月夜裏 野々香 小説の部屋

    

ファンタジー系火葬戦記

 

『魔業の黎明』

 

第22話 1962年 『根源は生体素粒子』

 社会構造はピラミッド構造だった。

 権力構造を持続させるには、文化・社会的慣性、慣習や法だけでなく、

 権威主義的な忠誠心と拝金主義的な利権の構築が成された。

 侵略、反乱、犯罪に対処し得る軍事力、警察力など暴力装置も必要だった。

 人々は、欲望に従って、野心、保身、権力、蓄財、支配を追及し、

 野望を持つ者は、他者を陥れて成り上がろうとし、他の勢力の利権を食い潰していく。

 保身を求める者は階級を膠着化させ、改革の目を潰し、自助自浄能力を失わせる。

 野心家は、不正腐敗で私腹を肥やして地位を手に入れようとし。

 そして、生存圏を奪われた弱者は、犯罪を重ねても生きようとし。

 権利を奪われようとする貧困層は、団結しながら資産の再分配を求めた。

 安定した国家構造を保つ手段は、抑圧や弾圧と同時に可能性の芽も潰してしまう。

 また、近隣諸国の侵略、圧力、利権によって、無理をしなければならず。

 特定の勢力の権力を増すことにもつながった。

 国家構造は綻び、歪になり、軋轢が増し、脆くなり、崩れていく。

 もっとも、近代に入ると社会構造は、橋梁計算が取り入れられたのか変遷し、

 中央集権から、重圧や軋轢を分散した連邦制。

 あるいは、文化、民族、風土に合わせた自治都市制。

 あるいは、個人の人権と権利を保障した民主制へと移行していた。

 かくゆう、日本も連邦制が進み、

 戦後、デモクラシー人権が強化され、軋轢も部分的に解消されていた。

 政府の選択は世論操作、利益誘導など間接的な手法に限られ、

 オブラードに包まれたように巧妙になっていく。

 

 各国とも勢力均衡外交の中にあって、権利が分散され、

 世界の主要国は、独伊同盟、アメリカ合衆国、日英同盟、ソビエト連邦の4極。

 主要国は、弱小国を傀儡にすることで、国際外交上の優位性を確保しようとし。

 欲望に駆られた外患は、国防を怠る弱小国の利権を貪り、国体を不自然に歪め侵食する。

 しかし、外患に侵食されることで抵抗性が増し。強健な国家へと変質していく。

 これは、怪我、病原菌、ウィルスに対抗する事で肉体の強靭さが増すことにも似ている。

 戦後、国家間の勢力均衡は離合集散を進めさせ、

 列強と中進地域の格差が狭ませ。

 それまで列強でなかった地域が力を付け伸び始めた。

 中国7軍閥。アメリカ極東権益地。バルカン連邦、カフカス連邦。

 ベネゼエラ。オランダ(インドネシア)。

 これらの地域の発展の要素は、多様だった。

 中国7軍閥の発達は、分割によって中華思想が薄まり、対立が自浄自助を強要したためであり、

 アメリカ極東権益地の発展は、アメリカ資本主義によるものだった。

 バルカン連邦の発達は、日英土の利権分け、

 日本民族の大量移民と日本資本が基幹産業を押さえたこと、

 都市の自治権拡大によって、民族、文化、宗教、言語の対立を軽減させたことであり。

 これは、カフカス連邦にも言えることだった。

 先進的な資本支配。単一民族の独善などの要素も深く絡んでいた。

 

 

 オランダは、軍事力を除く、主権を持つ国家だった。

 オランダ軍が唯一存在するとしたらインドシナ領であり、本土ではなかった。

 オランダ人は、行き来するドイツ軍駐留軍に憮然とした視線を向ける。

 双方とも干渉することなく平静が保たれていた。

 ドイツ帝国と直接交易が難しい各国の企業は、オランダを仲介に交易していた。

 カフェテラス

 「軍人以外のドイツ人は少ないようだ」

 「軍事力を依存しているモナコ、リヒテンシュタイン、サンマリノと雰囲気が似てる」

 「オランダは、それらの国より大きいのにドイツの保護国だ」

 「オランダ人は、自尊心を守るためインドネシアに行きたがるよ」

 「お陰で儲かっているのが嬉しいね」

 「血生臭いがインドネシアはオランダ人の国になりそうだ」

 「インドネシアの白人人口は1500万だけ。難しい気がするね」

 「人口構成だと最大級だよ。総人口の15パーセントなら」

 「ジャワ人に恨みを買ってるよ」

 「しかし、高原地帯に都市を建設してくれと言われてもね」

 「白人は暑いのが嫌いだからバンドンと同じ、標高700m以上を望んでいる」

 「どちらにしろ、日本は、白人勢力に囲まれてしまうな」

 「地政学的な状況は悪化してるね」

 「だけど、国勢ならアメリカ、日英同盟、独伊同盟は拮抗している」

 「ああ、人種の壁が気になるだけだ」

 

 

 

中国大陸   面積 台湾比 友好国
アメリカ極東権益地 満州、朝鮮半島

135万2437

   
軍閥七雄
(北京) 河北、山東、山西、河南、東・内モンゴル 106万8200 5.93 アメリカ
(上海) 江蘇、安徹、浙江、 34万4000 3.91 ドイツ
(重慶) 湖北、貴州、湖南 57万3800 3.19 中立
(成都) 四川 48万5000 1.66 中立
(広州) 広東、福建、江西、広西、 70万2900 4.06 日英同盟
(蘭州) 甘粛、青海、陝西、寧夏、西・内モンゴル 182万0800 3.32 ソビエト
大理 (昆明) 雲南 39万4100 1.23 中立
 
