月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想戦記 『国防戦記』

 

 

 第27話 1968年 『豊原オリンピック』

 日ソ協商の条約文に、この年の豊原オリンピックへの協力が付属的に記されていた。

 豊原オリンピック期間中、東ベルリンから豊原までシベリア鉄道で行くことができた。

 ソビエト連邦は、世界に対し閉鎖されていないと自己主張したいのか。

 新幹線を使ったシベリアの旅を自慢したいらしく、不承不承に協力的だったりする。

 西側諸国もソビエト連邦の様子に興味があるのか、好奇心を煽りたてていた。

 日本は、有色人種の雄であり、アジアの太陽で、隆盛を極める列強の一角だった。

 

 

 豊原オリンピックの準備が整えられ、

 真新しい城郭風の建造物、豊原国立博物館に荷物が運び込まれていた。

 「・・・ドイツみたいに爆撃されてなくて良かったよ。展示できる国宝級モノが多い」

 「そうか? ボルネオから借りるとき大変だったんだぞ」

 「日本美術の価値を理解できるか、別問題だけどね」

 「オリエント芸術で関心を持たれそうだけど」

 「豊原も随分、華やかになった」

 「夏季だけじゃなく。冬季オリンピックも、ここでやれたかもね」

 「何人くらい来そう?」

 「ホテルの予約は満杯らしいよ」

 「いま、また追加で旅館とペンション建設しているんじゃないかな」

 「そんなやっつけで大丈夫か。オリンピックが終わってホテル閉鎖はないだろうな」

 「目先の欲に目が眩んで節操がないから。きっと、後で不良債権だよ」

 「それに、いま、チェコがあやしいから不安だな」

 「そういえば、民主化しそうなんだって」

 「んん・・・準備しているのにオリンピックの足が遠のくのはいやだな」

 「東京でもいけたんだけど、宗谷海峡トンネルと津軽海峡トンネルが完成していたらな」

 「まぁ 今後、人口が増える傾向にあるから、何とかなるけどね」

 「そういえば、まだ、戦後の人口から回復してないかったっけ」

 「昭和の改新から、もう、20年か。当時の事、詳しく話してくれない年寄りが多いからな」

 「苦虫を噛み潰したような表情になるから。余程、酷かったんだよ」

 「地域差があるんじゃないの。米所は、そうでもなかったらしいけど」

 「そういえば、最近は、移転前のルーツ探しが増えたからね」

 新しいトラックが到着して、積み荷が降ろされる。

 「・・・こいつは違うんじゃないの?」

 「大魔神は、庶民の怒りを体現した素晴らしい作品なんだぞ。共産圏では人気がある」

 「まぁ 有名な仏師が彫ったのなら、ありなのか・・・」

 「あ、聞いたか?」

 「日本万国博覧会も豊原でやるってよ」

 「「「道理で設備投資が続いていると思った」」」

 大陸と連結されたおかげか、豊原は、共産圏だけでなく、自由圏にも窓口となっていく。

 そして、土建屋は樺太に設備投資を集中することで、列島縦断鉄道の建設を煽り。

 東北や北海道の開発や設備投資も視野に入れていた。

 

 

 豊原国際空港

 ソ連製アントノフAn2コルト、An12カブ、An24コーク、

 と日本製An22Jアンチスが翼を並べていた。

 日本が好むように改造され、日本製の部品が使われ、

 部品の一部は共産圏にも輸出されていた。

 国内線、共産圏、南方航路はソビエト機が占め、

 アメリカ機は少数派で、太平洋航路でようやく、ボーイング、ロッキードが乗り入れ、

 ボーイング747が着陸すると、アメリカ人たちが降りてくる。

 「豊原の平原は狭いはずだが随分と発展しているな」

 「シベリア鉄道と連結されて、共産圏向けの工場になりましたからね」

 「冬は寒いだろうに」

 「冬でも北の端。海峡を越えた間宮まで地下鉄が続いてますよ」

 「信じられん浪費だ」

 「むかしの日本の軍事力と同じくらいでしょう」

 「あの頃よりは、マシだろうさ」

 「日本が信用できるので・」

 「全面的には難しいよ。しかし、日本は共産圏の良識だよ」

 「一応、私有財産が認められているようですが・・・」

 「恨みがましい、やっかみ、僻み根性集団の中で、唯一、良識的な忠告をする友人といえるね」

 「共産圏の良識ある友人ですか」

 「そういう友人が一人もいないと分別もない、歯止めもない、ならず者集団になるよ」

 「日本が共産圏に良識を吹き込むことができるのなら、存在価値があると言えるが・・・」

 「問題は、共産主義がイデオロギーで優位と勘違いされると困るがね」

 「それで、西側のイデオロギーの象徴も、ここに?」

 「ディズニーランドの候補は、セカンドニューヨーク、広州、東京、豊原だね」

 「セカンドニューヨークは蒸し暑過ぎて。豊原は、寒過ぎるのでは?」

 「豊原ならアメリカ政府が補助金を出すから見て来いだと」

 「それでディズニーランドで、日ソ分断ですか」

 「外交戦略の片棒は気が進まないけどね」

 「ここなら、ソビエトだけでなく共産圏の特権階級が来るから情報も集めやすい」

 「宗谷海峡トンネルと津軽海峡トンネルが完成すれば日本人も集まりやすいですか」

 「そういうこと、それに寒くても地下施設は異常に多いから将来性があるよ」

 「補助金は、いくらほど?」

 「秘密だがね・・・・・・」

 「げっ!」

 「アメリカ政府も焦ってるよね」

 「しかし、共産圏が上手くいってると。フランスとイタリアが荒れるらしい」

 「共産主義のイメージが良くなってしまいますからね」

 

