月夜裏 野々香 小説の部屋

    

ファンタジー系火葬戦記

 

『魔業の黎明』

 

第04話 1944年 『支配は、奪うこと』

 アメリカの憲法は、個人の生命、自由、財産を奪ってはならず、

 平等である事が謳われている。

 この事が多人種、多民族、多宗教、多様な人民を集合させ、

 アメリカ合衆国を列強にさせた原動力と言える。

 もちろん、建前であり。

 他者を差別し、積極的な労働を強いなければ近代化は望めない。

 しかし、建前があると、本音が違っても表向き出しにくいのだった。

 国内に膨大な未開地と下働き労働者(黒人)を抱え

 南米、フィリピンという経済植民地があり、

 極東権益地を新たに会得したことで、本音の覇権主義を抑制していた。

 また、ドイツ帝国は、アメリカ商船のアイスランドまでの輸送を認め、

 無制限通商破壊をイギリス近海に制限していたため付け入る要素もなかった。

 なので、アメリカは、健全な民需産業で経済を立て直すべき、と声が強まる。

 極東満州・朝鮮支配が大きくなるにつれ、

 実に民主主義らしい作為的な世論操作が行われ、

 “極東アジア権益を守るためにドイツと共闘すべし”

 “ソビエト共産主義と組みするイギリスに武器弾薬を供給する事まかりならん”

 という民衆の声も大きくなり、

 対英・対ソ戦略物資支援が自然に目減りしていく。

 結果的に日英ソ・独伊東欧の両陣営は決定打に欠けていた。

 アメリカ資本は、極東権益を守るため米独同盟を結び、

 対ソビエト共産主義陣営を構築したいと画策する。

 日本とイタリアは、講和に前向きなのに対し、

 ドイツとイギリスは、講和の条件で折り合いがつかなかった。

 ワシントン 白い家

 日英代表と独伊代表がアメリカ大統領に呼ばれる。

 「そろそろ、講和を結んではどうだろうか?」

 ぷい × 4

 

 

 バルカン攻防戦

 日英ソ連合 VS 独伊東欧諸国の戦いは総力戦であり、

 より多くの消耗と損失を受け入れた方が前進できた。

 ギリシャ半島は日英軍の善戦とインド軍の命で解放されていた、

 バルカン冬季戦は、どちらも攻勢に出られず。

 北部出身のインド軍を前衛に出し、

 南部出身のインド人で補給路建設を押し進めるしかなかった。

 日英同盟軍は、まともに平地で戦えば、独伊軍に負ける、

 しかし、山岳戦は戦車の運用が制約されるため、人海戦術のうまみがあった。

 インド軍を前衛に立て、日英軍を遊撃部隊として戦う。

 冬季明けになれば、インド軍を次から次へとテッサロニキから上陸させ、

 屍の山を築きながらバルカン半島戦線を押し広げることができそうだった。

 

 

 

 01/07

 バルカン半島の山岳地帯。

 インド軍は寒さに弱く。木々が燃やされていた。

 煙草の火でさえ狙撃兵の的になる。

 時折、砲声が轟き、キャンプファイアごとインド軍が吹き飛ばされる。

 しかし、暗闇に点々と浮かぶ、炎は減ることがなかった。

 インド人は数学が強かった。

 炎の数を逆算し、

 自分のいるキャンプに命中する確率が低いことを知っていた。

 また、ドイツ軍の砲撃が嫌がらせ以上でない事も知っており、

 それなら温かい方が良かった。

 雪の降る暗闇の中、

 外に明かりが漏れないように注意しつつ、小さな火が灯される。

 日本・イギリス軍将校が集まっていた。

 出される食料はアメリカ製Cレーションだった。

 無論、日本からも食糧物資は届いていた。

 しかし、絶対量が少なく、日本軍18個師団分にも足りなかった。

 イギリスがアメリカから購入したCレーションが日本軍とインド軍の食料の大半を賄っていた。

 日英同盟は、アメリカの食料・軍需物資がなければ、バルカン戦線もカフカス戦線も支えられない。

 「インド軍が、いい的になってるじゃないか」

 「ドイツ軍が砲弾を消費してくれるのなら好都合だ」

 「しかし、寒過ぎる。チトーとの交渉は?」

 「いや、これ以上、木を燃やすなら、日英軍も敵だそうだ」

 「やれやれ・・・」

 

 

 ボンベイ港

 日本商船が停泊し、イギリス軍の軍服を着た日本人が降りてくる。

 インドの治安維持で日本人傭兵部隊の駐留が始まる。

 治安維持で必要な人材は、制服を着て武器を持った男たちだった。

 訓練されていれば望ましい。

 しかし、訓練代わりの治安維持だと効率が良かった。

 言葉が分かればよし、

 わからなければイギリスの利権を脅かせず、

 治安を維持できればヨシだった。

 

 

 01/09

 ソ連軍が東部戦線で大攻勢を開始する。

 

 01/14

 レニングラード戦線でソ連軍が大攻勢を開始する。

 

 01/20

 日英空軍がベルリンに2300トンの爆弾を投下する。

 

 01/27

 レニングラード攻防戦

 

 01/28

 ロンドン

 瓦礫の山が作られていた。

 独ソ戦が始まってから、ドイツ空軍のイギリス爆撃は少なくなる。

 とはいえ、イギリスの戦いを支えているのはカナダからの供給であり、

 アメリカからの軍事物資だった。

 しかし、ドイツ潜水艦は、北大西洋の制海権を支配しつつあり、

 イギリス商船隊は、大きな打撃を受けていた。

 そして、アメリカ参戦が得られず、

 イギリスは、次第に軍事物資が目減りして窮地に落ちいる。

 アメリカの世論は、共産主義と連合するイギリスに批判的であり、

 物資は、高騰と供給縮小で先細りの傾向にあった。

 イギリスの戦意を高揚させたは日本軍の参戦であり、

 バルカン半島の戦いで優勢だったことにある。

 イギリスはバトルオブブリテンを犠牲にし、

 インド人をバルカン半島へ上陸させていた。

 この頃、日本軍将校がロンドンの歩き回ることも珍しくなくなっていた。

 「意外とモテるな。俺たち」

 「うん、良かった、良かった」

 「イギリスはドイツとインドの弱体化を兼ね、インド人にバルカン半島を占領させているようだ」

 「何とも、壮大だねぇ」

 「イギリスがインドを支配下に置いているのなら回復も早いらしいね」

 「日本もそのお零れか?」

 「まぁ インド軍を500万くらい上陸させようとしているようだし。人海戦術でやるつもりだろう」

 「よく反乱が起きないな?」

 「不可触賎民ダリットらしいよ。戦いで功績を上げると階級をスードラに格上げらしい」

 「カーストか」

 「3億5000万の10分の1をダリットとして・・・3500万か・・・」

 「まぁ 500万くらいは都合が付きそうだな」

 「最下層ならどうなろうと知ったことかってところが酷いね」

 「日本も片棒担いでるけどね」

 「戦意は?」

 「階級が上がるなら、食事を与えて、武器を持たせるだけで戦ってくれるらしい」

 「ところで、例のモノは?」

 「ほら」

 資料を渡す

 「・・・ケルト魔術と魔術師マーリンを調べたけど、お話しだな」

 「大本営は戦争中に何で、こんな命令を出すんだ?」

 「俺も良く知らん。しかし、冗談でもなさそうでな」

 「まるで、魔法があったみたいじゃないか、それで慌てて確認しているように思えるぞ」

 「まさか」

 瓦礫の陰から若い白人女性が日本人将校を誘う。

 「「・・・・」」 にんまり〜

 ふらふら ふらふら ふらふら・・・

 将校たちは付いて行く。

 

 02/01

 フランスのレジスタンス勢力がド・ゴールのフランス国内軍に統一される。

 

 北半球はまだ冬でも、インド洋の南半球側は、夏の季節だった。

 伊19号は一度、潜望鏡深度まで浮上する。

 潜水艦は浮上する前、必ず潜望鏡深度で周囲を確認しる。

 日本海軍は、対独対伊戦で潜水艦を使う事が少なく。

 ほとんどが日本本土に配備されていた。

 水上艦隊は出払っており、

 潜水艦艦隊は、現行戦力で日本海軍最強の海洋戦力といえた。

 日本がアメリカの挑発に乗らず、

 アメリカに戦端を躊躇させる “なにか” があるとしても、

 表面上、日本潜水艦がアメリカの対日作戦を防いでいる様にも見えた。

 「副長、確か・・・この海域だったかな?」

 潜望鏡を覗くと波高1mほどで、時化までいかない、

 「ええ、大本営も、こんな航路から離れた海域を監視させるなんて、変な命令ですよ」

 「ふっ 勅命だと」

 「何でもかんでも勅命を出しやがって、大本営の嘘付きが・・・ぁ・・・」

 「艦長?」

 「・・・カメラだ・・・急げ・・・」

 

 

 

 02/16

 近衛総理大臣がトルコに参戦要請。

 

 アルゼンチンでクーデター、ファレル政権成立。

 

 02/19

 国民職業能力申告令が改正公布され、男女とも登録年齢が拡大する。

 

 

 ギリシャ テッサロニキ

 飛行場に戦闘機が配備されていた。

 飛燕(1445hp・マーリンエンジン装備)、

 虎鷹(2200hp・グリフォンエンジン装備)、

 しかし、戦場に必要なのは高性能戦闘機ではなかった。

 効率が良いのは、インド兵に小銃、弾薬、食料を持たせて前線に送り出すことだった。

 日本海運は、インドに立ち寄るとインド兵を乗せ、紅海を北上、スエズ運河を通過。

 護衛されながら地中海からエーゲ海を越え、

 テッサロニキにエンフィールド小銃(7.7mm×56)を担いだインド兵を降ろしていく。

 インド(ダリット)兵士は、カーストの昇格を望み前進する。

 日英同盟はインド軍投入で、独伊同盟軍を弾切れに追い込み、

 本隊で突撃する計画だった。

 イギリス軍と日本軍は、インド兵が増えるにつれ、兵士を減らし。

 戦車兵と砲兵の比重を増やしていく。

 クロムウェル戦車に日本軍将兵たちが乗っていた。

 イギリス製スタンガン(9mm×19)を嬉しそうに弄び、インド軍の隊列を見送る。

 日英印軍はバルカン半島を北上しつつあり、兵力でドイツ軍を圧倒していた。

 「インド兵って、凄い数だな」

 「冬でもこれが消消耗するなら、冬季明けは、もっと消耗するかな」

 「山全部、インド軍将兵の死体で埋まった事があるらしい」

 「それで、死体を片付けながら占領したんだったな」

 「俺たちと同じだけど、6か月生き残ったらカーストが上がるんだと」

 「滅茶苦茶安直じゃないか」

 「ふ 弾避けだな」

 「それより、38式改小銃が来るんだってよ」

 「イギリスの小銃弾が撃てないじゃないか」

 「日本も我を張りたい年頃なんだよ」

 「やれやれ、いっそのことエンフィールドにすれば良いのに」

 「そういえば、擲弾筒も数が足りないって喚いていたな」

 「いくら山岳地帯だからって、陸軍国相手に陣地を構えるからだ」

 「ほんと、一桁くらい火力が違うから洒落にならんよ」

 「とりあえず。冬季は最前線だったから、冬季明けからは後方に回れそうだ」

 「山岳戦ならインド兵でもやれそうだけど、平地は辛いな」

 「しかし、いつまでもバルカン半島で戦えないな。パルチザンと戦争になりそうだ」

 「食事を作るのにあれだけ木を燃やしたらユーゴ人、ギリシャ人じゃなくても怒るよ。たぶん」

 ギリシャ人700万は、元々、森林伐採が進み痩せた国土に住んでいた。

 そこに反攻上陸した日英軍20万 & インド軍100万が占領して焚き火を行った。

 ギリシャ半島は、ますます森林が失われ、やせ細り。

 冬季戦では、さらに火が大きくなり、

 バルカン半島全域で木材が燃やされ、インド人が暖をとった。

 当然、現地民との衝突が毎日の様に行われ、

 数の多いインド軍が現地人を圧倒する。

 

