仮想戦記 『国防戦記』
第18話 1959年 『気休めにはなるね』
週刊少年マガジン、サンデーが創刊。
モスクワの飛行場
新型ミグ21戦闘機が翼を並べていた。
アメリカがF4ファントムを開発。
ソビエトは対抗上の必要に迫られ、日本軍関係者を招いて宣伝する。
日本とアメリカの民間取引が大きくなりつつある昨今。
ソビエトは、軍事的な側面で日ソ関係を維持しようとする。
政治・経済・軍事は、外交の駆け引きで、
しばしば利用されトータル的に処理される。
というわけで表面上 “何で?” と思われる取引も行われたりする。
ミグ19 | ミグ21 | スターファイター | F4ファントムU | |
全長×全幅×全高 | 12.54×9.00×3.89 | 14.11×7.15×4.71 | 16.7×6.69×4.11 | 19.20×11.71×5.02 |
翼面積 | 25 | 23 | 18.2 | 49.2 |
重量/最大重量 | 5447kg/7560kg | 5150kg/9080kg | /12490kg | 13757kg/28030kg |
推力 | 3250kg×2 | 6120 | 7170 | 7962kg×2 |
最大速度 | 1452km | 2175km | M2.2 | M2.23 |
航続力 | 1390km/2200km | 1600km/1900km | /2920km | /2600km |
武装 | 30mm×3 | 30mm×1 | 20×1 | 20×1 |
ロケット・ミサイル弾 | 6 | 4 | 4 | 8 |
爆弾 | 250kg | 1330kg | 3400kg | 7258kg |
初飛行1958年 | 初飛行1958年 |
「どうです。ミグ21戦闘機は?」
「実に素晴らしい開発力ですな。日本は真似ができません」
「ですが日本の生産力は非常に高い」
「既存の技術ですから」
「開発は予算と勇気。なにより想像力と先見性が必要です」
「ご理解いただければ嬉しいですな」
『それに特許の9割は、ガラクタ』
『そうでなくても予算難、権威、保身、無理解で埋もらされるか』
「・・・日本も、もう少し予算があれば、開発費を捻り出せるのですが」
「まだ試験段階ですが、アメリカ製の新型戦闘機に引けを取らないはずです」
「むろん、購入を考えています」
「しかし、なにぶん、予算内に納めなければならないことですし・・・」
「・・・やはり、穴掘り屋は、お強いですか」
「ええ、土建屋は、見境がなくて、日本の国土を二階建て、三階建てにする気ようで・・・」
「それは、豪儀ですな」
「しかし、T55戦車は入り用でないですか? 安くしますよ」
「新型戦車を開発されたようですな。ですが、その金でミグ戦闘機を購入しますよ」
「なるほど・・・SSC3スティックス沿岸防衛ミサイルは、どうです?」
「射程85km。マッハ0.9。523kgHE成形爆薬です」
「そうですな。そちらの方が、求めやすいかもしれません」
「水際作戦より、上陸させてからのゲリラ戦が国防の骨子ですので・・・」
「上陸する将兵は怖いでしょうな。得るモノより失うモノの方が多そうだ」
「その方が軍属の待遇が良くなるので、望むところなのですが・・・」
「・・・正気な国は日本侵攻を嫌がるでしょうな」
「そうですか」
「侵攻する陸海軍で不公平感が大き過ぎると、不和の原因になりますからね」
飛行場の脇に日本製の雪上バスが並んでいた。
軍事部門はソ連が優勢だった。
しかし、民生部門になると日本が強くなり、
軍備増強で硬直化しつつあるソビエト連邦の社会機能が日本のサービスと製品で補完され、
結果的に日ソ貿易は拡大していく。
間宮海峡トンネルは8km。
