仮想戦記 『国防戦記』
第31話 1972年 『弱り目に祟り目』
ニクソン大統領がスペースシャトル計画を打ち出す。
ホワイトハウス。
忍び寄る容共の風潮、多発するゼネストは反戦運動も巻き込んでいく。
「ゼネストは北部で縮小。西部で増えているようです」
「スペースシャトル計画で、少しは国民を誤魔化せるだろうか」
「国民の目を宇宙に向けられれば良いのです」
「ソビエトが、またインドとパキスタンを和解させやがったからな。ロクな事をしやがらねぇ」
「フルシチョフの自主的な辞任といい」
「共産主義ソビエトのイメージが変わりますね」
「我々が印パ対立を利用してユーラシア大陸鉄道網を妨害した事もスッパ抜かれた」
「国連では、我々の方が悪の帝国だ」
「国民の容共はさらに勢力を増しています」
「ソビエト連邦は、赤い世界の凶悪な破壊者でなくてはならない」
「それが平和の騎士のように振る舞っている」
「アフリカ大陸、中東、南米では、悪の帝国らしく動いていますよ」
「印パはユーラシア大陸鉄道網との関連です。本意ではありません」
「このまま、日ソ印連合で中華合衆国を孤立させるつもりだろうな」
「経済力では、中黄連邦より、中華合衆国の方が優位かと」
「それは、アメリカとイギリスの権益地が中華合衆国側にあるからだ。北も南も中身は変わらん」
「北も南も、漢民族は、主義思想をゴミ屑のように思っていますからね」
「しかし、弱ったぞ」
「純資産数百億ドルの資産家がウヨウヨしているアメリカ合衆国で共産化はまずいだろう」
「イタリア、フランスの富豪がアメリカに避難してきたのは良かったですがね」
「だが資本家に逃げ出されたらアメリカは崩壊だ」
「かといって、資本家を守るために戦車で民衆を曳き殺してもまずいのでは?」
「んん・・欧州の動きは?」
「アイルランド、イギリス、デンマーク、ノルウェーのEC加盟で乗り切るようです」
「つまり、フランス、イタリアにあっても、名目上、イギリスの資産であると言うことかね」
「そんなところです」
「だが右翼と左翼のテロの応酬は激しいだろう。テロを呼び込むのようなものだ」
「労働者は、民衆の力で共産化、民主化できるのなら財閥解体も臨むところのようです」
「財閥解体など、理知的な人間の望むことではない」
「世の中、理知的な人間ばかりと限りませんよ」
「民主主義を健全だと見せかけることは不可能だ」
「民主主義は最悪の政治形態と言える」
「これまで試みられたあらゆる政治形態を除けば、と言ったやつもいる」
「資産家が資産ごと、アメリカ合衆国から逃亡を図るような事態になれば西欧は危険です」
「東欧は?」
「反政府民主化運動は、100万ドル制限の私有財産を認めた事で沈静化」
「百万ドルか・・・」
「アメリカには数百億ドルの資産家がいる、逃げ出すだろうな」
「もし、東欧の共産党が自ら多党制に移行した場合」
「欧米諸国は労働運動に飲み込まれてしまう可能性もあります」
「東欧が多党制に移行する可能性は?」
「共産党でも国民の支持があれば穏健になりますよ」
「国民の支持がなければ民主主義国家でも恐怖政治になりやすいか・・・」
「問題は、東欧の共産政府が、いつまで持つか、だろうな」
「共産主義が希望溢れる世界になれば、こちらのクビが締まりかねません」
「東欧は軍で鎮圧する気がないのか?」
「ソビエトが軍の出動を押さえているようです」
「またKGBも東欧の警察を押さえ、民衆への抑圧を防いでるようです」
「これまでと、まったく逆の事をしているのか」
「こちらが苦しんでいるのを知っているのでしょう」
「西欧と東欧の交換では割に合わん」
「なんとか、共産主義のイメージダウンを図りたい」
「大企業の反発を押さえて、中小企業への融資と起業促進を進めさせています」
「できることは、それくらいかな。チリは?」
「狂信的な左翼に日本人8人を虐殺させましたから日本・チリの関係は悪化」
「日本は、チリから退くと思います」
「チリを孤立させ、共産党政権を打倒したい」
「チリを孤立させる事が出来れば、軍人を煽ってクーデターを起こせるかと思います」
「あとは、わたしが中華合衆国に行く」
「そして、中華合衆国が孤立していないイメージを与えて外交上の点数を稼ぐか」
「ええ」
「それと、民主党が資本家と組むのか、国民と組むのか。動きが気がかりだな」
「どっちつかずでも、現政府に大きな打撃を与えるでしょう」
「・・・」
某工場
「これがアメリカの新型工作機械か」
「チリの事件を黙認するという事で、ようやく買えたらしいけど。どうだろう」
「精度が高いよ。さすが軍用」
「これをマザーマシンにすれば、日本の工業力も弾みがつくね」
