月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想戦記 『国防戦記』

 

 

 第33話 1974年 『東嵐西乱』

 プラハの春でチェコスロバキアの共産党独裁が崩れ多党制へ移行。

 ポーランド、ハンガリーは私有財産100万ドル上限制を承認。

 フランス、イタリアも私有財産100万ドル上限制を承認して共産化。

 ルーマニアは政変により民主化。

 欧州大陸の政変劇は民衆から正気を奪っていく。

 02月13日

 そして、ブルガリアも民主化を求める民衆に押され、

 私有財産100万ドル上限制を承認してしまう。

 首都ソフィア 某ホテル

 「ついにブルガリアも落ちたか」

 「ポーランド、ハンガリーが共産党独裁を保っているのは、私有財産を限定的に認めた結果かな」

 「純粋な財産だから、資産から負債を引いた額だろう。上手くやれば良いと思うけどね」

 「それでも、大富豪が誤魔化せる金額じゃないと思うよ」

 「残っている自由資本主義国家は、西ドイツ、オランダ」

 「共産主義国家は、東ドイツ、ユーゴスラビアか」

 「嬉しいような悲しいような」

 「日本にヘソクリ資本が流れてくるのは嬉しいけど、日本でも、そういうのが起こりそうだな」

 「理性が働いていれば自由資本主義だろう」

 「富裕層のヘソクリ資金が流れ込んでくる方を選択するよ」

 「ブルガリア人は、理性的だよ」

 「しかし、完全な資本主義でなく、妥協で収まっているだろう」

 「庶民は100万ドルなんて見た事もない金だし」

 「縁もなさそうな金だから、どうでもいいという感じかな」

 「まぁ 日本人もそう思う人間が多くなれば、わからんね」

 

 

 モスクワ クレムリン

 もうすぐ、冬季明けの赤の広場を見下ろす。

 コスイギンは、ロシア人が民主化を求めて立ち上がらないか、と気が気ではない。

 「・・・同志ブレジネフ。準備はできておろうな」

 「ええ、日本側とは、既に交渉が済んでいます」

 「翻訳が終わり次第、日本アニメの放映は可能になります」

 「そうか、冬季はともかく、夏季は特に増やすんだ」

 「ロシア人をテレビに釘付けにして、民主化を言いださないようにするのだ」

 「しかし、共産主義にとって好ましくない表現があるかもしれません」

 「良いのだ。娯楽を増やし、ロシア人を家の外に出さなければ、共産党は安泰なのだ」

 

 

 04/25 ポルトガル カーネーション革命

 1933年のサラザール首相、マルセロ・カエターノ首相と2代続いた独裁体制が終焉してしまう。

 クーデターは成功し、

 欧州で大きな勢力となった限定的な私有財産を認めた左翼政権となってしまう。

 そして、その民主化の波は、同じ独裁国家スペインも直撃する。

 フランシスコ・フランコ総統は、人心が独裁体制から離れつつある事を悟る。

 闘病生活にあるフランコは、左翼政権にスペインを奪われるくらいならと、

 ブルボーン王朝を復活させ、フアン・カルロス1世に国政を委ねてしまう。

 結果的には、独裁制は引き継がれず。

 カルロス1世は立憲君主制に移行、国権を議会に全てを委ねてしまう。

 スペイン議会は、立憲君主制のまま、混乱しながら自由資本主義へ舵を切った。

 そして、欧州財閥のヘソクリは、自由資本主義体制の西ドイツとスペインに流れ込んでいく。

 マドリード

 日本人たちが街の様子を見守る。

 「独裁の反動で私有財産100万ドル上限の政体に移行すると思ったのにスペインは自由資本主義か。意外だね」

 「良識が勝つこともあるよ」

 「欧米の資本家が金を持ち逃げして来れば、国が潤う。元々、観光が強い国だし」

 「でも、議会は5.5対4.5だったから、資本家に対する僻みやっかみも微妙だな」

 「そういえば、貧民層も、どっちつかずで分かれていたな」

 「どっちが良いか分からなかったんじゃないの」

 「共産主義は、競争力が低下して経済が停滞しやすいから迷うね」

 「限定でも私有財産が認められれば共産主義も悪くないと思うよ」

 「だけどスペイン人の選択は、悪くないよ」

 「自由資本主義を認めている国に金が集まりやすくなる」

 「日本の儲けが目減りするよ」

 「それは言える」

 

 

 ギヨーム事件の特報が流れた。

 西ドイツ首相ヴィリー・ブラントの個人秘書ギュンター・ギヨームが東ドイツの将校だったこと。

 ブラント首相は、引責辞任。

 しかし、それだけでは収まらなくなってしまう。

 東西ドイツは国境は、人の行き来が制限されていただけで物資は際限なく行き来していた。

 既に外堀は崩れていたと考えることもできた。

 そして、東ドイツ首相ヴィリー・シュトフが、

 “ドイツ国民の間に秘密や国境を作るべきではない” と発言。

 東西ドイツ国民は、東ドイツ首相の言及を拡大解釈するほど統合を待ち焦がれていた。

 東ドイツ軍が傍観する中、東ドイツ民衆がベルリンを壁を破壊してしまう。

 東ドイツ首相シュトフは、有利な形での統合を待ち、

 西ドイツ首相ブラントの不祥事に付け込む。

 思想の境界線が民衆の手で壁が壊され、

 劇的な形で東西ドイツの分断が解消されていく、

 