ウイグル ウルムチ ウイグル 166万0000 0.44 中立
チベット ラサ チベット 122万8400 0.34 中立

 

 一旦、排他的な権力・利権構造が構築され、国境線が敷かれると、

 中国7軍閥国は、戦国時代のように睨み合い。

 列強の兵器が国境線を挟んで対峙していた。

 権力者は、自らの利権を守るため軍事的対立を強め、

 資本家は、輸出入特権による排他的な利益を目論んだ。

 燕(北京) × 呉(上海)

 呉軍陣地

ヴァイス・パンター(白豹)戦車
hp 重量 全長 車体長×全幅×全高 速度 航続距離 兵装 乗員
750 45トン 8.66 6.96×3.27×2.85 50km/h 250km 71口径88mm×1 5
7.92mm×2

 戦後、開発されたドイツ戦車ヴァイス・パンターも新型戦車の開発が進むと、

 年を追うごとに見劣りしていく。

M47パットン戦車
hp 重量 全長 車体長×全幅×全高 速度 航続距離 兵装 乗員
810 46トン 8.51 6.35×3.51×3.35 48km/h 130km 53口径90mm×1 5
7.62mm×2

 とはいえ、燕国のM47パットン戦車と、いい勝負であり。

 両国とも競り合うように配備数を増やしていた。

 主要国家群は、中国軍閥間の敵対を望み、

 シーソーゲームのように軍事力を増長させていた。

 「アメリカは、M48を燕に配備しようとしているアル」

 「ドイツは、レオパルドを開発しているアル。欲しいアル」

 「相変わらず、仲違いを餌に金を巻き上げるアル」

 「まるでヤクザ、警察、弁護士アル」

 「列強は、正義の味方ずらして、汚いアル」

 「やっぱり兵器を国産しないと駄目アル」

 

 

 呉 駐留ドイツ海軍基地

 ニッケルなど希少金属を欲するドイツは、呉国との友好関係を深め、

 陸軍戦力に傾倒する呉国に代わり、ドイツ艦隊が駐留していた。

 ドイツ帝国海軍は、大型原子力潜水艦の建造を成功させており。

 本国が封鎖されても戦える原子力潜水艦隊を構築していた。

 ジーンリッチのドイツ海軍水兵は、機敏に動いていた。

 9600トン級ハーメルン型巡洋潜水艦NU003 艦橋

 「・・・日本潜水艦が通常型潜水艦ではないと?」

 「ドイツ本国は、そう考えている節がある」

 「しかし、伊号が原子力機関だとしたら静粛性が優れ過ぎていますよ」

 「伊400号型潜水艦が6500トン級である事が不自然だね」

 「通常潜水艦で費用対効果なら3000トン級以下で数を揃えるべきだろうが」

 「異世界に行くために大型化したという噂もありますよ」

 「ふっ 南シナ海の謀略海域といい、各国とも不審な動きが多い」

 「誰がやり始めたのか、いい迷惑です」

 「だが本国は、まだ、あの海域を疑っている」

 「アメリカのUFO騒ぎ。ソビエトの超能力。日本の魔法結社といい勝負では?」

 「SFも、ファンタジーも、需要があれば面白くてやめられないのだろう」

 「供給先から、リベートを貰って呉に配置されているのではないでしょうね」

 「軍事費を増大させる口実があれば何でも利用しまうよ」

 

 

 

 イギリス

 ロンドン さざれ石 ウォーターフロント

 日本人がイギリス人と歩いていた。

 「国際情勢の判断だと、バルカン・カフカス権益は今のところ保たれている」

 「助かるよ。バルカン・カフカスの日本人の居留民は多いから」

 「いや、日本人のフロンティア精神は意外な側面だよ」

 「これほどの規模で移民が行われるとは、驚きだね」

 「国家の成長過程で、膨張しやすい時期と当たったのでしょう」

 「アメリカ資本のウクライナ・ベラルーシ権益が日本のバルカン・カフカス権益の外堀になっている」

 「バルカン・カフカスのアメリカ権益も大きいですよ」

 「アメリカが現状維持を望むか」

 「それとも、日英同盟にとって代わって、バルカン・カフカスを支配したくなるか」

 「予断を許さないよ」

 「アメリカの軍事力は強大だ。しかし、バルカン・カフカスに展開出来るほどではなく不足だ」

 「しかし、アメリカ国民は軍事費の増大を望んでいない」

 「日本もですよ」

 「イギリスもだ」

 

 

 イギリスの飛行場

 試作中の新型旅客機が飛び立って行く。

HS121  ホーカー・シドレー トライデント旅客機
重量/離陸重量 全長×全幅×全高 推力 巡航速度 航続距離 乗員 乗客
37300/71700kg 35×28.9×8.3 5425×3 972km/h 3860km 3 149

 日本人関係者たち

 「トライデントの自動操縦の着陸装置と。3発エンジンは、悪くない」

 「推力不足な気がするな。7500kgは欲しいね」

 「バルカン爆撃機と同じ推力9070kgにすれば良いのに」

 「それだと大き過ぎて採算が悪い。ターボファンエンジンじゃないと」

 「だいたい、バルカン爆撃機の配備数が少ないのだから互換性を期待しても無駄だよ」

 「いや、旅客機に使う事でバルカン爆撃機を・・・」

 「そりゃ 本末転倒だろう」

 「経済効率なら綾風の方がいい」

 「日本−瑞樹間の航路は長い。航続距離は、倍の7000kmは欲しいね」

 「機内生活は4時間以内にした方がいい」

 「中継飛行場の建設は離島産業になるし必要だよ」

 

