月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想戦記 『国防戦記』

 

 

 第28話 1969年 『勝ち馬は、どっちだ』

 一つの機械で、いくつもの部品を造ると、

 品質にバラつきが生じ、精度も人によって変わる。

 工員と機械が変わるだけでなく、

 工作機械の出来が悪いと規格を固定させても製品にバラつきが起こった。

 このバラつきが大きいと製造番号が同じでも互換性のない部品が大量生産される。

 工員と工作機械を固定させ、同じモノを作り続けると効率が良くなる、

 しかし、余程の売れ筋でなければ工作機械を単品製造に固定できるはずもなかった。

 1950年代生まれたNC(電子制御)工作機械は、入力した数値で部品が加工でき、

 工員が変わっても規格が変わっても同じ数値で同じ部品が作られていく、

 重要なのは、工員のモラルと人件費、

 ゼロコンマ以下の数値制御の桁数、

 加工個数、加工速度、耐久年数、採算性となっていく、

 日本人の凝り性な気質と、マニュアル本を理解できるほど識字率が高いことは有利であり、

 日本は、工業品、衣服、電化製品、日用品を大量生産していた。

 中級品以下は、欧米諸国の製品と同等の品質で価格の安いモノを量産できた。

 共産圏は資源を日本に売却し、

 共産党は、日本から購入した商品の専売で権力の安寧を図り利益を上げ始めた。

 

 

 日本の国防体系は、ソビエト製兵器を母体とし、

 必要最小限の開発費で部品を改良し量産、ソビエトに逆輸出していく。

 一般的にヤドリギ商法とも言われ、

 母体となる宿り木を絞め殺してしまう商法だった。

 日本の余剰生産品がソビエト製兵器体系を採用している国家群に流れ、

 一部は、西側諸国にも広がっていく。

 人口の激減した日本の国土、人口、資源で、

 人口と資源を超える社会基盤と生産力を構築していた。

 種明かしは、海外の資源と市場を手に入れることであり、

 逆に国力の失速は、社会基盤崩壊と生産力の低下であり、

 海外の市場と資源を失う事と言えた。

 日本は、戦後、加工貿易を選択、

 技術的な差異の少ない共産圏を足掛かりに市場を伸ばしていた。

 イギリス、フランスは、植民地独立で権益を失い、海外市場と資源獲得で後退。

 イギリス、フランス、イタリアの企業は、海外輸出で大打撃を受けてしまう。

 一方、日本は、国際競争力が高くなり、

 欧米諸国の企業の海外輸出を苦しめていた。

 

 

 プラハの春でチェコは、共産党一党独裁を破綻させてしまう。

 ポーランド、ハンガリー、東ドイツからの亡命者がチェコに向かい。

 中立国のオーストリアを経由し、西側に向かうルートが作られる。

 「ナターシャ。西側で自由に生きよう」

 「ええ、スコルスキー。幸せになりましょう」

 「子供たちも、自由な教育を受けさせるんだ」

 「ええ、良かったわね。ミーシャ。ヤコブ」

 「「うん」」

 「さぁ〜! 自由の西側だぞ〜!!」

 西側に亡命した家族が目にしたのは、フランスとイタリアの革命運動と共産テロだった。

 そして、警察と軍隊による労働者の弾圧。

 「「「「・・・・・・・・」」」」

 

 