 

 03/10

 イタリアで反ファシズムのゼネストが起こる。

 

 03/27

 ヴィシー・フランスが対日英ソ連合に対し参戦。

 ツーロン港

ツーロン港 フランス艦隊 77隻

総数

戦艦2隻、旧戦艦1隻、重巡4隻、軽巡3隻、水上機母艦1、駆逐艦32隻、潜水艦16隻、小艦艇18
   
戦艦 ストラスブール ダンケルク      
旧戦艦 ブルターニュ        
重巡洋艦 コルベール フォッシュ デュプレ アルジェリー  
軽巡洋艦 ラ・ガリソニエール ジャン・ド・ヴィエンヌ マルセイエーズ    
水上機母艦 コマンダン・テスト        
駆逐艦 パンテール ランクス ゲパール リオン ティーグル
駆逐艦 ヴォーバン ヴェルデュン  ヴァルミ エーグル ヴォートゥール
駆逐艦 ジェルフォー ヴォークラン ケルサン カサール タルテュ
駆逐艦 ランドンターブル モガドル ヴォルタ トロンブ ル・マルス

駆逐艦

ラ・パルム

ボルドレー

ル・アルディ

フルーレー

(フードロワイヤン)

ラドロア

駆逐艦

マムリュク

カスク

ランクスネー

(ル・シクローヌ)

ル・コルセール

(シロコ)

ル・フリビュスティエ

(ビゾン)

水雷艇 ラ・バヨネーズ ラ・プールシュイヴァーント バリスト    
潜水艦 ルドゥタブル ヴァンジュール アンリ・ポアンカレ レスポアール ル・トナン
潜水艦 ルドゥタブル級 ルドゥタブル級 テティス シレーヌ ナイヤード
潜水艦 ガラテ ウーリディス ディヤマン    
駆潜艇 CH-1        
掃海通報艦 エラン級 エラン級      
設網艦 ル・グラディヤトゥール        
補給艦 ゴロ        
           

 「スペインの参戦が引き金になってようやく重い腰を上げたか」

 「フランス艦隊とイタリア艦隊の生き残りで戦えるだろう。合流を急がせてくれ」

 戦艦1隻、旧戦艦2隻、重巡2隻、軽巡9隻、駆逐艦13隻。

 戦艦リットリオ

 旧式戦艦ジュリオ・チェザーレ、コンテ・デ・カブール

 重巡ボルツァーノ、トリエステ

 軽巡カドルナ、モンテクッコリ、ガリバルディ、レゴロ、マリオ、シラ、ジェルマニコ、マーノ、アフリカーノ

 駆逐艦アルピーノ、ネラ、カラビニエーレ、コラッツィエーレ、フチリエーレ、グラナティエーレ

 駆逐艦レジオナリオ、ミトラリエーレ、スクアドリスタ、ヴェリーテ

 駆逐艦オリアーニ、マエストラーレ、グレカーレ。

 

 ツーロン港

 「イタリア・フランス艦隊が合流して、さらに足並みが乱れか」

 「スペイン軍がジブラルタルを占領して有利なんだがな」

 「これだけの艦隊だ。大西洋に出ても、東地中海に向かっても良い」

 「クレタ島の日本空軍は対艦攻撃が得意だぞ」

 「まだイギリス空軍の方が戦いやすいか」

 「性能で言うと、フランス艦隊は大西洋で通商破壊」

 「イタリア艦隊は東地中海の備えにすべきだろうな」

 「オーソドックスで芸がないな」

 「艦艇の特性が違うのだから仏伊連合艦隊は難しいよ」

 

 

 バルカン戦線

 ドイツ軍機がギリシャ輸送の日英輸送船団を空襲し、

 日英航空部隊が迎撃に出撃していた。

 スピットファイア、飛燕 VS メッサーシュミット、フォッケウルフが死闘を繰り広げる。

 ギリシャ上空は、日英 VS 独伊 航空戦の主戦場になっていた。

 そして、膠着していた戦局を大きく変化させることが起きた。

 

 04/02

 トルコがドイツ帝国へ宣戦布告。

 トルコ軍は、ペタン・ヴィシー・フランス領のシリア、レバノンへ侵攻していく。

 そして、ブルガリアとカフカスへも侵攻を開始していく。

 トルコ参戦に合わせて、日本上陸艦隊はボスポラス海峡を突破。

 二手に分かれていく。

 東方に向かった部隊

 空母 加賀、蒼龍、飛龍、

 戦艦 長門、

 巡洋艦

   筑摩、高雄、愛宕、摩耶、鳥海、青葉、衣笠

 駆逐艦

   (浦波、綾波、敷波、朝霧) (天霧、狭霧、夕霧、朧)

   (浦風、磯風、浜風、谷風、野分、嵐、荻風、舞風、秋雲)

 神州丸、1等輸送艦10隻、2等輸送艦20隻、輸送船20隻

 は、グルジアの海岸に向かった。

 黒海に侵攻した日本艦隊はグルジアの海岸に上陸作戦を展開。

 神州丸から30トン級超大発動艇飛び出すと、岸にT34戦車を降ろしていく。

 そして、1000トン級2等輸送艦は直接、海岸に乗り付けてT34戦車を降ろしていく。

 長門 艦橋

 「副砲剥がして、弾薬から燃料まで降ろして紅海を渡ったと思ったら、艦砲射撃とはね」

 「ジブラルタルが占領されましたからね」

 「まぁ どの道、発見されたくないのなら紅海を通るだろう」

 「それで艦砲射撃ばかりだと戦艦が泣くな」

 「ドイツ艦隊もレーニングラードから身動き取れないらしい」

 「陸軍国と戦うと、戦艦は、艦砲射撃になってしまうんだろうな」

 「陸軍相手に410mm砲弾を撃ち込むなんてな・・・」

 バトゥーミ海岸の日本陸軍

 「もっと早く、去年にトルコ参戦していれば・・・」

 「ソビエトがバクーを手放したくなかったのでしょう。最後まで渋ってましたからね」

 「やれやれ、モスクワが落ちそうになってようやくトルコ権益を認めるとはね」

 「土壇場まで、追い詰められないと退けない事ってあるんだな」

 「そろそろ・・・」

 「・・・バトゥーミに航空部隊を配備。地上部隊は、このまま東進し、バクーまで行く」

 「はっ!」

 「日本もヴィシーフランス参戦で、インドシナとか、ニューカレドニアとか、お楽しみがあるんだがな」

 「大和、武蔵でやってくれるのでは?」

 「アメリカが邪魔しなければな」

 「極東支配と中国市場で忙しいと思います」

 「だと良いがな。日本もバルカン・カフカス戦域で戦力を取られているし忙しい」

 「それにニューギニア投資もありますね」

 「そうなるとインドシナ、ニューカレドニアは浪費だな」

 「日本に近いのに・・・」

 バルカン半島で苦戦している日英軍のため、極東経由でソビエトが提供したものだった。

 ドイツ軍は、治安部隊しか配備しておらず、一掃されていく。

 そして、陸上から侵攻したトルコ軍30万がカフカス地方に侵攻。

 日本軍と合流しつつドイツ軍と交戦状態に入る。

 

 

 北上した部隊

 空母 赤城、瑞鶴、翔鶴、

 戦艦 陸奥

 巡洋艦

  利根、(妙高、那智、足柄、羽黒)、(古鷹、加古)

 駆逐艦

  (吹雪、白雪、初雪、叢雲) (東雲、薄雲、白雲、磯波)

   (陽炎、不知火、黒潮、親潮、早潮、夏潮、初風、雪風、天津風、時津風)

 あきつ丸、1等輸送艦10隻、2等輸送艦20隻、輸送船20隻

 はルーマニアの海岸に向かい上陸する。

 コンスタンツァ 海岸

 日本陸軍

 「このまま、西進してブカレストを落とすぞ」

 「はっ!」

 「飛行場を確保して、艦載機を降ろさせろ」

 「はっ!」

 こちらもトルコ軍150万がブルガリアに侵攻。

 ドイツ軍は、少しばかり粘ったものの戦線を維持できず後退し、山岳を盾に戦う。

 

 

 トルコ首都 アンカラ

 「本当に良かったのですか?」

 「ええ、イギリスの言う事は聞きたくありませんでしたら」

 「な、なるほど・・・」

 「ただ・・・」

 「カフカス地方、バクーの優先権は、日英とも支援しますよ」 本音

 トルコの参戦でバルカン半島の日英印軍も総攻撃を開始。

 独伊東欧軍は、総撤退を開始していく。

 

 

 冬季明けの東部戦線

 戦線の後方で日本軍武官たちが双眼鏡を手に戦況を覗き込んでいた。

 日英ソ連合は呉越同舟同盟といえた。

 なので監視しているソビエト将校も用心深い。

 戦況は3倍戦力のソビエト軍がやや押し気味だった。

 シュトルモビク爆撃機の空襲と火力支援がドイツ軍陣地に加えられていく。

 爆炎が正面のドイツ軍陣地に立ち昇り、噴煙が大地を覆う。

 ソビエト最強部隊の督戦隊と囚人部隊の突撃が始まり、

 戦車部隊とドイツ軍陣地を押し破ろうとしていた。

 囚人部隊は、ここぞという攻守時の切り札に使われている分かる。

 日英同盟最大部隊のインド部隊は、防波堤のような使われ方と言えた。

 日本でもT34戦車のライセンス生産の準備が進んでいた。

 とはいえ、日本は資源のない国であり。

 鉄材で換算すると、戦車32t×1両 = 小銃4kg×8000丁。

 人命を考えなくて済むのであればインド兵に小銃を持たせる方が安上がりと気付く。

 「日本も赤紙時代はそうだったっけな・・・いま思うと鬼畜」 ぽつり

 「はい?」

 「ああ、何でもない。戦況はどうです?」

 「ええ、日本製の部品・弾薬のおかげで助かってますよ」

 「それは良かった」

 「問題は北方ですね。輸送船がドイツ軍の戦力を増大させています」

 「爆撃しないので?」

 「対艦攻撃は苦手なのです」

 「なるほど」

 日本は、何の利益もないのにソビエトを助けたりはしない。

 北樺太の購入代金、

 そして、シベリアの利権が絡んでいた。

 「やはりフィンランドが兵站になるとドイツ軍の増強も大きいでしょう」

 「ええ、日英同盟で、バルカン半島にもっと攻勢をかけてもらわないと・・・」

 「夏の間は、インド兵でも良いのです」

 「しかし、冬季になると北部出身のインド兵と入れ替えなければなりません」

 「どちらにしろ、進撃は困難ですし、夏季限定の侵攻です」

 「期待していますよ」

 

 

 バルカン・カフカス戦線。

 トルコ・日本・イギリス・インド軍の侵攻

 日本師団は、イギリス戦車か、ソビエト軍戦車を使っていた。

 巡航戦車クロムウェル(27.5トン、40口径75mm砲)

 歩兵戦車チャーチル(38.5トン、50口径57mm砲)

