月夜裏 野々香 小説の部屋

    

ファンタジー系火葬戦記

 

『魔業の黎明』

 

第07話 1947年 『ここは御国を・・・』

 戦後世界は、程々の緊張感と厭戦機運によって構築されていた。

 程々なのは、ほとんど列強が満足できず戦争が終息してしまったことにある。

 戦争の主犯ドイツ第3帝国は、国土を増大させていた。

 ヴィシー・フランスと自治オランダ領を除く、西欧を手中に治め、

 東部方面の支配圏は、フィンランド領旧レーニングラード領まで至る。

 ベラルーシ、ウクライナは独立し、独ソの緩衝帯となっていた。

 ドイツ第3帝国は、第一次世界大戦で失った威信と名誉回復できたと言える。

 とはいえ、バルカン連邦は、ドイツ帝国の喉元に突き付けられた短剣であり、

 巨大な楔だった。

 そして、ドイツも、これ以上の戦争継続も不可能であり、妥協したのだった。

 

 イギリスも危機的な状況を打開するため、日本、インドと妥協してしまう。

 大航海以降の蓄財と植民地支配の要であるインドを失い。

 日本の軍事的支援を受けなければ残りの植民地維持すら困難となっていた。

 

 ソビエト連邦も状況はイギリスと似ていた。

 モスクワは陥落寸前となり、日本と妥協して北樺太を売却。

 さらにトルコと妥協させられ、カフカスを失い。

 ようやく危機を脱したほどだった。

 ウクライナとベラルーシの独立も戦争負担に耐えられなかったことにある。

 

 日本は、政治外交経済全ての危機的状況に陥っていた。

 戦争回避と経済再建のため、大陸利権のアメリカ売却で一時凌ぎ、

 欧州大戦も荒稼ぎしながら高みの見物を決め込むはずだった。

 しかし、英ソ蘭のニューギニア・北樺太の新領土に惑わされ債務国に転落。

 借款返済代わりに対独伊参戦。

 結果的に欧州利権に引き摺りこまれ、

 政治外交上の歪で不自由な国際情勢に陥る。

 

 超大国アメリカは、日本の大陸権益を購入。

 対ソ対独戦略の基本戦略の天秤が傾いてしまう。

 紆余曲折を経て参戦の機会を得られず不完全燃焼で取り残されていた。

 アメリカ軍は、最有力でありながら実戦未経験のボーイスカウト軍でしかなく、

 第二次世界大戦からも取り残されていた。

 もっともアメリカ人は第二次世界大戦でなく欧州大戦と言い張り、

 彼らがいる場所では、欧州大戦が通用される。

 

 欧州大戦がアメリカの独り勝ちでなかったことが幸いし、

 世界の構図は、パックスブリタニカ崩壊。パックスアメリカーナ未満。

 統制されない奏者たちが耳障りで醜悪な不協和音が奏でていた。

 アメリカの極東権益防衛は、独伊西同盟と利害が一致しており。

 アメリカは、ドイツ、イタリア、スペインと交易を増大させる。

 

 日英土連合は、戦後の植民地と支配地の防衛で消耗しなければならず、

 イギリスは、日本の力を借りなければ植民地防衛を維持できないほど疲弊していた。

 日英同盟の結束が強まるに連れ、世界中に日本の拠点が広がり始めていく。

 イギリスの植民地は、領土丸抱え統治で搾取を目的とした直接支配であり、

 アメリカの植民地は、良いところ摘み食いを目的とした間接支配だった。

 日本は、小さな拠点を基盤に国家間の風通しを良くし、

 中継貿易や通商を目的としていた。

 日本は、勢力均衡や利害調整など得意としない分野だったにも関わらず、

 国際情勢の流れに助けられたかのように機能していた。

 

 

 青い空と海、荒涼とした大地が広がっていた。

 カフカス連邦

 小さな世界でありながら大油田を持ち、

 グローバルな世界で影響を与えた。

 バクー油田がそうであり、

 日本、イギリス、ソビエト、トルコ、カフカスの利権が絡む。

 この地に港湾、空港、鉄道、発電所が建設、整備されていく、

 もちろん、エネルギー(カフカス連邦)だけで産業を起こせない。

 産業は、近代工業の集大成であり総量でもあった。

 資本、技術、労働力、土地、資材、資源、ノウハウを必要とし、

 燃料を必要とする様々な消費市場を持っていることが求められた。

 カフカス連邦の完全自治は、日本軍駐留が条件であり、

 イギリス、ソビエト、トルコの利権が守られ、ようやく産業が興る。

 しかし、戦後、疲弊した国家群に再建の金があるはずもなく。

 辛うじて余裕のある日本でさえ、アメリカに借りるか、

 借金の後世押し付けで産業を興していく。

 なのでアメリカの自動車、ファーストフード店が進出していた。

 肉はソビエトから購入して比較的安く出来上がる。

 アメリカが日本・イギリス・トルコのバルカン・カフカス権益を容認する象徴ともいえた。

 なので、ファーストフードは早死にしそうだ。

 と、日本バルカン・カフカス駐留軍は、口頭で警告するにとどまる。

 日本風の居酒屋

 カスピ海の魚マヒ・セフィード(小骨多い)が揚げた後、酢漬けで出される。

 塩分濃度が3分の1であるため寄生虫の確認が用心深くされ、

 認可された魚種が寿司で並び現地民に驚愕される。

 生魚を食ったことのない世界なので当たり前と言えなくもなく、

 日本食が面白がられていた。

 「もっと、ほかの魚を食べたいよ」

 「養殖できればね。カスピ海沿岸国で交渉してるらしいけど、魚は過小評価されてるよ」

 「ちっ そんなに石油が大切か? 俺は寿司ネタの方が大切に思えるがね」

 客がキャビア巻きを頬張る。

 「生魚の美味しさが分かれば、もっと鮮魚を大切にすると思いますがね」

 「だよなぁ カスピ海ももっと大切にして欲しいよ」

 「来たばっかりは、大変でしょう?」

 「もう、右も左も、わからないことだらけだ」

 「契約とか通訳経由ですからかなり怖いですよね」

 「英語併記でようやくサイン出来るって感じかな。それも辞書で確認しながらだよ」

 「最近は日本語標識も少し増えましたけど、かなりしんどいですわ」

 「堺商人をなめるなって来たものの、アルメニア人のえげつないこと、日本人の町に引き籠りたくなるね」

 「あははは・・・」

 