 企業は収益の一部を労働者の人数で割る。

 企業にとって賃金は費用であり、出費を押さえたい所だった。

 収益より労働者(賃金)が多いと必然的に賃金を押さえられるか、

 クビを切らざるを得なくなった。

 市場の大きな企業は、売り上げが大きくなり、薄利多売でも収益を維持できた。

 しかし、市場の小さな企業は、薄利多売で採算がとれず潰れ始める。

 その上、労働者にゼネストをやられた日は、社会的信用と競争力が低下してしまう。

 銀行から資金繰りができなくなると企業が傾き始める。

 イタリア某企業

 「会長。昇給しない限りストライキを継続すると・・・」

 「駄目だ」

 「ソビエトが戦車でチェコの民主化を潰していたら、こんなことにはならなかったのに・・・」

 「56年のハンガリー動乱では、戦車で民主化を踏み潰したのですが・・・」

 「切っ掛けはハンガリーの秘密警察の発砲だっただろう」

 「ソビエト軍は巻き込まれだよ」

 「今回は、事前にソビエトに警告されて、チェコの共産党も見限られましたからね」

 「しかし、チェコの共産党がみすみす権力を手放すとは思わなかった」

 「あの頃とは、時勢が違いますから」

 「ソビエトは、大陸の東西で綱引きで身動きが取れず」

 「チェコ共産党は、日本が商品を輸出規制するだけで利益を失いダウンか」

 「共産圏は、国力が大きくなっているのに利害関係で動けなくなっているようです」

 「そのおかげで、こっちは破産寸前だよ」

 「労働者は、共産化後、民主化に回帰できるのなら、財閥解体と資産の再配分で共産化も辞さない構えですからね」

 「生産工場の一部を日本に移す話しは?」

 「離島は、税制で有利ですがインフラが不足。やはり、樺太が有利のようです」

 「労働組合のない国か」

 「失業率が低いので労力の確保が不利かもしれませんが」

 「まるで、共産主義国家だな」

 「賃金格差は、共産主義国家並みです」

 「戦後、軍属を叩きだしたと聞いたが、随分と大人しいな」

 「大人しい人間ほど怒ると怖い、でしょうか」

 「そんなところかもしれん」

 「マフィアに反体制側の男を殺すように頼んだはずだが」

 「反体制側が刺客を刑務所に送り込んだとかでマフィア側も躊躇しているようです」

 「ちっ! ヘタレが」

 使用者側は、不要な部署の切り捨てと人材のリストラを考え。

 労働者側は、プラハの春と選挙によるチリの共産化で意識が変わり、

 自国の共産化も辞さない構えになっていく、

 互いに退くことを知らず、我が身かわいさで賃金交渉が行われていた。

 

 

 権力構造が世襲で固定された封建社会は、近代化の障害となった。

 18世紀以降、富の集約と積極的な民間活力の競争原理が求められ、

 権力と利権は分離し、民主制へと移行していく、

 固定されていた権力構造は崩れ、流動的になり、

 権力者は、権力の世襲から利権の世襲へと移行していく、

 国益と企業益優先の体制は自然と作られ、

 同時に個人と民権を強化を望む社会運動も起こった。

 共産主義は、権力と利権の分離で発生することで起きた影の側面であり、

 初期資本主義下の劣悪な労働環境と非人間的で無慈悲な拝金主義への反動だった。

 

 権力の継承で世襲が崩れると、権威主義と年功序列も流動的になっていく、

 そして、合法であれ、非合法であれ、法外であれ、利権の世襲が図られ、

 弱肉強食のゼロサムの原理で、貧富の格差も増大した。

 好況時は、社会資本の争奪戦によって富の移動が激しさを増し、

 不況時は、富の移動が淀み停滞した。

 好況と不況では、使用者と労働者の力関係も変動した。

 それは、個人主義、私有財産の奪い合いを是とする世界であり、

 もう一つ世界は、全体主義、共有財産の身の世界だった。

 労働者と農民の世界である共産主義世界は、実験的な試みであり、

 私有財産の世襲を目論む資本家は共産主義に恐怖し、対立した。

 資本主義と共産主義の思想の対立は、価値観の対立であり、

 農民と労働者は、不正腐敗と不公平感を感じるなら、

 資産の再配分と膠着した社会を打破するため容易に変貌し、

 社会主義運動へと転がる気配をみせ、強硬派は共産主義へと傾倒した。

 欧米諸国の企業は、労働のサボタージュで打撃を受け、

 富の奪い合い経済戦争は激しさを増し、

 ほとんどは負け組となるため、失業者増大と社会不安は高まり。

 犯罪が増加し、ゼネストも増大していく。

 国家権力によるデモの弾圧も激しくなると資本主義の支配に反発する者も増える。

 共産勢力拡大は、フランスとイタリアの政情を不安定にさせ、治安を悪化させていく。

 体制側の反共白色テロが行使され、

 反体制側も容赦なく銃を抜く、

 白昼の公道で高級車に銃弾が浴びせられた。

 「急げ! 社長を捕まえろ!」

 ステンガンを持った男たちが護衛の男たちと銃撃戦を繰り広げ、

 高級車から初老の男を引き摺りだし、別の車へ乗せ誘拐していく、

 数日後

 公園で、首から “CIAの犬” とプラカードをかけ、

 撲殺された初老の男が発見された。

 議会では、体制(共産党)と反体制(自由党)が衝突が繰り返され、

 民衆は、プラカードを押し立てて、デモを行っていた。

 

 体制・反体制のほか、もう一つ、闇社会アウトローの世界もあった。

 民主化が進む中で、アウトローも利己主義に走る。

 どのような国家であれ、

 利益配分に失敗すると権力構造で協調が失われ、モラルも低下していく、

 己が牙城を守らんがため、他者の城を奪い合う抗争も起こった。

 国家の大勢は国益より、利権を求める集団同士の争いとなり、

 互いに出し抜き、非合法でも成功を望み、

 不正でも利益を求めようとする集団も現れた。

 権力構造が維持できなくなると崩壊が始まる。

 体制であれ、アウトローであれ、反体制であれ、

 利害さえ一致すれば、自分本位で他国と結託した。

 