宗谷海峡トンネルは44km。
津軽海峡トンネルは22km。
日ソ間の交易量は、日本列島とユーラシア大陸を繋ぐトンネルが完成すると飛躍的に増大する。
そして、ソ連側も呼応する。
ハバロフスクから間宮州側に1000kmの鉄道が伸びていく、
満州・朝鮮の就労人口を路線の全長を割ると、
1kmの路線建設に投入される延べ人数が弾き出される。
夏場に飲まず食わずで労力が磨り潰された。
結果的に鉄道は完成してしまう。
一方、日本側も、間宮海峡トンネルが完成し、樺太は大陸と連結されてしまう。
日本側の路線が有利だったのは、地下鉄の路線は季節に関係なく動くことだった。
全天候交通路線は暗く閉ざされて伸び続け、樺太の南北を貫き、
樺太・間宮の経済を成長させていく。
樺太州 豊原
「総延長は、マンハッタン島並みの地下鉄だと」
「利益にならないのに?」
「赤字をどうするんだろうな」
「国債で補填。あと、地下工場を移転させて、無理やり利益を上げさせるんじゃないか」
「夏は良いけど。冬がな・・・」
「だから地下鉄なんだろう」
「駅周辺に地下工場を広げて利益を上げられるだろう」
「本当に利益を上げようと思えば、北海道や本州まで繋げないと無理だと思うよ」
「運賃が高いと、それも無理そうだな」
「国防費でやればいいのに」
「国防費が少ないから肩代わりだろう」
「むかしは、軍事費から補助金が出ていたのに今は、土建屋が補助金を出している」
「むかしは、人件費で潰しが利いたけど、もう駄目だな」
「これから地下鉄の建設は高騰していくよ」
「いやだねぇ 世知辛くなって」
「ウラジオストック州(満州・朝鮮)が日本経済を引き揚げてくれるさ」
「向こうの方が潜在力高いぞ」
「ところがウォッカ漬けで一人当たりの生産力は小さいらしい。冬になると特にね」
「じゃ 稼げる?」
「どうも、ダイヤ鉱山があるらしい」
「本当に?」
「わからんが、それなりに密輸されてきている」
「そういえば、ポツポツと入ってくることがあったが・・・」
「南アフリカに頼らずに済むなら大きいだろうな」
「日本がシベリアを底上げすれば、ロシア人の人口が増える」
「人口が増えれば、人口を支えるために日本から商品を購入したくなる」
「ご、ご都合主義だな。それで、ダイヤを買えるのか?」
「例え軍人であっても食べたいものは食べたいだろうし」
「生活に潤いがなければ亡命を考えるだろうね」
「ソ連の闇経済に頼って国防を賄うって、まずくないか」
「連中だって日本人の階級差別と不公平感を利用して浸透している」
「日本人がロシア人の欲望を利用して浸透したって良いじゃないか」
インドネシア連邦
なぜ、ボルネオ州の日系コロニー都市が鳥類名から付けられるようになったのか。
その経緯は紆余曲折あって定かではない。
軍艦名から付けるべきという話しもあった。
しかし、良識派が巻き返したともいえる。
結果、50個のコロニー都市に鳥類の名前が付けられてしまう。
どちらにしろ、インドネシア連邦の州に過ぎないのである。
土地や資源で余裕のある州なのだが、やはり、ゴタゴタはある。
ボルネオ州 第03コロニー都市アカハラ
区役所の一室
「アメリカがインドネシア連邦議会で天然保護法を通過させようとしている」
「役所仕事で1年以上、手間取らされたら事だよ」
「あれこれ、規制をかけられたら業者と結託させられる」
「その連邦法が通過させられたらコロニー都市の再開発は暗礁に乗り上げるな」
「州法レベルで抑えさせられるのなら、融通は利くよ」
「連邦法で一括管理させようという腹だろう」
「アメリカは、日系の力を削ぎたいに決まっている」
「スマトラ・ジャワで、うまく行ってないからって足を引っ張る気だな」