 今村均 将軍がクロムウェル戦車の上に乗っている。

 「どうやらソフィアは、落ちたな」

 「はい、あとは、掃討戦に入ります」

 「問題は、インド軍か・・・」

 「数が多いですからね。ブルガリア人との衝突は必至」

 「あとトルコ軍との兼ね合いもありますし」

 「バルカン半島の火薬庫に火がつかなければ良いが・・・」

 バルカン戦線の戦場は、日本陸軍を変質させていた。

 将校服と兵士の服がほぼ変わらなくなり、

 敬礼も簡略化される。

 長々と敬礼する兵士は、上官殺しを意図していると殴られたり、

 ドイツ軍の狙撃兵は、それほど恐れられた。

 もっとも、日本軍の狙撃兵もドイツ軍将校を震え上がらせており、

 お互い様だったと言える、

 

 04/28

 ブルガリア降伏。

 

 

  05/01

  ロンドンで、英連邦諸国会議が開催される。

 「豪州がニューカレドニア、日本がインドシナという事で・・・」

 「まぁ 妥当な配分でしょうが、それ以外のヴィシーフランス領は?」

 「自由フランスとの兼ね合いもありますし・・・」

 「バルカン半島戦に集中したいので、それは、戦後という事に・・・」

 「インド洋と太平洋は、日本に優先権が欲しいですな」

 「そ、それは・・・しかし、戦力の分散は困ります」

 「わかっていますよ」

 日英ソ土同盟条約が調印。

 カフカスのバクー油田。(日本、トルコ、カフカス、ソビエト、イギリス 1/5) 50年

 バルカン半島の鉱物・油田資源。(日本、イギリス、トルコ、バルカン 1/4) 50年

 トルコ(シリア、レバノン) 領有

 これは、暫定的な戦利品の取り決めであり決定ではなかった。

 しかし、これを決めないと戦意が保てないというものだった。

 

 

 日本・トルコ軍はドイツ軍を撃退して、バクー油田を制圧する。

 ドイツ軍は、東部戦線に戦力のほとんどを張り付けなければならなず。

 治安維持以上の部隊をグルジア・アゼルバイジャンに配備できなかった。

 そして、カフカス山脈は、ドイツ軍の侵攻を食い止められるだけの要害だった。

 日本軍がバクーを制圧。

 「まさかこんな場所で日本陸軍が戦わされるとはな」

 「栗林中将。バクーを占領すればソビエトから1000億だそうです」

 「ソビエトもあっさり占領できて良かったのでは?」

 「どうでしょう。まさかのトルコ参戦ですし、そのままトルコが占領するのでは?」

 「そうなったら、トルコから1000億貰う事になるのかな」

 「その辺は政府がやっているのでは?」

 「スペイン参戦でイギリスの支援が断たれて、日本軍の足場はトルコしかない」

 「バルカン半島もカフカス戦域も日本軍が主力になるよりないか」

 「豪州軍・インド(ダリット)軍は頼りになりますよ。トルコ軍も悪くありません」

 「まぁ バルカン半島の今村中将には負けたくないものだ」

 「対独戦に限れば、今村中将の方が戦功で優位では?」

 「まぁな。しかし、陸軍も肩身が狭くなったモノだ」

 「そういえば、陸軍は海衛軍か、海士軍に改称する噂がありますよ」

 「くっそぉ〜 海軍め、陸軍の伝統を潰す気だな」

 「邪馬陸軍局長のおかげでとんでもないことになりましたね」

 「ちっ あの恥っ晒しバカ女が!」

 「結構、外国で人気があるみたいですよ」

 「あれだけ弱腰なら鴨ネギで好かれるわい」

 「この戦いで戦功を上げるしかないですかね」

 「ふん、強面を外地に出して、内地で好き勝手やってるに決まっとる」

 

 

 

 05/02

 ロンドンで日英財政協定が調印される。

 

 フランス艦隊が通商破壊作戦で大西洋へと出撃する。

 戦艦ストラスブール、ダンケルク

 重巡コルベール、フォッシュ、デュプレ、アルジェリー

 軽巡ラ・ガリソニエール、ジャン・ド・ヴィエンヌ、マルセイエーズ

 水上機母艦コマンダン・テスト

 戦艦2隻、重巡4隻、軽巡3隻、水上機母艦1隻がジブラルタルに配備され、

 戦艦 ストラスブール 艦橋

 「去年のギリシャ上陸作戦後ならともかく、何で今頃になって・・・」

 「スペイン参戦でしょうがなくじゃないか」

 「だがトルコ参戦で微妙になった」

 「地中海に攻撃掛けた方が良くないか」

 「ギリシャ・クレタの日本の航空戦力に近付かない方が良い」

 「イタリア海軍は、日本水雷戦隊が怖いのだろう」

 「あれこれ、言い訳しながら、結局出撃しないモノな」

 「ヴィシー・フランスもペタンが、ドゴールを排斥するために宣戦布告したようなものだ」

 「のらりくらりやるさ、イギリスが勝っても、ドイツが勝っても良いことはない」

 ヴィシー・フランス艦隊が通商破壊を開始。

 

 

  05/06

  ガンジーが22ヵ月ぶりに釈放される。

 

 日本軍の電撃作戦によりブカレスト陥落

 

 日本上陸部隊とバルカン半島から北上した日英印土軍が合流。

 

 白人世界の原初的文明は、イタリアとギリシャから来ていた。

 もう一つ加えると、パレスチナのイスラエル、エジプト。

 イギリス本土は窮地に陥っており、

 白人世界の源流のギリシャ、イタリアを尊重する余裕もない。

 “どうにでもなれ” という気になっていた。

 日英同盟は、イタリアに降伏を勧告する。

 “いう事を聞かないと酷いぞ” ということである。

 もっとも、降伏するとドイツが怖いため、イタリアも降伏するとも言えない。

 そして、理解して上げたくても許し難い事は、良くある事で・・・

 

 

 バルカン半島

 バルカン山脈、ディナラ山脈、ロドピ山脈、ピンドス山脈

 この4つの山脈が赤く染まり、血溜まり山脈と呼ばれる。

 山脈全体に腐敗臭が籠もり、ガソリンを撒いて燃やすと異臭が漂う。

 先に遺体を片付けた軍団が前進できた。

 そして、人海戦術で遺体を片付けられる日英軍は前進。

 バルカン半島の山脈を次々と支配する。

 硝煙と臭気の漂う血塗られた大地を一匹の蝶が飛び回る。

 そして、温存していた日英の機甲師団がバルカン半島に集結しつつあった。

 06/06

 バルカン半島の日英印土軍がハンガリーに対し総攻撃を開始する。

 日英印土連合軍の当面の目標は、ドナウ川とトランシルバニア山脈に到達することだった。

 二種類の機関銃の射線がハンガリー(パンノニア)大平原を這うように交差する。

    銃身長/全長 重量 装弾 発射速度 初速 有効射程
イギリスのヴィッカース重機関銃 7.7mm×56R 720/1100 33〜50 250発 450〜600発/分   740m
ドイツ軍のMG42機関銃。 7.92mm×57 533/1220 11.6 ベルト式 1200〜1500発/分 884m/4 1000m

 機関銃は、敵軍の足を止める戦略兵器であり、

 戦車を生みださずにはいられなかった元凶といえた。

 そして、戦場で戦車に出会う機会は少なく、

 圧倒的に機関銃に出会いやすい。

 日本軍

 「山岳を降りたと思ったら、すぐに反撃してくるな」

 「少尉。峯の向こう側にドイツ軍戦車が来ているそうです」

 「戦車が迫ってきたら山に後退するぞ。良く見張れよ」

 「戦わないので?」

 「まさか、東部戦線の武官から報告を受けてる。ドイツ機甲師団と正面から戦うなとな」

 「それじゃ勝てないでしょう」

 「なんとか、ベオグラードを落としてドナウ川まで到達できれば、一息つけるんだがな・・・」

 「インド軍への補給が難しくなっているのでは?」

 「それが一番の悩みどころだ。インド人とユーゴ人との確執も悪化してるし・・・」

 「トルコの兵站がなければ、ここまで来ることさえできなかった」

 スペイン参戦が独伊同盟にとっての転機であり、

 トルコ参戦は日英ソ連合にとっての転機だった。

 スペイン参戦で独伊東欧西同盟傾いた天秤は、トルコ参戦で水平に戻り始める。

 そして、深夜のバルカン戦線。

 ドイツ軍部隊は、日英印軍を山岳側まで押し返していた。

 山岳戦は、戦車戦術が使いにくく、インド軍の人海戦術に押される、

 しかし、平原は、戦車機動戦術で圧倒することができ、

 隙間なくMG42機関銃を並べることができれば、負けないと思われた。

 日が沈み、ドイツ軍が夜営を始めようとしたとき・・・

 インド軍陣地から立ち昇る煙幕が大地を覆い始める。

 ドイツ軍将兵は、緊張しながらも機関銃や小銃を山岳側に向ける。

 夜の煙幕で視界が利かなければ、数の多いインド軍が優位だった。

 ドイツ軍は目を凝らし、耳を聞きたてたとき、

 火力支援の砲撃が始まり、

 まったく聞いたことのない爆音が山脈側から迫ってくる。

 ハンガリー側陣営のドイツ軍は、恐怖のあまりMG42機関銃を乱射。

 それは、直径3mにも及ぶ車輪であり、時速100kmで迫り、

 あっという間にドイツ軍陣地に達し塹壕を一気に駆け抜け。

 鉄条網を爆破し、地雷を爆破し、

 さらに後方の塹壕を飛び越え、ドイツ軍将兵のそばで爆発する。

 その後、インド軍の浸透戦術が始まるとドイツ軍陣地は大混乱に陥る。

 そして、統制を失ったドイツ軍陣地に対し、日英機甲師団が戦線を突破、

 さらに後続の印土軍がハンガリーに侵入する。

 パンジャンドラムと呼ばれた新兵器がハンガリー大平原で大量使用された、

 インド軍の浸透戦術は成功率が高まっていく、

 日英同盟軍は、平地戦の糸口を掴むこととなった。

 

 

 ベルリン

 ドイツ軍将校が焦っていた。

 「スペインに兵装と武器弾薬を供給したせいで、バルカン半島の反攻作戦が遅れている」

 「スペインは、アメリカから武器弾薬を供給されていたはず」

 「M4戦車3000両とP40ウォーホーク3000機は大きいがね。転換訓練はこれからだよ」

 「だいたい、スペイン軍は兵站とか訓練課程に問題ありで侵攻に向かない」

 「まぁ アメリカが欧州を混乱させたがってるのが良く分かるね」

 「現状だと東部戦線を後退させないと。全体の戦線が不利です」

 「日英軍が黒海のオデッサに上陸されると事では?」

 「トルコの勢力拡大は、ソビエトが許さないだろう。イギリスもだ」

 「それに日英同盟は、それほど多くの中核師団を持っていないはず」

 「ですがバルカン・カフカス戦線の主導権を握っているのは日本では?」

 「黄色い猿が生意気な・・・」

 「バルカン半島・カフカス戦域に日本の総陸軍戦力の8割が集まっているそうだ」

 「日本がバルカン・カフカスに全軍を動かすとは思いませんでした」

 「小心者だと思っていたが日本本土を裸にできるほど心臓が強いとはな」

 「アメリカが対日作戦を行わないと確固たる自信があったのでしょうか?」

 「アメリカは、議会の承認がないと戦争が出来ない国だ」

 「アメリカも対中国政策で日本の支持が欲しいのでは?」

 「確かに中国市場は魅力的だよ」

 「そういえば、資源がないな・・・」

 「問題は、煙幕とパンジャンドラムか、浸透作戦に、あんな物が使われるとな」

 「無人で無線操作なのか?」

 「車輪内部の爆薬が炸裂しているので、まだ詳しい事は・・・」

 「分かっているのでは、ロケットモーターで車輪を回転させている」

 「時速100kmで戦線を突破して爆発する」

 「海岸や段差の多い地形ならともかく、ハンガリー平原は、まずいな」

 「しかし、煙幕を使っているのによく、突撃させられるものだ」

 「昼間のうちに地形を覚えておくのだろう」

 「なるべく平坦な方向に押しやればいいだけの兵器じゃないか」

 「安直の割に手古摺らされる・・・」

 「スペインに渡した武器弾薬が惜しい・・・」

ドイツ軍 IV号戦車H型 後期生産型 (1943年4月〜1944年2月)