 日本の元軍属上がりのブローカーは、権力構造から放逐されてアウトローと化し、

 資金とルート、ネットワークを握っている地場警察権力やマフィアと手を結び始めていた。

 そして、共産圏マフィアは、シベリア鉄道で暴利を貪り、

 豊原オリンピック後もシベリア鉄道解禁を望み。

 手段を選ばずクレムリンにさえ圧力を掛けた。

 そして、日系ブローカーは、少しずつ共産圏で影響力を行使していく。

 その影響力は、共産圏を越え、イタリア、フランスの共産勢力にも及んでいた。

 

 

 

 ユーゴスラビア社会主義連邦

 ユーゴスラビアは、ソビエト軍の力を借りずパルチザン軍の力でドイツ軍を駆逐した。

 戦後も、スターリン主義を無視できるほど、ソビエトの影響力を排斥できた。

 共産党中央からの独裁ではなく、

 労働者による自主管理方式生産を取り入れるなど独自社会主義路線を行使。

 共産党独裁を取り入れる他の共産圏と一線を隔す。

 特に48年以降、スターリンとヨシップ・ブロズ・チトー大統領の関係は最悪だった。

 スターリンは、チトー大統領を亡き者とするため何度も暗殺団を送り込む。

 チトー大統領は秘密警察に暗殺団を全て検挙。

 核ミサイルを持つスターリン宛に、

 “刺客を送る用意がある” と電報を送らせてしまう。

 ユーゴスラビアは、ソビエト連邦にも媚びず、

 アメリカと西側諸国とも一線を隔し、日本に近かった。

 無論、違う点も存在する。

 7つの隣国、イタリア、オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、ギリシア、アルバニア

 6つの共和国、スロベニア、クロアチア、セルビア、

          モンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア

 5つの民族、スロベニア人、クロアチア人、セルビア人、マケドニア人、モンテネグロ人

 4つの言語、スロベニア語、セルビア語、クロアチア語、マケドニア語

 3つの宗教、カトリック、東方正教、イスラム教

 2つの文字、ラテン文字とキリル文字。

 これら不統一を内包した国家がユーゴスラビア連邦だった。

 ユーゴスラビアは、ソビエト連邦とアメリカ合衆国に対し、

 一線を隔した日本に親近感を持っていた。

 そして、スターリンの死後、チトーは親近感のためか日本に接近。

 日本の新幹線が東欧に達すると新幹線の乗り入れを容認する。

 この決定に共産圏のシンジケートがどこまで関わっていたか不明だった。

 ともあれ、日本人たちはトリエステ自由地域の南側の港街コペルにも訪れる。

 「労働者に工場の運営を任せてしまう共産主義国家か・・・」

 「官僚支配じゃなく、現場の労働者に経営者を選出させるところが面白いね」

 「トップダウンよりボトムアップ。考えとしてはありだし、他人事なら悪くないと思うよ」

 「まぁ 日本社会も慣れ合いみたいなところがあるからねぇ」

 「だけど、ここに新幹線を乗り入れて何かいいことでもあるのか?」

 「んん・・・モンテネグロとか、もっと南側に良い港があったよ」

 「イタリアにも新幹線を伸ばしたいんだよ。きっと」

 「そ、そりゃ イタリアまで伸ばせれば、観光とか含めて良いけどさ。1435mm圏だからねぇ」

 「結局、どっちが得か。だろう」

 「まぁ インド次第かな」

 「あそこが1520mmになれば圧倒的に有利になるよ」

 「バラモンの金の使い方は、洒落にならないところがあるからね」

 「アラブにも伸ばしてぇ〜」

 「観光は、社会不安と収益の相殺なんだぞ」

 「ちょっと微妙か」

 「だけど、ユーゴスラビア連邦もバラバラだから不安だな」

 「まぁ 結局、人だからね・・・」

 「インドほどじゃないけど、かなり酷くないか?」

 「シンジケートって、国益とか愛国心より。テリトリーの奪い合いとか保身の方が強いから」

 「それ、官僚と同じ。だけど、なんか信用できねぇ」

 「代価は、鉱物資源で支払うらしいけど」

 「そりゃ ソビエトも嫌、アメリカも嫌なら日本だろうけどね」

 「でもユーゴスラビアは接点が少ないよ」

 「だいたい、スロベニア語、セルビア語、クロアチア語、マケドニア語だぜ」

 「日本人で話せる奴なんて、ほとんどいないだろう」

 「ユーゴスラビアを連邦で統一できているだけでも偉いよ」

 「新幹線の乗り入れでパイを増やしたいのかな」

 「社会不安は増すけど、税収が大きくなるから、たぶんね」

 「税収は大きくなるけど社会資本はどうかな」

 「お金持ちは、お金を自国民に使うより、海外で大枚叩く癖があるからね」

 「お金持ちは、新幹線で旅をしながら浪費するから、やや、損の方が多いね」

 「日本の社会資本は流動的になるよ」

 「ったくぅ〜」

 

