月夜裏 野々香 小説の部屋

    

ファンタジー系火葬戦記

 

『魔業の黎明』

 

第15話 1955年 『ノーガードの行方』

 戦後、日本社会は、まだ貧しくハングリーであり、需要が多かった。

 製造し、金をばら撒けば、売れる状況が作られており。

 欧米列強は日本の謎に迫るため市場を開放していた。

 国際資本も日本の成長に当て込んで投資を開始、

 低賃金から生まれるメイドインジャパン製品が国際市場を席巻する。

 世界は、中流階層の比重が大きいにもかかわらず近代化する日本産業に注目。

 “富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなっていく”

 という、世界標準から抜けていることだった。

 もう一つ、犯罪率の減少傾向も注目されていた。

 日本は、島国であるため、犯罪を起こしてしまうと逃げられず、捕まりやすかった。

 しかし、金が絡めば、暴力事件や殺人事件は起こるのであり、

 社会全体が豊かになっていけば、家が襲われたり。

 道を歩いていたら強盗殺人に遭ったりの現象は減っていく。

 代わりに顔見知りの利害関係から来る怨恨殺人。

 親殺し、兄弟殺し、子殺しなどの家庭内殺人の比率が大きくなっていく。

 なにはともわれ、日本の重犯罪は、高度成長と失業率の低下に伴い、急速に減少。

 代わりに楽して儲けようという者も現れ、程度の低い詐欺など、

 殺人未満の犯罪、あるいは、違法ギリギリ、スレスレの攻防が繰り広げられる。

 法に対し無知な者、人の良い者は騙し取られ、巻き込まれながら奪われていく。

 日本の犯罪減少は、欧米資本家層を悩ませていた。

 巨大な産業を興すなら知性、富の集約、広大な土地、膨大な資源、大量の安い労働者を必要とする。

 近代化で貧富の格差を必要とする理屈が通らなくなれば、大資本は批判に晒される可能性があった。

 人の不幸は、蜜の味であり、

 人の幸福は、己の不幸と直結した。

 日本が犯罪に脅えなくて済む社会は、軍事力以上に脅威だった。

 そう、日本社会が欧米一般大衆が望む、理想的な社会に近付くほど、既得権益者は批判に晒される。

 一般大衆が既得権益の敵となってしまう可能性を秘めていた。

 日本の殺人件数の推移が欧米の誌面を飾るようになったのも、この頃であり、

 欧米の既得権益者が焦るのも、この頃だった。

 ロンドン ダウニング街10番地

 新聞が机の上に置かれる。

 他国民の幸福は自国民の不幸であり、統治者が責めを負うのだった。

 「また日本の犯罪件数が減ったんじゃないか」

 「そのようです」

 「犯罪が起こった事を立証できないだけだろう」

 「日本在住のイギリス人は危険な場所が存在せず、楽園だと」

 「競争社会になれば、勝ち負けが分けられる、犯罪紛いの事件も起こる」

 「なのにイギリスの “ゆりかごから墓場まで” 政策より、はるかに日本の犯罪率が小さいのは何故だ」

 「経済競争が担保主義で緩やかな事でしょうか」

 「何か、インチキをしているのではないのか」

 「インチキの証拠がつかめていませんが」

 「絡む金が大きくなれば、殺し合いになるはず」

 「そして、負けた者は、犯罪を起こしてでも生きようとするはず」

 「雇用がいくらでもあるのが大きいのでしょう」

 「バルカン・カフカスも犯罪件数が減少傾向を示している」

 「日本を見習えとイギリス国民の声が大きくなるかもしれないな」

 「日本の福祉は弱いので、資本家が喜ぶかもしれませんね」

 「日本の平均年齢は低く。イギリスの平均年齢は高い、元々の就労人口比率が違うのだ」

 「国情が違えば制度も変わる、真似をすれば良いわけじゃない」

 「確かにパックスジャパンは困りますがね」

 「ですが、累進課税で富裕層の所得を削った途端。赤字財政、民間活力も低下しています」

 「日本のように小さな政府の方が良いのでは?」

 「ふん、非営利公共団体、公益法人、独立行政法人を含めれば多くなるし官僚の天下り先だ」

 「天下りはともかく、問題は比較的、低水準の給与で高いモラルを保っている事でしょうか」

 「上に倣えなのだろう。上より高い給与は望めんからな」

 「政治家、官僚、民間まで低めに設定してますからね」

 「日本の法務大臣におかしな動きはないかね」

 「特には・・・」

 秘書が書類を持ってくる。

 「・・・ストーンヘンジに行った日本人のリストか。まったくぅ・・・神経過敏過ぎるよ」

 「・・・異常はないようですね」

 「しかし、日本、瑞樹州、極東権益地、欧州、植民地投資してなおの高度経済成長だ」

 「何かを隠していなければ、こういう成長率にはならんぞ」

 「ええ、バルカン・カフカスの安定ぶりは、目を見張るものがありますし」

 「ったくぅ〜 アメリカといい、ドイツといい、日本といい。いけすかない国だ」

 

 

 戦後、日本で困ったのが軍縮だった。

 余剰旧式艦艇の売却、払下げ、解体を行っていた。

 しかし、比較的新しい艦艇は、維持しなければならず。

 長門、陸奥を記念艦にした後も、大型艦は残っており、

 大和(3000人)、武蔵(3000人)、赤城(1630人)、加賀(1708人)は、頭を悩ませる。

 建造費はともかく、員数換算、トン数換算だけなら伊400号50隻分を優に超えた。

 人件費高騰につき、少人数化を求める声も高く。

 遂に加賀、赤城の解体。

 大和、武蔵はモスボール化され、

 記念艦にされてしまったのだった。

 海軍にとって大騒ぎでも巷は、別の問題で大騒ぎになっていた。

 満州棄民政策が権益売却によって辛うじて避けられたものの、

 中東にソビエトの武器弾薬が流れ込むにつれ、

 バルカン・カフカス棄民政策、瑞樹棄民政策の危機が拡大して表面化していた。

 海軍後回し、という状況になっていた。

 

 

 日本海軍

  空母5隻 大鳳、(蒼龍、飛龍)、(瑞鶴、翔鶴)、

  重巡20隻

      (妙高、那智、足柄、羽黒)、(高雄、愛宕、摩耶、鳥海)

      (最上、三隈、鈴谷、熊野)、(利根、筑摩)

      (古鷹、加古、青葉、衣笠)

      伊吹、阿蘇

  駆逐艦68隻

      (吹雪、白雪、初雪、叢雲) (東雲、薄雲、白雲、磯波)

      (浦波、綾波、敷波、朝霧) (天霧、狭霧、夕霧、朧)

      (曙、漣、潮、暁、響、雷、電)

      (初春、子ノ日、若葉、初霜、有明、夕暮)

      (白露、時雨、村雨、夕立、春雨、五月雨、海風、山風、江風、涼風)

      (朝潮、大潮、満潮、荒潮、朝雲、山雲、夏雲、峯雲、霞、霰)

      (陽炎、不知火、黒潮、親潮、早潮、夏潮、初風、雪風、天津風、時津風)

      (浦風、磯風、浜風、谷風、野分、嵐、荻風、舞風、秋雲)

   潜水艦80隻

 