 

  日本人 バルカン連邦 83万8387ku   カフカス連邦 19万0500ku
ドデカネス諸島 2663ku 200万 ハンガリー 990万 アゼルバイジャン 360万
カナリア諸島 2505ku 50万 ルーマニア 1800万 グルジア 390万
キプロス 9250ku 250万 ブルガリア 760万 アルメニア 160万
    アルバニア 150万    
    ユーゴスラビア 1820万    
    ギリシャ 800万    
    合計 6320万 合計 910万
  500万 日本人 1100万 日本人 300万
    総人口 7420万 総人口 1210万

 バルカン連邦 首都サラエボ

 オリーブハウス バルカン連邦会議議長 執務室

 その広大な国土の中にあって連邦を代表する議長の権限は弱く。

 各共和国の大統領、首相、国王でさえ、その権力は、弱められていた。

 連邦で最も権限を持つ者は、都市を仕切る知事であり。

 連邦議長は、連邦が侵略されない限り大権を発動できず。

 参戦に至る手続きも議会の多数決が必要だった。

 各国大使・諜報機関は、自分より自治都市の知事と取引するであろう。

 彼は、手足をもぎ取られた連邦の象徴でしかない事を自覚しつつ、

 観光客で賑わうサラエボ事件の通りを見下ろしていた。

 「連邦の経済は拡大中、流通も通信も盛んで工業化も進んでいる」

 「いくつかの都市で荒れているようですが?」

 「日本人が都市ごとに風土を強めて勝手に調整するだろう」

 「杓子定規で大雑把ですが卒なくこなしているようです」

 「言葉知らずが、功を奏してるのだろう」

 「犯罪検挙率と予防警告が最大の原因では?」

 「ふっ 言葉知らずが、どういう捜査をしているのやら。調べられないのか?」

 「連邦警察に従って動くのが都市警察の習慣になってるようです」

 「都市警察の冤罪まで、連邦警察が再検挙で挙げている困ったものだ」

 「内平らかにして、外成るというやつか」

 「ええ、独伊同盟の侵略の兆しも少なく、軍事的危機も低いようです」

 「しかし、いざ連邦議長なってみると、なんの権限もない。まるで日本の天皇の気分だ」

 「国家の指導力を殺すのは、日本人の癖なのでしょう」

 「日本人は、談合と癒着で利権構造を構築して、政策を決めるらしい」

 「外交戦略は、身動き取れないな」

 「国が弱くて身動き取れないか。権限が小さくて身動きが取れないかの違いでは?」

 「どっちもフラストレーションがたまるな」

 

 

 

 バルカン連邦クロアチア共和国

センチュリオン
重量 hp 全長×全幅×全高 速度 航続距離 兵装  乗員
52トン 650 7.60×3.39×3.01 34km/h 450km 51口径105mm×1 4
7.7mm×1 

 防御力と攻撃力が高い戦車は、安心感を与える。

 それがわずか数ミリメートルほど余計な口径でも、撃破率が高まり、

 数センチメートルほど余計な装甲厚でも、生存性が高まる。

 日本民族は、多民族国家バルカン連邦の中で生活しており。

 排他的な視線や意識を感じやすいのか、センチュリオン戦車は好まれた。

 日本軍将兵たち

 「戦車の中は安心だけどね。将兵は装甲化された移動手段が欲しいよ」

 「新型の装甲兵員輸送車トロウジャンは、良いと思うよ」

 「イギリスに開発丸投げが気に入らない」

装甲兵員輸送車 FV432 トロウジャン
重量 hp 全長×全幅×全高 速度 航続距離 兵装 兵員 乗員
15.3トン 240 5.25×2.8×2.28 52km/h 580km (7mm×43)×1  10 2

 「性能は悪くないよ」

 「不都合があっても、やっぱり、同盟国に近い、イギリス製の方が安心だからね」

 「37口径105mm自走砲アボットも悪くないし。ライセンス生産は出来る」

 「日本人は、基地の増築の方が安心らしいけど」

 「想定される侵攻ルートは、基地の迎撃力で抑えられるだろう」

 「機甲師団は、予備兵力、対空挺部隊、治安維持で温存かな」

 

 

 ドデカネス諸島 ロードス島

 ドック型造船所で1200トン級コルベットが建造されていた。

排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離 対空・対艦 対潜ミ 対空ミ 乗員
1200 94×10×4.6 15000 30 12kt/5200km 40mm砲×2 6基 6基 60

 「これで、バルカン連邦海軍もようやく、形になりそうだ」

 「実質はギリシャ海軍だよ」

 「日本海軍に任せりゃいいものを・・・」

 「陸軍と空軍に取られているから、海軍は、ギリシャに任せたいんじゃないか」

 「しかし、建造能力でイタリア海軍に負けてる」

 「地中海で運用するなら、この大きさで十分だよ」

 「対艦兵装で不安だな」

 「バルカン爆撃機で撃沈してくれるよ」

 「爆撃機は頼りになるけどね。地中海は狭く、平均水深は1500m。潜水艦は活躍し難い」

 「地中海じゃ 日本海軍の基本戦略は通用しそうにないな」

 