 

 マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師は焦燥感に駆られていた。

 青海争奪戦・アフリカ諸国の内戦に駆り出される黒人に非暴力を訴える。

 しかし、既に公民権は出され、

 法的な平等を勝ち取った黒人は、富を求めた。

 無学な黒人は、戦争参戦で資本を得るよりなく、

 黒人の多くは、アフリカ内戦に送り込まれ、自由主義勢力の一翼に担っていた。

 そして、キング牧師は、孤立し、暗殺される。

 

 

 フランス 五月革命

 パリのゼネストから始まった労働運動が反体制革命に拡大。

 工場は止まり、交通網は停止。

 国会が解散し、戦車が出動する。

 この動きは、ドイツのボンに飛び火。

 さらにイタリアのローマ、フィレンツェにも拡大していた。

 戦後、構築された世界に対する是正のようでもあり。

 古い世代に対する新世代の反発ともいえた。

 

 

 日本の豊原オリンピックと重なるように、

 チェコスロバキアの反革命行動も大きくなっていく。

 プラハの春

 チェコの民主化は、共産主義の思想的な後退、敗北を意味し、

 ソビエト連邦と東欧共産圏に不利な方向に向かっていく。

 東欧 師団司令部

 「それで、同志フルシチョフは、どうすると?」

 「チェコを弾圧するとフランス、イタリアで進んでいる革命気運が頓挫するそうだ」

 「また政治かよ」

 「政治は大切だよ」

 「チェコスロバキアが自由を欲しがっているように」

 「フランスとイタリアは平等を欲しているのさ」

 「どうかな」

 「誰かに抑圧されているような気持ちになるのは当然だよ」

 「いやなら無人島にでも行くべきだ」

 「問題はどっちに転ぶか、だねぇ」

 「チェコを押さえ込まないと、ほかの東欧諸国にも波及する」

 「たぶん、フランス、イタリアで起きている革命勢力を失望させようと」

 「アメリカとイギリスがチェコを煽ったんだよ」

 「汚ねぇ チェコを生贄にして、西側の革命勢力を潰す気だな」

 「しかし、どうするかな?」

 「何もしないと、どっちも損する事になるよな」

 「んん・・・」

 

 

 給油機に改造されたベアが給油ホースを流していた。

 深緑色のミグ21が後方から回り込むと、空中給油が行われる。

 日本は、ツマンスキー・エンジン推力6175kgを再設計していた。

 ジェットエンジンの手前に取り付けたファンが気流を強制的にジェットエンジンに押し込む。

 同時にファンで加速させた気流がジェットエンジンの外側から流れ、

 燃焼したジェット流と合流し、増速して、機体を加速させる。

 文書に書いてしまうと “なんだ” なのがターボ・ファン・エンジン。

 しかし、ターボ・ファン・エンジンは、エンジン径を増やしてしまう。

 ファンを効率良く小さくしなければならず素材、品質、形状など、

 試行錯誤しなければならなかった。

 ターボ・ファン・エンジンを参考にしようにもソビエトは研究途上であり。

 一番進んでいるアメリカも輸出規制の最高機密だった。

 成功すれば推力が効率良く向上し、推力が増え、航続距離も伸びる、

 おいしい状態だった。

 『栗原。試作エンジンの調子は?』

 「安定しているけど、増速は微妙だな」

 「コンプレッサーか、ファンの形状がおかしいんじゃないか」

 『残念だけど情報も、高品位の電子計算機も、工作機械も、最高級のオイルも』

 『アメリカが規制中なんだな』

 「もう、全部、盗んで来い」

 『まだ、同盟国にすら輸出してないよ』

 「ちっ」

 『給油は?』

 「問題なさそうだ。そのまま、飛んでくれ」

 日ソ黄の協調が進むと、日本は資源と市場を得られ、

 社会基盤が充足していく、

 しかし、資本力と科学技術で優れたアメリカとの差は開いていた。

 開発は、膨大な浪費から研磨されて磨き出された宝石だった。

 国が持つ最高の科学技術を集め、組み合わせたモノが兵器となった。

 新兵器開発は容易にできるものではなく、博打にも似ていた。

 企業と国民の民間活力を最大限に利用して競争させ、

 税金と富を吸い上げ、育て上げた巨大産業軍産複合体がなければ困難だった。

 日本国軍は、数と質を最大公約数で振り分けると乏しく、

 無理して少数精鋭を目指しても

 自尊心を満足させるだけで精鋭以外は、平均以下となってしまう。

 日本は、戦中のミッドウェー海戦の戦訓で精鋭主義から均等主義。

 予算の取捨選択が進み、装備品で身の程をわきまえたのか、

 誇大妄想、夢想癖は縮小気味だった。

 