「ゼロコンマ、ゼロ、ゼロ・・・は、良くなる」
にや〜
樺太 冬季オリンピック開催
「各国代表とも、新幹線の320km記録に驚いているようだ」
「新幹線の移動に合わせて地下鉄を加減圧させれば」
「空気抵抗が減少で引っ張られ、空気圧で押されますからね」
「ふっ♪ 加速ターボシステムで予算増加が見込めるかも」
「地下鉄でなければできないからね」
「やり過ぎると・・・」
「わかってるよ。旧軍の徹は踏みたくない。当面は230km運転で様子を見よう」
「いざとなったら、ボルネオに逃げれば済みますけどね」
「いくらなんでも、旧軍属みたいに固定資産を二束三文で取られるのは辛いよ」
「確かに、ですが国防省がむくれてますよ」
「地下鉄が伸びれば国防にもなるよ。MiG戦闘機を新型にすることもないだろう」
「それは、そうですがね」
チリ
サンチアゴの迎賓館に日本の大使が呼ばれていた。
「大使。この度は、大変な迷惑を掛けてしまいました」
「事情は、だいたい。遺憾の意を・・・」
「むろん、遺族に対し補償していただけるのでしょうな」
「ええ、しかし、財政難の折ですし・・・」
「まさか、8人程度の見舞金を支払えないほど財政難ではないでしょう」
「一人当たり、3kuで、24kuの領土では?」
「はぁ?」
「ペルー国境に面した海岸線で砂漠地帯ですが」
「だいたい、海岸線に沿って6km奥行き4kmくらいです」
「それを日本と遺族に?」
「日本で遺族から買い求めていただいて、遺族に補償金を支払っていただければ良いかと」
「・・・・・」
「チリにとっては小さな土地ですが日本には、大きな利益をもたらすと思われます」
「・・・チリとペルーは国境問題を抱えていると聞いていますが」
「ペルーとは友好国ですし。希望でしたら、1kmほど南側にずらしますが」
「先ほど “領土” と言われましたが、主権も?」
「ええ、もちろん」
「港や空港を作っても、領空と領海も?」
「もちろんです。こちらの意図は、察していただけるものと思いますが」
「そ、それは、まぁ・・・」
日本・チリ相互 “飛鳥” 保障協定調印。
ホワイトハウス
職員が慌てふためいて、行ったり来たり。
「・・・どういうことかね」
「ですから、チリは、遺族への補償を24kuの国土で支払ったそうです」
「そんな馬鹿な」
「奇手ですな」
「まずいだろう」
「日本人へのテロは、チリに日本との関係を緊密にさせる口実を与えてしまったようです」
「り、領土の割譲などチリの軍や国民は反発するはずだ」
「国民の85パーセントが都市部に集中して、40パーセントがサンチアゴ在住です」
「北の最果ての砂漠など・・・場所は・・・都市のアリカにも届いていません」
「困った事に・・・」
「共産圏の日本の工業製品で保っているのは、知られている事ですし」
「信じられん」
「日本は、どうする気ですかね」
「日本の土建屋は、色めき立っているよ」
「だろうな」
「しかし、防衛の負担は、大きいだろう」
「ペルーは経済的な波及効果で喜んでいる節があるようですがね」
「日本は、チリ経済を安定させてしまうのではないのか」
「あり得ますね。実行犯は狂信的な左翼でも背後にCIAがいた事は掴んでいるはず」
「日本を黙らせるために優良な工作機械を輸出したのだぞ」
「これでは、藪蛇どころか大損だろう」
「遺族に対する賠償でしたら、アメリカ合衆国で買い取れるのでは?」
「アメリカ人じゃあるまいし」
「一定以上の利権と金額を超えたら祖国に売るよ。無理だ」
「海上封鎖は?」
「日本の船が日本の領土に入るの妨害するのか?」
「・・・・」
「日ソ分断工作は?」
「アメリカが共産国を攻撃すれば共産国は日本に頼り」
「アメリカが日本を攻撃すれば日本は共産国に頼ります」
「敵は各個撃破が原則。敵を増やすような愚かな事をすべきではない」
「何とか、日ソを分断させ、孤立させる方法を考えなければ・・・」
「いまは、西側そのものが崩壊しつつあります」
「下手をするとマーシャルプランの投資が全て台無しにされかねません」
大統領は、行ったり来たり、行ったり来たり
チリ北部
日本人とチリ人たちが海沿いの砂丘に集まっていた。
チリと日本で合同葬儀が行われ、
日本人犠牲者8人の記念碑が建設されていく。
チリ側の哀悼の声明は、感動的であり、涙を誘う。
「問題は、アジュンデ大統領の命脈次第だろう」
「一応、領土譲渡は正式な調印だよ」
「南米だぞ。信じるのか?」
「場所で言うとね。砂漠は押さえてしまうと強いってことだよ」
「ふ 24ku四方なんて砲弾の届く距離じゃないか」
「チリとペルーが気を変えたら一巻の終わりだよ」
「それは言える」
「船団の準備が終わるまで、もう少し、発表と調印を遅らせても良かったけどね」
