月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想戦記 『国防戦記』

 

 

 第17話 1958年 『心が社会を作っていく』

 01/04 ソビエトが、スプートニク1号が大気圏に再突入し消滅(1957/10/04日打ち上げ)

 01/31 アメリカ初の人工衛星、エクスプローラー1号打ち上げ

 

 日本で兵士を守る携行兵器だけでも国産にしたいという声があった。

 しかし、軍属の肥大化を良く思わない土建屋勢力が国産兵器を制限してしまう。

 結局のところ、国家予算の取り合いといえた。

 そして、国防予算は、国内総生産の増大に見合わないほど低くかった。

 その日本の国防体制の中にあって、唯一攻撃的なのは、潜水艦隊だった。

 国防予算の中で手抜きできない、国産品が潜水艦に集中していた。

 日本潜水艦は、全長120m。全幅12m。吃水8.5mで世界最大級。

 アメリカ原子力潜水艦のノーチラス、アルバコア、シーウルフより大きく。

 59年就役のジョージ・ワシントン級原子力潜水艦。

 全長116.3m。全幅10.1。吃水8.1mより大きかった。

 日本海軍が大型潜水艦に拘ったのは、パナマ運河爆撃の成功によるところが大きく。

 通常型潜水艦でAIP研究。

 アメリカ、ソビエト、イギリスが原子力機関に浮気した隙に、

 深々度性、静粛性、ソナー探査など集中していく。

 リバティ船 “しし丸” 

