月夜裏 野々香 小説の部屋

    

仮想戦記 『国防戦記』

 

 

 第34話 1975年 『暴力反対』

 01/03 航空巡洋艦1番艦キエフ就役

排水量 全長×全幅×吃水 馬力 最大速度 航続距離 乗員 対潜Ka27 哨戒Ka28
36000トン 273.1×53×8.2 180000hp 32 18/8000 1500 16 16

 装備

 対艦ミサイル連装4基。62口径76.2mm2基。

 対空ミサイル連装14基。65口径30mmAK630(CIWS)6基。

 ソビエト海軍の次世代を担うキエフ型航空巡洋艦1番艦キエフが就役する。

 もっとも現実は、厳しく。

 対空哨戒型Ka28は、艦とのデータリングがあやしかった。

 それは、それとして、36000トン級キエフ型航空巡洋艦2隻、

 キエフとミンスクは、ソビエト海軍の誇りといえた。

 また、日本製部品を採用していた事で運用も優れていた。

 戦艦シベリア、ウラルが現役なのも使い勝手が良く作戦能力が高いからといえる。

排水量 全長×全幅×吃水 馬力 最大速度 航続距離 乗員 対潜飛行艇 哨戒飛行艇
68000トン 280×38×10.4 177600hp 29 18/24000 2500 2 2

 50口径406mm3連装砲3基

 62口径76.2mm6基

 65口径30mmAK630(CIWS)8基。

 対空ミサイル連装16基。

 対潜ミサイル連装16基。

 双発水上機 4機

 モスクワ型ヘリ巡洋艦とキエフ型航空巡洋艦がヘリを装備したことで、

 シベリア型は、双発中型哨戒飛行艇を搭載。

 長距離の哨戒任務に集中することができた。

 

 モスクワ型ヘリ巡洋艦

排水量 全長×全幅×吃水 馬力 最大速度 航続距離 乗員 対潜Ka27 哨戒Ka28
15000トン 189×34×8.5 100000hp 31 18/24000 850 7 7

 62口径76.2mm6基

 65口径30mmAK630(CIWS)4基。

 対空ミサイル連装6基。

 対潜ミサイル連装6基。

 

 北海艦隊で、2個艦隊が編成されていた。

バレンツ部隊 戦艦シベリア、航空巡洋艦ミンスク、ヘリ巡洋艦モスクワ
ホワイト部隊 戦艦ウラル、航空巡洋艦キエフ、ヘリ巡洋艦レーニングラード

 北海艦隊司令部

 「・・・組み合わせに不満はないよ」

 「しかし、組み合わせ通り艦隊を編成できるほど稼働率が高かったかな」

 「巡洋艦、駆逐艦以下は稼働率に合わせて、編成していけばいいだろう」

 「ウラジオーナのドックで整備すると思えばいいか。向こうの方が効率が良い時がある」

 「ウラジオーナは、北海と違って機密が少ないからだろう」

 「日本人に海軍工廠を造り直してもらえよ」

 「そんな事が出来るはずがないだろう」

 「ふっ 整備力を向上させて、稼働率を倍にできる方が良いがね」

 特徴としては、戦艦、航空巡洋艦、ヘリ巡洋艦が哨戒・防衛的であり。

 キンダ型巡洋艦・駆逐艦は、対艦ミサイルのプラットフォームで攻撃だった。

 アメリカ海軍が大型の空母が攻撃、中小型艦が護衛で使われているため逆といえた。

 バレンツ部隊とホワイト部隊の活動拠点はウラジオーナであり、

 交替で進出する。

 ソビエト海軍の主力がウラジオーナに配備されると、アメリカ海軍も北大西洋に傾注。

 太平洋域は旧式艦が送られ手抜きされてしまう。

 これも、日本が穴熊引き籠り戦略で脅威となりそうな攻撃戦力が存在しないため。

 アメリカ本土は攻撃されないだろう、というものだった。

 

 

 ソビエト海軍は、チリ・アジュンデ共産政権を守った事で発言力を持ち始める。

 しかし、ソビエト陸軍は、予算が減らされる事を嫌い反対する

 「・・・チリの件は、日本海軍の貢献だろう」

 「ソビエト原子力潜水艦が支援したからだ。それに戦艦ウラルも動いた」

 「まぁ 脇役だな」

 「空母を建造すべきだ」

 「空母? スターリンは、あれを侵略国家の兵器と言ったはずだが」

 「同志コスイギンは、どう思われますか?」

 「同志スターリンの言及に及ぶことはないだろう。スターリン時代と情勢が違う」

 「しかし、艦載機がないのに空母を建造することもないと思う」

 「日本は、ミグ19を艦載機に改造していますぞ」

 「もう、ミグ19の時代ではあるまい。それに日本も空母建造を見送っている」

 「ウラジオーナ2番艦はどうです?」

 空軍は、ウラジオーナ2番艦には賛成していた。

 陸軍も空挺部隊進出させることが出来。

 海外の軍事顧問団を休息させる事ができるため、空母より反発が少ない。

 もっとも、空母より予算が大きくなり、簡単にいかない。

 なによりソビエトも、軍需より民需に予算が流れやすくなっていた。

 「財政難だ。24300トン級キーロフ型巡洋艦の建造も怪しいほどだ」

 「キーロフ型巡洋艦は、ソビエト海軍の誇りです」

 「所定の性能は確かかね」

 「レーダー反射面積低減。垂直発射ミサイルは、欧米諸国海軍を圧倒できるはずです」

 「日本の支援を受けなくても大丈夫なのだろうな」

 「日本の建艦技術は、キエフ建造で習得しつつあります」

 「また流用できる部品もあるかと」

 「それにキーロフは戦艦シベリア型の代艦として、はるかに有用です」

 「原子力でなくてもよいのかね」

 「ウラジオーナ。日本。アフリカ諸国。チリなど給油できる港があります」

 「原子力でなくてもよいかと」

 「そうか」

 キーロフ型巡洋艦

排水量 全長×全幅×吃水 馬力 最大速度 航続距離 乗員 対潜Ka27 哨戒Ka28
24300トン 252×28.5×10 180000hp 33 18/24000 740 3 3