 

 クレムリン大宮殿

 楕円形のウラジーミルの間

 東ドイツ、ポーランド、ハンガリー、ブルガリアの代表が集まっていた。

 そして、日本人代表もオブザーバーとして参加していた。

 「チェコは、そのまま、ですか?」

 「チェコ政府とは合意が済んでいる」

 「不満だがチェコよりソビエト国内問題が優先だ」

 「チェコどころか、民主化の波は東欧全体に波及しますぞ」

 「共産主義の理想は、まだ失望の域まで来ていない」

 「年々 行列が減っているではないか」

 「それはソビエトでしょう。東欧に日本の代理店は少ないですぞ」

 「そちらの国でも日本の専売でも受ければ良いでしょう」

 「共産党は日本製品の専売で安泰ですが、それ以上に日本人が儲けていますな」

 「・・・・」

 「ソビエトは、ウラジオストック共和国との連携を強めなければならない」

 「いまは、余力を失いたくない」

 「東欧がそっくり反体制派に持っていかれるとソビエト連邦も危ないのでは?」

 「既に東欧諸国の利権体制は構築されている」

 「自らの保身は、自らで守るべきだろう」

 「フランス、イタリア、西ドイツの同志を失望させるわけにはいかない」

 「我がソビエトは、同盟国に協力する。しかし、軍は動かせない」

 「しかし・・・」

 「東欧が荒れても、それで、西欧が荒れるのなら構わんよ」

 「西側が荒れる確証はないと思われますが?」

 「既にフランス、イタリア、ドイツで、デモやゼネストは拡大している」

 「我々がチェコを鎮圧すれば西側の同胞を失望させてしまうだろう」

 「日本代表は、どう思うね」

 「発言を求められるのであれば答えますが」

 「西側で革命勢力が増大しているのは事実ですよ」

 「はんっ! 組合のない国が良く言う」

 「日本は、土地の狭い島国ですので他国より余計に働かないと生きていけないわけです」

 「その割には、豊かそうだが・・・」

 「資源に頼れない代わりに気候に恵まれて、冬でも働けますし」

 「それは、御気の毒に」

 「もう、慣れましたから」

 「ふん! 労働者から搾取、扱き使って強国の仲間入りしただけはある」

 「飼い犬のような国民で良かったな。ヤーポン」

 「・・・この場に日本人が参席しているのは、あなた方のシンジケートが推薦したからでは?」

 「に、日本人! 我々を脅迫するつもりか?」

 「まさか、一般論ですよ」

 「と、ともかく、チェコで反革命勢力が増大するのは東欧諸国全体にとって、まずい」

 「もっと、自国民の愛国心に期待すべきでは?」

 「愛国心と思想は別物だよ」

 「我々が愛国心を発揮するからこそ、チェコを鎮圧したいのだ」

 「保身と愛国心も別では?」

 「「「「「同じだよ」」」」」

 翻訳は難しい。

 

 ソビエト連邦は、世界最大の国土、人口も多く、鉱物資源も莫大だった。

 閉鎖的、強圧的な権力が長く続き、

 国民の多くは、貧しく不正腐敗が横行する。

 ソビエトの識字率は、ロシア帝政時代の28パーセントより増え、

 90パーセントを超えていた。

 それでも民衆を結束させられない問題を内包していた。

 国家が税収を集めようとしても “途中で消え” 

 設備投資しようとしても “途中で消え”

 自らの生活圏を守るため弱者を喰い物にし、

 自らのテリトリーを拡大するためライバルと抗争する。

 諸外国から付け込まれやすく、

 金さえ渡せば仲間すら犠牲にし、国益すら売り渡される。

 国民の税収が低く、国庫の大半を資源売却の収入で賄われていた。

 犯罪を犯しても国土は広く捕まり難く。

 警察は惰性、慣習的で金次第でどうにでもなるどころか、金を払わないと働かない。

 闇経済の比重も大きくなり、

 マフィアは、権力機構にまで食い込んでいた。

 国民の納める税収で成り立つ日本と根底から考え方が違っていた。

 ソビエトの権力者は資源を押さえ、

 資源を諸外国に売れば国家税収になり、

 国家と国民を支配できると結論が導き出せた。

 ソビエトは、国民の税収に依存しなくてもよく。

 当然、権力者に必要なのは、一部の特権階層、有益な人間。軍隊。

 国民に対する姿勢は、督戦隊と囚人部隊のそれだった。

 開かれた国にしろというのが土台無理な国といえる。

 外国軍の遠征によってロシア人の団結が保たれただけに過ぎない。

 ナポレオン、ありがとう。

 干渉戦争、万歳。

 ヒットラーさん、助かりました、だった。

 そして、その根本的な挙国一致の問題に日本は深く関わっていた。

 新幹線関連と付属産業で、国民からの税収が増えてしまう。

 ソビエト政府と各省庁は、脆弱な部分を見せてしまうと危惧しつつ色めき立った。

 国民から税金が・・・

 “お小遣いが増える〜♪”