 

 日本 某研究所

 いくつかのパラメーターから導き出される、数値は、正直だった。

 とある勢力は握り潰そうとし、とある勢力は公開しようとする。

 生産(Production)−備蓄(Storage)+搾取(Exploitation)+消費(Consumption)

 日本の内地は1905年代であり人口は4600万であり。

 瑞樹州の人口2000万を足しても1930年代の頃の6600万ほどだった。

 人口の気薄化は沿線に沿い、

 点と線に人口を集約することで生産力を保てても、消費は低迷した。

 「少数精鋭や機能主義は、平時のみに許される贅沢だね」

 「国情でに引っ張られているのはしょうがない」

 「いくら機械化が進んでもマンパワーに依存するのは危険だよ。天災と戦時だと一発機能障害だ」

 「備蓄が多過ぎないか?」

 「設備投資は多いと思うよ。人口気薄だから飛行場も世界最大級を建設できるし」

 「搾取率が低くても、移民で生産力と国内消費が低迷している」

 「輸出と海外の外貨で補ってバランスを保っている感じかな」

 「内地の人口は、アメリカ権益地や中国7軍閥より小さい」

 「その上、内地は爺さん婆さん、女子供が増えて就労人口は悲惨だな」

 「資産の再分配と、機械化が進んでいなければ酷かったよ」

 「これで、産業がアメリカに次ぐのは、魔業の底上げ、おかげかな」

 「人的脆弱性を魔法で補っているだけだ」

 「単に魔力が周辺諸国を警戒させているだけじゃないのか?」

 「それを言うなら、海外の日本人3000万の相乗効果も大きいよ」

 「バルカン連邦とカフカス連邦、アメリカ極東権益地、イギリス植民地は、独立採算制だ」

 「どこまでGDPに反映しているやら」

 「日本圏崩壊は、面白かったけど」

 「強制的な移民政策は確かに崩壊モノだよ」

 「有力資本を利権を餌に送ったのだから引き摺られるように移民していったよ」

 

 

 日本連邦領巨済島

ホーカー・シドレー ハリアー戦闘機
重量/全備重 全長×全幅×全高 翼面積 推力 速度 航続力 30mm機銃 ミサイル 乗員
5530/11500 13.90×7.70×3.45 18.5 8450kg 1185km/h 2580km 1 4 1

 飛行場

 予算上の問題で、日本空軍の将校は、ハリアー戦闘機の扱いに迷った。

 運用は、対地支援戦闘機。艦体防空が挙げられた。

 「巨済島へのハリアー運用は、アメリカ権益地を挑発している気がするね」

 「運用ができるか確認しているだけだ」

 「日本は移民政策のおかげで飛行場が大きいし、全てを破壊されることはないと思うが」

 「通常の戦闘機との航空戦は勝てそうにないね」

 「ノズルジェットの使い道じゃないの?」

 「空母や強襲揚陸艦に乗せられる」

 「建造するのには、金がねぇ」

 「必要に応じてレーダードーム基地の防空に展開出来るのでは?」

 「緊急展開の部隊は欲しいが航続力がな」

 「空中空輸機は?」

 「現実的な対応だけどね」

 巨済島から650mほどの橋を渡れば、アメリカ領極東権益地だった。

 日本人の観光客は多く、就労ビザ発給の道は常時開かれていた。

 アメリカ資本は、日本の弱体化のため率先して日本人の雇用を拡大していた。

 アメリカ風の家屋がストリート沿いに建ち並び、

 漢民族、朝鮮民族、混血、日本人、黒人、白人が生活していた。

 「結構、日本人がいるじゃないか」

 「玄界灘を渡れば、すぐ日本に帰れる」

 「真っ当に働けば、日本で働くより、効率良く稼げるから、権益地に行きたがる日本人は多いよ」

 「搾取されないかな」

 「契約上は、日本で働くより良いし。現に給与も良い」

 「1000万近い日本人が極東権益地で働いているからね」

 「みんな、アメリカ資本の働きアリ。駒だよ」

 「アメリカ資本の極東権益地の人生ゲームに付き合わされているだけだ」

 「アメリカ国民の自己主張で、ドルは高めに設定されているからね」

 「対外的に楽して儲けるのに良い手だな。怠け者を作るのにもね」

 「お陰で、バルカン・カフカスに行く日本人が減ってるよ」

 「日本人は、元々、引き籠りで土着な回顧主義者が多かった。当然かな・・・」

 町に入るとアメリカ自治警察が朝鮮人集団の投石を鎮圧していた。

 「・・・相変わらずだな」

 「朝鮮人が半島南岸にこれほどいるとはね」

 「反日で日本人に似てるから諜報で都合が良いと思ったのだろう」

 「右翼は半島を支配したがってるが正気かね」

 「隣に強姦魔が住むと想像力が及ばないのだろう。ありがちだ」

 「俺は、彼らの隣人になりたいとは思わんよ」

 

 

 

 日本の領海は広大であり、

 海洋保安庁は、西太平洋、オホーツク海、日本海、東シナ海、南シナ海。

 瑞樹州、カナリア諸島、エーゲ海、黒海、カスピ海に及ぶ。

 警備。犯罪防止・対処。消防。安全保障。治安維持。

 水路・海図・灯台を整備する機構を必要とした。

 広大な海域に配備する巡視船の数と質は、おのずと割り出されてくる。

うねび型巡視船
排水量 全長×全幅×吃水 hp 最大速度 航続距離 機関砲 ヘリ
6000トン 150×16×8 20000 23 9000海里 40mm×2 2機