 対艦ミサイル20基。

 対空ミサイル8連装12基。近対空ミサイル連装2基40発。

 対潜ミサイル12連装3基。

 62口径130mmAK130連装砲2基。65口径30mmAK630(CIWS)8基。

 ステルス、垂直発射機構など真新しい点があった。

 そして、基本戦略は、長距離対艦ミサイルによる飽和攻撃。

 おおむね、ソビエト連邦の純国産という事になっていた。

 しかし、部品製造に手間取ると日本に発注する癖は、変わっておらず。

 日本側は、細切れの仕様書を並べ、

 検分するだけでソビエト海軍が建造する軍艦の想像がついた。

 

 

 自由主義と共産主義の冷戦は、軍事力ではなく、権力の座をチップに載せてしまう。

 両陣営とも妥協を強いられ、

 自由圏の資産家と共産圏の共産党の権力構造が削られていく。

 

 ホワイトハウス

 「これ以上、資産をチップに載せられるものか。ゼネストを鎮圧してくれ!」 資産家。

 「「「「・・・・・」」」」

 

 クレムリン

 「これ以上、共産党の権力を失わされるか。民主化を踏み躙れ!」 共産党。

 「「「「・・・・・」」」」

 

 NATO軍もWTO軍も鉄のカーテンを挟み睨み合う。

 しかし、既に欧州大陸は、戦線として成り立っていない。

 どちらも、肉を取って骨を断つ作戦を行使、

 成功していたが痛みを伴うものだった。

 「「権力を失うくらいなら、戦争する方がマシだ!!!」」

 しかし、民衆は、民衆の力で自由資本主義と共産主義も選択できると幻想を抱いてしまう。

 既に手遅れなほど大きなうねりとなり、勢力になっていた。

 もちろん、民衆も極端ではない。

 国民全てが共産化を望んでおらず。

 国民全てが資本主義を望んでいるわけでもない。

 それだからこそ、

 米ソの国民は、100万ドルを上限とした私有財産制共産主義を注目する。

 

 

 チェコスロバキア プラハ

 酒場

 白人が二人、ため息混じり酒を酌み交わす。

 どっちも戦略系諜報員

 「・・・戦車が色褪せて玩具に見え始めたよ。プラハの呪いだな」

 「欧州全体が中立地帯と化してしまったな。というより、別世界かな」

 「いくらゼネストで困っていたからって」

 「共産主義のイメージダウンで、プラハの市民を焚きつけたアメリカが悪いよ」

 「あれは、プラハ市民にそういう感情があったからだ」

 「煽ったくらいで、ああなるか」

 「本気でソビエトが、そんな謀略に乗ると思ってたのか?」

 「まさか、ソビエトがチェコを民主化させるなんて藪蛇だった。泣きてぇ〜」

 「泣きたいのは、こっちだ。このバカが」

 「とにかくだ。私有財産100万ドル体制のイメージダウンを図りたい」

 「クレムリンは、様子見だと。残念だったな」

 「おいおい、困るよ。協力してくれよ」

 「まさか、ソビエトも、そっちに行くつもりか?」

 「準備している。民衆が決起するなら、最悪、そっちに行くつもりらしい」

 「そういえば、妥協の産物だったな」

 「邪魔はしないから、やるなら勝手にやってくれ」

 「そうそう、ウラジオストック共和国の分離も妥協するのか?」

 「合衆国も南部州が私有財産100万ドル上限制に興味を持っているそうじゃないか」

 「どうするんだ?」

 「ちっ! スターリン体制の頃は、もっと根性あっただろう」

 「見解の相違だな」

 「権力の座を守るため戦争する連中より」

 「権力を捨てても国家を守る連中の方が根性があるよ」

 「俺の雇い主たちにもそう言ってくれよ」

 「せいぜい、がんばるんだな」

 「ああ」

 一人の白人が去っていく。

 「ちっ 日本アニメの娯楽で救われやがって・・・」

 

 

 07/17

 地球を周回する軌道上でソビエト宇宙船ソユーズ19号と、

 アメリカの宇宙船アポロ18号がドッキングする。

 二人の白人が手を握る。

 「上手くいきましたな」

 「ええ、超大国でしか成し遂げられないことを世界に印象付けられました」

 「正確に言うと資本主義の富と共産党独裁による権力の集中によってしか、成し得ないということですよ」

 「まぁ そうでしょうが国民がどこまで、そう思ってくれるかですな」

 

 

 宗谷海峡の幅は約42km。最深部60m。

 津軽海峡の幅は19.5km。最深部約140m。

 二つの海峡は、長くて浅いか、短くて深いかだった。

 日本経済は二つの海峡トンネルを待ち兼ねるように設備投資が進んでいく。

 「だけど、本当に造ったんだな」

 「海軍は標的になるからまずいとか、ぼやいていたがね」

 「短信一発でバレるだろうけど。あってもなくても分かるんじゃないの」

 「宗谷海峡は42kmあるから途中に何か欲しいと思っても不思議じゃないよ」

 「時速200km/hなら15分もかからず抜けちゃうだろう」

 「気持ちの問題だよ」

 「しかし、一番深い深度で、60mくらいなら、吊り橋でも行けたかもしれない」

 「流氷があるんじゃないか」

 「それは、建造物の規模次第だよ。結局、建造しているし・・・」

 「しかし、南洋と違って、オホーツク海は暗くて、透明度が低過ぎないか」

 「んん・・・こういうの向かないかもしれない」

 「海水の栄養価は高いから最高の漁場なんだけど、観光は微妙だね」

 「海中灯は?」

 「準備できた」

 「どれどれ」

 薄暗い海底にぼんやりと光が映し出された。

 「「「ほぉ〜!」」」

 