 の魅惑に打ち勝てる政府・省庁は少なく、

 ソビエト連邦は対日的に開国されていく。

 あとは、西側の共産主義運動と東側の民主化運動の錘を

 保身という名の天秤に載せていくだけだった。

 

 

 呉に戦艦ウラルが入港する。

 赤字に黒の鎌とハンマーは、気に入らない。

 しかし、一般公開された艦内に家族連れが入っていく、

 日本人は、大和に似た独特な艦体と鐘楼に見惚れていた。

 ソビエト海軍で海の男然とした部隊は少なく、

 戦艦ウラルは数少ない部類に入った。

 この軍艦を見て勇気づけられ、

 革命政府に身を投じ、ゲリラに身を投じた者も少なくなく、

 大和拡大改良型は、罪作りな軍艦と言えた。

 またアメリカ海軍にモンタナ型2隻、アイオワ型4隻を配備させる口実にもなっていた。

 戦艦ウラル 艦橋

 「一通り手直しが終わりましたよ」

 「ウラルとシベリアは、旧式な割に稼働率がいい」

 「おかげで使いまわされているがね」

 「仁川にもドックを建設しているのでは・・・」

 「んん・・・修復は、日本でやりたいな。いろんな意味で」

 「愛国心を疑われますよ」

 「どの道、ウラルとシベリアは大西洋配備だ」

 「ウラジオストック共和国に義理立てする事はないよ」

 「あそこは、自前の海軍力を欲しがっているようです」

 「極東が大きくなり過ぎている」

 「双頭の鷲は、国章であって、国を体現するものではないのだ」

 「なるほど」

 「それに航行中に不都合があると困る」

 「リストにあるモノも運び込みました」

 「それは良かった。なにぶん、洋上は暇でな。あと、サンボの件。頼むよ」

 「エキシビションですね。ええ、わかっていますよ」

 「だいたい、スポーツ大国のソビエトの代表的なスポーツ」

 「サンボを無視するなど、あってはならない事だ」

 「確かに・・・」 苦笑い

 日本は、開催国と理事国の特権を利用し、

 オリンピック種目に柔道と剣道を採用させていた。

 柔道人口は多く、剣道人口も、シベリア鉄道のせいか、

 西側だけでなく、共産圏にも広がりを見せ、東西対抗という点でも注目される。

 とはいえ、国の思惑がどうあれ、オリンピック種目は、競技人口がモノを言う。

 そして、熱心な競技者が種目を支えるのであって、

 国が後押ししても競技自体に魅力がなければ失墜していく。

 

 この時期の日本は、まだ、先進技術で後れを取っていた。

 また先端技術への進出も警戒されていた。

 日本人が他国で生きていくとき、

 工業力より、商業や伝統的な柔道、空手、柔術に向かいやすかった。

 剣道は、武具を揃えなければならずハードルが高かった。

 しかし、少しばかり国が援助すると広がりを見せた。

 そして、武具があるためか逆に定着しやすかったりする。

 

 