 そして、時代は、電子兵装とミサイルを要求していた。

 対空レーダー、対艦レーダー、射撃用レーダー、対潜ソナー、通信システム、

 これらの装備は年を追うごとに重量が増し、必然的にトップヘビーとなっていく、

 転覆を避けるため、兵装の半分を減らさざるをえず。

 さらに徴兵制が制限されると、人件費が高騰。

 機械化による少人数化が進められていく。

吹雪型駆逐艦 23隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離
1680 118×10.36×3.2 50000 38 14kt/5000海里
45口径114mm砲3基 60口径40mm連装4基 5連装533mm魚雷1基 スキッド×1基

 一点豪華主義は、軍縮の中で淘汰され、

 良い軍艦とは、費用対効果で優れた艦艇である事に突き詰められていく。

 

 綾波 艦橋

 「やれやれ、大量の地上勤務は、良いとして、異動で回されてしまうとはな」

 「瑞樹勤務、欧州勤務がほとんどですからね」

 「欧米列強の日本人を分散させる手に乗せられるとはな」

 「開き直って乗せられる気では?」

 「開き直れる連中は日本に居残り連中で外地行きは悲惨だよ」

 「庭付きの土地だそうですよ」

 「まぁ そうらしいがね」

 「免税もあるとか」

 「中東に武器が流れ込んで、中東紛争が起きるらしいじゃないか、いつまで持つやら」

 「確かに不安ですね」

 「この歳になって新しいことなんてしたくないよ」

 「満州棄民政策より酷いですね」

 「満州以上の資本が投入されていなかったら行けないよ」

 「ですが、日本海軍はドイツとアメリカ潜水艦のサルベージで評価されていますし」

 「戦争の可能性は、いまのところ低いのでは?」

 「目的を達成できるのなら直接戦争しなくても良いんだよ。代理戦争で十分」

 「それはそうですが・・・」

 

 

 戦後、トルコは、シリア、レバノンを押さえ、

 カフカス連邦も名目上、完全自治ながらトルコ領土になっていた。

 トルコは、国内のアラブ、クルド問題を抱えながらも、

 キプロス、ドデカネス諸島を捨てたことで、

 日本・イギリスの支援を受けつつ近代化を推し進め、成果を上げていた。

 トルコが日本・イギリスと組むのは、いつでも外交を切ることができるからであり、

 遠交近攻の原則にかなっており、それが故に良好な関係でもあった。

 この頃、中東にソビエト製兵器・武器弾薬が流れ込もうとしていた。

 中東諸国は、武器保有が増えるにつれパレスチナを焦点に戦雲が高まりを見せる。

 トルコは、西欧化が進み、日英同盟とアメリカ投資を望んでおり、

 アラブ・イスラムと利害を異にしていた。

 同時に国内のアラブ人、クルド人に流れ込もうとするソビエト製武器弾薬を警戒。

 南のパレスチナ国境を封鎖し、パレスチナ問題に不介入を決め込み。

 パレスチナは、西方のエジプトと東方のヨルダンに挟撃され、対立軸を深めようとしていた。

 

 トルコ ガリポリ半島 アンザック サル・ベイ丘

 日本人たち

 「ここがノーホーク連隊。341人が消えた場所か・・・」

  ※消失1915/08/21

 「ガイアで、ノーホーク連隊の事は、噂に上がっていない」

 「ガイアの9割が未開地じゃないか」

 「たとえ連隊でもガイアの未開地に出現すれば、生き残れるかどうか」

 「もっとも、男ばかりでは、生き残れそうにないが」

 「どこかの村に入っていれば、混血でも生き残りがいるだろう」

 「強い魔法使いによって強制召喚された可能性もあるのでは?」

 「341人も? まず死ぬだろうな」

 「どうだい、入口は?」

 少年たちがいた。

 「・・・特別な入口ではないようです」

 「ガイアの存在を知ってる将兵がいたのかもしれません」

 「強い逃避の念とガイアの何かが誘発されて起きたような・・・」

 少年たちが応える。

 「んん・・・苦戦していたと聞が・・・そうか・・・」

 

 トルコ領レバノン州

 日本人、イギリス人、トルコ人がパレスチナを見下ろせる高台に立っていた。

 「ソビエトが中東に武器を流し始めて大混乱だ」

 「中東の油田権益をどうしてくれるんだよ」

 「まったくぅ アメリカのせいでいい迷惑だ」

 「アメリカも軍事力で余裕がないのだから、出しゃばらなければ良いのに」

 「アメリカは世界最大最強の空母ユナイテッド・ステーツを保有してます」

   65000/83350t級空母ユナイテッド・ステーツ

   全長331m×全幅60.1m×吃水11.3m

    280000馬力  33kt   

    100機

    127mm砲8基  76mm連装砲12基  20mm機関砲20基

 

 

 「アレは恐喝用だから、空母だけで戦争できるわけじゃないよ」

 「ですが核攻撃されたら・・・」

 「あんなデカ物、良く運用できるもんだ」

 「日本だって、大和、武蔵を運用していただろう」

 「いや、あれは、持て余してたし、建造して失敗だったかな」

 「とにかくパレスチナのおかげで、中東問題は大きくなっていくよ」

 「ユダヤ人にパレスチナを引き渡したイギリスが悪い」

 「アメリカが中東の基盤作りにパレスチナを利用するから・・・」

 「踏ん張って拒否しろよ」

 「だって、引き渡さないとユダヤ人にテロされるし」

 「引き渡して、パレスチナ人にテロされてるだろう」

 「・・・・」 ため息

 「アレは迷惑だよ “さざれ石” まで被害が及んだらどうするんだよ」

 「北アイルランドのテロでゴタゴタしていたから、パレスチナテロまで引き受けたくなかったんだよ」

 「アメリカの言う事を真に受けるから」

 「ソ連が武器を売らなければ、もう少し頑張れたんだ」

 「アメリカがソビエトに戦略物資を売り始めたのも痛い」

 「アメリカの国内問題だから」

 「俺流の自己主張するから周りが迷惑するんだ。アメリカ資本家は欲張り過ぎなんだよ」

 「金に目が眩んでるからね」

 「貧富の格差を広げて、国民をまとめるに悪魔の国がいるんだ」

 「資本の集約が進むと近代化も早いけど、犯罪率が足を引っ張るよ」

 「そういうのは、紳士的な規範のない、金の亡者のアメリカ人に言ってくれ」

 『特権階級で貴族ぶりやがって、お前らだって問題だろう』

 「ん?」

 「いや、なにも・・・」

 

 

 瑞樹州

 魔業研究所

 冷凍庫から白い塊が出された。

 火を付けると燻りながらオレンジ色の炎を上げる。

 「これがメタンハイドレート?」

 「シベリアにあるモノと同じで、魔法使いたちのおかげで見つけた。水深500m以下だよ」

 「二酸化炭素の排出量は石油や石炭より小さいから二酸化炭素中毒にはなり難いね」

 「開発できるのか、水深500以下だと水圧に耐えられないだろう」

 「四国の室戸岬の地下800mから横穴を50kmほど掘っていくと、メタンハイドレート層に当たるよ」

 「マジ?」

 「地震が多い国だというのに、上は、どこまで本気なのやら」

 「採算が取れるのかな?」

 「原油が安いうちに掘っておきたいだろうね」

 「そのエネルギーを使えば、莫大な利益だ」

 「アメリカとは違うよ」

 「社会を常にハングリーな状態にして、一定の勤労意欲を保たないとね」

 「だから、石油が安い間に途中まで掘って、高くなったら使うのさ」

 「日本の労働者になりたくないよ」

 

 

 オランダ(インドネシア)

