月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想戦記 『国防戦記』

 

 

 

 第02話 1943年 『もう、縮み思考たい』

 02月17日レキシントンU

 02月25日プリンストン

 

 「トラックは、ゼロ戦300機揃えて、空襲を妨害するだけで十分だな」

 トラック司令は大本営と数度の交渉で機体を交換。

 ゼロ戦270機。1式陸攻10機。99式艦爆20機。三式指揮連絡機30機を配備させてしまう。

 1943年3月。機体を受領。

 

 そして・・・

 1943年03月31日ベロー・ウッド

 1943年4月。

 1943年04月15日ヨークタウンU

 1943年05月24日バンカー・ヒル

 1943年05月28日カウペンス

 アメリカ機動部隊は、ラバウルを占領し、マーシャルを占領する。

 対する日本・・・

 官僚は、一度、前例が作られてしまうと自己正当化で類例を作ったりする。

 日本海軍は、旧式艦艇を座礁させて埋め立て時間稼ぎを図った。

 トラック、扶桑、山城、浅間、常磐、

 パラオ、(日向)、摂津、八雲、吾妻、

 ビアク、伊勢、敷島、春日、日進、

 扶桑 艦橋

 「アメリカ軍は、ラバウルとマーシャルをようやく占領か、無人の島なのに攻め足が遅いな」

 「エセックスが建造されているけど、慣熟訓練を計算するなら、こんなものじゃないか」

 「アメリカ軍は正攻法で勝てる。兵站ありきで侵攻するから無理攻めはしないよ」

 「アメリカ軍がポナペに上陸したらトラックまで710kmだ。空襲が始まるだろうな」

 「ポナペからも陸軍を後退させただろう。大本営は、むくれているぞ」

 「ポナペに将兵を置けば、ポナペを守るためマーシャルに将兵を置きたくなる」

 「マーシャルに将兵を置けばマーシャルを守るためギルバートに将兵を置きたくなる」

 「それは馬鹿だ」

 「トラックに将兵を集中した方が輸送も楽だけどね」

 「しかし、浅間、常磐まで持ってくるとは解体して資材にすれば良いものを・・・」

 「旧式戦艦も、救国の戦艦も解体したくなかったのかも」

 「せめて、戦って死ね、だろう」

 「いや、官僚ポストと出世の足場を失わせただろう。恨まれたぞ」

 「軍上層部は、ライバル蹴落として子飼いの腹心で足場を固めたがるからね。邪魔されたよ」

 「戦争中に権謀術数か、馬鹿どもが・・・」

 「伊勢と日向も巻き込まれて辛かろう」

 「いいよ。軍上層部は、対価もなく庶民にフライパンや鍋を拠出させて生活を苦しめやがる」

 「庶民はしたたかだけど、鍋に穴が開いたら直して使っている」

 「しかし、軍上層部も痛みがないとね」

 「戦艦を埋め立てれば、国民も引き締まって士気を保ちやすいか」

 「ミッドウェー海戦も勝った事になってる。そんなに料亭で宴会がしたいものかな」

 「嘘ばっかりの勝った、勝ったの転戦続きじゃ 庶民のモラルも下がるし、無駄も増えるよ」

 「自業自得だな」

 「あとは、鉄筋コンクリートと土嚢で、どこまで耐えられるかだな・・・」

 「外側だけでなく、艦内も鉄筋コンクリートと土嚢を敷き詰めている」

 「好きなだけ爆弾を落とせばいいよ」

 「山城は、ディーゼル発電を追加できたのか?」

 「ああ、発電機もモーターも大型に変えたし、重量が増しても砲塔は、回せる」

 「追加装甲は、次の便で持ってくるだろう」

 「薄い装甲板を重ねて、どの程度効果があるかわからんが」

 「電気溶接だから微妙だな・・・怪我人の方が怖いよ」

 無線機から通信が入る。

 『こちら、北見機。北方150km。敵機来襲!、数は、約200機・・・』

 「北見機。すぐに退避しろ! 迎撃機を出撃! 30分で来るぞ!」

 春島、夏島の飛行場からゼロ戦21型133機。ゼロ戦32型141機が出撃していく。

 燃料を減らして出撃するゼロ戦は、軽やかに上昇するとトラック上空に待機できた。

 トラック沖

 空母エンタープライズ、ホーネット、サラトガ、エセックス、ほか護衛艦14隻、

 ワイルドキャット120機とドーントレス135機、アベンジャー33機が発艦し、トラック上空に達する。

 制空権の奪い合いは、戦闘機同士の運動エネルギーと数がモノをいう。

 トラック上空は、500機以上の航空機が飛び交い。

 ドックファイトが展開されていた。

 扶桑 艦橋

 海軍艦長と陸軍の扶桑守備隊長は、それなりに仲良くなって空を見上げる。

 「・・・こりゃ凄い」

 「壮観ですな」

 「敵基地攻撃に行かせてたら、こういう光景は見られんな」

 「戦況は、悪くないようです」

 撃墜されているのはワイルドキャット、ドーントレス、アベンジャーばかりだった。

 「無理攻めをすれば、ムラができる。ムラができると無駄になる」

 「無理をせず待ち伏せしていた方が、ムラも無駄も少なくて良いに決まってる」

 「・・おっ 来た」

 アベンジャー雷撃機がゼロ戦に追いかけられながら扶桑に向かってくる。

 「勇敢ですな」

 「んん・・・あっぱれ」

 投下された魚雷が海面に潜り込み、まっすぐ扶桑に向かって来る。

 命中すると思われた魚雷は、途中で爆発、海水を噴き上げてしまう。

 扶桑の周りは、青黒く染められた土嚢が配置され、砂が撒かれていた。

 深いように見えて実は浅く、魚雷は途中で爆発する。

 ゼロ戦の20mm機銃掃射がアベンジャーの左翼を散らして圧し折り。

 錐揉みした機体は海面に叩きつけられ、海水を噴き上げた。

 着陸したゼロ戦からパイロットが飛び降りる。

 「給油と装弾急げ!」

 「はっ!」

 「予備機はあるか?」

 「いま、出撃したのが最後です」

 「・・・送り狼で遅れたか」

 20mm機銃は60発装弾と100発装弾があった。

 どちらにしろ、景気良く撃つとすぐなくなる。

 基地防空は、再出撃など基地防空戦ならではの戦い方もできた。

 ゼロ戦21型133機は、早々にドーントレス135機、アベンジャー33機を撃墜。

 手の空いた21型は、暫時、戦闘機同士の戦いに参戦し、

 ゼロ戦32型141機とワイルドキャット120機のドックファイトに割り込んでいく。

 そして・・・

 ゼロ戦は、帰還しようとするワイルドキャットを追撃して撃墜していく。

 その日のトラック防空戦は、アメリカ機動部隊最悪の日と呼ばれ、

 アメリカ艦載機の壊滅によって終息した。

 

 

 エンタープライズ 艦橋

 ハルゼー提督は呆然と飛行甲板を見下ろした。

 トラック空襲で72機が出撃して、帰還したのは、1割にも満たない6機。

 空母4隻を合わせて259機が出撃。未帰還機237機。帰還した艦載機は22機。

 「提督。ゼロ戦に袋叩きにあったそうです。迎撃のゼロ戦は300機以上だと・・・」

 「待ち伏せされたのか。ワイルドキャットの防弾は世界最強のはず」

 「それが、こんなに撃墜されるのか」

 「こちらの戦果はゼロ戦20機ほど撃墜。トラックに投弾できた爆撃機は18機」

 「戦果は?」

 「確認できませんでした」

 「敵艦隊は?」

 「戦艦2隻、巡洋艦4隻、ほか、駆逐艦約26隻、輸送船10隻の停泊を確認しました」

 「それだけか?」

 「はい」

 「日本軍は、ソロモン、ラバウルから後退」

 「トラックの艦隊は、攻勢を掛けてくるような規模ではない・・・」

 「東洋のジブラルタルと自慢する割には、中途半端な戦力です」

 「日本軍は、トラックで持久戦だろうか」

 「そのようです」

 「・・・撤退する」

  

  

 扶桑 艦橋

 「アメリカ軍の艦載機350機以上を撃墜したそうです」

 「アメリカ空母はエセックスを入れても4隻。350機も撃墜できるわけがない」

 「まぁ 戦果を真に受けるのも、どうかと思うがね」

 「落ちているアメリカ軍機を調べることもできるがね、海面に落ちた機体の方が多い」

 「目算と概算で、正味250機以下だな」

 「しかし、戦果を過大に報告するのは仕方ないよ」

 「撃墜されたゼロ戦は12機。山城に至近弾ひとつ。思ったより被害が少ない」

 「このまま、攻撃失敗続きだと、アメリカ機動部隊の提督もクビを切られるな」

 「良い傾向だ」

 「でも、ポナペに上陸してアメリカ軍が基地を建設すれば、連日連夜、本格的な防空戦になるよ」

 「トラックの飛行場を拡張すべきだろうな」

 「警戒体制に戻そう」

 「一休みするか」

 「悪くない」

 海軍と陸軍の将校は、艦橋を降りていく。

 扶桑、山城の主砲が健在であれは、トラックで最重要の砲台だった。

 最初から戦艦を建造せず、

 アメリカ軍の侵攻ルートに砲台を配置した方が良かったと思えるほどであり、

 扶桑も、山城も、装甲の薄い艦首、艦尾に搬出搬入扉を作り、堤防が造成されていく。

 埋め立てられているとアメリカ軍にバレても困るのか、微妙に偽装されていた。

 少なくとも魚雷で破壊される心配はなかった。

 

