第05話 『朱雀の庄』
1639年
徳川幕府は、旧豊臣系外様大名を潰しにかかっていた。
家康、秀忠、家光の三時代だけで外様大名82家、親藩・譜代大名49家が改易。
徳川子飼いの家臣を送り込んでいく。
結局、幕閣の枠が決まっていれば派閥が生まれ、
離合集散しつつ、権謀術数で落とし合い。
幕閣の枠を増やすと、その皺寄せは庶民から吸い上げてしまう。
日本で生きていける人口は限られ、
余剰人口や弱者は、爺捨て山、婆捨て山、子捨て山で間引きされていく。
日ノ本の負け犬組は、豊臣家の残党および不満分子が約50万とも言われ。
キリシタンは、約30万とも言われる。
豊作・不作など天候で真っ先に影響を受けるのは弱者で、
人口の上限下限が変わり、貧富の比率も微妙に変化する。
朱雀の庄
日本人が国を作っていると聞いたのか、徐々に人口が増えていた。
元々、勤勉勤労な日本民族は、二期作、三期作が可能な入植地で真価を発揮する。
貿易商人・傭兵と、その家族だけだった朱雀に農業移民も加わり、生活が多様化していく。
朱雀城が築城され、要衝に砦が築かれ、
支配圏が陸地側に広がっていく。
3期作可能な農地だと半農半兵より、職業兵士で無理が利く。
有能な浪人が加わると武力も大きくなり、対アユタヤ、対バタニに対し余裕がでてくる。
アユタヤは、タイ族85パーセントで、漢人10パーセント。
一枚岩ではないことが幸いする。
結束力のある華僑資本の強さは常に問題視され、時に迫害も受ける。
アユタヤ王宮から日本商人を追い出すと漢人が標的になったりもする。
そこにポルトガル勢やオランダ勢も絡み、
サル山のサルの如く、離合集散が繰り広げられる。
また、ビルマやベトナム側との紛争もあった。
というわけで、アユタヤは、朱雀の日本人ばかり関わっていられないのか、
国境線は、散発的な衝突が起こる程度。
見張り矢倉
数人の日本人が、アユタヤとの国境を見守っていた。
「・・・随分と日本人が増えたんじゃないか」
「5万は、いるらしい。もっと、増えるんじゃないか」
「キリシタンは、ほかの場所に行きたがっているらしいが」
「天草四郎だろう。幕府が “大逆の徒” と呼んでいるそうだ」
「何で助けたんだ?」
「名前だろう。そいつが、南の島にいるのなら、日本中のキリシタンが、そっちに行くと見込んでいる」
「なるほど、名前か・・・」
「聞いた話しだと小笠原諸島から島伝いに泥棒諸島」
「そして、さらに南に下ると島があって、そこらしい」
「泥棒諸島?」
「最初に見つけたスペイン人だか、ポルトガル人だかが名付けたらしい」
「ふっ どっちが、泥棒なんだか」
「強盗しようと上陸したら泥棒にあった島なんじゃないか。小笠原だって島流しの島だし」
「それを言うなら、俺たちも、居直り強盗じゃないか」
「そうだな。あの時のことは今でも思い出すよ」
「ああ、ここのタイ人たちとは仲良くしていたからな」
「いまじゃ 恐怖と憎しみの視線で見られる」
「・・・アユタヤの代償だよ。数は違うが」
「被害が100倍じゃ タイ人も、割に合わないだろう」
「そうだな・・・ほんと、口実だ」
1641年
徳川の幕政は、生かさず殺さず。
これは、領民だけでなく、諸藩に対しても同じだった。
北方開拓は、参勤交代と並んで諸藩の弱体化に都合が良く。
北方開拓の拠点は、北海道から樺太、千島を越えて(カムチャッカ)半島へと向かっていく。
北海道(根室城、函館城、室蘭城、小樽城、稚内城)、
千島(択捉城、国後城、得撫城)、
樺太(豊原城、シスカ城)、
千島(小原城)
改易代わりで築城の苦役を押し付ける。
また、そのまま外様の改易地にしたりもする。
もう一つ、
幕府は、寛永の飢饉を島原の乱などキリシタン災厄と関係あるものとして宣伝。
キリシタンを狩り出して、幹部クラスなど、天草四郎のいる瑞穂島(ニューギニア島)に送りこむ。
キリシタンが減れば、南蛮貿易でキリスト教の影響を受けずに済む算段もあった。
そして、旧豊臣恩顧や不穏分子を朱雀に送れば後顧の憂いなし、
これら幕府の政策で南蛮貿易資本・諸大名の圧力。
海里、永未。朱雀の庄の形成が、どの程度関わっていたのか不明。
暗闇に明かりが小さく照らされていた。
「お役人様、こっちです」
「・・・・・・」
踏み込んでいく役人がキリシタンの隠れ家を突き止めていく。
そして・・・・
御用だ! 御用だ! 御用だ! 御用だ! 御用だ! 御用だ!
