月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想戦記 『国防戦記』

 

 

 第24話 1965年 『それはそれ、これはこれ』

 02/07 アメリカが “青海” 爆撃を開始する。

 02/21 マルコム]暗殺

 

 04/01

 東シナ海を空中巡洋艦ベアの4機編隊が飛ぶ。

 電子戦型、対空ミサイル迎撃型、対艦ミサイル攻撃型、対潜哨戒型。

 電算能力の低さと積載能力で4機種に分かれてしまう。

 空中巡洋艦は、潜水艦の脅威もなく、戦闘機の攻撃からも逃れやすかった。

 悠々と洋上を飛ぶ編隊の内情は決していいものではなかった。

 “基幹産業を地下に埋めれば、そんなもので守らなくても良いい。こっちに金をよこせ”

 が言い分。

 それは、それで正しかった。

 しかし、バランスを考える政府は、領外へ威力哨戒できる機体は欲しいと考え。

 軍属・軍部も経費を落とそうと涙ぐましい努力の末。

 省エネ型エンジンに改良する。

 空中巡洋艦ベアも、貨客機カブも、性能を引き揚げ軽量化し命脈を保っていた。

 日本は、大陸に依存し水上艦艇が減少していた。

 そして、空中巡洋艦構想自体は珍しいわけでなく、

 平時の費用対効果だと大ありだった。

 電子戦型ベア コクピット

 「改良したエンジンは悪くないようだが、あまり変わり映えしないな」

 「機体を軽量化しても電子部品は重くなっているし、積載総量は変わらないからね」

 「そういえばソビエトがアントノフ22アンチスを売り込みに来てたぞ。ベアと同じエンジンだろう」

 「世界最強のジェットプロップエンジンを見せつけたいんだろう。きっと」

 「15000馬力か輸送機なら4発じゃなくても、2発で十分だと思うけどな」

 「双発の方が使い勝手が良いかもしれないがね」

 「アントノフ22は、出来立てほやほやだから実績が欲しいよ」

 「スペック上は、悪くないと思うけど、もっと軽量化した方が良いな」

 「日本は、戦車を載せないから114トンをベアと同じ90トンくらいにできるらしい」

 「2階建の旅客機にするらしいよ」

 「買うなら、そのくらい豪勢じゃないと」

 「そういえば、T62戦車を売り込みに来てたな」

 「買うのかな」

 「買うより、穴掘りじゃないの」

 「ったく・・・面白みのない国だ。日本に上陸してくる奴はアホだよ」

 「ていうか、何しに血を流してまで侵攻してくるか、だよね」

 「そういや、奪われるような資源って、なかったっけ」

 「世界に冠たる労働力があるじゃないか」

 「・・・・なんで、アメリカと戦争したんだろうな」

 「愚かで夜郎自大だったからだろう」

 

  

 街頭で、椅子に掛けた初老にカメラが向けられていた。

 「・・・まぁ 当時の日本は、基礎的な社会基盤で低いレベルでした」

 「ですから、アメリカ、ソ連の外圧は、恐ろしく感じられたわけです」

 「さらに国防の手段であるはずの軍事力ですが・・・・」

 「それが、存在そのものが目的になるほど肥大化し聖域を作った事で、腐敗が始まったわけですよ」

 「しかし、戦後の飢餓が元で民衆の憎しみの矛先が軍部に向けられ」

 「“昭和の改新” が起こった事は正しかったと言えます」

 「しかし、いま、国民が求めていた社会基盤は急速に広がりを見せ拡大しています」

 「巷では、政官財の癒着、土建屋の独裁などと言われていますが合法的に収益を上げ・・・」

 ばきっ!