 総人口1100万のオランダ人の内、

 半分以上の600万人のオランダ人がインドネシアに住んでいた。

 そして、ベルギー人の3分の1、200万もインドネシアに住み。

 民族清浄化と開発が進むにつれ、東欧諸国民の人口も急増していく。

 建設現場宿舎

 ここにも日本人たちがいた。

 戦って非合法で奪うか、

 働いて合法的に得るか、

 戦後の日本は、後者を選択する。

 オランダ人の兵役人口は増し、

 代わりに日本人がオランダ(インドネシア)基幹産業に入り込んでいく。

 識字率の低いインドネシア現地人で近代産業の運営は不可能であり、

 無口な日本人労働者は、寡黙に実直に働く事で外貨を稼ぎ、

 外貨で得られた資源は、日本の産業基盤を押し上げ、

 日本の近代化の基礎を築きあげていた。

 港湾

 「あの連中は?」

 「傭兵部隊じゃないか」

 「東欧っぽいな。ポーランドとか」

 「白人なら誰でも良いって感じだろう」

 「ドイツ系以外だそうだ」

 「オランダ人も無茶苦茶やるじゃないか」

 「人は臆病だから、自分が傷付くのを恐れ、自分を傷付ける恐れのある他人を傷付けているんだよ」

 「インドネシアは、もう正当防衛と言えないレベルだと思うよ」

 「一度傷付けてしまうと、復讐を恐れて、恐怖で相手を滅ぼしてしまうんだよ」

 「殺し合いになっちゃったな」

 「ヴィシーフランスのアルジェリア掃討戦もそうだって」

 「怖い怖い」

 「武器を売ってた俺らも呪われそうだな」

 「そのFN FALが中東に回り込んでるんじゃないか、どうするんだよ」

 「いまさらやめても中東は収まらないのかな」

 「いまはソ連製が流れ込んでるからね」

 「やめるように言ったんじゃないの」

 「シベリア鉄道で行き来できるよ、だってさ」

 「ちっ ルートを押さえて、ピンハネする気だな」

 「いま思うとバルカン・カフカス人事じゃなくて良かったよ」

 

 

 