 航空戦が終わると将兵が動員され、墜落機の機材集めが始まる。

 ドントーレス爆撃機が波間に漂っていた。

 「パイロットは?」

 「不時着のショックで死にかけている・・・たぶん、駄目だな」

 「まだ浮いているな」

 「・・・浮き袋は残っている。20mmを受けているのに頑丈な機体だな」

 ランチがドントーレスを引っ張り、海岸へと引き揚げさせていく。

 将兵たちが海水で濡れた部品を一つずつ油で洗浄し、部品ごと集めていく。

 「日本ってビニール巻きの銅線も製造できないんだな」

 「プラグも、ベアリングも、オイルも最高だな」

 部品ごとに分けられ、部品の山が作られると笑いが込み上げてくる。

 舶来物は、お宝だった。

 防空戦の特典は、この拾い物を生かせることにあった。

   

 

 トラック基地

 「大きな空中戦だったわりに被害は少ないな」

 「南洋の本拠地が爆撃されるなんて」

 「修復用ドックもない口先だけのみすぼらしい本拠地だよ」

 アメリカ機動部隊の空襲で南洋の楽園トラックという気風が吹き飛んでしまう。

 実のところ、爆撃された方が良かったといえる。

 テリトリーを広げ内側に聖域を作っても、そこが根腐れていく。

 その大元の大本営が、もっとも腐敗していると思わぬでもない。

 命がけで守ろうとしている帝国が腐っていくなら守る意欲も、守る価値も半減する。

 誰かに犠牲を強いなければ国が滅びるとしても・・・

 将校らが前線の将兵を犠牲にした戦果を保身と出世のネタにし、

 酒盛りしているのだから呆れる。

 漁船が網を掛けて魚を攫っていた。

 この島の守備隊を食わせるには足りない。

 しかし、足しになった。

 トラックの料亭。

 扶桑、山城の艦長と守備隊の陸軍将校たち。

 「ニューギニアから撤収中とはいえ、トラックの人口密度は多い」

 「土木機具も少ないから3交替で数に任せて一気に要塞作り」

 「兵隊を減らしていくのが効率が良いからね」

 「しかし、御二方とも戦艦の艦長で出世コースでしたので、なぜ、僻地に?」 陸軍将校

 「空母と航空機が主力で戦艦は暴落」

 「しかも、欠陥戦艦で撃ち合いなんかさせられてみろ。犬死だよ」

 「せめて、足掻きたいと?」

 「それでも、旧式戦艦を後任に押し付けて、赤レンガに引っ込めば勇退でしたのに・・・」

 「ババ抜きのババだな。そういうのにウンザリしてね」

 「自分のシマを聖域化させるため、後任を前線に押しやってテリトリーを広げるか・・・」

 「よくある話しだな」

 「しかし、御家族のことを思えば、そうした方が・・・」

 「家族から見限られるし、部下には恨まれたな・・・」 自嘲

 「その人事が繰り返されて攻勢の限界まで地場を広げていく」

 「庶民も聖域の拡大を望んでいるしな」

 「いまの時代は、軍の方が自由ですからね」

 「軍隊は、もっと自制と統制されるべきなんだがな」

 「日本は、3月事件辺りから、おかしくなったと考えるべきでしょうね」

 「政府も、軍官僚も、島国で逃げられない国民の我慢強さに甘えているのだろう」

 「生かさず殺さずの重税で生殺しだ」

 「なあなあの事勿れ社会で押し切ったのだろう」

 「いまじゃ 軍事費で国庫食い潰してる」

 「日本人は、長いモノに巻かれやすいですし、大人しいですから」

 「庶民を抑圧するより、スターリン並みの軍部大粛清が良かったかな」

 「統制されていないならヤクザ組織と同じだ」

 「それがアメリカと戦争では、話しにならんよ」

 「海軍組と陸軍組ですか?」

 「どこまでアメリカ軍に抵抗できるやら」

 「アメリカ軍を烏合の衆と思いたいが・・・」

 「珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦で、そうでないことを証明している」

 「アメリカ軍が烏合の衆なら真珠湾攻撃自体ない」

 「正々堂々と正面から艦隊決戦を挑んで勝っているよ」

 「というより、烏合の衆だったアメリカ人を真珠湾攻撃で反日団結させたんじゃないか」

 「負けても正面から戦いを挑んでた方がマシか」

 「奇襲作戦は、日露戦争以来、海軍の伝統ですからね」

 「貧乏な証拠」

 「大国にケンカを売るのも伝統か?」

 「あはは・・・」

 日本の輸送能力は、前線をトラック、パラオ、ビアクに集中しても驚くほど低かった。

 内地にないモノは輸送できない。これがないモノねだり。

 内地と策源地との往路で輸送船を使い消耗する。

 加工した物資を国内消費分、戦地消費分、策源地に分けて輸送する。

 当然、兵器も武器弾薬も足りない。

 戦力どころか、この消費分の維持費も足りない。

 開戦以前から日本経済は、息も絶え絶え、

 このままだと一家離散まで追い詰められて、戦争。

 日本の自業自得とか、正しいとか、間違っていないとか、ほかの国が悪いとか、

 原因を追究しても解決できず保身、偽善、利己主義で解決する道が閉ざされる。

 追い詰められた日本のため、自ら前線に立ち、命がけの自己犠牲を強いることができた。

 しかし、軍部の拡大を疑問視するような自己否定はできない。

 それだけの話しといえる。

 「内地の様子は?」

 「配給項目が増えたそうですよ」

 「やれやれ、砂糖菓子くらい食べたいだろう」

 「サトウキビでも植えるか」

 「日本行の輸送船に載せてやれば、少しは庶民の手に入るだろう」

 「まさか。しかし、輸送船は、トラックに来やすいかもしれないな」

 「砂糖菓子は、もっと日本人を間引きしないと駄目なんじゃないですか?」

 「間引き対策で戦争は、困るよな」

 「人口が増えて、子供のうちならともかく、大人になれば食べる量も増える」

 「現実に食えなくなるのはしょうがないですよ」

 「それは軍人もだ」

 「兵力を大きくして出世していけば賃金も増える」

 「国庫じゃ足りずに膨張政策だ」

 「結局、弱い者が犠牲になるな」

 「婆捨て爺捨だと社会崩壊。子捨て山だと一家断絶だな」

 「軍事費、ブロック経済、経済制裁の三重苦が大きいよ」

 「結核患者も急増中で足手まといを抱えて戦うことになる。医療技術の低さは致命的だな」

 「戦争を防ごうと思えば、1000万単位の間引きしかないよ」

 「仮に人命尊重とか、綺麗事をいう奴がいなくてもだ・・・同胞を1000万も殺せるわけがない」

 「いや、政争は綺麗事で引き摺り落としだからな」

 「しかし、1000万単位になるとな・・・」

 「伝染病でもいいよ」

 「少しは、医学も発展してないと列強として恥ずかしい」

 「結核は?」

 「年に15万くらいじゃないか」

 「全然、毒性が足りねぇじゃん」

 「日本人の寿命が長過ぎるんだよ。平均寿命が42、3だっけ?」

 「間引きしているのが即わかりな寿命だな」

 「でも、それくらい生きたいよな」

 「人口減らせたらね」

 「最近は、ババァも、孫の面倒を嫌がるからね」

 「いや、それ、昔からだから」

 「まぁ 人間の性根は、そんなに変わらんか」

 「光の部分で “自分が生きる” は、闇の部分で “他者を殺す” に近いからね」

 「食糧がなくて子供を殺すのも親を殺すのも忍びなければ、隣家を奪うかだよ」

 「大人だって良いもの食べて、良いもの着たい。子供を生まなかったり、殺したりだ」

 「子供だってある程度大きくなれば力関係が変わる」

 「飢饉になれば、爺捨て山、婆捨て山だろう」

 「まぁ 親子、夫婦、兄弟は、昔から家庭内で殺したり殺されたりだからね」

 「やっぱり多いのは、子殺しだろう」

 「隣家じゃ 子供を貰って始末料で生計を立ててたっけ」

 「身内でも衣食住が脅かされたり、自由を奪われたりすれば殺し合いになるよ」

 「そういえば始末されず、そのまま、育てられた兵士がいてな。弾除け代わりにそばに置いてる」

 「あいつか、いいなぁ」

 「しかし、内輪もめが嫌だからってアメリカと戦争とはね。今度は勝ち目ないぜ」

 「欲の突っ張り過ぎだよ」

 「だけど、日本のギリギリ状態は、戦争したからって、どうにかなるものじゃないよ」

 「工業とか商業が発達すると生産量と消費が増える」

 「紳士ぶっても人口が生産量を超えたら、やっぱり、同じ問題に行き着くよな」

 「食糧自給率で言うと、そんなものか」

 「いや、近代化は資本、土地、労働、食糧を集約する」

 「無理をすると、生きていけない人間が増えるよ」

 「新規産業を興さないとな」

 「新規産業を興すには資本だけじゃ足りない。想像力と知識が必要になる」

 「人生を賭けるだけの動機。実行する統率力。ノウハウも必要になる」

 「組織を組上げるのも至難の業か」

 「いまの日本だと軍属以外の産業は収奪される、無理かな」

 欲望と倫理観の狭間で人は行き迷う。

 権威主義は従順と忠誠を求め、権威を脅かす者を排除し、

 卑屈な嘘と愚かな傲慢をはびこらせていた。

 忠臣は、馬鹿でも良く馬鹿の方が都合が良かった。

 この頃の日本は、面積当たりの人口と生産力の関係で追い込まれていた。

 移民の道と市場も閉ざされ、生産力の多くが軍事費に奪われていた。

 軍属の利益誘導と私腹肥やしが幅を利かせ、逆らうモノを非国民と売国奴にしていく、

 自業自得といえなくもない。

 しかし、適当な回避策で模範を探せば、スターリンの大粛清だったりする。

 とはいえ、採掘現場、建設現場で2000万人を酷死し、

 国力増強と同時に人口と食糧問題が和らげるなど、わかっていても、できないものだ。

 大東亜共栄圏を可能にするには予算が必要であり、

 予算がなければ絵に描いた餅でしかない。

 五族協和、王道楽土も日本の身の丈を超える大義名分だった。

 できもしない中途半端な正義感が日本を追い詰め、

 現地調達は、強盗扱いされてもおかしくない。

 占領地では、ヤクザのように弱者を追い詰め、

 説教強盗を続けなければ財政再建もできなくなっていた。

 日本製品は、欧米・中国・東南アジア相手に押し売り強盗で生計を立てていくしかなく。

 占領地を搾取しない限り、借金地獄から抜けられない。

 アメリカ軍の攻勢をトラック島で凌いでも枝葉に過ぎなかった。

 日本の腐り度合いが変わらなければ自滅の道しか残されていない。

 局地戦の将校がどう行動しようと、日本は変わらない。

 せいぜい、トラックの善戦が日本の再起に繋がれば良いと信じるだけだった。

 

 

 

 1943年5月12日

 アメリカ機動部隊は、ラバウルとマーシャルに配備され、

 侵攻のための物資を蓄積させていた。

 日本機動部隊は、パラオを基地にとし、

 とぎれとぎれの物資輸送と給油で整備を続ける。

 そして、アメリカ軍は、日本機動部隊のローテーションの隙を突き、

 ポナペ島に上陸し占領した。

 扶桑 艦橋

 「ついにポナペ島に取り付いたか。いよいよだな・・・」

 「第8艦隊が出撃許可を求めています。夜襲なら勝てると」

 「却下だ」

 「地雷を埋めているだけですから。このままですと一か月以内にポナペから空襲を受けますが」

 「大本営は反撃せよ、と五月蠅いよ」

 「しないのですか?」

 「まさか、戦力を消耗しきれば2年もたないよ」

 「海軍将校は、攻勢一点張りかと思えば・・・」

 「戦果を挙げないと無能だと烙印を押されるのが怖いのだろう」

 「残念ながらトラックで求められているのは年月であって戦果ではない」

 「欲を出しても良い事などない」

 「アメリカ機動部隊は、F6Fヘルキャットを艦載機に乗せているとか」

 「数が互角ならゼロ戦でも勝てるよ」

 「性能差があるのでは?」

 「そんなものは、精神力で補えばいい」

 「ようやく海軍将校らしくなりましたね」

 「最後にモノを言うのは精神力だ」

 「そういえば、山本長官が視察に来るとか?」

 「断わったよ。トラック航空部隊を自己満足で磨り潰されてたまるか」

 

 06月17日 モンテレー

 

 6月15日

 日本の参謀本部がアメリカ軍の反撃を1943年からと試算したのは希望的観測でない。

 新規戦艦建造に2、3年、慣熟訓練に半年。

 潜水艦の標的が主力艦になったのも、

 建造期間を逆算すれば損失比はともかく。理に適っていた。

 もっとも、主力艦が戦艦より建造期間が少なくて済む空母になると計算が変わる。

 どちらにしろ、日本軍が無駄に疲弊せず。

 攻勢の限界を越えない戦線で戦った場合の試算だった。

 「艦長。大本営が1式陸攻によるポナペの夜間爆撃を検討するようにと」

 「無駄に消耗するだけだよ。敵艦が攻撃してくるまで待つべきだ」

 「いい加減にしないと。大本営は艦長を不信任するかもしれませんよ」

 「そりゃ いい。全部投げ出して自棄酒で愚痴りながら余生を終えるか」

 アメリカ軍はトラックに本格的な攻勢をかけられなかった。

 前作戦の未帰還機9割の損失は大きく、

 増強したアメリカ太平洋艦隊を気後れさせたと言える。

 そして、伊号の通商破壊で侵攻準備が遅れ、機体数が揃わなかったこと。

 夜間爆撃は、トラック島の視認が難かしく戦果が得られにくいことが挙げられる。

 戦艦ノース・カロライナ、ワシントン、サウスダコタ、インディアナの夜襲で艦砲射撃も計画された。

 しかし、扶桑、山城の砲台と日本水雷戦隊がトラックに存在することから躊躇し、

 艦砲射撃で飛行場を壊滅できなければ、翌朝の空襲成功の見込みも小さくなった。

 また日本機動部隊が出撃してくれば、逆の立場でミッドウェー海戦になった。

 最大の理由は、ポナペを占領し基地を建設してからでも良い、と見送られた。

 

 