 隅でロシア人が地の利を回復しょうとグルジア人と交渉していた。

 しかし、嫌われているのか上手くいかない。

 日本の商人が間に入るとようやくまとまり始める。

 ロシア人は国土を奪われ、

 回復した利権も5分の1しかなく憎々しげだったりする。

 日本人商人たち

 「スターリンの祖国が奪われるなんてな」

 「いや、スターリンが嫌われているのが笑えた」

 「多民族国家だから、いろいろあるんじゃない?」

 「多民族国家でも衣食住が足りれば殺し合いたいというのは減るだろうね」

 「民族資本を作られると貧富の格差が開いて、殺伐としていくかも」

 「それでも自主独立したいだろうね」

 「自主独立すると3ヵ国とも困ると思うよ」

 「あははは・・・」

 「しかし、潤沢な原油があってもアメリカに勝てないのが辛いねぇ」

 「結局、アメリカに金を借りるか、公債で借金を子孫に押し付けるしかないからね」

 「でもさ、欧州大戦のおかげで、日本がバルカン、カフカス連邦に食い込めたんだよな」

 「まぁ 犠牲者は出たけど、悪くない戦争だったね」

 「一番儲けてるのアメリカだろう」

 「それにアメリカ兵やイギリス兵の遺族年金に比べたら日本軍将兵のなんて割増入れても大したことないし」

 「だからって、いくら死んでも大丈夫じゃないと思うぞ」

 「もう、そういう拝金主義的な発想はやめようよ。日本人は浪花節」

 「浪花節じゃな〜」

 「なにを言う、親子夫婦兄弟の絆は浪花節だろう」

 「拝金主義が蔓延したら財産の奪い合いで殺し合いになってしまう」

 「まぁ むかしは、貧しくて義理人情が重くみられたからね」

 「というか、浪花節は義理人情を踏み外したやつが出てこないと始まらないと思うぞ」

 「豊かになれば豊かになったで醜悪に奪い合うと思うよ」

 

 

 ロンドン テムズ川

 日本人街 さざれ石(サムライ)ウォーター・フロント

 日本人は “さざれ石” と呼び、

 イギリス人は良く知っているサムライウォーターフロントと呼んだ。

 大半が日本庭園で、

 残りが日本大使館を含めた日本政府関連施設と商業用地が集まっていた。

 日本人の業者も少しずつ増え、イギリス人は観光と散歩を兼ねて散策する。

 また、イギリスでも売れる商品だけが選別されて商店に並べられ、評判も良く。

 日本は、イギリスに対し、英語圏以外で最大の影響力を持ち始めていた。

 イギリスの戦後再建は、アメリカの投資と日本の支援で徐々に進んでいく。

 このイギリスで最大の債権国はアメリカであり、日本ではなかった。

 日本も瑞穂州・北樺太購入代金がまだ残っており、債務国でさえあった。

 政府は、日本に引き籠ろうとする日本人を海地に送りだそうとしていた。

 しかし、日本への執着は思った以上に強く、

 財政投資、税制上の優遇などで渋々という感じだった。

 瑞穂州の資源開発が進んでいなければ、もっと移民速度は遅いはずだった。

 メイドのメアリが午後の紅茶を持ってくる。

 一緒に運ばれた新聞に目を通すと東京オリンピックの事が書かれていた。

 意外にも注目されており、日本進出の話しも持ち上がっている。

 どうやら、日本が疑われているらしく、各国ともドサクサの潜入を試みようとしているらしい。

 「・・・御主人様。その小石、外にお持ち致しましょうか?」

 メアリがテーブルの小石に気付く。

 「いや、日本から持ってきた “さざれ石” だよ」

 「まぁ これが “さざれ石” ですの?」

 「そう、これが “さざれ石”」

 「・・・いし、ですよね。ただの・・・」

 「確かに・・・」

 「宝石だとばかり思っていました・・・なぜ小石の名前を?」

 「まぁ 日英同盟の絆が強まるようにと願いを込めてかな」

 「???」

 メアリが首を傾ける仕草は、魅力的に見えた。

 「・・・それより、カナダからの帰還者が少ないようだな」

 「はい、所有地を売却して移民した家族もいて、カナダも住みやすかったようです」

 「まぁ 同じ英語圏だし、アメリカという市場も職場ある」

 「資産があれば、カナダで成功しやすいだろうね」

 「むかしは、植民地扱いしていましたのに」

 「それじゃ 思いっきり開き直ったのかな」

 「イギリス人は、状況を創り出す事に慣れていますが、状況に追い詰められる事に慣れていませんわ」

 「羨ましい限りだね。日本は世界情勢に翻弄されてばかりだ」

 「そうですか? 日本は、上手く乗り切っていると思いますわ」

 「だと良いがね」

 「ところで、メアリ」

 「はい」

 「もう一人雇うのと、君の給金をあと1割増やすのとどっちが良いかな?」

 「・・・そうですわね」

 「いま時、メイドなんて見つからないと思いますから1割昇給が良いですわ」

 「では、そうしよう」

 「ありがとうございます」

 イギリスの蓄財は失われ、

 人口減と労働者不足は深刻で、メイド人口も急速に減少していた。

 引き抜かれないように相場が上がっていた。

 

 