 もっとも費用対効果を優先する巡視船を機能するのにさえ、

 豊かな知識、想像力、経験が求められ、

 高度なマニュアル、技術、練度を会得した人材を育てなければならず。

 高いモラルと士気、強固な結束力を保たなければならなかった。

 広大な海域を哨戒するだけの質と数を求められ、

 船体は商船構造となっていた。

 珊瑚海

 うねび巡視船

 技術者が乗り込み、大型レーダードームを囲んでいた。

 「鳥海からデーターを受信。レーダー、ソナーへリンクで来ました」

 モニターで点滅が確認され、

 「「「「おぉおお〜」」」」

 「なんとか、海軍と海洋安保庁のデーターリンクを合わせられそうだ」

 「海軍さんが中古ソナーを払い下げたと思えば、こういうことか」

 「艦数の少なさを少しでも補うため役に立てたいのだろう」

 「海軍さんが巡視船に協力してくれるかは、別だけどね」

 「巡視船の情報が海軍艦艇に筒抜けなのに、海軍艦艇の情報を得るには頼まなきゃならんからな」

 「相変わらずの国防優先か。戦時はともかく、平時まで海軍に隷属したくない」

 「だけど、断ったら、海軍は哨戒用の海上プラットフォームを建造するとか、騒いでいたからね」

 「ちっ 予算の取り合いか・・・」

 「上層部は頭が固いよ」

 「戦時はともかく。平時は逆にして欲しいね」

 「あははは・・・軍人が応じるものか」

 「トランジスターの機能を高められたらいいけどな」

 「アメリカは、トランジスターからICにしているのに。日本はまだトランジスターだ」

 「技術力と工業力を近付けても、資本力、開発力は別だからね」

 「アメリカの開発を模倣する方が楽だ」

 「その模倣だって。魔法使いがいなければ高精度の工作機械は作れないし」

 「高品質シリコン結晶も作れない。まず、ICの模倣は先の話しらしい」

 「歩留まりを考えると次に建造する工場は、大規模な空気清浄室が必要になるね」

 「金のかかりそうな工場で、元が採れるか不安だよ」

 「基礎段階で魔業を応用できても、産業基盤の拡大は年月がかかるよ」

 

 

 

 CIA アメリカ中央情報局

 国外戦力の実力行使から国を守る機構が軍事組織であり。

 戦線のない国内外の浸透戦は、諜報・情報機関が担当する。

 諜報・情報戦で敗北すると、離反勢力は後を絶たず、情報が攪乱され、

 機密が奪われ、反乱分子に悩まされ、有効な外交戦略が立てられず。

 同盟戦略で後手に回り、遊兵を作らされ、政治経済外交で追い詰められ、

 戦う前に勝敗が決まってしまう。

 某オフィス

 「ペンタゴンは、極東権益地に聖域を作ろうとしていないだろうな」

 「大統領の統制から逃れて独立勢力を構築すれば利権は大きくなる」

 「アメリカ資本が自由にできる地域だ」

 「アメリカ人は自由と無法が好きだからね」

 「某勢力が大統領の暗殺で統制からの分離と権力強化を画策している節があります」

 「アメリカの歴史で大統領暗殺は3人。本当は、もう少し多いがね」

 「しかし、これ以上、暗殺事件を増やすと人間不信が強まり暴力が支配する暗黒時代になるぞ」

 「某勢力は、日本が特異な力で、大統領の暗殺を防ぐ可能性を苦慮しているらしい」

 「ふっ 日本の未知の力が暴力を牽制するとはね」

 「その未知の正体は探れないのか?」

 「この20年間。ずっと調査しているよ」

 「その割には成果がない」

 「成果を信じられなければ、ですが」

 「反重力物資や魔法が信じられないのは当然だよ」

 「では、日本の国際的地位をどう説明する?」

 「総論賛成だがね。証拠は?」

 「残念ながら、我々の諜報機関は、日本の諜報機関に翻弄されて闇の中だ」

 「民族特異性のせいかね。その垣根は崩れていると思うが」

 「ああ、海外在住や混血も多い」

 「海外からの栄転人事。猟官人事も多いのに不思議だ」

 「諜報員は、非の打ちどころのないほど人格者で有能なんだが全部外されている」

 「訓練の賜物だ。諜報員の証拠だよ」

 

 

 キューバ

 サンチアゴ 飛行場

 MiG21フィッシュベッド戦闘機。

 ツポレフTu95/142ベア爆撃機。

 ツポレフTu16バジャー爆撃機が配備され、

 ソビエト軍事顧問団が任務についていた。

 「アメリカの反応は?」

 「いまのところ、問題ない」

 「誘ったのはアメリカだよ」

 「しかし、同盟関係が結ばれたらどうなるかな」

 「同盟か、藪蛇な気がするね。アメリカの軍産複合体に弾みを付けさせるようなものだ」

 「危機意識がアメリカ合衆国国民を結束させ、軍事費を安定させる。持ちつ持たれつかな」

 「需要が供給を生むか。資本主義国家らしいやり方だな」

 「咬ませ犬ならドイツ帝国にやらせればいいんだ」

 「ドイツ人は第一次世界大戦で失った誇りを第二次世界大戦で取り戻した」

 「もう野心はないと思うよ」

 「逆に東西から挟撃されているソビエトの方がその気か・・・」

 「踏み躙られた自尊心がコンプレックスになり人生を突き動かすものだ」

 「奪われた国土が人民の動機になり、国家目的の原動力になるのは、当然な気がするね」

 

