月夜裏 野々香 小説の部屋

    

ファンタジー系火葬戦記

 

『魔業の黎明』

 

第09話 1949年 『富国強兵病かな』

 日本国軍の6割将兵22万は、国防と無関係ない欧州に駐留していた。

 平時の抑止で不利益であり。

 いざ戦争になれば孤立、各個撃破の可能性も高まる。

 国際的な流れで押し切られてしまったにせよ、

 日本の国情は、ローカルな勢力均衡を不可能にしていた。

 そして、グローバルな国際間集団的利害調整を主とした外交政策に移行していく。

 無論、そういう方向に日本を押しやっているのは欧米諸国であり、

 日本が焦燥感に駆られて軍拡疲弊するのを高みの見物で見ていただけだった。

 ところが日本国防省は、戦後軍縮に従って軍需を減らし、民需へと移行していく。

 欧米列強は、日本の歴史と国情と文化を研究し尽くしており、

 日本が数倍の国力と軍事力を保有しているかのような政策を奇異に感じ、

 また、大胆な外交戦略も不自然に見えた。

 偶発的な暗殺事件で第一次世界大戦のような不測の事態も起こり得た。

 もっとも、テロは、サラエボ暗殺未遂事件以、テロ側に降危ぶまれ、

 ガンジー暗殺未遂事件以降、テロを躊躇させていた。

 テロが失敗すれば、自分の身が危なくなり、

 それが神の意志の様に扱われては元の黙阿弥。

 原因究明まで暗殺事件そのものが躊躇されたりする。

 バルカン連邦で暗殺に関わった勢力は大きく後退し、

 インド・パキスタンは、ヒンズー・イスラム教の相互参政権が承認され、

 緩やかな連合国家に移行していた。

 

 

 

 

 日本は、バルカン連邦の交通・鉄道・通信・石油を押さえていた。

 そこから上がる利益は莫大でも、イギリス、トルコにも配当しなければならなず、

 軍事力を維持しなければならない。

 日本資本は各国から資金を受け、

 国境線を考えず発電用ダムを建設し、配当していく。

 日本は江戸から明治・大正・昭和と激動の近代化を達成しており、

 多少難問があっても、

 「あの人?」

 こくり

 「そう・・・」

 8歳くらいの農村の少女が一人の老紳士に近付いて野花エーデルワイスを渡す。

 「はい、おじいさん」

 !?