 アメリカ極東権益地は周囲をソビエト、日本、中国に取り囲まれていた。

 欧州大戦が終わると、極東ソビエト軍の状況が始まり、

 アメリカ駐留軍は、戦力を増強させていた。

 アメリカ極東権益地は、まだ脆弱であり、

 より強固な防御陣地だけでなく、社会基盤をも必要としていた。

 ところがアメリカ合衆国は、従順な労働力を欲している国であり、

 入植地を必要としない国だった。

 例え、フィリピンを植民地にしてもアメリカ人はフィリピン入植しなかった。

 そして、極東権益地を得ても、朝鮮・満州に入植するアメリカ国民も少ない。

 アメリカ国民は、荒野の広がるアメリカの大地に公共投資を望むのであり、

 ほとんどの国民は、国外に公共投資をする事に反対だった、

 自分の財布から抜いたお金を無償で外国人にくれてやるバカはいないのである。

 また特定産業だけが大きな利益を得ることを望まず、公平な競争を望む。

 なので極東権益地で産業を興す場合、採算性の良い日本に資材を発注する。

 利潤に魅せられた日本がアメリカ極東権益地を後押ししたのは事実であり、

 出しゃばることなく大陸を明け渡したことで莫大な利益が転がり込んだ。

 そして、アメリカ極東権益が日本バルカン連邦、カフカス連邦駐留を容認した理由でもあった。

 日本本土が脆弱であれば、その分、日本は身動きがとれず、

 アメリカ極東権益地は、対ソ・対中戦略に集中できた。

 ハルピン。

 全ての看板が英語と漢字の併記だった。

 アメリカの満州投資は日本の10倍に達し、さらに合理的で巧妙でもあった。

 妨害する勢力もほぼ皆無であり、

 満州油田の開発とともに経済植民地化は急速に進んでいく。

 アメリカで統廃合され不要になった鉄道が敷かれ、

 古くなった機械が排泄物場のように満州や朝鮮の工場に並び、

 その対価が朝鮮族と漢民族に押し付けられ、

 アメリカ資本は、欧州大戦で供給過剰気味の生産機械を極東権益地に押し付け、

 莫大な利権を手にしていた。

 黒人、フィリピン人、日本人を使ったプランテーションは成功しつつあり、

 生産されたモノのが格安で日本、中国、ソビエトに売却される。

 満州牛、満州山羊、満州豚は日本の食生活を変える勢いがあった。

 ホテル アメリカ

 「もう少し、日本人の労働者を欲しいのですが?」

 「朝鮮人や漢民族がいるじゃないですか」

 「ああ、もう少し分かりやすく言うべきでしたね。従順で勤労な労働者が欲しいのですよ」

 「しかし、日本でも従順で勤労な労働力は、必要なんですが・・・」

 「アメリカ権益地に来れば、給与も良く、家も庭も部下もいるのに、日本で働くなんて苦しいだけでしょう」

 アメリカ資本は日本で働くより、1.5倍ほどマシな職場環境を日本人に提供していた。

 「困りますね。最近は日本も暮らし向きが良くなりつつあるのです」

 「それにむかしと違って日本は労働者不足」

 「労働力を失うと日本産業が低迷しますからね」

 「欧州、瑞穂州、日本と内需需要で潤っているのにアメリカ極東権益地なんて」

 「日本産業を弱体化させる目的としか思えませんよ」

 「まさか、そんな気持ちなど毛頭ない」

 「日本人一人当たりの資本が増えれば日本の産業も潤うはず」

 「んん・・・」

 「日本産業も追い風ですよ」

 「んん・・・」

 「日露戦争が終わってすぐ、大陸利権を売却していれば良かったんですよ」

 「んん・・・まぁ 約束はできませんが検討するという事で」

 「では、よろしく」

 「軍隊だけでは、維持費に困りますからね」

 「だいたい、治安に金をかけるのも大変でして」

 「バルカンとカフカスは・・・」

 「もちろん、合衆国が後押ししますよ」

 戦争で買っても負けても日本は、アメリカの経済攻勢を受ける。

 アメリカ資本は、利益誘導だけで日本から労働力を奪い日本産業を組み敷く事もできた。

 日本の設備投資は日本、欧州、瑞穂で三分割されており、

 アメリカは、さらに労働力を四分割させ、

 日本産業の勢いを失速させようと画策する。

 「・・・日本代表は帰ったかね」

 「はい。随分な絡めてな戦略ですね」

 「日本は、資本と人口の分散を嫌っているようです」

 「当然だな。日本本土とアメリカ権益地が生産拠点を奪い合っているのだ」

 「大陸側で自動車産業を制せば、消費は中国大陸全域に及ぶ」

 「石油と自動車産業を押さえれば、中国大陸の市場は莫大」

 「新参の工業国日本と取り合いになってもおかしくない」

 「伸るか反るかですか?」

 「日本との交易を拡大して上げ底をはかせ、退くに引けない状況にし」

 「見せかけの利益誘導で日本、瑞穂、欧州、極東権益地の4分割してやろう」

 「どの道、極東権益を守るためには、従順な労働力を必要としている」

 「日本が国土を増やしても、経済効率は低下して日本産業を収縮させられるだろう」

 「そして、発注を止めて上げ底ごと取り上げて、息の根を止める」

 「戦争以外の方法でも、日本を締め上げることは出来る。それで日本の秘密を探ろう」

 「そんなに重要な秘密なんですか?」

 「我々の知る範囲での優位性なら構わん」

 「しかし、日本はアメリカの知らない何かを知ってる。あるいは持っている」

 「日本が未知のモノを独占することは許されない」

 「日本が未知のモノを使って切り返してきたら」

 「ずっと隠し持たれて不意打ちを食らうより、追い詰めて使わせる方が良い、楽しみだな・・・」

 

 