 

 ベネゼエラ・キューバ・コロンビア VCC3国同盟 調印

 

 

 イギリス領 ジャマイカ (10991ku)

 ジャマイカは、アメリカとベネゼエラの中間に位置していた。

 ボーキサイトを産出し、コーヒーを出荷していた。

 そして、ベネゼエラの国力が増大するにつれ、焦点の的になっていた。

 貨物船にボーキサイトが積み込まれ、バルカン連邦へと出航していく。

 キングストンの町に日英合弁企業が建ち並び、

 観光地や公園にジャズが流れていた。

 日本の影響より、バルカン連邦の日系人の方が影響力が大きく。

 ベネゼエラの国勢が増すにつれ、ベネゼエラとの取引も増えていく。

 イギリス連邦内独立の動きは、強まっていたものの、

 利権関係で連邦にとどまる勢力が増して、自治権強化で沈静化していた。

 イギリス人と日本人

 「キューバのソビエト駐留戦略空軍は、中米の緊張を引き上げている」

 「どこの国が中米3国同盟と対応するだろうか」

 「日英同盟も独伊同盟も中米の利害は小さい。アメリカ合衆国に決まってる」

 「日本もアメリカ権益地と軍閥7ヵ国の脅威に晒されている。いい気味だ」

 「適度な刺激と敵意は、国民の国家依存と権力体制の存続で役に立つよ」

 「VCC3国同盟は、作為的なのか」

 「アメリカの労働運動は、激しさを増している。たぶんね」

 

 

 マジュロ環礁 (9.7ku)

 飛行場に綾風が着陸すると物資が降ろされる。

 補修ドック(170m×25m)が建設され、

 東太平洋側に対する補給・整備基地が建設されていた。

 専守防衛は、戦力集中で優れているものの、敵艦隊の攻勢を弱める点で劣り。

 通商破壊は、海洋全域で敵艦隊の兵站に脅威を与え、

 予防処置で負担を強い。敵将兵を疲弊させる。

 総合的に有益になると考えられた。

 マジュロ環礁は、産業らしい産業はなかったものの、

 基地が整備されると副次的な産業も発達していく。

 子供たちが海辺で遊んでいた。

 295kuの礁湖(ラグーン)に伊413、伊414が停泊していた。

 伊413号 艦橋

 「・・・魔法使いも遊んでいるときはタダの子供か・・・」

 「まさか、マジュロを前線基地にしてしまうなんて、思いませんでしたね」

 「プラットフォームで考えれば、島に物資を置く方が楽だけどな」

 「誘導ミサイルで、一発な気がしますね」

 「魔法使いは、日本製の誘導ミサイルを逸らしたぞ」

 「アメリカ製の誘導ミサイルは試していませんよ」

 「向こうの方が贅沢なだけで基本的には同じだろう」

 「贅沢できれば命中精度も上げられますよ」

 「まぁ 少しぐらい外せても可能な限り至近距離でのこと、核ミサイルなら同じだ」

 「使いますかね。核ミサイル・・・」

 「使いたくない。というのが正直なところだろうな」

 「魔法使いは超能力者で。魔法の杖は増幅装置という話しもあります」

 「結果的に魔力が使えるのなら、名称は拘らないよ」

 

 

日本海軍
空母 5 大鳳、(蒼龍、飛龍)、(瑞鶴、翔鶴)、
重巡 20 (古鷹、加古、青葉、衣笠)
(妙高、那智、足柄、羽黒)、(高雄、愛宕、摩耶、鳥海)
(最上、三隈、鈴谷、熊野)、(利根、筑摩)
伊吹、阿蘇

駆逐艦

68 (吹雪、白雪、初雪、叢雲) (東雲、薄雲、白雲、磯波)
(浦波、綾波、敷波、朝霧) (天霧、狭霧、夕霧、朧)
(曙、漣、潮、暁、響、雷、電)
(初春、子ノ日、若葉、初霜、有明、夕暮)
(白露、時雨、村雨、夕立、春雨、五月雨、海風、山風、江風、涼風)
(朝潮、大潮、満潮、荒潮、朝雲、山雲、夏雲、峯雲、霞、霰)
(陽炎、不知火、黒潮、親潮、早潮、夏潮、初風、雪風、天津風、時津風)
(浦風、磯風、浜風、谷風、野分、嵐、荻風、舞風、秋雲)
潜水艦 30  