「まぁ 都市計画は大局的な見地から重要だと思うよ」
「しかし、水利を考えると農地優先だろう」
「視野の狭いことを言うな、工業用水がなければ話しにならないだろう」
「下流に第06都市ホシガラスがあるだろう」
「工業廃水を水田に引き込めるか。ちったぁ 考えろ」
「「「・・・・」」」 むっすぅうう〜
人は、視野の大きさ、大局意識でなく、利害関係でぶつかる。
これだけ面積があれば、これだけの農地が作れる、というものでもなかった。
そこには治水や道路を必要とし、様々なインフラが求められられた。
複雑に利害が絡みながら水田が広がり。
自給率で安定するようになると人口が増える。
そして、製造業、サービス業も盛んになっていく。
当然、有利な地所があり、利害が絡んで衝突する。
上流側が農地になりやすく。
下流が工業地になりやすくても利害が衝突し。
さらに同じ河川に都市がいくつもあると、
都市間の利害が激しくなった。
不利な状況になると採算性で不利になり、
条件が悪くなると都市間の格差にもなっていく。
そこにはボルネオ州全体を見渡す高い視野も戦略もなかった。
少しでも良い条件を勝ち取ろうと足を引っ張ったり、いろいろ。
中国大陸
揚子江に利権を有するアメリカ・イギリスは、中国の発展と成長を危惧する。
南北中国間で戦争が始まれば揚子江の権益地は、戦乱に巻き込まれてしまう。
権益地そのものが人質であり、安易に中華合衆国を成長させられない。
一方、ソビエトも満州・朝鮮防衛のため、
中黄連邦の国力増強に手枷足枷を掛ける。
米英ソとも同じ思惑で共謀し、中国に工業力を付けさせないとか。
兵器より民生品が多いとか、中国大陸の成長は、微妙なレベルといえた。
揚子江は浚渫され、大型船の往復も増えていた。
アメリカ・イギリスの権益地は、国境線に沿って堡塁が造成されていた。
戦車と歩兵は、堀を越えられず登坂もできず・・・
揚子江ニューヨーク権益市
M48パットン戦車が配備されていた。
52年から59年まで12000両が生産され、西側の主力戦車でもあった。
中華合衆国にM46、M47戦車が配備され、
中黄連邦のT54戦車と対峙していた。
しかし、権益市の防衛は、中国の人海戦術に対し、
より効果的な防衛策が講じられていた。
米英権益地は中国領に比べ、
十数メートル高い段差で造成され、さらに高くなろうとしていた。
権益者たち
「日本のボルネオ州入植は、安全で羨ましいね」
「こっちは、権益地そのものが南北中国の争奪地になっていて、命がけだな」
「おかげで、ハイリスクハイリターンか」
「こっちに来るアメリカ人は、命懸けの人間ばかりだ」
「命知らず、だろう」
「揚子江で儲けているのが日本人ばかりなのが忌々しいね」
「サービス能力だよ。エアコンが壊れてもすぐに直してくれるのは日本人だからね」
「揚子江を浚渫してくれるのも日本人か?」
「アメリカの労働者はどこに行ったんだ」
「蒸し暑過ぎて汗水流す仕事を避けたがるからね」
「それに、どうしても安く上がる日本に仕事を発注してしまうのさ」
「だけど、これだけ造成しても中国人は、不安だよ。
「こっちが弱ったら這い登ってくるんじゃないの」
「日本みたいに地下に潜るか」
「戦車で地上を制圧できても地下は制圧できないけど・・・日本の真似はいやだ」
「結果的にビルごと埋め立ててしまえば、そうなるよ」
「それで中国軍の侵攻は防げる」
「利権を侵害すれば、原爆を落とすって伝えているよ」
「あと権益地は、中国領より不平腐敗が少ないし」
「商才に長けた想像力は期待できる、中国人の家賃収入に頼りたいね」
「人民から集めたお金を自分の名義で銀行に預けている中国官僚も多いからね・・・」
「まぁ 発覚を恐れて彼らが守ってくれるかもしれないね」