 7500トン。全長135m。全幅17.4m。吃水8.5m。2800馬力。11ノット。

 補助金で修理改装されたリバティ船は、日本潜水艦の洋上補給も兼ねていた。

 船尾から曳航型ソナーを兼ねた通信、送電、給水用のチューブが流れていた。

 日本海軍の補助艦隊だけでなく。

 補助金で建造された船舶は、この装置を有する。

 船橋

 「船長。感度良好です。ドッキングに成功しつつあります」

 「・・・やれやれ、ウェークまで積み荷以外の御客さんか」

 「護衛付きと思えば気持ちも楽ですよ」

 「余計に発電しないとな」

 「電力と水の供給があれば、潜水艦も生活が楽でしょうね」

 「平時は職場環境が良くないとな」

 「辞められると情報が漏れやすくなって困るのだろう」

 「志願制になってから給与が上がって、国防財政は厳しいようです」

 「戦後、軍属が家族ごと、殺されたこともあったからな」

 「酷かったですからね」

 「いまは、土建屋の方が恐れているよ」

 「あいつら、やり過ぎです」

 「同じ目に合えばいいんだ」

 「そして、軍属復権ですか?」

 「ほどほどにな」

 「国家予算が特定の利権団体に吸い上げられて、支払いを頭割されたら誰でも怒るよ」

 「ですが国家基幹産業を地下にって、どうかと思いますよ」

 「そりゃ 産業そのものが大きくなっているから、どこまでが基幹産業なのか、微妙だな」

 「ダム建設が進めば、電力が供給されて、もっと、弾みがつくはずですよ」

 「そうなったら、異業多種で土建屋連中の発言力も縮小だな。ざまぁみろ」

 「・・・船長。ドッキング完了しました」

 「そうか、通信回路を開いて、送電の準備を。航行速度と深度を調整してくれ」

 「はい」

 「・・緑龍の艦長が出ました」

 「こちら、しし丸の船長。谷崎です」

 『こちらは、緑龍の艦長細野です。ウェーク沖まで、厄介になります』

 「了解しました。進路変更の折には、そちらにお知らせいたします」

 『了解した』

 この時期の日本潜水艦は、戦前戦中と違い、

 水上航続力より、水中航続力を重視していた。

 AIP機関の研究が進められ、少人数化が進んで人員100人。

 人員が減ると酸素の需要が減り、その分、待遇が良くなっていく。

 もっとも、第三配備3交替。第二配備2交替、第一配備総員などあり、

 人員を減らすのも限度があった。

 龍型潜水艦 緑龍

 「艦長。深度40m。電力供給は良好です」

 「そうか」

 「艦長。しし丸のレーダーです」

 「レーダースコープに外の様子が映った。

 「んん・・・少なくとも、空の様子は、わかるな」

 「ええ、できれば、船外カメラを装備してもらって、外の様子も知りたいですね」

 「それもそうだな」

 「原子力機関を開発できていたら、もっと楽でしょうけど」

 「イギリスで黒鉛減速剤の加熱で原子力事故を起こしたから微妙だな」

 「費用対効果は良いと聞いてますが」

 「費用対効果が良くても、安全性対策で足が出るだろう。間違いがあると怖いしな」

 「やはり、民間がその気にならないと、原子力は、上手くいきませんか」

 「そうだな。土建屋の圧力もありそうだが・・・」

 「ダム建設が良いのでしょうか」

 「ダム建設で貴重な自然を失うかもしれないがね」

 「どっちも嫌だと、電力が得られず企業を興せないことになりますからね」

 「地主と大家は構わないだろがね」

 「働かなければ家族を養えない大多数は、ダムでも原子力でも欲しがるでしょうね」

 「なかなか、苦しい選択だな」

 

 

 ボルネオ州

 面積72万5500kuのボルネオ州に日本人1500万。現地民800万。

 戦後、元主戦派軍属の移民に引き摺られるように日本人はボルネオ州に入植していた。

 しかし、日本の再建が軌道に乗りると人手が必要になり、

 流出は緩やかに減少していく。

 日本からの投資で水力発電ダムが建設されていた。

 移民で衣食住の確保のため必要となるのは電力と水の確保。

 日本人がジャングルに集落を建設していた。

 「人口30万のコロニー都市が50個か、ネットワークを構築できそうなのに尻すぼみだな」

 「もっと日本人の人口が増えないと生産性が低い」

 「日本は経済成長が続いて、本土からの移民が減っているからね」

 「でも、現地民の娘は良いよ。素直そうで・・・」

 「コロニー都市の周囲にインドネシア人のスラムも増えているようだが」

 「朝鮮半島と同じやり方をしているからだ」

 「朝鮮人よりボルネオ人の方が良いよ。腹黒くないし、小中華意識もない」

 「でも、インドネシア人も色々あるけどね」

 「まぁ こちらも同族の日本人に殺されかけて、逃げ出してきたようなものだから・・・」

 「近親憎悪よりマシかもしれんな」

 「元軍属でボルネオ州独立の動きは?」

 「まさか、アメリカに介入されると面倒だ。見捨てるよ」

 「独立すると元軍属は、日本への道を断たれるだろうな」

 「インドネシア連邦全体との関係が悪化してしまうと困るわけか」

 「連邦議会に日系議員もいるから、インドネシア連邦でも構わないだろう」

 「少なくとも、アメリカ人は国籍を捨てるとアメリカ人ではなくなる」

 「日本人は国籍を捨てても日系人。スマトラ・ジャワのアメリカ系資本より有利だよ」

 「逆にいうと人種や民族を越えている強みがアメリカ合衆国にあるわけだ」

 「国や民族が国情に合わせた戦略で最大限に勢力を拡大しているに過ぎないよ」

 インドネシア連邦は、583以上の言語が存在する。

 さらに戦後のドサクサにまぎれ、日本語と英語も公用語にされていた。

 独立運動の主導的な役割を果たしたジャワ語がインドネシア語となった。

 しかし、ジャワ語使用者は、インドネシア総人口1億の13分の1で、760万強に過ぎず。

 移民してきた1500万強の日本語の方が多数派となっていた。

 インドネシア全体では、インドネシア語と現地語の二つの言語が幅広く使われ、

 お金持ち語と呼ばれる日本語、英語も組み込まれてしまう。

 お金持ちになりたければ、日本語と英語を覚えろと、真に実利的な状態だった。

 インドネシア海軍も言語上の理由でインドネシア語と日本語が使える者に限定され、

 インドネシア艦隊と言っても海賊退治用のオンボロの800トン級丙型海防艦であり、

 1000トン級二等輸送艦だった。

 結局のところ、言語を統一できなければ、まともな海洋海軍も創設できず、

 連邦海軍と州警備艦隊に分かれていく。

 ボルネオ州警備艦隊

 二等輸送艦 “もず”