 日本海軍艦艇の最古艦は、艦齢35年を越えようとしていた。

 戦後、大改装を行ったとはいえ、時代の変化に堪えようもなく。

 赤レンガの住人たち

 「飛行石を使えれば、最強の対空哨戒機、対潜哨戒機を作れるのに・・・」

 「むかしと違って瑞樹州は発達しつつあるからね」

 「飛行船を使っての輸送は発見されやすく。困難になってきている」

 「政府は、もう少し、高原地帯への空輸を続けたいらしい」

 「政府も良くやるよ」

 「しかし、日本と瑞樹州の双頭の龍計画は長期的計画で悪くない」

 「人口が気薄になれば、採算効率が悪化して都市が寂れるというのに・・・」

 「都市は貧欲だ。肥満になって身動きが取れなくなるより良い」

 「無理な節制で不自然にスリム化している節がある」

 「ドイツ帝国だってやってるだろう」

 「浪花節の日本人には似合わないよ」

 「長期的な展望で、予算が伸びないのが辛いね」

 「日本の領海は広過ぎる」

 「西太平洋、日本海、東シナ海、南シナ海、ミクロネシア、瑞樹州、東地中海、北大西洋の9海域」

 「ローテーションを含めた最大公約数は、100隻にも及ぶ」

 「大型艦は哨戒能力が高い。しかし、古くなっても使い続けなければならない」

 「小型艦は、更新しやすいが性能不足だ」

 「どちらにしろ、遠い場所に日本の権益がある。大型艦艇化は避けられないよ」

 「むしろ、現地に資本投下してもらいたがっている」

 「予算の取り合いはいつものことだよ」

 「ヘリ空母なら哨戒域が広がって、隻数を減らせる」

 「任務は哨戒だけじゃないだろう。それにヘリコプターの性能は疑わしいよ」

 「ハリアー配備の空母なら20000トン級以下でも運用できそうだ」

 「ライトニングの艦載機の方が良いような気がする」

 「対潜・対空哨戒ヘリ専用なら橋梁計算上、余計にスペースを取れて、装備を増やせる」

 「離島に飛行場を建設して、対潜・対空用の綾風を配備する方が効率が良さそうだが」

綾風
自重/全備重 hp 全長×全幅×全高 翼面積 巡航速/最高速 航続距離 対潜or対空
18000/30000 3667×2 32×32×9 96 /640 3000 装備

 「艦隊は、対潜・対空哨戒機に予算を取られる事を喜んでない」

 「空中から対潜哨戒は、確かに不安があるよ。しかし、潜水艦を海中深く追いやることはできる」

 「哨戒機は機動性と速度で有利で緊急展開も早い。水上艦艇よりいいと思う」

 「そして、潜水艦を海中深く、潜ませる戦力の方が意義がある」

 「それに水上艦艇より、潜水艦が良いね」

 「そりゃ 艦隊主力は飛行石装備と魔法使い常駐できる潜水艦にする方が良い」

 「海上を海洋保安庁に任せたくなるほどだ」

 「水上艦艇で手抜きすると示威力を疑われて侮られるぞ」

 「現場じゃ 水上艦艇より、潜水艦の方が怖いんだがね」

 6500トン級 海龍型 潜水艦60隻、39万トン

 8000トン級 蔵王型 巡洋艦40隻、32万トン

 「空母、輸送艦、補給艦、揚陸艦は?」

 「大型艦なら、補給までの日にちを伸ばせるが西太平洋は広い」

 「離島の経済を発達させて、補給しやすくすべきだと思うね」

 「しかし、いくら艦体を大きくしても、航続距離や居住性を大きくすると兵装は小さくするしかない」

 「潜水艦は? 潜水艦が脅威と考えられるなら、戦争を躊躇させられると思う」

 「だと良いけどね」

 

 

 瑞樹州

 ガイア 生化学 研究室

 魔法の杖と魔法使いの相乗効果によって、発動される魔力の根源が研究されていた。

 “魔法使い、あるいは、喰命鬼、超能力者の特異能力は、把握されつつある”

 “生体エネルギーが素粒子を取り込み、生体素粒子をオーラに保有させている”

 “そして、生体素粒子が未知の力の根源であり”

 “生体素粒子を操作できる総量が根源の強さである”

 “素粒子の種類はレプトン6種、クォーク6種など多様であり”

 “生体素粒子は、それらの結合の組み合わせで、壊れやすい存在と言える”

 “根源的な力を得る過程の違いから、魔法使い、喰命鬼、魔物といったカテゴリーに分けられる”

 “ガイアの未開地生態系は、素粒子を溜め込み易い生体系構造であり”

 “その生態系の発生と成長の過程から生体素粒子を保有している”

 “魔法の杖は、そういった未開地から獲ており”

 “妖魔、魔物といった存在は、動物的な存在だった”

 “魔法使いが魔力を消費することで寿命を損なうのは、生体エネルギーの混乱と喪失である”

 “効率的な組み合わせが可能であれば、寿命を損ない難い力の発動は可能かもしれない”

 “喰命鬼は、生体素粒子の稀な組み合わせの結果と推察される・・・”

 “現在、最高品位の生体素粒子の組み合わせを研究しているものの始まったばかりである”

 “将来的には、生体素粒子を組み込んだ液体素粒子、個体素粒子が考えられ”

 “航空機、艦艇、戦車の製造も可能と考えられる”

 “それ自体が精製された魔法の杖。生体素粒子の増幅装置といえる”

 “また周期的な平行次元世界の扉を開くカギの一つが生体素粒子の相性と考えられる”

 

 ガイア原産の生態系は、生体素粒子を多く含み、

 生体素粒子を啓発した人間であれば、魔力を増幅させる道具になった。

 そして、ガイアから召魄で得た資材が研究所に送られてくる。

 「これが新しいオーラローブ?」

 「未開地で新しく得た紅マユを紡いだものだ。生体素粒子が合えば、魔力も向上する」

 少女は、服を着替え、手を差し伸べると2m先のペンが飛んでくる。

 「んん・・・5パーセントくらいかな」

 「炎羊の毛織物の方が相性が良さそう」

 「ガイアは、まるで指輪物語。ファンタジーの世界ね」

 「生体素粒子の加工と組み合わせ。精製は、試行錯誤中だからね」

 「カスタムメードになったり、ムラがあるのはしょうがないよ」

 「科学がもっと進めば、生体素粒子を精製できるの?」

 「たぶんね」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異境ガイア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ヒルコ(鬼ヶ島)島