「時期を逸してしまうと事件が風化するし、記憶が薄れてしまうんだ」
「・・・しかし、そんなに立派な奴だったか、あいつら」
「米ソ対立を利用して、チリで漁夫の利を画策していたからね」
「チリにとっては、百鬼夜行の類だと思うよ」
「殺されてもおかしくないよね」
「むしろ、殺した左翼狂信派側が愛国者」
「まぁ あることないこと、でっち上げて聖人に祭り上げないと」
「同じ事が起きたとき領土を掠め取られるだろう」
「なるほど。それで8人はチリの民主主義を守ろうとして狂信者たちに殺された、ですか」
「でっち上げの偶像が教科書に載るのか。世の中、狂ってるとしか思えん」
「日本側も、合わせるので?」
「まぁ 遺族も呆れているくらいだし。チリ側の公証で良いんじゃないの」
「日本の国益にとっては悪くありませんがね」
「チリの銅、ペルーの銀。水産も大きいですし。拠点さえできれば観光も・・・」
「デューン/砂の惑星か・・・」
「なんですか、それ?」
「フランク・ハーバート作のSF小説」
「砂の惑星アラキスの利権を巡って、貴族が権謀術数を繰り広げる」
「どうなるんです?」
「主役の公爵家は、火中の栗を拾って、酷い目に遭うが、なんとなく、立ち直る」
「はぁ この砂漠を何とかしないと確かに火中の栗ですかね。水が問題ですよ」
「南極の氷山を持ってくれば解決するだろう」
「なるほど。あとは、アメリカの妨害・・・」
「そうだな・・・」
「「「・・・・」」」 ため息
ウォーター・ゲート事件。
民主党本部ウォーター・ゲートビルに盗聴器が仕掛けられた事が発覚。
共和党の大統領ニクソンが盗聴をさせた事が明らかになっていく。
アーリントン国立墓地 (バージニア州)
ワシントン近くのこの場所は、霊前であり
死者に対する畏敬の念がるのか、密会に適当だった。
「・・・どうやら、盗聴の事実関係は、確かなようだ」 白人
「犯行がプロでないのは明らか。本当に現職大統領筋なので?」 黄色人種
「大統領でもCIAやFBIに民主党本部の盗聴を命令できないでしょう。余所者を使うでしょうね」
「・・・これで、アメリカは国内問題に年月を取られるはず」
「西側諸国は、災難ですな」
「ソビエトにとっては、追い風ですか?」
「ソビエト連邦は、外敵に対する脅威で結束が保たれている。一概には言えないね」
「なるほど。ハルピニスクは元気ですからね」
「なにぶん、国内をまとめない事には、外交もままなりませんよ」
「好機かと思えば、そうではないようで・・・」
「むしろ、外交で好機は、ニクソン失脚中にチリに領土を作った日本では?」
「手の届かない場所ですからね。どうなる事やら」
「ペルーのベラスコ将軍も日本の “飛鳥” 領有を支持しているのでは?」
「ペルーは、軍事政権ですが反米自主独立。農地改革で地主制度を潰しましたからね」
「日本が来れば経済波及効果も見込めるのでしょう」
「つまり、チリは、アメリカ資本の鉱山を国有化して、日本に輸出の足場を作った」
「隣国のペルーも好都合なら言うことはないですな」
「ソビエトの支持でも嬉しいですよ」
「むろん、国連でも飛鳥を支持しますとも、CIAやFBIの歯軋りする様は痛快ですからね」
「それは助かります」
「新領土の国防で、戦車は入り用でないですか?」
「いえ、あそこも、穴を掘る予定ですから」
「やれやれ、日本の戦車購入がないと、第三世界への売れ行きが怪しくなるのですよ」
「それはないでしょう」
「CIAが、そう宣伝していますからね」
モスクワ
冬季明けのクレムリン
カザコフ館
コスイギンが不安げに窓から赤の広場を見下ろす。
「・・・同志。群衆は、まだ集まってませんよ」
「東欧は、私有財産を認め、多党制移行も時間の問題だ」
「ソビエトがそうなっても、おかしくはない」
「報告ですと。いまのところ、群衆は、ワシントンに集まりそうです」
「ニクソンめ、ざぁまあみろ」
「それより、ウラジオストック共和国が次のオリンピック開催をハルピニスクで行いたいと」
「な、何だと!」
「気候が温暖なので、モスクワより有利だそうです」
「ふ、ふざけるな。ソビエト連邦でオリンピックをするなら、モスクワに決まっておる」
「し、しかし・・・」
「シベリアの複々線化を急がせろ。東との空路をもっと増やすのだ」
「建設のため、今以上の資源が日本に流れることに」
「だからどうした。ソビエトが東西二つに分断したら事だぞ」
「可能な限り、急がせます」
「そうしてくれ」
「チリの支援は、どうしますか?」
「アメリカが外交的に動き難いのなら、付け入る隙、満載だが・・・」
「予算がないですね」
「それもあるがチリの場合、自由民主主義の日本の方が動きやすいのだ」
