカ合衆国 白い家
「日本は、新型零式紡績機による紡績産業巻き返しを画策している模様です」
「たかだか紡績産業ではないか。アメリカ産業全体に打撃を与えるモノではない」
「日本は、海運と土建業が脅威ではないのかね」
「アメリカ産業にとっては、たかだか紡績産業です」
「ですが紡績機械は、日本の就業人口で主流産業の一つ」
「日本の紡績機は、独自開発の前機種の96式紡績機といい、採算効率は優秀ですし」
「ここで国がテコ入れし、日本の産業基盤を一角を崩しておく方が良いかと」
「んん・・・確かに不換金不況以来、アメリカ産業は勢いを失っている」
「外資得とくも不利な状況が続いている」
「新鋭ワイルドキャット紡績機で日本の輸出攻勢を食い止め」
「日本の紡績産業人口を苦境に陥れることができれば、失業率と社会不安は増加します」
「しかる後、日本海運を追い落とし」
「海運力を失った日本の土建業者を海外市場から締め出すべきかと」
「んん・・・」
「このまま日本が中東の油田にとり付くようなことになれば自動車産業に参入するでしょう」
「そうなればアメリカ産業にとって手痛いことになるかと」
「アメリカは資源で優れているのに近代化で弾みがつけ難い状況だからな」
「ドイツ系が減ってるのが原因かと思われます」
「このままではアメリカの人口構成が変わり南米化する恐れもあります」
「それは、何としても防ぐべきだ」
空を厚い雲が覆い、吹き荒ぶ雪が大地を凍らせる。
人々は家に閉じ籠り暖を保たせ、安いウォッカを含む、
そういった環境でもロシア人は、アイスクリームが好きなのだから屈折している。
この性癖は変わることがないだろう。
しかし、近代化の波は、時代に節目を作り、未来を変えてしまう力があるらしい、
南の食料が北と東の果てまで届き、天候不良でも餓死者が減少していた。
「皇帝。準備が整いました」 68歳の男
「そうか・・・」 45歳の男
「ドゥーマも商人どもくらい皇帝を立ててくれるならいいのだがな」
「商人たちは皇帝の権威を利用しているだけに過ぎません」
「そして、権威を認めるだけなら安いものだと考えているのです」
「完成した地下鉄沿いの利権か」
「はい」
「たった45人の議員で大した利権は保障できんよ」
「確かに・・・」
「商人どもは、地下鉄をどのくらい伸ばすつもりなのだろうな」
「聞いた話ではモスクワ市内で12路線、総延長300kmを計画しているとか」
「真冬でも遠出ができるわけか」
「外には出られそうにありませんが、商人たちは商店を作るようです」
「まぁ 家に閉じ籠ってばかりもいられない、しかし、南に伸ばせば暖かい場所にまで行けるのでは」
「都市を離れなれるほどの資本はないかと」
「中東と満洲は列強の利害が衝突しているようだが?」
「はい」
「そうか・・・機会があればロシアの国益に繋がるだろう・・・」
「皇帝。いまは王朝の難の時です」
「アレクセイの上手くいってる相手は、日本の華族の娘だけなのだろう」
「御意。あれほど自己主張の少ない民族は少ないかと」
「それでは仕方があるまい・・・」
世界最大の帝国、ロマノフ王朝でさえ、良妻賢母な逸材探しは苦労する、
最初に求められるのが血筋と家柄と品格では、選択肢も限りなく狭められ、
望むべく品性の情勢は皆無に近付く、
さらにアレクセイ皇太子は血友病のハンディがあった。
ロシア帝国の最高機密は、欧州貴族社会に漏れており、
候補者は次々と消え、残ったのは日本の華族の娘・・・・
ニコライ二世は、不意に右側頭部に触れる、
痛みはないものの、
傷跡と日本の警官に殺されそうになった恐怖は残っており、
日露戦争の恨みも消えていない、
日本がドイツ帝国と利権交換し、
ドイツ帝国が東ゲルマニアと南満州に取り付かなければ、
第二次日露戦争の誘惑に勝てなかったであろう。
ロシア帝国と日本の戦争は、国境線と比例して遠のいている。
ロシア皇帝の憎しみを配慮している日本人がどれほどいるだろう。
少なくとあの華族の娘は賢く、
そういった配慮を持っているように思えた。
赤の広場に新型T34中戦車が並んでいる。
ロシアの広大な大地と悪路を疾走しうる戦車として開発されたものだ。
ほかの国の戦車の情報は不鮮明なものの、
T34中戦車は、ロシアの国情に叶う戦車であり、