 

 

  06/13

  ドイツがV1ロケットの発射を開始する。

 

 06/17

 アイスランド共和国独立。

 

 06/18

 アメリカ特使ウォーレスが国共調停のため中国に到着する。

 「朝鮮人の動きがきな臭いというのに、今度は、中国とはな」

 「朝鮮人があんなに厄介だとは思いませんでしたよ」

 「あっちも、こっちも暴動で騒ぐし、圧倒すると泣きじゃくるし、まるで駄々っ子だ」

 「このままだとアメリカが悪者ですかね」

 「日本は、協力してくれるそうですよ」

 「ふん! どうせ、アメリカに恩を着せて他で勢力拡大に決まってる」

 「ヴィシーフランスが参戦した場合、インドシナに進駐するのでは?」

 「日本に、それだけの兵力があるかな」

 「まぁ アメリカばかりがアジア進出だと目立ってしょうがない」

 「日本がインドシナで下手してくれれば丁度良いだろう」

 「日本に片棒担がせて、アメリカの平和主義者の矛先も変えられるでしょう」

 「それどころか、日本単独ならベトナムで泥沼という事もある」

 「そうですね」 にやり

 「問題は、日本の怪しい現象だな」

 「存在していないはずのモノが存在し、知られていないはずのモノが知られてます」

 「ありえんな。物理的法則を無視している」

 「諜報員が集めた情報を総合すると、魔法としか・・・」

 「種も仕掛けも見つけられないのなら、魔法のような現象だな」

 

 

 06/23

 スペインが同盟側で参戦するとイギリスの海洋輸送はさらに制限され、

 バルカン半島の航空戦力は日本製機体が増えてしまう。

  hp 自重/全備重 燃料・弾薬 全長×全幅×全高 翼面積 速度 航続距離 武装
ゼロ戦62型 1500 2600/3400kg 700kg 9.06×11.0×3.5 22.44 614km/h 700km (20mm×110)×2

 

  hp 自重 燃料・弾薬 全長×全幅×全高 翼面積 速度 航続距離 武装
飛燕 1445 2855/3825kg 970kg 9.15×12×3.75 20 640km/h 1600 (20mm×110)×2
(7.7mm×56R)×2
鷹虎 2050 4000/5100kg 1100kg 11.03×13.5×4.25 28 690km/h 1200 (20mm×110)×4

 

  hp 自重 燃料・弾薬 全長×全幅×全高 翼面積 速度 航続距離 武装
烈風 2420 3200/5000kg 1800kg 10.99×14.0×4.23 31.3 680km/h 1800 (20mm×110)×4

 テサロニケ

 港まで物資を運んでもそれ以降は、鉄道に頼らざるを得なかった。

 そして、インド軍によってテッサロニキから前線まで鉄道が施設されていた。

 日英空軍共同の飛行場

 穴だらけの烈風が不時着し、パイロットが救出される。

 「まずい・・・」

 「日本でエンジンのライセンス生産をしていなかったらヤバかったな」

 「怖いからエンジン以外にしてくれとか、イギリスに言われてましたけどね」

 「ドイツ空軍は、冬季明けになったら東部戦線に行くはずだろう?」

 「行かなかったんじゃないの?」

 「ぅぅ・・・こっちは、空母で空輸か輸送船で運んで組み立てなければならないんだぞ」

 「まずい・・・」

 パイロットを救出した整備士が走ってくる。

 「大佐! 敵機は、Me262だったそうです」

 「・・・絶対に勝てんわ」 よろ〜

 「バルカン半島は、ただでさえ、民族問題で内紛状態だというのに」

 「ドイツ軍からの解放軍がインド軍やトルコ軍じゃな〜 どっちがいいんだか」

 バクーの油田で燃料はあった。

 しかし、肝心の戦闘車両の生産と輸送が遅れ気味であり。

 インド軍抜きのバルカン攻防戦は考えられなかった。

 「採算で言うと、この辺で潮どきなんだけどな」

 「イギリスもソビエトも意固地になっているからな」

 「ドイツもじゃないの、いい加減に停戦すりゃいいのに」

 「イギリスは北大西洋で、孤立させられて収まりがつかないし」

 「ソビエトは、ウクライナ、白ロシアを取られて、引き込みがつかない」

 「ドイツは、バルカン半島に食い込まれて面白くないのかも」

 「もう妥協してくれよ。泣きたくなってきた」

 「イタリアも止めたいはずだけどな」

 「とりあえず。借款を返済して、日本は退きたいよ」

 「いまさら、それは不味いだろう」

 「いかにもお金のために戦争しましただからな、いや、そうだけどね」

 

 

 

 紀伊半島開発

 山岳地帯で開発の進まない紀伊半島の調査が行われていた。

 国内で資源が発見されれば、それだけでも国益に繋がる。

 赤レンガの住人たちの出張

 「青い鳥は埋まってたか?」

 「まぁ 多くはないがね。期待したほどじゃないが悪くない程度だ」

 「こっちは、軍部の強硬派が減って助かったよ」

 「朝鮮半島を失ったら日本は、お終いだなんて馬鹿どもが減れば清々するがね」

 「思い通りにならないと、日本は占領されるとか、赤化されるとか、逆切れ脅迫するし・・・」

 「ふっ、方便を真に受ける馬鹿が多くて困るよ」

 「あの頃は、半島権益しか、しがみ付くモノがなかったからね」

 日本経済は、急速に回復していた。

 京都 桜井市

 「みんな御苦労、今日は、ここで泊ることにする。夜勤の者たちに杖を渡してくれ」

 4人でやると効率が倍ほど良いため、時折、集まって行動する。

 「「「「は〜い」」」」

 交代要員の魔法使いたちに杖を渡した。

 能力で言うと3分の2以下で、4人の地位は、いまのところ安泰だった。

 「また寂しい旅館だな」 不知火

 「最近、諜報関係の人間が嗅ぎまわっていて、大変なんだって」 水無月

 「おれと交替した火乃宮は、工作員の書類を燃やしたりとか、やってるらしいよ」

 「火系統の魔法って、最強なのに発揮できないのが辛いよ」

 「やってるぞ、会社休業させて溶接とか “妖精と靴屋” じゃねぇっていうの」

 「やっぱり、鉄の強度が増してしまうの?」

 「土系統とやると、はっきりするよね」

 「うん、材料さえあればね」 野伏裏

 「最近は工作機械だけじゃなく、エンジンも多いよ。オイル漏れもしないし、音が全然違うから」

 「一度、面倒だから繋ぎ目無しでくっ付けたら慌てられたっけ」

 京都 箸墓(はしはか)古墳

 魔法が使えると、徐々に魔力的な感覚が磨かれてくる。

 そして、夢と分かる夢を見る。

 大むかしの世界、男、妻、妾の話し。

 友情、信頼、愛、嘘、裏切り、葛藤、強姦、殺意・・・

 物語を構成する黄金律があり、一人の女性が見事に経てしまう、

 幸運にも毒を盛られなかった妾は、ボロボロにされ、

 小さな船で国から追放されていく。

 生まれ育った世界を見つめる目に憎しみが籠もる。

 「・・・許すものか、この国を許すものか」

 「いつか、いつか。わたしの子孫が、この国を滅ぼし、根絶やしにしてやるニダ」

 4人が目を覚ます。

 「ったくぅ〜 またかよ」

 「ねむぅ」

 「最近、地脈に近付くとこういうのばっかり」

 「半島の人間って、自己中過ぎ」

 「どうしろっていうの?」

 「地鎮祭とか?」

 「そんなの、とうにやってるはず」

 「効いてないじゃね」

 「おれ、一抜け・・zzz」 帆乃風

 「風系統の仕事じゃねぇの?」 不知火

 「護摩は火系統だろう」

 「地鎮祭は土系」 水無月

 「そんなぁ」

 「じゃ 仕事量の少ない火系で・・・zzz」

 「俺かよ!」

 霊の鎮め方など分からない魔法使いたちがいた。

 

 

  07/07

  ド・ゴールが訪米し、ルーズベルトと会談する。

 

  07/20

  ドイツ陸軍の一部によるヒトラーの暗殺未遂事件が起る。

 

 07/25

 日英中東石油協定調印。

 日本軍の戦績の代償を求められたイギリスは、植民地権益を分けることで応じる。

 植民地維持費を日本軍に分担させるという腹黒い手法だった。

 

 製鉄所

 帆乃風、不知火、野伏裏、水無月

 4人の魔法使いは、チタン精製をしていた。

 同じ装甲を45パーセント軽減させられると分かれば、国防省も力を入れる。

 4000トン級塞凰が同じ防御力で1800トン級になるのなら積載量は2700トンになった。

 艦体そのものをもっと大型にすることもできた。

 「温存する航空装甲艦を改装するなんて無駄じゃないかな」

 「1隻でアメリカ機動部隊を壊滅させられるらしいよ」

 「本当かな?」

 「さぁ」

 「いつまでかかるやら」

 「取り敢えず、1ヵ月だから24時間の30日で720時間の4人だから2880時間だ」

 「3分の1もいかねぇ」

 「どうせなら潜水艦を造ればいいのに」

 「そりゃそうだ」

 

 

 太平洋 高度10000m。

 この上空まで飛べる航空機はほとんどなく。

 この高度から爆弾を投下して命中させられる航空機は存在しない。

航空装甲艦 塞凰(塞凰)
重量(t) 全長×全幅×全高 主翼幅 装甲 火星1870hp 25mm連装砲 速度 レーダー
4000/5000 140m×20m×5m 40m 40mm 8基 4基 500km/h 4基
80mm 4基

 「ほ、帆乃風君。大丈夫かね」

 雲の下は、ほとんど見えず、

 魔法使いは、集中していた。

 「・・・ええ、速度そのまま、もう少し、右へ」

 「・・・・投下!」

 帆乃風の声とともに塞凰から爆弾が投下される。

 魔法使いは爆弾を軌道修正させながら、標的へと向かわせ・・・・

 「・・・艦長! 命中。直撃したそうです!」 通信士

 どよめきが走る。

 

 科学者たちが電子顕微鏡で魔法使いと杖と飛行石を調べていた。

 「んん・・・魔法使いとそうでない人間との差がわからんのだが・・・」

 「ドイツ製の電子顕微鏡がないと何も出来んな」

 「ドイツ製電子顕微鏡でもわからんね」

 「だいたい、魔法がなぜ使えるのか、疑問だね」

 「物理学とか、熱力学を逸脱してないか?」

 「限界があるようだけど、関連性とか、法則不明だよ」

 「プラズマとは?」

 「関連性があるというだけだよ」

 「関連性か・・・」

 「気の強い修道者の様な人間と魔法が相克関係にあるのは納得しがたい」

 「修道者が似非モノなんじゃないの?」

 「それないだろう。我々の目の前で紙で鉛筆を削ったぞ」

 「元々の資質に問題があるのでは?」

 「皆目わからんね」 お手上げ

 