 日本産業は、過剰需要で作られた好景気で無理な供給を興してしまう。

 それまで農村は娘や息子を奉公に出す事も珍しくなかった。

 しかし、開戦後、急速に産業が増大し、

 たちまち、労働者が引き抜かれていく。

 この当時、日本の工業技術全般は、それほど高いものでなく。

 多くの場合、欧米諸国の利用者を失望させていた。

 品質管理、規格管理は日英同盟の関係で軍製品で徹底されていた。

 しかし、採算重視の民生は行き届かず、

 さらに雨後の筍の如く現れる新興工場は、粗製濫造の見本ともいえた。

 生き残って市場を押さえることができるのは、10社に1社もなく・・・・

 日本領 巨済島

 国営市場に日本中の製品商品が展示され、アメリカ人たちが値踏みして回っていた。

 「ハリー。朝鮮人や漢民族にキリスト教は、無駄だよ」

 「人間かどうかためしているだけだよ。神の力を試したいんだよ」

 「おいおい “聖なるものを犬たちに与えたり、真珠を豚たちに与えたりしてはいけない” そう言われてるだろう」

 「“彼らがそれらを足の下で踏みつけ、向き直ってあなた方を引き裂くことのないためだ” か、それも確認すべきだな」

 「君の金が財布から抜き取られて連中に踏み付けられたり」

 「君の娘が連中に引き裂かれたりするのを確認したくないだけだよ」

 「アル。そんなに酷いのか」

 「何で居留地に追いやってると思っているだ」

 「絶滅させるためか」

 「もう少し、オブラードに包んだような言い方をしてくれよ」

 「掃除とか、間引きとか、品種改良とか」

 「ドラゴンが土人をさらって、どうしていいか悩んでいるように思えるね」

 「だいたい、極東に移民してくるアメリカ人がいるのか」

 「一応、ニューフロンティアだからね。金に惹かれてやってくるさ」

 「アメリカ国内に未開地は余ってるだろう。消費者や労働者を失うのを嫌ってるはず」

 「まぁ 戦後のアレだ」

 「生産過剰なのに、もっと贅沢したい、市場と消費者が欲しいのさ」

 「もう、資本は全て合衆国の金庫の中だろう」

 「だが消費者に借金を背負わせて働かせることはできる」

 「アジア人を永遠の奴隷にするためかね」

 「強制と考えるな」

 「連中が金を欲し、上から借金して事業して、利益を上げて返済する」

 「上は安定収入になるだろう」

 「労働者は無私で自発的で前向きな社会貢献だと考えれば良い」

 「笑わせるな」

 「ああ、笑ってくれ、笑いは生きていくための潤滑油だ」

 「それで、何をしろって?」

 「質のいい朝鮮人と日本人に接触したい」

 「もう、そういうルートくらいあるだろう」

 「もっと、増やしたい」

 「なんで?」

 「・・・サラエボ事件だ」

 「ああ、無謀な日本大使に感激したね」

 「その映像をコマ送りするとだ」

 「暗殺者は元チトーのパルチザン勇士ジョン・ブル」

 「ジョン・ブル?」

 「事件前に改名したらしい。いまは、こっちが使われている」

 「ふ 暗殺未遂で日英同盟の結束を強めただけか」

 「戦中ドイツ軍やインド人と戦った猛者で種も仕掛けもないプロだ」

 「腕前は確かだ。40m先の人形に10発中9発の致命傷を与えた」

 「そいつがワルサーPPKで5m先で撃った弾が二発とも外れてる」

 「発射して、すぐ、弾丸の弾道が上に向いたのをフィルムで確認している」

 「それが二発ともだ。本人曰く、絶対にあり得んそうだ」

 「まぁ 映像を見た限り、姿勢も銃口もタイミングもパーフェクト。射撃の教本で使っていいほどだ」

 「しかし、外れた」

 「わたしも彼の言い分を肯定するがね」

 「それで、そのヒントが、この国営市場に隠されていると?」

 白人は軽蔑したように日本製衣類の生地を確認する。

 「・・・ロクなモノがないと思うよ。少なくともお金持ちは見向きもしない」

 「とにかく、上は、情報を欲してる」

 「手品師を総動員させて懸賞を出したくらいだ」

 「日本人に金と白人女を掴ませろよ。種明かしするだろう」

 「まだ入ってない。他の情報はかなり入ってくるのにこいつだけはわからん」

 「まぁ 異世界の秘密兵器とか、おとぎ話しのような噂があるだけだ」

 「拳銃の弾道を変えるには、なにか、空中に透明な糸のようなものを張らないとな」

 「そんなものは確認されていない。仮にそうだとしても、お前は的になれるか?」

 「・・・では、拳銃に仕掛けがあって、撃った瞬間に弾が上に反るようになっていた」

 「拳銃は、映像でも実物でも本物と確認した」

 「ジョン・ブル自身。仕事の前に確認している」

 「拳銃が取り替えられた形跡はないと神に誓って断言しているよ」

 「んん・・・」

 「彼は、改心して、日本の進駐を神の御意志で大賛成だと証ししている」

 「日本は、未遂事件だからと仮保釈したらしいがね」

 「おかげで共謀じゃないと確証させられた」

 「あと、邪馬ひみこ陸軍局長が二度の暗殺事件でいずれも未遂に終わっている」

 「一度目は至近距離から5mから拳銃8発。二度目は38式小銃で100mから4発だ」

 「映像になるような証拠はないが写真と証言を確認した」

 「どちらも当たらないのが不思議な状況だったらしい」

 「犯人二人は取引があったらしく、死刑にされている」

 「三度目はやらないのか?」

 「三度失敗したら? そっちの方が怖い」

 「もし・・・種も仕掛けもないのが真実だとしたら?」

 「はぁ?」

 「あ・・・いや、忘れてくれ」

 「と、とにかく、情報を集めろ」

 「そうだな・・・」

 「しかし、一介の3流探偵にまで声がかかってくるなんて、焦ってるな」

 「とにかく、元警官なら軍人より怪しまれないだろう」

 「そして、頼み易く、経歴上もカモフラージュしやすい。頼んだぞ」

 「わかったよ」

 

 白人たちと日本人たちがすれ違う。

 「随分と民生品が増えたな。良い時代になったもんだ」

 「軍隊の悪口を言っても売国奴や非国民扱いされないし、自由の風ってやつかな」

 「結局、みんな、軍の暴力に怖がって、虎の威を借りる側に回っていただけか」

 「首相暗殺はする。軍隊は勝手に動き出す。クーデター上等で、思想統制はする。世相が暗かったからな」

 「日本人は事勿れの小心者だからね」

 「独善的な攘夷主義者が暴力で国家権力を握るとそんなもんだよ」

 「そんなもんじゃ済まないよ。引き籠って取り返しがつかないところだった」

 「だいだい、戦力比を知ってるだけで、国情の違いがわかってねぇからな」

 「いや、国内事情すら無視していたからな」

 「将兵の半分以上は、自己保身だけ突っ張らせて、何もわかってなかったと思うよ」

 「だけど、いまだって、政府、議会、官僚、資本家、国民は利権の奪い合いで離合集散だろう」

 「権力の集中と分散と足の引っ張り合いだの、交替は昔からで歴史が証明してるからね」

 「軍国主義よりマシ。自浄能力なんてないから行くところまで行って自爆するか、潰されるかだね」

 「今度という今度は危ないと思ったよ」

 「利権と保身だけの嘘っぱちの愛国で、どうなるかと思ったよ」

 「権力を握ると人が変わるからね。勢力均衡でだらだらやっている方が良い」

 「だけど、既得権や利権抗争で悪化良貨を駆逐したりも珍しくないからな」

 「しかし、これだけ市場が大きくなると貧富の格差も広がる」

 「競争原理ってやつだね。質と量で市場を制したやつが勝つ」

 「しかし、国営市場は、場所代とくじ引きだけだから、公平といえば公平だね」

 「でも職員が踏ん反り返って怠惰で気に入らねぇ」

 「軍隊上がりだろう。親方日の丸なんてそんなものだよ」

 「だけど、純粋に商品で比較するのは良いと思うけど、営業泣かせではあるよ」

 「欧米諸国からクレームが来て、政府が日本製の粗製濫造に切れたんだよ」

 「日本は、まだまだ賃金が安いだけの競争力だからね。舶来物を自慢したくなるよ」

 「大手のやつは、まぁ 微妙に質が良いね」

 「しかし、地中海の権益地のおかげで、日本も舶来物を入手しやすくなった」

 「貿易上は赤字じゃないのか?」

 「どうかな、まだ統計は出てないが欧州権益で埋められそうだな」

 「それほど酷くないけど、権益地で損失補填させるなんて、インド状態だな」

 「結局、日本、イギリス、トルコで仲良く分けあっているような感じだからね」

 「インドほどじゃないけど、おんぶに抱っこしたくなるよ」

 「醜悪〜」

 「盟主のイギリスがそうだったからね」

 「イギリスも体質改善しないと下支えする労働者がいなくて経済沈没だろう」

 「ドイツ、イタリアに奪われるよりマシだったのかな」

 「ドイツの一人占めより、少しマシってところじゃないか」

 

 

 

 対馬沖

 PT魚雷艇の6隻編隊が玄界灘の波に翻弄されながら領海線に沿って疾走していた。

 波が小さければ魚雷艇は駆逐艦をゴボウ抜きできた、

 しかし、波が大きくなれば船の大きさと重量がモノをいい、

 耐波性で勝る旧式駆逐艦の方が速くなる。

 熟練した乗員になれば波の大きさで、どっちが速く走れるか即答できた。

 駆逐艦 綾波 艦橋

 「どうだ? アメリカのPT魚雷艇は」

 「小型艦艇は、整備する備品数が圧倒的に少ないから稼働率も良い」

 「そして、相手に目障りな印象を与えやすい」

 「そうだな・・・艦型と動きをみると、イギリスのRN魚雷艇と同レベルだと思うよ」

 「どちらにしろ、日本海や玄界灘は、波が強いから活動が制限される、使い難いか」

 「狭い海域だから波が静かな時は、どんぴしゃで戦果が見込めそうだけどね」

 「どうしても時化が多い日本海や東シナ海だと中型か、大型艦に乗りたくなる」

 「極東アメリカ海軍は日本海、東シナ海の主力を1500トン以下と考えているようだが?」

 「時化の日が少なければ800トン級で数を揃えても良いくらいだ」

 「800トン級か・・・旧式化したら馬力を5分の1に落として、民間に売りやすい大きさだな」

 「時化で引き籠っている時、アメリカ大型艦艇が遊弋しているのを指を銜えて見なきゃいけないことかな」

 「しかし、数揃えて日本海沿岸や沖縄列島沖を遊弋されても目障りだ」

 「アメリカは、そんなに反日が強いのか?」

 「いや、朝鮮半島の併合と満州権益保護で日本と共闘中・・・」

 「張り合う意味ねぇ」

 「だって、軍隊弱いと寂しいじゃん」

 「それは言える・・・」

 「魚雷艇で颯爽と潮風と波を切って走りたいじゃん」

 「それも言える・・・」

 

 