 

 日本の科学技術上の優位は、いくつかの分野に限られ、総合で低い段階にあった。

 もっとも科学技術力と国際競争力は関連性があっても同意ではない。

 国際競争力は、採算性の高さ、市場のシェア、販売価格、

 サービス能力を含めた割安観に尽きる。

 そして、日本製品は、国際競争力があり、貿易収支は黒字で収益は莫大。

 結果的に税収を集めた予算は膨れ上がり、

 空中巡洋艦ベアの大量配備に成功する。

 台湾沖

 空中巡洋艦ベア4機編隊

 ミグ21戦闘機8機を周囲に配置し、

 タンカーで空中給油している姿は、空中艦隊のようにも思えた。

 日本軍は、志願兵で構成され、

 運用効率も、モラルの高さも、本家ソビエトより高いと言われる。

 指揮機の機体上部に設置されたレドームが回転し、全周を索敵する。

 ソビエト空軍で哨戒機型は モス と呼称されていた。

 日本も購入した ベア を独自に哨戒機に改造していた。

 戦闘機の先端に取り付けてあるレドームが円盤状にクルクルと回っているようなものだった。

 索敵範囲の広さ、積載量と容積で、戦闘機のレーダーを圧倒し、

 その索敵範囲と電子戦能力の差が次世代航空戦のカギとなった。

 「・・・中国合衆国空軍のF104スターファイター・・・14機が沿岸沿いに南下しています」

 「こっちは、見つかっているか?」

 「逆探に反応なし、大丈夫だろう」

 「スターファイターは、加速力、上昇力、最高速度は優れている、それだけだな」

 「ベアの積載量は15トン以上。容積も十分」

 「F104スターファイターは1トン以下で容積も限られて将来性もない」

 「少しくらいレーダーの精度で劣っても先に見つければ、撃墜できるよ」

 「レーダーホーミングミサイルが当たれば、だろう」

 「それが最大の問題かなぁ」

 「見つかると厄介だけどね」

 「その時は、ミグに頑張ってもらえばいい」

 「有視界で互いを確認できれば、ミグが有利になるよ」

 この時期、日本の防空戦略は、ほぼ、定まっていた。

 空中巡洋艦ベアが有視界外の空対空ミサイル戦と味方戦闘機の誘導を担当。

 ミグ戦闘機が有視界戦闘を担当する。

 もっとも、中華合衆国と中黄連邦は、青海争奪戦で忙しいらしく、

 日本との緊張関係は低かった。

 

 