 数人の男たちがインドネシアの海を見つめていた。

 「アメリカが1400トン級タコマ型フリゲート艦と」

 「640トン級PCE型警備艦を売りたがっているらしい」

 「日本製を使いたいね」

 「ボルネオ州製だろう」

 「そりゃそうだ」

 「製鉄所と工場を建設して、独立したいものだ」

 「日本はボルネオ州の自立を嫌がるんじゃないですか?」 艦長

 「スマトラの原油も大きいからな」

 「インド洋への道も塞がりますしね。シンガポールも戦乱に巻き込まれますし」

 「どうも、言語上のストレスが神経に触る」

 「日本人は、ストレスに弱いですから」

 「現地語が、もう少し減れば、気持ちも楽になるのだがね」

 「現地語が減るとインドネシア語と雌雄を決することになるのでは?」

 「それも微妙に困るな」

 「日本とソ連は、シベリア鉄道をインドまで引っ張って」

 「大西洋、地中海、インド洋、太平洋の海路と繋げたがっていますからね」

 「まさか、日ソが組むとはね」

 「人口だけでなく状況も1900年代に似ていたんだな」

 「そうなのですか?」

 「当時は、伊藤博文、井上馨のロシア同盟派と」

 「山縣有朋、桂太郎、加藤高明のイギリス同盟派に分かれていたからな」

 「じゃ・・・」

 「現実は、日露協商交渉は失敗し。日英同盟だから。まぁ どっちが良いと言えないだろう」

 「驚天動地というところですか?」

 「日本から軍属が追い出されるのも驚天動地だったな」

 「殺されずに済んだだけでも恩の字でしょう」

 「体当たりか・・・尻尾切りされそうになったよ」

 「陸長閣下の御二方が、この小船に乗艦されるのも驚天動地と言えます」

 「なぁに、久々に海に招待されて、嬉しかったよ」

 「そういえば、戦艦を降りてからは、小船ばっかりだったな」

 「しかも、反攻上陸作戦なんて無理だって決めつけて反対した」

 「それが二等輸送艦に乗るのも皮肉だな」

 「陸軍と海軍は、面子を潰されて、怒っていたとか」

 「そうそう、随分と嫌われたっけ」

 「いまじゃ どっちも日本から追い出され組みだがな」

 「「あはははは・・・」」

 

 

 

 北大西洋上

 戦艦ウラル 艦橋

 水平線の範囲以内に西側艦船8隻が遊弋していた。

 「アメリカは戦艦含めた艦隊を張り付けてくる。人気者は辛いな」

 「アメリカに損をさせているというのなら、ウラルとシベリアは成功でしょうね」

 「P15テルミートの装備で、驚いているだけでは?」

 「射程80km。マッハ0.9。弾頭重量454kg。狙いが正確なら、これこそ、戦艦の復権だよな」

 「70トン級ミサイル艇でもP15テルミートを装備できますよ」

 「68000トン級戦艦でなくてもいいのでは?」

 「・・・そうだったな」

 「ウラルも、シベリアも、どこかの国に突入させて、領土にするよりないですかね」

 「その前例が戦艦の運用維持の理由なのだろう」

 「ミサイルが開発されると、それも怪しくなるが」

 「やはり、3番艦は、ないようです」

 「昔と違って対艦ミサイルがある。埋め立ての前に完全に破壊されるだろう」

 「戦争では、ウラルも、シベリアも、役に立たないかもしれませんね」

 「戦争が始まれば、ドイツ北部、ノルウェーのどこかに乗り上げさせられそうだがな」

 「戦争にならないことを望みますよ」

 「この戦艦、座礁させてしまうのは惜しいですからね」

 「日米で戦争して欲しいものだな」

 「ええ」

 