 初老の老人が路上で殴られる。

 「合法的。ふざけんな!!」

 辺りがざわつき。周りが暴徒を止め、引き離した時、

 初老は、数発殴られたあとだった。

 「政府から収入を保証されているくせにでかい態度とりやがって!」

 「俺たちが人の間で、どんなにペコペコしながら生きていると思ってる!!」

 「「「「・・・・」」」」

 タダの暴行で大したことない事件だった。

 しかし、相手は土建屋の重鎮で、しかも生番組。

 “昭和の改新” の記憶も残っているのか、上へ下への大騒ぎになってしまう。

 結局、軍属も、土建族も同じ穴の狢で政官財の癒着構造。

 昔なら政治的な圧力で村八分。抹殺だったが人の目が多過ぎた。

 当時を思い出したのか、白い目は、真っ青な土建屋の重鎮に集まっていく。

 大人であれ、子供であれ、力関係に支配される。

 言わずに分かれば聖人。

 言って分かるなら賢人。

 実情は、世俗人だった。

 重鎮の言うことは、あながち間違いではなく、

 殴った方の言い分も間違いではなかった。

 マスコミの影響力で、増長し過ぎた土建屋の発言とされていく。

 マスコミの誘導で世論が土建屋に批判的になり始めると状況も変わる。

 それまで政官財と結託し、

 我が世の春を謳歌していた土建屋の特権外しと規制が始める。

 一時は、組合の合法化までいきそうになった。

 しかし、外交戦略上の事情から組合は作られず。

 代償で労働者のための保養所が各地に建設されていく。

 そして、この保養所建設もタダではなく、維持費など必要だった。

 1万円で買ったモノで商売し、一日、2000円の利益を上げていく。

 1万円のモノがなく、10万円で買ったモノで商売し、一日、2000円の利益を上げていく。

 上記は、新規産業を興しやすく。

 下記は、新規産業を興しにくい。

 物価の高騰は、競争の乱立を妨げ、巡り巡って庶民のクビを占めてしまう。

 働き以上の収益を求めた時、赤字国債が増え、社会は無責任となり、後退していく。

 とはいえ、土建屋批判が高まれば、積極財政が低調となり。

 相対的に社会資本が増え始め新興企業が起こる。

 結局、人は、小さくても一国一城の主を目指す。

 それが、人の性であり、

 自由資本主義の発展と根幹であり、

 市場を奪い合う弱肉強食となっていく。

 

 

 厚木基地

  重量kg 推力 全長×全幅×全高 翼面積 最大速度 航続距離 火器 ミサイル 爆弾
ミグ21バラライカ 7820/9120 6175×1 14.10×7.15×4.71 23 2230km 1970km 23mm×2 最大1300kg
スホーイ7・フィッター 11800/19630 7800×1 17.37×8.93×4.57 27.6 2230km 1520km 23mm×1 最大2400kg
                   

 日本空軍が迎撃戦闘機と戦闘爆撃機を運用できるようになった年でもあった。

 もちろん、それで、満足しているわけでもない。

 「数を減じることになっても、ジェット・ファン・エンジンの開発費を捻り出すべきだろうね」

 「ただでさえ、数が少ないのに?」

 「フィッターの可変翼は、かっこいいけどね」

 「対艦攻撃用に可変翼はいるのか?」

 「攻撃時と脱出時に主翼を後退させて速度をあげるんだろう」

 「航続距離が増大しているのだから、効果はあるんじゃないか」

 「そういえば、ジェネラル・ダイナミクスF111も可変翼だっけ」

 「戦闘爆撃機は、あの機体の方が良かったけどな」

 「ジェット・ファン・エンジンは、ソ連に開発してもらおうよ」

 「そうなんだけど、ソビエトは対外協力で浪費しているから・・・」

 「共産主義の輸出?」

 「騒乱を起こしているだけだろう。投資の割に損している気がするね」

 「ぶっちゃけ、アメリカの戦費に使われた資本の5分の1が海外投資されていたら」

 「日本とドイツは戦争せず済んだ」

 「人類はね。助け合うより。殺し合う方が好きなんだよ」

 「まぁ そのおかげで、この仕事が成り立っているんだけど」

 「とりあえず。迎撃機ミグ21と戦闘爆撃機スホーイ17で、一息だろう」

 「あとは、予算内で質の向上と数の最大公約数をどうするかだな」

 「でも、沖ノ鳥島を埋め立てるとか言ってたら厳しいような気もするな」

 「また、土建屋の嫌がらせかよ」

 「東西4.5km。南北1.7kmを埋め立てて、基地にするんだと」

 「あの辺、島がないから、まぁ ありなんだろうが、軍事費からも出せと言われてもな」

 「メガフロートより、楽らしいよ」

 「軍事費から金を出さないのなら、ちっとも文句がないけど」

 「あいつらの懐を温めるため、国防があると思い込んでいるんだよ。きっと・・・」

 「結局、どこかの懐が温まるようになっているんだな」

 

 