 07/19 宗谷海峡 国際海洋博覧会。

  浅くて長い海峡トンネルの途中に海洋博覧会の海中施設が建設される。

  海峡のほぼ中央に海中水族館が建設され、海中ホテルに観光客が集まる。

  16階の建造物は駅でもあり、冬になれば海中から流氷を眺める展望台もあった。

  海中灯に照らされた幻想的な世界に引き寄せられ、いろんな魚が現れる。

  テーブルにイカナゴ、タラ、スケトウダラ、ホッケ、

  スルメイカ、さけ、ほたて貝、毛がになどの海の幸が並び・・・

  「ソビエト海軍は23000トン級大型巡洋艦を建造しているらしい」

  「ミサイルをわんさか積んだやつか」

  「だいたいの性能は察しがつくよ」

  「まぁ アレだな。日本に部品や工作機械を発注すると、手品のタネを教えるようなものか」

  「くっ くっ くっ いま思えば、むかしの日本海軍艦艇もモロバレだっただろうな」 苦笑

  「ソビエトも、わからないだろうと思い込みたいところがかわいいか」

  「知らんぷりしてやるのが、礼儀だろうね」

  「しかし、むかしのアメリカ、イギリスの気分だな」

  「まったくだ」

  海中ホテルの周りにプランクトンが好む餌をまいていた。

  プランクトンをえさにする小魚、イカが集まってくる。

  窓に映る海の底を子供が喜んで見ていた。

  「あ、あれ何? あれ何?」 子供

  「クリオネ。ハダカカメガイの一種」

  「かわいいぃいい〜」

  「そう・・・」

  「赤くて白くて、羽がある〜・・げっ! 食ったぁ・・・」 ショック

  「海峡トンネルが完成したら、見に来れるわね」

  「新幹線じゃなくても、電気自動車なら来れるけどね」

  「電気自動車しかないじゃない」

  「津軽と宗谷海峡トンネルが完成したら、ガソリン自動車も自由解禁らしいよ」

  「オイルショックなのよ。家計を破綻させる気?」

  「そうだった」

 

 

 日ソの攻撃ヘリ技研で新型ヘリの研究が進められていた。

 Mi24ハインドは侵攻用ヘリとして悪くなかった。

 日本も余剰積載分の範囲で改良する。

 日本は、地上を占領されたのちでも戦闘ヘリによるゲリラ戦を計画しており。

 地下格納できる小型化で有利な二重反転プロペラの戦闘ヘリを欲していた。

 日本は、海軍で運用していたカモフKa27ヘリックス系の改良を打診し、

 結果、共同開発となった。

 結局、基礎開発するソビエトも、応用改良する日本の部品をリターンで採用する。

 日本の部品が機体、ミサイル兵装、機銃まで使われ、比率は大きくなっていた。

 最初から共同開発していた方が良いと、いまさらながらに気付く。

 目標は、今年開発されたばかりの攻撃ヘリ。

 マクダネル・ダグラスAH64アパッチを越えること。

 皮肉な事にソビエトは、共産圏に頼りになる国家が存在せず。

 共同開発の相手は日本となってしまう。

 ソビエトもYaK38フォージャーが役に立たないことから日本との共同開発に乗り気であり。

 日本の部品精度が良いのか、開発が進んでいく。

 そして、戦闘機開発でも日本は参入する。

 スホーイSu27フランカー (推力12500kg以上×2)

 ミコヤン・グレビッチMiG29フルクラム (推力8200kg以上×2)

 ソビエトはフランカーをF15版主力戦闘機。フルクラムをF16版簡易型戦闘機と考え。

 それを越える事を考えていた。

 日本は大型スホーイSu27フランカーを制空戦闘機型と戦闘爆撃機型の2タイプで考える。

 予算があり、総合開発力のあるソビエト。

 予算不足で一部しか予算を投資できず。部品精度の高い日本。

 多少の行き違いはあっても日ソ両国は、互いに妥協していく。

 共産圏の航空機事故が少ないのは日本製の部品を使っていること、

 それは、西側でも常識になっていた。

 そして、日ソは双方は、歩み寄りながら完成度の高いモノになっていく。

 「日本は離陸距離と地下格納の容積で、小型のMiG29フルクラムを選ぶと思ったがな」

 「意外だったよ」

 「元々、機体数が少ないし。土建屋過剰投資のおかげで、地下格納庫の方が余裕あるよ」

 「上陸後、疲弊したアメリカ機動部隊攻撃を考えているからね」

 「それにアメリカ機動部隊が疲労した後に反撃だから大型機の方がECM・ECCMで有利だろう」

 「あと、将来的にも、機能を追加しやすい」

 「それと、この機体なら大型でも離着距離が短い・・・それだけかな」

 「なるほど・・・アメリカ軍が日本に上陸するとは、とても思えんが・・・」

 「本当は、VTOL機が好ましいのだが、得られる性能が低過ぎるのが難点かな」

 「この離着陸距離なら、空母を建造できますかな」

 「ソビエト海軍は、空母建造の予定があるので?」

 「そうですな。大国ですので建造はしたいですな。日本はどうするので?」

 「オイルショックで経済が世知辛いので見送りになりそうですな」

 「またですか。戦車なんかどうです?」

 「戦車ねぇ あれあると軍人が威張りだしそうで、国民が嫌なんだと」

 「いやがっているのは、土建屋なのでは?」

 「当たり♪」

 

 