 日本の外交上の安定と交易拡大は目を見張るものがあった。

 しかし、経済成長と裏腹に日本陸軍は致命的に分散していた。

 バルカン・カフカス駐留軍18個師団22万。

 日本・瑞穂州陸軍18個後備旅団15万。

 国防を憂う者は危機的状況だと認識していたが兵装の機械化と、

 戦後、高まる厭戦機運に助けられていた。

 むしろ、日本軍の脆弱さが日本の交易を拡散させていた節もあり、

 さらに列強各国とも増長させ後押しするような動きも見せた。

 飛行場

烈風

重量/全備重 hp 全長×全幅×全高 最高速 航続距離 機銃 爆弾 乗員
3400/4800kg 3667 10.9×14×4.23 775km/h 2630km 20mm×4 500トン 1

 烈風がターボプロップエンジンの爆音を響かせ飛走していく。

 シドレー・パイソン3667馬力は、イギリス製。

 5翔プロペラもイギリスから購入したものだった。

 流線形風防ガラスも当然イギリス製の特注だった。

 日本の国産技術は、ようやくグリフォンとマーリンのライセンス生産を可能にしただけであり、

 日本航空産業は、イギリス航空産業に対し、二世代ほど遅れていた。

 もっとも機体設計思想で遜色なく。

 翼面積30uを僅かに超えた機体は、軽快な運動性能を発揮する。

 「こりゃまた。凄い機体じゃないか」

 「レーダーも付いてる。イギリス製だけどね」

 「Ta152に勝てるぞ」

 「本当かな〜」

 「撃墜された苦手意識で、そう思えるだけだろう。スペックは勝っているんだよ」

 「イギリスで開発してるウェストランド・ワイバーンは、どうなんだろう?」

 「さぁ どちらにしろターボプロップエンジンなんて、まだ日本で製造できないだろう」

 「戦後を考えると、ターボプロップエンジンで戦闘機と爆撃機を開発していくしかないだろうな」

 「ジェット戦闘機は?」

 「まだ海の物とも山の物とも、まず冶金がね」

 「じゃ 例のやつで」

 「例のやつか、あれは、気が進まないな・・・」

 「戦争が終わると急に怖気付き始めたな」

 「まぁ 知らずに魔法を使っていた時代と違うし」

 「いまは、魔法のリスクも知られた時代で戦後だからね」

 「いまやっているのは、工作機械と土木建設だっけ?」

 「一番、効率が良いからね」

 「魔法は、瑞樹州の方が多くないか?」

 「日本は見張られて、物凄い疑われてるらしい」

 「どこかのバカたれが疑われるような事をしたんだろう」

 「いや、本土を空っぽにして主戦力を欧州に派遣させているから疑われて当然」

 「なに? 危ないのか?」

 「いや、神経質で小心者の日本人と思えないだと」

 「塞凰だけで十分守れると思えば、気も大きくなるよ」

 「まぁ アレを使うとリスクがある」

 「それじゃ 穴でも掘って、基地の抗堪性を高めないと・・・」

 「穴を掘るより、この烈風を量産しろよ」

 「工場を地下に移したいんだと」

 「まぁ アメリカ空軍が半島に配備されてたらそう思うわな」

 「しかし、金がないと何も出来んな〜」

 「バルカンとカフカスに予算取られてるんだよ」

 「一応、バルカンが5分の1、カフカスが4分の1ずつ負担で元取れているんだろう」

 「通信・交通・住宅・電力の投資分が回収されてないよ」

 「何か深みにはまったような気分だ」

 「アメリカ人も、そんなこと言ってたな」

 「アメリカは単独でも経済的に余裕だろう」

 「どうかな、アメリカ合衆国国内は、資本家が富を集め過ぎている」

 「そして富を失う事を恐れ、さらに富を集め権力を得ようとしている」

 「資本家が富を分配することを恐れ」

 「貧富の格差がさらに広がれば、労働者は離反する」

 「アメリカが一番恐れているのは共産主義だろう」

 「どうかな。代用可能な政体かもしれない」

 「アメリカが極東権益圏を反ソ・反共防衛線にするのなら好都合だ」

 「しかし、純粋な戦力比で大陸側に米ソの軍事力だぞ、ピンチじゃないか」

 「軍事的にピンチでも政治外交上だとそうでもないというのが政府の意見」

 「ちっ バカタレが日本人が黄色人種だという事を忘れてやがる」

 

 

 パキスタン分離独立。

 カラチ港

 イギリス巡洋艦スイフトシュア、オンタリオ

 日本巡洋艦大淀

 国民から吸い上げた税金で軍艦を建造し、

 軍艦を運用し、海外に軍艦を派遣するのは思ったより国力を消耗する。

 さらに砲艦外交を持ってしても利益を回収できないこと度々だった。

 少なくともこのカラチに巡洋艦以上の軍艦は存在せず。

 さらに言うとこの3隻が最強の軍艦といえた。

 インド独立とともにヒンズーとイスラムの対立が激化。

 パキスタンの分離独立運動でインドと抗争が始まっていた。

 インド国内最大のニザーム藩王国でさえイスラム圏帰属で荒れていたのだった。

 大淀 艦橋

 「イギリスもインド独立を認めたものの執着だな〜」

 「執着は良いけど、なんで日本も付き合わされるんだ」

 「イギリスは勢力を示せて、インド・パキスタン抗争に介入したいのさ」

 「いくらなんでもインドの再植民地化は無理だろう」

 「日本人外交官も降りて行ったから心配だな」

 「何かつまんない事に巻き込まれなきゃいいけどな」

 「日本外交が評価されていること自体、信じられないのだが」

 「隣の芝生は良く見えるのだろう」

 「だいたい、外交を発揮できるだけの資本も技術もないだろう」

 「ボスニア景気じゃないの、アレで評価が変わった」

 「ったくぅ〜 良いのか、あんなインチキで・・・」

 「欧米がインチキと判断していないからいいんじゃないかな」

 「だといいけど」

 

 

 