と捕まえていく。
真っ当な領民は、磔だと、祟りとか、恨まれたくないのか、見て見ぬ振りが多い。
思い込みな正義感と権威を笠に同郷の民を告発する者は少数派だった。
しかし、島流しだと気が楽なのか、告発しやすかったりする。
領民も己が田畑も増えて、キリシタンが磔でないと告発しやすいのか、
キリシタン狩りの成果が上がる。
また、中国大陸は明末期。
幕府の南蛮貿易が活発なことも手伝って、日蘭連合でドサクサに明の利権を・・・
という動きもあったが不発に終わる。
「明派兵の謀略は判明しておる。切腹じゃ」
「そ、そんな・・・」
「では、朱雀行きを言い渡す」 にんまり
「・・・・」
権威維持の根幹である武家諸法度。
その切り札、切腹(生殺与奪)を行使するより、
南蛮貿易の利権と金に目が眩む。
また、切腹より気楽に言い渡せた。
1643年
寛永の飢饉で食べ物がなくなる。
「おっとう・・・おっかぁ・・・・腹が減ったよ〜」
子供が泣いても、親は何もできない。
歩いていける範囲の物は採りつくして、毒キノコを食べて死にたいほど。
そして、腹が減ったと泣ける間は軽度。
これが酷くなると、死んだようにぐったりとして動けず、目がかすみ、虫の息。
死がひたひたと迫ってくる。
辺りは、死体が転がり、死臭が漂う。
こういう状況だと、人間性が失われやすく、人間性が問われたりもする。
はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ
兄が臥し。
血のりが付いた石を持つ弟が座り込む。
「俺のものだ・・・俺のものだ・・・俺のものだ・・・」
弟が最後の粟を口に入れる。
普段、仲睦まじくしている親子、夫婦、兄弟が餓死を前に最後の食料を奪い合い、醜く死んでいく。
かと思えば、違う光景も見られたりする。
「・・・ほら、サヨ」
「いいの、おにいちゃん」
「・・ああ・・・俺が死んだら・・・手を・・合わせてくれ」
「・・・うん・・・」
自分の食料を愛する者に食べさせ、自らの生を終えていく者もいたりする。
己の死を目前にして奪う者、奪われる者が現れ、
与える者、与えられる者が現れる。
自らの人生の最後、どう演出し行動するのか、その人が決めることだった。
徳川幕府は、寛永の飢饉の余勢を駆って南蛮移民を画策。
朱印船400隻を超えてたことも合わせて往復を増やしていく。
当然、人材不足に直面。
ここで、奇策。
士農工商の身分制に海(カイ)を加える。
“海” は、海外雄飛や北方開拓などの役を負う身分。
徳川幕府は、士農工商 ⇒ 海 ⇒ 士農工商へ身分を変更する制度を完成させてしまう。
この身分変更を徳川幕府の特権とした事から “海” 志望の農民や商人が徳川領内に流れ込む。
幕府は、参勤交代と “海” による北方開発で外様諸藩の勢力を削ぐ事ができると確信。
また朱印船に幕府の役人を乗せることで交易の動きを監視を強める。
海里ツカサ、永未ヨヘイは、朱雀の人間だった。
しかし、山田長政や南蛮貿易で利益を上げる勢力の後押しで幕府御用達の工作員。
改易で諸藩を細切れにしていけば徳川幕府は強固になり、
改易のしわ寄せで浪人が増えれば海外へと流れていく。
不良民を海外へと移送し、
幕府が求める物資のみ国内に運び込むのが仕事で、
他にもかなり阿漕な事をやって、かなりの悪党。
港沿いの屋台ソバは、潮風も風味のうち。
ズル〜 ズル〜 ズル〜
「・・・永未〜 江戸の生活は、悪くないが、なんとも、窮屈だな」
南国から来た海里は気になるのか袖の下を弄ぶ。
湿気の多い日本で着流しな和服は道理に適っていた。
「煩わしい人間関係がいやで海外に出たヤツもいたな」
「しかし、汗を掻くな。ベトナムだって、こんなに暑くないぞ」
「湿度が高いからだ」
「・・・弁才船だ」
「あれは、千島の氷と魚を運んでいるな。夏の江戸だと高値で取引される」