 青海紛争

 青海省の山岳の合間を縫うように鉄道が建設されていく。

 鉄道から資財が降ろされ飛行場が建設され、

 輸送機が着陸し、積荷が降ろされる。

 まず生活必需品がなければ、戦争もできず、プラスアルファも求められる。

 将兵が運び込まれた積荷を囲んでいた。

 氷河を溶かした水で作るチキンラーメンは、敵と味方に喜ばれていた。

 「やっと来たか」

 「済まんね。セカンドニューヨークで、北行きと南行きの選別に手間取ったよ」

 「現地生産しないからだ」

 「味の保障がねぇ」

 「まぁ 嗜好品があると士気が上がるからね」

 「こっちの状況は?」

 「相変わらずだ。青海省全体が緊張状態にある」

 「民衆は、どっちに付くかで、迷っているんだ?」

 「愛国心もなく、思想もないよ」

 「あるのは、生々しい生存本能、野性的な勘、保身、野心、立身出世かな」

 「日本と違って、命懸けの二者選択を迫られるからね」

 「勝ち組は、戦後、特権階級で栄耀栄華、子孫繁栄」

 「負け組は、戦後の搾取され踏み躙られ、衰退し、根絶やしにされていくからね」

 「ハイリスク・ハイリターンの世界か」

 「人生を賭けた選択か、日本だと関ヶ原以前だね」

 「幕末の幕府軍と薩長軍とかじゃないの」

 「戦後直後の主戦派軍属も酷かったらしいけどね」

 「現在だと、土建族と非土建族か。命を取られないだけ平和かな」

 「どうかねぇ テリトリーを脅かされると命懸けになるから・・・」

 「それより、資源は?」

 「目ぼしい鉱山をいくつか見つけたよ。規模は、まだわからないが・・・」

 地図が渡される。

 「じゃ 戦争が終わったら、占領した側と交渉しないとな」

 国家は国民に人殺しをさせる権利があるのか。

 この権利は、侵略国に国家の主権と利権が脅かされ、

 国民の人権と財産が奪われ搾取されたとき、最大の効力を発揮する。

 国家が国民を弾圧し、人権を蹂躙し、人生を強制している国、

 国民が政府に不信任を突き付けられるような国は、国民の戦意が著しく低下する。

 政官財と特定の組織に特権が認められ、

 侵略国以上に搾取が大きい国は、国民のモラルが崩壊する可能性もあった。

 戦前戦中の日本が崩壊寸前であり、

 戦後、直後の崩壊した日本がそうであり。

 中国歴代王朝は、その問題を常に抱え込み、

 青海省は、中国連邦と中国合衆国のどっちに付くかで迷う。

 どっちつかずでも、搾取される側。

 青海省の住民の多くは、己の利益になる側、

 つまり、保身を確保でき、金をくれる側に付いた。

 当然、勝ち組に付こうとするが、どちらが勝ち組か、人生を賭けた博打に近く。

 敗者が得られるモノは絶望だけだった。

 

 

 ソビエト海軍の主力は、洋上中継基地ウラジオーナが建造された後も潜水艦だった。

 水中10100トン級ナヴァガ(ヤンキー)型原子力弾頭ミサイル潜水艦

 水中5000トン級スカート(チャーリー)型原子力巡航ミサイル潜水艦

 水中6085トン級ヨールシュ(ヴィクター)型原子力攻撃潜水艦

 水中2500トン級ブラヴォー型通常潜水艦

 戦略的思考は、旧ドイツ海軍のUボート艦隊と日本海軍の伊号的な要素があった。

 しかし、如何に大国であっても数と質の両方を求めようとすると予算が厳しくなり、

 その予算も、ソビエト連邦の鉱物資源を叩き売って作り出した戦力だった。

 そして、日本と西側は、ソ連が叩き売った資源を買い取り、

 加工し、売却した収入に税金を掛け。

 その税金で軍事力を賄っていた。

 共産圏は自国の戦力を拡張するため、他国の国力を増強させ、戦力を強化させる。

 その事に気付いた共産圏は、米英西独との貿易を縮小し、

 日本との貿易を拡大していく、

 資本主義国家で日本だけがソビエトの兵器を採用しており、

 同じ資源を売るなら日本の方がマシに思われた。

 結果的に日本の国力は増し、国家戦力も整っていく。

 モスクワ クレムリン。

 日本人が呼ばれていた。

 「まだ確定ではないのですがキエフ型航空巡洋艦の2番艦を日本に、ということになりそうです」

 「かまわないので?」

 「まぁ モスクワ型が、アレでしたから」

 「なにか、不都合でも?」

 「ぁぁ・・大したことではありませんがね」

 「そうですか」

 「まだ、確定ではありませんが、その・・・構造上の調整など、不備がありましたら・・・」

 「協力できるかと思いますよ」

 「ハラショー!」

 

 

  排水量 艦齢(以下)          
大鳳 30000 25年 大鳳       1隻
瑞鶴型 26000 28年 瑞鶴 翔鶴     2隻
最上型 12300 34年 最上 鈴谷 熊野   3隻
利根型 8500 31年 利根 筑摩     2隻
阿賀野 6650 27年 阿賀野 能代 矢矧 酒匂 4隻
大淀 8200 26年 大淀       1隻
志摩 15000 5年 志摩 伊賀 伊予 甲斐 4隻
               
秋月型 2700 27年         8隻
夕雲型 2000 28年         8隻
               
潜水艦
赤龍 6500 1年1隻         12隻
鋼龍 6500 1年3隻 鋼龍 尖龍 海龍   3隻
               

 

 

 日本の国防で唯一国産で固めた非大気依存推進(AIP)型潜水艦。

 非原子力潜水艦で世界最大。

 鋼龍(こうりゅう)、尖龍(せんりゅう)、海龍(かいりゅう) の3隻就役する。

 この年、それまでの実験・訓練艦の要素が薄まり、

 ようやく、納得のいく量産型。年間3隻建造が始まる。

 戦前の潜水艦が限界で量産型にしないとまずかっただけともいえる。

 乗員数96人を艦の容積で割ると余裕があり、長期の作戦が可能だった。

 性能を例えるならアメリカ型とソビエト型の潜水艦を足して、2で割ったような潜水艦。

 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、巡航ミサイル潜水艦は、まだ開発されておらず攻撃型潜水艦。