 東京湾

 26400トン級アメリカ客船アメリカ

 とある客室、

 暗闇の室内でサラエボ事件の映像が流されていた。

 「もう、いい・・・開けてくれ」

 船窓の暗幕が開かれると4隻の巨大戦艦が威並んでいた。

 「随分と早い日独友好だな」

 「ドイツも日本が気になってしょうがないようです」

 「戦後早々の和解で交易拡大を目指したか」

 「未知のモノに対する探求です。白人は未知に強い好奇心を抱きますからね」

 「日本が起こしている奇跡は、モーセ未満だ」

 「しかし、神の技でなければ、必ず仕掛けはある」

 「日本の奇跡の謎が解ければ、モーセの奇跡も解けるかもしれませんね」

 「ああ・・・しかし、東京湾も聞いたより、随分と発展しているな」

 「煙突の数で戦艦を何隻建造できる力があるか、検討が付きますね」

 「資源を海外に依存しなければならない国だ。3分の1は割り引ける」

 「ですが、一年おきに写真を変えると変化が良く分かります」

 「これなら来年の東京オリンピックも難しくなさそうだな」

 「日本は柔道を正式種目、弓道をエキシビションで出すそうです」

 「弓道?」

 「むかしの弓ですよ。いまならアーチェリーです」

 「どっちが良いのかな?」

 「日本人曰く、アーチェリーだそうです」

 「・・・なにか・・・東洋の神秘でもあるのかね」

 「それを見に来たようなものです」

 「期待を裏切って欲しくないな」

 「日本は、良い意味でも悪い意味でも我々の期待は裏切りますからね」

 「神秘的なモノがあるかと思えば、権威と年功序列に凝り固まった閉鎖的な社会」

 「大国然しているかと思えば、大同小異で分裂する小心者の国」

 「対処能力ばかり強調される、小手先だけのくだらない国」

 「世界に対し想像的な視野を持つ者は短絡的な人間に排斥される傾向がありますね」

 「無論、対立が少なく、画一性や底上げ的な公平感はある」

 「しかし、そこから導き出される姿勢は外圧がなければ変革されない受動的な精神でしかない」

 「根回しや世俗的な和を尊ぶだけの膠着した古いムラ社会です」

 「だが・・・何かある。我々が知りえない何か、我々が到達していない何か・・・」

 「物理学的な法則を無視している何か。無から有を生み出す、あるいは練金的な何かです」

 「アメリカ太平洋艦隊の司令長官と参謀は、日本側の図上演習で最優秀な者しかなれない」

 「しかし、最近は、得た情報が信じられず、まともな図上演習が出来ないそうだ」

 「将兵のほぼ全員が日本海軍艦艇のスペックを疑っているそうです」

 「巫女姿の少女が盆踊りを踊ったら黒鉛が工業用ダイヤになったは、なしにしてくれ」

 「失敗した部下をB級映画みたいに殺したくなったのは初めてだ」

 「イエス、マイロード」

 

 

 鋼の城

 「さぁ みなさん、これが世界最大最強の戦艦大和、武蔵です」

 「「「「おぉ〜!」」」」

 「ぜ〜ん〜ぶ。鋼です」

 「「「「おぉ〜!」」」」

 『『『『・・・道理で家に鉄が少ないと思ったよ』』』』

 「・・・日本国防省は君たち若い力を是非とも必要としています」

 「日本人の高潔で尊い戦いは、欧州大戦でも遺憾なく発揮され」

 「日本国の国威を世界的に高めました」

 「諸君の勇士が世界に羽ばたくのです・・・」

 “なんか、バルカン連邦の駐留に行かされるらしいよ”

 “げっ 嫌じゃん”

 “戦乱起きたら戻って来れねぇ”

 “やっぱ、生活安泰で安定収入が良いよな”

 “うんうん、公共事業で仕事一杯あるし”

 “人殺ししたくないな”

 “““うんうん、一般論。一般論”””

 “だいたい、尊い犠牲って、北樺太とニューギニア買うために死んだってよ”

 “““悲し過ぎる〜”””

 “俺らを犠牲にして、あんな奴や、こんな奴が、ノウノウと・・・”

 “““悲し過ぎる〜”””

 “もう、軍事政権もなさそうなヘタレで寂びれ斜陽省なのに・・・”

 “““悲し過ぎる〜”””

 “捨て駒じゃん”

 “““悲し過ぎる〜”””

 「・・・我が大日本帝国は、内政の失敗で戦争に突入するような事は、決してありません!」

 「皆さんの若い力で日本国の未来を切り開くのです!」

 「「「「はい!」」」」 敬礼

 本音という真剣は、嘘という鞘に納められていた。

 

 

 戦艦大和、武蔵と戦艦ビスマルク、ティルピッツが威並ぶ、

 相戦わずに済んだ4隻が並ぶことで戦後の日独関係が印象付けられ、

 新たな関係が模索されていく。

 第三国を経由した取引は損するだけであり、

 交易せず対峙を続ける方が国際的に不利になった。

 講和が済めば麻雀パイが混ぜられるように友好国としての取引が始まっていく。

 迎賓館

 「日本はバルカン連邦の国防をどのようにお考えかな」 ドイツ大使

 「国防とは、国家が国境内の権益、体制、伝統を守るためのモノ」

 「国防は、国民生活が侵略に脅かされる時に発動されるべきです」

 「国民も他国の軍隊が自らの生活を脅かそうと押し迫った時に銃を持つでしょう」

 「本来、国防は内向きであるべきと考えます」

 「なるほど、本来内向きにある国防国家の日本は、バルカン、カフカスに17個師団を配備している」

 「この件について、どういった認識を持ち合わせているのか、お聞きしたいですな?」

 「現在、バルカン諸国は本来あるべき姿を失っており、大同団結に欠けています」

 「日本軍の現地駐留は、現時点での国際環境における過程的結果であり」

 「連邦諸民衆の総意に基づくと信じておりますし、恒久的なモノではないと言えます」

 「日本駐留が過程的であるというのであれば、期限があるのでは?」

 「条約では50年間です。あとは、議会次第で、5年ごとの自動更新です」

 「なるほど、つまりバルカン諸民衆は、50年間の長きにわたって、自由な選択がなされないわけですね?」

 「国際間協定や条約は、国家も国民も守るべきです」

 「・・・なるほど、日本のバルカン連邦に対する姿勢は、理解できました」

 「時に・・・我がドイツ第3帝国は、第一次世界大戦で失った威信を回復」

 「現在、ヒットラー総統は退陣し、ナチス党も解散しています」

 「民主化も段階的に進んでいます。できれば、日本とも国交正常化を願っています」

 「ええ、我が日本国もこれ以上、ドイツ第3帝国との対立を望んでいません」

 「当時の内閣は、戦後、一新されていますし」

 「日本の開戦も、あまり褒められた背景があるわけではありませんから」

 民主主義国家は、頭を挿げ替えてやり直しができた。

 それは、君主制民主主義でも同じであり、

 イギリスは総理大臣がチャーチルからクレメント・アトリーへと交替し、

 日本も誰でも良いからと首相入れ替え内閣交替。

 新しい戦後、国際関係が構築されていく。

 とある一軒家で電話が鳴る。

 「はい・・・これは、総理大臣閣下、就任おめでとうございます・・・・」

 「法務大臣・・・お断りします」

 「・・・い、いや・・・それは、知らなかったから・・・」

 「・・・し、しかし・・・・」

 

 

 