「ふ 飢饉だというのに代金の米が蝦夷に行くのか。諸行無常だな」
「諸行無常なのは、苦しいときほど外征したくなる事だな。幕府も、明介入を画策中らしい」
「何するんだ? 強盗か?」
「さぁ 庶民の目を外に眼を向けさせたいのかも、このまま飢饉が続けば本格的に動くかもな」
「飢饉で食えなくなれば間引きしたくなる」
「船が少なければ国内で磨り潰し。船が余計にあれば海外を踏み躙るか」
「売り買いという方法もあるぞ」
「売り買いするときも、だろう」
「まぁ 南蛮貿易に不利益にならなければ良いが・・・」
「どうせ、世界地図を見て占領しようと考える人間がいても、そこに住もうという人間はいない」
「そりゃそうだ」
「軍事力で制圧しても朝鮮出兵と同じで長続きはしないよ」
「まして、自分が、そこに住むなど想像の範囲外だからね」
「外征なんて、そんなもんだろう」
「しかし、弁才船か。怖くて乗れないな」
氷と一緒に運ばれた魚が日持ちする事が分かると、
莫大な利益が北方開拓船から得られていた。
「だが、弁才船も洋式を取り入れ、随分と、マシになったそうだ」
「・・・しかし、次は、どうするかな」
「会津で騒動が、あったらしいが?」
「じゃ 取り潰しか、引き抜きに行くか」
「世間じゃ 俺たちは、徳川の犬とか、藩潰しの悪魔みたいに言われているぞ」
「ふ 結局、徳川の子飼いの者を諸藩送り込んでも、淀めば幕府に反旗を翻したくなる。そういうものだ」
「そのときは、もう一度潰して次を送り込む」
「徳川幕府は、かなり持ちそうだがな」
「難癖つけて、諸藩を細分化していけば、大きいのは徳川だけ」
「大きな藩も幕府に付け込まれないように必死だな」
「薩摩、毛利、伊達、加賀は、面従腹背だろう」
「敵がいなくなると幕府は、だらけて内紛で自壊していく」
「幸か不幸か大型の外様が幕府を緊張させ、公儀の分解を引き締めているのさ」
「なるほど」
「そろそろ、時間じゃないのか」
「ああ、越後屋に行かないとな」
「上玉がいるかな」
「いるんじゃないか、飢饉で食いっぱぐれが多い」
「しかし、男は朱雀に来やすいが女がいないと居つかないからな」
「南蛮物で女と交換なら悪くないさ」
「金や銀との交換じゃなく娘達なんだからな」
「幕府も、どうせ飢餓で死ぬのなら朱雀に送ればいいものを・・・」
「武家諸法度と綺麗事で成り立つ幕府が直接、人身売買できるわけないだろう」
「そりゃそうだ」
若くて健康な娘であれば、ヨシだった。
もちろん、幕府は身売り禁止令を出していた。
しかし、人の売買は、それなりに行われる。
飢餓状態でも養えるものがいる “身売りするな” は “餓死で死ね” に近い。
買う方が良心的な気もしないでもない。
女達を酒樽に詰め込み、沖の朱印船まで運び、朱雀に連れて行く。
結果的に朱雀に居つく日本人も増えて、朱雀に来たがる日本人も増える。
海外に日本を作るのは綺麗事ではなかった。
朱雀の庄
朱印船が港に着くと海里ツカサと永未ヨヘイが降りる。
そして、幕府の役人も降りてくる。
「海里。久しぶりだな、ここも」
「ああ、随分と日本人が増えたんじゃないか」
「日本は、飢饉らしいからな」
「しかし、看板が日本語だと本当に日ノ本という感じだな」
「海里殿。永未殿。ここが朱雀か、暑いでござるな」
「南易奉行。分かっていると思いますが」
「分かっておるよ。旧豊臣家も、キリシタンも、関係ないのだな」
「今では、同じ境遇じゃ」 どんより
「朱印船の行動だけです」
「その方が身のためという感じじゃな」
「ええ、幕府は少数派ですからね」
「しかし、米は、あるようじゃの」
「飢饉とキリシタンは関係ありませんよ。旧豊臣ともね。幕府の失策です」
「わかっておるが自然には勝てん」
「そう言わんと、幕府の権威が失われて立ち行かん」
「まぁ 飢饉を逃れて、こっちにくる日本人が増えたのは好都合ですがね」
「あの娘達もか?」