 核ミサイル装備は、穴熊引き籠り戦略に予算を取られて後回しにされ、

 米ソどころか、英仏にも後れを取っていた。

 青ヶ島沖

 鋼龍 艦橋

 新型艦に乗ると潮風も心地良くなってくる。

 戦後の日本軍は、政治干渉を避け、番犬化が進んでいた。

 多少の不都合があっても愛国心の強い者が残りやすい。

 もっとも愛国心と能力は別売り。

 才能を優先しようと思えば人件費を増やすよりなく。

 正面装備も狭められていく。

 「しばらく、母港離れになるな」

 「任地港が整備され過ぎて、滅多に帰還できないですからね」

 『艦長、11時方向、距離3500m。深度280m。海底で騒音です』

 「なんだ?」

 「艦長、この海底は・・・」

 「急速潜航!」

 一定の手順が踏まれ、潜水艦は、沈んでいく。

 海図を覗き込むと艦長と副長がにやりと笑う。

 「防潜ワイヤーが仕掛けてあるところだったな。発信筒をコードEで射出」

 発信筒が海上に向けて射出されていく。

 海上に達した発信筒は、最寄りの基地から航空機と艦船を呼び寄せた。

 「アメリカか、ソビエトの潜水艦が引っ掛かったのでしょう」

 「逃げ出せるかな。右舷から回り込んで音源に艦首を向ける」

 「慣熟訓練どころか、スクランブルですよ」

 「まったく、無断で領海内に入り込むなど、ロクなことをしないな」

 「艦長。艦首を音源に向けました。距離2500m」

 「停止」

 「騒音は?」

 「消えました」

 「気付いたかな」

 「ノイズダミーの可能性もあるかと」

 「確かにそれもあるが艦種は限定できそうだな」

 「ええ、ソビエトの原子力潜水艦なら、この距離で冷却水循環ポンプの音が拾えます」

 「アメリカ原子力潜水艦ならもう少し接近しないと音が拾えない」

 「つまり、アメリカ原子力潜水艦か。通常型潜水艦なら、その限りではない」

 「通常潜水艦なら時間の問題です。原子力潜水艦だと、こっちが粘り負けですかね」

 「んん・・・ノイズダミーを使ってみるか、どういう反応をするだろうな」

 「慌てるのでは?」

 「他国の領海に入り込んで、タダで済ませるわけにいかないだろう」

 「心胆寒からせてやりますか」

 「コース設定は、発射後、10秒でノイズを発信」

 「音源の周りを8ノットで一回りさせて」

 「この1800mの位置で音源のあった方向に向けて、短信を打たせよう」

 日本潜水艦は、艦体容積が大きく、各種の魚雷兵装を装備できた。

 ノイズダミー魚雷が発射され、設定通り移動した後、短信が打ち込まれる。

 海底から悲鳴のような騒音と衝撃音が広がる。

 そして、パーミット(スレッシャー)型原子力潜水艦ハッドが青ヶ島沖に浮上。

 ベア2機編隊が海上を低空で旋回していた。

 「あれか・・・」

 「アメリカの原子力潜水艦だな」

 「艦首から艦橋に掛けて、防潜ワイヤーを引き千切った跡があるようだ」

 ハッドは、コソコソと領海外へと逃げていく。

 領土、領空、領海は、それぞれ趣が違う。

 艦船の無害航行は領海内であっても基本的に認められていた。

 潜水艦の浮上航行は問題なしとして扱われ、

 潜航状態は戦闘行動であり、国益を害する有害認定された。

 しかし、浮上している潜水艦は、降伏状態といえるほど惨めなものだった。

 とはいえ、他国の潜水艦が領海内に潜んでも、

 領海侵犯に直結できないほど国際法は曖昧だった。

 領海内の潜水艦を領海侵犯と認定するには、手続きを踏む必要があった。

 活動の停止要求、領海外への退去要求、警告射撃の実施。

 有害行動を武力攻撃と認められる場合、自衛権で武力行使できた。

 日本が行ったのは、防潜ワイヤーによる事前策。

 ノイズダミー魚雷による警告だった。

 ベア コクピット

 「なんだ。せっかく、威嚇で爆雷を落としてやろうと思ったのに」

 「もっと強くて切れない防潜ワイヤーにしないと拿捕できないよ」

 「アメリカを怒らせると、西側に商品が売れなくなるんじゃ・・・」

 「代わりに共産圏の取引が増えるよ」

 「何か、危ないな」

 地下施設が多く核攻撃に対し、耐性が強い日本は、根性があった。

 