ウォーターゲート事件は、アメリカ合衆国の大統領を苦境に立たせ、
外交政治力を著しく後退させてしまう。
内政を誤魔化すため青海を爆撃した。
しかし、青海の写真が一面を賑わし、反戦機運は高まる。
国民の大統領に対する不信も消えなかった。
“アメリカ合衆国が真に健全な政体を保ち続けたいのであれば、ニクソンは辞任すべきだ”
“ニクソンが辞任しないのならアメリカ合衆国を共産化し、財閥を解体し、再度、再生させるべき”
こういった落書きが、各所に書かれる。
実のところ、KGBの工作より、急進改革派アメリカ人が主役であり。
通報を聞いたKGBの諜報員が確認に行く事が多かった。
アメリカのウォーターゲート事件は、尻込みしていた日本の南米工作を勢いづかせた。
首相官邸
偉い人たちが集まる部屋。
「迷っているときにウォーターゲート事件とはね。天運だろうか」
「それは、土建屋にとってかい?」
「採算を黒字にする方法はね」
「早く施設を完成させ運行を開始。経営を軌道に乗せることさ」
「その施設の限度は、どの程度だ?」
「どうせ限度知らずなのだろう」
「取り敢えず、必要最小限は、やらないとな」
「その最小限も、はっきりして欲しいものだ。上海事件の二の舞は、ごめんだぞ」
「砂漠に人なんて来ないよ」
キエフ型航空巡洋艦は、艤装中であり。
就役まで年月を必要としていた。
日本海軍は、キエフ型建造に際し、ソビエト軍パイロットの離着艦訓練で協力していた。
また、現実に空母を保有している日本の意見も参考にされていく。
まず、日本側が兵装が複雑過ぎると起工段階で忠告。
対空装備が強化され、対潜装備が縮小してしまう。
そのおかげか、キエフ型の設計は、当初と構想が変わり、設計も変更されていた。
対空ミサイルを多く装備するなら迎撃機より、対潜ヘリ、哨戒ヘリを主とすべき。
あるいは、対潜ミサイルを多く装備するなら迎撃機を主とすべき。というもの。
限定されたトン数内で、機能を重複させない方が得だということ。
ソビエト連邦海軍の選択は “対空ミサイル。哨戒ヘリ・対潜ヘリを主とする” で決まり。
フォージャーの搭載が中止。
日本側の提案でKa27対潜ヘリの派生型で、Ka28対空哨戒ヘリの開発が進められていく。
そして、Ka27対潜ヘリ16機。Ka28哨戒ヘリ16機の搭載が決まってしまう。
キエフ型航空巡洋艦
排水量 | 全長×全幅×吃水 | 馬力 | 最大速度 | 航続距離 | 乗員 | 対潜Ka27 | 哨戒Ka28 |
36000トン | 273.1×53×8.2 | 180000hp | 32 | 18/8000 | 1500 | 16 | 16 |
対艦ミサイル連装4基 | 76.2mm連装2基。 | 対空ミサイル連装14基 | 65口径30mmAK630(CIWS)6基。 |
ジェット機艦載機の不採用により、ヘリ運用が向上していた。
先にソビエトで起工した1番艦キエフより、2番艦ミンスクの工期が早く進む。
日本は、仕事がつかえているため早く終わらせたいだけと言える。
日本で製造された機材・資材もソビエトに輸送され、
キエフ建造に流用されていた。
進捗度は工員の差と言えなくもない。
「ハラショー! ハラショー!」
ヨタヨタと歩く頬の赤いソビエト軍将校の監修の下、テキパキ仕事が進んでいく。
後ろから日本軍将校たちが付いていく。
「なんともデジャブを感じるね」
「そういえば、艦尾砲塔が吹き飛んだ日向を航空戦艦に改造して生き残らせようとしてたっけ」
「建造していたら、日本海軍史に恥を晒してたな」
「あははは・・・ここは、それに近いモノがあるよ」
「しかし、構造的には、こっちの方がマシだな」
「それは言える。ともあれ、日本で建造すると、なんとなく、親近感が湧くね」
「フォージャーも離着艦だけは、できるのだろう?」
「そりゃ VTOLなら可能だけど、ヘリ空母だから効率性は落ちると思うよ」
「フォージャーは、どうも怪しいな。ハインドがマシという気がする」
「ああ、ハインドは良いよ」
「飛行場が破壊されても、敵の上陸部隊を空から強襲しやすい。持久戦にぴったり」
「兵隊は、地下から行けるから、もう少し、改良できるかもしれない」
「いや、離島への増兵なら良いかも」
「んん・・増兵は事前に送るからね。輸送機でやると思うよ」
ミュンヘンオリンピック
オリンピック選手村でパレスチナ・ゲリラがイスラエル人選手11人を殺害。
ドイツ国内でイスラエル代表の殺害は、ホロコーストなどの遺恨も絡み、大問題となってしまう。
当然、中東問題は、世界の注目を集めた。
ドイツ連邦共和国 西ドイツの首都ボン
ライン川の河口から約390kmの上流、川沿いの小さな街。