 日本人たちが破壊されていくベルリンの壁を両方から見ていた。

 「なんともまぁ 欧州大陸は、動乱だな」

 「これで、終わったような気がするね」

 「旧時代の終わりと新時代の幕開けか。終わりの始まりか。始まりの終わりか・・・」

 「じゃ 俺たちは、欧州大陸の歴史の節目に出くわしたわけだ。嬉しいね」

 「あとは、自由民主主義の総本山アメリカ合衆国と共産主義の総本山ソビエト連邦が残ってるよ」

 欧州事変は、いろいろな表現がされた。

 カオス・クラッシュ。グレート・インベリジョン。ベスト・アネクドートなどなど・・・

 東西民衆の手でベルリンの壁が破壊されていく映像がクライマックスで流れた。

 欧州各国の国軍は、ほぼ傍観、何ら働きを見せることなく。

 民衆の力で権力の座が転覆させられてしまう。

 フランス、イタリアの資本主義が破壊され、

 チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランド、

 ルーマニア、ブルガリア、東ドイツの共産主義も破壊されてしまう。

 新聞の風刺

 札束を詰め込んだバックを抱えた共産党幹部と資本家が、

 民衆に追われ国境で出会う姿が描かれていた。

 

 

 統合ドイツは、ベルリンを首都にして、東西統合総選挙。

 元々、ドイツ連邦議会は、多党制で連立でなければ政府を作れなかった。

 そこに東ドイツの一党独裁の共産党と一緒に統合選挙が始まる。

キリスト教民主同盟(CDU) 中道右派の保守主義・キリスト教民主主義政党。
ドイツ社会民主党(SPD) 中道左派の社会民主主義政党。
キリスト教社会同盟(CSU) バイエルン州のみの保守政党。
緑の党 環境主義政党緑の党
自由民主党(FDP) 自由主義を掲げる中道政党。
共産党 東ドイツ共産党。
   

 西ドイツ側行政区・人口はともに多く、議席も当然多くなった。

 問題は西ドイツ側の党が乱立してバラバラだったこと。

 共産党選挙事務所

 「ハンス議員も、自由民主党に寝返ったぞ」

 「なんだと!」

 「民衆も西側の党に入れたがっているらしい」

 ばた! ばた! ばた!

 「おい、どういうことだ。西側で共産党に移籍する議員が現れたぞ」

 「き、聞いてないぞ」

 「勝手に共産党を名乗っているのか」

 「いや、こっちに入りたいそうだ」

 「どうして?」

 「100万ドル上限で選挙を戦いたいそうだ」

 「「「はぁ?」」」

 「ていうか、まだ、共産党は、そんなこと言ってないぞ。あれは最後の手段だろう」

 「欧州大陸に広がっている制度だ。もう最後の手段と言えんだろう」

 西ドイツでも100万ドルを上限として財閥解体を望む者が共産党に味方。

 東ドイツでも自由主義を求める者が現れてしまう。

 東ドイツ共産党は、味方の裏切り、敵の寝返りに巻き込まれ、

 統合後の政策で考えていた私有財産100万ドル上限制で戦わされていく。

 当初、東西の地域性の高い選挙になると思われた総選挙は、東西地域の垣根を無視。

 大混戦となっていく。

 ・・・結果・・・・

 キリスト教民主同盟(CDU)+キリスト教社会同盟(CSU)+自由民主党(FDP)の連立政権が出来上がる。

 共産党+ドイツ社会民主党(SPD)+緑の党は、野党。

 議席数差は、6対4であり、東西ドイツは融合した形で統合してしまう。

 

 

 フランス人、イタリア人、アメリカ人は、はち切れんばかりのバックを持って、

 与党政権の下にやってくる。

 「「「なぁ 頼むよ。長い付き合いじゃないか、自由資本主義圏に残ってくれないか」」」

 「さて、どうしたものか。君たちには、むかし “キャベツ野郎” とか言われたし」

 「そんなこというなよ。君が、僕に “カエル野郎” と言った事なんて、僕は忘れているんだよ」

 差し出されるルイヴィトンのバック。

 「そうだよ、君が、僕に “マザコン” と言った事なんか、僕は綺麗に忘れているからさ」

 差し出されるグッチのバック。

 「僕だって、君に “金の亡者” とか “偽善者” とか、言われたけど、全然、気にしてないよ」

 差し出されるボストンバック。

 「んん・・・まぁ いいか」

 統合ドイツ政府は、欧州各国から資本が集まってくるから、と自由資本主義にとどまる。

 そして、プラハの春以降、欧州大陸を揺り動かした動乱は、統一ドイツの選挙で終局していく。

 

 