 トラック環礁はポナペから700km。

 ポナペ基地を出撃したヘルキャットが編隊を組み巡航速度で往復2時間20分弱。

 高性能の無線機は連携を可能にし、

 巨大な機体と防弾能力はパイロットに安心感と余裕を与えた。

 余裕で往復できて、空戦に使える時間は1時間弱。

 夜のうちに出撃した大編隊がトラックを強襲しようとしていた。

 「日本軍機は、無線が弱い」

 「相互支援と連携で弱いから上手く回り込んで背後から撃墜しろ!」

 『了解』

 ヘルキャット316機、B24爆撃機213機、ドントーレス154機、アベンジャー55機がトラックに迫っていた。

 対するトラック基地も、昼夜問わず三式指揮連絡機を飛ばし、

 周辺海域で漁船を操業させていた。

 防空サイレンがトラック基地に鳴り響き、

 ゼロ戦21型212機。ゼロ戦32型243機が出撃していく。

 扶桑 艦橋

 艦長と陸軍の守備隊長が双眼鏡で空を見上げる。

 「ドーントレスとアベンジャーがいるということは、ポナペ航空基地と空母機動部隊の同時攻撃ですかね」

 「思ったより少ないな」

 「東からということは、敵空母機動部隊は東側にいるな」

 「ポナペ島は岩礁が多く港湾も小さいから。飛行場建設もサンゴ礁に梃子摺ったのでは?」

 「それは好都合。しかし、二段攻撃もある」

 「では、同じ規模の攻撃を受けると?」

 「ありうるだろう」

 「パイロットがいませんよ」

 「ないから、第一陣を全力で叩くしかないな」

 「弾を撃ち尽くしたらすぐに降りるように命令しているが・・・」

 「給弾は、時間がかかりますよ」

 「給弾に時間がかかっても予備機はある」

 「機体を乗り換えるだけでパイロットは再出撃できるよ」

 「第二陣まで持つとは思えませんが?」

 「残りは対空砲火」

 「やれやれですな」

 「まったく、国力の違いは恐ろしい」

 「おっ 始まった」

 トラック上空でゼロ戦とヘルキャットの航空戦が始まる。

 ヘルキャット編隊

 『隊長、日本軍機同士の連携は良いようです』

 「なんだぁ ・・・無線が聞こえてるぞ」

 『通話できないのでは?』

 「おかしいな」

 『わぁ!』

 「どうした!」

 『・・プツー・・・・』

 1000機以上の戦闘機と爆撃機がトラック上空を乱舞する光景は滅多にお目にかかれない。

 ゼロ戦21型の20mm機銃は60発。後期型100発。

 32型の20mm機銃は100発。

 20mm機銃、7.7mm機銃を撃ち尽くしたゼロ戦が着陸する。

 「ペラ回せ!!」

 パイロットは走って予備機に乗り換え、再出撃していく。

 「予備機は?」

 「全部、出払いました」

 「ち! 一番早い機体は?」

 「あと、5分ほど・・」

 あっという間に予備機がなくなってしまう。

 給弾、給油は、遅れ気味だった。

 機銃を使い果たしたゼロ戦が次々と着陸してくる。

 時折、ヘルキャットが機銃掃射で降りてくるが、零戦に追いかけられ、

 狙いも定まらず、すぐに上空に上がっていく、

 整備士は、爆撃や機銃掃射を避けつつ、給油と給弾で機体を整備。

 再出撃させていく。

 防空戦は、少ない20mm機銃をケチりながら使わずに済み、

 機会があれば敵機に撃ち込める。

 数十機編隊のB24爆撃機が水平線上から扶桑に向かってきた。

 主砲塔が6時から12時にかけて向けられていく。

 「こっちに向かってくる」

 「どの道、囮だよ」

 「囮だからって、大人しくやられるつもりか?」

 「そうさな。おい、砲撃準備は?」

 「完了しました」

 主砲に3式弾が送り込まれ、B24爆撃機に向けられる。

 扶桑は、副砲も機関砲もなかった。すべて陸に揚げられ、主砲塔だけ。

 代わりに周囲の島々から十字砲火が迫るB24編隊を包み込む。

 「てぇ〜!!」

 そして、砲撃。

 12門の主砲が一斉に火を噴く。

 陸軍の将校は、戦艦の主砲発射に眼を回し、

 数機のB24爆撃機がバラバラになって落ちていく。

 それだけだった。

 戦艦の主砲は、あまりにも遅過ぎて、高速で機動する航空機を追いかけられない。

 先行して小型爆弾数百発が投下され、

 スキップ・ボンビング(反跳爆撃)が海面を叩きながら襲ってくる。

 川切り遊びと同じ原理で、命中率は高かった。

 さらに水平爆撃で、大型爆弾が投下されて爆弾の雨が降り注ぐ。

 時がゆっくり流れ、

 B24爆撃機編隊が上空を飛び越えていく。

 「こりゃ凄い・・・」

 と感心しつつ、胃がよじれるほど外れを望み、恐怖で身を縮めていく。

 どう思おうと、物理的な法則に従って爆弾が迫ってくる。

 黒い爆弾が海面を蹴り立て、何度も弾んで扶桑に迫り、襲う。

 連続する爆発が扶桑を振動させた。

 ・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・

 意識を混濁している間に死んでいるかと思えば、幸運にも艦橋は無事。

 しかし、濛々と艦橋に吹き込む錆びた臭いと黒煙は、艦が破壊された証拠だった。

 よろけながら、立ちあがると、艦橋が僅かに傾いでいるのがわかる。

 数人が起きだしたが、怪我をしている者はいなかった。

 「・・・やれやれ。酷い目に遭った」

 生きて良い事があるならまだしも辛いことばかり、

 自分の死を覚悟した後の生還は味気ない。

 フラフラと艦橋から外を見ると酷いもので滅茶苦茶に破壊されていた。

 艦橋が無事なのが奇跡。

 「被害は、中波でしょうか?」

 「先にスキップ・ボミング(反跳爆撃)も受けたようですが」

 「225kg爆弾で目眩まして、上空から900kg爆弾の雨だな」

 「この艦は対空砲が搭載されていない。目眩ましは無用ですよ」

 「知らなかったんじゃないか」

 「春島の対空砲で、それになり落とされているようだ」

 B24爆撃機、数機分の残骸が海面に漂い。

 春島から数条の爆煙が立ち昇り、一帯に火薬の臭いを漂わせていた。

 航空戦は、終局しつつあり、

 アメリカ軍機は引き揚げ、ゼロ戦が上空を旋回する。

 「しかし、爆弾をたくさん搭載できるのは羨ましい。これだけやられるとは・・・」

 「アメリカの4発爆撃機は、日本の爆撃機の3倍から5倍近く搭載できる」

 「爆撃機としての機能を追及か。日本が機体性能を追求しているのと違うな」

 「それだけ機械の余裕がないということですよ」

 「しかし、何発受けたんだ? こりゃ」

 「・・・監視所の報告ですと。900kg爆弾6発。225kg爆弾21発だそうです」

 「こりゃまた。酷い」

 扶桑は、そういう破壊のされ方をしていた。

 山城の方を見ると、そちらの方からも爆炎が立ち昇り、被弾していると見当がついた。

 

 

 トラック沖

 (エンタープライズ、ホーネット、エセックス)、ほか18隻