 

 ボルネオ州

 赤道直下で島全体が熱帯雨林気候に属していた。

 湿度は高く、平均気温約26度。乾季はなく、年間平均雨量約4000mm。

 北部から中央部にかけて900〜2300mの山々が連なり、最高峰キナバル山は4101m。

 ラジャン、カプス、バリト、マハカムなどの河川に水力発電ダムが建設されていた。

 山岳部はツツジ、ラン、ウツボカズラが生え。

 ココヤシ、オレンジ、バナナ、マンゴーが生育する。

 そして、チーク、硬質樹木、コクタン、ビャクダンなど50種以上の樹木がそびえ立つ。

 ゾウ、サイ。オランウータン、テナガザル、テングザル、野生の牛。

 小型の哺乳類は、マカク、トラ、ネコ、バク、アライグマ。

   ヤマアラシ、ムササビ、オオコウモリ、各種のシカ。

 爬虫類は、ワニ、トカゲ、ニシキヘビなど多種のヘビ。

 鳥類は、ワシ、ハヤブサ、ハゲワシ、オウム、フラミンゴ、サイチョウなどなど。

 鉱物資源は、油田。石炭・金・銅・スズ・鉄・

   マンガン・アンチモン・ボーキサイト・石膏・大理石・岩塩・水銀・ダイヤモンド、硫黄

 農業産品は、コメ・キビ・トウモロコシ・キャッサバ・サツマイモ・

   ヤムイモ・サトウキビ・キュウリ・カボチャ、熱帯果物

 ほか、ゴム・ココヤシ・タバコ・マニラ麻・コショウ・コーヒー・ニッケイ・ショウノウ・・・

 そして、各種の毒性のモノと風土病。

 宝の山。もとい、毒の山に居座った元軍属主戦派日系人は1800万であり、

 玉砕染みた開拓でボルネオ州の開発を進め成功していた。

 総論でインドネシア人なのだが各論で日系人。

 日本から追い出されたはずの元主戦派軍属と、

 追い出した日本の土建族は、言葉が通じる利便性から取引が拡大していく。

 日本製三式指揮連絡機。

 ソ連製ヘリのミルMi6フック。

 Mi8ヒップは、ジャングルの上空を飛び。

 50個の都市を結びつけようと地下鉄が伸びていく。

 熱帯なのだから穴に入らなくても・・・

 なのだが除湿さえすれば地上より過ごしやすかった。

 そして、人口が増え産業が大きくなっていくに従い、

 比較的過ごしやすい山岳部へと日系人が集まり始める。

 インドネシア連邦軍でも日系人部隊は、言語人口の総数で圧倒的に強く、

 現地民も日本語を話し始めていた。

 熱帯雨林の大地でも最新の製鉄所が建設される。

 国内の鉄鉱石で賄う程度であり、生産量はそれほどでもなかった。

 しかし、希少資源がふんだんに使えることから高い技術を持ち。

 国家にとって必要不可欠な官僚機構、発電、製鉄、流通機構など構築されると、

 ボルネオ州政府の力は、強力になっていく。

 

 ボルネオ州空軍

 ミグ21、スホーイ17が山頂の滑走路に配備されていた。

 「こんなに雲と雨が多いと飛ばせねぇな」 日本から派遣されてきたパイロットがごねる

 「飛ぶことはできるだろう。降りるとき困るだけ」

 「山の上に飛行場なんて作るからだ」

 「占領されにくいだろう。日本と違って守るべき資源が多いからね。第一、山頂は涼しい」

 「資源に胡坐をかいていないだろうな」

 「アメリカ並みの勤労意欲はあるよ」

 「ふ、不安だな」

 「まぁ それよりあるか。これからは、ゆっくり人口が増えていくだろうな」

 「もう一つの日本か。インドネシア連邦も、ボルネオ州も、随分と大きくなったものだ」

 「日本の富裕層が動くとこんなものだろう。満州帝国とは規模が違うよ」

 「また軍国主義化しないだろうな」

 「もう良いよ。利権で地位を得て儲けたいだけで、兵士になりたいわけじゃないし」

 「アレだけ殺されたら、もう懲りたか」

 「まぁ どっちも経験を生かすだけの犠牲は出したわけだ」

 「しかし、いまの日本は、土建屋が強過ぎないか?」

 「んん・・・まぁ あいつらもいずれ懲りるさ」

 「人間は、欲に勝てないよ。シールド工法が安いのは良いけどね」

 「それも、資源の山に住んでいるからだろう」

 「おいおい、開拓で大変な犠牲を出しているんだぞ。未知の病気も怖いし」

 「だが生き残った者の利益は莫大だな」

 「それは言える」

 