「“安く連れて行ってくれ” と言われたので・・・」
「・・・まぁ そういうことにしておくか」
朱雀の庄の評価はいくつもあり、いくつもの視点がある。
南蛮貿易は、日本の金銀を減らしていた。
しかし、一部の特権者に富をもたらしていた。
徳川幕府は、キリシタンと不穏分子の排斥地。
程度の低い囚人の島流しの地で朱雀を選ぶ。
そして、仮に朱雀に反徳川、反幕府勢力が朱雀に集まっても、
南蛮貿易の中継地であることが望ましいと妥協していた。
日本からの物資の多くは朱雀に集められ、
朱雀から東南アジア全域に広がっていく。
同時に日本向けの物資も、一度、朱雀に集められて日本へと向かっていく。
オランダ、イギリス、ポルトガル、スペインも、日本物と呼ばれる商品の買い付けと、
日本向けの商品を朱雀に集めて、町並みを大きくしていく。
この方法だと、偏西風待ちで季節に囚われず、
南シナ海だけの輸送で物資を集積できた。
そして、地場の海洋民族は小型船が多い。
東南アジア系のピニシ船、プラフ船。
そして、イスラム系のダウ船は、小回りの利く小型船として南シナを行き交う。
海洋民族は、この朱雀を中間に置いた交易で利益を上げ、朱雀との関係を強めていく。
1644年
清国が起こり、明は南明へと逃れ、衰退していく。
少数民族の満州族に支配されていく漢民族は大混乱を起こし、
東南アジアへと足を向ける者が現れる。
アジア最大勢力の漢民族は、1000人に1人が動いただけでも周辺国に大きな影響を与える。
1645年
日本で建造する朱印船は、和洋中折衷で建造する船大工で性能にバラツキがあった。
しかし、質的な向上は進み、
総じて準ガレオン船に近付いていた。
それでも、ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリスのガレオン船と比べると負け、
何より大砲の威力は圧倒的だった。
日本商船隊は、船数と資本で勝負し、欧州勢と東南アジアの諸部族を圧倒していく。
“海” が樺太に上陸する。
参勤交代と並んで北方開拓は諸藩の力を削ぐ。
同時に開拓が成功するれば、そのまま禄として与えることもできた。
封建制度の主従関係は土地を介して定められる。
土地で産するものが禄になるため、米を産しない土地は低く見られた。
しかし、海産物と木材が豊かで、その財収で米を購入することができた。
そして、樺太で燃える水が発見される。
「すげぇ 黒い水が燃えたよ」
「においが酷いな、煙も多い」
「暖房に使いたいけどな」
「・・・無理そうだ」
また、江戸、大阪、名古屋など、大消費地が作られると資本集中が進み、
そば、小麦など大量に消費されるようになっていく。
米を産しないはずの北方域に米が届けられ、
米が食べられる現象が起こる。
もう一つの北方域は、扶桑(カムチャッカ)半島
こちらでも、ロシア人との接触が始まっていた。
日本人 “海” は、数で圧倒しつつ、城砦を建設してしまう。
国境線は、まだ定かではなかった。
しかし、日本人が建設する城砦を食い止められる力は、ロシア人になかった。
もっとも皮革需要も献上品としての価値があるのか、取引が行われ、
ロシア人の活動も認められていた。
東南アジアで、二階建て、三階建ての家屋は珍しい。
その家屋が道を挟んで連なっていた。
京都に似たたたずまいの神社仏閣も建設されつつあり、
欧州勢の商館が置かれ、
南国の食物もあり、日本の食材も増え、観光地にもなっている。
タイ料理もあれば、日本料理も食べられる。
露天
カレン・マルダー(30)は混血らしく色白な褐色。栗色の髪で大柄の美人。
白人の男性と結婚しているが家に居つかず、
子供はメイド任せ、阿漕な事をしている。
そして、資本と物流の中心になりつつある朱雀の都に呆れる。
海里も、日本酒、ベトナム酒、ワインをチャンポンにし、
ナッツを頬張るカレン・マルダーに呆れていたが・・・