ロシアに侵攻してくる国は、痛い目に遭うことになるであろう。
しかし、重騎兵と砲兵を足して割った新兵器もロシア皇帝の手を離れ、
ドゥーマと、そこから生まれるロシア政府に開戦権が奪われていた。
世界最大のロシア帝国ロシア皇帝の権力基盤は、貴族の縮小に伴い、
世襲された貴族からドゥーマ(ロシア帝国議会)と学閥官僚組織へ移行していた。
皇帝ニコライ2世の権力は、委譲が進んで押さえ込まれ、
立法は、450議員中、45人の議員を指名できるだけ、
行政は、権限の小さな副首相を指名できるだけ、
司法は、裁判官5人中、1人を指名できるだけだった。
そして、ロシア帝国議会が荒れない限り、
皇帝の意思は、民衆の数に封殺される、
ロシア経済は、ユダヤ商人とアルメニア商人が台頭し、
帝国を近代化させ、産業を増大させていた。
貧富の格差は広がり、ロシア人の大半は貧しかったものの、
失業率は低下して一人当たりの生産量は増大し、
社会基盤は盤石なものになっていた。
ロシア帝国の国力は、アメリカ合衆国、ドイツ帝国、日英同盟と並び称され、
潜在的な脅威になりつつある清国をも上回っている。
面白い状況だというのにロシア皇帝のすることは、完成した地下鉄に乗り、
ロシア帝国の近代化を喜んでみせるだけだという・・・
そうロシア帝国は、わけのわからない烏合の衆の向くまま、無能無害化されている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です。
国際情勢は、第一次世界大戦とロシア革命の不発で、
ロシア帝国は、再興、
ドイツ帝国は、本国の低迷と引き換え、海外州の躍進。
日英同盟は、インド利権を中心に継続。
アメリカ合衆国は、総合一位。南米化は、やや進んでいるようです、
日本の零式紡績機は、アメリカのワイルドキャット紡績機から市場を防衛し、
経済防衛ができるでしょうか (笑
零式電気自動車で電気車VSガソリン車したかったのですが水力発電では不足、
まず国際市場では勝てません。
日英の中東油田開発が遅れてるので残念です。
商売が巧いとされる華僑3人が束になっても1人のインド人には勝てるかどうか。
そのインド人が3人束になっても1人のアラブ人と同じぐらい。
そのアラブ人が3人束になっても1人のユダヤ人には敵わない。
しかし、そのユダヤ人が3人束になってかかっても1人のアルメニア人には敵わない。
日本マクドナルド創業者の故・藤田田氏 談
1930年 | 領有 | 利権 | 軍 | 人口 | 墺 | |
面積(ku) | 面積(ku) | (万) | (万) | (万) | ||
北欧 | ドイツ帝国 | 54万0857 | 5200 | |||
朝鮮半島 | 東ゲルマニア | 21万0000 | 100 | 3000 | 800 | |
遼東半島 | 3462+1万2500 | 10 | 300 | |||
山東半島 | ホーエンツォレルン | 4万0552 | 11万6700 | 20 | 800 | 600 |
カメルーン | 南ザクセン | 79万0000 | 10 | 200 | ||
東アフリカ | 南ヴュルテンベルク | 99万4996 | 10 | 300 | ||
南西アフリカ | 南バイエルン | 83万5100 | 10 | 200 | ||
トーゴランド | 南バーデン | 8万7200 | 10 | 200 | ||
ドイツ帝国 | 350万2167 | 12万9200 | 10200 | 1400 |
口径 | 銃身/全長 | 装弾数 | 重量g | 初速 | 発射速度 | 射程距離 | |
エンフィールド | 7.7mm×56R | 640/1130 | 10 | 3900 | 744m/s | 918m | |
ヴィッカース重機関銃 | 7.7mm×56R | 720/1100 | 250 | 50000 | 760m/s | 450〜600 | 740m |
8式小銃 | 7.7mm×56R | 640/1100 | 10 | 3700 | 700m/s | 618m | |
第31話 1938年 『世は全てこともなし』 |
第32話 1939年 『うよたん、さよちん』 |
第33話 1940年 『誰か、あいつをとめろ』 |