 

 日本の某所

 一人の少年が数人の男たちに囲まれいじめられていた。

 日本は、一度、村八分に遭うと悲惨この上なかった。

 「ちくしょう、ちくしょう、土建屋め。俺のかあさんは、飢えて死んだんだぞ」

 「ば〜か。ば〜か。自業自得だよ」

 「や〜い、や〜い。自業自得、自業自得」

 「ちくしょう。ちくしょう」

 「お前たちこそ、散々、俺たちの親を扱き使って、貧乏人を戦場に追い立てて」

 「自分たちはぬくぬくと生活していた吸血鬼じゃないか」

 「や〜い、や〜い。吸血鬼、吸血鬼」

 「ちくしょう。ちくしょう」

 「殺されなかっただけありがたく思え〜」

 「思え〜 思え〜」

 「ちくしょう。ちくしょう」

 「・・・やめなさい」

 黒服、金髪の女性が立っていた。

 そして・・・

 ソビエト連邦は、世界最大の国土を支配していた。

 満州・朝鮮の併合で東方の価値が拡大すると、

 物流・交通のための路線充実が重要になる。

 ソビエトは、シベリア鉄道だけでなく、満州・朝鮮鉄道を整備。

 そして、中国連邦にも及ぶ大鉄道網を広げようとしていた。

 釜山港

 ロシア人が我が物顔で闊歩する世界。

 役人の前に金髪黒服の女性と黄色人ガニ股の少年が立っていた。

 「バルナ・メーテル・・・目的は?」

 「諜報関係よ」

 「KGB?」

 「ええ」

 「連絡は受けている」

 「子供は、日本人かね?」

 「ええ、荷物運びで雇ったの」

 頬の赤いソビエト役人がパスポートをメーテルと鉄郎に返した。

 「ウダーチ (幸運を)」

 「ありがとう」

 ソビエトの役人が去っていく。

 「諜報って?」

 「情報の運び屋よ」

 「どっちの?」

 「両方・・・」

 「メーテル。どこに行くの?」

 「鉄郎。若者は、そんな些細な事を気にするものじゃないわ」

 鉄郎は、メーテルから貰ったマカロフを弄ぶ。

 「でも共産圏に入って大丈夫なの?」

 「ええ、元ロシア公爵の血筋でも、いまは国籍が違うもの」

 「なんで、日本人の僕を拾ったのさ」

 「日本から入国するからよ」

 「日本人が一緒だと動きやすいの。公爵家の宝を掘りだしたら山分けしましょ」

 「上手くいくかな」

 「西側の資本家から出資されているから大丈夫よ」

 「埋めている場所は私しか知らない」

 

 

 釜山駅

 朝鮮半島で生き残った朝鮮人は、わずかしかおらず。

 ロシア人に使役させられていた。

 ソビエト軍人に朝鮮人が殴られていた。

 「や、やめ・・・」

 メーテルが鉄郎を止める。

 「やめなさい。私たちは旅人。余計な事に口を出せば、殺されるわ」

 「で、でも、酷いよ。あんなの・・・」

 鉄郎は、自分が追い詰められてきた境遇を思い出して悔しがる。

 「鉄郎。やめなさい」

 「・・・白人が偉いんだね。黄色人種は、少なくて虐げられて、かわいそう」

 「かわいそう?」

 「殴られているのは、あの落書きを書いた朝鮮人よ。読める?」

 !?