「朱雀も、随分、大きな町になったものだ」
「アユタヤから日本人が逃げ出した頃は、着の身着のままで掘っ立て小屋だったのに・・・」
「今はアユタヤの町も抜いているよ」
「ふ まったく、これだけ日本人がいたらアユタヤも負けるだろうな」
「欧州勢も、内戦がなければ、もっと、多いだろう」
「イングランドの国王軍と議会軍の内戦は、オランダの海洋支配にとって好都合だよ」
「オランダは、どっちの応援?」
「応援しているのは、イングランドの内戦じゃ ずっと戦争していてくれたら助かる」
「欧州勢同士で協力しないのか?」
「無理だな。日本人と漢人と同じじゃ」
「確かに仲は良くないな。というより金次第か」
「オランダ海軍が強くても、それはスパイスの利益だ」
「水兵は他国の1.5倍から2倍の賃金で支えられているだけだ」
「オランダは、イギリスと戦うと不利?」
「取引量が増えて欧州のスパイス価格は低下している」
「自業自得だが賃金が減ればモラルも下がる」
「海戦で勝ってもオランダ人が少なければ船も少なくなる」
「じゃ オランダが有利なのは、あの大きな船と大砲か」
「いや、オランダの船は、本国の港に合わせて吃水の低い船が多い」
「欧州では、もっと大きな戦列艦が動いているよ」
「ほぉ こりゃ しばらくは数で勝負だな」
「といっても、日ノ本も木材が足りなくなっているらしいが・・・」
「経済を不自然に大きくすると、他にしわ寄せがいって、結局、自然のバランスを崩してしまうの・・・」
「イングランドでは大樹が消えているそうだ」
「この東南アジアも、この朱雀のおかげでバランスを崩しつつある」
「しかし、ここだけ、日本だな」
「まぁ これだけ大きな町になれば、人も、物も、集まるだろう」
「違うな。人や物が集まるのは、損得抜きで契約が守られるからだ」
「この町に、それがあれば人を惹きつける」
「信頼関係が?」
「まともな人間は泥棒や嘘つき。人でなしのそばに居たくないものだ」
「なるほど」
「金に目が眩んで阿漕な事が増えれば、この町も廃れていくだろうよ」
「だれも泥棒を信用したりせず、寄り付かない」
「ふ もっとも、この朱雀も居直り強盗。正しいといえないがね」
「他人や法からみれば、自分本位な正義は悪で、たいていの人間は悪党じゃな」
「かといって、法を正義に置けば自他共に窮屈じゃ」
「仲間同士で正義ぶれば、仲間以外は敵になり悪党になる」
「生きていける糧になるなら、間違っていても死ぬまで続ける、ということもある」
「愚かじゃの、人間は・・・」
「それは、散々、海賊をやって得た結論?」
「そうじゃ 相手に恐怖心を植え付けて礼儀正しくさせる。無駄な血を流さずに済む」
「朱印船が船団で往復するようになって良かったよ」
「2隻以上だと逃げられたとき、ばれてしまうからな」
「そういえば、朱印船が速くなってきたの」
「オランダ船に追いかけられないように、細長くなってきたらしい」
「大砲も少ない分、物も積める」
「ふ このアジアで日本と対抗できる海上戦力がなければ、敵対すべきで、ないだろうな」
「助かるね」
「清国が興って間もないが、それ次第かの」
幕府とオランダが戦いになる可能性は、少なからずある。
当然、朱雀も、選択を迫られるが戦えば、他の勢力が漁夫の利を得る。
互いに一定の距離を保って、小規模な利権争いで様子見が続く。
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月夜裏 野々香です
“お主も悪よの〜” の悪徳商人代表といえば、越後屋、大黒屋、三河屋、桔梗屋でしょうか、
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でした。
もう、有名税でしょう。
ランキング
第04話 『日ノ本 島原の乱』 |
第05話 『朱雀の庄』 |
第06話 『瑞穂の庄』 |