 「神様がやめろって」

 「・・・・」

 農村の少女は、老紳士に花を渡すとスキップをしながら去っていく。

 老人が振り返ると少女は掻き消え、エーデルワイスだけが手に残されていた。

 インチキで乗り越え、

 近代化の焼き増しをバルカンで行う事ができた。

 バルカンの風景が少しずつ変わり、

 近代化が進めばバルカン人も誰かが得をする社会になっていく。

 バルカン連邦は見栄えの良い大国と言えなくもなく、

 巨大市場は、流通と産業を活性化させる、

 バルカン諸民族は、小国化による国防危機も経済的自殺も御免蒙りたいのか、

 日本軍駐留は思いのほか安定していた。

 射撃場、

 バルカン自衛団が射撃練習をしていた。

 戦争が始まれば、自衛団への武器供給が約束されており射撃練習ができた。

 日本軍将兵たち

 「武器の扱いが分かればいいか」

 「戦場で新兵の前に立つほど怖いものはないからね」

 「それでなくてもバルカン将兵の前に立つのは怖いよ」

 「敵味方識別が困難なのに連携作戦は不可能じゃないか」

 「だから平時は、日本が国軍を担当しているんだろう」

 「少なくとも日本人同士なら敵味方識別で有利だ」

 「連中に撃たせるのだって一種のガス抜きだよ」

 「いざとなったら自ら自身で国を守れる自己満足が不穏な動きを押さえる」

 「だけどいろんな民族がいるな、利己主義が強過ぎて、統制の効きそうにない連中もいるし」

 「国家のために犠牲になるなんて、真っ平御免ってやつか」

 「しかし、そういうやつは、権益と保身を守るための戦いで最強だぞ」

 「逆に愛国心とかで固めていると主体性弱いから守勢に回ると、ぼろが出るね」

 「でも最近は、日本人が増えて、郷土防衛って感じじゃないか?」

 「ちょっとだけね」

 「でもガス抜きっていっても、人間の感情が理想通りいくかな」

 「まぁ 奇跡のおかげで、負の感情が抑えられればいいけどね」

 「奇跡ねぇ 外国人に奢ってもらってあれこれ聞かれたけど、何なんだろうね」

 「そういえば、聞かれたな。俺たちが何か知ってるみたいな感じだったぞ」

 「しかし、普通、当たるよね」

 「まぁな、銃弾探すと屋根の上とか、とんでもない場所にあったし」

 「どちらにしても、戦争したくねぇ」

 「まぁ バルカンじゃ 死にたくないよ」

 「ドイツ次第かな・・・」

 「最近は、イタリア海軍が怖いよ」

 「やっぱり、イタリア海軍が伸びるかな」

 「チュニスとリビアは、危なそうだな」

 「ヴィシーフランスは、本気でアルジェリアを落とそうとしている、戦力として考えなくていいか」

 「自由フランスは、北フランス人を海外領に移民させる動きを見せてるから微妙だな」

 「ドイツ帝国は北フランス部を欲して、前向きらしいけど」

 「ドイツが未開地で余裕があれば、戦争回避にはなるよ」

 「それが、いつまでもつやら」

 「どっち付かずのアメリカが政策的に矛盾して微妙なんだよな」

 「純粋に市場が欲しいだけだよ」

 「戦争特需で味をしめていなければ良いけど」

 「いや、十分に味をしめたと思うよ」

 「やれやれ・・・」

 「おーい、新型の銃が届いたぞ」

 机の上に新型アサルトライフルが乗せられる。

 「これが・・・日英共同規格か・・・」

 「かっこいい〜」

 「イギリスのゴリ押しじゃないの」

 「まぁ しょうがないよ」

 「取り敢えず。旧式は、バルカン・カフカスで消化するらしいよ」

 「ふ〜ん」

 日英土同盟とバルカン・カフカス連邦の武器体系の規格共有が進められていた。

 どういう形、どういう組み合わせで戦争が始まるにせよ。

 部品・弾薬が共有であれば、それだけで有利だった。

 日英戦後共同規格は、戦後、イギリスへに移籍したFN社で開発された小銃だった。

    弾薬 重量 銃身長/全長 装弾 初速 発射速度 射程
日英 FN FAL 7mm×43 3.5kg 623/889 20 771 600発/分 700
独伊 StG44 7.92mm×33 5.21kg 419/940 30 685 500発/分 300
AK47 7.62mm×39 4.3kg 415/870 30 730 600発/分 600
M1ガーランド 7.62mm×63 4.5kg 610/1108 8 848   1500
M1カービン 7.62mm×33 2.49kg 458/904 15・30 600 850発/分  

 「FN FALか、射程も長いし、反動も小さい。悪くないじゃないか」

 「イギリスの7.7×56R、日本の6.5mm×50の中間的な銃と言えるね」

 「ちっ 6.5mm×50で良いじゃないか」

 「まぁまぁ ここは折れてイギリスの言い分を通そう」

 「・・・しかし、装弾はともかく、同じ銃を使うのは、ちょっと芸がないかもね」

 「しょうがないよ」

 「バルカン・カフカスは、日本からもイギリスからも遮断される場所にある。なるべく規格は合わせたい」

 「それが最大の問題かな・・・」

 「イギリス、日本のどちらでも供給できる弾薬にしないと」

 「バルカン、トルコ、カフカスでも生産するんだろう」

 「だいぶ後になりそうだけどね」

 「信用できないか」

 「それが最大の問題」

 「武器は、日本領ドデカネス諸島とイギリス領キプロスで生産した方が良いよ」

 「とりあえず、携行兵器が決まれば、それを元に兵器体系を構築できるね」

 「問題は拳銃だな」

 「イギリスは拳銃を開発しないのか?」

 「らしいよ」

 「不便だな」

 「というより頑固」

 「拳銃は国防というより、治安維持が大きいからね。イギリス国内はあまり必要ないとか」

 「アイルランドが独立するから。それに北アイルランドは荒れているらしい」

 「バルカン連邦も需要が多そうだな」

 「それは困る」

 「イギリスは、9mm×19で短機関銃を開発してるらしいけどね」

 「じゃ その線で自動拳銃を開発するか、同盟諸国内で規格自動拳銃がないのは寂しい」

 「またFN社が作りそうだな」

 「日本国産を応援したい」

 「あははは・・・」

 

 

 