 

 遼東半島

 青海省を巡る中黄連邦と中華合衆国の戦いは、激しさを増していた。

 遼東半島は、戦後も日本領として残され、船が横付けされ、積み荷が降ろされる。

 「RPG7とAKM(AK47の後継)ある。9M14マリュートカ対戦車ミサイルある〜♪」

 「せ、戦争が始まったのに相変わらずだな」

 「最大の戦争は祖国が勝つことより、自分の人生に勝つことある」

 「た、確かに・・・」

 「戦車も持ってこれるある」

 「戦車はいらないな」

 「大丈夫ある。壊れたことにして持ってくるある。RPG7の試し撃ちにすれば良いある」

 「しかしなぁ」

 「そうある。我が国に来るある。撃ち放題ある」

 「青海かね」

 「そこでも良いし、解放軍駐屯地でも良いある〜♪」

 「「「「・・・・」」」」

 そう、金さえ出せば、何でもありの世界だった。

 

 

 そして、香港島

 「84mm無反動砲カールグスタフとM40無反動105mm砲ある〜♪」

 「青海で使わなくていいのか?」

 「使ったら、金にならないある」

 「そ、それは、正しいけど・・・」

 「そして、こっちが、M14自動ライフル(7.62×51)」

 「新型のM16突撃ライフル(5.56×45)とM60機関銃(7.62×51)ある」

 「おお〜」

 「横流しの方が新型が多いある〜」

 「M60(7.62×51)は、ソビエトのRPK(7.62×39)。PK(7.62×54)とどっちが上かな」

 「過不足無しでだろう。アメリカは陸上兵器で手抜きすることが多いから」

 「青海は、場所柄、M14ライフルとM60の組み合わせの方が良いだろうな」

 「アフリカ大陸は、M16の方が好まれてそうだけど」

 「やっぱり、小口径高速弾に時代が変わっていくのかね」

 「弾数が多いと、嬉しいからね」

 「いっぱい持って来るある〜♪」

 「あはは・・・」

 

 