「それに新型M60戦車も配備されるだろう」
「まぁ 気休めにはなるね」
トンネルを潜り、堀を越える橋を渡ると、白人向けの店が並び。
そのかなたには、中国社会が広がっていた。
中国官僚のピンハネが大きいのか、商売を成功させているのは、全て国民党の身内。
北では、これが共産党の身内で、構造は、ほとんど変わらない。
中国人官僚たちと資本家
「急成長の中国に良く来たある」
「新しいマンションを見て欲しいある」
「いま投資すれば、大儲けある」
「それは楽しみですな」
自動車を駐車場に止めると、係員がやってくる。
簡単な目くばせで料金が半額になり、領収書不要にしてしまう。
客は料金が半額になり、係員は私腹を肥やすことができた。
商品が消えるわけでなく、
形に残らないサービスだと、こういう事が起こりやすかった。
先進国であまり起こらず。
後進国だと、たまに起こり。
中国だと、北も南も日常的に起こる。
そうしないと係員は生活していけず。客も利益が得られない。
そして、建設される住宅マンション。
投資して株を買えば儲かるという。
日本じゃ考えられないほど鉄筋が少なく、梁は細く、煉瓦が積み上げられていく。
電気配線や水道パイプはいい加減。
ポンプの力不足は明白で、最上階まで給水できそうになかった。
政界、財界、マスコミ関係者は、あまりのずさんさに呆れかえる。
「「「・・・いやぁ 凄いですな」」」
「そうある。そうある。これで大儲けある。投資したら日本も大儲けある」
『日本の欠陥住宅が豪邸に見える・・・』
「アメリカ人も、イギリス人も、中国企業にもっと発注すれば良いのに馬鹿ある」
『そりゃ 現実を知っているからだろう』
「いずれ、金に任せて、アメリカもイギリスも買収して、権益地に家を建てるある」
「日本人、いま、いっぱい投資すれば大金持ちある。マスコミも、お願いある♪」
『『『こいつら戦前と、ちっとも変っとらんな』』』
「・・・そうですな。本社と掛け合ってみますが・・・」
「女たちも用意したある♪」
「「「ぅっ・・・」」」
『『『・・・戦前と変わっとらんな』』』
「」
「」
酒池肉林
この時期、中黄連邦は、ウィグル。
中華合衆国は、チベットへと食指を伸ばしていく。
そして、双方の戦線は、銃撃戦など、紛争を起こしつつ、
西へと勢力が拡大していく。
戦後の日本は、軍国主義が後退していた。
そして、国家基盤を整えるための積極財政が繰り返し行われていた。
これは、社会基盤が脆弱なため民間活力の力で経済を引っ張れず、
消極財政に至っていない事が挙げられた。
アメリカ、イギリス、ソビエトがが中国大陸の利権を日本から奪った事で、
日本の工業力が利用され、
日本経済は大陸の資源と市場を得られ、利益が増していく、
また内需拡大による公共設備と、
再生産が庶民の生活環境を変え、
社会基盤が拡充され利便性を高められていく、
それは、日本の風潮を自由で拝金的なものへと変え、
軍人・軍属に対する排斥も薄れさせていく。
もっとも、戦前戦中に失われていた資源と、
市場を得られても簡単には先進国になれない。
日本の基礎工業力は、これから培われ蓄積され、裾野を広げていくのであり、
まだ年月を必要とした。
工作機械は、この時代になっても外国製が優勢だった。
安直な方法として、アメリカから高性能工作機械を輸入すれば良いのだが、
そうもいかない。
冷戦中、ソ連の兵装を購入し、ソ連に商品を輸出していた事が災いする。
アメリカから購入できたのは、二線級の中古工作機械であり。
欧米の最新の高水準工作機械と比べ、歩留まり、生産性とも低かった。
マザーマシンを維持できる環境が作られても、
程度の低い品質の物しか製造できない。
この工業力の格差を埋めたのが人件費の安さだった。