 カフカス連邦

 状況はバルカン連邦と似ていた。

 違うのは配当国にソビエトが増えていることだった。

 北のソビエト、南のトルコに挟まれ、

 東は黒海、西はカスピ海で日英の支援は、バルカン連邦より不利であり、

 日本軍は緊張を強いられる。

 もっともソビエトは、ドイツ帝国とアメリカ合衆国に挟撃されて引き籠っている状況であり、

 それほど悪くないとも見て取れた。

 問題があるとすればアルメニア人の気質が朝鮮人に似ていることであろうか、

 もっとも、アルメニア女性は美人が多く、

 多くの日本人が騙されることになった。

 バクー油田

 パイプラインがグルジアの黒海側、

 もう二つが北のソビエト側と南のトルコ側へと伸びていた。

 日本人ばかりが住む、駐屯地・租界地があり、

 日英土ソ同盟の商人もそこに集まっていた。

 バクー油田以外で欲しい資源は少ないとはいえ、

 資産家数万人を満足させられる程度、豊かな土地であり、

 上手く利権に食い込みたいと利権を漁っていた。

 とはいえ、オスマントルコに支配されていたころより自由であり、

 ソビエト連邦に支配されていた頃より豊かだった。

 この脆弱で危なげな体制は、続く事はないと思われていた。

 しかし、予想外にカフカス連邦を安定させていた。

 大カフカス山脈カスピ海北岸にソビエト国境が横たわっていた。

 ほとんどの国境線は山脈によって遮られていたが海岸線は低地であり、

 ソビエト戦車隊の侵攻ルートと言えた。

 戦う気がなくてもソビエトの侵攻を誘惑させるのはまずく、

 駐留基地は頑強な要塞と化していく。

 山岳の地盤のさらに地下にまで地下通路が建設されていた。

 そして、山頂側にトンネルが掘られて、BL5.5インチ(30口径140mm)砲が配置されていた。

 射程は14000mほどあり、堅固なトーチカーに配置されているため、

 センチュリオン戦車より頼もしく見えた。

 「ようやく、トンネル堀の許可が出たよ」

 「バクー油田を守っているというのに、やれやれだ」

 「まぁ 油田があってもね。そのまま売っただけじゃ 大した額にならないから」

 「商品にまで加工して売らないと利潤がないってか」

 「4ヵ国合資のコンビナート建設でカフカス連邦のGDPが上がったな」

 「一時はどうなることかと思ったがね」

 「どちらにしろ、利権が集まり過ぎるのは、問題じゃないか?」

 「配当金さえ、渡せば、問題ないんじゃないの」

 「結局、師団を維持するだけの国民が必要ってことかな」

 「中国大陸より不利だから来たがる日本人がいるのやら」

 「いまのところ安定しているけど、孤立してるから怖いし、命懸けだよ」

 

 

 日本黒海・地中海艦隊 1680トン級吹雪型(曙、漣、潮、暁、響、雷、電)

 暁 艦橋

 日本海軍将校が双眼鏡で水平線を見渡していた。

 アメリカ商船が北上して、ウクライナのオデッサ港に向かっているのが分かる。

 ウクライナを独立させてしまったのは、バルカン連邦のおかげだった。

 ドイツは地政学上の不利益を避けるため、

 そして、アメリカの圧力。

 ソビエトの脅威のため、ウクライナとベラルーシを独立させただけといえる。

 そして、アメリカが漁夫の利でウクライナとベラルーシに足場を作ろうとしていた。

 「・・・なんか、退屈だな」

 「戦意が低いと退屈だな」

 「ソビエトが攻めて来るってことはないのか」

 「欧州のドイツと極東のアメリカに挟撃されてちゃなぁ」

 「ソビエトは、引き籠ってる状態か」

 「その方がソビエトも国力が伸びるんじゃないか」

 「膨張しなくても資源、人材、国土が豊かだからね」

 「だが、寒冷地だ、天候不順一つで餓死者多数。内政が大変だな」

 「スターリンは餓死者なんか気にしないよ」

 「んん・・・スターリン支配は、史上最悪の恐怖だろうな。国民がかわいそうだ」

 「だけど、粛清で新陳代謝が早くて良いかも」

 「それも殺伐としててなんかいやだな」

 「ウクライナは民主主義国家になりそうなの?」

 「民主党、共産党、自由党で分かれてるらしいよ」

 「ベラルーシの方が自由主義が強そうだな」

 「アメリカ資本を引き込みたいんじゃないか」

 「ドイツとソ連に挟まれて、場所的に辛くないか」

 「逆にドイツでもなく、ソ連でもなくで釣り合っているんだよ」

 「だと良いけどね」

 

 

 日本

 男たちの前で銃口を震わせている男がいた。

 「法務大臣・・・」

 「もういい。お前たちは、銃を降ろせ」

 「しかし・・・」

 「私は人生を諦めている。お前たちも出世を諦めてくれ」

 「「「「・・・・」」」」

 「・・・・」 ごっくん!

 「撃て! 例え私が死んでも、お前の罪は問わない」

 「この男は逃がしてやれ」

 「し、しかし・・・」

 「構わん。しかし、機密は漏らすな、助けようがない」

 ばぁ〜ん!

 腕が撃ち抜かれ、血が滴り落ちる。

 「大臣!」

 「お前たちは、銃を降ろせ、何度も言わせるな!」

 「私は罪のない国家功労者の寿命を削ぎ取ってきた」

 「これくらいの痛み、心地良いくらいだ」

 「く、来るな」

 「撃て、野伏裏 ヨシロウ。娘の仇なのだろう。わたしがそうだ」

 ばぁ〜ん!

 外れる。

 「私を撃ち殺せ! そして、お前が法務大臣になればいい」

 !?

 「さぁ 撃て!」

 「・・・・」

 襲撃者が崩れ落ちる。

 この事件は、闇から闇へと葬られ、

 事件そのものが、なかったことにされていく。

 

 