 青海省

 アメリカとソビエトは、中国天元紛争と言われる戦いに巻き込まれていた。

 青海省にアメリカの軍事拠点を作られるとソビエトは苦しくなり、

 青海省からアメリカを叩き出せれば、ソビエトの安全保障は高まった。

 青海紛争は、世界の天元戦と言えなくもないものの、

 海抜4000m級の高原に基地建設は困難であり。

 連邦軍と合衆国軍の航空基地は、青海外延部に建設されているに過ぎない。

 両方の基地はまだ遠く。空戦時間は制限されていた。

 機体の国籍は中黄連邦と中華合衆国だったものの、パイロットの国籍は雑多で多様だった。

 天空が狭く。

 地表と高度の感覚が狂いやすいかった。

 中黄連邦のミグ21バラライカとスホーイ17

 中華合衆国空軍のF104スターファイターとF4ファントム。

 どちらも、迎撃機と戦闘爆撃機のような関係だった。

 その4機種が標高3000mの山々の上空を駆け巡り、航空戦を展開する。

 ミグ21がフレアを落としながら機体を滑らせ、

 0.カンマ数秒ごとに天と地が入れ替わり、

 山々が頭上にみえ、サイドワインダーが、コクピットのすぐ傍を抜けて行く、

 この時期のサイドワインダーは、性能が低く、

 太陽を利用したり、フレアで誤魔化したり、機動力に任せて避けたり。

 運と努力と根性で回避しやすかった。

 アフターバナーの急加速で、見る見るうちに燃料計が減り、

 スターファイターの20mmバルカンの射線を間一髪でかわし、降下して逃れた。

 「ちっ!」

 今度は、捻りながらGに耐え、ナイキ・エイジャックスMM3地対空ミサイルをかわす。

 地対空ミサイルは追撃していたスターファイターに命中して四散する。

 「ミハイル! ヤバい。燃料がなくなる」

 「バハロフ。こっちもだ。退きあげよう」

 2機のミグ21は、戦場を離脱していく。

 空戦で勝った方が戦場で有利だった。

 しかし、山岳戦は、酸素不足で電撃戦のような真似ができず。

 頂きの取り合いで、ヘリボーンの戦いになった。

 ミルMiヘアの限界高度は、4000m。

 青海の標高3000m〜4000mは、ヘリが燃料を食いやすい。

 それでも山間の影、小さな岩棚に着陸すると敵の動向を探り、通信を送る。

 山岳戦で使いにくい152mmカノン砲も正確な座標があれば、命中率が飛躍的に高まる。

 152mm砲弾が山なりに山岳を飛び越えると、11000m先の中国合衆国軍陣地を襲い。

 集結しつつあった戦略物資を吹き飛ばしていく。

 そして、山間の隙間を飛ぶFi156シュトルヒ連絡観測機も現役だった。

 ジェット戦闘機といえど、峰スレスレに飛ぶ飛行機は、見つけにくく、

 発見できても手を出しにくく。

 サイドワインダーは、さらに当たらない。

 山岳を盾に飛べば地上からの対空砲火も命中し難かった。

 そして、日本製の三式指揮連絡機と空中戦をしたり。

 低次元な競り合いが行われたりした。

 三式指揮連絡機の方が上昇高度5600と少しばかり余裕があり優秀だった。

 もっとも、どちらの機体も連邦、合衆国に売られていた。

 同型機同士が空中戦を行ったり。

 所属のはっきりしている連邦のYak12クリーク。

 合衆国のセスナ・バードドックが撃墜されたり。

 無分別で無節操な戦場と揶揄される。

 そして、空冷1000馬力の複葉機のアントノフ12ククルーズニクは12人乗り。

 武装重量で人数が減少する。

 この機体は、低地なら時速50kmで飛行可能と言われ。

 山岳地帯でも安直な空挺作戦で使われる。

 数十機で背後に空挺降下し、退路を断てば、国民軍は降伏した。

 

 

 

 アフリカ大陸

 独立した共産国家は、言語が統一されておらず、識字率が低く、貧しかった。

 当然、独立を勝ち取った勢力の独裁国家となっていく。

 アフリカ大陸で強い言語は、宗主国の英語とフランス語。

 まず、この二つを使いこなせなければ、話しにならなかった。

 そして、仮に英語かフランス語を話せても、いくつもの現地語の方が多数派を占める。

 宗主国イギリス側で独立した国があった。

 潜入した共産圏の軍事顧問団の下、共産ゲリラが組織されAK47、RPGで武装する。

 「いいか、宗教は、権力者と結託している道化に過ぎない」

 「イェッサー!」

 「宗教でいう平安は、アヘンであり、幻想にすぎない。信じても裏切られるだけだ」

 「イェッサー!」

 「戦って奪わなければ、我々の人民の権利と平等は、絶対に得られない!!!」

 「イェッサー!」

 「傲慢な政府軍を殲滅し、我々の権利を勝ち取るのだ」

 「イェッサー!」

 「権力と特権に浸る豚どもに憎しみを持て、殺せ、殺せ、殺すのだ!!!」

 「イェッサー!」

 

 