 “共産主義で日本を占領しよう。共産主義者で日本人を支配しよう”

 「朝鮮人が描いて、ロシア人が外交上の理由で落書きを消す。その繰り返し」

 「そんな。なんで・・・」

 「そうしなければいられない衝動」

 「それ以外に自己の存在を証明できない民族」

 「そんな、酷いよ」

 「人は自分で選んだ道で苦しむ。心が社会を作っていくものよ」

 「日本人は軍国主義で苦しめられ」

 「朝鮮人は小中華思想、反日思想で苦しめられ」

 「ロシア人は、ボルシェビキに苦しめられる」

 「全て自分たちで選んだ選択よ」

 「ボルシェビキ?」

 「自己正当化のため革命を正義としながら、一党独裁で革命させない人たち」

 「・・・ぼ、僕の親父やお母さんは、国を守るために戦ってきたのに」

 「土建屋に裏切られて殺されたんだ。一緒なものか」

 「人の心を踏み躙れば、いずれ代価を支払わされる・・・」

 「いつだよ」

 「権力に酔い、見境がなくなれば、多くを道連れにして滅んでいく」

 「軍人も、土建屋も、ボルシェビキも・・・」

 「そして、人は、戻ることのできない歴史の歯車に支配され、慟哭しながら生きていく」

 「そんなの悲し過ぎるよ」

 「わたしたちの旅も、そういう旅よ」

 そして、奇妙な二人組の旅が続く。

 ソ連は、日本を対米戦の盾にしようと画策し。

 アメリカは、日本を対ソ封じ込めに利用しようとする。

 その確執と過程で、日本人は、比較的、容易に両陣営を行き来できた。

 

 

 

 08月25日

 日清食品が世界初のインスタントラーメン。チキンラーメンを発売。

 

 

 中国大陸、

 揚子江を境にした南北で、大きなスローガンが掲げられていた。

 中黄連邦 “大躍進、人民公社運動”

 中華合衆国 “大躍進、自由資本運動”

 揚子江を挟み、独善的で排他的な政策を展開される。

 北は共産主義理想の追求であり。

 南は資本主義世界の追求だった。

 しかし、実態は同じで “非て似なる” 政策であり、

 どちらも権威主義的な社会が広がっていた。

 セカンド・ニューヨーク公園

 「結局、中黄連邦が共産党の搾取、中華合衆国が官僚の搾取ですかね」

 「まぁ どっちの主義も絵に描いた餅のようでもあるが生産量は増しているし」

 「脅威と言えば脅威だな」

 「中国の成長率は高いですからね」

 「しかし、人口で頭割りすれば、今世紀内は、大丈夫だと思いますが」

 「人口で頭割り?」

 「バカをいうな。中黄連邦は共産党で頭割り。中華合衆国も官僚で頭割りだ」

 「な、なるほど、確かに中国人の8割は奴隷のようなもの」

 「それだと、今世紀内で大国ですか」

 「世界最大の人口で、二つの中国官僚は、搾取率で無理が利く」

 「今世紀内にアメリカの資本家と並ぶ事になるな」

 「き、厳しいですね」

 「北をソ連、東欧、日本。南をアメリカ、西欧、日本で半分以上の資財を搾取しなければ、そうなる」

 「搾取できそうですか?」

 「搾取できるかもしれないがね」

 「我々は、利潤を大きくするため中国を発展させてしまうことになりそうだな」

 

 