国際河川だけあって内陸でも380mの川幅があった。
数人の日本人が河川に面した酒場にいた。
「ミュンヘン事件は、驚かされたな」
「西ドイツは、共産勢力で荒れているイタリア、フランスより安全だと思ったがね」
「テロがオリンピックの選手村を襲うとは思わんよ」
「世の中、荒んでいるからオリンピックぐらい良心的に開催して欲しいよ」
「だけど、この辺は治安が良いんだな。さすが首都」
「西ドイツは共産圏の脅威に直接面しているから交渉が実を結ぶとゼネストも沈静化しやすいよ」
「共産圏の脅威ねぇ 東側にポンプを納品して来たばかりだから、脅威が滑稽に思えるよ」
「まぁ 事実は小説よりも奇なりだし。東側もギャグに思えるような事も多いからね」
「イギリスは “ゆりかごから墓場まで” 政策で、それほどでもなさそうだが?」
「社会福祉の充実か」
「福祉は選挙の人気取りで良いけど資本主義の皮を被った社会主義だな」
「極端な累進課税制だから成功しても実入りが少ない」
「資本家は逃亡したくなるし、経済活力が失われて怠け者が増える」
「勤労意欲が減退した国民の面倒をみるため、膨大な財政赤字を抱え込む事になるよ」
「イギリスは、揚子江の利権と北海の油田に助けられたと言えるね」
「今回の反体制騒動に巻き込まれず済んだのは救いだけどね。それも限界だよ」
「しかし、西ドイツはどうなんだ。日本と同じように生産拡大で西側に商品を輸出している」
「結局、堅実に働いた方が勝ちってことだろう」
「西ドイツの輸出攻勢で日本製の売れ行きが落ちてるよ」
「でも、今回のミュンヘン事件で弱るんじゃないの」
「西ドイツは、威信ガタ落ちで過去のユダヤ人問題が炙り出しか。良いような悪いような」
「欧州大陸の激変で米ソのバランスは、どうなんだろう?」
「NATO諸国でまともに自由資本主義が機能しているのは西ドイツ」
「ほかに探せばスイスかな」
「東欧で共産主義国家らしいのは東ドイツと異端のユーゴスラビアだ」
「アメリカも、ソビエトも手足をもぎ取られて、身動きとれず。良い勝負じゃないかな」
「でもソビエトがキエフ。日本がミンスクを建造すれば、少しは慌てるかもね」
「でも、同型艦建造で日本に手の内を明かすって、どうなんだろう」
「ソビエト国産と日本製を比べたいんじゃないの」
「どちらにしろ、36000トン級航空巡洋艦だよ。お金持ちだね」
「でも、日本で建造した方が安く上がるって、ある意味、不幸だよね」
「日本が引き取るって、ないのか、チリのアレ、船がいるだろう」
「積荷を載せる船はいるけど、軍艦はどうだろう」
「嫌がらせでアメリカに臨検されないか」
「潜水艦を潜ませていると思わせとけばビビるよ」
「ノイズダミーで?」
「そんなもんだよ」
北海道 厚岸港
日本・ソビエト軍の関係者が見守る中、ソ連の輸送船が到着しする。
「日ソ合同演習でソビエト軍と日本軍の連携と国防が図れますな」
「お互い。得るところ大でしょうな」
「ええ」
輸送船からT64戦車が降ろされる。
「・・・ん? なんだ。日ソ合同訓練で来たT64戦車に、なんで日の丸が付いているんだ」
ソビエト側のテレビカメラが戦車に居座る戦車兵に向けられる。
「ここは、日本の北海道 厚岸ニダ。今日は、日本・・戦車の紹介ニダ」
「世界で一番すぐれたT64戦車があるニダ」
「だから、アメリカ軍も怖くて、攻めて来れないニダ」
「T64戦車は、とっても強いニダ。だからT64戦車。買うニダ」
日本兵が戦車を取り囲む。
「・・・おい、おまえ、何やってんだ?」
「戦車の紹介ニダ」
「いま、日本の戦車って、言っただろう」
「日本 “に降りた” 戦車と言ったニダ」
「嘘つけ。聞こえなかったぞ」
「そんなことないニダ。小さい声で言ったニダ」
「何で、戦車に日の丸をつけているんだ」
「日本軍に間違えて撃たれないようにニダ」
「何で日本軍の軍服を着ているんだ」
「違うニダ。ソビエトの運送会社の制服ニダ。ちょっとだけ違うニダ」
「「「「・・・・・・」」」」
北海道の大地
T64戦車36両。
BMP1歩兵戦闘車23両。
BTR60装輪装甲車8両が疾走していた。
「カッコ良いですな。BMP1」
「良いでしょう。歩兵戦闘車は世界初です」
「世界初ですか」 ポッ!
「主砲の73mm低圧滑腔砲は、少量の装薬で砲弾を撃ち出した後、ロケットブースターで加速させます」
「「「「「おお〜」」」」」
上空のミルMi8ヒップ ヘリ14機編隊が進攻方向及び全周囲の上空を偵察。
山の向こうから不意に砲撃音が轟く。
そして、大気を切り裂く音がソビエト戦車部隊の頭上に降り注ぐ。
バシャ〜! バシャ〜! バシャ〜! バシャ〜! バシャ〜!