 (サラトガ、ヨークタウンU、インディペンデント)、ほか15隻

 エンタープライズ 艦橋

 「提督。未帰還は、ヘルキャット66機、ドントーレス114機、アベンジャー35機です」

 「予想以上に酷いな」

 「日本軍機は、無線を使って相互支援をしていたようです」

 「日本は、まともな無線機を作れるようになったか」

 「波長から我が軍の無線機の周波数を変えたものだそうです」

 「なんだと」

 「捕獲したものかと」

 「・・・提督、ポナペ基地は、ヘルキャット143機、B24爆撃機89機を失ったそうです」

 「んん・・・」

 「提督。写真の現像が終わりました」

 スプールアンス提督は、現像されたばかりのトラック環礁写真を憮然と見つめる。

 「・・・戦艦が沈んでおらんぞ。破壊されておらぬではないか」

 「アベンジャーが雷撃したところ、海底で爆発。一本も命中しませんでした」

 「戦艦は、最初から海底に着底しているのでは?」

 「しかし、この戦艦は爆撃されているはずだ」

 「そうですね。土嚢が甲板の上に置かれているようですが・・・」

 「土嚢を計算しても腑に落ちん」

 「ええ、900kg爆弾の直撃を10発も受ければ、もっと、こう・・・?・・」

 「どうした?」

 「甲板の瓦礫と砂が多過ぎますね」

 「土嚢だろう。最初から積まれていたぞ」

 「爆発で艦の外に飛び出すのならともかく、甲板にこれだけ残るのは・・・」

 「んん・・・」

 「・・・それに、この海面の青黒さも妙ですね」

 「そうなのか?」

 「・・・青黒いインクで染めた土嚢置くとか、黒い砂を艦の周りに蒔いてるとしたら」

 「そりゃ 深いと思うだろう」

 「戦艦の周囲は、6mくらいの浅瀬かも・・・」

 「いや、土嚢で艦体を覆ってしまえば水位は2mもないかもしれませんね」

 「まさか」

 「この戦艦は撃沈不能です」

 「たぶん、艦内に鉄筋コンクリートを流し込んでいるはず」

 「バカな・・・」

 「煙突から煙を出していますが航跡がない。動かないのではなく動けないのでは?」

 「嵌められたのか?」

 「たぶん、情報が正しいとすれば、パラオ、ビアクの戦艦も同じかもしれませんね」

 「何と言うことを・・・」

 「トラックを無視して、マリアナ諸島を狙うのが良いかもしれませんが?」

 「トラックは、潜水艦基地でもあるんだぞ。ここを無視出来るわけがない」

 「そういえば最近の日本潜水艦は通商破壊ばかり」

 「艦隊攻撃をするかと思えば予想と違いますね」

 「ふ 駆逐艦に守られた機動部隊を攻撃する潜水艦は馬鹿野郎だよ」

 「そんな命令を潜水艦に下す奴はもっと馬鹿だ」

 「商船隊の被害は多いですな」

 「まだ、作戦可能な許容範囲ではあるよ」

 「今作戦は?」

 「撤収する。戦艦2隻の主砲塔も半分が残っている」

 「旧式戦艦を6隻持ってきてますが?」

 「いま、機動部隊の艦載機は260機弱だ」

 「この状態で日本機動部隊が来るとまずい」

 「・・・攻撃は失敗ですか?」

 「攻勢が早過ぎた。そう考えるべきだろうな」

 ミッドウェー海戦の勝者スプールアンスは攻撃失敗を認める。

 第一次攻撃の戦果が乏しく、

 航空機の損失の大きさでアメリカ軍は攻撃続行できず後退する。

 もっとも、前回のトラック空襲の失敗者ハルゼーは、スプールアンスの攻撃失敗ではなく。

 攻撃をやめたことが失敗だと呟き、当たらずとも遠からずだったりする。

 

 

 トラック

 ボロボロの滑走路から将官が乗った三式指揮連絡機が飛び立つ。

 現場を見て歩いた後、全体像をつかむ必要もあった。

 「・・・こりゃ酷いな」

 「全損ではないですが先が思いやられますな」

 「内地に補充を頼むか」

 破壊された戦艦、施設、輸送船が残されていた。

 水雷戦隊も駆逐艦4隻が撃沈され、巡洋艦2隻、駆逐艦12隻が残っている。

 この水雷戦隊の対空能力は、期待されていない。

 米軍機が水雷戦隊を攻撃しようと低空に降りてきたところをゼロ戦部隊が強襲。

 数十機を撃墜していた。

 そういう意味では、第二水雷戦隊も囮の一種だった。

 輸送船の半分も満潮時に浅瀬に乗り上げさせた廃船で囮。

 ゼロ戦部隊は囮に引っ掛かった米軍機を横合いから撃墜しただけ。

 その戦果は、相当なものだった。

 一方、ゼロ戦部隊も3分の1を失っていた。

 ゼロ戦32型212機 ⇒ ゼロ戦32型141機。

 ゼロ戦22型243機 ⇒ ゼロ戦22型162機。

 ゼロ戦隊が無事着陸できたのは、葉を敷き詰めて偽装した飛行場に着陸できたからだった。

 「扶桑が4基、山城は3基しか使えないか」

 「あれだけの攻撃を受けて、まだ、主砲塔が使えるのは、大したものです」

 「追加された装甲を撃ち破るのも一苦労で、艦内にコンクリートや土嚢を積め込んでいる」

 「防御力だけなら大和以上だよ」

 「浅間、常磐と囮商船も爆撃されていますが見かけ上は、体裁を保っているようです」

 「どっちも土嚢を積め込んでる。たぶん、今回の攻撃でバレているだろうが・・・」

 「第一次攻撃の被害が大きく過ぎ出鼻を挫かれ」

 「今回の第二次攻撃で手の内が明かされた」

 「次は、どういう手できますかね」

 「ポナペからの連日連夜の空襲だろう」

 

 飛行場の再建が進められていた。

 そして、撃墜されたアメリカ軍機の資材が一か所に集められ。

 部品が整理されていく。

 トラックのゼロ戦部隊の整備稼働率が良いのは、アメリカ軍機の機材流用に他ならない。

 格納庫

 「良いオイルを使ってるな。さすが舶来もの」

 「しかし、オイルパッキンを取ってもオイル漏れが日本機並みって、どうなの?」

 「オイルパッキンが気休めなんじゃないか」

 「日本じゃこれがないと垂れ流しなんだけどな」

 「しかし、これだけアメリカ軍機があると戦闘機が造れそうだな」

 「不時着してる機体も多いし、予備で造ってみるか」

 「修理が多いのに人材割くと剥れるんじゃないか?」

 「どうだろう」

 ゼロ戦1機に整備士5人と単純計算ができた。

 戦闘後、機体数が減少しても、修理する機体は増える。

 寄ってたかってゼロ戦を修理してしまうと米軍機の修復もできたりする。

 寄せ集めの機材で組み立てられたF6Fヘルキャット戦闘機の周囲にパイロットが集まる。

 「でかいな」

 「2000馬力は良いよ」

 「道理で手強いと思ったよ」

 「ちょっと、飛ばしてみるか」

 「味方に撃たれるよ」

 「おいおい、対空砲隊に連絡入れとけよ」

 「色を深緑に変えるか」

 「そ、その方が良いな。間違われて味方に撃たれても詰まらん」

 暇潰しに作られたヘルキャット戦闘機は、パイロットが交代で乗って運動特性など確認する。

 己を知り敵を知れば百戦危うからずで練度が向上していく。

 