 白レンガの住人たち

 世界最強最大のアメリカ海軍も、対日作戦計画の見通しが立たなかった。

 日米が戦えば日ソ関係が強化され、泥沼になることは明らかだった。

 ニキータ・フルシチョフの日本の常任理事国入り要請は、大きな外交的得点となり。

 ドワイト・D・アイゼンハワー大統領の外交的失点となって国際政治に影響を与えていた。 

 「日本の戦闘機は、ミグが主力だそうだ」

 「格闘戦は良さそうだ。むかしのゼロ戦並みかな」

 「ゼロ戦より手強かろう」

 「脅威だっただろう」

 「驚異の間違いだろう」

 「あははは・・・」

 「無線は聞こえない。銅線は油紙が巻かれて。パッキン不良でオイルは垂れ流し」

 「あげく、防弾がねぇ上に機体に穴が空いている」

 「良くも、まあ、あんな機体にパイロットが搭乗できたものだ」

 「アメリカ軍パイロットならボイコットだな」

 「トラック航空部隊は、燃料を減らして機体強化」

 「アメリカ製の捕獲品を使っていたので騙されてましたからね」

 「そうそう、情報とまるで違ったから参ったよ」

 「集団攻撃も、高々度からの一撃離脱も防がれた」

 「まぁ 1000馬力でも迎撃機に特化すれば、戦えるだろうさ」

 「また、機体に超々ジュラルミンを使っているんじゃないか」

 「まさか、超々ジュラルミンは、長く使っていると強度が落ちる」

 「戦争末期、空中分解が怖くて訓練できず、日本軍パイロットの練度が落ちたのもそれだな」

 「いや、正確には着陸の衝撃に脚が耐えられなくなったのだろう」

 「アメリカが体当たり攻撃を恐れたのもそれだな」

 「しかし、トラック攻防戦の、あの時点で体当たり攻撃はないだろう」

 「もっと、追い詰められて、自暴自棄でが日本人らしいからね」

 「前線基地の司令官の裁量で、アメリカ軍の侵攻が押しとどめられるとはね」

 「あ、そうそう、その司令官たちは、どうなったんだ?」

 「日本に居辛くなって、ボルネオの密林に追い立てられたらしいよ」

 「はぁ〜」

 「悠々自適の暮らしらしいけど、土建屋にとっては、日本に居られると邪魔な存在なんだろう」

 「いやだねぇ そこまで利権に囚われるものかな」

 「軍属の逆襲を恐れてのことだよ」

 「軍国主義より、いまの日本の方が隙がなくて手強そうだ」

 「アメリカ軍人も張り合いがないと肩身が狭くなるな」

 「戦雲が低いと軍人は、白い目で見られやすくなりますからね」

 

 

 ウェーク島

 一辺2kmの三角形で総面積1.51ku。最大標高9m。

 日本は、戦後、埋め立てと拡張工事を行い。

 総面積1.51kuは、2.1ku。

 最大標高9mは、最大標高150m。

 全長3000mの滑走路。

 補修ドック(全長200m×全幅23m)を備えた停泊地。

 150mまで造成された高台に大型レドームを整備していた。

 そして、このウェーク島と南鳥島基地で外郭哨戒ラインを構築していた。

 滑走路に2機の大型機が着陸する。

 一機は、ツポレフTu16バジャー

推力 自重/全備重 全長×全幅×全高 翼面積 最大速度 航続距離 機銃 対艦ミサイル
9520kg×2 37000/75800 34.8×32.99×10.36 164.65u 1050km 7200 23mm×7 2

 なぜ着陸していたかというと売り込み。

 厚木から南鳥島まで飛べる事実確認のため。

 そして、アメリカに日ソ友好を確信させるためでもあった。

 日本軍将兵が、ため息混じりに戦略爆撃機バジャーを見つめる。

 スペックの性能に文句をつける気はなく、

 問題は仕様の耐久性と燃費だった。

 ジェット燃料もタダではなかった。

 発熱量、燃焼性、揮発性、腐食性、貯蔵安定性、熱安定、凍結などなど、

 様々な条件を加味すると破産モノだった。

 土建屋にすれば格好の餌食で “穴掘れよ、この馬鹿が!” と言われかねない。

 戦車を配備する金で地下基地を広げているようなもので、

 ここで、航空機関連予算まで、狙われては、防空で穴があいてしまう。

 つまるところ、予算内で性能×機体数×経費を確保しなければならず。

 足が出ると竦んでしまう。

 そして、もう一機、ツポレフTu95ベア

推力 自重/全備重 全長×全幅×全高 翼面積 最大速度 航続距離 機銃 対艦ミサイル
15000×4 95000/187000 49.13×50.04×13.30 289.9u 925km 6480〜10000 23mm×1 16