 

 チリ

 チリの大地主制度は強く。

 土地無し農民は多く貧しかった。

 第二次、第三次産業も低いレベルで貧富の格差は大きく、

 外国資本の取り分も少なくない。

 このチリで、サルバドール・アジェンデを主席とする社会党が勢力を増していた。

 CIAは反共工作を進めるが大地主制をどうにかしないと収まらない状況だった。

 このチリに日本人代表団が訪れる。

 「スペイン語は日本に馴染みがないからね」

 「カトリックはさぁ イタリアもそうだし、フランスもそうだけど労働意欲に不信を感じるよ」

 「つか、人間不信」

 「本当にアジェンデが勝ちそうなの?」

 「んん・・・CIAが暗殺でもしない限り、勝ちそうだな」

 「暗殺は、バレた時、国際信用ガタ落ち、怖いからやらないんじゃないの」

 「そういえば、フランスとイタリアの暗殺事件とか、国際関係で響いていると思うよ」

 「で、日本は、どっちに乗るの?」

 「勝つの、アメリカじゃない」

 「ソビエトは、どうする気かな」

 「ウラジオーナから、遠いと思うよ」

 「だいたい、アメリカ資本の銅山に手を出すのはまずいよ」

 「前任のキリスト教民主党エドゥアルド・フレイも口だけで、できなかったからね」

 「資本主義の優位性を信じるなら民主的に選出された政権なら民主的に打倒すべきだよ」

 「それは、言えるね」

 「アジェンデは、日本を頼ってる節があるって?」

 「あるような、ないような」

 「まぁ 世界地図を見ると日本は小国だからね」

 「南米の主導者が日本を軽視しても仕方がないと思うよ」

 「統計数字も見て欲しいね」

 「日本も、中級品以下の国際競争力は、トップレベルだけど、それだけじゃな」

 「上級品の製造は、精度がモノを言うからね」

 「チリと上手く関係を築くことができれば、南北3000kmを新幹線で走らせられるかも」

 「チリ鉄道はサンチアゴから北が1000mm狭軌。サンチアゴから南が1676mm広軌だよ」

 「そんなに人口いないだろう。870万くらいだっけ。金もなさそうだし」

 「借金背負って高い買い物するのは、日本じゃなく、チリだよ」

 「どうなろうと知ったことか、と言えなくもないか」

 「しかし、南米諸国の中では比較的工業が強そうじゃないか。意外と経済成長が見込めるかも」

 「農地改革に成功すれば社会資本が流動的になって、付け込めるかも」

 「だから、スペイン語がねぇ」

 「チリは社会主義化すると孤立するよね」

 「しかも、アメリカのお膝元で場所も悪い」

 「強者の孤立は孤高だけど、弱者の孤立は餌食だよ」

 「とりあえず。語学の堪能な人間を集めてコネでも作っておこう」

 「介入できるかは、アメリカの出方次第」

 「一番良いのは、米ソの対立で漁夫の利」

 「「「うんうん」」」

 

 

 日本のロケット技術は遅れていた。

 遅れを取り戻そうとすると有利な地理的条件で有利なパラオが選ばれ、

 宇宙ロケット発射基地が建設される。

 パラオ諸島

 埋め立てられた戦艦 日向。

 戦傷跡らしいものはなく。観光の一つになっていた。

 「蒸し暑い・・・」

 「平均気温27度、湿度82パーセントだよ。雨も多い。電子部品にとって最悪だな」

 「宇宙ロケット発射なら、もっと北で、高台にすればいいのに・・・」

 「台風は、ほとんど来ないよ」

 「ていうか、この辺りで台風が作られて北に行くんだろうが」

 「発射場は地上だけど、管制センターは地下だし」

 「好きだよね。地下」

 「一応、基幹産業扱いで除湿したいんだよ、きっと」

 「ここで東方向に打ち上げると、ポナペのアメリカ軍基地に追跡されるよね」

 「しょうがないよ。予算不足でロケット技術が遅れてる」

 「土建屋取り過ぎ」

 「あいつら、日本を地下2階建か、3階建にする気だよ。きっと」

 「まぁ パラオは、防衛線だから地下を増やしても良いと思うよ」

 「そういえばそうだった」

 

 