 モスクワの特定新幹線車両区画

 日本の外交専用20両編成が駐車していた。

 大使館同様、外交公用車は、治外法権が認められていた。

 日本大使館は、ソビエト国内の大使館で最大級を誇っていた。

 しかし、ある階層以上の来訪があると。なにがしかの支援が必要になり・・・

 09/30 天皇がモスクワを訪問。

 ソビエト連邦は、共産主義思想により、

 ロマノフ皇族を抹殺し、王朝を滅ぼして築かれていた。

 この赤い帝国に世界最古の皇族。天皇陛下が現れ、ロシア人の歓迎を受けた。

 歴史的な快挙でもあり、

 ソビエト連邦が国際社会において、信義に足る国家であると印象付ける。

 これは、妥協の産物。

 経済的な波及効果は大きく、ロシアマフィアも暗躍していた。

 ソビエト共産党は、公正で穏健な政体であるとロシア国民にイメージを植え付ける計略。

 結局、国民に支持されるのであれば、民主的になりやすく。

 国民に支持されない政府は、独裁的、抑圧的になりやすかった。

 ソビエト共産党も内部変革を求められ、穏健な体質に変貌しつつあった。

 「ロマノフ王朝廃位から58年」

 「ソビエト共産党は、君主制を廃位させたのではなく」

 「ロシア国民を搾取した悪い統治者を廃位させた、と宣言します」

 「また、悪なる統治者と結託し」

 「ロシア民衆を収奪しないのであれば共産党は宗教を弾圧しないでしょう」

 「そして、ここにロシア国民の友人にして、最友好国、日本の天皇を紹介します」

 喝采。

 既に日ソ関係は緊密なものとなっており。

 「・・・ロシア国民と日本国民が共に手を取り合い、さらなる両国の発展を希望します」

 日本の天皇の無機質さと、

 温和過ぎる表現にロシア国民は動揺、戸惑い・・・

 そして、拍手喝采。

 日本の天皇が赤の広場を前に立っても支障がなくなる。

 

 

 

 日本のミグ21、ミグ19、スホーイ7は、ターボファンジェットに換装されていた。

 劣化した部品や機材は次々に換装され、

 いまでは、機体のほとんどが日本製。

 25パーセント近い軽量化により、

 追加した電子装備を含めて、別機といえる機動性を発揮した。

 トンネルの中に設置されたレールの上に主脚を格納したままのミグ21が載せられていた。

 地上発射の射出カタパルトは、アメリカの空母より数倍長く、

 加速が累計的に増えるため衝撃も小さかった。

 トンネルを抜けたミグ21は時速320km。

 海抜1800mの山裾から飛び出し、加速しながら蒼空へと昇って行く。

 この種の出撃方式は、スクランブルの有効性で各国で研究されていた。

 アメリカ空母の速度30ノット=時速55.56km + カタパルトが時速257km。

 合成風312.56km。

 海抜1800mの山岳と、空母の飛行甲板の海面からの海抜差は大きく。

 スクランブル発進直後のミグ21バラライカの運動エネルギーは、F14ファントムより上だった。

 カムチャッカの山脈でも海抜3000m級の山裾に航空基地が建設されており。

 B52爆撃機が向かってくると、すぐさま、対応できた。

 空中巡洋艦ベアに誘導されたミグ21戦闘機4機が領空に接近するB52爆撃機に向かっていく。

 「何しに来るんだろうな。アメリカ軍機」

 『暇潰しだよ』

 「暇潰しか、浪費だよな」

 『持っているから使わずにはいられない』

 「しかし、B52の高度は、どうかと思うよ。狙ってくださいという高さだよ」

 『囮じゃないの。本命は、艦対地レギュラス。空対地ハウンド・ドッグ巡航ミサイル』

 「ぅぅ・・バラライカで迎撃、撃墜できない事はないけど核を撃ったら死ぬよね」

 『まぁ 赤外線追尾ミサイルとレーダーホーミングミサイルが外れて・・・』

 『23mm機銃だと運が悪かったら、そうなる』

 「それで撃たなかったら都市に命中して、もっと死ぬかな」

 『もちろん、そうなる』

 「んん・・・どうでもいいけど、核兵器は、使って欲しくないよな」

 『核戦争が起こると日本が一人勝ちという話しもある』

 「なんか、余計、日本に核弾頭が落ちそうだな」

 『そりゃ 直撃させないと地下施設を破壊できないから空中爆発より半径が小さくなるから・・・』

 『落とす数も増えるよ』

 「大半の人間は地上に住んでいるんだけどな」

 『直撃なら一瞬で蒸発で安楽死だ。喜ぶのは自殺願望のある人間だけかな』

 「直撃ならな」

 

 

 得撫島

 ミサイルが島に向って突入していく。

 そして、島の側から連続した爆発が続く。

 紡錘状の白煙がミサイルの弾道を狂わせ、着弾直前に空中爆発する。

 後続の紡錘状に白煙が爆発の威力を空中に押し返していく。

 地下のモニターに映像が映されていた。

 「音速以上で砲弾を撃ち出して、ソニックブーム衝撃波による防衛か」

 「やはり、レーザーか、対空ミサイルによる防衛が良いかもしれませんね」

 「衝撃波は、レーザーと対空ミサイルの迎撃不能な場合、最後の手段だよ」

 「衝撃波で核のエネルギーを軽減させられるのでしょうか?」

 「まぁ 電子制御で遅れているからね」

 「とてもじゃないが迎撃ミサイルを弾頭に命中させられそうにない」

 「それらしい方向に音速弾を撃ち出し」

 「5重6重の衝撃波で核エネルギーを拡散する方が地下施設のためかな」

 「バリアですか?」

 「まぁ そんなところだ」

 寒冷地で人の目を制限しやすい島は、試作実験場になりやすかった。

 