 

 もっとも、練度に関係なく歯噛みするしかないこともあった。

 深夜のトラック上空をB24爆撃機の編隊が爆弾を投下しながら通過していく。

 無論、命中率は低く、被害もほとんどない。

 “宝くじに当たるようなもので、気にするな” が正論。

 それでも爆撃機が通過するたびに225kg爆弾がパラパラと落とされ、

 投下音が迫り、爆音が響き、大地が震えれば、神経が擦り減らされた。

 

 

春島 夏島 秋島 冬島 日曜島 月曜島 火曜島 水曜島 木曜島 金曜島 土曜島 竹島 楓島 未島  
飛行場 飛行場 飛行場   飛行場       飛行場     飛行場 飛行場 対空砲台  

 島々の地下を刳り貫いて巨大な地下壕が張り巡らされていく。

 アメリカ軍が大型の島に上陸作戦を行うのなら、

 中型の島に大砲が備え付ける方が得だったりする。

 「ソロモン、ラバウルから後退したおかげで、輸送は、進んでいるようだ」

 「計画だと、鉄筋20万トン。セメント100万トンが輸送されてくる。何とかなるだろう」

 「こちらの通商破壊作戦でアメリカ軍の補給を絶ち」

 「攻勢を削いでいるのも結果的に、こちらの輸送を助けている」

 「これだけ鉄筋コンクリートがあれば基地の抗堪性も高くなるだろう」

 「地下10mで鉄筋コンクリートの厚みもそれなり」

 「一発だけなら戦艦の直撃でも耐えられるよ」

 「少し狭くないか?」

 高さ170cm、幅150cmのアーチ型の通路が続いていた。

 「機関銃を持ってだと辛いが二人並んで歩ける。十分だろう」

 「小銃も機関銃も全部6.5mmで合わせたのか?」

 「ああ、パラオとビアクは7.7mmで統合する」

 「不利にならないか?」

 「弾を共有できない方が不利だな」

 「しかし、これだけの資材を集めるとはね」

 「日本人は浪花節だよ。良い悪いは別として情に流される」

 「戦艦二隻を埋め立ててアメリカ軍の侵攻を削ぐなら、それなりに送ってくる」

 「!? こいつはなんだ」

 「試作中の噴射砲とか」

 「使えるのか?」

 「怪しいな。もう、何でも送り込んでくるよ。30年式小銃もある」

 日露戦争時代の小銃だった。

 「地下壕に隠れて戦うなら、擲弾筒だろう?」

 「小銃も3分の2ほど短くしたいな」

 「それは、そうだが戦車が上陸してくると負けるぞ」

 「大砲はそれなりに配備しているよ」

 「しかし、随分と将兵が減ったな」

 「食料が不足するのはわかってたからね」

 「人海戦術で飛行場も地下壕も、ばっと造ってしまえば引き揚げさせた方が良い」

 「その分、持久戦が容易になる」

 「代わりに機関砲と大砲か・・・」

 「後方は火力が作れなくて困っとるだろうな」

 「後方というとグアム、サイパン、テニアンか、そっちは、どんなものだ」

 「さぁ ここと同じで地下壕を掘ってるそうだ」

 「火砲は後回しだろうが、あっちの防衛は、艦隊も投入されるだろう」

 「制空権も得られない占領地で艦隊を磨り減らすよりマシだよ」

 「潜水艦の戦果は、悪くないが・・・小型潜水艦を温存してもいいのか」

 「呂100型か、基地防衛用だから用法は守ってるぞ」

 「そりゃそうだろうが・・・」

 「手柄自慢も派閥争いも、くだらんよ」

 「流されようとは思わんのか。一番楽だ」

 「だったら、最初から呂号なんて建造しなければ良いんだ」

 「いい加減、海軍の馬鹿さ加減には呆れるよ」

 「海軍じゃなくて、人間の馬鹿さ加減だろう」

 「自分に甘い人間でいたいのなら軍人やめて民間人になればいい」

 「まぁ 馬鹿軍人なんて腐るほどいるから丁度良いか」

 「そういえば、軍上層部も相当極悪だぞ」

 「飛行機に爆弾を積んで敵空母に体当たりを考えているヤツもいるらしい」

 「んん・・・悪くない」

 「おいおい」

 「しかし、敵空母は反対だ。輸送船にすべきだな」

 「それも、上陸作戦部隊が乗っているやつ」

 「・・・もう、滅茶苦茶だな」

 「無茶苦茶なもんか。1機と1人で、1隻沈めれば1万トンと将兵4000人が海の底」

 「この交換なら絶対に勝てる」

 「パイロットの気持ちは空母だろう」

 「空母は、途中で迎撃されて弾幕も激しい。無駄死にで勿体ない」

 「輸送船でも十分おつりがくるよ」

 「お前はそういう奴だよ」

 「軍人だからね」

 

 

 トラック環礁

 呂100型が整備されていた。

 敵艦隊の上陸作戦がなければ活躍の舞台はない。

 出撃は控えさせられ、環礁内での訓練で毎日が明け暮れていく。

 この訓練でも燃料を使ったり、いろいろ不具合が起こったり、

 人の目を気にしたりもする。

 特に戦果をあげている伊号から見れば格下扱い。

 目は口ほどモノをいうで “無駄飯、食ってないで戦果を挙げて来い” だったりする。

 これに負けて、出撃命令を出すと呂号は、不利な海域で戦わされて全滅、

 という事態にもなりかねない。

 呂号乗員も、これ以上、無駄飯食らうぐらいならと、死んでもいいような素振り。

 無駄飯ぐらいは、将兵を無駄死を強要させている大本営が相応しかったり。

 「司令、出撃命令は?」

 「アメリカ軍の上陸作戦が始まるまで待ってろ」

 「し、しかし・・・」

 「伊号に転属したいのなら考慮してもいいぞ。呂号は出さん」

 「・・・・」

 「自己満足で貴重な戦力を磨り潰されてたまるか」

 「じ、自己満足ではありません」

 「そう思うなら、命令を聞け!」

 「・・・・」

 トップが合理的に駒扱いしても将兵同士は、そう思わない。

 外洋で命懸けで戦う将兵とトラック環礁を守る将兵は序列ができる。

 軍人も、聖人君子でない。

 貧しい国で無駄飯ぐらいは肩身が狭くなる。

 陸海軍の確執だけでなく、

 海軍内部も優先順位が作られニワトリ突きは普通に行われる。

 恨み辛みが大きくなれば出撃していく味方艦に帽子を振り “戦果を挙げて来い” ではなく。

 “死んで来い”

 よくある話しだったりする。

 無理に巨大な軍組織を作っても戦力や兵器に振り回され、

 権威に酔い正気を失ったり・・・良くある話し、

 人間の器の大きさで組織が暴走したり、組織がバラバラにされたりする。

 累積された赤字財政は破綻寸前。

 国家予算の6割、7割を超えて軍属以外に見返りのない軍事費。

 生活苦で食うも困る庶民が重税に喘ぎ、

 出兵兵士に手を振ると、その胸中も複雑だったりする。

 国を守れどころか

 “散々、軍事費とって、略奪して来れないのなら口減らしに死んで来い” だったり。

 軍民とも愛憎ありで、相克していた。

 

 

 07月24日カボット

 

 

 08月16日イントレピッド

 

 08月31日ラングレー

 

 9月

 ポナペ島の飛行場拡張が進むと連日連夜の空襲は激しさを増していく。

 夜間爆撃にゼロ戦部隊の迎撃はなかった。

 数十機のB17編隊が灯火管制のトラックに向けて迫る。

 トラックの対空火器が撃ち上げられ、編隊の中で爆炎が起こり、

 数機が火を噴きながら落ちていく。

 一部の将兵を除いて地下壕に飛び込み、身を縮める。

 「よくもまあ、あんなに爆弾があるもんだ。感心するね」

 「数撃ちゃ当たるだろうな。信じられん。無駄使いだ」

 「おかげで側溝を掘らされて、ゼロ戦を隠す羽目になったがね」

 「良かったな。ゼロ戦の離陸距離が短くて」

 「ゼロ戦が最高なのは、200mで離陸できることだな」

 アメリカ爆撃隊が毎夜爆撃しても、翌朝、ゼロ戦は出撃できた。

 そして、翌朝、様子を見にきたアメリカ戦闘機部隊と交戦、撃退し、

 夜間爆撃の戦果が小さいと誤解させてしまう。

 トラックの陸長

 「雷電をやめさせたって?」

 「あんな離陸距離の長い機体は無駄だよ」

 「日本本土で使うつもりなんじゃないか」

 「日本本土で使うということは輸送路を断たれて燃料もない。飛ばないということだよ」

 「まぁ 決着がつくとすれば、マリアナと、このトラックか、ビアク、パラオになるな」

 「それなら、離陸距離の短い局地型ゼロ戦を開発すべきだ」

 「内地で航続距離を700km程度に落としたゼロ戦を開発するらしいが微妙だな」

 「増漕を装備すれば1700kmは飛ぶよ。それで、ここまで来れるだろう」

 「それで、上手く迎撃できればいいが・・・」

 「燃料を300kg軽くできるなら、300kg分を防弾、火力に振り替えることができるよ」

 「それで、ヘルキャットと?」

 「エンジンで負けているなら、ほかで埋めるしかないだろう」

 