 一方、独立を勝ち取った国で共産主義を選択した国も少なくない。

 ソビエトと共産諸国は、国連予算を後進国復興へと誘導し、

 独立したばかりの後進国は、ソビエト連邦に靡いていく。

 そういった国は、体制維持のためT34戦車が配備されていた。

 そして、AK47で武装した現地部隊を率いるのは、共産圏の将校だった。

 「資本主義の飼い犬を捕らえ、処刑せよ。一人たりとも逃すな」

 「ウィ!(はい)」

 「やつらは、この国の資源を敵に売り渡して生きている吸血鬼だ」

 「ウィ!」

 「拝金主義者であり、売国奴であり、人民政府の敵だ!」

 「ウィ!」

 「真に権利を得て平等な世界を築きたいのなら、銃を取って立ち上がれ!」

 「ウィ!」

 「寄生虫どもを皆殺しにしない限り、平等な世界は作れないぞ!!」

 「ウィ!!!」

 日本の商店が外国人向けに商売をしていた。

 客は、ロシア語、ドイツ語、スペイン語(キューバ人)、中国語・・・

 あと、現地有力者の言語・・・

 「・・・しょうがないと言えばしょうがないか」

 「イギリスも、フランスも植民地独立を妨害していたからね」

 「国連から予算をふんだくって救いの手を差し伸べたのは、ソビエト共産主義国家群」

 「しかし、共産圏で日本の出店とはね」

 「共産圏が閉塞的な国じゃないという証明なんだろう。日本は国連理事国だし」

 「まぁ 日本が自由資本主義というのが大きいわな」

 「それ、建前上だろう」

 「・・・ヤーポンは、積極財政の利益誘導と計画経済バリバリ。資本主義と思えねぇな」

 「ズドラーストブィチェ(いらっしゃい) 日本は私有財産を認めているよ」

 「日本国民は権力者に寛大すぎるんだよ」

 「いつものやつかい?」

 「ダー、ダー(うん、うん)」

 チキンラーメンと金が取り引きされる。

 「ここに日本商店がある一番の理由は、日本の店で買うのが一番良いからさ」

 「スパシーバ (ありがとう)」

 ロシアの将校が去っていく。

 中国人がチキンラーメンを指さす。

 「思想や信条なんて飾りある。偉い人は、みんな知ってるある」

 「こんにちは、豊大人。今度、中華料理店を出すって?」

 「そうある。儲けるある」

 「華僑ネットワークか。なんか、負けそうだな」

 「中国人は海外に出て力を付けるある。鮭と同じある」

 「そういえば華僑も増えているような」

 「中国国内は、危険ある」

 「何で?」

 「農薬。工業排煙と廃水ある」

 「あ、危ないな」

 「いまの華僑は、共産圏と自由資本主義圏に広がっているある」

 「日本人もがんばるある」

 「こ、怖いな。ひ、広がるのか。それ・・・」

 「大丈夫ある。権益地と海外は規制が五月蠅いある」

 「ソビエトが日本の新幹線でユーラシア大陸鉄道を建設して、華僑が使うわけね」

 「そうある♪」

 華僑は、祖国すら踏み台にして伸し上ろうとするバイタリティがあった。

 

 

 

 09/01 印パ戦争

 カシミールをめぐる戦争で日ソは協調介入しつつ、停戦交渉で圧力をかけていた。

 共産主義国家ソビエト連邦は、ヒンズー・イスラムの宗教戦争を仲介し、

 世界中の目が注がれる。

 「ヒンズー教徒は、少数の我がイスラムの同胞100万に対し」

 「略奪、虐殺、レイプを働いたのだ」

 「それは、イスラム教徒とて同じであろう。我がヒンズー教徒にも被害が出ている」

 「なんだと! カシミールはインド領だ!!!」

 「ふざけるな! カシミールはパキスタン領だ!!!」

 喧々諤々 喧々諤々

 「・・・貴様らの宗教戦争でユーラシア大陸鉄道をご破算にしてしまうつもりか?」

 「「・・・・」」 憮然

 「戦いから何が生み出されるというのだ?」

 「互いに憎悪し、傷つけ合うだけではないか?」

 「「・・・・」」 憮然

 「このバカ者どもが、平和と言うのは、互いを信じ」

 「手を取り合い助け合うことから生まれるのだ」

 「「・・・・」」 憮然

 「ヒンズー教は、寛容であり、包容力のある宗教なのではないのか?」

 「・・・・」 むっすぅう〜

 「イスラム教は、芯の強い宗教だと思ったが、ヒンズー教に甘えているのではないのか?」

 「・・・・」 むすぅう〜

 「そうであろう。日本代表」

 「えっ あ・・・ その通りですよ」

 「ここは、インドも、パキスタンも、軍を退いて、和解を・・・」

 「「・・・・」」

 「これ以上、この美しい大地で異教徒の血を流すのは、神への冒涜ではないのか?」

 「「・・・・」」

 ソビエト連邦は、ユーラシア大陸鉄道網を完成させ。

 対西側勢力で対抗したいだけだった。

 数日後、ニューヨークで号外が流れる。

 “ソビエト連邦が印パ戦争を仲介。停戦させる”

 “ソビエト、日本、インド、パキスタンが4カ国共同平和宣言”

 なぜか、世界中を感動させてしまう。

 

 