 華僑資本が中国の資源を日本に運び込む。

 なので、なぜ中国人が日本を歩いているのかという言及は必要ない。

 彼らは、当然の様に日本の街を歩き回り郊外に出ると、

 周囲を気にしながら鉄塔の集団を見上げる。

 疑われている場合は、日本の憲兵に監視されるが行動が無害であれば、それ以上ではない。

 「・・・あれが、チェーン ホーム レーダーあるか」

 「・・・半島のアメリカ軍のモノと似てるある。性能は不明ある」

 「問題は、レーダーの精度と、対空ミサイルがどこまで連動されているかある」

 「取り敢えず。貧民層と接触して金に任せて味方に取り込むある」

 「貧富の差が広がると、貧民層は辛いから簡単に転がるある」

 「足場を作ってジワリジワリと浸透していくある」

 イギリスと同様なチェーン ホーム レーダーが西日本の沿岸側に建設されていた。

 イギリスがバトルオブブリテンで使ったレーダー兵器は、日本へも移籍され、

 科学技術的には、ほぼ習得。

 もっとも、科学技術を工業化する段階で多少足踏みしていた。

 資本、人材、資材が不足していたのだった。

 日本軍将校たちが中国人の集団とすれ違っていく。

 「・・・余剰兵器を縮小してもレーダー網を完成させたいものだ」

 「レーダー網と対潜網に予算を取られたら正面装備が不足する」

 「奇襲を受けるよりマシだろう」

 「そういう時は、先制攻撃」

 「・・・なるほど、危なくアメリカと戦争になるわけだ」

 「結局、戦争未満だったんだろう」

 「しかし、アメリカが極東権益地を完全に確保してしまうとまずいだろう」

 「その時は、反日より反米の方が強まるよ」

 「だと良いけどね」

 「半島をアメリカにやるからこんなことになる」

 「まぁ 良かったんじゃないか、国民は危機意識を持ってくれるし」

 「それなりに国防費を掛けてくれる」

 「それなりにな」

 「ランカスターに大型レーダーを装備して、巡回させる方が良くないか」

 「低空用レーダーも配置しないとな」

 「もう・・・金がねぇ」

 戦後、軍は、膨れ上がった軍用品をいつまでも抱えておくわけにはいかず民間に放出する。

 民間機、民間船が戦後大幅に性能を向上させてしまう事は、良くある事と言える。

 とはいえ、民間で重視・期待されるのは採算効率の良い民間機、輸送船、自動車、鉄道であり、

 採算効率の悪い軍用モノは採算性が低く、影を潜めていく。

 なので民間は民間で早々に効率の良い、民間機、民間船を開発しなければならなかった。

 輸送機

現用機 自重/全備重 hp 全長×全幅×全高 翼面積 巡航速/最高速 航続距離 乗員/乗客  
アブロ・ヨーク 18150/29480 1280×4 23.9×31×5 120.5 /479 4800 4/〜60  
零式23型 7540/12500 1500×2 19.7×29×7.4 91.7 278/393 3270 2/〜21  

 「現在ライセンス生産出来ているのは、グリフォン2076馬力、マリーン1280馬力のエンジン」

 「しかし、戦後の航空産業を睨んだ航空機なら試作量産中の烈風と同じ、パイソンだろうね」

 「ターボプロップ3667馬力か。まだ35パーセントくらいだけど、軍兼用だろうね」

 「高価な機体だから。軍で保証するか、補助金ださないと民間は買えないよ」

 「軍がパイソンを使うなら、民間もパイソンで揃える方が良いと思うがね」

 「パイソンのライセンス生産率はどのくらい?」

 「35パーセント」

 「ジェットエンジンは?」

 「燃費がな・・・民間じゃ 作れねぇ」

 「軍は、対空哨戒機、対潜哨戒機、輸送機を前提に開発して欲しいらしいよ」

 「塞凰にやらせればいいのに・・・」

 「塞凰は1隻だけだからね。瑞樹州で空輸業ばかりだそうだ」

 「辛い使い方だな」

 「30ヵ所に都市を建設しているから、塞凰を使い潰しても瑞樹開発をやるべきだろうね」

 「暑い上に雨が多くて大変らしいじゃないか」

 「標高の高いところばっかりらしいよ」

 「資源開発した後は楽だろう。金の採掘も増えてる」

 「金か・・・生活水準が高くなり過ぎるとイギリスみたいに足元すくわれるぞ」

 「早く、鉄道を建設しないと、いつ町を作ったのか疑われるぞ」

 「最初から輸送機が降りられる高原があったって、言い張るんじゃなかったっけ」

 「日本人でさえ、信じてないことを云い張れるかよ」

 

 