 豊原オリンピックは、シベリア鉄道で移動しやすい温暖な時期に開催され、

 西側に閉ざされた鉄のカーテンを越え、

 シベリア鉄道で日本に向かうルートは注目されていた。

 それが期間限定で解禁となり、シベリア鉄道の客車は満杯になった。

 コンパートメント(個室)席、寝台は人気があり、

 客たちは簡素なコンパートメント(個室)席からシベリアの大地を見渡し、

 途中下車乗り換えの駅ホテルを満杯にしてしまう。

 写真撮影は、制限されていたものの、

 売却用の風景写真は売店と客車で売られており、

 飛ぶように売れて行く、

 「上手く撮れているじゃないか、ロシア人が撮った写真とは思えないな」

 「日本人の写真家が撮ったものらしい」

 「・・・」

 「電気水道は、思ったよりしっかりしているようだ」

 「全部、メイドインジャパンだったよ」

 「働いている人間も日本人がいて横流しも少ない」

 「しかし、ロシア人のサービスは微妙だな」

 「国営ホテルより、マフィア系列ホテルがサービスいいらしい」

 「それでも、庶民レベルらしいけど」

 「・・・オリンピックより、シベリアが見たかったよ」

 「故郷だから?」

 「親は、革命騒ぎで逃げ出したらしいからね」

 「また、創作意欲が湧くんじゃないか」

 「そうだな・・・」

 「プラハの春で共産圏が退いて、イタリア、フランス、ドイツは共産主義が増大してる」

 「共産化しても、民主化できるという安心感だろうな。面白い現象だ」

 「フランスは、最低賃金制を決めようとしているらしいがね」

 「それで治まるかな?」

 「最低賃金を決めると、企業は警戒して雇用を控えるから、ゴタゴタは続くだろうよ」

 「しかし、プラハの春の成功で共産化しても、やり直せるという確証はないぞ」

 「イタリアでは、赤い旅団も激しさを増してるらしい」

 「チェコの春の成功で、共産化を警戒させなくなった」

 「これはある意味怖いよ」

 「日本は?」

 「そうだねぇ シベリア鉄道沿いの日本商店が増えている」

 「日本の成長は、人口激減、農地改革で貧民層の減少。社会資本増大」

 「そして、軍財閥の追放にある」

 「共産圏のシンジケートと結託しているとしたら面白い現象になるね」

 豊原オリンピックの観光客は、急遽建設されたスキー客用ロッジも満杯にし、

 豊原だけでなく、樺太全土のホテルを満たし、

 日本全体の外国人観光客も増加させてしまう。

 メダル会得数は、前回と同様、アメリカ、ソビエトに続いて日本は3位。

 

 

 プラハの春

 チェコの民主化により、共産党一党独裁が消えてしまう。

 民主化運動は、共産党主導部を慌てさせたが、

 一党独裁を放棄した事で保守派は巻き返し、多数派の確保に成功する。

 そして、プラハの春は、フランス、イタリア、西ドイツに嵐をもたらした。

 フランス、イタリア、西ドイツは、軍隊と警察を投入し、

 デモとゼネストを行う民衆を力付くで押さえ込んでしまう。

 そして、アメリカでもリベラル勢力が急増していく。

 

 

 国連会議場

 「我がソビエト連邦と同盟諸国は、フランス、イタリア、西ドイツで行われている労働者への弾圧を非難する」

 「戦車で脅迫して労働者に仕事を強いるなど、非人道的、非人権的である」

 「労働者や農民は決して国家の奴隷などではない!!!」

 「ソビエト連邦は、フランス、イタリア、西ドイツの労働者への武力行使に対し断固として抗議する!!」

 「ただちに労働者への弾圧を停止すべきだ!」

 「「「「・・・・・」」」」

 「そうであろう、日本代表!」

 「へ? はぁ 憂慮すべき事態ですね・・・」

 「「「「・・・・・」」」」

 「西側資本主義帝国は、国際社会の正義と労働者に対する信義を著しく乱している」

 「労働者に対する、このような暴挙が許されるはずがない!!」

 「「「「・・・・・」」」」

 「アメリカ帝国主義とその同盟国は、資本家と結託し」

 「労働者を酷使し、安楽な生活を欲しいままにしている」

 「このような恥ずべき行為を許すべきではない!!」

 「そうであろう、日本代表!」

 「へ? はぁ 憂慮すべき事態ですね・・・」

 「ソビエト連邦と共産主義同盟諸国は、フランス、イタリア、西ドイツに対し、経済制裁を要求する!」

 「そうであろう、日本代表!」

 「へ? はぁ 憂慮すべき事態ですね・・・」

 「」

 「」

 フランス、イタリア、西ドイツへの経済制裁は拒否権が発動される。

 しかし、ソビエト連邦率いる共産圏の神々しい説教が続く。

 

 

 インドネシア連邦

 この国で流通する貨幣はルピア。

 ほかにも円が使われ、ドルも流通する。

 この国も、後進国らしく、資源輸出で成り立っていた。

 後進国の人々は、安定した価値のあるモノで貯蓄したがる。

 貴金属類、ドル、円は、人気があった。

 為替、先物で儲けようというより、いざという時のための保険だった。

 国と一蓮托生といった気持ちはなく。

 イザというとき他者を出し抜いても生き残る、

 といった剥き出しな自意識が育ちやすい。

 国家依存体質より、地域自損自律が強かった。

 それは、先進国も後進国も因果律の結果であるともいえる。

 このインドネシア連邦でクーデター未遂事件が起こる。

 背景は、アメリカ資本主義によるジャワ・スマトラ経済植民地に対する反発と、

 ボルネオ島の日系人がインドネシアの主流派になりつつある現状の打破。

 インドネシア共産党の協力などの後押しだった。

 

 

 ジャワ島沖

 インドネシア連邦艦隊、アメリカ艦隊、日本艦隊が集まっていた。

 インドネシア連邦艦隊 

 インドネシア海軍は、言語上の問題を抱えていた。

 政治的な思惑でインドネシア(ジャワ)語。

 乗員の質の問題で日本語の両方が使われる。

 海賊退治が主な仕事なのだが海軍が海賊と組んでいる噂もある。

 日本から購入した一等輸送艦、二等輸送艦、丙型海防艦が使われていた。

 海防艦 “クディリ”

 「アメリカの戦艦は、大きいな」

 「ボルネオ州艦隊が来る前に終わらないかな」

 「日系人同士で撃ち合いは避けたいね」

 「ボルネオ艦隊の方が強いと思うよ。日本語で固めているから」

 「だよねぇ」

 「ボルネオが独立したらどうする?」

 「おれ、日本語がだいたい分かるし、ボルネオに行こうかな」

 「だよねぇ」

 