 「珍しく国産で試作したと思ったら、これか」

 「別名、対地攻撃用STOL機ともいう」

 「防衛に徹するなら短距離離着陸能力で良いような気がする」

 「んん、最近、舗装が増えてきたから、悪くはないけど」

 ターボファンエンジンは、ジェットエンジンの先端にプロペラを直結したものだった。

 高バイパス比エンジンは、燃費が良く民間ジェット旅客機で多用されている。

 このプロペラの大きさを小さくしていくと低バイパス比エンジンとなり戦闘機となる。

 日本空技は、高翼上面に民間用高バイパス比エンジン2基を配置。

 ジェット気流を主翼上面に流す事で揚力を得られやすくした機体を開発する。

 その高翼配置の主翼は、水平から仰角23度まで傾けることができた。

 この二つの効果で最大離陸重量でも離陸距離60m。着陸距離120mの襲撃機を完成させる。

  重量 全長×全幅×全高 翼面積 推力 最大速度 航続距離 乗員 ミ・爆  
鴉(カラス) 6800/8000/10000 14×14×5.2 28 3000×2 1020km 1500km 2 2400kg  

 「攻撃ヘリ・ハインドと、どっちが良いか興味あるだろう」

 「まぁ この手の対地攻撃機は、どこの国でも考えるから」

 「垂直離着陸能力、積載能力、ホバリング能力関係で攻撃ヘリになりやすいからね」

 「主翼を23度にした状態は、低速飛行で優れているぞ」

 「まぁ 舵を思いっきり下げるとコアンダ効果で俯角90度くらい下にジェット気流が流れるからね」

 「形状から戦闘機は無理でも、対地攻撃機に使えそうだ」

 「攻撃ヘリと違って、低速ジェット攻撃機は熱源を追いやすい、対空ミサイルの餌食じゃないか」

 「A10サンダーボルトみたいに装甲板を張れば、遅くなるし、微妙だな」

 「索敵用無人機でも良いような気もしてきた」

 「んん・・・たいていの上陸地点と要衝は砲弾とミサイルが届くし、火力の問題だけだからな」

 「ソ連に輸出してやろうか。喜びそうだな」

 

  重量 全長×ローター×全高 馬力 最大速度 航続距離 乗員 ミ・爆  
Mi24 8570/1130/11500 17.51×17.30×3.90 2225×2 320km 1000km 2+8 2400kg  

 対潜ユニット、対地ユニット、対空ユニットなど、

 各種の装備を選択できるMi24ハインドが検討されていた。

 「客室部をユニット式にすると重量効率で不利だよ」

 「性能は割り引くことになっても、柔軟性と数を稼ぐことができるよ」

 「んん・・・更新しやすいけどユニットの価格は安くないからな」

 「最近の電算機は、なんで、あんなに高いんだ?」

 「下手をすると電装品の方がエンジンより高くなるからな」

 「地下で生産しているからじゃないの」

 「ちっこいチップを作るのに工場が大き過ぎるんだよ。元取れんのかよ」

 「だいたい、本体15機、プラス、3種ユニット30基と3機種30機か、どっちが良いか、だろうね」

 「3機種30機が良いよ」

 「やっぱり」

 「本当は、対AH1コブラ用の機体が欲しいけどね」

 「最新は、AH64アパッチだよ」

 「コブラとアパッチは、対地攻撃用だから、空対空兵器を満載すれば勝てそうだけど」

 「空力特性ってあるだろう」

 「ミグがファントムに先制攻撃されやすいのは、空力特性じゃなくレーダーの差だよ」

 「空力特性ならジェットプロップ戦闘機の方が勝てそうだな」

 

 

 垂直発射ミサイル実験場

 打ち上げたあと、ミサイルに弾道軌道を取らせて、標的に向かわせることは可能だった。

 ICBMがそうであるように垂直発射ミサイルは、それほど古くはない。

 問題になるのは、誘導システムの関係であり質量といえる。

 LSI技術により誘導システムの軽量化が進むと、

 比較的小型のミサイルでさえ、垂直発射方式が可能になっていた。

 そして、ミサイルを小型化できるのであれば、艦船搭載型垂直発射方式も有効になっていく。

 「艦内にミサイルを垂直格納する方が艦の重心を下げることができるか」

 「うん、当然、ミサイルも、たくさん搭載できる」

 「問題は全て国産か、ソ連製に日本製の誘導装置を付けるか、ソ連製任せか」

 「これまでと同じ、ソ連製に日本製の部品で改良していくんじゃないかな」

 「いい加減、後追いは創造性の抑制で面白くないよ」

 「そうは言っても部品の輸出で、国産兵器を揃えているようなところもあるし」

 「ソビエトの誘導兵器も日本製LSIで開発しているのだから」

 「垂直発射ミサイルの日本輸出も、もうすぐだよ」

 

 