 人鬼村

 日本から召魄したレーダー装置、ソナー装置が大和に取り付けられる。

 「これで安定した索敵が可能になったね」

 「人間が保有できる生体素粒子は、天性と鍛練次第で」

 「それ以上の魔力を発揮するなら、相性の合う魔具しだいだ」

 「魔法はムラがあるのが弱点だな」

 「魔法を広範囲に使うと寿命を縮める。ピンポイント追跡が合理的かな」

 「・・・艦長、アルフヘイム船が到着しました」

 アルフヘイムと人鬼村の交易は、拡大していた。

 飛行帆船が大和に接舷し、直径1.6mの水晶が届けられる。

 「へぇ〜 こりゃ 凄い水晶だ。重いのが弱点だな」

 「日本に送れば、最高の索敵装置になりそうだ」

 「日本のソナー・レーダーと魔法の連動は進んでいるのだろうか」

 「魔法は、探知、防御、精製で使う方が効率がいいだろうね」

 「ソナー・レーダーが主。魔法が副は、地球もガイアも変わらないか」

 

 

 アルフヘイムの辺境

 飛龍が着陸すると人鬼村の日本人たちが降りてくる。

 「本当だ・・・」

 「大人しそうだな」

 日本人たちは、村の周囲にいるモノに目を見張る。

 全長1.5mほどのヒュブロ蜘蛛が草原に潜み。

 全長4mのケスムカデが木に巻いていた。

 そして、全長1mの虎ハチが羽音を立て空を滑走していく。

 「ようこそ。村長のタケテウです。族長から到着を聞いてます」

 「儀式は、見られるのですか?」

 「ええ、早速。ハンセス」

 若いエルフは、被っていたカルザン茨の冠の一つを取った。

 血がツーと流れ落ち、

 眠っている全長1.5m級ヒュブロ蜘蛛の頭に被せ移植する。

 「これで、ヒュブロ蜘蛛を操れるのですか?」

 「この村では、8歳から10年間、カルザン茨を被ります」

 「18歳で成人するとカルザン茨を特性に合う使い魔に付けて村と自らの身を守ります」

 「危なくないので?」

 タケテウ村長は、少年に応えるように促す。

 「・・・視点と聴力が増えるのは悪くないです」

 ヒュブロ蜘蛛は、目を覚ますと思うように部屋を動きまわり。

 人族は、脅えたように退く。

 蜘蛛は弓を銜えてエルフの主人に渡す。

 すると、儀式に参加していた大人たちが拍手する。

 成人の誕生だった。

 「・・・一方通行な命令だけしかできません。犬より従順で視界も増えます」

 「喰命鬼のように、蜘蛛の気持ちが伝わらないだろうね」

 「そうならないように力の弱い蜘蛛を使っています」

 「ヒュブロ蜘蛛の餌は?」

 「未開地に入って行って自ら狩ります」

 「蜘蛛が餌を食って、それが舌に残らないだろうね」

 「使い魔に対し、強い支配力を得ようとするなら、一体感を強化しなければならない」

 「しかし、そこまでするほどの力は蜘蛛にない」

 「リスクが少なく、利益の大きな方法ですよ」

 「そして、同時に村に及ぶ危険を探知する巡回パトロールにもなります」

 「気分は?」

 「この村では、成人の証ですし。使い魔を持てる気分は悪くないです」

 「何匹ぐらい持てる?」

 「村長。3匹くらい統制できそうです」 少年

 「当面は、1匹で良いだろう。」

 「他の種の使い魔も得られるのですか?」

 「我々、エルフは、森林に強い。そして、カルザン茨とそこに棲む動物の関係性です」

 「素晴らしい。喰命鬼を除けば、知られられている限り、現段階で最強のペットだ」

 「人間は?」

 「まさか。喰命鬼じゃあるまいし、無理です」

 「しかし、手足を含めると全長3m。馬より、かさ張るな」

 「だが未開地の近くに住むならヒュブロ蜘蛛は強く頼りになる。森林戦で有利だ」

 「人族でも出来るのだろうか」

 「いまの人口で使い魔を得るのは重要だよ。それが最大の問題だけどね」

 「人族の特性に合って、カルザン茨とヒュブロ蜘蛛の関係に近い使い魔を見つけるしかないか・・・」

 「人族の魔力は平均的なエルフ族より弱いのに操作器は10年もかかっている」

 「せいぜい、猫や烏だ。それだって、何年もかかりそうだな」

 「日本でも、生体素粒子を保存する器は、研究が遅れてそうだな」

 「もっと情報を日本に送らないとな」

 「まったくだ」

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 ちょっとファンタジー色が強まってます。

 生体素粒子を含んだオリファルコン、エクスカリバー、草薙の剣という感じです。

 こういった剣は、特別な扱いをされ、

 魔術師など関わっていることから整合性があるかもです。

 もっとも誰もが使えるわけでもなく。カスタムで、相性が合った人だけ。

 そういう意味では、科学+魔法で、神剣、聖剣の類もあるかもです。

 

 

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第21話 1961年 『金の生る木の寄生虫』
第22話 1962年 『根源は生体素粒子』
第23話 1963年 『魂21gの攻防』