 戦艦アイオワ 艦橋

 「ウラルを追いかけて太平洋まで来たと思ったら・・・」

 「インドネシアのアメリカ資本が接収されるとヤバいのでは?」

 「陸軍も、空軍も青海で働いているのに海軍だけは、遊んでいるような印象だからね」

 「海兵隊も面白くなさそうでしたよ」

 「しかし、武力介入すると面倒な事になりそうだな」

 「戦線を増やすのは愚の骨頂ですからね」

 「だがソビエト共産主義は手広くやってるぞ」

 「あっちは利権崩しの放火魔で、こっちは、利権維持の火消し役だろう」

 「火消し役の身になってみろ」

 「火を付けたのが共産主義者でも搾取という油をまいているのは、アメリカ資本ですし・・・」

 「に、日本だって、ボルネオで利権を作っているだろう」

 「アメリカ人は苦労させて開拓させたものですし」

 「日本人は、苦労して開拓したみたいですよ」

 「日本人は、まだまだ、白人のようにスマートに稼げないということだ」

 「知的水準で中国人より上というところでしょうか」

 「モノマネできる程度はね」

 

 

 巡洋艦 志摩 艦橋

 「アメリカが一番権益を脅かされているようだ」

 「アメリカ資本を守るために行動を起こすだろうか?」

 「どちらかというと、ボルネオ州独立を恐れているのでは?」

 「それは、それで、厄介だな。ボルネオ州は?」

 「どっちでも良さそうですよ。連邦を養うのも、いい加減、煩わしそうですし」

 「んん・・・うまみもあるが、面倒でもあるわけか」

 「日本政府は、どうする気かな」

 「政府は不介入を決め込んでる、放って置けってよ」

 「じゃ なんで来てるんだ」

 「軍艦があるから出せとか。自国権益を脅かされないか、心配で来てるだけでしょう」

 「しかし、たまには、こういうのがないとね。くさっちゃうよね」

 「何かできるってわけじゃないけど」

 「アメリカ海軍みたいに日本も強襲揚陸艦を作ろうよ」

 「あれエセックス型の改造だろう」

 「大鳳、瑞鶴、翔鶴を強襲揚陸艦に改造する手もありそうだけどね」

 「アメリカは、予算と軍艦が余ってるから、そういうやっつけができるんだよ」

 「クーデター部隊に大砲とか撃たなくていいのかな」

 「艦長。ボルネオ州艦隊です」

 「なんか、一触即発じゃないだろうな」

 「やめて欲しいよ。金もないのに」

 「アメリカも青海紛争があるから、そう思ってたりして」

 「インドネシア連邦艦隊から通信。クーデター部隊を鎮圧したそうです」

 「「「「ほっ〜」」」」

 

 インドネシアのクーデターは失敗し、未遂に終わる。

 失敗の理由は、ボルネオ州がいつでも連邦を離脱して独立出来る状態であること。

 スマトラ・ジャワのアメリカ資本を奪っても輸出先が得られず、

 社会全体の機能を失うこと。

 政治のジャワ。経済のボルネオと分かれていたこと。

 この事実をクーデター側が理解したためだった。

 排他的な国家主義を選択するだけの国家意識が育てられなかった事も挙げられる。

 結局、クーデター部隊が鎮圧されると、

 インドネシア連邦は元の鞘に収まり、アメリカ資本は返還され、

 ボルネオ州独立も消えてしまう。

 インドネシア連邦と中国大陸の状態は良く似ている。

 日本(ボルネオ・セレベス)権益と、

 アメリカ(スマトラ・ジャワ)権益に分けられていること。

 中国大陸がソ連・朝鮮・日本(中黄連邦)権益と、

 アメリカ・イギリス・台湾人・西側諸国(中華合衆国)権益に分断されていること。

 前者は、部族社会で、曖昧なまま一つの連邦で構成されていたこと。

 後者は、漢民族社会であるため、国家として、完全に分断された違い。

 現状の権益が守られれば、どんな権力者でも構わない事だった。

 唯一、自主独立する手段は、国民が一体となって、クーデター側を支持するしかない。

 しかし、現政権がそれなりに実績があり、

 実績のないクーデター側が民衆から支持されるはずもなく。

 例え、政治中枢を制圧したとしても民衆は笛吹けど踊らずだった。

 

 

 祭りの後は、寂しい。

 と思いきやシベリア鉄道の解禁運行は、延長され客足は続いていた。

 そのおかげか、日本への外国人観光客は、少なくなく、

 樺太の温泉ホテルは満杯続き。

 白人が街を行き来していた。

 ペンション “青葉”