  馬力 重量 全長×全幅×全高 翼面積 最高速度 航続力 武装 武装
ゼロ戦21型 940hp 1680kg/2336kg 9.06×12×3.57 22.44u 533 2222km〜3350km 20mm×2 7.7mm×2
トラック・ゼロ戦21型 940hp 1680kg/2000kg 9.06×12×3.57 22.44u 548 700km〜1828km 20mm×2 7.7mm×2
                 
ゼロ戦32型 1130hp 1807kg/2535kg 9.06×11×3.57 21.5u 544 1800km 20mm×2 7.7mm×2
トラック・ゼロ戦32型 1130hp 1807kg/2300kg 9.06×11×3.57 21.5u 556 700km〜1828km 20mm×2 7.7mm×2
                 
ゼロ戦52型甲 1130hp 2140kg/2424kg 9.12×11×3.57 21.3u 569 600km〜1600km 20mm×2 7.7mm×2
ゼロ戦52型乙 1130hp 2140kg/2424kg 9.12×11×3.57 21.3u 569 600km〜1600km   7.7mm×6
ゼロ戦52型丙 1130hp 1890kg/2824kg 9.12×11×3.57 21.3u 559 1600km〜2600km 20mm×2 7.7mm×2
                 
ワイルドキャット 1200hp 2610kg/3600kg 8.8×11.6×2.8 24.15u 515 1240km 12.7mm×6  
ヘルキャット 2000hp 4190kg/5714kg 10.24×13.63×4.11 31u 612 1520km〜2500km 12.7mm×6  

 

 そして、開発されたのが52型

 艦載機型52型丙は航続力が長かった。

 局地戦型のゼロ戦型甲・乙は、防弾など機体重量が増加した代わり、

 航続力が減らされ、燃料を含めた総重量で軽量化に成功していた。

 推力式単排気管によって最大速度は569km。

 主翼外板は0.3mm増しで降下速度765kmに達する。

 甲99式20mm機銃装備(125発)。

 乙7.7mm6丁。

 乙が飛行時間の浅いパイロットに当てられやすかった。

 52型は、翼面積が減っても総重量で軽量化され、

 短い滑走で、一気に上昇していく。

 「微妙かな」

 「推進排気管か、防弾を含めて重くなっているのに32型と変わらない上昇力、悪くないじゃないか」

 「んん・・・あとは機体数だな」

 「内地と東南アジアの輸送はうまく行ってるので、こちらにも、それなりに持ってこれると思います」

 「500機ほど頼むよ」

 「ま、まだ、生産が始まったばかりで・・・」

 「紫電とか、わけのわからない新型機を開発していないだろうな?」

 「いや、やはり、重戦闘機には、重戦闘機かと・・・」

 「飛行場が爆撃されて降りられなくなったら、一撃で勝負がついてしまうだろう」

 トラックの飛行場は至る所に作られ、斜坑格納庫に入れられていた。

 「金星装備のゼロ戦を検討していますが?」

 「離着陸距離は?」

 「・・・52型と、ほぼ同程度は、いけるかと・・・」

 「それなら構わないが・・・」

 

春島 夏島 秋島 冬島 日曜島 月曜島 火曜島 水曜島 木曜島 金曜島 土曜島 竹島 楓島 未島
飛行場 飛行場 飛行場 飛行場 飛行場 飛行場 飛行場 飛行場 飛行場 飛行場 飛行場 飛行場 飛行場 対空砲台

 飛行場が13ヵ所あれば、浮沈空母13隻あるのと同じ、といえなくもない。

 半分が隠し飛行場。

 しかし、逃げることができない基地飛行場は、爆撃されると使えなくなる。

 扶桑 艦橋

 「トラックの飛行場も13ヵ所か・・・」

 「ラバウルに5ヵ所も作るつもりだったんだろう。トラックに13ヵ所造る方がマシだよ」

 「沖縄にも15ヵ所造るらしい」

 「そんなところに15ヵ所造るくらいなら、マリアナに15ヵ所建設すべきだろうね」

 「飛行場より飛行機造った方が・・・」

 「そんな簡単に飛行機の工場は造れないし、技能を持つ人間も少ないよ」

 「軍属が住民を追い出し、扱き使って金儲けじゃないの」

 「結局、誰かの懐に入るようになっているからな」

 「まぁ 軍属は、日本人も中国人や朝鮮人と変わらない程度、虐げているから公平と言えば公平だが・・・」

 「もっと不公平にすべきだね」

 「それはともかく、トラック航空隊の規模が大きくなると燃料消費が大きくなるな・・・」

 「累計して経費が増えるからね」

 「随分と陸軍を減らしたがな」

 「戦闘機1機に整備士5人だと500機だと2500人は必要だよ。当然、機体当たりの経費も増える」

 「夜間戦闘機が欲しいな」

 「航空機搭載の電探は開発できてないだろう」

 「基地や軍艦用の電探もいま一つだからな」

 「夜は爆撃されるばかりか・・・」

 

 トラック艦隊

 鳥海、古鷹、加古、青葉、衣笠

 神通

 第08駆逐隊  朝霧、夕霧、天霧、狭霧

 第15駆逐隊  黒潮、親潮、早潮、夏潮

 第16駆逐隊  雪風、初風、天津風、時津風

 第18駆逐隊  霰、霞、陽炎、不知火

 第8艦隊、第2水雷戦隊がトラックに配備されていた。

 工作艦 明石

 軽巡香取、鬼怒、由良

 特設水上機母艦神川丸、山陽丸、君川丸、

 特設巡洋艦栗田丸、浅香丸、報国丸、愛国丸、清澄丸

 潜水母艦長鯨、迅鯨、靖国丸、さんとす丸、大鯨、名古屋丸、りおでじゃねいろ丸

 伊01号、伊02号、伊03号、伊04号、伊05号

 伊53号、伊54号、伊55号、伊58号、

 伊121号、伊122号、伊123号、伊124号(機雷)

 伊156号、伊157号、伊159号、

 伊162号、伊164号

 伊165号、伊166号、

 伊169号、伊171号、

 伊6号、

 伊8号、

 伊174号、伊175号、

 伊16号、伊46号、伊47号、伊48号

 伊19号、伊26号、伊27号、伊29号、伊32号、伊33号、伊36号、伊37号、伊38号、

 伊10号、伊11号、

 伊12号

 伊176号、伊177号、伊180号、伊181号、伊183号、伊184号、伊185号

 呂33号、呂34号、

 呂60号、呂61号、呂62号、呂63号、呂64号、呂65号、呂66号、呂67号、呂68号、

 呂100号、呂101号、呂103号、呂104号、呂105号、

 呂106号、呂107号、呂108号、呂109号、呂110号、呂111号、

 伊号49隻、呂号21隻。

 船団護衛や内地の修理改装で時折、巡洋艦、駆逐艦が増減した。

 しかし、トラック艦隊は、これだけだった。

 トラック艦隊の主力は、潜水艦隊。

 伊号の常時3分の1が作戦中、

 3分の1が出撃・帰還中、

 3分の1が整備改装中だった。

 もっとも、明石の修復能力は足りず、

 内地帰還往復も少なくなく稼働率は、4分の1になろうとしていた。

 ドイツのUボートと比較しても稼働率が低いと言えた。

 「戦果が落ちていると聞いたが戦況はどうだね?」

 「通商破壊を行ってから伊号と商船の損失比は1対7でした」

 「しかし、アメリカ海軍が護送船団方式を取ってから、1対3.75です」

 「そんなに落ちるものなのか」

 「ドン数比でいうと、2000トン対37500トン。ドイツのUボートとあまり変わらないようです」

 「ほう、伊号もUボート並みの性能か」

 「伊号は、静粛性、潜航能力でUボートに劣っています」

 「アメリカ海軍は長大な輸送航路を防衛するため疲労が大きく」

 「それが差し引かれて、だいたい、同じになるようです」

 「戦争が始まってから、伊号が37隻も撃沈されている」

 「通商破壊に切り替えた戦果で、累計で140隻、700万トンを撃沈していると思われます」

    ※史実 〜終戦184隻、907万トン

 「負けてるということか」

 「商船だと10000隻ぐらい撃沈しなければ勝てませんから」

 「じゃ その損失比だと、伊号が2500隻くらいいるな」

 「気休めですがアメリカ海軍に効率の悪い護送船団方式をとらせた時点で前線は有利になっているはずです」

 「落ちてくる爆弾の雨を見ると、とてもそう思えんが」

 「通商破壊をしなければ、戦力だけでなく、補給品、武器弾薬、燃料など、稼働率も高くなるはず」

 「現状の数倍の被害が出たと思われます」

 「んん・・・・」

 「もちろん、こちらも修理改装で内地行き艦船が増加しているようですが」

 「第2水雷戦隊も第3水雷戦隊と交替するか」

 「トラックの整備能力では、限度がありますから」

 「もっと、損失比を有利にしたいな」

 「潜水艦は、エンジン回りにゴムを敷き詰めて騒音を減らしています」

 「もっとも外国製の工作機械が劣化しているので、状況が良くなることはないと思いますが・・・」

 