 マリアナ諸島アグリハン島

 南北12km。東西8km。総面積47ku。標高965m。

 1917年に噴火し、

 島の中央に深さ500mのカルデラが作られていた。

 北北西96kmにアスンシオン島、南60kmにパガン島が存在する。

 火山活動で危険な島にも、哨戒用レドームを建設し、地震観測所も併設していた。

 標高が高ければそれだけ有利で、索敵海域は半径116km。

 対空レーダーは、その数倍に広がっていた。

 長期的にみると、巡洋艦を建造するより安上がりで、職員も維持費も少なく済んだ。

 防衛より哨戒のための拠点で、3000m級滑走路と停泊地が整備されていた。

 戦時にでもなれば、人員が増え、地対空ミサイルが設置され、対潜哨戒機が配備される。

 平時は、定期連絡機が行き来するだけの島でしかなかった。

 「・・・台風がこっちに向かってるぞ」

 「漁船団に知らせた方がいいな」

 カツオ・まぐろ漁船7隻が台風から逃れるため逃亡していく。

 

 

 ソビエト連邦ウラジオストック共和国が国力を増大させている時期。

 このシベリア鉄道は、ソビエト連邦の東西をつなぐ最重要交通網となっていた。

 そのための鉄道補強工事も進められ、

 核弾頭ミサイルを含めた軍事予算が削られるほどだった。

 新幹線がモスクワへ向かってひた走っていく。

 シベリア鉄道は、積雪のない状態で勾配がなく、直線であれば、時速250kmで走行可能だった。

 以前は、国防上の問題で検問が多く、平均時速60km。

 しかし、新幹線の導入。

 そして、日本の要求により平均時速150kmと高速化していく。

 検問は、国際線の如く厳重になった駅で集中して行うことになり。

 軍人が列車の運行を妨げる事もなくなる。

 おかげで、間宮国境の駅からモスクワまでの9000kmを60時間。

 最西の東ベルリンまで80時間で結んでしまう。

 それほどソビエト連邦の統一が重視され、

 ウラジオストック共和国の独立を防ぎたかったと言える。

 そして、背に腹は代えられないのか、

 新幹線システムの根幹は日本人の手で行われ、

 ソビエト連邦の大動脈は日本人が握っていた。

 ソビエト連邦の軍事的覇権で足を引っ張ったのは、ウラジオストック共和国潜在能力の高さであり。

 そのための新幹線システムであり。

 日本人がシベリア鉄道を行き来できるのも、そのおかげと言えた。

 シベリア鉄道の輸送量は情報と合わせて、毎月のように増便を増やし、拡大していた。

 そして、ソビエト経済は、日本からの生活物資の輸入とサービス業で活性化していく。

 「・・・日本も、これくらいの検問をしないと駄目なんだろうけどね」

 「ソビエトは、憎まれている」

 「日本は、それほど憎まれていない。その差じゃないの」

 「日本は島国だからね。犯罪を起こしても海岸で捕まる」

 「だと良いけど、知能犯だったらどうするんだよ」

 「不特定多数を殺害してもうまみはないよ」

 「国家テロなんて起こす奴なんて、滅多にいないよ」

 「莫大な予算を掛けてまでやることじゃない」

 「予算を掛けるのはいやでも。起こった後、文句を言うのは自由か」

 「シベリア鉄道の補強工事と複線化が進めば、もっと速くなるだろうね」

 「なるかな」

 「ウラジオストック共和国が大きくなってるからね」

 「日本と同じ平均時速280km台で結びたいだろうね」

 「戦車生産を減らして、その作業をしているよ」

 そして、日本の鉄道システムには双方向通信ケーブルというオマケがついた。

 国境で一旦、交換機を経由し盗聴もされる可能性も高かった。

 しかし、毎日のように情報は膨れ上がり、対応不能。

 なにより利便性が良いのか、ソビエト・共産圏でも喜ばれる。

 特に人気が高いのは、日本製アニメだった。

 たいした検閲もされず翻訳され流される。

 効率性で良かったのが映像を見ながら物事を進められることで、

 比較的、技術力の高い東ドイツ。

 資源が多く人件費の安い中黄連邦との通信も増えていく。

 最重要機密が瞬時に漏れてしまう危険性をはらみつつ、

 利用頻度は次第に高くなっていた。

 

 

 