 九十九里浜

 歩哨が監視する外側に民間人が集まり、白人も混ざっていた。

 日本軍将校が沖を見守っているなか上陸用舟艇が砂浜に乗り上げ、

 センチュリオン戦車が降りてくる。

 「52トンか・・・頭いてぇ」 ため息

 「70cm近い厚みのコンクリートでアウトバーンを造るなんて馬鹿げてるよ」

 「明治維新から、まだ81年だぞ。後進国をなめんじゃねぇよ」

 「しかし、戦車の大きさが決まると、上陸用舟艇の大きさが決まって・・・」

 「揚陸艦の大きさも決まってくるな」

 「ないよ。金」

 「結局、国内配備を考えると港湾だけでなく、基幹道路全部舗装しないとな・・・」

 「また予算取られるんじゃないか」

 「人口は増えているんだから、このまま、積極財政でやっていけ良いんだよ」

 「インフレになると弱者は辛いぞ」

 「なんか、平和になるとヒューマニズムが強くなるからな」

 「偽善は足を引っ張るからね」

 「まぁ 鉄道で戦車を運べれば楽だよ。しかし、爆撃されたら遮断されるだろう」

 「しかし、海底トンネルは、軍民とも有用ではある」

 「でも下関、津軽、宗谷、豊予、鳴門、友ヶ島、明石、浦賀の海峡は監視されてないか?」

 「ちっ 暇人が・・・」

 「先に瑞樹州で、内地は後回しだな」

 「疑わしいのは追い返せばいいのに・・・」

 「自由貿易は、日本の国益になるよ」

 「アメリカ権益地から農作物が入ってくるとまずいんじゃないか?」

 「日本・台湾人も働いているから、身内同士で首を絞め合っているような気がするな」

 「アメリカ権益地は、朝鮮人と漢民族を扱き使えるんだけ有利そうだな」

 「ところで法務大臣は?」

 「ああ、完治するだろう、職務に支障はないらしい」

 「職務ねぇ〜」

 「さっさと印鑑をせばいいのに、一々、見に来て確認しやがる」

 「善良な人間には向かないな」

 「まぁ 死刑囚とは違うからね」

 「でも、こういうのは、それなりに地位のある誰かに押し付けないと・・・」

 「魔法使いは、いま何人?」

 「いま、19歳以下で80人くらいだ」

 「自分が魔法使いだったら、命尽きるまでやってやるのに・・・」

 「引き金引くより楽ですからね。痛いわけでもないですし」

 「魔法使いとガリアの関連性はどうなの?」

 「あれから5度ほど召魄して、飛行石100トンほど増やして消失分を補っている」

 「飛行石が消えるのは、何か理由があるのかな」

 「熱と光を加えるだけで10倍の質量を持ち上げることさえ、理解してませんからね」

 「ったくぅ もう少し科学技術が向上しても良かろう」

 「そんなこと言ってると予算を取られるよ」

 ぶつぶつ ぶつぶつ ぶつぶつ

 

 

 

 空母 瑞鶴 艦橋

 新型の烈風が離着艦を繰り返していた。

 かと思えば、海面近くから垂直に急上昇していく。

 これほどの機動力と推力はターボプロップでなければ、あり得ない。

 「・・・やっぱり、グリフォンエンジンより、ターボプロップのパイソンエンジン装備が強そうだな」

 「あの大型戦闘機を簡単に振り回しますから大変なエンジンですよ」

 「大変な戦力向上だな」

 「ですが水上艦の代艦建造は当分ないそうです」

 「主流は、ガイア行きも考えて、水中排水量6500トン級大型潜水艦か」

 「建造では、少人数化とチタンを使いたがってるようです」

 「出入り口が海中とばかりは限らないだろう」

 「少なくとも、普通に召喚術をするより寿命の消費が少ないとか」

 「・・・・」

 「飛行石は欲しいが海軍による国防も考えてもらいたいものだ」

 「もう、西日本の防空システムの構築でそれどころじゃないのだろう」

 「今後は、空軍と陸軍ばかり、優遇されていくな」

 「結局、西日本の方が近い分だけ採算が良いですからね」

 「儲かってるのなら北方に基幹産業を移せばいいモノを、第一撃で壊滅という事もあるぞ」

 「儲かっているようですが瑞穂州とバルカン・カフカス投資に分散されているようです」

 「ですが日本国内市場が伸び悩んで輸出に頼りっきりだとか」

 「やれやれ・・・それなのにアメリカ権益地で働いているって、問題だろう」

 「外資収入ですからね。痛し痒しってやつでは?」

 「円で買うよりは、ドルで買う方が良いか・・・」

 

 

 中国大陸

 アメリカは、兵器・武器弾薬を軍閥に渡すだけで軍事的に独立させバラバラにしてしまう。

 そして、軍閥は支配権を維持するため戦略資源をアメリカに売却し、

 アメリカから武器弾薬、補給品を購入しなければならなかった。

 そして、中国大陸をバラバラにしていた要素はもう一つ、

 漢民族と朝鮮民族が持ち込む、麻薬と武器弾薬の密売。

 成都

 M4戦車300両が並んでいた。

 軍事的支配権を有する者が国家。または地域を支配する。

 封建社会で常識。

 前近代的な国家で良く起こることであり、

 近代的な国家も国家存亡になれば状況に応じて軍部の権力が強まっていく。

 そして、中国は、前近代的であり、封建的でさえあった。

 日本人が成都ヒルトンホテルに泊まっていた。

 「むかし、春秋戦国時代というのがあったらしいけど、本当にやっちゃうとはね」

 「清国以降だから清後戦国時代突入かな」

 「そうさせることができた。アメリカが気前が良いよ」

 「戦車3000両で対峙するより、300両ずつ軍閥にあげてバラバラにしてしまうなんて・・・」

 「お金持ちじゃないとできないよね。日本じゃ無理だわ」

 「太陽と北風を思い出したよ」

 「ちっ 戦後、余った戦車を片付けただけじゃないか」

 「ひがまない、ひがまない」

 「少なくともアメリカ極東権益地に配置するより、いいね」

 「つまり、中国で群雄割拠している軍閥は、アメリカに頭が上がらないということね」

 「そして、アメリカ資本に中国資源が吸い上げられていくわけだ」

 「まぁ 中国の資源が日本・極東権益地で加工され」

 「それがアメリカに輸出されて、日本の収入になるなら良いじゃないか」

 「いまのうちだろう、アメリカ極東権益地の工業化が進めば、日本は日干しにされる」

 「どうかな、治安維持の負担は大きそうだし、採算を考えたら日本との交易は重要だよ」

 「だといいけど」

 「でも列強の民族支配も、いっぱいいっぱいという感じだけどね」

 「植民地支配自体、効率のいいものじゃないからね」

 