 瑞樹州

 日本人の入植は始まったばかり、

 移民の障害となる家督相続、長子相続制が廃止され、

 二子以降にも財産が分配され、少しずつ移民が増えていく。

 産業は、人口に合わせて貧富の格差を広げて資本を集約させ、

 労働者を投入することで工業化を加速させ、市場を拡大させる。

 なので移民による人口の分散は日本にとって不利といえた。

 それでも分配地の大きさに惹かれて入植者は増えていく。

 第一次産業、第二次産業、第三次産業が少しずつ興り、

 土壌と生態系の研究もこれから、人間の生活形態も模索中だった。

 そして、人里離れた陸の孤島、

 標高1500mほどの高原に特務農業学校が建設されていた。

 ここに第四次産業とされた魔業関係者が集まっていた。

 より高い峰から清水が流れ、水田が作られ、小麦などいくつかの作物が作られていた。

 教職員は15人程。

 生徒は、全国から選抜され、

 陽性反応があった少年少女60人で13歳から16歳までバラバラ、全寮制で過ごしていた。

 学校経営とだと赤字。

 しかし、魔業で一仕事するだけで数年分かと思える運営資金が報酬として入ってくる。

 少年少女の学業は3つ、

 森雄の作った障害物コースを毎日走るなどのほか鍛錬。

 机上での勉強、

 そして、農業学校だけあって、農作業と畑仕事が残りの3分の1を占めた。

 寿命を奪うのだから教えても無駄になると思えなくもなく。

 奪った寿命分だけ人生を充実させたいと思わないでもない。

 赤道近くの高原は雨が多い割に湿気が少なく。

 太陽の照りが強い割に涼しい風が流れ、野鳥、小動物が躍動する。

 瑞々しい草木が育ちやすい世界だった。

 校舎から生徒たちが三々五々現れる。

 「・・・やっと雨が上がったよ」

 「雨が降るたびに机の上で勉強時間だから上がるとホッとするよ」

 「また草むしりだ」

 「雑草ほど、よく育つわね」

 「人間が雑草を食えれば、食糧問題解決だね」

 「よし、試しに・・・」

 ・・・うぇ〜

 「火墨・・・心意気だけは、買ってあげよう」

 「でも、トウコちゃん、魔法でやってみたらいいかも」

 「んん・・・な〜る」 ぽん!

 つんつん つんつん

 「水戸君。なにしているの?」

 「アリさんだよ。カゲハちゃん」

 葉を運ぶアリの列が続いていた。

 水戸は道を塞いで面白がる。

 「噛みつく?」

 「痛いよ」

 そぉ〜

 かぷっ

 「本当だ。いたい〜」

 カゲハの指にアリがぶら下がる。

 「よし、カゲハアリに命名〜」

 「えぇ〜!」

 

 

 職員室

 「次の仕事はまだなのかな」

 「最近、仕事が減ってますね」

 「子供たちに教育していると愛着が出てしまって、ちょっと命令を出し辛いよ」

 「エゴが弱いと、ああいう子たちが集まるんですね」

 「しかし、知らなかったとはいえ、頭痛いよ」

 「知らずにやっていたのなら救いはあります」

 「まぁ 知っててやるのは、ちょっと・・・」

 「みんな公益性が高く、きちんと教えれば優秀な生徒ばかり、一般で働いても成功しますよ」

 「それに気付かせないでくれ、また、頭が痛くなってきた」

 「「「・・・・」」」

 「それより、魔法の杖と飛行石の分析は、進んでいますの?」

 「“分からんね・・・” だと。その道の権威が使う言葉か?」

 「その道って、専属チームが選抜されたの最近でしょ」

 「ロクな学者がいないと来てる」

 「この日本で、学者で食っていける人間は少ないよ」

 「その少ない学者を取り合いになれば、どうしても貧弱になるさ」

 「日本だけでやろうとするから難しいのかもしれないな」

 「国益と直結してますからね」

 「国益でも奪う寿命は20年以下にしたいね。可能なら15年以下・・・」

 「それには、もっと生徒を増やさないと・・・」

 「あまり大っぴらにやると欧米諸国に勘ぐられるからな」

 「もう、かなり怪しまれているらしいですよ。この手前にある駐屯地の一つに来たとか」

 「回りを政府関連施設で囲んでいたら、誰でも怪しいと思うだろうな」

 「その時は、また引っ越しですかね」

 「その前にもっと研究を進めたいな」

 「魔力発生と奪われる寿命の関係がまだ判明していないのが辛いですね」

 「使った魔法を記録してれば良かったな」

 「そうですね」

 「異世界ガイアに行ってみたいな」

 「戻って来れませんよ」

 「いい、罪滅ぼしで行きたい」

 

 

 日本政府が魔業を秘匿した事は勿論。

 人の命を削るため良心の呵責に耐えかねたのか、運用も神経質になっていく。

 魔業開発の序列が内閣で審議され、

 死刑執行を行う法務大臣に最終判断を押し付けられたのは、戦後しばらくしてからだった。

 当然、序列順に印鑑待ちの書類が積みとなり、

 法務大臣は無言の圧力を受け始める。

 犯罪を犯した人間の死刑判決でさえ、冤罪の可能性で躊躇するのに、

 社会貢献させて寿命を縮めさせては、国家犯罪と言えなくもない。

 そして、大蔵省詣でならぬ、法務省詣でが始まり・・・

 法務大臣室

 「日本国家国民のため、是非とも、お願いたします」

 男たちがペコペコ頭下げて出ていく。

 「・・・くっそぉ〜 あいつら〜 俺に押しつけやがったな」

 「子供が20人も死ねば、誰でも退きますよ」

 「どいつもこいつも、俺に圧力を掛けやがる」

 「自分が押さないのであれば責任転嫁で楽ですし」

 「執行人も命令されたからと開き直れますからね」

 「だから嫌だって言ったんだ」

 「死刑囚ならいやってほど押してやるのに・・・」

 「保身の弱い気質が最低条件だそうで、それを犯罪者に求めるのは・・・」

 「違うな。森雄はやって見せた」

 「自分の命を削る気でやれば、魔力を発生できる」

 「では・・・」

 「ふ 自分も含め、何人かの将兵でやってみたが駄目だったな」

 「子供たちを二十人も殺した。気概でなく才能がなかったと思いたいが・・・」

 「そうですか・・」

 「国益なのが救いだ。しかし、功労者以外の者が受益を受けるなど・・・」

 「総理大臣の椅子だと思って」

 「誰がなるか!」

 「扉の向こうで寝ずの役人が待っているのでは?」

 「・・・くっそぉ〜! 押してやる」

 ペタンッ!

 「大臣。それ、死刑囚の方です」

 「押せるか!」

 なぜか日本の法務大臣の病気辞任は多くなる。

 

 

 バルカン連邦とカフカス連邦、

 イギリスにとっては、インドの代償で得た欧州の拠点であり、

 日本にとっては、日欧貿易の根拠地ともいえた。

 無論、戦争が終わり、厭戦機運が高くても、いつ戦雲が高まるかしれず。

 失いやすい利権といえた。

 そして、日本は、ルートが確保された巨大な未開地の瑞穂州が存在する、

 当然、日本から孤立した小さな世界に行きたがる人間は少ない。

 日本にとってドデカニソス諸島(2663ku)は、そういう小さな世界だった。

 しかし、日本人の移民は、意外にも早く、欧米諸国民を驚かせる。

 欧州に対する幻想を持つ、向こう見ずな人間が7〜8万程度いたのであり、

 総人口8000万のなせる技といえた。

 地中海

 イギリスの拠点がクレタ島(旧ギリシャ領)に建設され、

 日本の拠点はドデカニソス諸島(旧イタリア領)に建設されていた。

 自治回復の代償として土地を切り取られたギリシャだった。

 とはいえ、バルカン全域が市場になった効果は大きく。

 ギリシャに戦争を仕掛けられる国は存在しても、

 バルカン連邦に戦争を仕掛けられる国は、いまのところ存在しない。

 切り取られた土地の代償利権も、それなりに認められて経済回復も早かった。

 