 日本の基幹産業は溢れる資本と生産力で、

 都市から郊外へと鉄道とコンクリート舗装道を押し広げていく。

 戦前、戦中の自転車が一財産という時代ではなく、

 その面影はなかった。

 圧倒的な鉄材・アルミ材が庶民一人一人に行き渡り、

 家の中には、洗濯機、掃除機、炊飯器が置かれ、

 路上でも、バイク、自動車の数が日増しに多くなっていく。

 日本の社会資本は大きく潤い、

 日本国民は、私利私欲のまま、我武者羅に稼いでいた時期であり、

 日本のGDPは、イギリス、ソビエトを抜き去り、

 アメリカ、ドイツに近付いていたのだった。

 合理的な指導力を発揮できれば、統制された国民は強いのであり、

 田舎でさえ、それまで存在しなかった。

 テレビ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機が溢れだし、

 金持ち所有だった。

 カラーテレビ、クーラー、自動車も一般で購入されつつあった。

 ここで注目されるのは、電気自動車が走れる海底トンネル建設事業により、

 電気自動車の製造が進む。

 帝都東京

 白人の歩く姿は少なくなく、イギリス人との混血も増えていた。

 高地発祥の “よさこい祭り” が東京にも波及し、

 アメリカ人たちが珍しげに眺めていた。

 「随分、元気な踊りだな」

 「景気が上り調子で勢いがあるんだろう」

 「アメリカが達成していた自動車社会に、ようやく足が届いてきたわけだ」

 「三種の神器が売れ渡って、欲しい者がなくなった時、不況が訪れるよ」

 「中国大陸市場を押さえていたら、アメリカの独り勝ちだったのに」

 「七軍閥に分裂してしまったのは、アメリカの失策だと思うよ」

 「確かに中国大陸弱体化は必要だったよ」

 「しかし、麻薬と武器密輸で暴利を得た人間が多過ぎた」

 「それで、一般市場が狭められてはかなわないよ」

 「軍閥が分裂して独立されてしまうことぐらい予想すべきだ。自業自得だよ」

 「麻薬はともかく、銃の所持は人権の独立だ」

 「歩いている日本国民を見たまえ、まるで飼い犬じゃないか」

 「たぶん、欧州諸国は、その意見に賛同しないよ」

 「まぁ 犯罪件数が少ないのは気になるがね」

 「気になるというより。こうやって安心して歩きまわれること、羨望だな」

 「戦後不況以前のアメリカは、安全で豊かだったよ」

 「アメリカ資本が極東権益地の収入に頼ったこと」

 「そして、日本経済に投資したことが原因だよ」

 「富が資本家に集中し過ぎて、国民はローンに働かされている」

 「賃上げばかり要求する労働者に投資してどうする。利潤が減るばかりだ」

 「賃上げも国民の権利だよ。自由の象徴だ」

 「近代化はね。強い者は勝つし、生贄を必要とするんだよ」

 「日本みたいに、みんなでコツコツ頭割なんて気持ち悪い」

 「支配層が少ないからそう見えるんだよ」

 「日本人は大人しいから中間管理層も少なくて済む」

 「だから必然的に庶民の取り分が増えるってか」

 「権威主義極まれりだな、面白くないね」

 「ところで日本人の資源開発力の源泉は掴めたかね」

 「例の日本魔法社が推選した学生たちのダウジング能力は高いよ」

 「我が国も雇っている」

 「浦賀トンネル事件でも、わかったが不自然な部分があるよ」

 「確かにトンネルの送風装置と使われた麻酔薬の浸透速度に差がある」

 「死傷者ゼロも不自然だったな」

 「じゃ やっぱりここか?」

 白人たちが見上げる。

 周りを見れば、同じように上を見上げている白人が何組もいる。

 「いや、法務省の方が怪しいらしい」

 「国防省の管轄から法務省の管轄に移ったのが戦後ということか」

 「そういえば、この魔法社も法務省の管轄に移っているな」

 「スポンサーは?」

 「ダウジングで生徒を企業に紹介した収入で成り立っているよ」

 「そんなに優れているのか」

 「我国のダウジングの3倍くらいかな」

 「しかし、バルカン・カフカスの日本軍駐留基地の半分以上が資源の上って出来過ぎだろう」

 「駐留基地の維持費を偶然、掘り当てるなんてあり得ん」

 「一般企業向けでない、それ以上の秘密もあるのだろう」

 「入手できれば大きいのだが、怪しげな詐欺師なおっさんがやってる」

 「元海軍将校のだろう」

 「我々の子供たちもやったんじゃないのか」

 「やったよ。たぶん、純粋な日本人の子供だけ特別な方法でやってる気がするがね」

 「なるほど、タネも仕掛けもあるわけか」

 「そして、その中で特別に選ばれた子供だけが瑞樹州の農林学校に行ってる」

 「魔法社への投資は?」

 「断られたよ。無利子だというのに事業拡大の気もないらしい・・・」

 ビルの中から少年少女5人組がバタバタと目の前にやってくる。

 「もう、惚けた振りしやがって、頭っ来た〜!」

 「ハーティ。あの怪しげな蝶ネクタイのおっさんは、怪しくないと思うよ」

 「はぁ〜 見なさいよ。胡散臭いくせにこの大きなビル。あり得ないわよ」

 「元々、この土地の古くからの地主だって、上はテナントだし」

 「だから税金も安くて、節税を兼ねた暇潰しだって、山師なんて詐欺だよ」

 「その情報源は?」

 「んん・・・あのおっさんと、何かの本・・」

 「だからその情報源を疑えって言ってんの、日本の資源開発力は異常なのよ」

 「でも日本は資源ないって」

 「資源のない国がどうしてこんな大きな、ビルを建てられるのよ」

 「イギリス、ドイツ、アメリカの都市が大きいよ」

 「点は欧米諸国でも面と線では、日本が圧倒的よ・・・」

 「たいだい、沿線に沿って延々と街を繋げられるなんて、そんな国があるか」

 「そうかな。地震が多いから高いビルを作ると危険なんじゃないかな」

 「あんたねぇ 現実は、不愉快なモノが多いけど目を逸らしては駄目よ」

 「間違った情報からは、間違って現実しか見えてこない」

 「そして、間違った判断と選択を強いられ自滅する」 ネルソン

 「わたしはそんな人間じゃないし」

 「イギリス人だからって、自己満足に酔いしれるつもりもない」

 「日本と比較できるイギリス育ちの私を教科書で騙そうなんて無理な話しよ」

 「ふん、雷門と欧米諸国の一番大きな摩天楼を比べて日本は後進国だ?」

 「人をバカにしやがって、いけしゃしゃと、嘘付きが」

 「次は、法務省よ」

 「「「え!」」」

 「お、おい、君たち」

 「ん? なに?」

 「子供たちが、危ないことしては駄目だよ」

 「何よ。社会見学よ」

 「「「「・・・・」」」」

 「おじさんたち、スパイ?」

 「ま、まさか、おじさんたちは、タダのビジネスマンだよ」 汗々

 「「「・・・・」」」 うんうん

 「浦賀トンネル事件の時、居なかったっけ」

 「え、いや、ひ、人違いだよ」

 少年少女5人組は、颯爽と法務省に向かっていく。

 「「「「・・・・」」」」

 

 ビルの窓から奇天烈な服装をした中年が見下ろしていた。

 見た目で変人を装うため黄色の背広に蝶ネクタイを着こなし、

 さらにヒットラー髭と駄目押ししていた。

 悪く言えばチンドン屋のおやじ。

 もっとも、その視線に愚かさは感じさせない。

 「元気のいい子供たちだったな」

 「良いんですか?」 秘書

 「良いもなにも、愚鈍な子供は利用価値が高く、敏い少年少女は国家の宝だよ」

 「どちらも、大切に育てたいね」

 「優秀で敏い人間は、国家にとって、両刃の剣ですよ」

 「どっちも必要だよ。愚鈍な方が多ければ楽だけどね」

 「それはそうですが最近、平均値が上がっているようで」

 「民主主義の世界では平均値を上げないと、衆愚に政策を引っ張られる」

 「特に上は平均値を上げないとな。上が無能無策で短絡だと国家存亡だ」

 「外国人も混ざってますよ」

 「イギリス国籍が一人、ハーフが一人。日本人国籍の二人も少し怪しい」

 「そして、もう一人は、オマケか」

 「スパイですか?」

 「いや、関係者の子供か、好奇心が強い子供なのだろう」

 「これ以上外国人に国を開放すると、安全保障上、危険では?」

 「日本は、昔から開国派と攘夷派で戦ってきた。いまは開国派の時代だよ」

 「それに日本に入ってくる外貨と投資も大きい。戦前のような日本は、御免だな」

 「内憂外患にならなければ良いのですが」

 「人も国家も孤立するとロクなことはない。内患外憂より少しマシなんだよ」

 「・・・大資本家相手に国境を低くしてノーガードの打ち合いですか」

 「秘密があるし、危機感も感じている単一民族だ。そう捨てたものじゃないよ」

 「法務省に付いたらお茶菓子くらい、出させてやろう」

 「そんなモノでなだめられる様に見えませんでしたが」

 「まぁ 彼女たちがガス抜きになってくれるのなら良いさ」

 「強硬派は、攘夷思考のようですが」

 「短絡で皮っ被りな臆病者は国境の中に引き籠ろうとするし」

 「利権と聖域を望んで外の干渉を拒む傾向があるからね」

 「スパイをはびこらせるのが面白くないようです」

 「こちらもスパイを送り込める。これはね。武器を使わない戦争だよ」

 「当然、痛みも伴うし、損失もある。しかし、利益もある」

 「そして、負ければ国際社会から引き籠る事になる」

 「勝っているのですか?」

 「貿易収支は黒字だよ」

 「連中は日本の秘密に興味津津、不利とわかっても情報収集のため取引を望む」

 「既得権にしがみついて、拡大を図る連中が邪魔に思えるよ」

 「無能無策な権威主義者ほど競争を恐れ、引き籠ろうとしますからね」

 「若いうちに外人慣れした方が良い」

 

 

 中東が不穏な動きを見せ始めていた。

 国防省 陸軍局長 邪馬 ひみこ(33)

 万年陸軍局長と呼ばれてはや数年。

 彼女は、日本国が平和志向と暗に仄めかしている象徴であり、

 なにも考えずサインしているだけなので過労などない。

 実権はほとんどなく、安上がりな広告塔に過ぎない。

 彼女はバルカン・カフカスを訪問し、

 中東情勢の悪化で不安がる駐留日本軍将兵を労う。

 バルカン連邦

 その日本軍駐留基地は、ボーキサイト鉱山の上にあった。

 なぜか、偶然、ボーキサイト鉱山が発見され、

 採掘がなされ、精錬所が建設され、

 アルミニウムのインゴットが出荷されていく。

 そして、工場地帯には、日本人が居着いていた。

 当然、日本人たちも不安がる。

 「エジプトはスエズ運河を封鎖するのでしょうか?」

 「そんなことないですよ」 知らない

 「日本は、イスラエルに強硬な態度を取らなくて良かったのでしょうか?」

 「きちんと日本の立場を説明して理解してもらうようにしていますから」 建前

 「アメリカはパレスチナを利用して、日本を追い詰めようとしているのでは?」

 「歴史的な問題なので、アラブとユダヤの間で交渉すべきだと思います」 中立傍観

 「「「「・・・・」」」」

 万年陸軍局長の気休めな応対に失望させられながらも、

 なぜか、バルカン・カフカスの治安は安定していた。

 満天の夜空と広大な大地を見渡せる温泉。

 管理者、労働者の憩いの場所になっていた。

 「平和だねぇ」

 「平和なのが不思議だね」

 「ハリウッドがオカルトホラー映画を作りに来るらしいよ」

 「へぇ〜 危なくなる前に、今のうちに作っておこうとか?」

 「きたねぇ〜」

 「どんな映画?」

 「東欧でオカルト・ホラーだったら、決まってるだろう」

 「“ドラキュラ帝国の逆襲 鮮血のドミノは止まらない” by バルカン発症」

 「ありえねぇ〜」

 「恐怖映画で民衆を不安がらせて、国防費を増やしたいんだよ」

 