 冷戦の破綻は、いろんな解釈がされた。

 貧富の格差を認める弱肉強食。

 貧富の格差を否定する牢獄。

 欧州大陸で自由資本主義と共産主義の二つの思想が発生し、

 アメリカ合衆国とソビエト連邦で大成する。

 資本主義と共産主義の二つの思想は、敵対しつつも、

 欧州で発生した排他的民族主義ファシズムを打倒し。

 その後、二つの思想は、欧州大陸を東西に分断して衝突。

 互いの思想を賭け、軍事力と核兵器を向け合った。

 最前線となった欧州大陸の民衆は、貧富の格差か、公平な牢獄かの軋轢に苦しむ。

 そして、軋轢に堪えかねた民衆は、立ち上がった。

 歴史における自由と共産の大転換をプラハの春を原因と考える歴史家は少なくなく、

 それ以前に比重を置く歴史家もいた。

 もし、日本がアメリカの同盟国で西側であったなら、

 共産圏は生産力が低下し、物資不足で敗北していたという歴史家もいた。

 どちらにしろ権力者と富裕層の思惑は歯車が狂ってしまう。

 東西冷戦は、軍事力でなく、思想でもなく。

 互いの権力と私財を賭け、手足をもぎ取り、肉を切って骨を断つような偽善戦へ移行してしまう。

 新しい思想は、軋轢の中、妥協と偶発で発生した。

 私有財産100万ドル上限制は、資本主義と共産主義の間で生まれた折衷案だった。

 ある者は、制限資本主義と呼び、ある者は限定共産主義と呼び、

 いろんな解釈がされたが欧州全域に広がってしまう。

 そして、チェコで発生した嵐は、欧州大陸全域に及び、

 資本主義と共産主義の総本山であるアメリカ合衆国とソビエト連邦も直撃していた。

 私有財産100万ドル上限制は、アメリカ合衆国の資産家を震え上がらせ、

 ソビエト連邦の共産党一党独裁をも怯えさせた。

 アイスランド・レイキャビック

 米ソ首脳会談が行われる。

 なぜ、レイキャビックなのかと言われても、適当な距離だからと応えるしかない。

 アイスランドは、米ソに影響を与える国力がない。それだけともいえる。

 北大西洋条約機構(NATO)軍と、

 ワルシャワ条約機構(WTO)軍は惰性的に睨み合っているだけ。

 アメリカ資本主義とソビエト共産主義は、もう一つの顔である民主主義に押し潰されつつあった。

 民衆の力が資本の牙城と権力の牙城を押し崩し、バラバラにしようとしていた。

 米ソは、国際外交政治力で手足となる同盟国を失い、

 影響力は国境線の内側まで後退していた。

 「コスイギン書記長。善処策はないかね」

 「こっちはない」

 「我々は、互いに権力の座を脅かされている」

 「同意だ。フォード大統領」

 「ソビエトは、プラハの春を踏み潰すべきだったのだ」

 「そうすれば、互いの権力の座は安泰だったのだ」

 「既に賽は投げられた。いまさら、それを蒸し返しても遅かろう」

 「欧州で自由資本主義を求める者は、統一ドイツ、スペインに向かい」

 「共産主義を求める者はユーゴスラビアに向かう」

 「しかし、大半の国は、折衷案の制限資本主義にとどまっている」

 「我々は、上限付き共産主義と呼んでいるが」

 「どっちでもいい事だ」

 「民衆は、資本の再分配を狙っているし、同時に自由を狙っている」

 「それで?」

 「出来れば権力構造を守るため、もう一度、東西を分けたいのだ」

 「方法は?」

 「WTO軍で西側に侵攻してもらいたい」

 「NATO軍で東側に侵攻してくれないか、実を言うと空中分解を起こしそうで困ってる」

 「」

 「」

 会談は平行線のまま終わる。

 “アメリカ合衆国とソビエト連邦は、欧州大陸の新しい情勢を静かに見守り”

 “且つ、欧州大陸が人道的で自由で公平な社会が創造されることを望んでいる”

 共同声明。

 

 

 

 04/16 日立製作所、LSI(大規模集積回路)を開発。

 地下深くありながら外光に近い光が降り注ぐ。

 「ようやく、LSI開発か。土建屋のおかげで梃子摺らされたぜ」

 「まぁ 核の直撃でも生産できそうなのは嬉しいがね。なに考えているんだか」

 「国防じゃないの?」

 「嘘に決まってるよ。核の直撃で山を吹き飛ばせるものか。工場は、そのさらに地下だぞ」

 「まぁ それらしい事を言って予算を多めに取るんだろうね」

 「海軍も15000トン級志摩型巡洋艦は、電子能力の差でアメリカ海軍の10000トン級とようやく互角とか言いやがるし」

 「印象操作で言ったもん勝ち、どこまで本当なのか、わからんな」

 「予算ありきでハッタリかますのは何とかして欲しいよ。いい迷惑だ」

 「だけど、制空権がなくても戦える国って少ないと思うよ」

 

 