 

 トラック環礁内の艦隊は、灯火管制中だった。

 暗夜のトラック諸島全域で爆音が響いていた。

 環礁のいたるところで爆炎が上がり、

 鳥海のすぐそばに225kg爆弾が落ち、海水を噴き上げる。

 「・・・どうやら、行ったな」

 「危なかった」

 「若竹型4隻は?」

 「無事らしい、輸送船6隻も無事のようだ」

 「潜水艦隊の方は、まだ確認が終わっていない」

 「狙って落としたものじゃないが、よくやるよ」

 「しかし、出撃命令は出ないし、暇だな」

 「ニューギニアとソロモンから退くからだ」

 「空襲の的になっている状態は辛いな。打って出るべきだが・・」

 「ガダルカナルもラバウルも、マーシャルも、ポナペも攻撃を全部、却下しやがって」

 「“島長” は、上陸作戦まで艦隊の出撃を待たせる気なのか」

 「ポナペの輸送船団を攻撃させれば良いのに臆病者が」

 「潜水艦もポナペじゃなくて、航路上に配備らしい」

 「ソコソコに戦果をあげているらしいが効率悪いな」

 「もっとも、アメリカも同じ作戦のようだ。臆病は同じか」

 「兵は拙速を尊ぶ。連中は人命を尊重し過ぎだよ」

 「“島長” どもは戦力を尊重している、とか誤魔化しているが艦隊を並べて悦にいってるとしか思えん」

 二人の艦長は、“島長” とか “陸長” とか、面白半分に陰口を叩かれ、

 二人の陸長は、腹を立てても許容範囲なのだろう。殺意未満で収まったりする。

 

 

 11月24日 リプリサル

 

 11月29日 キアサージ

 

 

 孤立した島礁防衛で重要なのは衣食住だった。

 自給率と生活必需品をどこまで確保できるかで駐留軍の規模が違ってくる。

 トラック諸島は大環礁が大小の島々を囲み、面積100ku。艦船の停泊で有利だった。

 ポナペ島は山なりな単一面積330ku。水利、広さ、資材の効率性と防衛で有利だった。

 アメリカ軍は、数十万トンの爆薬でサンゴ礁を爆破して解決。湾の拡張工事が進み。

 軍港が建設されていく。

 ポナペ島は、日本が1914年10月に占領。1920年委任統治領。1922年南洋庁が置かれていた。

 日本人13000以上が住んでいたがミッドウェー敗戦後に退避。

 アメリカ軍30万は、その膨大な物量を駆使。

 日本が28年掛けて作り上げたインフラを半年で超える規模に広げていた。

 ポナペには、日本侵攻に必要な兵士の保養所が造られ、

 港が建設整備され、飛行場が作られていく。

 791m〜500m級の山々が刳り貫かれ、兵舎が連なっていた。

 使われたセメント量は、トラックの数十倍、

 真珠湾に匹敵する土木建設が進められていた。

 アメリカ軍が歴史的建造物の破壊を躊躇したおかげで遺跡だけは無事だったものの、

 アメリカ機動部隊は、マーシャルのマジェロ環礁に本拠地を置き、

 基地建設支援で、艦隊をポナペ沖に遊弋させていた。

 

 日米とも通商破壊を展開し、

 互いの補給線を断とうと躍起になっていた。

 エンタープライズ 艦橋

 「こっちは、ポナペ沖まで出張。日本はトラック環礁で休息待ちか」

 「それほど、遠くないだろう」

 「いっそのこと、山なんか刳り貫かずに台地にしたらどうだ。その方が早い」

 「原住民の反発があるだろう。それに禿山作ると水が枯れて困る」

 「小さな島で将兵30万人分の衣食住は厳しくないか?」

 「ポナペを整備できれば、トラックを占領せず無力化するだけでマリアナを直接狙えるよ」

 「だといいが、垓下の戦いで項羽の側になりたくないぞ」

 「魚雷の不具合は直したから大丈夫だろう」

 「これから日本商船を沈めることができるだろう」

 「しかし、トラックで踏ん張られるだけで、これほど梃子摺らされるとは・・・」

 「ラバウルより日本に近くて補給を得やすい」

 「それにトラックは、元々、連合艦隊の基地だ」

 「連合艦隊は、トラック不在のようだが?」

 「パラオか、マリアナ沖に停泊している。それか、呉」

 「トラック攻撃でアメリカ機動部隊が疲労した後に攻撃か。逸を以って労を待つだな」

 「トラック攻撃には、もう少しエセックス空母が必要だよ」

 「日本機動部隊から攻めてくればいいんだ」

 「こっちも船団を並べているから、夜襲でもいいぞ」

 「それほど馬鹿ではないだろう。こっちから出掛けるのを待ち伏せるつもりだ」

 「しかし、レーダーが駄目だというのに迎撃が上手い」

 「観測機を飛ばしているそうだ。漁船も網を張っている」

 「それにトラックのゼロ戦は、防弾、火力、速度とも向上して1000馬力とは思えない」

 「アリューシャンで捕獲した機体と全く違うのではないか?」

 「バラバラになっても火達磨にならないところを見ると燃料を減らしていると考えるべきだろう」

 「なるほど・・・」

 「しかし、F6Fヘルキャットとゼロ戦は、キルレートで不利だ」

 「ランチェスターの法則なら空母対空母で3倍から4倍は欲しい・・・」

 「アメリカは、ヨークタウン型2隻。サラトガ。エセックス型5隻、インディペンデンス型5隻」

 「それと、慣熟訓練中が2隻か・・・」

 「日本は(瑞鶴、翔鶴)、(飛鷹、隼鷹、龍鳳)、(龍驤、瑞鳳)」

 「まともにぶつかれば勝てそうだが。トラック基地の防空能力は高い」

 「び、微妙だな」

 「日本は、防空に徹しているからベテランもルーキーも残りやすいし」

 「それに防空に徹されたらVT信管は使えない」

 「空母で防空しながら戦艦で押し切って艦砲射撃しかないな」

 「それで戦艦同士で砲撃戦か、艦隊決戦になるな」

 「勝てるだろう。日本の戦艦は新型戦艦2隻、長門、金剛、比叡、霧島、榛名の7隻だけだ」

 「陸奥の爆沈は、まだ、確認取れてないぞ」

 「稼働率とローテーションだと5隻くらいだろう。攻撃側は、全部出せる」

 「日本側も、そう考えているはずだ」

 「戦力比で日本側が来ることはない」

 「どうかな、日本は大国アメリカに無謀な戦いを仕掛けるような、お馬鹿な国だ」

 「追い詰めたからな」

 「自業自得だ」

 「隷属している民族を採掘、土木建設で酷死させれば侵略などせずとも済んだ」

 「経済と国力の再建を同時に出来て、不安材料も消えたものを・・・」

 「スターリンじゃあるまいし」

 「戦力が揃ったら、ええ格好しの半端な馬鹿どもを踏み躙ってやる」

 

 

 12月15日サン・ジャシント

 

 

 工業力の低い日本。

 軍に労力を奪われ、工業力と食糧生産は低下し、

 生活物資と食糧の配給は減少していた。

 食糧不足は栄養不足を招き、結核患者を増加させる。

 鉱山採掘は採掘道具が消耗して命懸けとなり、

 鉄鉱石、石炭の供給も不足気味。

 軍の硬直した思考は、企業の想像力、改良、改善を阻害し、

 生産量と納期を権威で急がさせる。

 電力不足、治具と機械油の不良で工作機械は消耗し、

 部品の歩留まりは悪化し、品質は劣化していく、

 必需品の供給は、やせ細り、

 労働環境は、悪化していくばかり、

 結核患者の増加は、生産能力を低下させていた。

 脆弱な社会基盤は崩れ、

 生活に必要な民需は犠牲にされ、物流は阻害され納期も遅れていく。

 赤字業績は資金繰りを悪化させ、皺寄せで工員家族の生活苦が増していく。

 工場から港湾まで輸送効率は悪化し、

 港湾まで持ち込んでも搬出搬入は時間を要した。

 たった1隻の輸送船を満載させるまでの待ち日数は長い。

 護送船団方式は、船団を編成するまで出航できず、

 物資の待ち時間を悪戯に遅らせる。

 護衛艦、輸送船で余裕がない日本は、脆弱な社会構造と合わせ、

 効率が悪過ぎる護送船団ができなかった。

 しかし、アメリカが魚雷の欠陥を治すと日本商船の撃沈は急増する。

 日本は、まだ護衛に回せる駆逐艦も輸送船も消耗していなかったことが幸いした。

 いくつかの妥協と紆余曲折の末。

 日本は効率の悪い護送船団方式を採用してしまう。

 大鷹、雲鷹、沖鷹、若竹、呉竹、早苗、朝顔、夕顔、芙蓉、刈萱、輸送船30隻。

 大西洋の護送船団に比べると規模が小さかった。

 99艦爆が船団の周囲を旋回する。

 日本の対潜能力は脆弱だったが99艦爆の数がモノをいう。

 陸軍の三式指揮連絡機も経済効率の良さで対潜哨戒に使われる。

 船団上空の99艦爆が不意に降下して60kg爆弾2発を投弾。

 水柱が立ち昇り。護衛駆逐艦は増速し、回頭する。

 海面を見れば、雷跡が扇状に広がって進み、

 日本の輸送船団に迫っていた。

 哨戒機の指示に従って輸送船が回避運動を取ると、

 雷跡が輸送船団の隙間を抜けていく。

 護衛駆逐艦は次々と爆雷を投下し、アメリカ潜水艦を追い詰めていく。

 三式指揮連絡機

 「磁気探知機が搭載できればいいのに」

 「優先順位低いから。もっと商船が撃沈されないと予算増えないかも」

 「予算。戦闘機にとられるからね」

 「ゼロ戦だよ」

 「最近は、そればっかりだな」

 「1式陸攻よりゼロ戦。97式重爆より隼か」

 「扶桑と山城のおかげで侵攻作戦から一気に迎撃作戦に変わったからな」

 「それだって、対艦攻撃は必要だよ」

 「これから、どうするんだろうな」

 