 バルカン駐留軍基地

 壁からナイロンザイルが降りていた。

 一人が飛び掴んでぶら下がるとあっけなく切れる。

 「やっぱり、駄目じゃん」

 「引っ張り強度が1トンでも、鋭角の強い岩場では切れるよ」

 「まぁ ハサミで切れるんだから当然といえば当然」

 「ハサミで切れないザイルは使い辛くて困るよ」

 「日本山岳会は、どうするんだろう?」

 「揉み消すんじゃない」

 「面子重視か、デジャブ・・・」

 「組織円満家族主義が正義なんだよ」

 「組織の長たる父は家族を守り、母は夫を支え、子供は親に対し従順」

 「家庭内の争いに他者を引き込んで家を潰して、離散させて路頭に迷わせるか?」

 「だいたい信用できない裏切り者の面倒なんて誰が見る」

 「家を結束させて守り、排他的特権を侵害する勢力は敵」

 「もちろん、利権を侵害するなら法律も警察も敵で介入させないのが組織の正義」

 「敵対勢力を引き入れて組織を裏切るなんて極悪で、もってのほか」

 「公益性なんてくだらない幻想だよ。なんて美しい日本人の心なんだ」 うんうん

 「まぁ 個人主義のアメリカと違って正義の質が違うからね」

 「けっ 土建、軍、ガイアには、注意を伝えてるんだろうな」

 「民間には伝えなくていいの?」

 「やっぱし、和を乱しちゃ駄目だよ。出る杭は打たれちゃうし」

 「日本山岳会を無視して、頭越しは、まずいっしょ 立場的に・・・」

 「日本人は、お偉いさんが保証すると安心するからね」

 「何人死ぬかな」

 「さぁ・・・」

 

 

 ロードス島

 古代遺跡の発掘が進み、

 日本風の城郭・神社仏閣もチラホラと建設されていた。

 植林が行われていたが降雨量は、乾季0〜雨季150mmと少なく。

 ほぼ晴天が続いていた。

 この島が重要だったのは、日本の領土だったこと、

 バルカン・カフカスの日本人居留民にとって、避難所だったことにある。

 さらに欧米からの観光客が押し寄せていること、

 なので、バルカン・カフカスから水を含めた資源が集められ、

 地下施設に工廠が作られていく。

 中東の不安と人口が増えるにつれ、自給率の向上が求めれていた。

 晴天が多いことから太陽光熱集光器を利用した淡水プラントが建設され、

 地下水路で内陸まで引き入れられた海水は蒸発しつつ、

 山頂へ昇り屋根に当たって滴るように湖水を作った。

 乾季は、覆いが解放され、蒸気となって、大地を覆う。

 それでも植林、農作物の農業用水や飲料水にも足らず、

 工業用水の大部分は、ナイル、ドナウの河川水が利用されていた。

 「もう少し大規模な淡水プラントを建設しないと、避難所にならないぞ」

 「バルカン・カフカスとも安定してるからね、予算の割り振りも微妙なんだよ」

 「もっと魔法使いたちが増えればな」

 「魔法や飛行石を使えるからって、随分無茶してないか」

 「そうでもないだろう、ドイツ製工作機械やアメリカ製の電子機器が大量に入ってきてる」

 「本当は、電子機器はアメリカを越えて、精密加工工作機械はドイツを超えているんだが」

 「問題は表向き使えないことだよ。地下ばかりのモグラ生活は不便すぎる」

 「地上側は、スパイがうようよしてるからね。太陽光は引き入れてるじゃないか」

 「それに衣食住の空間も広げてるし」

 「実際はまだ追いついてないよ」

 「中東が封鎖されても、キプロスのイギリスも味方だろうし、バルカン・カフカスも同盟側だよ」

 「だと良いがね。バルカン・カフカスは、独立を維持するための行動をとると思うよ」

 「最悪でもトルコは味方につけておかないと」

 「地政学上はそうだけどね。権益地は、バルカン、カフカスだからね」

 「バルカン・カフカス防衛が最優先か・・・」

 

 

 ドイツ第3帝国ノルウェー州

 全長4kmのモノレールが地中を刳り抜き、

 ガルフピッゲン山頂(2686m)に向かって伸びていた。

 ゼンガーロケットは北極側に向かって速度マッハ2で打ち出され、

 ゼンガーは、ロケット噴射で加速しながら大気圏を突破、

 地球の南北軌道を取る衛星となった。

 東側のソ連側も、南東のバルカン側もロケット打ち上げの方向として好ましくなく。

 結果、北極圏側に向かって宇宙ロケットが打ち上げられる。

 ドイツ軍将校たちは、人類初の宇宙ロケットの成功を祝って喜びを交わした。

 「これで宇宙開発で先行できそうだ」

 「前人未到の宇宙開発を押し進めれば、ドイツ帝国は世界を支配するだろう」

 「だがアメリカのドイツ投資が減るな」

 「アメリカの投資は、バルカン・カフカス側に増えているよ」

 「戦前と違って、弱点の減ったドイツは投資し難いのだろう」

 「バランス的にもアメリカのバルカン・カフカス投資は、予想できることだ」

 「中東紛争が起これば、バルカン・カフカスは封鎖できそうだがね」

 「かといって、日本海軍にUボートを救出されてるし、対日政策で強く出にくい」

 「中東紛争でバルカン・カフカスの日本軍が孤立したら助けなければならない義理もある」

 「何でUボートは、アメリカ潜水艦と衝突したのだ。みっともない」

 「日本潜水艦が例の座標に向かっていたのに気付いて追撃したと聞いてます」

 「日本潜水艦は速度を上げて逃げ切り、正面にアメリカ潜水艦がいたらしいです」

 「それで左舷バラストを破られて沈没とはね」

 「アメリカ潜水艦は右舷バラストを破られて沈没ですし、同程度の潜水艦と言えます」

 「我々の潜水艦の方が新型で大型なのだ。両方沈没しては、慰めにならんね」

 「どちらにせよ。占領地の社会整備が進まないことには、戦争不可だよ」

 「まだ、戦後10年しか経っていないのだ。そうやすやすと再建できるものか」

 「まぁ これだけ大きな宇宙ロケット発射システムを建設すれば民需は遅れるよ」

 「成功後は、当分、民需に予算が取られそうだがね」

 「ロケットの回収は、一週間後だ。それまで写真を撮りまくれるな」

 「ええ、日本の秘密が撮れれば良いのですが」

 「本当に秘密があるのか、模倣しかできない国だろう」

 「豊になれば蓄積された技術で開発も進むのでは?」

 「それは否定しないがね」

 

 