「「「「まさか・・・・・」」」」 真っ青
「か、観測ヘリ。距離は?」
「発射位置は?」
『・・・北北西・・・距離2万3000です』
「み、見つけられなかったのか?」
『は、はい』
数分後、戦車上部装甲を真っ赤に塗られた戦車群が撃破判定で停止していた。
「命中率、32パーセントか」
「戦車の数の5倍の砲弾があれば、何とかなるということですか」
「命中率を上げてくれよ」
「予算次第ですかねぇ」
「「「「まさか・・・」」」」 ソビエト軍観戦武官
「いや、主力空軍の支援のない進攻ですから」
「はぁ? 空軍の支援で、どこに爆弾を落とすのかね?」
「日本軍が発射陣地を教えてくれるのか?」
「まさか」 笑
「基本的に要衝に届く場所に配置していますし」
「相手の移動に合わせて、輸送できますから」
「「「「「んん・・・・」」」」」
「口径が大きいだけで、誘導装置の関係で低圧滑腔砲です」
その後、逃げ回る戦車部隊に対し、スホーイ7j戦闘爆撃機が模擬爆撃を投下。
さらに日本のミルMi8ヒップ部隊の模擬ミサイル弾が投下。
3色に塗られたソ連軍戦車部隊が地上に残される。
「「「「「・・・・・・・・」」」」」
この時期のアメリカ海軍は、エセックス空母が退役し、
戦後空母体制に移行、
ミッドウェイ(CVB41) フランクリン・D・ルーズベルト(CVB42) コーラル・シー(CVB43)
フォレスタル(CVA59) サラトガ(CVA60) レンジャー(CVA61) インディペンデンス(CVA62)
キティホーク(CVA63) コンステレーション(CVA64) アメリカ(CVA66) ジョン・F・ケネディ(CVA67)
エンタープライズ(CVN65)
大型空母12隻を要していた。
十分といえば、十分。不足といえば不足。
アメリカ海軍の最大の懸念はウラジオーナで、主力機動部隊も北大西洋側にあった。
半分は、待機状態にあり。
共産化も辞さなくなっている労働者の欧州異変に備えなければならず。
そして、半分は青海争奪戦。アフリカ大陸反共作戦。中東問題の内陸戦に囚われていた。
南太平洋
空母コーラル・シー 艦橋
「提督。日本のベアです」
「弾薬は搭載できないはず。燃料は半分も積んでいないだろう。心配いらんよ」
「大西洋・地中海・中東で8隻」
「太平洋・インド洋で4隻」
「しかし、内3分の1が待機整備中。半分が作戦中か」
「それで、いま動ける空母は、本艦1隻か・・・」
「やれない事はありませんが、日ソが完全に連合してしまうと、危険です」
「それは、本国次第だな」
「ですが、これほど、早く動けるなんて」
「土建国家だから。こっちに回せるくらいの機材や資材があったのだろう」
「ですが、場所は砂漠」
「日本人のやることは同じだよ」
「・・・5時方向。距離2500mにソナー音!」
「取り舵24。速度30ノット。引き離せ!」
「護衛の駆逐艦に前を押さえさせろ!」
「ちっ! ソビエトの原子力潜水艦まで張り付いていやがる」
「提督。後方の輸送艦隊にも潜水艦が張りつかれているそうです」
「ソビエト潜水艦の方が数が多いか・・・」
「ソビエト艦隊も目ざわりですな」
「壊滅させたら、さぞ、面白いだろうな」
「それは、もう・・・」
「しかし、財界も揚子江権益を惜しんでいるようですし。微妙なところです」
「自暴自棄に戦争を起こさなければ良いがね」
「同じ戦うのなら公益性と理性と正義の下で戦いたいですね」
「そういう戦争は、あまりないな」
「ですが、なんとなく攻撃命令を待ちたい気分ですよ」
「まったく」
通信兵が来る
「・・・提督!」
「なんだ。攻撃命令か?」
「いえ “インドがアメリカのチリ干渉を遺憾であり、不当である” と」
「ちっ!」
ソ連艦隊
戦艦 ウラル
巡洋艦 スヴェルドロフ ゼルジンスキー
戦艦ウラル 艦橋
「日本船団とアメリカ機動部隊の間に入れ、割り込ませるな」
「モンタナ。アイオワ、ニュージャージー・・・アメリカ側が強そうですがね」
「キューバの復讐をしてやる」
「少なくとも、キューバの様に封鎖されていないようですが」
「運んでいるのは核兵器じゃないからね。それに日本の領土なら、何でもありだろう」
「だいたい、南米市場を日本に取られたらアメリカは、核兵器以上の打撃だろう」
「売上と収入が減って人員整理されたら、自殺者急増だな」
「キューバも、そうすれば、良かったのに」
「核じゃなく、工場?」
「ふっ♪」
「しかし、大きな国でさえ、領土を切り売りしたりしない」
「小さな国は、領土を渡すなんて尚更できないだろうな」
「下手をすれば、権力の座から引き摺り降ろされますからね」
「チリが譲渡するのは砂漠だし、物資不足で、それもなさそうだが」
「日本の船団がくれば、物資で潤う」
「日本商品の専売で権力の座は安泰ですか」
「自虐的な言い方になるがね。共産圏のやる事は同じだろうな」
「「「「・・・・」」」」
アントノフAn26Jカール (2820hp×2 + 推力900kg) が船団上空を飛ぶ。
日本は、双発機にレドームを装備させ、洋上哨戒機として利用していた。
レーダーに艦影と機影が映っていた。
その気になれば艦対艦ミサイルの応酬となり、互いに殲滅戦もありえた。
「船団から北500kmにアメリカ太平洋艦隊。手前250km先にソビエト艦隊か・・・」