基本的人権を軽視した労力の集約によって産業を下支えしたに過ぎない。
そして、戦艦シベリア、ウラルを建造した日本の海軍工廠は、次期艦隊構想で・・・・
紆余曲折の結果・・・
思いもよらない方向に向かい始める・・・
「・・・本当に建造するの?」
「だってしょうがないだろう。電子戦で圧倒的に不利なんだから」
「んん・・・」
「どうせやられるにしても、一方的というのも、あれだし、一矢報いたいよね」
「そ、そりゃそうだけどね」
「これなら精度いらないし。基礎さえきちんと作れば、いくらでも更新できる」
「んん・・・」
「余裕、余裕」
「んん・・・」
土建屋たちの晩餐
「他の後進国の執権者は売り渡す資源があった」
「そして、日本になかっただけだろう」
「・・・それを哀れだとは思わないよ」
「資源に頼ってばかりでは、近代化で失速するだろうし」
「日本の近代化は、ほかの後進国ができない事だったからね」
「だから日本は、労力で補って曲がりなりにも工業化できたのだから良いじゃないか」
「問題は質の向上でなく、量の拡大で良いのか、ということかな」
「日用品なら問題なく作れるよ」
「それは精度上の問題であって、生産力の問題じゃないね」
「もう、昔と違うのだから、民族主義を振りかざして虚勢を張るより、正直になるべきだね」
「針小棒大するつもりはないよ」
「一点突破・全面展開で勝ち名乗りを上げられるわけでもない」
「戦中は、一点突破・全面崩壊するところだったからね」
「経済で同じ愚を犯すつもりはない」
「攻勢の限界を超えていたからね。戦線縮小は、理に適っていたよ」
「おいおい、まだ積極財政は続けるべきだろう」
「大衆の生殺与奪を握ったからって彼らが大人しく従うと思えないがね」
「ガス抜きが必要だよ」
「昔と違って、差別できる朝鮮人はいない」
「労働組合を作られると煩くなりそうだが」
「労働組合を認めないなら、もう少し待遇改善を図るべきだろう」
「共産革命は洒落にならないぞ」
「まぁ ソ連との交易拡大は共産主義を引き入れるようなものだがね」
「間宮、樺太の防衛は?」
「十分、勝てるよ」
「樺太は地下鉄を伸ばして全天候型。ソ連の沿海州鉄道は天候で制約される」
「国内の共産主義者は?」
「企業内レベル。マスコミレベルだろうね。広域的な組織は、存在していない」
「しかし、ソ連の労働者より待遇が良ければ優位だよ」
「ソ連は、冬季の生産性が低下するから、生産効率は、日本の方が良いよ」
「公平感は別じゃないの、富裕層が貧しければ、いまより貧しくても我慢するとか」
「感情論として理解できても、そりゃ バカだろう」
「負の感情が歴史を動かすこともあるよ」
「やはり日本の特殊性を利用して、最大限、生産に寄与してもらおうよ」
「ボルネオへの道が開けているし、ソ連の内情も知りやすい」
「そういう強圧的な押さえ込みは、どうかと思うよ」
「ボルネオに行くのなら行ってもいいと思うよ。日系人拡大は、悪くない」
「コロニー都市は、軌道に乗りそうなの?」
「大変だけど、黒部ダムも一息着きそうだし、満州や南米に入植するよりマシだよ」
「だと良いけどね。元軍属が選民意識を振りかざさないか心配だよ」
「その辺は懲りているだろう」
「むかしと違って、海軍力が乏しいからね。助ける気もないし」
「だと良いけど、いまの価値観で当時を当てはめてもねぇ」
「いまの価値観?」
「当時の視野の狭さと頑迷さ。利権体制と保身の強さが良く分かるよ」
「戦場しか考えられない人間と、戦略しか考えられない人間と」
「兵站まで考えられる人間はおのずと視野と展望が違ってくる」
「確かに兵器さえあれば、って、時代だったからね」
「時代に流された言い訳じゃな。今も昔も時代を作るのは人間だよ」