 11/01 ユナイテッド航空629便爆破事件

 子供が保険金目当てで、母親の乗った航空機を空中で爆破。

 乗員乗客44人が死亡。

 もっとも、空港の販売機で買った生命保険で、本人署名がないため無効となった。

 ニューヨーク

 ストリートごとに賃上げスト、失業者のデモ、人種差別撤廃集会が行われていた。

 その喧噪の中、

 日本人たちが焦点の棚を見ながら歩いていた。

 アメリカ極東権益地製と日本製は競合状態であり、

 敗北すれば、国内消費を超える余剰分の工業力が失われる。

 もっともアメリカ極東権益地需要は、日本経済の牽引車であり、

 中核になって働いているのも日本・台湾人であり、

 どっちが勝っても痛い。

 「随分、日本製と権益地製が増えてるじゃないか」

 「アメリカ国内産は縮小気味か」

 「だけど、中東の動きをみると、アメリカは資源元を押さえようとしているようだ」

 「元から断たれると、日本経済は締め上げられるな」

 「いまのところ、脱石油はリスクが大き過ぎる」

 「要はタイミングだろう。アメリカの強硬手段に対し、耐えられるだけの省エネ技術が必要だね」

 「あと代替エネルギーの確保だ」

 「ピンポイントで採掘できる地域は押さえてるから大丈夫だろう」

 「どちらにしろ、アラブの油田より高くなるのが問題だよ」

 「天然ガス、原子力の問題は初期投資が大き過ぎることだな」

 「しかし、この騒ぎは何なんだ。滅茶苦茶だな」

 「寒くなってきたから凍えたくなくて必死なんだよ」

 「ふん、この摩天楼を作るため、どれくらいの人間を競わせ踏み躙ったかね」

 「アメリカ合衆国最大の敵は賃上げ。次が人種差別撤廃。次が失業と犯罪だよ」

 「日本、ドイツ、ソビエトは、体のいい咬ませ犬に過ぎないのさ」

 「しかし、激しい。どこかの国に攻撃されない限り収まりそうにないな」

 「自己主張が強い国民だからね」

 「個人の権利が強いと。どうしてもそうなるよ」

 「個人の欲望を最大限に引き出している社会か、日本は活力で勝てないよ」

 「日本もかなり、それっぽくなってるがこれほどとはね」

 「中庸にして欲しいものだ」

 「問題は誰がその中庸を決めるかだよ」

 「しかし、こうしてみると日本の権威主義、年功序列もアレだが」

 「アメリカの個人主義、拝金主義もアレだな」

 「母親が乗った飛行機を落としてしまうくらいだから、拝金主義も怖いよ」

 「アメリカの資本家は、どこまで富を集める気だろうね」

 「近代化には資本が必要だからね」

 「でもマッチポンプで中東大火災とか、バルカン大火災なんて困るよ」

 「日本人がバルカン・カフカスに閉じ込められるな」

 「アメリカが軍事費を増やしたがってるのは確かだね」

 「良識派のアメリカ資本も極東権益で乗せられ気味だし・・・」

 「アメリカ人の賃金は高いし、極東権益地の方が利潤が大きいからね」

 「そういえば、ブラジル投資も増えていたっけ」

 「あと、コロンビア投資で、麻薬産業を活性化させてる節がある」

 「後で難癖付けて、攻撃するためかな」

 「ラテン諸国は乗らないよ。元々、戦争できるような国じゃないからね」

 「だけど、麻薬なら国際的に正当化できると思うよ」

 「ちっ 中国に散々売ってたくせに」

 「日本もやってたけどね」

 「でも、世界情勢で綺麗事が通用するなら良くなったというべきじゃないの」

 「綺麗事って言うか、アメリカの自己正当化の方便に過ぎないよ」

 「そういえば、日本もやってたっけ、大東亜共栄圏」

 「「「「あははは・・・」」」」

 中国・満州・朝鮮の利権を転売後、

 大東亜共栄圏、八紘一宇、五族協和は死語と化していた。

 

 

 日本海軍大綱

 日本海軍の未来像は検討されていた。

 主力艦艇が発案され、そののち補助艦艇が検討される。

 「20年後とはいえ、実に慎ましい、海軍大綱だな」

 「まぁ 小数だが海上に対する支配力は大きいよ」

 「16000トン級ヘリ空母1隻と8000トン級巡洋艦4隻を6群」

 「3分の1ローテーションでいうと2群が常に外洋にいることになる」

 「日本海、瑞樹州、欧州で2群は少ないな」

 「半分を地上勤務で入れ替わりにすれば、稼働率はもっと上がるよ」

 「主力は哨戒機、掃海艇、潜水艦だから・・・」

 「それに警備だけなら海洋保安省もやってくれるだろうよ」

 「しかし、戦前・戦中艦も20年以内に消えてしまう。悲しいよ」

 「正面戦力は、水上艦艇288000トン。潜水艦240000トンですからね」

 「いまのところ、艦齢の短い潜水艦の建造だけだけどね」

   16000t級ヘリ空母6隻

     全長240m×全幅24m×吃水8

     150000馬力   32kt   15000海里/18kt

      対潜哨戒ヘリ12機  対空哨戒ヘリ12機

      40mm砲4

      1000人

  

   8000t級巡洋艦30隻

    全長160m×全幅20m×吃水7m

    100000馬力  32kt  8000海里/26kt

     対潜ミサイル12基  対艦ミサイル12基  対空ミサイル24基

     114mm連装砲2基  40mm砲4基

     400人

 

   4800t/6000t級潜水艦40隻

    全長120m×全幅10m×吃水8m

    8500馬力  12kt    25000海里/10kt

    8500馬力  20kt     300海里/10kt

     533mm魚雷菅×6

       70人

 

 

 「それは表向き、ガイア行きも兼ねているから潜水艦の艦齢は短くないよ」

 「最新の冶金技術は世界最高峰で表向きの寿命の3倍・・・」

 「600トンの飛行石の光熱加減で潜航から空中浮揚も可能だ」

 「一軸プロペラはガイア行き後の事を考えてか・・・」

 「当然」

 「海水の注排水でなく。飛行石の使用は、まずくないのかね」

 「不味いだろうね。推進力も外燃機関で飛行石を利用してる」

 「同盟国のイギリス軍将兵も乗せられない」

 「一応、注排水で浮き沈みしているようには見せかけられているよ」

 「酸素タンクも一杯あるから、注排水するし、表向きだけどね」

 「原子力潜水艦とどっちが上かな」

 「外燃飛行石機関だけど、安全性なら勝ってる」

 「だけど、一応、ディーゼル機関という事になってるよ」

 「乗員も騙せるのかな」

 「一応、守秘義務だし、最小限の人数にしている」

 「輸送と上陸作戦部隊も欲しいところですがね」

 「どの道、救援は無理だ。ロードスで生産するよ」

 「バルカンとカフカスの工場ですか」

 「孤立してもやっていけるくらいじゃないとね」

 「ちょっと不安ですが・・・」

 

 

 

 三陸海岸

 シールド工法によって、トンネルが掘られていく。

 建設が工期が短いほど安く上がり、

 使用するエネルギーが小さいほど安く上がる。

 シールド機械に飛行石が使われている場合、移動にかかる負荷は小さく、

 熱と光を加えるだけで、10人ほどで押し込めるほどの重量になり、

 機械の疲労も小さく、容易に解体も出来た。

 その分だけ、ローラーカッター、成形炸薬弾、ルビーレーザーに予算を掛ける事ができた。

 当然、日本国内のみの使用に限定されており、

 特別チームによる24時間集中工期だった。

 もっとも20本ほどのトンネルが1kmほど、掘られているだけであり、

 100万uの地下施設は、これからだった。

 それでも大中小30隻の艦艇を運用できる規模であり、

 日本海軍大綱の建造と修復をすべて賄える規模だった。

 集光器で集められた光が天井から降り注いでいた。

 「意外と明るいな」

 「石英ガラスの管を地表から通して照明を助けてる」

 「しかし、随分、広く建設したもんだ」

 「奥の半分は発電所、工場、倉庫、宿舎だよ。ドックの部分は手前半分」

 「陸路の方は?」

 「鉄道を通せたけど、自動車道は、これからだな」

 「スパイが思いっきり入り込んでいるそうじゃないか、工員の家族とか、大丈夫なのか?」

 「完成したら、疑われそうなモノは隠すよ」

 「守秘義務とか、緘口令だけじゃ 不安だな」

 「そりゃ 金掴まされて白人美人にいい寄られたら・・・」

 「落ちそうだな」

 「うん」

 「地表を含めて軍工廠都市の自給率を高めるしかないね」

 「人口は増えつつあるけど、移民も増えているから微妙だな」

 「やっぱり、集客が減るのが嫌で足を引っ張る者も多いらしいよ」

 「私利私欲で、海外の日本人を棄民扱いする馬鹿どもか」

 「井戸の中の蛙が。本当なら、あいつらの方を追い出したいよ」

 「どうせ既得権益にしがみ付いている人間だ、役に立たないどころか、足を引っ張るだろうよ」

 

 