「どうする気かな?」
「攻撃してくるかな」
「まず、攻撃するなら、口実を考えないと」
「現場指揮官が衝動的にというのも、ありそうだが?」
「アメリカ軍の歴史では、少数派でしょう」
「それにアメリカは、青海、アフリカで交戦中で。大統領は吊るし上げ中だろう」
「日本と戦争になったら、最大の権益地の揚子江も失われるだろうね」
「「「「・・・・」」」」
空母 瑞鶴、
巡洋艦 志摩、筑摩。
瑞鶴の飛行甲板の上で、MiG19がタッチ・アンド・ゴーを繰り返していた。
瑞鶴は、戦後改装で、艦載機の重量に耐えるため格納庫を一層にしていた。
飛行甲板の位置は低くなり、見た目も大鳳に似ていた。
訓練中のロシア人パイロットがMiG19を器用に着艦させる。
瑞鶴 艦橋
「いゃあ、生きてて良かった」
「こういう日が訪れるとはね」
「まったく、まったく」
「でも、いいの? メガフロート。こっちに持ってきて?」
「建造中だから、良いんだと」
「アメリカ。剥れてるよ。きっと」
「だよね」
当初 13万9000トン。全長1200m×全幅120m×吃水10m。(敷島、八島)
↓ ↓ ↓
現在 30万5000トン。全長2400m×全幅120m×吃水12m。(敷島、八島)
メガフロートは、増強され、全長が伸ばされ、吃水が深くなっていた。
十数隻の外洋大型タグボートが、そのメガフロートを引っ張り、押していた。
チェコの民主化改革とチリの共産化は、民衆の力によって行われた。
民衆が力を出せば、資本主義を打倒し、
共産化した後、もう一度、資本主義に戻す事ができる。
この既成事実に欧米諸国が直面したとき。
市民革命に馴染みのある国民は、行動を起こしやすかった。
労働者はゼネストと反体制運動を活発化させ、資産家たちを恐怖させた。
さらにアメリカ大統領のウォーターゲート事件で政治不信が高まり、
祖国の不信につながる。
正義が失われたとき、誇りが奪われ、
モラルが低下し、自制心も薄れていく。
デトロイト
「あそこだ。社長の娘だ」
「行くぞ!」
「ああ」
学校に向かっていたベンツに車が衝突。
銃を持った男たち襲われ、護衛が殺され、令嬢が奪われていく。
運転手もグルになった犯罪も多発する。
騙す、犯す、奪い、殺人が行われ、犯罪率も高まっていく。
如何なる大国、先進国であれ、
社会全般で信頼という名の絆が切れ、秩序、規範が失われると脆かった。
ニクソンの支持基盤の一つ油田のある、カリフォルニアで暴動が発生。
州軍が発砲した事により、アメリカ合衆国全体が騒然となり、
アメリカ人は銃を持ち出す。
州軍と市民が銃撃戦が小一時間も行われる。
反戦運動は全米で高まりを見せ。
アメリカ軍の一部は、青海争奪戦から撤収が始まる。
欧州大陸
世界史を動かしてきた国々は、やはり、この年も世界史を動かしてしまう。
フランス議会
「フランス第6共和国は、5年という限定された期間のみ、私有財産100ドル以下で共産化し」
「資産を再分配した後、自由資本主義政体に復帰する事を盟約する」
「また宗教に対する・・・」
フランス第6共和国が誕生し、共産主義政権が打ち立てられた。
イタリアとフランスに誘発されるように共産党が第1党となって共産化していた。
イタリア議会
「我がイタリア共和国は、今後7年間の共産政策を執る」
「しかし、これは永続的なものではなく、限定的な処分であり」
「宗教弾圧は一切行われない」
「この期間内において、私有財産は100万ドル以下とし、資産の公平な分配を行う」
「その後、自由資本主義政体に復帰するものとする」
フランスとイタリアの資産家は、流動資産を持ち逃げし、
国外または、植民地に逃亡を図る。
そして、逃亡先の一つ、
自由資本主義の牙城、アメリカ合衆国も危険な状況となっていた。
空母コーラル・シー 艦橋
ファントムU戦闘機が艦隊上空の制空権を守り、ベアも、MiG21も寄せ付けなかった。
「ベアを離着艦させるとは・・・」
「やはり、飛行甲板の大きな八島、敷島は、航空機運用で有利だな」
「提督。それは禁句です」
「ふっ 艦隊への燃料補給も、こっちが先か・・・」
「提督。真珠湾へ帰還命令です」
「なんでだ?」
「ハワイで、ストです」
メガフロート敷島、八島がチリ沖合に現れ、
浚渫工事と整地、凝固させた大地に接岸。
南北の海岸を挟むように固定させられる。
敷島、八島から土木建設機械が降ろされ、
日本の国土となった大地を整地し始めていく。
沖合いの洋上には氷山が引っ張り込まれ、
緑地化計画も進められていく。
海岸と二つのメガフロートに囲まれた場所が湾となって、港が建設され、
日本の船団が入港していく。
瑞鶴 艦橋
「これで、アジュンデ大統領は、命脈を保てるかな」
「どうだろうね。それはアジュンデ大統領の力でしょう」
「アジュンデ大統領が駄目だと、飛鳥は危ないだろう。頑張ってもらいたいね」
「しかし、直線距離でも日本から17000km。トラックからでも16000km近い。どうするんだろうね」
「ベアでも給油しないと届かないね」
「取り敢えず。飛鳥に品物を置けば、チリとペルーが南米中に売り捌いてくれるらしいよ」
「良いけど。チリの右翼が邪魔しそうだな」
「ペルーは右翼が味方で、チリは左翼が味方か・・・」