 アメリカ極東権益地は、日本と並ぶアジアの二大工業地域になろうとしていた。

 大慶油田の製油所は最新鋭の設備であり、

 軽油成分が少なく、出来の良い油田と言えないにも関わらず、

 発電は十分であり、

 戦後、開発が進む石油化学工業で少なからず役立ち、

 発電所と石油化学工業地帯が建設されて近代的な世界が作られていこうとしていた。

 アメリカの極東権益地支配の象徴ともいえる規模にまで拡大していた。

 アメリカの中古鉄道設備は、この地に根を下ろし、

 日本・台湾人労働者が働いていた。

 ハルピン飛行場

F86セイバー
重量(kg) 推力 全長×全幅×全高 翼面積 最大速 航続力 武器 爆弾 乗員
5046/8234 2710kg 11.3×11.4×4.5 26.7 1120km/h 1026km 12.7mm×6 900kg 1

 

B47ストラトジェット
重量(kg) 推力 全長×全幅×全高 翼面積 最大速 航続力 武器 爆弾 乗員
35867/100000 3200kg×6 32.6×35.4×8.5 132.7 945km/h 6437km 12.7mm×2 9980kg 3

 「この機体なら、極東全域を押さえられそうだな」

 「一応、烈風より速いけどね・・・」

 「しかし、F86セイバーはともかく、試作機のB47ストラトジェットを持ってきてどうするんだ?」

 「持ってきて、日本の反応を見るんだよ。ボロを出すかも知れない」

 「ボロねぇ」

 アメリカ資本は、国内の労働運動に対する対抗手段として国外に生産力を求めた。

 そして、高過ぎる国内労働者の賃金より、

 国外で生産モノを輸入する方が利潤が大きくなってしまう、

 当然、アメリカ企業は、企業間の競争に勝ち残るため、海外生産品の輸入を多用する。

 極東権益地には、アメリカ企業が進出し、日本・台湾人労働者が働き、

 英語文字の看板ばかりが並んでいた。

 権威主義や年功序列の強かった日本人たちは、拝金主義の利己主義、利敵行為に恐怖する。

 ソウル コカコーラ社

 「・・・日本もそうならなければ良いけどね」

 「賃金が上がれば、会社の利潤は小さくなるから自動的にそうなるよ」

 「営利目的だからクビを斬れるだろうし、失業者が増えるんじゃないか」

 「中国人労働者が働いて稼いでくれるから社会保障で支えるのだろうね」

 「楽なら真似しそうだな」

 「しかし、アメリカ企業はクビ切りが多い」

 「やり方が微妙だな。クビ切る会社は安心して入社出来ないし、簡単にクビを切れないと思うよ」

 「じゃ 辞めるように追い込む?」

 「まぁ 陰湿だけど、癌細胞みたいな社員はいるからね」

 「それならアメリカの方があっさりで会社の方針もはっきりで明快じゃないの?」

 「国民性でどうとらえるかだよね」

 「でも中国人・朝鮮人はクビ切りやすいけどね」

 「ところで課長に呼ばれたあれは、なんだろうね」

 「ん? 魔法がどうたらって話し?」

 「畝傍がどうしたとか?」

 「あと法務大臣の襲撃事件があったとか?」

 「襲撃事件? 盲腸じゃなかったのか?」

 「なんか、出鱈目な話しが広がってるな」

 「まぁ アジアは神秘的に見られてるんじゃないか」

 「それにしては、随分と限定的な範囲の質問だったな」

 「じゃ 魔法があるの?」

 「まさか」

 

 

 自由フランス

 ヴィシー・フランスはドイツ帝国の傀儡だった。

 自由フランスは、フランス海外州をまとめて独立していた。

 そうでなければ、フランス海外州は、日英同盟に奪われるか、独立させられていた。

 リシュリューとジャン・バールの砲撃戦がフランス人に発言力を与え、

 海外州の独立を可能にさせたと言える。

 ダカール

 歩道を含めた道路幅は120m。

 シャンゼリゼ通りを真似たマロニエの並木は5kmに渡って伸びていた。

 視点が170cmであれば並木道は、地平線の彼方まで続き、

 完成すれば本場のシャンゼリゼ通りを超える。

 もっとも、まだ建設途上であり、

 両側の建物も区画だけが整理されていたに過ぎなかった。

 自由フランス人は、資源を国外に売却しながら利権体制を構築。

 ドイツ支配下にいるフランス人を取り込みながら勢力を拡大していく。

 そして、邪魔になる現地人を追い立てながら、パリに似せた風景を建設しようとしていた。

 大戦後、各国の再建が早かったのは安価な資源が大量に売却されたこともあった。

 シャンゼリゼ通りモドキの区画には、列強各国の支店が建設され、

 資源会得に血道をあげていた。

 日本大手商社

 「資源叩き売りなんて戦前からすると夢みたいだ」

 「戦争万歳だね」

 「負けてたら、それどころじゃないだろう」

 「だけど、自由フランスも流通が増えて、栄え始めてるぞ」

 「お陰で欧州側の日本領も成長が見込める、良い傾向だ」

 「だけど、富み始めたら余裕ができて、欲を出して高騰していくんじゃないか」

 「だよねぇ それで、また苦しくなって戦争か・・・」

 「じゃ 戦争に備えて国力を付けないと」

 「もう、病気だな」

 「覇権病、利権病、権力病?」

 「あと、富国強兵病かな」

 

