月夜裏 野々香　小説の部屋

ファンタジー系火葬戦記

『魔業の黎明』

第23話　1963年　『魂21gの攻防』

　ジーンリッチは、第一次世界大戦後の男性不足に起因する。

　ドイツは、戦死者170万以上、死傷者420万以上を出しており。

　元をただせば母子救済処置だった。

　ヒットラーは、救済処置に目標を与え、

　ドイツ民族選民思想へと捻じ曲げ、劣等遺伝を排したのである、

　1940年のレーベンスボルン（生命の泉）計画も試行錯誤しながら進められる。

　純粋アーリア人による優勢遺伝子交配を推し進めていく。

　ドイツは2度目の大戦で、戦死者210万。死傷者290万を出したのである。

　そして、戦後、

　母子救済のレーベンスボルン（生命の泉）計画は、数倍の規模で行われ、

　近代化と蓄積された技術によって遺伝子改良を可能にし、

　ジーンリッチ人口は推定1000万に達しつつあった。

　ドイツ第3帝国　世界首都ゲルマニア

　ティアガルテン区ヒロシマ・シュトラーセ（通り）

　日本大使館

　窓から通りを見下ろすと、8頭身の金髪美男美女が行き来していた。

　「・・・ジーンリッチが魔法を使える可能性は？」

　「医療サンプルは手に入れた」

　「研究結果結果は、まだだ」

　「しかし。彼らが生体素粒子を運用する可能性は否定しないよ」

　「まぁ　資質はありそうだな。カッコイイし、絵になる。映画なら主役候補だ」

　「現実に有能だよ。ドイツの宇宙開発は、アメリカとソビエトを圧倒している」

　「もっとも、ドイツ人らしい職人な弱点も持ち合わせているがね」

　「ドイツ人に協力者を得たいのだがね」

　「選民思想が進み過ぎて、味方は作り難いよ」

　「バルカン連邦は？」

　「連邦は成長しつつある。いまのところ統合派は圧倒的だよ」

　バルカン連邦

　ハンガリー、ルーマニア、

　マケドニア、セルビア、モンテネグロ、

　クロアチア、ボスニア、ヘルツェゴビナ、

　アルバニア、ブルガリア、ギリシャ、日本。

　蒼地に12の星が円を描いた国旗がバルカン連邦の旗だった。

　中央集権国家は、権力を集中させる、

　地方の力を削いで寂びれさせる傾向があった。

　国土が大きくなれば、連邦制に移行する傾向があり、

　中央集権の足枷が小さくなる代わりに権力構造が分散され、

　支配権が切り取られ、上意下達は困難になってしまう。

　都市が共和国権限より強くなると、さらに権力構造が細分化され、

　開発予算は、地場に適っても、小規模なモノになっていく。

　パンノニア平原は、カルパティア、アルプス、ディナルアルプス、バルカン。

　4つの山脈に囲まれていた。

　大平野は、ハンガリーの大半を占め、

　クロアチア、スロバキア、ルーマニア、セルビア・モンテネグロ領まで広がり、

　北端はドイツ領のオーストリア、

　東端はウクライナに至る。

　大平野を電波の傘で覆うためパンノニア電波展望塔(400m)が建設されつつあった。

　「5つは建てないと」

　「東京タワーより高く大きいぞ」

　「ほかにも建てたい場所がある」

　「大変な、予算だな」

　「バルカン連邦の予算だ。払うのはバルカン連邦国民だ」

　「高度な科学技術を求めないのなら開発費も少なく、中レベルの技能で済むよ」

　「新素材カーボンとシリコンを採用している」

　「400mの鉄塔と新幹線も中レベルの技術と思えないがね」

　「電波による言語の統合化は、必要な技術だよ」

　「ルーマニア語で？　それとも日本語で？」

　「まぁ　名目上、ルーマニア語で、実利的に日本語かな」

　「人口構成上、7人に1人は、日本人で基幹産業を押さえている」

　「人口の比率は大きくなるだろうし、経済的に優位だから人口も増えやすいよ」

　「混血もね」

　バルカン新幹線は、日本の新幹線と同型だった。

　連邦の各共和国と自治都市を結び付け、流通と交通機関の要になっていく、

　サラエボの公園

　三鷹 イズミ(15歳)は、同級生の女の子と初デートで浮き浮きだった。

　相手は、八頭身の金髪美少女のシンディ・カーティス(15歳)。

　少女というより大人な女性にも見えた。

　日本人は、同じ年齢だと、白人コンプレックスに陥りやすく、

　背の高い日本人男性と背の低い白人女性でようやく、背丈が釣り合う。

　そして、塁は、標準的な背丈であり。

　シンディと合わせようと背伸びをし、無駄な努力をしていた。

　「日本人って、素敵な機関車を作るのねぇ」