「軍事費拡大のため敵としてレッテル張りまくること自体、国家の首を絞めているのと同じだからね」
「せめて、国家レベルの視野があればよかったのだけどね」
「国家レベルどころか、日本軍全体も視野に入ってなかったよ」
「陸軍レベル、海軍レベルの視野だったな」
「そういえば、陸海軍が互いに相手のせいにしながら軍事費を増やしていったっけ」
「統一性も、協調性もなしだったな」
「小船でも乗員同士協力し合えれば、時化を乗り切れる」
「しかし、乗員同士で、いがみ合うと大船でも沈むことがあるからね」
「視野の狭い馬鹿どもに国を預けた時点で大日本帝国は、終わってたよ」
「結局、世界中を敵に回したからね」
「おかげで、土建屋は、我が世の春だ」
「今度は敵を作らないようにしたいものだ」
「でも東京オリンピックをブリュッセルに取られたのって、痛くない」
「デトロイトより良いかも」
「どの道、東京オリンピックは、間に合わなそうだったし」
「穴ばっかり掘っているからだ」
「MiG21を買うからだ」
「もう少し鉄道を伸ばしてからでもよかろう。その方が東欧の客も増えそうだし」
「じゃ 68年東京オリンピックを目指して・・・」
シールドマシン。
カッターヘッドと呼ばれる先端の掘削刃は、超硬合金や焼結タングステンカーバイトなど、
強靭な素材が使われる。
この最先端部は、強靭であるほど資源採掘、地下施設の拡張が容易になり。
採算性の良いカッター・ヘッドがあれば、深く、大きく、長く掘り進めることができた。
国家の命運を左右しかねない戦略物資でもあった。
日本が軍事費をケチりながら設備投資を繰り返し、
世界屈指のカッター・ヘッドが完成する。
凝り性な日本人熟練工が、もっとも得意とするのは規格品を揃えた大量生産より、
一品仕上げの芸術品だった。
そして、この凝り性な気質は、カッター・ヘッド製造で遺憾なく発揮され。
欧米の高品質工作機械で製造されたカッター・ヘッドと品質で並んでいた。
「ようやく、まともに張り合えそうなカッターヘッドになったよ」
「日本の国力を集約すればアメリカ大手資本並みのモノが開発できるわけだ」
「国民を取捨選択して、労使を使い捨てできるアメリカ大手資本が羨ましいね」
「日本だと、国は国民丸抱え、企業は終身雇用で、採算性で負けているけどね」
「まぁ しょうがないけどね」
「これで、造船に引き続いて、穴掘りも欧米列強に並ぶよ」
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月夜裏 野々香です。
取捨選択の結果、日本は、史実と違う国防体系になりそうです。
アメリカとの関係で一線が引かれ、
先端技術は、入手し難くなりそうです。
また、ライセンス生産も規制されると思われます。
日本が欧米から得られるのは、二線級の科学技術でしょうか。
国防の指針は、潜水艦による通商破壊と地下引き籠りで持久戦。
防空は、ソ連製の機体を改良していくつもりですが、少しずつという感じでしょうか。
地上戦闘は、戦車に上陸されると、かなり怪しく。
地下戦闘は、地の利を生かせるので有利になるはずです。
アメリカが上陸してくれば、ソ連の支援を受けられ。
ソ連が攻めてくれば、アメリカの支援を受けられる。
そういった位置づけでしょうか。
そろそろ、史実のベトナム戦争の準備を・・・・
と思い気や、南中国合衆国が西側なので補給線を維持できずベトナム戦争は無理。
基本的に戦争は嫌いなのですが、それじゃ 面白くない。
仕方がないので・・・・
第17話 1958年 『心が社会を作っていく』 |
第18話 1959年 『気休めにはなるね』 |
第19話 1960年 『ゲージ大戦の兆候』 |