 08/02

 日・トルコ軍がバクー占領、カフカス山脈戦線を構築する。

 

 

 08/21

 日本

 陸軍が出払った後備戦力として、海衛軍18個旅団が編成される。

 国防省

 「陸軍の政治色を消してやる」

 「戻ってきたら、怒るんじゃないですか?」

 「老後分の戦果は上げているから大丈夫だろう」

 「でも、軍事クーデターが怖くて退役出来ない部分もありますしね」

 「あいつならやりかねない将校が多過ぎるから、軍国主義の空気を変えないとな」

 「将兵を増強すると、またむかしに戻りそうで怖いですよ」

 「しかし、ドイツ軍が東部戦線を後退させたらバルカン方面の戦力が増える」

 「日本軍は皆殺しに遭いそうだな」

 「ドイツ軍が後退すれば、ソビエト軍と合流できるだろう」

 「あまりソビエトを信用しない方がいいかと」

 「まぁ 山岳に隠れている間は良いですがね」

 「平地に降りるとパンジャンドラムはいいとして、インド軍の人海戦術任せだからな」

 「それより、戦争が終わったら、今度は、余剰師団を解体するだろうな」

 「日露戦争後みたいにグダグダはいやだぞ」

 「海軍はおもちゃがあればいいとして、いい加減、軍国主義は怖過ぎる」

 「カフカスでトルコとソビエトが拗れなければ良いのですが」

 「まぁ 当面は対独戦で戦うだろう」

 「だといいのですが」

 「いくら借款返済がかかっていても、イギリス、トルコと心中するつもりはないよ」

 

 

 日本の漁船が霧の中を進む。

 「こんなんで大金がもらえるなんて、嬉しいねぇ」

 「なんか、売国っぽくないですか」

 「ばかいうな、事故なんだから、黙っていればわからん」

 霧の中、巨大な物体が現れ、漁船が衝突する。

 

 

 東京

 日本・イギリス・ソビエト・トルコ会議

 日本は、戦時と思えないほど活気があり、物が溢れていた。

 日本は、軍需産業、民需産業ともフル回転で操業しており、

 危険を冒して戦争するより、公共事業の雇用は大きく安定収入が好まれる。

 補充兵は得られにくくになり、

 刑務所に入っていたような人間ばかりが志願兵として訓練されていく。

 各国代表は、日本が戦争需要に頼っていないと肌で感じていた。

 そして、一波乱起きる。

 “代表、アメリカの戦艦です”

 会場のあちらこちらで秘書が耳元で囁き始める。

 会場はたちまち浮足立ち、

 代表たちは、外を見ると二つの巨大な鋼の塊が東京湾に浮いていた。

 「なんで、アメリカの戦艦が今日、ここに来るのだ?」

 「さぁ・・・事前に聞いていませんでした」

 戦艦の無言の砲艦外交は本物であり、示威による影響は大きかった。

 東京湾

 港湾係員は、ひっきりなしに無線機で船舶を誘導していた。

 百数十隻の船舶がひしめき、

 その中で、一際、高圧的な戦艦アイオワ、ニュージャージーが来航していた。

 この日の東京は、日英ソ土同盟会議中であり、

 アメリカは砲艦外交で日本に圧力をかけるつもりだったらしく・・・

 アイオワ 艦橋

 「漁船の者たちは?」

 「降りて行きました」

 「そうか・・・日本政府は、畝傍の調査を頑として断るらしい」

 「ロイド保険に渡れば、後はこっちのものなんですがね」

 「日本は、物価に合わせた時価で保険金を返還するそうだ」

 「ふっ バカが金が欲しいわけなものか?」

 「逆にそこまで引き渡したくないという事は、それだけ怪しいと言えます」

 「しかし、日本海軍は、主要艦船を欧州戦線に投入しているはず」

 「日本人の豪胆さは、どこから来ているのだろうな」

 「ですが聞いていたより・・・ガントリークレーンの数も増えてますね」

 「あ・・・」

 「日本は随分と発展していますよ」

 「内需と外需とも絶好調で、土木建設は常軌を逸するほど進んでいるそうだ」

 「・・・か、提督・・・」

 東京湾に巨大戦艦が二隻現れる。

 そして、ゆっくりとアイオワ、ニュージャージーの横に停泊する。

 「・・・ば、馬鹿な。何と言う巨大な戦艦だ」

 「・・・モンスターの噂は本当だったようですね」

 「明らかに我々の主砲より大きいぞ」

 「て、提督、お客さまです」

 艦橋に日本の政府関係者が上がってくる。

 「これはリー提督。吉田と言います」

 「日本外務省は、漁船の衝突のお詫びと漁民救助のお礼を申し上げたいと」

 「い、いや、大したことはない、当然のことをしたまで・・・」

 「しかし、日本の戦艦は、随分大きいですな。驚きましたよ」

 「前が大和。後ろが武蔵です」

 「たくさん建造できないので、2隻だけ建造しました。金食い虫で困ってますよ」

 「なるほど・・・」

 「時に・・・リー提督。このような、写真を入手したのですが・・・」

 吉田から写真が手渡される。

 「「「・・・!?・・・」」」

 「大統領に確認を取っていただきませんか?」

 アメリカ商船がUボートに洋上補給している写真だった。

 「こ、これは・・・」

 「インド洋上で我が国の潜水艦が、たまたま撮影したものです」

 「我が国としては、アメリカ合衆国と良好な関係を続けていたいと思っていますし」

 「たぶん、何かの間違いかと思いますが・・・」

 「「「・・・・」」」

 「大統領への不意打ちでなく、先にあなた方に見せた」

 「これは、日本政府の友情の印しと思って頂きたいですな」 にや〜

 「「「・・・・」」」

 アイオワ、ニュージャージーは、大和、武蔵と並ばされると巡洋艦のように縮こまるしかなく。

 伊号潜水艦2隻が浮上し、

 日の丸を付けたランカスター爆撃機の編隊がとどめとばかり上空を通過していく。

 そして、それを見ていたイギリス、ソビエト、トルコの代表たちが小躍りして喜ぶ。

 日本・イギリス・ソビエト・トルコ会議。

 「取り敢えず、原案通りの権益率でいいとして・・・」

 「・・・バクーを最初に陥落したのは日本なのだから日本が管理すべきだ」 ソビエト代表

 『はぁ このバカタレが詰まらん事を・・・』 日本代表

 「「・・・・・」」 しーん

 『いぃ〜』

 「ブルガリア、ギリシャ、ルーマニア・ユーゴも日本が中心に戦後処理すべきでしょう」 イギリス

 『はぁ?』

 「「・・・・・」」 しーん

 『いぃ〜!』

 イギリス、ソビエト、トルコは、バルカン半島・カフカス域の面倒な管理を日本に任せ、

 配当だけ受け取る方式を検討していた。

 そして、トルコとギリシャの線引きも行われる。

 英ソとってトルコは、日本に次ぐ同盟国だった。

 余り無下にできず、それでいて力を付けさせるのも好まない。

 そして、トルコ・ギリシャの係争地になりそうなのがドデカニソス諸島 (総面積2663ku) もあり、

 ロードス島、コス島、カルパトス島、カリムノス島。

 レロス島、ニシロス島、パトモス島、カステロリゾン島、

 アスティパレア島、カソス島、カルキ島、ティロス島、リプソス島など50の島々。

 インド軍5万が上陸し、イタリア軍が弾薬を全て撃ち尽くして降伏した島だった。

 イタリア人、ギリシャ人、トルコ人混在の島にインド軍がいた。

 そして、キプロス(面積9251ku)も係争地になりそうであり、

 無難な日本に管理させる方向に進んでいく。

 日英ソ土同盟会議は支障なく終わり、

 戦艦アイオワ、ニュージャージーは予定より数時間早く、東京湾を離脱していく。

 

 

 対馬丸がUボートの魚雷攻撃を受けて沈没。

 

 8/24

 日英印土連合がルーマニア山岳部に侵攻。

 

 08/25

 森雄御堂(40)は、己が生まれ入出た心身以外に価値を見出さず。

 貪欲に精神修養に励み、自己鍛錬を怠らない人間だった。

 体と心を鍛え続けた森雄は、あらゆる武道に通じ。

 中国の体表面を流れる経絡秘孔を流れる気。

 そして、インドの体中を貫く7つのチャクラの二つを知覚する。

 また、自律神経も意識下で制御できた。

 そんなやつは、万に一人もいなかった、

 なので、森雄は、対人関係をに気を使わない社会性欠落人間であり。

 そうであるからこそ、強い “力” を持つようになったと言える。

 他人が客観的に森雄を評価すると当然、非社会人だった。

 しかし、森雄が主観的に他者を評価すると愚かモノの集団に見えてしまうのも事実だった。

 なぜなら、他者は、己の心身の可能性を磨くことなく曇らせているからである。

 これは、大乗仏教と小乗仏教の考え方の差でもある。

 その森雄が軍に発掘され、風系統の杖を握る。

 「んん・・・この杖に何か大切なモノが抜き取られそうな感じだな」

 「“気” では?」

 「もっと大切なモノだ」

 「それは、どういったもので?」

 「・・・命・・・のようなモノかな」

 「まさか」

 「修業している者が魔法を使えないのも頷ける」

 「ではあの子たちは・・・」

 「魔法の資質があっても無防備なのだろう・・・いや・・・」

 「・・・むしろ・・・保身が弱いからこそ、命を削ぐ魔法が使えるのだろうな」

 「しかし、森雄。彼らを見ると元気そうに思えるのですが」

 「理屈が分かれば、わたしも武道家。使えますよ。自分の寿命を削ってね」

 森雄がそういうと風系統の杖を振り、塞凰を加速させていく。

 「魔法の言葉は?」

 「体の延長のようなものです。調子を合わせるだけなのでコツが分かれば不要です」

 「んん・・・」

 「艦長・・・速度・・・時速670です」

 「・・・このくらいにしましょう。自分の寿命を削ってまで魔法を使いたくない」

 「そ、そんな、じゃ・・子供たちは・・・」

 「バランスよく分担させるべきでしょうね。ここままだと、真っ先に彼らが死にますよ」

 「こ、このことは、内密に・・・」

 「ええ、わかっています」

 「汎用性の高い杖より、単機能の飛行石が良いように思います」

 森雄は、飛行石を弄ぶ。

 「森雄。どういう形で命が削られるのかね」

 「人が生きる時間が削られるような感じですかね。100年から時間が削れていく」

 「日本人で100年も生きられる奴なんてほとんどいない」

 「可能性が削られていく、ですかね」

 「どの程度の魔力で、どの程度の命が削られるか分かるかね?」

 「わからない・・・しかし、あの4人は、やめた方が良い」

 「我々が生活保障すれば、その分、長寿になるのでは?」

 「それに体を鍛えるべきでしょう。これは私がやっても良いでしょう」

 「殊勝だな」

 「心身を鍛えればそれだけ魔力も強くなるはず」

 「審査年齢をもっと落として、幼少から鍛えれば即戦力でしょうな」

 「な、なるほど・・・」

 「どちらにしろ、保身の弱い人間など、ほとんどいない」

 「魔法使いたちは、保身のため他人を殺す、あなたたちと逆の人種といえますね」

 「そうか・・・まぁ 我々は、人の時間を奪う。しかし、命を削るのは本意でない」

 国家のためなら人の命などどうでも良い。

 しかし、人でなしに人は付いて来ない。

 公然と本音が言えるわけもなく、建前が本音に勝つこともあった。

 また魔法の杖を使っていた者が先に死んでいけば魔法使いのなり手もいなくなる。

 人心掌握術や組織論を踏み外せば組織が崩壊し、軍隊でさえ、バラバラとなる。

 この種の技巧は善悪に関係なく、組織が大きくなるほど重要性が増していく。

 