 ソビエト連邦は、ウラジオストック共和国が力を付け、

 欧州側とアジア側の主導権争いで揺れ、

 国章の如く、双頭の鷲になろうとしていた。

 両者の間を埋めるのが、シベリア鉄道であり、

 その運行は、日本人が行っていた。

 もっとも、職員は、徐々にKGB職員に拡大され、彼らが運行を監視し始める。

 新幹線運行システム

 ロシアの新幹線運行責任者とKGB指揮官が口論し、

 日本人職員が遠巻きに見守っていた。

 「ですから防諜上・・・」

 「防諜より金だよ金。交通を妨げず、滞りなく運行させろ」

 「し、しかし・・・」

 「とにかくもう、防諜は忘れて運行に集中しろ」

 「そうでなければ、日本人にポストを返すぞ」

 「そ、そんな・・・」

 KGBの指揮官が合図をすると、

 停まっていた新幹線が動き出し、

 KGBは、憮然と出て行く、

 「やれやれ、防諜上がりには、困ったものだ」

 「新幹線の量も増えていますし、収入も増えてます」

 「今後も、ますます増えそうですが、こういうのは、困ります」

 「わかってるよ」 憮然

 「モスクワがシベリア鉄道解禁の延長要求で圧力を受けている」

 「旅客数が増えて黒字経営では?」

 「ウラジオストック共和国も、経済成長著しく、前途悠々というところですな」

 「・・・喜べん」

 「喜ぶべきでしょう。ソビエト連邦の国力は、倍増しますよ」

 「不安定要素が大き過ぎる」

 「利益を求めれば、相応のジレンマや代償もありますよ」

 「んん・・・乗客と物流の移動を監視するのが、せいぜいで、誰が何をしたかまでわからんな」

 「これだけ、量が大きくなると無理でしょう」

 「日本の最新の運行システムは?」

 「同じですよ。国民や観光客の素行なんか、いちいち、監視しませんよ」

 「不安だな」

 「責任を押し付けられるので?」

 「ウラジオストック共和国の財力が大きくなっている」

 「賄賂攻勢をかけられたら、KGBでさえ、ヤバい」

 「そんなに心配なら、ウラジオストック共和国の税を余計に大きくしたらどうです?」

 「そんなことをしたら、本当に独立されてしまう」

 「研究開発施設も機関も、モスクワ側でしょ 優秀な人材はモスクワに引き抜かれている」

 「そんなもの金次第でどうにでもなる」

 

 

 ソビエト連邦ウラジオストック共和国 (沿海州+満州+朝鮮半島)

 工場からT64戦車が出荷されてくる。

 最大の特徴は、複合装甲、滑腔砲、自動装填装置。

 1961年に開発されたT64戦車は、年を追うごとに強化されていく。

 T64戦車(55口径115mm滑腔砲)は、T64A戦車(51口径125mm滑腔砲)に強化される。

 そして、ウラジオストック共和国で戦闘機から戦車までの生産体制が確立されていた。

 T64戦車から砲弾が撃ち出され、標的のT34戦車を破壊してしまう。

 「どうです? 新型戦車は?」

 「ほぉ〜 さすが戦車大国、すばらしい」

 「日本もBTR60だけでなく、T64の購入を考えては?」

 「そうですねぇ 侵攻能力がないと軽んじられやすいですからねぇ」

 「お安くしておきますよ」

 「んん・・・対戦車ミサイルに予算を取られてしまいましたからねぇ」

 「あの噂の戦車の上部装甲を狙い撃ちするミサイルですか?」

 「ええ、まぁ」

 「マリュートカより優れているとか?」

 「地下から誘導しているだけで同じですよ。それほど優れているわけでもありませんよ」

 「まさか、電気で戦車や装甲車を走らせたいとか」

 「そりゃ 日本は、ガソリンスタンドより、充電スタンドが多い国ですからね」

 「日本だけ別世界ですな」

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 史実の日本は、ちょっと微妙ですが、冷戦崩壊後で勝ち組みでしょうか。

 この戦記の共産圏は、どうなっていくでしょうか。

 科学技術は西側が強く。

 共産圏側で採算性、生産性が高いのは日本だけ。

 ソビエト連邦は、ウラジオストック共和国投資、ユーラシア鉄道網、ウラジオーナに予算を食われ。

 欧州正面のワルシャワ機構軍とNATO軍の戦力差は、史実と違って、ほぼ互角か不利。

 プラハの春でソビエトと東欧の結束が弱まり。

 その余波で、フランスとイタリアは共産勢力拡大。

 アメリカは、リベラルが強くなっていく。

 

 並行次元のもう一つの世界でしょうか?

 

 実を言うと作者は、水晶を見て呪文を唱えると・・・

 

 

 

 嘘です。

 

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第27話 1968年 『豊原オリンピック』
第28話 1969年 『勝ち馬は、どっちだ』
第29話 1970年 『ば・ん・ぱ・く』