 アメリカ合衆国

 F14トムキャット、F15イーグルが蒼空に向かって上昇していく。

 F4ファントムU、F100系戦闘機に続く期待の次世代戦闘機だった。

 アビオニクス(火器管制システム)、機体構造、整備性、エンジン、飛行速度、武装、拡張性・・・

 計算上は、MiG25フォックスバットに勝てるという。

 もちろん、製造価格も世界最高。

 しかし、足元が救われつつある関係者たちは、世界最高水準の戦闘機を見ても色褪せていた。

 北大西洋条約機構(NATO)軍と、

 ワルシャワ条約機構(WTO)軍の対決は、肝心の大義名分が失われていた。

 「F15イーグルが1機2790万ドルか、高いな・・・」

 「F4ファントムUが240万ドルだから、泣きたくなるよね」

 「まぁ 先制攻撃率は高いし、整備性も良いし、生存率も高い」

 「更新もしやすいなら、イーグルは、割得だよ」

 「F4ファントムを同盟国や後進国に割り当てて、小金を稼げばいいさ。中華合衆国は手頃だ」

 「しかし、高過ぎる」

 「簡易型のF16ファイティング・ファルコンを開発しているから、数だけは揃えられるよ」

 「イーグルなら、相手がMiG25でも撃墜できるよ」

 「1対1なら勝てそうだけどね。早期警戒管制機が相手側にいると、それも怪しくなる」

 「早い話し、ファントムでも、軽量化、エンジン、レーダーを強化すれば、やれない事はない」

 「それをやっているのは、日本だな」

 「噂では、MiG21、MiG19、Su7とも、本家の性能を上回っている」

 「チタンを増やして、ターボファンエンジン換装か」

 「浮いた分の推力と航続距離で、アビオニクスも強化されている」

 「共産圏、後進国でミグとスホーイを使っている国は多い」

 「日本製の部品に取り換えるだけで、性能向上なら割得だな」

 「MiG19、MiG21は20000機以上にはなる」

 「チタン部品をたくさん作っても、採算で困らないということか」

 「日本製は、ソビエト空軍にも納入されていますからね」

 「代価の資源も日本に流れ込んで、お金持ちだ」

 「日本の労働運動は?」

 「政府が圧力をかけて、毎年、労働条件を改善させている」

 「資源のない国だから貧富の格差は、元々、小さいよ」

 「公共投資の赤字国債は、人口増加、GDP増大、インフレ、貿易黒字が吸収している」

 「味をしめて赤字国債がやめられなくなるじゃないか」

 「どうかな、国の新幹線整備計画にも限度がある、日本列島が全て大陸と繋がれば終わる」

 「そういえば、水力発電建設も終わるな」

 「あとは共産圏の公共投資の参入が増えて、日本の収入も安定するだろう」

 「おかげでソビエト、中黄連邦は安定して、円も、ルーブルも値を上げている」

 「逆にドルは下落中だ」

 「ドルを買い支えられないのか?」

 「誰でも安定している円とルーブルを買う」

 「損してまで誰がドルを持っているものか」

 「中華合衆国に低級品を作らせて、日本経済を絞め上げてやれば良い」

 「絞めつけられているのは、中低級品で強い日本経済じゃなく」

 「低級品でも粗のある中国経済の方だ」

 「中国人富裕層が日本製を欲しがるくらいだからな」

 「日本も高級品を製造できるだろう」

 「土建業の海外受注の比重が大きくなれば、社会資本が異業種へと移行していくよ」

 「そうなれば、アメリカも日本から買うはめになりそうだな」

 

 

 キエフ型航空巡洋艦ミンスク就役

 ソビエト連邦で建造中の1番艦キエフより、日本で建造した2番艦ミンスクが早かった。

 もっとも、ソビエト海軍の面子があるのか、ミンスクは、2番艦のまま。

排水量 全長×全幅×吃水 馬力 最大速度 航続距離 乗員 対潜Ka27 哨戒Ka28
36000トン 273.1×53×8.2 180000hp 32 18/8000 1500 16 16

 装備

 対艦ミサイル連装4基。62口径76.2mm2基。

 対空ミサイル連装14基。65口径30mmAK630(CIWS)6基。

 ソビエト海軍の次世代を担う航空巡洋艦ミンスクが就役する。

 実のところ、肝心のYak38フォジャーは性能的に問題あり。

 正確に言うと欠陥品でハリアーに遠く及ばない。

 もちろん、西側にも日本にも秘密で、口実さえあれば、載せたくなかった、が実情。

 日本の空母で離着艦訓練を行ったソビエト軍パイロットが、次々とミンスクへと降りて行く。

 日本人の軍属関係者がソビエト本国に回航されていくミンスクを見送る。

 「大型艦に色々載せたいのは分かるけど、兵装が欲張り過ぎだね」

 「だよねぇ ヘリ空母でも、飛行甲板が全長189m。全幅20.7mだと中途半端すぎないか」

 「MiG19だと離着艦が難しいけど。フォージャーは、どうだったんだろう」

 「さぁ 結局、ヘリ空母にしたから」

 「アメリカ空母は無理でも、イギリス空母には対抗できるかもね」

 「33000トン級アーク・ロイヤル、23000トン級ハーミーズ、ブルワークか。微妙だな」

 「哨戒ヘリKa28の誘導で、遠距離から対空ミサイルを命中させられるか、だよ」

 「建造中の16000トン級インヴィンシブルは軽空母か、こっちより良い様な気もする」

 「もう少し、人数を減らさないとな」

 「そうそう」

 「76.2mmは、CIWS仕様なの?」

 「イタリアの艦砲をパクッたらしいけど。重さは13トンくらいあるようだ」

 「性能はどうかな。まだ、日本に技術を教えないのかな」

 「日本に教えるとイタリアの艦砲をパクッたこともバレるから、躊躇しているんじゃないか」

 「取り敢えず。キエフ型の仕様はシンプル・イズ・ベストで落ち着いたことだし」

 「2、3隻で運用ならありかもね」

 「志摩型は、もっとシンプルだよ」

 「志摩型は、ベアの航空支援下の仕様だから」

 「ミンスクは、ウラジオストック共和国の仁川の配備じゃないの?」

 「取り敢えず。バルト海で国民に見せびらかしたいらしいよ」

 「次のオリンピックをモスクワとハルピニスクで、ゴネているんだろう」

 「らしいね」

 「日本の大使が、どっちの味方か、で、窮したみたいだけど」

 「そりゃ 答えられんわ」

 「だよな。国内の意思統一は、自国の責任だよ」

 

 