 共産化したフランス。

 フランス資本の海外流出は、一時的にフランス経済を混乱させてしまう。

 しかし、セーヌ川に沿った街並みも、歩いているパリジャンも大きな変化はなかった。

 私有財産は500万フラン以下。約100万ドル相当で認められており。

 土地の下落は続いていた。

 資産と負債の差額で純資産を計算した場合。

 ほとんどの国民は、私有財産500万フラン以下で、おおむね関係ないといえた。

 また、単純に財産を守る手段として、家族や親族に分配してしまう手段もとられたりもする。

 フランス国家は、資産家の生産設備と土地を押さえて国営化し、貧民層に再分配。

 転地転売で土地成金が生まれ、生産と消費と増加してしまう。

 シャンゼリゼ通りのカフェテラス。

 「フランスは、500万フランで、イタリアは5億リラか」

 「だいたい100万ドルに近い私有財産で軒並み並んだな」

 「余程のお金持ちでもなければ、関係ないというところかな」

 「どちらにしてもゼネストも収まったし、一息着けたじゃないか」

 「・・・田舎者が、歩きまわるようになったな」

 「貰った土地を貸すか、売っぱらったんだろう」

 「土地に執着のない連中に土地を分配したからって、上手くいくわけがないさ」

 「他は我慢するがね。ワインの味が落ちなきゃいいけどな」

 「ふ 土地の値段なんて良いようにつけられるよ」

 「フランス政府は、企業資産をどうするって?」

 「小企業は、私有財産の範囲で関与せず」

 「まぁ 足を引っ張るようなことはしないらしい」

 「中企業以上は、余剰資本の比率を検討するらしい、自主性との兼ね合いを検討しているらしいよ」

 「やれやれ、暗中模索だな」

 「資産が大きくて、生産性の低い家屋をどうするかで、もめているらしい」

 「イタリアは、宝くじで1年貸しにするらしいよ」

 「火事とか怖いな」

 「保険付き。実のところ、区画を分けて転売出来るから、その方が手間が省けるんじゃないの」

 「いいなぁ イタリアの宝くじ買おうかな・・・そういえば、イタリアの共産テロは?」

 「マフィアも資産隠しに走っているくらいだ。共産テロは、治まってるよ」

 「あそこの闇経済は、でかすぎるからね」

 

 

 

 アフリカ大陸

 「これより、ナイジェリアに帰還する」

 ミルMi8ヒップが密林から飛び立っていく。

 ソビエトの軍事顧問団は、独裁国家から引き揚げ、共産圏諸国へと移動していた。

 現地の反政府共産ゲリラが見送る。

 「・・・なんだろうな」

 「フルシチョフとコスイギンは印パ調停でノーベル平和賞を貰ってから偽善者になってしまったな・・・」

 「何が “暴力革命は良くない” だ。アホが」

 「あの俗物。西側から貰った名誉を傷付けたくないんだよ」

 「崇高な共産主義の理念を放り出しやがって、ソビエトの裏切りモノ」

 不貞腐れても暴力革命から手を退き始めたソビエト軍事顧問団は、戻ってこない。

 残っているのは、暴力革命肯定派の中黄連邦、キューバの軍事顧問団だけだった。

 

 

 11/15 主要国首脳会議(サミット)がフランスで開催

 参加国は、アメリカ、イギリス、フランス、統合ドイツ、イタリア、日本、ソビエト

 国際連合は、理事国の権限があっても一国一票制。

 宣伝プロパガンダに左右されやすかった。

 そこで、国際情勢を大国だけで話し合う必要性に迫られてしまう。

 アメリカ、日本、イギリス、統合ドイツは自由資本主義。

 フランス、イタリアは、私有財産100万ドルの制限資本主義。あるいは、限定共産主義。

 ソビエトは、共産主義。

 それぞれの政治制度で権力体制が固まってしまうと言う事も変わってくる。

 もっとも、重要な課題はオイルショックに対する対応だった。

 米ソ対立を基軸とした対立も、欧州大陸から国境の内側に引き籠ってしまい。

 対外的な対立から国内権力構造と荒れる国民との対立。

 超大国アメリカは、南部連合州が私有財産100万ドル上限制に好意的。

 もう一つの超大国ソビエトは、ウラジオストック共和国がいつでも独立できる状態となり、

 内憂外患時代から内患外憂時代に移行していた。

 特に米ソ権力構造は、忍び寄るゼネストと民衆の望む民主化を前に、

 処刑場の13階段を登る途上の様でもあった。

 国民を権力構造に結束させるには、戦争が手っ取り早かった。

 しかし、核弾頭を持つ国と戦う愚は冒せず。

 また、戦争をしても、うま味がないと計算されていた。

 そういった中での会談であり、

 国際協力と言いながら結束は失われ、

 国益主義であることに変わりなく・・・

 「西シベリアの油田からパイプラインを敷いてくれよ」

 「技術と資本投資をしてくれたら、もう少し、急いでも良いけど」

 「権益は?」

 「石油輸出と元金返済だけ」

 「・・・・・」 むっすぅう〜

 「アメリカだって、高品位の技術を輸出規制しているじゃないか」

 「あれは戦略資源なんだ」

 「西シベリアの油田も戦略資源だろう」

 七並べのような駆け引きと、有利な条件での取引が行われ、

 国際的に効率性が高められていく。

 国家間の同盟、結束力だと、米英独はギクシャクしており、

 同盟を結んでいないはずの日ソ関係は良好だった。

 

 