 「すげぇ ターボプロップをここまで完成させる国は、ソ連だけだな」

 「680km以下で飛べば燃費が良いけどね」

 「あはは・・・」

 「しかし、でかすぎるよな。良く着陸できたもんだ」

 「埋め立てて、3000mまで拡張したからね」

 「もうちょっと、小粒で対艦攻撃に適した機体って、ないのかな」

 「まぁ どこか無理しているところがあるからね」

 「んん・・・」

 「開発中のスホーイSu7フィッター」

 「使えるの?」

 「さぁ 出来立てみたいだけどね」

 「戦闘爆撃機だから攻守で使えるが航続力が短い、駄目だな」

 「ちっ!」

 「まぁ ベア・・・かな」

 「大き過ぎるだろう」

 「だよねぇ・・・」

 「アメリカのボーイングB47ストラトジェットが欲しいぜ」

 「売ってくれないのか?」

 「買うと日ソ関係で支障が出る」

 「第一、アメリカは、日本に対艦攻撃機なんて、売りたかないだろう」

 「表面的でも軍ロ民米の法則が崩れるとまずいか」

 

 

 外光を集めて地下に誘導し、天井を高くする。

 横が狭く感じられても閉塞感が小さくなっていく。

 これは、人が地上で生きてきた事と直立歩行型であるためと言える。

 橋梁計算だと横に広げるより、高さを確保する方が楽だったりする。

 地下空間が意外と広く感じたりするのは、アーチ状の天井が高いせいだった。

 赤レンガの住人たち

 戦後の世代交代と軍縮で比較的、合理的な国防計画が進んでいく。

 戦前と違って冷や飯ぐらいの軍部は、国防で窮した。

 一定以上の質と量を得ようとするなら、装備を取捨選択しなければならず国産は少ない。

 不足分の装備は、外国から購入する。

 好都合な事に時代は、軍需産業が最大にまで拡大されたのちの戦後軍縮。

 各国の軍産企業は、肥大化した産業を維持するため、民需転換を図る。

 巨大な利権は、うま味が大きく簡単に切り替えられない。

 軍需産業は、それ自体が国家財産と言えるほどの高度な技術集団であり、

 惰性と慣性の法則となって、

 うまみが忘れられず生き残りと拡大を図る。

 日本のように社会構造そのものが破壊されない限り、

 構築された利権体制は覆されにくかった。

 たとえ、冷戦構造を複雑な外交バランスで乗り切り、

 大幅な軍拡を防いでも精鋭化が進み。

 軍産複合体は、溢れ残った武器弾薬を輸出し、利益を出さなければ開発が行えず、

 企業経営も成り立たない。

 軍部ポスト削減で出世の見込みがなくなった将校が巷に溢れると不心得者も現れる。

 そして、戦後の日本国防を担ったのは、その溢れた武器弾薬と不心得者たちだった。

 「時代は電子装備を求めているんだけどね」

 「土建屋には、わからんのだろう。東京タワー計画も潰しちゃうくらいだし」

 「穴の中じゃ レーダーより赤外線だろうね」

 「どちらにしろ。地下じゃ電撃作戦は通用しないよ」

 「ふつう戦争は、地上戦で負けると終わりなんだけどね」

 「海中でさえ戦場になっているのだから、地中だって戦場になると思うよ」

 「でも潜地艦は建造できないよ」

 「シールド工法があるだろう」

 「掘削機を回す電力って、洒落にならないと思うよ」

 「年々、掘削費用が高騰しているのが痛いね」

 「規制はあっても、40m以下は無地主だから、コスト的に悪くないと思うけど」

 「集光とか、下水関係が煩わしいから」

 「アメリカやソ連の宇宙開発より、足が地についているよ」

 「・・・地の底」

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 やっちゃいました。銀河鉄道999です。

 清涼剤という事で・・・って、この二人、どうなるんだろう。

 ダイヤとか、インペリアル・イースターエッグとか、玉璽とか、

 ロシアの財宝でも持ち返るのだろうか。

 

 

 国防戦記では、人口減と地下施設の建設が進みます。

 面での拡大が狭められ、沿線沿いに経済が伸びていきます。

 皺寄せで、特撮モノの標的、東京タワー計画が潰されました。さみしい〜

 