 

 09/02

 ロンドン テムズ川上流。

 廃墟のジャパン・ウォーターフロント(仮)

 破壊された家屋もあれば、破壊されていない家屋もあった。

 日本人町の青写真は、日本文化・庭園の影響を受けたモノになりそうだった。

 元々、イギリスの庭園は、フランスの平面幾何学式庭園と違い風景式庭園だった。

 遠方の風景を取り込みながら調和させていく。

 日本式は、対称性(たいしょうせい)シンメトリーが少なく。

 小さな箱庭に調和を造り、小宇宙的に完成させる。

 庭園は、人を和ませ敵対心を削がせる役割があり。

 イギリス人の黄色人種に対する差別の軽減に一役買えれば大きい。

 元々、保身と権益拡大のための人種差別であり、

 差別したいため、差別しているのではないといえる。

 どの道、日本人は想像力で劣り、技術者、工員、技能者も少ない。

 日本の工業製品は、軍需関連が強いだけであり、

 それでさえ、心臓部は、模倣と改良ばかりで組み立てか、下請けに近い。

 工程管理もいい加減で人件費が安いだけの安かろう悪かろうだった。

 ロンドンに良地を得ても販売店か、日本食、伝統工芸品店しか目星がつかない。

 国際競争力が育つまで数十年欲しかった。

 トルコ産業を助けることで得られる利権より国内産業投資に優先したい気もする。

 ところが投資する金がなかった。

 参戦と同時に金本位制を廃止。

 管理通貨制度に移行したとしても貨幣価値を維持するための保障は必要だった。

 その紙幣を紙屑にさせないための保障が利権だった。

 トルコの資源は、石炭、鉄鉱石、クロムがあり製鉄業が可能だった。

 そして、トルコにとって、日本本土は遠く、

 イギリスやソビエトに利権を渡すより安全であり。

 製鉄技術と交換で、いくつかの利権を日本に引き渡し始めていた。

 とはいえ、日本は、元々、経済基盤が貧弱であり技術力も低かった。

 貧富の格差を広げて近代化したくてもできず、

 ムラ社会の妬みも大きかった。

 そして、こういう外地は誘惑も大きい。

 日本は、他国と比べ、不正腐敗の度合いが小さいとはいえ不和も存在する、

 内憂(国内派閥抗争)で優位になるため、外患(外国勢力)を利用したくなる、

 一種の売国行為であり。

 家で言うと妻が間男を引き入れて夫を殺害。家を乗っ取るのに近い。

 滅多に起こることでないが国際外交は誘惑を受ける。

 その気になれば、私腹を肥やして母国に損をさせる事も出来た。

 監査役を増やしても膠着し、柔軟性を失う。

 関係者が増えれば、民間人の愛国心も試される、

 シーメンス事件の例もあり、日本人も口で言うほど高潔でないのが問題だった。

 メアリがマイセンの器に午後の軽食を運んでくる。

 イギリス人と組み仕事をすれば、彼らがどこまで信用できるかも重要になった。

 秘密を共有できるほど信用できるなら重責を与え給料も増える。

 それは、祖国に対する裏切りにも近付く。

 信用できないのなら労働者にしかならない。

 それは、彼らが祖国を愛している事になる。

 無論、共通の敵を作り、利害が一致すれば日英両得な場合もある。

 しかし、ゼロサムと非ゼロサムの比率でゼロサムは少なくない。

 逆に考えると、イギリス人にとっても同じだった。

 愛国心の強いだけの日本人は信用できない労働者でしかないことになる。

 キーマン紅茶の仄か渋みとアップルパイの甘酸っぱい香りが漂う、

 前の住人がマイセンが好きだったらしく半分ほど残していた。

 イギリスの伝統、紅茶とアップルパイも慣れた。

 実しやかに流れる噂だと、この紅茶の供給がストップするとイギリスは降伏するらしい。

 「御主人様。先方は、明日の午後、オランダの所有地の事で交渉したいと」

 『オランダって、魔法があったっけな・・・』

 「・・・んん・・・話は聞くべくだろうね」

 日本は、英蘭ソ共同名義で、莫大な借款を背負っていた。

 借款返還のために参戦したといえる、

 しかし、オランダ富裕層は、当座の資金が必要らしく、

 占領されている土地の権利を売却したい者も現れていた。

 オランダの港の一角に進出できれば権益は大きいといえた。

 しかし・・・

 不意の爆発、衝撃、振動に気付くと建物と窓が激しく揺れる。

 「ご、御主人様」

 「あ、ああ、大丈夫だ。ドイツ軍の攻撃だろう」

 「でも、いきなり爆発するなんて」

 窓から見ると対岸で爆発が起こっていた。

 「メアリ。君は運が良いかね?」

 「わ、悪くはありませんわ。立派な御主人様ばかりでしたし」

 「・・・そう、どうやら、これから、毎日、ロシアンルーレットを楽しむことになるだろうね」

 吹き飛んだ土砂が降って窓を叩き、

 噴煙が収まると300m先の建物が破壊され、対岸が燃えていた。

 その日からV2号ロケットのロンドン攻撃が始まる。

 

 

 09/06

 アメリカ大使ハーレイのDC3が重慶に着陸する。

 「今日は天候が良いようです」

 「暑くて霧が多くて雨も多くてか、長居は無用だな」

 「ええ」

 「蒋介石は、どう出てくるかな?」

 「やはり、反共支援。揚子江の自由航行を求めるようです」

 「揚子江か。日本からの支援を望んでいるのだろう」

 「それと人種差別撤廃」

 「尊敬を勝ち取れない民族が差別されないわけがない」

 「意図的に中国大陸を混乱に陥れてますからね」

 「将兵の犠牲無しで大陸は内部分裂だ。芸術的で合理的だろう」

 「日本は中国を混乱させるどころか、金を浪費し、血を流して結束させましたからね」

 「謀略の苦手な国民性なのだろうな。悪く言えば短絡バカ」

 「謀略を起こすだけの資金がなかったのでは?」

 「日本の軍事費の5分の1も使ってないぞ」

 「確かに」

 「地方軍閥を支援して中央に造反させ、バラバラに切り崩せ。戦国時代にしてやる」

 「4つの軍閥が国民政府から離脱しつつあるようです」

 「汪兆銘は?」

 「術後の回復は順調です」

 「南京政府は一応潰しましたが地方軍閥として頑張ってもらってます」

 「そうか、いざ、極東に足場を作ると中国大陸は、バラバラにしたくなるな」

 「その方が安心ですね・・・」

 飛行場に蒋介石たち代表が待っていた。

 「来ましたよ」

 「まぁ のらりくらりと社交辞令で終わるか」

 「ええ」

 

 

 

キングタイガー ポルシェ型

 09/11

 近衛・チャーチル会談が開かれ、対独伊戦略が協議される。

 東部戦線だけで2000kmの前線であり、

 日英土との戦線は、カフカス戦線780km。バルカン半島戦線1380kmだった。

 独伊西東欧軍はイベリア半島から白ロシア、ウクライナの先まで東西に伸び切っていた。

 不利ともいえず、有利とも言えない戦況で連合軍と同盟軍は決定打に欠いていた。

 「日本はトルコ軍とインド軍を統制できそうかね」

 「約束さえ守れるのであれば、消極的に動いてくれるはず」

 「問題は、戦場で強制できるかだ」

 「トルコ軍が督戦隊。インド(ダリット)軍が囚人部隊というところですよ」

 「アメリカは、アジア人の血を東欧に入れていると非難し切りだ」

 「ですがハンガリー平原でドイツ軍と正面から戦う気になれませんね」

 「無論、自国民はランチェスターの法則を当てはめた作戦を心掛けるよ」

 「問題は内陸になると例え、黒海の港に降ろせても、輸送が困ることだ」

 「日本海運の輸送能力は、限界ですよ。艦隊を下げるしかないでしょう」

 「だろうな。大型艦を喜望峰回りで地中海の日本艦隊に合流させよう」

 「北大西洋は?」

 「最低限必要な艦隊は残すよ」

 「イギリス国民のカナダ避難は進んでいる。自給率は問題ない」

 「必要な戦略物資くらいは輸送できるだろう」

 「バルカン半島から全力をあげて、ドイツの内腹を食い破ってやろう」

 欧州地図を見ると確かにバルカン半島から突き上げるのがもっとも効率が良かった。

 イギリス本土は、防空が主となり。

 イギリス戦略爆撃機は、ギリシャまで移動した後、戦略爆撃戦に投入された。

 

 

 

 09/30

 艦隊のほとんどを地中海側に出した海軍司令長官が国防省に移る。

 “土日週末同盟が欧州戦線を立て直す”

 新聞の見出しは、なんとなく余裕を見せていた。

 見方によっては “イギリス本土は孤立、土日同盟とソビエト軍は、未だ合流できず” だった。

 「いい加減に講和を結べばいいのに・・・」

 「講和を結ぶと、借款、払えないよ」

 「そうだったぁ」

 前線で戦っている将兵の代弁をしてしまう。

 同盟も連合も総力戦から消耗戦に入っていた。

 得をしているのはアメリカばかり。

 まぁ 日本も得をしているが、消耗していることに違いなかった。

 とはいえ、権益はあっても器用貧乏になりそうな予感がする。

 唯一楽しみがあるとすれば、魔業産業でズルをしていること。

 伊161号が異世界に行った可能性があること。

 “金貨と食料は足りるだろうか”

 あの後も潜水艦を張り付けていたが帰還の兆候はなく、行方不明の話しもない。

 「停戦してぇ」

 「でも、色々としがらみがあるみたいですよ」

 「しがらみ?」

 「バルカンとか、カフカスとか」

 「ん・・・ひょっとして、バルカン・カフカスの管理を日本に任せたのってそれか?」

 「あ・・・」

 「し、しまったぁああ〜!!!」

 「単独講和で、退くに退けなくされたわけね」

 

 

 