 ソビエト連邦ウラジオストック共和国ハルピニスク

 大きいように見えて、3つの行政区画に分かれていた。

 日本とシベリア鉄道を押さえるアムール州。

 満州石油を押さえ勢力最大の満州。

 日本と海上輸送の大きな朝鮮州。

 当初は、足を引っ張り合う関係といえた。

 3州とも、モスクワから送り込む共産党員が自動的に選挙で選出される。

 しかし、ウラジオストック共和国の経済力が強くなるにつれ、

 党中央と地域官僚が対立してしまう。

 結局、亀裂が埋められなくなり、

 ウラジオストック共和国出身で党幹部が選出されてしまう。

 3州ともモスクワから離れ過ぎており、足を引っ張る関係から相互依存が進む。

 ウラジオストック共和国の生産力は、モスクワ側を上回りかねないほど人口も急速に増加していた。

 そして、ウラジオストック共和国がどこを向いているかというと、

 金払いの良い日本だったりする。

 アジア最大の石油化学コンビナートは、重油成分が多く、石油化学コンビナートで不利だった。

 それでも主原料ナフサ、エタンが精製され、日本へ送られていく。

 ハルピニスクの焼肉屋

 アーリラン アーリラン アーラーリーヨ アーリランコーゲーロ ノーモガンダ〜♪

 ナールルポリゴ カ シヌン二ムン シムニド モーカーソー パルピョナンダ〜♪

   ※土地と糧を奪われアリラン峠を越えてく、十里もいかないのに足が痛む。(意訳・たぶん)

 亡国の歌が流れる。

 牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、山羊肉、ヤク肉など、様々な肉が焼かれていた。

 新幹線の駅周辺には、焼き肉屋があり、

 利権の関係で朝鮮人経営者が多かった。

 「なんだ。焼肉屋でも、アニメの玩具が売ってるのか」

 「日本で作って大量に送られているらしい。モスクワでも大きな店に出荷しているようだ」

 「プラスチック産業は、前途洋々か、ブリキ製に哀愁が湧くがね」

 「これからは、化学製品が大きいよ」

 「んん・・となると、やっぱり、アメリカを怒らせると怖いね」

 「原料のエタンを値上げされたから物価が上がる」

 「原料のナフサは、アラブからの輸入が多いけど」

 「ナフサでも良いけど、エタンも欲しいよ」

 「アメリカは、日本がチリ取り付いた事が気に入らないんだよ」

 「なんか、デジャブ」

 「まだ怒っているだけだよ。経済制裁がないだけマシと言えるけどね」

 「対日経済制裁は、日ソ同盟に直結すると、躊躇しているだけだと思うよ」

 「OPECがナフサの対日価格を上げなければ良いけど」

 「西シベリアの油田の方が期待できそうだけどね」

 「パイプライン次第か」

 「政府も、もうちょっと石油科学に予算を振り分けて欲しいね。アメリカに負けてしまうよ」

 「プラスチックや化学繊維は、可能性が大きいからね」

 「オイルショックは、日本の飛鳥開発もブレーキをかけているからな」

 「そういえば、アメリカ人がウラジオストック共和国の製品を買いに来てたぞ」

 「なんだろう。アメリカ人が欲しがるようなモノなんて、ないだろう」

 「車の市場じゃないのアメリカ人は、金で頬叩くようなところがあるからな」

 「ソビエト連邦の東西離反工作だったりして」

 「あはは・・・」

 

 

 南米 飛鳥

 アタカマ砂漠の総面積は36万3000kuほど、

 アンデス山脈の吹き下ろしがあるのか、それほど暑くもなく。

 水さえあれば、過ごしやすかった。

 飛鳥は、地下施設が建設されていた。

 しかし、面積は24kuだけ。

 飛鳥の沖合に全長5km幅1kmの氷山が移送され、飛鳥の緑化に一役買う。

 氷山の山頂が削られて、整地され、飛行場の代わりにも使われていた。

 防衛上、沖合いの氷山の山頂を削り、滑走路を建設したくなるのも人情と言える。

 とはいえ、オイルショックで採算ベースが低下。見込みの利潤も小さくなっていた。

 しかし、止めれば、元も子もないのか、計画通り進められていく。

 そして、フォード大統領がニクソンのウォーターゲート事件を弾劾。

 さらにニクソン元大統領の対チリ政策の不明を詫びた事でアメリカとチリは和解が成立していた。

 そして、日本製品は、アメリカ製品と価格競争になっていく。

 飛鳥 市長室

 「とにかく、南米大陸で人脈を構築しないと駄目かな」

 「信頼できる人間の評価は日本と同じです」

 「損できる人間と言っていいでしょう。日本も、ですが、あまり居ませんがね」

 「こっちは特権に就けば、日本人以上に私利私欲に走りやすい気質だからね」

 「南米で販売・物流ルートを維持するには、腹が据わった人間も欲しいですな」

 「だが、我々が作りたいのはヤクザ組織じゃない。犯罪や麻薬は困る」

 「倫理観とか自制心の強い者ですか」

 「ますます、現実から遠のきますな。いるとしても、日本の数十分の1の確率ですよ」

 「こっちが姿勢を明らかにすれば、そういう協力者が来るのではないか?」

 「こちらの大陸では、奇特な人間ですな」

 「中国大陸、共産圏、インドネシアでも、そうだろう。人を育てるのも悪くないさ」

 「やれやれですな。気の長い」

 「飛鳥のせいで、あっちこっちの予算が削減されて白い目で見られてる」

 「採算性を上げておきたい」

 「オイルショックで、予定より利潤が小さくなったからって、責められてもね」

 「現場の苦労も理解してもらわないと」

 「チリの銅山、ペルーの銀山は、大きい」

 「しかし、アメリカとチリが和解したら価格競争になる」

 「まぁ 浪費でも自国領土ですから」

 「貿易黒字の中に消えてしまう程度なら良い」

 「しかし、最近、世知辛くなっているから、本国も当てにできなくなるだろう」

 「早く軌道に乗せたいよ」

 「土建屋も、親方日の丸で傲慢になってる」

 「そろそろ、限界かもしれないな」

 「実のところ、社会資本もだが出産が増えて、社会福祉も欲しがっている」

 「土建屋は、旧日本軍並みに金を使ってるから、あっちこっちで歪みが起きていますね」

 「飛鳥が軌道に乗ったら土建屋も縮小して欲しいね」

 「それは言える」

 