 

 

 トルコ・レバノン州

 バールベックの巨石

 南方の石(全長21.5m×幅4.8m×高さ4.2m) 推定重量2000トン。

 日本人たちが腕を組みながら見上げる。

 「どうやったんだろうな」

 「巨石文明か、ピラミッドもそうだが、権力の大きさを誇る上で巨石は適当なんだろうな」

 「まぁ これだけの民衆を動かせると誇示できれば、戦争する気にもならないか」

 「問題は、異様な大きさであることだろうな」

 「アレを200トン使えば、10分の1で20トンくらいになるがね」

 「飛行石400トンなら宙に浮くよ。魔法使いに助けられたら何とかなりそうだ」

 「どちらにせよ。過去、異世界ガイアと交流があった事は、間違いなさそうだな」

 「そして、いまは異世界ガイアと途切れている」

 「飛行石の消失を考えれば頷けるな」

 「魔法石は命を燃料にしてるらしく、かなり長く持つらしい」

 「ひょっとして、持っている人間がいる可能性もあるわけか」

 「異世界ガイア側にある地球の記録は、鉄が生まれた世界で、おとぎ話らしい」

 「何とか召喚術でガイアに日本軍を送りたいな」

 「伊161号の者たちは、押さえていた飛行石鉱山が枯渇して、難しくなってるらしい」

 「んん・・・こっちの魔法使いの質もあるからな」

 「地球側に有能な魔法使いがいれば、何人か送れるそうだが・・・」

 「まだ、召魂(しょうこん)、召魄(しょうはく)が限度か・・・」

 「ガイアに行きたいな」

 「年寄りは引っ込んでた方がよくないかね」

 「俺は37だ」

 「せめて20代に行ってもらいたいね。向こうで長生きできる」

 「20代の判断力なんぞ、当てにできるか」

 「そう馬鹿にしたものではないだろう」

 「少なくとも我々より柔軟性がある」

 「子供たちを犠牲にして、いまさら臆病者になれるか」

 「そういう問題じゃなかろう。向こうで長く生きて日本に貢献するなら若い方が良い」

 「・・・・」 むっすぅうう〜

 「道理だな」

 「・・・・」

 

 

 イスラエル エルサレム

 ユダヤ人入植者が押し寄せ混沌としていた、

 その中で、数人の日本人たちが拙いアラビア語、英語で特定の場所を確認。

 パレスチナ人に案内され地図を見ながら現地を歩いていた。

 「アロンは123歳、モーゼは120歳だから、我々の知っている杖とは違うものだ」

 「我々の持つ杖は、エジプトの魔術師が持っていたモノに近い」

 「別系統の魔法の杖が存在し、それは、寿命を消費しないのだろう」

 「地球は、ガイア以外の異世界と繋がりがあるのだろうか」

 「んん・・・そう考えるとユダヤの神は、かなり異質な気もするね」

 「ホルスの神は、ガイア側の神だろうか」

 「確かにガイア側の記録に鳥頭の魔獣の存在は確認されているがね」

 「鳥頭の方は、一時的な接触だけで継続的なものではないようだ」

 「しかし、影響力はあるね」

 「まぁ 娯楽変わりで広がったのだろう」

 「しかし、アロンの杖は興味がある」

 「そうだな・・・」

 日本人たちは、時折、写真を撮っていく。

 いかにも鴨がネギをしょっているように見える。

 しかし、小悪党がカモろうと周囲を窺うと、妙な気配を感じて退いて行く。

 数組の白人たちが日本人たちを付けていく。

 「・・・日本人考古学者は、まだパレスチナで、契約の箱を探しているのか?」

 「興味深々という感じだね」

 「ほかの国の諜報員もね・・・」

 それらしい男たちがあちらこちらにいて、日本人考古学者の動きを監視している。

 「・・・イスラエルは建国されたばかり、日本人には不案内な場所のはず」

 「パレスチナ人の反発で政情不安。治安も悪いというのに・・・」

 「目立たないようにしているようで、どこか目立つ動きだな。陽動じゃないのか?」

 「素人だよ。接触させた工作員の話しだと、タダの考古学者だ」

 「んん・・・危険な上に資金が続いているなら背後にスポンサーがいるはず」

 「契約の箱の中身は、石板、アロンの杖、金の坪に入ったマナだな」

 「石板はともかく、アロンの杖はアーモンドの木だ」

 「紀元前1260年だと、仮に発見されても3200年前のモノになる。もう駄目だろうな」

 「しかし、日本人が、そういうモノに関心が行くことが不自然だ」

 「単に日本を疑っているから不自然に見えるだけでは?」

 「畝傍の取り合いも進展があればいいけどね」

 「まだ、ゴネているのか」

 「保険金を払った後だからね。ロイド保険の言い分も当然かな」

 「だけど、発見されたのが55年後じゃ 前例もないよ」

 「というより、日本の国際的な地位が強化されて、ごり押しがし難い」

 「男は働きアリに徹してるし、女は産む機械に徹してる。そういう国は伸びる時に伸びるよ」

 「国民に人権とか、権利を自己主張させなきゃ 国は崩せないからね」

 「白人の有色人種に対する扱いを見てるから、日本人は結束すると思うよ」

 「共犯のくせしやがって・・・」

 「というより、バルカン・カフカスでは、白人と黄色人の関係が逆転している」

 「つまり、強ければ良いってことじゃないか」

 