 無風で波の少ないサルガッソー海域に巨大にな人工構造物が浮かんでいた。

 メガフロート・ウラジオーナ

 巨大な人工構造物に ベア が着艦する。

 組み立てられたミグ21が滑走路に駐機していた。

 日本は、八島、敷島より、巨大メガフロートをソビエト連邦に引き渡してしまう。

 日本は、その代償で膨大な資源と巨大な市場と富を得たことになり。

 西側は、歯噛みしたくなるほど。

 哨戒半径3000km〜5000kmの爆撃機 ベア が、北大西洋のど真ん中に配備され、

 北大西洋全域が ベア の哨戒圏となった。

 北大西洋を挟む西側諸国は、その影響力に騒然となった。

 日本区画が作られ平和利用という建前も、ソビエト戦略潜水艦が入港すると薄れてしまう。

 無論、核弾頭の攻撃でウラジオーナは、簡単に破壊できた。

 記者会見

 「メガフロートのウラジオーナが脅威と言われる」

 「しかし、厳密にはソビエト・東欧軍の分派に過ぎません」

 「分派した分だけ、欧州戦線の戦力比は、西側が有利になっているはず」

 「つまり、ソビエト軍の総量は変わらないのです」

 「それは、ウラジオーナが核攻撃に弱いという事でしょうか?」

 「この世界で核攻撃に強い国が存在するでしょうか?」

 「ウラジオーナは、サルガッソー海域のバイオエタノール開発」

 「そして、救助活動など安全を守るなど、国際協調も兼ねています」

 「ウラジオーナは戦略爆撃機ベア。そして、バジャーを配備していますな」

 「力を伴合わない国際協力があるでしょうか?」

 「我々は、助ける側であって、助けられる側ではないのですよ」

 「なるほど、西側に対する威力哨戒ではないと?」

 「U2偵察機で威力哨戒を行っているのは、ソビエトではなく、アメリカなのでは?」

 「ここは、公海上ですが、領有を主張しないでしょうな」

 「もちろん、一般の軍艦扱いで構いませんよ」 にやり

 「「「「・・・・」」」」

 軍艦は領土の延長だった。

 

 

 シベリアでキノコ雲が上がる。

 「日本国の領海でやればいいのに・・・」

 「国民の反発があるから・・・」

 「我がソビエトの大地なら良いということかね」

 「核実験場でしょ。ここ」

 「まぁ そうだけどね。これで日本も、核保有国の仲間入りか」

 「しかし、見れば見るほど、使いたくなくなる」

 「核兵器使用に反対する軍人は、アメリカでも、ソ連でも多い」

 「大佐も」

 「使う方なら我慢するがね。使われるのはいやだ」

 「なるほど」

 「日本は、どの程度の基幹産業を地下に?」

 「まぁ 基幹産業といっても、ピンからキリまでありますからね。必要最小限ですよ」

 「ふ〜ん ところで例のモノは?」

 「ああ、ジャングル大帝とオバケのQ太郎ね」

 数枚の色紙が渡される。

 「済まんな。子供がどうしても欲しがってな」

 「結構、並びましたが、お安い御用ですよ」

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 史実ではYS11の開発ですが、ソ連製アントノフ12カブを運航しているので、なし。

 代わりに省エネエンジンを国産開発して換装しています。

 ツポレフTu95ベアも省エネ型エンジンに換装しました。

 あと防空は、迎撃機ミグ21と戦闘爆撃機スホーイ17で一息。

 数が少ないのと質で心配ですが、日ソ蜜月は表面的に続きそう。

 

 

 北の中黄連邦と東ドイツ。

 南の中華合衆国と西ドイツ。

 ドイツは、両国とも主義主張で分かれ、思想的に対立。

 中国は、両国とも、主義主張は、服の色が違うだけで、ほぼ同じ一党独裁制。

 しかし、中国とドイツが似ているのは、ソビエトとアメリカの間接支配でしょうか。

 両国とも、政治・経済・軍事で利権が食い込まれています。

 そして、中国は、立場が弱い分だけ、史実より発展しています。

 史実では 11/10 文化大革命が始まるのです、

 ですが、孤立していないので押さえられている段階です。

 

 

 2000万も死んだけど、戦後、日本アニメは大丈夫だろうか。

 大丈夫ということにして置いてください。

 

  

  

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第23話 1964年 『天 元』
第24話 1965年 『それはそれ、これはこれ』
第25話 1966年 『博打は駄目よ』