 

  排水量 艦齢(以下)          
大鳳 30000 30年 大鳳       1隻
瑞鶴型 26000 33年 瑞鶴 翔鶴     2隻
阿賀野 6650 32年 阿賀野 能代 矢矧 酒匂 4隻
大淀 8200 31年 大淀       1隻
志摩 15000 10年 志摩 伊賀 伊予 甲斐 8隻
      蝦夷 飛騨 常陸 播磨  
               
潜水艦
赤龍 6500 1年1隻         12隻
鋼龍 6500 1年3隻         18隻
               

 

 カモフKa27ヘリックス 

  Hp 自重/全備重 全長×全幅×全高 ローター 最高速度 航続距離 積載
Ka27ヘリックス 2225×2 6100/10600/12000 12.25×3.80×5.40 15.90 291km/h 1000km 5000kg
SH61シーキング 1400×2 5595/6201/8620 17.96×1.60×5.32 18.9 267km/h 833km 4000kg

 大鳳 艦橋

 「ヘリックスか。また重くなったものだ。プロペラ飛行機を乗せていたころが懐かしい」

 「コブラ、シーキングより強力なエンジンだぞ」

 「シースタリオンには負けるがね」

 「もう少し、軽量化したいけど。二重反転プロペラは悪くないだろう」

 「戦後、瑞鶴と翔鶴を1層に改装していなかったら、危なかったよ」

 「もう、いい加減、解体かな。楽にしてやるのが思いやり」

 「持っているだけで抑止なら、役に立っているよ」

 「持っているだけか」

 「メガフロートの飛鳥移動で、ヘリ空母建造だと思ったんだけど、アレになったからね・・・」

 「まぁ アレでも、良いといえば、良いんだけどねぇ」

 「外務省は、ヘリ空母なくても守れるとか言うから」

 「日本の諜報って、いつから欧米並みになったんだ」

 「外務省に予算よこせだろう。大丈夫かよ」

 「アメリカが、ウラジオストック共和国独立に手を貸そうとしているらしい」

 「未然に防ぐために金をよこせだと」

 「ちっ 旧日本軍みたいに恐怖を煽って、金をせびりやがって、うそつきが」

 「恐喝は、予算取りの常套手段だし」

 「でも、例の私有財産100万ドルの上限の画策は、外務省らしいよ」

 「何で?」

 「資本主義国家の財閥解体で弱体化して、富裕層が持ち出したお金が日本に回ってくるからだと」

 「えげつな!」

 「でも、思ったより統合ドイツとスペインに資本が流れていきそうらしい」

 「獲らぬナントかだな」

 「でも、キエフ3番艦も日本で建造って、どうなの?」

 「仁川で建造させたくないとか。そう言うんじゃ・・・」

 「価格の問題じゃないの」

 「でも、ソビエト海軍も資源持ちだよね」

 「ドタキャンがあるかも」

 「まぁ 日本で引き取っても良いくらいの建造だから、むしろ、その方が助かるけど・・・」

 「いや、そうなると、改装しないといけないから微妙」

 「あ、そういや。ウラジオストック共和国。アル中が減ってるらしい、不安だな」

 「それ、ヤバ過ぎるよ。軍事的独立より不吉。いままで聞いた情報の中で、一番ヤバい」

 「本気でモスクワに勝つ気だよ」

 「国民がそう思っているとしたら。いろんな意味で怖いな」

 「オリンピックも狙って準備してるし」

 「まぁ 国内の統一は、国内問題だから・・・」

 

 

 

 裏番組は、アニメ界の至宝 “アルプスの少女ハイジ”

 新番組は、視聴率が低く苦戦していた。

 放送局

 「ハイジに負けてる。視聴率は、苦戦中だな」

 「ヤマトは、ちょっと、懐古主義に走り過ぎましたから」

 「昭和の改新のあと、土建屋が旧日本軍の悪イメージを植え付けているからね」

 「大和も、ゼロ戦も、史実以上の評価はしない方が良いとは思いますが」

 「大衆は、面白ければ良い、という部分もあるからな」

 「それは言えますがね」

 

 

 前書記長ニキータ・フルシチョフ死去

 日本にとって、国際連合で理事国の椅子を得られた恩人の死去であり、

 日本からの参列が続く。

 ロシア人以上の日本人の悲しみようにロシア人が感動するほどであり。

 改めて、故フルシチョフが見直されたりもする。

 

 

 樺太州に外国人用公用車両のキャンプ場があった。

 ソビエト・東欧の赤い貴族。中国の腐敗官僚が居留する区画だった。

 最近は、欧米諸国、アラブの財閥層も、日本で新幹線の車両ごと買い付けていた。

 そして、ユーラシア大陸鉄道の旅行を満喫。

 日本国内にこういう特別区画があるように、

 ソビエト連邦、中国連邦、東欧にも外国人用の区画があった。

 さながら動くキャンピング新幹線車両であり、余程の権力者か、お金持ちに限定される。

 「坊主。温泉に行くある」

 「やだ。行かないある」

 「もう、来るある」

 母親が子供を引っ張る。

 「やだぁ〜!」

 子供はソファにしがみ付いて離さない。

 「もう、この子。日本のテレビを見に来たある」

 「仕方がないある、新幹線の沿線なら日本のケーブルテレビは、見れるある」

 「マンガで日本語を覚えるなんて、嬉しいのやら悲しいのやらある・・・」

 中国腐敗官僚夫婦は、諦めたように樺太温泉に行く。

 コアな少年は、テレビの前で食い入るように座っていた。

 “・・・漆黒の闇に包まれた遥か宇宙の彼方、銀河最外縁からも孤立した太陽系”