 

 イギリス

 アイルランド(エール)独立後、イギリスの威信も低下していた。

 その低下した威信を押し上げるように世界初のジェット旅客機が飛び立って行く。

 日本人たちも見上げていた。

 「デハビランドDH106コメットか、凄いなぁ」

 「プロペラのない旅客機が飛んでるよ」

 「主翼とエンジンの一体型って、どうなの?」

 「んん・・・整備が微妙かな」

 「やっぱり、主翼とエンジン部は分けた方が良いのかな」

 「エンジンの寿命次第じゃないかな」

 「ジェットエンジンの寿命は短いだろう」

 「構造の問題じゃないか」

 「ジェットエンジンの熱は高いからねぇ。爆発しやすい」

 「日本は、ジェット機は?」

 「採算がとれないよ。まだターボプロックの時代かな」

 「だけど、それだって、予算が厳しい」

 

 さざれ石ウォーターフロント

 白人観光客が京都御所に似た日本庭園を散策する。

 まだ完成していなくても日本の雰囲気を味わえる。

 そして、日英同盟の象徴にもなっていた。

 とある部屋。

 男たちが小さな部品を眺める。

 「これがトランジスターの現物。増幅回路?」

 「真空管より小さいですね」

 「さすがアメリカ。やるねぇ〜」

 「日本で同じモノが作れるかな?」

 「シリコンの純度次第では?」

 「んん・・・いまは、重厚長大に走ってるから、どうかな」

 「戦争に負けるくらいのショックを受けないと、この手の予算比は変わらないからね」

 「土建屋が邪魔だな」

 「利権団体はヤクザと組んでるから、予算比変えると何人死ぬかわからん」

 「じゃ 国債で」

 「そうなるかな・・・」

 「やり過ぎると首が回らなくなるのでは?」

 「どちらも立てられず、身が立たなくなるよりはマシで、やってしまうかもしれないが・・・」

 「軍といい、民といい、利権が絡むと怖いからな」

 「結局、弱者にしわ寄せだから、健全財政は難しいよ」

 「魔法使いたちに皺寄せが行かなければ良いのですが」

 「んん・・・」

 

 

 ドデカネス諸島 ロードス島(1400ku)

 バルカン・カフカスの収益の一部が沖縄島より僅かに大きな島に注ぎ込まれていく。

 しかし、紀元前1600年から連綿と続くミノア文明の痕跡が大地に眠っており、

 古代遺跡が次から次へと掘りだされては計画が狂わされていく。

 日本はエーゲ文明に縁のない日本が遺跡を保存し、

 各国の観光客を誘致していくのも歴史の皮肉といえる。

 そして、あまりの煩わしさに・・・

 私服の男たちに守られるように杖を持った子供たちが歩き回る。

 杖を持った少女が足を止める。

 「あゆみちゃん。ここにロードス島の巨像が?」

 「うん」

 天霧あゆみは13歳、遺物を元にして簡単な象を描いて行く。

 ロードス島の地図に人工物らしい。たぶん、古代遺跡が記されていく。

 「最初からこうすれば良かったよ」

 「魔法の優先順位も煩わしいからね」

 「しかし、良地に限って遺跡があるのか」

 「当然といえば当然かな」

 「ピンポイントで遺跡の場所が分かれば、開発もしやすいよ」

 「やり過ぎると欧米に疑われないか」

 「もう疑われているよ」

 少年と少女たちが監視の下、一体を歩き回っていた。

 「だけど・・・国家が国益だからという理由で、個人の寿命を奪っていいものなのかね」

 「私腹肥やしているやつもいるし、違法だろう」

 「私腹っても、後ろめたいから、潮らしい方じゃないか」

 「魔法使いたちの待遇と給与が良くてもな・・・」

 「もし、親類縁者に復讐されたらどうするんだ」

 「け、権利はあるな。国側が違法なんだから・・・」

 「「「・・・・」」」 ため息

 戦中・戦後へと移行していくに従い良心が鎌首をもたげてくる。

 平時になれば法律に従って個人の権利が強くなっていく、

 無知だった頃とは違い、魔力が人の寿命を消費すると知れば、誰しも躊躇する。

 不正は、良心の呵責を招き、士気の低下をもたらし、

 大義名分の喪失は、国家に対する不信、統制の崩壊に繋がる。

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 戦後、民需転換で経済再建が進んでいきます、

 国力が大きくなると富国強兵病の予感。

 そして、異境ガイアとの命懸けで低いレベルの接触は・・・

 

 

 

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第08話 1948年 『獣=666=人間』
第09話 1949年 『富国強兵病かな』
第10話 1950年 『驕れる者も久しからず』