 「シベリア鉄道解禁は、期間限定じゃなかったのか?」

 「いや、ソビエトも国連であれだけ、ええかっこしい言うと退けなくなったみたいだな」

 「金も入ってくるからやめられなくなったのだろう」

 「こっちも、儲け、儲け」

 「ところで、さっきの出鱈目な日本語は、なんだ」

 「ああ、朝鮮人だよ。少し古い言葉が混ざっているな」

 「へぇ まだ覚えていたんだ」

 「いまでは、ソビエトの共産党官僚だと」

 「出世じゃないか」

 「苦労したみたいだよ。中国内戦で手柄を立てて、ソビエト中枢まで行ったらしい」

 「中黄連邦側の鉄道警備を押さえているのは、朝鮮人だからね」

 「いろいろ衝突があって大変らしいけどね」

 「運航に口を出さないなら良いよ」

 「いや、姪を乗せたいから新幹線を止めろとか、口を出すから」

 「あははは・・・あり得ねぇ」

 「公共のモノを私物化するなんて、当り前の世界だからね」

 「日本の官僚も、毒されていなければ良いけど」

 「そこまでできるやつは、そういないぞ」

 

 

 プラハの春は、共産圏に暴風を吹き込み。資本主義圏に激震を巻き起こした。

 西ドイツは、ソビエト軍に対する恐怖で辛うじて体制が守られたものの、

 フランス、イタリアは、国民のゼネストと革命運動に翻弄されてしまう。

 イタリアは、マーシャルプランを踏み台にした50年代から60年代にかけての経済成長が失速。

 プラハの春の成功は、共産主義のイメージを変え、

 反体制運動家たちの自制、ブレーキが外されてしまう。

 勢力を増し、余剰資本を手にした赤い旅団のテロ活動は活発化し、

 資本家は、恐慌状態に陥っていた。

 当然、資産家は自己資産を守る権利があり、

 国外に資本と技術が流れやすくなっていく。

 フランス 某工場

 「社長。労働団体が最低賃金の引き上げを狙って、またゼネストの計画が進んでいるようです」

 「バカどもが会社を潰すつもりか」

 「共産党が、こちらの限度額を超えた要求で持ち株制に持ち込みたがっているようです」

 「ただでさえ、市場が狭められているというのに」

 「・・・社長、ユーゴへの輸出が30パーセントほど減らされるそうです」

 「くっそぉおおお〜!!!」

 「日本人め。共産圏を踏み台にして儲けやがって!」

 「取り敢えず。日本に生産、販売の拠点を置くことで・・・」

 「うぬぅうううう〜 仕方がない」

 イタリア、フランスのブランド系企業は生き残りのため日本へと資本が流れる。

 樺太は、共産圏と流通機構が構築されており。

 ここに西側の製品を置くことで西側の優位性を示そうという腹もあった。

 諸事の事情から日本に有利な形で欧州優良企業の進出が行われる。

 資本家にとって労働組合のない国は有利であり。

 共産主義運動がなければ楽園と言えた。

 日本も、急速に力を付けていく樺太と、北海道、本州を連結する必要に迫られる。

 宗谷海峡トンネルと津軽海峡トンネルは急がされ、

 土建屋は、ほくそ笑むことになった。

 樺太

 「豊原オリンピックが発火点になって、樺太に欧米企業の進出か」

 「社会資本が不足していたから、悪くないね」

 「土建屋が取り過ぎていたんだよ」

 「なんか白人ばっかりだな」

 「気候が白人向きなんだろう」

 「こうなると、宗谷海峡トンネルも急がないと」

 「でも、外見がルノー、プジョー、フィアット、フェラーリ、ランボルギーニで中身が電気自動車ってありなの?」

 「ガソリン車は土建とか、公用車を除くと、制約されているからね」

 「宗谷海峡と津軽海峡のトンネルが完成後、ガソリン・ディーゼル車解禁だろう」

 「電気自動車じゃないと宗谷海峡と津軽海峡のトンネルは走れないよ」

 「自動車用トンネルを作るとか言っておきながら土建屋の根性って悪いだろう」

 「ガソリン車は、貨車に載せられるよ。寝ている間に着くなら悪くないよ」

 「貨車の待ち時間で、十分、寝られそうだな」

 「あははは・・・」

 

 