 

 日本潜水艦 大綱60隻。

 艦齢20年で計算すると年間3隻建造すれば良いことになります。

 潜水艦は、トン数当たりの単価が高く。60隻となると、相当な金額になりそうです。

 大戦中の既存艦が残っているので、建造は、1隻で実験的な潜水艦です。

 命名は、龍。または、海に由来する潮、波から取ります。

         
赤龍(せきりゅう) 青龍(せいりゅう) 玄龍(げんりゅう) 灰龍(はいりゅう) 白龍(はくりゅう)
緑龍(りょくりゅう) 紫龍(しりゅう) 朱龍(しゅりゅう) 緋龍(ひいりゅう) 蒼龍(そうりゅう)
金龍(きんりゅう) 銀龍(ぎんりゅう) 鋼龍(こうりゅう) 尖龍(せんりゅう) 海龍(かいりゅう)
瑞龍(ずいりゅう) 天龍(てんりゅう) 帝龍(ていりゅう) 鳳龍(ほうりゅう) 凰龍(おうりゅう)
雷龍(らいりゅう) 隼龍(じゅんりゅう) 鍾龍(しょうりゅう) 雲龍(うんりゅう) 陣龍(じんりゅう)
覇龍(はりゅう) 霞龍(かりゅう) 鬼龍(きりゅう) 虎龍(こりゅう) 牙龍(がりゅう)
渦潮(うずしお) 巻潮(まきしお) 荒潮(あらしお) 黒潮(くろしお) 赤潮(あかしお)
綾潮(あやしお) 早潮(はやしお) 満潮(みちしお) 若潮(わかしお) 磯潮(いそしお)
春潮(はるしお) 夏潮(なつしお) 秋潮(あきしお) 冬潮(ふゆしお) 雪潮(ゆきしお)
朝潮(あさしお) 夕潮(ゆうしお) 長潮(ながしお) 灘潮(なだしお) 大潮(おおしお)
綾波(あやなみ) 浦波(うらなみ) 磯波(いそなみ) 敷波(しきなみ) 長波(ながなみ)
高波(たかなみ) 大波(おおなみ) 清波(きよなみ) 玉波(たまなみ) 涼波(すずなみ)

予備

藤波(ふじなみ) 朝波(あさなみ) 夕波(ゆうなみ) 岸波(きしなみ) 沖波(おきなみ)
         
         
         

 

 

 さて、龍号型ですが、大は小を兼ねる。でしょうか。

 敗戦していないので規模は持続したまま。

 時代的に高張力鋼が使われてそう。装備は時代相応でしょうか。

 前時代的で硬直した軍官僚の半分が追い出されているので、

 新規軸の取り入れられるかもです。

海龍型 潜水艦 (改龍号) 1958年型
排水量 全長×全幅×吃水 ディーゼル・モーター 航続力 速力 魚雷 本数 深度 乗員
水上 3400 120×12×7 8000 32000 16 6/2 30 200 100
水中 6500 5000 340 20
 
史実 おおしお 1965年型
水上 1600 88×8.2×4.7 8000   14 6/2     80
水中 2200 3900   18
 
史実 そうりゅう 2009年型
水上 2900 84×9.1×8.5 8000   13 6     65
水中 4200 3900   20
                 

 幅広な艦内で活動はしやすく、急速潜航が弱そうです。

 細長なので、球長な現代型潜水艦より旋回性と潜航深度で弱いかもです。

 

 

 NASAの前身であるNACAは年間500万ドルの予算。

 NASAは、年間50億ドルを超える。

 アポロ11号の月往復は、200億から250億ドル。

 史実で、円に換算すると350円を掛けることになります。

 米ソは宇宙開発。日本は地下へ潜ります。

 

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第16話 1957年 『戦車がないよ』
第17話 1958年 『心が社会を作っていく』
第18話 1959年 『気休めにはなるね』