 

 ビアク島(1904ku)

 52型甲(航続力600km。20mm×2・7.7mm×2)、

 52型乙(航続力600km。7.7mm×8)の迎撃型。

 52型丙(航続力1800km。20mm×2、7.7mm×2)の艦載機型。

 海軍は、ゼロ戦に生産を集中していた。

 空冷1130馬力エンジンは、現状の加工精度で高い稼働率を維持し、最大限に生産できた。

 質と量で最大公約数的な機体がゼロ戦だった。

 対する陸軍は、隼、鍾馗、飛燕、疾風と順当に開発し、性能を更新していく。

 しかし、日本の加工精度で飛燕(1200馬力)、疾風(1800馬力)は、稼働率を維持できない。

 結果的にビアク飛行場は、隼3型が翼を連ねていた。

 

 アメリカ軍は、ニューギニア北部を西進して530km先のジャヤプラにまで迫っていた。

 ビアク防空戦も、徐々に激しさを増していく。

 最初は爆撃機を配備していたビアク島も損失比の大きさからトラック防空戦を模倣。

 戦闘機を増やし、防空戦に終始していく。

 「飛燕と疾風も、稼働率が低いようだ」

 「潤滑油、クランクシャフト、ベアリングは泣きたくなるほどだ」

 「規格と品質を担当しているやつは人殺しだな」

 「外国製工作機械が摩耗してエンジンオイルすらない」

 「飛燕、疾風どころか、隼3型の性能も維持できなくなるそうだ」

 「ケチケチしないで工作機械を買っとけば良かったんだ」

 「戦艦を建造しないで工作機械を買っていたら今頃、もう少しマシな工業国だよ」

 「それを言うと陸軍もやばくなる」

 「そりゃ 兵隊を半分に減らせば相当なものになっただろうよ」

 「兵隊の半分は、暴徒鎮圧用だよ」

 「ふっ しかし、工業力があっても鉄と石炭がないと兵器は造れないよ」

 「重量当たり単価の高い製品で生計が立てられたかもしれん」

 「38式小銃だな」

 「南部拳銃だろう」

 「武器売買かよ。ロクなもんじゃないな」

 「そうしないと軍事力を維持できないだろう。俺たち軍人は、おまんまの食い上げ」

 「結局、国の成否に関係なく、強い組織が国を支配して日本の色を決めるということかな」

 「酷い色だ」

 「人は支配を目指して増長していく、利権体制が構築されたら正しい間違いは関係ないね」

 「体制を守るため他者を犠牲にする」

 「どんな色でも一旦大きくなってしまうと止まらんよ」

 「兵器の価格は高くなる」

 「人より兵器・武器弾薬と思っても予算の比率は簡単に変えられないか・・・」

 「ブロック経済で市場を失った時点で駄目だろう」

 「日本人は想像力が弱い。識字率が高いだけで知的水準も低い」

 「民主主義や資本主義で経済成長など見込めないよ」

 「軍隊で集めて統制して侵略戦争が一番だと思うよ」

 ビアク島の水田地帯

 既存の農家がないと利害関係が絡まず。

 川沿いに水路を作って区画整理、合理的に田畑を作っていくことができた。

 日本軍は農兵と思えるほどで田畑は順調に広がっていく。

 「日本でも、これくらい効率良く田畑を作れたら良いのに・・・」

 「良い田んぼ、悪い田んぼで欲に目が眩む」

 「水利が良いとか、道路に面している方が良いとか、利害も絡む」

 「貧し過ぎて足を引っ張ってでも金をむしり取ろうとするから人間も拗けるよ」

 「無地主の方がやりやすいか」

 「現地民は住んでるけど」

 「ニューギニアに追い出しているから、ほとんど残っていないだろう」

 「種もみは?」

 「届いたよ」

 「しかし、赤道に近いと暑い。田畑仕事も厳しいな」

 「女たちも畑仕事をさせるため来るそうだ」

 「むふ♪ 俺たちも、がんばって、種付けしないとな」

 「種付けは駄目だろう」

 「あはは・・・」

 

 トラック北西266km。ウルル島 (南北4.8km。幅20m〜700mのく字形)

 トラック南西280km。プルスク島 (南北3.15km×東西1.17km)

 小さな島だったがトラックが爆撃された時の避難所として二つの島で飛行場が整備されていた。

 ウルル島

 「トラックまで266kmか」

 「零戦は、航続距離を押さえているから、ここまでたどり着けるか、微妙だな」

 「グアムとトラックの中継飛行場にもなるし、場所的には、ここなんだけどね」

 「設備はできても整備士はな・・・」

 「燃料と必要最小限の治具があればいいだろう」

 「ここで給油してグアムまで帰還できれば良い」

 「後方のウルル島なら爆撃機を配備しても良さそうだがね」

 「対潜哨戒用の基地で使いやすいだろうな」

 そして、深緑の機体に赤いマークのワイルドキャットが着陸する。

 「それと、持て余したアメリカ軍機か・・・」

 

 

 

 軍属たちの晩餐

 「あの二人にトラックを任せていいのか?」

 「んん・・・あいつらを悪者にして、ミッドウェー海戦の敗北を誤魔化そう」

 「空母を4隻も撃沈されて戦意低下しているし。輸送できなくて餓死させるのも忍びないし」

 「軍部は、行け行けなんだけどね」

 「行け行けの方が出世できるからね」

 「この際、行け行けより。ああいう人格破綻者に犠牲になってもらおうよ」

 「まぁ 組織人としては失格だからね」

 「何で戦艦の艦長になれたんだ?」

 「ミッドウェー海戦の敗北で変わったらしい」

 「むかしはコテコテの組織人だったぞ」

 「まぁ ショックだったからね」

 「ああいう、ショックがないと意識改革なんてできないし」

 「だけど、航空機が海戦の主力になるのは困るよ」

 「生産日数が早いし戦力も大きい。生産工程で戦艦は不利だな」

 「開戦前に金払って工作機械を買っとけば良かったな。あと燃料とか」

 「買ったよ。できるだけね」

 「でも、備蓄もなくなっているし、トラックまで後退できて良かったよ」

 「ビアクとパラオも?」

 「伊勢と日向は反発はあったけどね。しょうがないよ」

 「扶桑、山城を正当化するには丁度良いし」

 「官僚って抵抗があっても、一度、前例ができてしまうと。行きやすいんだな」

 「占領されてから慌てて出撃させるより、埋め立てて待ち構えていた方が都合が良いか」

 「旧式戦艦だから惜しくないけど、海軍のポスト争いが煩わしかったよ」

 「建造できたら振り分けることにしたけど、人事は膠着するからね」

 「しかし、あの二人、信濃と雲龍型空母の建造中止も要求してるからな」

 「基地に金をかけたいのは分かるけどね」

 「艦隊から大砲を剥がして地上に配備させたがるし」

 「軍部は納得しないと思うよ」

 「戦艦はかっこいいからね。基地の守備隊なんて左遷だし」

 「あの二人くらいのものだよ。自分から身を落とせるの」

 

 

   

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 月夜裏 野々香です。

 ラバウル航空隊のガダルカナル空襲。

 ゼロ戦21型とF4Fワイルドキャットの航空戦は、同じ条件で正対した場合、ゼロ戦21型が勝ちます。

 スペック上でも、そんな感じでしょうか。

 日本のガダルカナル空襲の失敗は、物量、技量、精神力、サッチ・ウィーブだけでなく。

 航続力にあるようです。

 ゼロ戦がガダルカナル上空で空中戦ができるのは15分弱。

 作戦終了後、ゼロ戦がワイルドキャットに追いかけられると・・・

 ゼロ戦の最大速度は541km。

 ワイルドキャットの最大速度は515km。

 ゼロ戦は巡航速度で飛ばなくてはならず。

 ワイルドキャットは最大速度で追いかけることもできた。

 ゼロ戦は、最大速度でワイルドキャットを振り切って途中で燃料切れ。

 サメの餌になるか、友軍機の犠牲でラバウルまで逃げ切るしかなった。

 ワイルドキャットで追尾するアメリカ軍パイロットは素人でもよく。

 ゼロ戦で巡航速度で、まっすぐ飛ぶしかないベテランパイロットを楽に撃墜できた。

 自棄になって反撃するゼロ戦も急降下で逃亡するF4Fワイルドキャットを撃墜できず。

 ワイルドキャットは危険を犯すこともなく追い駆けっこを繰り返すだけ。

 ゼロ戦は燃料切れで海に落ちる。

 この事に気付くまでラバウル航空隊は、ベテランパイロットをすり減らし消耗させてしまう。

 というより、体面や面子を守るため、理詰めの戦略より我を通したともいえる。

 

 

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第01話 1942/06/05 『破 綻』
第02話 1943年 『もう、縮み思考たい』
第03話 1944年 『トラック島攻防戦』