 インドの総人口は5億3000万。

 カースト制は、大きくブラフミン(バラモン)、クシャトリア、ビアイシャ、スードラの4つの階層。

 2000から3000の職別階級が存在し、利権構造がカースト制を存続させる。

 貧しく固定された世襲で決められた職業を惰性的に生きる事が出来た。

 定められた職業が存在しない社会は、未知との遭遇であり不安と恐怖だった。

 独立するだけの知識を学び、

 倫理観を確立し、意欲を育て、自らの力に応じた目標を見出し生きていく。

 実力がなければ下層階級に落とされる社会より。

 実力がなくても安穏と得られる未来が好まれた。

 己より下の階層がある優越感と安堵感がカースト制度を支える。

 カースト最下層スードラのさらに下に、

 階層外の不可触民アチュート(ダリット)が存在し、大多数のインド人を慰める。

 支配階級は、インドの総人口の15パーセントのアチュートを踏み躙り酷使できた。

 固定された世襲は、権力者にとって楽であり、

 他国の権力者が羨むほど恵まれていた。

 権力者は、保身と体制維持のため、

 不可触民アチュート(ダリット)の力を削ぎ弱体化させる。

 その一環として、ユーラシア大陸鉄道の工事が利用された。

 インドの支配層にとって、なんとなくであり、片手間のことだった。

 延べ総動員人数は、反対側のソビエトを楽に上回る。

 しかも人権のない奴隷であり、消耗品であり・・・

 そして、ここインドにも日本人がいた。

 プラハの春で共産圏の株が上がり、

 仏伊の民衆弾圧で資本主義圏は株を落としていた。

 そして、インドは、ユーラシア大陸鉄道との連結に興味を示し始める。

 「やっぱりラホール城は繋げないと」

 「うんうん」

 「タフテ・バヒーの仏教遺跡群もモヘンジョダロの遺跡群も」

 「うんうん」

 「ロータス城塞の城塞も・・・」

 「うんうん」

 「インドも、デリーのフマユーン廟とか、タージ・マハル廟とか」

 「当然、当然」

 インドは、イギリスの分断統治政策のせいか、4種類の軌間が混在している。

 1676mm(広軌)、1000mm(狭軌)、762・610mm(ナローゲージ)

 日本人は、ユーラシア鉄道1520mm広軌の路線を検討していく、

 バラモンたちは、1520mm鉄道で可能な客室の広さを気にしていた。

 インドの広軌は1676mmあり、バラモン客車は、洒落にならないほど豪勢だった。

 1520mmだと車両の幅が狭くなって気に入らないらしく、ゴネ始める、

 路線の直線を増やせば車両の全長を伸ばし、豪勢にできた。

 「この豪勢な客車で日本まで乗り入れる気でいるのだから、お金持ちは違う」

 「「「「・・・・・」」」」 呆然

 

 

 

 ナイジェリア連邦

 北部イスラム教系ハウサ族、

 西部のイスラム・キリスト教連合系ヨルバ族、

 東部のキリスト教系イボ族。

 三大部族と、その他の多くの少数民族から構成されていた。

 その中で、イボ族の教育レベルは、イギリス植民地時代から高く、

 商才があり、下級の官吏・軍人が多かった。

 1960年のナイジェリア連邦独立後、

 油田を握るイボ族とハウサ族、ヨルバ族の部族抗争が激化。

 列強も権益欲しさで積極的に干渉する。

 南アフリカとフランスを味方にしたイボ族のビアフラ独立戦争が起こると、

 イギリスとソビエトを味方にしたナイジェリア連邦との間で内戦が始まる。

 フランス製FR-F1(7.5mm×54)と、

 イギリス製E.M.2(7mm×43)、L42A1(7.62mm×51)が銃口を向け合う。

 そして、もう一つ、権益以外にも列強介入の理由があった。

 武器は工場で量産できた。

 しかし、戦場経験者は工場で量産できない。

 たとえ、世界最強の工業国でも戦場経験者は、戦場でしか量産できなかった。

 高性能の兵装を持たせても実戦経験がなければ、国軍の不安は拭えない。

 結果、両陣営に列強各国の武器を持った傭兵部隊が存在した。

 ビアフラ共和国イボ族軍 陣地 傭兵部隊

 イボ族に味方するフランス製・南アフリカ製の兵装が多かった。

 しかし、ほかの武器弾薬も少なくなかった。

 「沖にソ連の戦艦が来てるってよ。連邦軍に何か、補給しているのかな」

 「物資を送り込んでいるのは輸送船であり、戦艦は飾りって聞いたけどな」

 「だけど、部族間戦争に興味はないけど、敵と味方も、M16とAK47を持っているのは参るよ」

 「どこから買っているのやら、どっちの武器も揃っているからね」

 「きっと、俺たちの雇い主だぜ」

 「いやだねぇ 無節操で・・・」

 「NATO規格外を処分したいのかも」

 「早く契約明けして、アメリカに帰りたいな」

 「公民権運動で差別を撤廃できても貧富だけは別だからね」

 「金を作ったらアメリカの高級レストランで昼飯を食べるんだ」

 「良いねぇ 俺も高級ホテルのトイレを使ってやる」

 「そして白人のメイドにチップを払ってやるんだ」

 「「「「「・・・・・」」」」」 にまぁ〜

 黒人傭兵たちは、夢と希望に満ち溢れていた。

  

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 史実の1964年東京オリンピックの外国人観光客は約5万人。

 戦記の1968年豊原オリンピックの外国人観光客はあれやこれや、

 思惑が絡んで・・・

 約・・・・

 

 プラハの春は成功し、一党独裁が消え、多党制になりました。

 しかし、プラハの春は、共産化しても、

 民衆の力で民主化へ回帰できるという幻想を与えてしまいます。

 自由資本主義諸国での共産主義のイメージが変わり。

 共産主義を警戒していた中道派もタガが外れてしまいます。

 

 

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第26話 1967年 『金を使うな、頭を使えは、禁句』
第27話 1968年 『豊原オリンピック』
第28話 1969年 『勝ち馬は、どっちだ』