 “地球から17万光年離れた球状星団から光速通信筒が光速を超えて飛来し”

 “地球連邦の火星へと届いた”

 地球連邦が解析すると。

 ガトランティス艦隊に封鎖された自由惑星チーリは孤立。

 「わたしは、チーリのスターシャ・・・」

 「地球連邦の皆さん・・・助けてください・・・ガー・・・我々・・自由惑星チーリは・・・・」

 「ガトランティス帝国の圧力に屈服し・・・・ガー・・・・」

 「あと365日しか、持ちません・・・ガー・・・プッ!」

 映像が映し出された自由惑星チーリの国民は飢えていた。

 「・・・大したことないじゃん。地球連邦の歴史じゃ。一杯あったよね」

 「そうそう、いまは、地球連邦も羽振りが良いけど、昔は色々あったしね」

 「でも、儀礼的にお悔やみくらいはしないと」

 「まぁ 社交辞令は、大人のたしなみだし・・・」

 と、地球連邦政府要人たちは、映し出されたチーリの映像にショックを受ける。

 

 宇宙戦艦ヤマト

 「・・・沖田艦長。惑星チーリは、ガトランティス帝国の圧力に屈しようとしています」

 「助けるべきではありませんか」

 「古代。ガトランティスは銀河最強の帝国なのだ。地球連邦に勝ち目がない」

 「・・・チーリは、地球連邦に救いの手を求めているのです」

 「古代。我々、人類の歴史は、私利私欲とエゴの積み重ねと衝突なのだ」

 「誰が人助けのために自分の命を賭ける」

 「ち、違う、断じて違う!」

 「地球は・・・地球は、生まれ変わるべきなのです」

 「宇宙の愛と正義を守るべきなのです」

 「古代君・・・」 森ユキ

 「地球は、地球は、宇宙のために生きるべきなのです」

 「愛と正義のために戦うべきなのです」

 「古代・・・勇気と無謀は違うのだ。分かってくれ」

 巨大モニターに横柄な男が映る。

 !?

 「古代・・・」 

 「はっ! ボラー連邦のベムラーゼ首相」

 「久しぶりだな。地球連邦の諸君」

 ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ

 『『『ま、まさか、地球連邦に宣戦布告・・・』』』

 ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ

 「・・・我々もボラー連邦も、チーリに向けて艦隊を出してやろう」

 「「「ま、まさか、チーリを侵略・・・」」」

 「バカ者! 善意だ」

 「「「う、嘘だ!!」」」

 「本当だ。我がボラー連邦は、モラルと良心のバランスを保つため。時々、善行を働くのだ」

 「本当に?」 じー・・・

 「バルコム提督の第一艦隊を出してやろう。旗艦は宇宙戦艦ウラルだ」

 「沖田艦長!」

 「・・・わかった。古代、行こう」

 「行こう。チーリへ。宇宙の愛と正義のために」

 “西暦2133年。地球連邦から離れること17万光年の彼方”

 “ガトランティス帝国の圧力に屈しようとするチーリは、地球連邦に救いの手を求めた”

 “宇宙戦艦ヤマトは、宇宙の愛と正義のため、ボラー連邦艦隊とチーリに向け旅立つ”

 “チーリ屈服まで、あと364日”

 さらば〜 地球よ〜 旅立〜つ 船は 宇宙 戦艦 ヤ〜マ〜ト〜

 わくわく、わくわく

 かぶり付きの少年は、目を輝かせていた。

 

 

 モスクワ クレムリン

 ソビエト連邦は、超大国に相応しい軍事力を誇っていた。

 もっとも、共産党独裁体制の屋台骨は、大きく変遷していた。

 氷河期スターリン時代。

 流氷期フルシチョフ時代。

 冷水期コスイギン時代を経てボロボロ。

 欧州大陸から流れてくる自由の風がソビエト連邦を覆い尽くそうとしていた。

 冷水は、少しずつ温くなり、水面が気化していく。

 1848年の共産党宣言

 “一つの妖怪がヨーロッパを這い回る、共産主義という妖怪が・・・” 以降、126年。

 1917年のソビエト連邦成立以降、57年。

 1945年以降拡大し続けてきた共産主義は、民主化を叫ぶ人民に妥協を強いられていた。

 そして、モスクワ。

 平等の牙城。最後の防衛線、冬将軍も。

 ごっくん!

 コスイギンは、カザコフ館の窓から恐る恐る赤の広場を見下ろす。

 ・・・・・ほっ・・・

 そして、見渡す

 ・・・にゃぁああ〜・・・

 「同志コスイギン。アメリカ資本がハルピニスク・オリンピックを支援しているようですが?」

 「ちっ あいつら、ロクな事をせん」

 「どうしますか?」

 「同志コスイギン。認めれば、極東を増長させ、独立機運が高まるかもしれません」

 「・・・仕方があるまい」

 「ですが」

 「認めなければ、独立を言いだすかもしれん」

 「オリンピックは、必ずしも首都でやらねばならない祭典ではないのだ」

 「いいのですか?」

 「ウラジオストック共和国がソビエトの国土であると証明することになる。妥協しよう」

 「はっ」

 「ふ 日本のアニメのおかげで夏場のロシア人は、大人しくしていたそうじゃないか」

 「まぁ ウォッカ以外に暇潰しが出来るのなら大きいでしょうな」

 ・・・にゃぁああ〜・・・

 