 クレタ島沖

 巡洋艦 阿賀野、能代

 巡洋艦 ケニア、ナイジェリア

 日英同盟艦隊が遊弋していた。

 阿賀野 艦橋

 「ギリシャもようやく、折れたか」

 「クレタもキプロスも欲しいじゃな〜」

 「元々、トルコ参戦がなければ戦争は終わらなかったと思うよ」

 「というより、スペイン参戦で負けていたからね」

 「トルコ参戦がなければ、最終的に地中海から敗退もあった」

 「どう考えても、ギリシャの言い分は通らないよ」

 「だけどギリシャがキプロスから退くのは分かるけど、トルコもキプロスを退くなんて厳しいのかな」

 「シリアもレバノンもアラブ・イスラムだからね」

 「どちらにしろ、日本もイギリスも権益がなければバルカン、カフカスを守る気になれないからね」

 「孤立した拠点じゃな」

 「ジブラルタルがないのだから、日本もイギリスも地中海に拠点が必要だよ」

 「だけど、どの道、守れないよね」

 「生きんとする者は死に、死人とする者は生きるじゃないの」

 「死中に活があればいいけど、金がないらしいから、どうかな〜」

 イギリスのキプロス(9251ku)領移転が決まり、

 ギリシャ(バルカン連邦)にクレタ島(8261ku)の返還が決まる。

 そして、キプロスの住人がシリア・レバノンに移動しトルコ統治が強まっていく。

 

 

 巡洋艦 ケニア 艦橋

 「やれやれ、ギリシャもトルコも粘りやがって、飛んだ無駄な歳月を費やした」

 「日英同盟の基盤が脆弱な事が幸いしたかもしれませんね」

 「日英同盟が地中海から退けば、独伊同盟が支配する世界だからな」

 「トルコの発言権が強いのですから、ギリシャがごねても、どうしようもないはずですがね」

 「生まれ育った土地を離れたくないのだろうな」

 「イギリス人もです。キプロスに根付くでしょうか?」

 「さぁな、足りなければ日本人を入植させればいい。都合のいい駒だ」

 「良いんですか、そんな事を言っても?」

 「イギリスは、インド以外の全ての植民地を失っても生き延びることができる」

 「しかし、インドを失えば、イギリスの太陽は没する」

 「しかし、日本を味方にできれば、もう一度、イギリスの太陽を昇らせられる」

 「バルカン連邦の地勢学上の価値とバクー油田は大きいですからね」

 「アメリカに油を依存しなくて良いのが助かるね」

 イギリスにとってのインド人は、日本人に変わりつつあった。

 

 

 

 バルカン連邦

 ここはおくにをなんぜんり〜 はなれてとおきバルカンの〜

 あかいゆうひにてらされて〜 ともはのずえのいしのした〜

 日本軍将兵が自棄になって歌った曲を青い目の子供たちが面白がって覚える。

 歌詞の重みとか意味するところを知らない子供は、物悲しさなどどうでもよく。

 笑い声と混じったりもする。

 戦死者の数は、インド兵士が圧倒的に多いのだが戦友が死ぬと悲しく。

 居残りは、もっと悲しかったりする。

 好運だったのは、支配している日本軍が意外と引き籠りで大人しかったことであり、

 それまでの侵略軍や民族軍より人畜無害振りが好感を持たれ。

 サラエボの暗殺未遂以後、日本軍駐留は、一定の評価こそされていた。

 とはいえ、いつ、こめかみを砕いて銃弾が突き抜けてもおかしくない世界だった。

 即死が良いか。

 死の恐怖と痛みに耐えながらも心の準備をする方が良いか決めかね。

 日本軍駐留軍の精神は酷く緊張し、同時に脅え飢え渇いていた。

 日本軍将兵たちが西の空を見ながら黄昏る。

 「・・・日本に帰りてぇ〜」

 「何で日本人がバルカンのために血を流さなければならなかったんだ」

 「血を流したのは、バルカンのためじゃなくて、北樺太と瑞穂州のためじゃないの」

 「何で俺たちがバルカンに置き去りなんだよ」

 「師団長がジャンケンで負けたからじゃないの」

 「全18個師団派遣じゃ 勝ち負け関係ねぇじゃないか」

 「日本の後尾旅団の志願兵が少ないってよ。だから交替要員も遅れてる」

 「ちっ だから公共事業投資に反対したんだよ。政府も、わかっちゃいねぇな」

 「公共投資は、人材を取られて徴兵できなくなるからね」

 「でも、こっちの言葉覚えたら現地邦人会社入社で、日本自治街で、のんびり生活できるってよ」

 「寂し過ぎる〜」

 「ちきしょう〜!!! 置き去りにするなら金寄越せ〜!!!!」

 「「「ちきしょう〜!!!! おきざりにするなら かねよこせ〜!!!!」」」 現地の子供たち

 アハハハ! キャッ! アハハハ! キャッ! アハハハ! キャッ!

 「・・・満州より遠いから悲壮だな」

 「だけどバルカンならヨーロッパ人」

 「そ、それはステータス高いけど。黄色人種なのは変わらないよ。差別されるだけ」

 「だいたい、スエズが閉鎖されたら帰るに帰れないじゃないか、分が悪過ぎるよ」

 「もう、人質だな」

 「ドイツ帝国は、とりあえず満足しているから戦争にならないと思うけど」

 「ソビエトが不平不満で攻撃的じゃないの?」

 「ドイツとアメリカに挟撃されて、それどころじゃないと思うよ」

 「だと良いけど」

 「ソビエトが攻めてきたら今度は、アメリカとドイツが味方」

 「能天気な奴だな。全部、反日になったらどうするんだよ」

 「その時は・・・」

 ゆきのしんぐんこおりをふんで〜 どれがかわやらみちさえしれず〜

 うまはたおれるすててもおけず〜 ここはいずくぞみなてきのくに〜

 ままよだいたんいっぷくやれば〜 たのみすくなやたばこがにほん〜

 「・・・ガキどもが・・・ もっとマシな歌を覚えれば良いのに・・・」

 「そういう軍歌ばっかり歌ってるからだろう」

 

 

     

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 戦後です。

 米ソの軍事力に圧倒されつつも、国際外交上は勢力均衡状態。

 さらに好景気で庶民の生活水準が上がっていきます。

 さて、インチキには、寿命(命)という代償が必要でした。

 この手の良心の呵責を総理大臣に押し付けられては国政に支障ができるのでしょうか。

 誰も彼も、不浄な代償の大きさに利権を押し付け、

 ついに法務大臣の決済にされてしまいました。

 

 

 こだわりを持つことは、物事を深く理解し、可能性を切り開く要素になるでしょう。

 ですがこだわりを持つゆえに高い視点が低くなり、視野も狭まっていく。

 欧米諸国は、日本の特異現象に対し、そういう状況に追い込まれていくことになりそうです。

 大局観の喪失は、国策に影響を与えます。

 日本が有利になっていくか、不利になっていくか、微妙です。

 

 

 

 Q) 下火と言われる架空・仮想戦記について?

 

   A)  うぉおお〜 やられはせんぞー 貴様ら如きに やられはせーん

      架空の栄光 この俺の仮想

      やらせはせん やらせはせん やらせはせんぞー!

      ワハハハハハハハハ〜〜〜!!

      「ん・・!?」

      どっか〜〜〜ん!!!

 

 

 

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第06話 1946年 『戦後、始まりの終わり』
第07話 1947年 『ここは御国を・・・』
第08話 1948年 『獣=666=人間』