中国大陸   面積 台湾比 友好国
アメリカ極東権益地 満州、朝鮮半島 135万2437    
軍閥七雄
(北京) 河北、山東、山西、河南、東・内モンゴル 106万8200 5.93 アメリカ
(上海) 江蘇、安徹、浙江、 34万4000 3.91 ドイツ
(重慶) 湖北、貴州、湖南 57万3800 3.19 中立
(成都) 四川 48万5000 1.66 中立
(広州) 広東、福建、江西、広西、 70万2900 4.06 日英同盟
(蘭州) 甘粛、青海、陝西、寧夏、西・内モンゴル 182万0800 3.32 ソビエト
大理 (昆明) 雲南 39万4100 1.23 中立
 
ウイグル ウルムチ ウイグル 166万0000 0.44 中立
チベット ラサ チベット 122万8400 0.34 中立

 

 穂(広州)軍閥独立で反米感情が高まりつつあった。

 アメリカ資本は穂(広州)軍閥の圧力にあって初期投資の回収が遅れていた。

 日英同盟は、アメリカの設備を利用しつつ事業を香港圏を拡大していく。

 広州市

 南派武術(南拳)

 洪家拳、詠春拳、蔡莫拳、白鶴拳、蔡李佛家拳の道場が各地に作られ、

 観光・入門ルートとして確立されていた。

 こういった無形の価値を見出し、無から有の資産を生み出す者は強く。

 日英同盟は、穂(広州)軍閥との協調関係を保つため利用し。

 日本人の観光客が基礎鍛練で値を上げていた。

 日英の関係者たちが組み手の様子を見ていた。

 「軍閥同士の異種格闘大会で勝てれば、弾みがついて旅行者が増えそうだな」

 「どうせ、お金を落とすなら、利権のある穂国にして欲しいね」

 「しかし、まだまだアメリカ資本は強いようだ」

 「いずれ、我々に売却して、燕(北京)に資本を集中するだろうよ」

 「穂や呉がアメリカの目の敵にされないか?」

 「どうかな、アメリカの軍拡は、産みの苦しみってところらしい」

 「穂(広州)、呉(上海)、涼(蘭州)を仮想敵にしても遠過ぎて軍拡に無理があるよ」

 「では、メキシコ湾とカリブ海を挟んだベネゼエラか、コロンビアを?」

 「投資に引き寄せられて、東欧、ブラジル人の移民が増えている」

 「人口が増えれば、近代化もしやすいし、アメリカと利害対立も起こしやすい」

 「南米からの麻薬流入を見逃しているのもそれか」

 「質と量で最強なのにアメリカだけが近代的な戦争をしていない」

 「列強として、名を上げるには、どうしても近代戦争をしたいだろうね」

 「アメリカとアメリカ国民に借金を背負わせても軍需で私腹も肥やしたいかね」

 「民主主義と資本主義は水と油。最大公約数は、インフレ・コレステロールだよ」

 「国家が社会資本を軍事力で絞って国際社会で安定したいのは当然の発露では?」

 「アメリカ軍が暴走しなければね」

 「その時は、南米産の解放神学をアメリカ社会に根付かせてやる」

 「上手くいくので?」

 「上手くいくも何も、ソビエト、ドイツ、アメリカの脅威のバランスだよ」

 「危険なバランスだな」

 「解放神学が強くなれば、労働者の権利が強くなってアメリカ経済は沈没だよ」

 「日本やイギリスに波及しなければ良いのですがね」

 「まぁ 余り気が進まないがね。アメリカのおいたが過ぎれば、やらざるを得ないだろうよ」

 「列強同士で足の引っ張り合いだと、中国軍閥が差を縮めるのでは?」

 「軍閥はどうしても軍事偏重になりやすいからね、急速な成長はないよ」

 「軍国主義化しなければ良いのですが」

 「穂は大丈夫だろう。駐留イギリス軍を認めている」

 「軍事クーデタ防止も含めて、政府、資本家層、国民からも支持されている」

 「昔は、もう少し殺伐とした社会だったのに・・・」

 「分裂する以前が麻薬と銃の密輸で地獄だったからね」

 「いまでも地獄に見えるが?」

 「マシになったと思うよ。地獄を作るのも人間なら安定を作れるのも人間」

 「もう少し治安が良くなれば、観光ルートも広げられるのに」

 「穂軍閥と地元マフィアと交渉中だよ」

 「誰だって、治安維持が安定収入になると分かれば、自制する側に回るよ」

 「特権階級者だけね」

 「権威主義者が好きな人間もいるよ。アジア人は多い」

 「金だけの繋がりより、安心では?」

 「金の切れ目が縁の切れ目は、日本の言葉だろう」

 「そ、そうでした」

 

 

 アメリカ極東権益地

 黒人たちが毛皮のローブを羽織って、闊歩していた。

 識字率が高まり、高度な文学を習得すれば、知性が瞳に宿る。

 情緒が安定し、精神的に強くなれば品性が身につく。

 法に対し、一定の規範を示せれば、信頼される。

 奴隷から徐々に力を付けた黒人たちが極東権益地に来て得たモノは自由だった。

 単に英語がわかって、白人の命令を聞けることで、得た地位であり、

 一定の生活が保障され、教育が受けられるようになり、

 黒人が差別できる中国人、朝鮮人がいると気構えも変わってくる。

 極東権益地に来る黒人、フィリピン人は増えており、

 アメリカ本土にいるより成功しやすかった。

 「寒いぃぃ〜」

 「いくら金回りが良いからって、こう寒い場所だと縮こまるよ」

 「だけど、中国人は一日二周りでも良いけど、朝鮮人は毎時間見回らないと・・・」

 不意に炭坑内の朝鮮人たちが喚きながら暴れだし、

 黒人自警団が鎮圧していく。

 体格差がモノをいい、朝鮮人の群衆は投石を繰り返しながら押し切られ、鎮圧されていく。

 「くっそぉ〜 居留地に追い返してやればいいんだ」

 「軍閥が独立してからというもの、中国に送り込めなくなってる」

 「中国からも入国お断りとはね」

 「同類に見えるんだが」

 「いや、直情短絡でないだけマシさ。中国人が数段、陰険で狡猾だよ」

 「日本人は、かなり大人しいようだが」

 「日本人の中にも短絡なやつはいるよ。少ないけどね」

 「朝鮮人が成り済ましてんだよ」

 

 12/01 モンゴメリー・バス・ボイコット事件

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異境ガイア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 紅光星雲、チェリー・ウェーが天空を横切って瞬く世界。