 

 

 43723トン級LPGタンカー第10雄洋丸。

 ライトナフサ20831キロトン。プロパン20202キロトン。ブタン6443キロトンを搭載。

 第10雄洋丸は、東京湾内でリベリア貨物船と衝突炎上、死者33人を出していた。

 海上保安庁の巡視船は、決死の覚悟で乗り込み、索綱を付け曳航。

 東京湾外に出してしまう。

 第10雄洋丸は燃えながら漂流していた。

 上空をベア4機が旋回。

 巡洋艦 (伊予、甲斐)が見守る。

 基本的に海上保安庁の仕事であり、

 海軍は、まだ手が出せないでいた。

 伊予 艦橋

 「ナフサ、ブタンとも、勿体無いね」

 「はぁ〜 オイルショックの後に何やってんだか」

 「・・・艦長。海上保安庁は投げました」

 「よし!」

 「司令部から撃沈するそうです」

 「やった♪」

 「ですが、あの艦隊にやらせてくれと・・・」

 「あの艦隊ねぇ 良い格好させてやるか」

 「・・・来ました」 

 大淀、阿賀野、能代、矢矧、酒匂

 大戦中に建造されていた艦艇は、戦後一度改装されただけで、練度維持のみ。

 開店休業中だった艦隊は、最後の花道とばかり艦砲射撃を開始する。

 60口径155mm砲弾の砲声が轟き、第10雄洋丸の水線下に撃ち込まれていく。

 「んん・・・日本の船を撃沈しているとはいえ。なんか、感無量だな」

 「そうですね」

 第10雄洋丸は、ズブズブと沈んでいく。

 「・・・こうして見てると射程も伸びているし、155mm砲弾も悪くないな」

 「ミサイルより安いですからね」

 「不幸だが、たまには、こういうのないかな」

 「海上保安庁が消化関連の予算増加を要求すると思いますよ」

 「実例があると強いですから」

 「ちっ!」

 

 

 

 

 東欧諸国は軒並み多党制へ移行し、

 100万ドルを上限に私有財産を認めてしまう。

 東欧諸国の変革は、西欧諸国にまで波及してフランス・イタリアは期間限定の共産化。

 感情的な左翼運動は燻ぶっていたがイギリス、統合ドイツ、スペインが自由資本主義で残る。

 僥倖というより打算で欧州資本、富の避難の受け皿に過ぎなかった。

 アメリカ合衆国でさえ、政府、財閥は、民衆のうねりに気圧されていた。

 軍や警察でゼネストを鎮圧すれば、民衆は暴発する可能性もあった。

 ワシントン ホワイトハウス

 「このまま、鎮圧しようとすると内戦です。鎮圧の前に銃を規制すべきでしょうな」

 「銃の保持は国民の権利だ」

 「国家に対し、人権が独立している証明であり」

 「国家を支えている気概であり、個人主義を貫ける裏付けでもある」

 「我々 アメリカ歴代政府の支持基盤でもある」

 「銃の保持を抑制する方が暴動だよ」

 「アメリカ人が国家に屈しないという気概があるのは良いがね」

 「この場合は、困りますよ」

 「現在、全米30ヵ所でゼネストです。うち3つは、共産化も辞さない節があるよです」

 「反戦運動は?」

 「こちらも、かなり強いですね」

 「黒人も戦争で所得が上がっているので、しばらく戦争ができないかもしれません」

 「確かにアメリカは貧富の差が激しいよ」

 「しかし、高度な科学技術を発展させるには、資本がなければならない」

 「競争させることで絶えず高水準の能力と労働価値を高めなければならない」

 「それくらいわかるはずだ」

 「ゼネストでそれを言ったやつは、血祭りにあげられましたよ」

 「まぁ 人間は感情に支配されやすいからね・・・」

 電話が鳴る。

 「・・・大統領。あなたの支持者からです」

 「・・・・」 ため息

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 ニキータ・フルシチョフ死去です。

 史実では71年死亡ですが、クーデターでなく、

 失意がなかったので3年寿命が延びました。

 

 

 お待ちかね、宇宙戦艦ヤマトです。

 ロシアでの放映は、宇宙戦艦ウラルに書き換えられ。

 地球 & ボラー連邦  VS  白色彗星。

 コスモクリナーDを取りに行くのではなく、運びに行きます。

 無事に着けるでしょうか。

 

 

 史実では1970年04/16 日立製作所、LSI(大規模集積回路)を開発。

 戦記では1974年です。

 史実より4年遅れの電子技術です。追いつけるでしょうか。

 社会が多様化していくと予算も分配されていきます。

 これまでのような土建集中ができなくなり、さらにオイルショック。

 史実と違って、非アメリカ圏ですので値上げはされていません、

 アメリカ圏との取引は高くつきます。

 それでも取引しないと、科学技術上の成長で見込み薄です。

 

 

 日本アニメ 強くなっていきそうです。

 アルプスの少女ハイジ、魔女っ子メグちゃん、

 ダメおやじ、小さなバイキングビッケ、ゲッターロボ、

 昆虫物語 新みなしごハッチ(みなしごハッチの続編)、

 グレートマジンガー、破裏拳ポリマー、はじめ人間ギャートルズ、

 宇宙戦艦ヤマト、

 てんとう虫の歌、カリメロ

 

 

 NEWVEL 投票      HONなび 投票

長編小説検索Wandering Network 投票

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

第32話 1973年 『こぼれたミルクは・・・』
第33話 1974年 『東嵐西乱』
第34話 1975年 『暴力反対』