 アメリカ国防省からの報告が届く。

 対ソ、対日、対中、対英、対仏、対独・・・

 国家指導者は、国家間の外交戦略で正常な判断をするため、この手の報告を常に受ける。

 政治、同盟、資源、工業力、貿易、軍事力など、

 多方面にわたって考察され国際関係が構築されていく。

 「・・・通常戦力による先制攻撃で日本の反撃能力を奪うのは不可能か・・・」

 「核の直撃でも怪しいですな」

 「大抵の国なら衛星とのデータリンクで通常兵器の先制攻撃でだけで重要拠点は壊滅だな」

 「降伏するしかなくなる」

 「地面の底では、通用しませんね」

 「ああ、しかし、ここまでやるなんてな」

 地図に公共機関の地下施設は膨大。

 他に把握している秘密の地下施設が描かれていた。

 把握できていない地下施設は、さらに多く。さらに増殖中。

 「迎撃機はミグ21とミグ19か」

 「性能はソビエトの本家により性能は上なのかね」

 「フレア、ECM・ECCMの機能は強いようです。索敵能力は、やや高いくらい」

 「チタンの量が増えて、機動性は高いようです」

 「相変わらず乱戦思考か。対空ミサイルは?」

 「空中巡洋艦構想では、早期警戒指揮機モスの誘導で、ベアの空対空ミサイル」

 「またモスは、ミグ21、ミグ19、スホーイ7。地対空ミサイル。艦対空ミサイルも誘導するはずです」

 「ミグ21とミグ19は、機関砲による航空戦を主任務としているようです」

 「F14で勝てるだろうか」

 「モスとベア。レドームを片付ければ、容易かと」

 「ふ まず片付けるのが容易ではなかろう」

 「年間3隻建造の潜水艦も脅威と言えるでしょう。現在、試作艦型12隻。量産型21隻」

 「正味60隻だったな」

 「新型の15000トン級巡洋艦は、現在8隻。考えなくても良いかと思われます」

  排水量 艦齢(以下)          
大鳳 30000 31年 大鳳       1隻
大淀 8200 32年 大淀       1隻
志摩 15000 11年 志摩 伊賀 伊予 甲斐 8隻
      蝦夷 飛騨 常陸  播磨   
               
潜水艦
赤龍 6500 1年1隻         12隻
鋼龍 6500 1年3隻         21隻
               

 

 「本当に日本の電子戦能力は低いのか?」

 「国産LSIを開発してます」

 「ですが日本語と英語では、英語が有利。性能においても10年以上の開きがあるはず」

 「言語上の問題は大きいな」

 「しばらくは、心配ないかと」

 「日本世界は地上と地下の2重構造か。厄介な国だな」

 「バンカーバスターを搭載できるのは、戦闘爆撃機F111アードバーク以上」

 「生存率と命中率を考えると、B52爆撃機は辛いと思われます」

 「また。地下施設を利用したゲリラ戦で持久戦を取られ」

 「ミサイル、砲弾、攻撃ヘリで夜襲を受けるはず」

 「原子力空母でも補給難。通常艦は、もっと酷いか」

 「潜水艦とスホーイ7の攻撃も続くでしょう」

 「それと、ソビエトが日本を支援すると最悪で日本国民の抵抗は激しくなる・・・」

 「んん・・・相変わらず、対ソ対日は絶望的だな」

 「ソビエト、日本の自信は、裏付けがあると思われます」

 「飛鳥は、日本の足枷手枷になるのではないか?」

 「戦力を誘き出して削ぐことができるかもしれませんが、正気なら見捨てるはずです」

 「そうだろうな。どちらにせよ。日本と事を構えるのは得策ではない」

 

 

 バレンツ部隊がウラジオーナに進出していた。

 ウラジオーナ (全長3000m×全幅342m)

ベア          
爆撃機Tu95 対潜哨戒機型Tu142 早期警戒機型Tu126 空中給油型 ミグ25 ミグ21 Su15 Ka27  
40 12 12 10 65 150 40 40  

 戦艦シベリア、航空巡洋艦ミンスク、ヘリ巡洋艦モスクワ。

 キンダ型2隻、カシン型駆逐艦4隻。

 ウラジオーナは、たとえ動けない航空基地でも、

 航空戦力は、アメリカ空母の運用機数を凌駕し、

 ベア、バジャー、ミグ21、ミグ25の制空権下、ソビエト艦隊は、機能を発揮できた。

 潜水艦隊も配置され、

 ウラジオーナは、ソビエト海軍の強力な海洋基地になっていた。

 これだけの航空機を運用できても、ウラジオーナ運用能力だと少なめだった。

 ウラジオーナの管制の7割は、旅客機のアントノフAn22Jアンチスの運用になっていた。

 輸送機An22アンチスは、ベアと同じ15000馬力ターボプロップ4発を装備しており、

 日本でも採用されていた。

 もっとも日本航空は、戦車を運ぶ気など毛頭なく。

 民間旅客機An22Jアンチスに改良していた。

 大幅に軽量化され改良された機体は、プロペラ航空機史上、費用対効果で最高峰とまで言われ、

 このアントノフAn22Jアンチスは、共産圏の主力旅客機となり、

 後進国へも輸出されていた。

 もっとも巡航速度650km以下だと長距離は乗客の負担が大きくなる。

 モスクワからだと直線距離でも7000kmとなり10時間を越える。

 ボーイング747だと巡航速度913kmで同じ距離を7時間40分で済んだ。

 苦痛を和らげるため座席に余裕が必要になり、

 席数が少なくなると利潤が目減りする。

 元々、共産圏では鉄道が低所得者向けで、航空機は高所得者、特権階級、外国人が多かった。

 エコノミー座席は、西側のビジネスクラスに近く。

 社会主義らしく、ファーストクラスとの格差も小さかった。

 そのおかげか、特定の層に好評で、ロシア航空のアメリカ乗り入れが行われる。

 またウラジオーナを唯一経由するロシア航空は、欧米諸国の乗客が面白がり利用したがる。

 観光客は、カメラ持参でウラジオーナで記念撮影をしたがり。

 ソビエト軍パイロットと一緒にベアやミグ25。

 あるいは、キエフ型航空巡洋艦をバックに撮影したがる。

 軍機も減ったくれもない。

 しかし、このイメージ戦略がアメリカ合衆国を市民の容共と労働運動を激化させていた。

 財閥を解体し、貧富の格差をリセットしても良いのではないか、

 という幻想をアメリカ人に抱かせてしまう。

 実のところ、アフリカ諸国での共産ゲリラ支援は、ウラジオーナを介さず、

 貨物船でも十分だったのである。

 「宇宙戦艦ウラルだ♪」

 「すげぇ〜!!!」

 子供たちが一番喜んだのは、退役を検討中の戦艦シベリアとの記念撮影だったりする。

 ソビエト海軍が戦艦2隻の退役を引き延ばそうかと悩むほど人気モノになろうとしていた。

 そして、ソビエト連邦文化省が対スタートレック映画、

 宇宙戦艦シベリアを創作したのもこの頃だった。

 