 魔法使いたちが山を走り回る。

 ぜぃ ぜぃ ぜぃ ぜぃ ぜぃ ぜぃ ぜぃ ぜぃ 

 ぜぃ ぜぃ ぜぃ ぜぃ ぜぃ ぜぃ ぜぃ ぜぃ 

 「森雄教官〜 魔法と全然、関係ないことしてませんか〜」

 「魔法は己自身の力だ。己自身を鍛えるのが当然なのだ」

 「そ、それにしたって、私たち意図的に外されている気がします」

 「そんな事はないぞ、俺が魔法を見せてやっただろう。お前ら真似が出来まい」

 「「「「・・・・」」」」 グウの音も出ない

 「まず体力を付ける。その後、技を身に着け、精神修養を行う」

 「心技体は人の生きる道なのだ」

 「そ、それにしては、厳し過ぎませんか」

 「わたしもそろそろ、弟子が欲しかったのだ」

 「それに弟子を取らぬのなら徴兵される。困るだろう」

 「後者が本音ですね」

 「そういうことだ」

 日清・日露・日中戦争・・・

 日本軍将兵の傷病死の多さは伝わっていた。

 爺捨て山、婆捨て山、子供の間引き、奉公など当たり前にある国の軍隊なのだ。

 階級社会で下っ端がどう扱われるかなど、だいたい見当が付いた。

 貧しい人間だと食べられるのであれば軍隊。

 それなりな庶民だと意識が変わる。

 “甲種欲しいが入隊はいや” なのである

 もっとも、日英同盟のおかげか、戦場でも何とか食べられるという話しを聞けば、ホッとする。

 小さい子供で魔法が使える者が選抜され、薄着で走らされていた。

 もっとも、個々に体力、精神力、知性が違うため、一様に扱う事は出来ない。

 森雄が目標とする条件を決めると、担当者が子供の資質、気性に合わせて教育していく。

 「魔法と最も関連があるのは、生体電気、経絡秘孔、チャクラだ」

 「しかし、これを発掘し、精錬、強化するには、肉体の技の鍛錬が基本になる」

 「「「「は〜い」」」」

 「それぞれに応じて、いくつか、カリキュラムを決めておいた」

 「すぐに取りかかるように」

 「「「「は〜い」」」」

 人は魂の入れ物に過ぎなかった。

 身体を守るため服を着、

 風雨から身を守り、身体を休めるために家に住む。

 生活を安泰にするため地所を広げ支配し、備蓄していく。

 森雄は、逆に考えていた。

 家に頼り生活を安泰にすれば、身体が脆弱になっていくと。

 心まで軟弱となり老衰してしまう。

 己が体さえいずれ朽ちる家に過ぎず、魂の借りモノなのだ。

 ある意味、究極の利己主義なのだが他者の支配を望んでいない分だけ毒がない。

 自らの魂を心身から切り離すことさえ辞さない姿勢は、人の生と常識を覆していた。

 森雄が飛行石や魔法の杖に浸食したのは、利己主義の業といえた。

 創世記

 “エノクはエロヒムと共にあゆみ、エロヒムが連れて行ったのでいなくなった”

 人間消失の歴史は古く、

 超自然的であり、人為的でもあり、何かに誘発された結果でもあり、

 第一次世界大戦中、1915年8月21日 ノーフォーク連隊341名消失。

 いくつかの条件で起こった。

 己の身体を借りモノとしたときから魂の遊離が始まる。

 魔法の杖や飛行石が誘発したにせよ。

 次元の隙間へ入り込み、

 森雄は、向こう側へ移動してしまう。

 

 

 10/01

 ケニア・アフリカ人同盟(KAU)が結成される。

 

 10/09

 ロンドン

 日英ソ土会談、バルカン・カフカス権益分割協定調印。

 カフカスのバクー油田。(日本、トルコ、カフカス、ソビエト、イギリス 1/5)

 バルカン半島の鉱物・油田資源。(日本、イギリス、トルコ、バルカン 1/4)

 連合戦略における最大の懸念があった。

 誰も彼も国家のために血を流す事などごく一部の権益者であり。

 まして、気宇壮大な正義や大義名分のため血を流したりはしない。

 人は利己的な生き物であり、国家も利己的な集団の集まりに過ぎない、

 損失補償と戦功が国益に反映されなければ連合戦略もあり得ない。

 占領地の権益と権益関係をはっきりさせておかないと気になって戦争が出来ない。

 獲らぬ狸の皮算用でもよかった。

 青写真でも決まっていないと戦意が保てない、それだけだった。

 日本軍将校たち

 「焦点のバルカン・カフカス戦域は良いとして、大西洋は危ないんじゃないか」

 「スペイン参戦でイギリス本土は苦しいはず」

 「スペイン本国だけでなく、カナリア諸島、スペイン領西サハラもUボート基地だからな」

 「独伊潜水艦隊とヴィシー・フランス艦隊がイギリスを締め上げるのが先か」

 「米英ソ印土連合軍がドイツを降すのが先か・・・」

 「スペインを降す方が良くないか?」

 「日本の18個師団はバルカン・カフカス戦域で戦っているから、もうないよ」

 「新兵を送るだけで精一杯か」

 「あとイギリス軍隷下で戦ってる師団は実入りが良いから人気ある」

 「艦隊は?」

 「ギリシャ上陸作戦で砲身命数を使い果たしてる。修理改装も時間がかかるよ」

 「リシュリューは使えるんじゃないか」

 「リシュリューだけじゃ・・・」

 「大和と武蔵は?」

 「大和と武蔵か・・・イギリスのために使う事になるとはねぇ」

 「まぁ ニューギニアと北樺太のためだと思って・・・」

 

 

 11/07

 日本の某所、

 二人の人間がぶら下がっていた。

 「こいつらせいで日本の舵取りを誤らされるとはね」

 「『南京政府論』 “蒋介石・国民政府に拘るべきではない” だっけ」

 「軍部も威勢のいい事を云う奴にすぐ同調するし、騙されるからな」

 「政府も開国策や軍縮やる度に陸軍に組閣不成立させられちゃなぁ」

 「攘夷派に比べて、開明派や開国派は弱腰に見られるからね」

 「売国扱いで足を引っ張って権勢狙えるし」

 「権勢側に立つと逆に足を引っ張られちゃうし」

 「権力争いで自分で自分の首絞めたりは良くあることだからな・・・」

 「まぁ 日本人も勇ましいの好きだからね」

 「軍事力を握った幕府の武断政治は、昔から続いたからな」

 尾崎秀実とゾルゲの絞首刑が実施される。

 

 

 11/07

 アメリカ大統領選挙

 現職のフランクリン・ルーズベルトがトマス・デューイを破って当選する。

 

 

 ソビエト軍は囚人部隊が最狂の主力軍であり。

 日英同盟もインド軍による人海戦術が主力だった。

 そして、ドイツ軍がどんな精鋭であっても弾薬以上の戦果は上げられなかった。

 日本人がお化け車輪の外軸にベアリングを取り付け、

 同じ長さの木の棒を二本後方に垂らしていた。

 「たぶん、これで、もう少し、まっすぐ、進むと思うよ。安直だけどね」

 「糸巻き車の要領か、後ろに重しがあるなら、まっすぐ進みやすそうだけどね・・・・」

 「時速100kmで走っても、待ち棒が持ち上がらないだろうね」

 「まぁ ベアリングだから、よっぽど激しくバウンドしない限りは大丈夫だよ」

 「もっと大きなベアリングがあれば、中間に棒1本を垂らせるのにな」

 「んん・・・蓄電池、モーターでジャイロを縦回転させた方が良くないか?」

 「パンジャンドラムが時速100km以上なら、それ以上の縦回転でジャイロを回せば、左右にぶれ難くなるはずだ」

 「モーターが良いかエンジンが良いか迷うね」

 「いや、回転軸をそのまま利用して、モータでジャイロを回せばいいんだよ」

 「中心に小さい鉛の車輪を造れば遠心力でまっすぐ、進みそうだけど」

 「そっちが安上がりかも知れないな」

 「イギリスも詰めが甘いね」

 「費用対効果じゃないの」

 「でも最低限、もう少し幅広が良いよね。逆進しないように、車輪が引っ繰り返らないように」

 「取り敢えず、中心に重し車輪にロケットモーターを配置・・・」

 「重量分の遠心力と重し棒でまっすぐ走らせられるようにすれば・・・」

 「んん・・・」

 日本人は、この手の “からくり” が好きだったりする。

 夜間

 煙幕と火力支援の砲撃が始まる。

 そして、地響きとともに数千台のパンジャンドラムが押し寄せる。

 時速100kmでドイツ軍陣地へと転がり込んでは爆発していく。

 インド兵は、混乱するドイツ軍陣地にイナゴのように押し寄せ、

 白兵戦を強いられ、数で圧倒されるドイツ軍は押し切られ、後退していく。

 少数のT34戦車(32トン)

 多数の歩兵戦車チャーチル(40トン)と巡航戦車クロムウェル(28トン)

 イギリス戦車はドイツ戦車に比べて劣っていた。

 だからといって、不満を言う者も少ない。

 インド兵に小銃を持たせて突撃させる方が効率が良いのだ。

 単に国家の威信を保つため、

 機甲師団を配備する必要性に迫られているだけでしかない。

 この頃、イギリス本土は、Uボートによって海上封鎖されており。

 日英ソ連合の独伊東欧軍に対する反攻作戦は、バルカン半島と東部戦線に集中していた。

 バルカン半島 日英同盟軍司令部

 「ユーゴとブルガリアのドイツ残存部隊は降伏した」

 「あとはハンガリーに向かうか、ルーマニアに向かうかだ」

 「ソビエトは、ハンガリー側に行って欲しいらしい」

 「そんな事を言ってる場合か、ソビエト軍と合流すべきだろう」

 「スターリンがルーマニアを欲しいと思うのは、人情だろうよ」

 「けっ! 冗談じゃない、これ以上、共産主義をのさばらせられるか」

 「それは言える」

 「とはいえ、輸送力も限度がある」

 「パンジャンドラムが使える地形も限られている」

 「この先、寒くなると人海戦術が使いにくくなる」

 「では、軍隊同士の総力戦・・・」

 日英軍将校は青ざめる。

 日英同盟は装備も連携もドイツ軍に劣っている。

 ドイツ軍と真正面からぶつかって勝てる気がしない。

 バルカン半島解放は、インド兵を磨り潰して達成したようなものだった。

 そして、バルカン半島はやはり火薬庫であり、クロアチア人の反撃。

 チトー・パルチザンもユーゴ独立のため反日英印に傾き始める。

 

 12/02

 イランで、石油利権譲渡禁止法案が可決される。

 「日本も石油が購入できるようになったな」

 「大型タンカーを建造しないとな」

 「Uボートが近海をうろついてそれどころじゃないんだけどな」

 

 

 12/06

 東欧で反ダリット兵運動が起こる。

 ドイツ軍が嫌で、ダリット軍は、もっと嫌という東欧人は、少なくない。

 もちろん、トルコ軍も嫌なのだった。

 ドイツ軍の十数倍の規模で上陸してくるダリット軍は、東欧諸国人の脅威だった。

 またトルコ軍もオスマントルコ支配を思い出させる。

 「戦争が終わったらダリット軍もトルコ軍も、引き揚げさせるって」 イギリス軍将校

 「嘘つけ、インド人を操って東欧支配するつもりだろう」 スラブ人

 「ちっ」

 「本気だったんかい!」

 「大英帝国だって辛いんだよ」

 「アフォ!」

 

 

 12/07

 東海大地震(M7.9)、南東海地方が津波に襲われる。

 死者298人、行方不明者25人、住家全半壊1万4119、流失2129。

 野伏裏がぼんやりと震災後を見つめる。

 「野伏裏君の予言で被害は最小限で済んだよ」

 「そ、そうなんですか?」

 「まぁ ゼロとはいかないがね」

 「製造関係は非難させていたから工業はすぐに立ち直る」

 「最近は、ほとんど、杖を使っていなかったので自信がなかったのですが良かったです・・・」

 「なぁに新人探しだよ、それに君たちは十分に仕事をしている、気にしないで良いよ」

 「いまは何人ぐらいですか?」

 「50人くらいかな。心身を鍛えれば後天的に杖を使えることもわかった」

 「そうですか、少し寂しいですね」

 「それより、もっと体力をつけたまえ」

 「はい」

 「もう休んで良いから。ういろうを買っておいたから食べておいで」

 「は〜い」

 てけてけてけ

 「・・・家屋を売却した後に地震。そして、安値になって買い戻しか、大儲けだ」

 「いくら、産業が大きくなっても、生産力/消費力という構図は変わらないからな」

 「生産力が大きくなればそれだけ、生産力を支える消費力が小さくなり、必然的に競争が激しくなる」

 「生産者側にすれば消費者側が大きい方が安楽だからね」

 「生産力は小さいけど、購買力も小さ過ぎるからね」

 「ライバルの芽を潰せる時に潰したいと思うのもしょうがないのかね」

 「開発がかかっているのに拙いと言えば拙いけどね」

 「戦後を考えれば産業を統廃合したくなるよ」

 「とりあえず、国債発行で大規模な都市開発を掛けて・・・」

 「やり過ぎると利殖生活者が増えて、貧富の差が膨らまないか、社会構造が歪になり過ぎると・・・」

 「んん・・・結局、特定企業だけ儲けて、国債は頭割だからね」

 「魔法で何とかならないのか?」

 「採算ベースに乗せやすいだけだろう。ピラミッドが変わるわけじゃない」

 「練金は?」

 「たしか、元素が重くなると、近い周期元素が必要になるらしい」

 「プラチナと銀と水銀とレントゲニウムが必要で、練成より探す方が楽だと」

 「製鉄所で造れないモノは難しいらしい。結局、チタン精製もハンター法を補強しているだけだ」

 「なるほど・・・」

 「それにいくら、金になるからって。寿命が縮まりますって、まず過ぎるよ」

 「だよねぇ 後ろめた過ぎる・・・」

 