 エンキドゥ大陸

 タナ村で、一番多い種族は1200人のドワーフであり、

 2番目は、エルフ族の500人

 人族は3番目に多い200人ほど、

 総人口2000人ほどがコロニーを作っていた。

 その外には、広大で無慈悲な世界が広がっており、

 魔獣・妖獣と命懸けの攻防が続いていた。

 コロニーの中心部は、比較的安全であり、市場も集まっていた。

 ドワーフの群衆に混ざって、エルフ、人間たちも点々と歩きまわる。

 一般的なドワーフは、人間より15cmほど低く、鬼、エルフより30cmほど低い。

 なので、子供のウネビ、アルディ、ラシェル、クロエより背が低かったりする。

 「すげぇ 鉄製の剣が流れてきてるのか」

 「たっけぇぇ〜」

 「長剣だし、俺のより良い」

 「キズナ。値崩れしちゃったね」

 「キズナ君。もっと早く売ってたら高く売れたのに・・・」

 「とほほ・・・爺さんの形見だったのに・・・」

 「でもこういう高値商品が市場に回ると欲しがるドワーフも増えるし、インフレになるよ」

 「鉄製の剣なんて贅沢な、どこで作ったんだろう」

 群衆がざわつき始めた。

 「なんだ?」

 「アレじゃないの」

 「小さな飛行機械か、あの先っぽで回ってるのはなんだ」

 「速いな・・・どうやって回しているんだろう」

 それは、空中に浮いてる飛行帆船とは明らかに違い。

 町の上を旋回すると海岸に滑走しながら着水した。

 「見に行こう」

 「うん」

 着水した飛行機は海岸に乗り上げ、

 一人の人間が知らない言葉を黒い箱に話しながら、群衆の中に歩いてくる。

 「お前は誰だ」 ドワーフ

 「商人だよ」 人間は、少し訛りのある言葉で応える。

 「どこから来た?」

 「ヒルコ島だ」

 ざわめきが群衆全体に広がる。

 持っている情報量に比例して顔色の変化も激しく。

 「・・・ほう、どんな商品を持って来たんだ」

 「積み荷は、船の方に載せている」

 「我々は、なにか売れるモノがあるか、買うモノがあるか、市場調査に来たんだ」

 「そ、そうか、じゃ 商工会に来ると良い。相場が分かるはずだ」

 強力な武器があれば、町の外へ生存圏を拡大することができた。

 そして、邪な種族に強力な武器が回れば、治安が悪くなる、

 なので、どこの世界でも、強力な武器は統制された売買が望まれていた。

 

 

 潜水艦 大和

   全長122m×(幅48m)全幅60m×吃水7.02m

    飛行石1000t

    15400馬力+6000馬力   600km/h   37500海里   172人

     45口径114mm砲2基  60口径40mm連装砲2基  60口径25mm連装砲2基

     飛龍  晴嵐改2機

   

 大和 艦橋

 「天体観測の方はどうか?」

 「天体図をあるだけ持って来ましたがね。紅い星雲が横切る星は見当がつきませんね」

 「緑光星雲とか、蒼光星雲が横切ってる世界もあるのだろうか」

 「他の平行世界に繋がっていれば面白いでしょうが・・・」

 「繋がっているとすれば、地球のある宇宙世界だろうな」

 「平行世界を一旦経由して、知的生命体が存在する惑星世界の出入り口を探す」

 「なるほど・・・じゃ 銀河系のどこかの知的生命体の星に出入り口があるかもしれませんね」

 「ガイア星系内は?」

 「太陽系と似てますね。いまのところ、内惑星が4つ、外惑星が3つです」

 「飛行石があるのなら宇宙開発も容易かもしれないな」

 「鉄がないのが問題では?」

 「まぁ それは問題か」

 「木梨艦長、タナ村です」

 「ほう、あれか、畝傍の生き残りが向かった村というのは・・・」

 港には帆船3隻が浮かび、飛行帆船も1隻浮かんでいた。

 「畝傍の生き残りを庇護できれば良いのですが・・・」

 「それより、半分を人鬼村に残してきたのが心配だよ」

 「田辺艦長がいますし、飛龍、晴嵐も置いてきましたから大丈夫だと思います」

 「召喚術が可能な魔法使いがいれば、日本人の移民を進められるんだがな」

 「来ますかね。棄民」

 「飛行石があれば日本経済は安泰だからね」

 「経済はともかく、国防は手抜きですから不安です」

 「軍国主義の反動で政治経済主導になったのはしょうがないよ」

 晴嵐が横に並ぶと艦首甲板にふわりと着艦する。

 「上手いもんだ」

 「飛行石でほとんど重量を感じさせませんね」

 「情報通りなら、それらしい人間たちの集落が外縁部に作られているようだ」

 「フランス人もいるようだが、混血もいるらしいから人間と言えるかどうか・・・」

 「じゃ ハーフ種ですか」

 「交配可能なのが面白いな」

 「聞いた話しだと、滅多に子供が生まれないとか」

 「それが純血種が多い理由か・・・」

 晴嵐の乗員が艦橋に上がってくる。

 「ただいま、帰還しました」

 「御苦労」

 「木梨艦長、やはり、畝傍の生き残りは、人間の住むタナ村に移民したようです」

 「現在、当時の乗員は亡くなっており、子と孫がいるようです」

 「そうか、もうすぐ、到着する。商売はできそうかね?」

 「はっ 武器類の類は、商工会で引き取りたいと、それ以外は、自由に売買していいそうです」

 「安く買い叩かれたりはしないだろうな」

 「いえ、武器を購入した者をタナ村で確認しておきたいだけのようです」

 「そうか・・・そうだろうな」

 「人族は、どうだったね?」

 「こちらの言葉ですがマヤ族。あるいはメソポタニア人種かと思われます」

 「ノーフォーク連隊の生き残りは?」

 「まだ確認されていません」

 「まぁ 何でもガイアと結びつけるのも考えものか・・・」

 「我々も、こちらの言葉を覚えなければならんな」

 「はい」

 「畝傍の生き残りを庇護したら、人鬼村で生存圏の拡大に励むとするか」

 「はい、タナ村の魔法使いたちで大規模な召喚魔法ができるのなら良いがね」

 「日本人の移民ですか」

 「そうだ」

 「魔法使いの数と、地球側の準備と、採算性ですかね」

 「そうなるな」

 「畝傍の生き残りが役に立てばいいのですがね」

 「たとえ役に立たなくても、日本国にとって恩人に違いないよ」

 「義理と人情ですかね」

 「そういう事になるな」

 

 

 タナ村 商工会

 ウネビ(人族)、アルディ(人族・鬼族・エルフ族)、

 ラシェル(人族・エルフ族)、クロエ(人族・鬼族)、

 シルビー(人族)、ティフォン(人族・ドワーフ)が向かい合う。

 畝傍の生き残りは、現地人族、エルフ族、鬼族、エルフ族、ドワーフ族との混血が混ざり、

 日本人、フランス人から、かけ離れて見えた。

 「・・・君がウネビ・キズナ君か」

 「そうだけど」

 「君の祖父の遺産があってね。ご同行願いたいな」

 「・・・・」

 「それと、たぶん、フランス系の君たちにも祖父からの遺産がある」

 「「「遺産〜!」」」

 「遺産は、畝傍の乗員とその子孫だ。できれば、我々と一緒に村を開拓してくれれば助かる」

 「あんたたちの言葉は、爺さんの話していた言葉と似てる」

 「ウネビ君は日本語が話せるのかね」

 「良く分からないけど、いくつか単語と意味を知っているだけだよ」

 「フランス語はどうかね」

 「母親が少し話せたかな」 アルディ、

 「家は、父親が少し」 ラシェル、

 「・・・・・」 クロエ 首を振る

 「我々の村は、まだ小さいがね。外周部に住む君たちより、安全な場所だ」

 「知っているよ。凄い武器を持っているんだ」

 「そういえば、遺産の中に武器もあったかな」

 「「「「「「行く〜!」」」」」」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 戦後も、ボチボチという感じです。

 戦後10年、ドイツ第3帝国は、無人の宇宙ロケットを打ち上げて、宇宙に第一歩。

 ドイツ帝国に先行されてしまいました。

 日本は、疑われながらも、ガイアに足場を作ります。

 世界最強のアメリカは、国内事情の問題で足踏みです。

 

 

 

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第14話 1954年 『ジャパンルール』
第15話 1955年 『ノーガードの行方』
第16話 1956年 『悪徳は地の塩 正義は天の蜜』