 

 クレムリン カザコフ館は積雪によって、白く塗りかえられていた。

 赤の広場も寒過ぎて人通りは、ほとんどない。

 「・・・は、春までは、大丈夫だな」

 用心深く、外を見守る。

 「同志コスイギン。本当にやるんですか?」

 「針を元に戻そうとすれば、血が流れる。ここまで来たら、行くしかないだろう」

 「しかし、民衆が共産主義打倒で立ち上がったら」

 「そ、それをしないように先手を打つのだろう。制度的には、共産党が有利なのだ」

 「し、しかし・・・」

 「冬季明けからのアニメ番組は、大丈夫だろうな?」

 「それはもう・・・」

 「日本製品は、店先に並んでいるな」

 「ええ」

 「そうか・・・」

 

 

 クレムリン宣言。

 「いかなる国家政体であれ、国防、治安維持、混乱を避けるため体制や制度の自衛権を有する」

 「我がソビエト連邦は、暴力による革命を推進に反対する」

 「体制や制度の改革は、国民の総意。選挙によって行われるべきである」

 暴力革命を本筋とした共産主義の自殺宣言とも言われた。

 しかし、資本主義圏の資産家は総毛立つ。

 文字通り、共産主義は、資本主義を道連れに無理心中してしまうが如き激震となった。

 ソビエト連邦がアメリカ合衆国より有利だったのは、冬季に入っており、

 日本アニメのおかげか、民衆が集まり難かったこと。

 それだけだった。

 

 

 

 ソビエト連邦と東欧諸国の共産党は妥協と融和政策を継続、

 共産主義を衰退させていた。

 しかし、共産主義を恐怖の対象ではなく、選択可能な政策にしてしまう。

 フランス、イタリアの期間限定の共産化が新たな可能性を示唆し、

 自由資本主義の価値観の崩壊が進む。

 そして、トドメ。

 コスイギンのクレムリン宣言。

 このソビエト共産党による暴力革命の否定宣言は、一瞬にして世界を駆け巡る。

 共産主義が暴力革命のダーティイメージを捨てたことで、

 自由資本主義圏で躊躇させていた有識者を容共に走らせていく。

 個人資産の自由を認めるアメリカ合衆国で、

 個人の権利を抑制する意見が市民から興ろうとしていた。

 アメリカ合衆国の南部州で私有財産100万ドル上限を口にする議員が現れ、

 アメリカ市民も衝撃を受け労働運動、ヒッピーを吸収しながら、

 容共、反資本主義気運が拡大していく。

 

 アメリカ合衆国 ホワイトハウス

 「バカな。何と言う事をしたんだ」

 「ゼネストが増加しています」

 「このままでは、資産家の逃亡が増えます」

 「・・・我が国も日本のアニメを放映した方が良いかもしれない」

 「我が国には、娯楽もありますし、ハリウッドがあります。娯楽で日本に負けません」

 「南部州は、私有財産100万ドル上限制に好意的になっている」

 「アメリカ合衆国は手段を選んでいる場合ではないのだ」

 「しかし・・・」

 「イギリスも福祉政策が行き詰まり、私有財産100ドル以下制が意識されている」

 「統合ドイツも、辛うじて選挙に勝っただけで、次の選挙でどうなるかわからんだろう」

 「もう、何でも良いのだよ」

 「ゼネストやデモをしているやつらを家に戻し、テレビに張り付けさせるのだ」

 「それに冬でも市民が外に出やすいアメリカはソ連より不利だ」

 「ハリウッドだけでは足りない。日本アニメにも頼りたいのだ」

 「自由資本主義を守るために。ですか?」

 「そうだ。青海とアフリカ諸国の戦いでアメリカ国民は精神的な打撃を受けている」

 「青海の帰還兵は宗教運動家」

 「アフリカからの帰還兵は覚醒剤に手を出す者が多いようです」

 「そいつらの多くが、容共か・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 この年は、アニメが、いっぱいです。

 メカゴジラの逆襲。ゴレンジャー。仮面ライダーストロンガー。

 フランダースの犬、まんが日本昔話。

 勇者ライディーン、ガンバの冒険。ゲッターロボG。宇宙の騎士テッカマン。

 タイムボカン。グレンライザー。鋼鉄ジーグ。アンデス少年ペペロの冒険。一休さん

 すごい目白押し。

 史実は、出産ラッシュのせいで子供が多かったせいでしょうか。

 この戦記だと出産ラッシュが遅れ、総人口は1920年の5600万。

 しかし、共産圏数億人の市場もあるので、アニメも、いっぱい作られました。

 

 

 コアンダ効果

 水道で水を流し、掌を添わせると、掌側に水流が誘導されてしまう効果です。

 航空力学でも似たような事が起こります。

 

 

 史実では、制空戦闘機F15イーグル。支援戦闘機F2(対艦)

 この戦記では、制空戦闘機型スホーイSu27フランカーと、

 戦闘爆撃機型スホーイSu27フランカー(対艦)です。

 同じ機体を使いますがF15イーグルとF15ストライクイーグルの違いくらいでしょうか。

 部品は日本製なのでチタンが少し増えて、稼働率が良いかもです。

 価格は、共同開発に近いのでかなり安いかもです。

 ステルス・電子戦能力は、史実のSu27フランカーよりちょっとだけ良いかも、

 でも、ちょっとだけなので、諦めてください。

 早期警戒指揮機モスと一緒に飛ぶしかなさそう。

 メインは穴熊引き籠り戦略ですから。

 

 

 

 NEWVEL 投票      HONなび 投票

長編小説検索Wandering Network 投票

  

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

第33話 1974年 『東嵐西乱』
第34話 1975年 『暴力反対』
第35話 1976年 『東西と南北』