 

 12/08

 フィリピンで独立運動が過熱

 

 

 12/10

 レーニングラードは、スターリングラードと比べ少しばかり過小評価されやすかった。

 しかし、モスクワが首都になる以前、ロシア帝国の首都であり、

 ソビエト第2位の都市だった。

 ドイツ軍は、戦艦部隊を投入し、上陸作戦で占領。

 フィンランド軍と合流を果たしていた。

 レーニングラード沿岸からラドガ湖にかけてボルガバルト水路があり。

 フィンランド軍は、北の手前側の護岸工事を進め、高台にすることで防衛線を強化していた。

 フィンランドは、カレリア地峡、ムルマンスク、カレリアまで国境を広げていた。

 元々、フィンランド圏に属しているため、住民は、武器を取ると躊躇なくソビエト軍に銃口を向ける。

 その南側、レーニングランド市をドイツ軍が防衛している。

 ドイツ・フィンランド軍の接点ではドイツ軍将兵とフィンランド軍将兵が並んでソビエト軍の攻撃に反撃していた。

 「あいつら、この極寒に攻めてくるとは」 ドイツ軍

 「ん? 今日は風が凪いで普通だぞ」 フィンランド軍

 「そ、そうなのか・・・」

 「それより、38式小銃は、ないのか?」

 「日本は敵だ。38式小銃があるか」

 「ちっ ドイツ製は大き過ぎていけない」

 「贅沢言うな」

 「正面、T34戦車約200!」

 「ちっ 艦隊に通達」

 ビスマルク、ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウの砲弾がT34戦車部隊に降り注ぐ、

 数十分後、戦場が大地ごと抉り取られ、T34戦車だったモノが散乱していた。

 レーニングラードを占領し、維持させていたのは、ドイツ戦艦部隊の存在だった。

 ドイツ商船は船団を組んでレーニングラードに戦略物資を下ろし、

 東部戦線の中でも十分な物資を有していた。

 「ひゅ〜 T34戦車を吹き飛ばせるなんて凄いな」

 「艦隊がないとヤバいな。戦域を広げ過ぎてる」

 「バルカン半島で押し上げられているだろう」

 「山岳地帯は戦車より人海戦術だからね」

 「いまは冬だから大丈夫だが夏になるとインド兵が押し上がってくる」

 「大丈夫なのか、戦場を縮小しなくて?」

 「スラブ系が反ダリットで結束できなければ、ヤバいかも」

 

 

 12/25

 フィリピン、マニラ港

 12200トン級伊吹型重巡洋艦 伊吹 艦橋

 「慣熟航海が国の用事とはね」

 「まぁ 本当なら戦艦でしょうけど、出払ってますからね」

 「しょうがないか」

 国が他国の式典祭典に対し、礼を表す時、通常、軍艦を送る。

 フィリピン合衆国の誕生であり、

 アメリカ合衆国は、タイディングス・マクダフィー法に従いフィリピンを独立させる。

 マラカニアン宮殿

 マニュエル・ケソン大統領は、独立建国とクリスマスの祝辞を述べており、

 日本人政府関係者も参席していた。

 「アメリカも腹が太いじゃないか」

 「独立させても経済は握ってるよ。言う事を聞かないと軍艦を出してくるさ」

 「確かに戦艦アイオワ型、サウスダコタ型は大きいよ」

 マニラ湾にアメリカの戦艦6隻が浮かんでいた。

 日本が送ったのが重巡1隻なので肩透かしを食らう形になっていた。

 「でも、日本が戦艦を送らなかったことを感謝して欲しいね」

 「まぁ 正確には送れなかっただけどね」

 「アメリカは、極東信託統治領をどうする気かな。独立させるんだろうか?」

 「買った分の元は取ろうとするはずだよ」

 「中国の特権階級と富裕層が独立を望んでも、低所得者がアメリカ資本を頼ってるからね」

 「いや、特権階級と富裕層もアメリカと組んで私腹を肥やしたがるからね」

 「当分、アメリカ極東信託統治領は、安泰かな」

 「しかし、アメリカは、高速戦艦を建造するとはね」

 「怖い怖い」

 「あははは・・・」

 日本海軍に塞凰があると気が大きくなるのか、余裕を見せる。

 どんなシュミレーションを展開しても塞凰だけでアメリカ戦艦部隊を壊滅させることができた。

 運が悪く戦艦の直撃を食わない限り負けはなく。

 塞凰を使わなくても、魔法使いの情報だけでも十分と言えた。

 アメリカ戦艦部隊の侵攻ルートに潜水艦を全て配置することも可能だった。

 面白くないのは、余裕を見せる日本人代表を監視しているアメリカ人側であり、

 フィリピン人と裏取引があるのかと疑い始めたりもする。

 

 

 

 バルカン半島

 大国の暴力に対し、主権を保てない小国は惨めだった。

 ドイツ軍に支配されるか、イギリス軍に支配されるか、

 ソビエト軍に支配されるか、トルコ軍に支配されるか、

 選択の余地は限られ・・・・

 バルカン諸国は統合することもできずバラバラであり、

 諸国内で憎み合ってさえいた。

 チトー率いるパルチザンも、インド軍との抗争の中に埋没しており、

 山岳に潜んでも森が燃やされると生存圏が脅かされていく。

 パルチザンの拠点

 「日英印土連合軍を攻撃すべきだ」

 「我々は、既にバラバラにされて弱体化している」

 「イギリス軍を追い払えば、ドイツ軍に支配されるか、ソビエト軍に支配される」

 「トルコ軍も我々より強いぞ」

 「そして、今度は、立ち直る事も出来ない」

 「セルビアとクロアチアの仲違いのせいで、独立まで失われようとしている」

 「他国の助成など受けず、自らの力だけでドイツ支配と戦い。独立を勝ち取るべきだ」

 「いまとなって遅かろう。我々は・・・」

 

    

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

伊161型潜水艦(海大4型)
排水量 全長×全幅×吃水(m) hp 速力 航続距離 魚雷 大砲 乗員
1635 97.70×7.80×4.83 6000 20.0 10kt/10800海里 6×4 45口径120mm 30
2300 1800 8.5 3kt/60海里

 伊161号は、どこかの島大陸(98万ku)を一周。

 「魚は、我々の世界とほぼ同じようだ」

 焼かれたサバを頬張る。

 「ええ、相互関係があるのかもしれませんね」

 「畝傍以外にも我々の世界の人間がいるかもしれないな」

 「畝傍の航海日誌の写しだと、ミズガルズとか、ミズガロズとか、消えかかった字で書かれた場所ですよね」

 「んん・・・とりあえず、拠点を定めるべきだろうな。二日前通った川の上流にでも行くか」

 「ええ、中州がありましたね」

 比較的大きな川を遡上し、潜水艦を中州に着岸させた。

 乗員は、中州に砦を建て農地を耕し始める。

 潜水艦の金庫には、この世界の地図と言語らしきもの、

 そして、20円、10円、5円金貨、50銭銀貨があった。

 生態系は、地球と似ていた。

 しかし、異質の生命も存在した。

 トロール、翼龍、フェンリル、オーク・・・

 頼りになったのが潜水艦の艦載砲。

 10年式45口径120mm単装高角砲、

 最大射程15600m、最大射高10000m。10発/分。

 そして、非常識なほど積み込まれていた武器弾薬一式だった。

 潜水艦の甲板に配置された大砲は、この近くの魔獣の類を一切寄せ付けずに済んだ。

 本来、潜水艦に載っているはずのない11年式軽機関銃2丁

 44式騎銃10丁は、優れた小銃が量産したものでなく、カスタム銃だと体現していた。

 もっとも、まともに射撃訓練をした者はあまりいなかったが・・・

  口径 全長/銃身長 着剣 重量 装弾 初速 発射速度 有効射程 数量
11年式軽機関銃 6.5mm×50 1100/443mm - 10300kg 30 778m/s 500発/分 2000 2
44式騎銃 6.5mm×50 955/419mm 1309mm 3965kg 5 708m/s   500 10
14年式拳銃 8mm×21 230/120mm - 890g 8 325m/s   50 10

 

 ボートが開拓している中州に向かってくる。

 「艦長! 人型です」

 砦の前に立っていた。

 背丈は180cmほどで1本角の生えた男が4人、

 具体的に書くと赤鬼2人、青鬼2人。

 イメージと違うのは、裸でなく。マントの様なモノを羽織っていた。

 平均身長160cmの日本人より大きく見えるが西洋人並みで異常ではない。

 実戦慣れした部隊は、集中せず相互支援しながら全周を警戒する。

 何しろ30人ぽっちは最小の小隊規模。

 24時間3交替で計算すると10人が勤務時間で周囲を警戒しなければならなかった。

 夜勤を除いた10人が農作業、から配備につくまで5分。

 砦から4人が出て交渉に入る。

 「なんだ?」

 「ここは魔獣が多くて危ない場所だそうです。なぜここにいるのか、聞いてるようです」

 「遭難したと伝えてくれ」

 「遭難なんて、単語知りませんよ」

 「絵でも描いて伝えろ」

 「・・・・よく分からないのですが、角無し人間は、ほかの大陸・・・レムリアにいるそうです」

 「あと、一緒にドラゴン退治をしてくれたら、角無しのいる場所まで案内してくれるそうです」

 「飛行石と魔法の事も聞いてみろ」

 「・・・・彼は・・・アビショップは、レベル4の魔法使いだそうです」

 「どうやら、上流のドラゴンを退治する場所に飛行石があるそうです」

 「・・・ドラゴンを退治できたら飛行石を山分けしても良いそうです」

 「・・・了解したと伝えろ」

 「ふっ なるほど、早速、目的を達成できるわけか」

 艦長は鬼の代表と握手する。

 鬼たちは、この世界をガイアと呼び。

 この島がカグツチ島と読んでいることが分かり、

 海軍将兵は “鬼ヶ島” と別称を付けてしまう。

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 日英ソ土連合 VS 独伊西東欧同盟です。

 アメリカが参戦していないと戦局は流動的です。

 形勢をどうにでも出来るという点で創作向きな設定です。

 

 ノルマンディー上陸作戦がないのでV2ロケットは、イギリスに集中します。

 史実だと1358発+44発。

 この戦記では、全てイギリスに集中するため4000発くらい。

 1トン爆弾なので弾頭約4000トン。+質量分です。

 

 

 そんでもって、異世界ガイア。

 伊161号は無事、お宝を持って地球に帰還できるでしょうか。

 ここで、異世界の話しは分岐します

 

  

 

 

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第03話 1943年 『疑心暗鬼』
第04話 1944年 『支配は、奪うこと』
第05話 1945年 『底知れぬ処の・・・』