「国益に傾注すると分別無しだな」
「壮大な浪費にならなければ良いのですが・・・」
・・・デジャブ・・・
「「「あははは・・・」」」
モスクワ クレムリン カザコフ館
コスイギンは、ソワソワと窓から外を眺める。
空を見ては、ため息。
路上を見ては、怪訝に目を細める。
「同志コスイギン。東ドイツ、アルバニア、ユーゴスラビアは現状維持です」
「・・・・」
「チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランドは民衆の動き次第で多党制への移行を検討しています」
「・・・・」
「ブルガリア、ルーマニアは民主化運動が激しさを増しており」
「・・・・」
「軍で鎮圧しないのであれば、100万ドル上限で私有財産を認めざるを得ません」
「・・・・」
「下手をすれば、共産党が潰され。民主化へ移行してしまうでしょう」
「・・・・」
「西欧の限定的な共産化は、一時的なものとされ。東欧の方は・・・」
「・・・・」
『ていうか、聞けよ。おい・・・』
「あ・・・見ろ! 雪だ! 見ろ♪ 雪だ! 雪だ!」
「・・・今年も、群衆が集まらなかったようですな」 ため息
「あはははは、はははは、はははは」
国連 議場
「チリは共産主義の圧政によって、国民が苦しんでいる」
「このような非道を許すべきではない」
「チリ国民が苦しんでいるのは、アメリカの謀略と破壊工作が原因だと思われるが」
「アメリカは、真に自由を求めているに過ぎない」
「アメリカは、チリ国民に意思を踏み躙っているのではないか。民族自決は嘘だろう」
「・・・・」
「ライバル候補に対する盗聴以上の事をしているような気がするが」
「・・・・」
「本当は、民主主義を守る、意思すらないのではないか」
「・・・・」
「偽りの正義で民族の自決を踏み躙り、南米の覇権を握ろうとしているのではないか」
「・・・・」
「アメリカのチリに対する行為は、国際信義に反する犯罪だ!」
「・・・・」
「そうだ! ニクソンは独裁者として、アメリカの民主主義の秩序を乱そうとしている」
「・・・・」
「そして、昨年の印パ戦争においてもCIAの画策は明らか・・・」
「言いがかりだ! そんな事実はない!!!」
ソビエトと共産圏。
そして、日本と第3世界まで巻き込んだ非難がアメリカに集中していく。
アメリカ合衆国は、如何なる国家の軍事力にも屈しない。
しかし、正義には屈しやすいという、偏執的ナルシズムに犯されており・・・
ホワイトハウス
ニクソン大統領は青海争奪戦。
アフリカ大陸の反共戦争の状況を見つめる。
ニクソンの支持基盤は、軍産複合体・石油業界だった。
「おのれぇ ソビエトと日本め。あいつら、誰が国連の分担金を出していると思ってる」
「まぁ 親の総取りとまでいきませんが、国際基軸通貨で儲かってはいますけどね」
「日ソ分断は?」
「こちらが反ソ・反日工作をやめない限り、無理のようで・・・」
「いまの状態でも十分、日ソは、準同盟だろう」
「アメリカが先に日本の理事国入りを認めれば良かった、としかいえませんね」
「どいつも、こいつも・・・」
「民主党の追求も激しさを増しています」
「フルシチョフの自発的な辞任劇でソビエト連邦のイメージが変わりましたからね」
「あの、リベラルどもが」
「ですが、FBIの犯罪調査を遅らせるよう、CIAに依頼した件も録音されていますし・・・」
電話が鳴る
「・・・大統領・・・あなたの支持者からです」
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月夜裏 野々香です。
ウォーターゲート事件です。
詳しくは、検索して読んでいただければ、書いてある通りかと・・・ (他力本願です)
史実より共産勢力とリベラルが強くなっているため、大統領は凹まされます。
西側諸国は、アメリカ合衆国大統領という強い後ろ盾がグラついて大弱り。
共産勢力は、欧州大陸から、アメリカ合衆国にまで忍び寄り。財閥解体まで視野に入れます。
何しろ “民衆の力で共産化し、共産主義から民主化に回帰できるのなら・・・”
と考えたくもなります。
イタリア、フランス
期限限定ですが共産化してしまいました。
欧米諸国の財閥の驕り。
東欧の幻想的な民主化とソビエトの偽善的な調停のせいです。
こうしなければ民衆が治まらなかったという事にしてください。
自由資本主義陣営 ピ〜ン〜チ〜!!!
おたふくと同じでしょうか、一度かかれば、共産主義に懲りるはず。
東欧
こっちも、共産党が瓦解中です。
権力にしがみ付く共産党指導者も、
ソビエトが軍をワルシャワ軍を押さえ込み。
手足をもぎ取られ。
警察も半分は、民衆側。風前の灯でしょうか。
ソビエト
共産主義崩壊前夜、モスクワ冬の陣でしょうか、
ソビエト最大最強の味方は、やはり、冬将軍でした。
敷島と八島の全長を増築で伸ばしました。
ベアを運用するためです。
2400mで足りるかというと不明。
飛行甲板が海面から高く。
ベアの軽量化に成功。燃料・爆弾を減らしている事にしてください。
第30話 1971年 『100万ドルの悲喜劇・・・』 |
第31話 1972年 『弱り目に祟り目』 |
第32話 1973年 『こぼれたミルクは・・・』 |