　「そうかな」

　「イズミは、将来、何になるの？　新幹線？」

　「そうだねぇ〜」

　「いいわね。安定収入か」

　「そうかな」

　「ねぇ　日本語教えてくれない？」

　「う、うん、いいよ」

　「じゃ　本屋によってから、4時に図書館に」

　「うん」

　イズミが目を覚ますと、暗い貨車の中にいた。

　『っつ・・・ここは、どこだろう・・・なんてね・・・』

　『酷いことするな。シンディ・・・好きだったのにショックだ』

　バルカン連邦は、摩訶不思議な現象で犯罪検挙率が高かった。

　列強は、主権侵害などの犯罪行為発覚が外交に及ぼす事を恐れ尻込み。

　しかし、需要があれば、供給を目論む組織が現れ、犯行に至る。

　イズミは、手錠に集中すると　かちゃ！　外してしまい。立ち上がる

　貨車が止まると扉が開かれ、光が差し込む。

　「やぁ・・・」

　「三鷹。大丈夫？」

　「ミナモか。大丈夫だよ」

　「鼻の下を伸ばしてノコノコついて行くからよ」

　「迫真の演技だったじゃないか」

　「ええ、演技に見えなかったくらい」

　「彼らは？」

　「犯罪組織は、国境に入る前に全部捕まえたから」

　「イタリア系って、凝りないのねぇ」

　「ていうか、シンディの運命が不憫・・・」

　「なによ。誘拐されたのに」

　「あはは・・・」

　「ったくぅ　美少女って得ね、なにしても許されるんだから」

　「寸胴気味の日本女性は不利だからね」

　「ふん！　助けるんじゃなった」

　植民地経済は、政治的統制、民族、言語の結束を崩すことによって成り立ち、

　人権と私財が法によって保障されるなら民主制資本主義に近い。

　アメリカ極東権益地がそうであり、

　程度の差があれ、バルカン連邦とカフカス連邦もそうだった。

　民衆は、国家意識を減らし、財欲に従がって無分別に暴走する。

　バルカン連邦とカフカス連邦は、交易しつつ相乗効果によって、急速に経済力を高めていた。

　新幹線は、カスピ海側のバクーから黒海側のバトゥーミを3時間で結ぶ。

　バクー油田を基盤にした産業は、急速に拡大し、

　副次的な分野でも自立しつつあった。

　黒海航路　10000トン級客船　“白亜”

　法務省の役人たち

　「適当な獲物が、なかなか見つからないな」

　「検挙率が高いから、各国の諜報機関とも用心してるんじゃないか」

　「こっちからKGB、CIA、MI5、ゲシュタポの諜報機関のアジトを襲っちゃうか」

　「何もしてないのに？」

　「連中に日本、バルカン、カフカスの情報を流されているよ」

　「情報だけじゃな」

　「国際外交で、こじれると総スカンで厄介だからね。1941年の悪夢は御免だよ」

　「もっと誘拐とか、破壊工作とか、ぐうの音も出ないほど、明確な犯罪じゃないと・・・」

　日本

　日本の産業は、ライバルのアメリカ権益地と中国7軍閥産業の追い上げに対し、

　重厚長大から利潤の良い軽薄短小へと比重が移行していく。

　小資源国家は、トン数に対する利潤が大きい交易が優位であり、

　国内消費向けの資材も増えていく。

　核兵器と大陸間弾道ミサイルの誕生は、軍事基地の地下化へと向けさせる。

　右翼の宣伝カーが公道を走る。

　“日本国は、万世一系、皇紀2623年を誇っており・・・”

　“日本民族は天皇の赤子。日本民族は臣民にて愛国に燃え、命を捧げ・・・”

　“日本民族の精神は、尊王攘夷。尊王攘夷に立ち返りましょう・・・”

　公園

　法務省の役人たちが昼食の外資系ハンバーガーを食べながら宣伝カーを見ていた。

　「・・・なぁ　彼らの寿命なら、貰っても良いんじゃないかな」

　「でもねぇ　黙って寿命を取るのは駄目なんじゃない？」

　「だけど、愛国者だし、自分で命を捧げてるって言うし・・・」

　「本当にそう思ってると思う？」

　「いや、ここは、彼らを信じ、気持ちを察して、言い分通り、有言実行でしょう」

　「しかし、右翼の宣伝は酷く大きいな」

　「ほら、軍上層部が愛国心を訴えなくなってるからじゃないの？」

　「軍上層部も　“じゃ　自分の寿命を差し出せ”　って言われるのが嫌なんだよ」

　「現実になると、口つぐむよね」

　「志願者もいるけど、周りの　“やめてくれよ”　って感じも日本社会らしくていいよね」

　「出る杭は打たれるから・・・」

　三陸海軍基地

　8000トン級　蔵王型巡洋艦　2隻が建造されようとしていた。

　「レーダー、ソナーと兵装の連動は？」

　「・・・誤差の範囲に収まっています」

　「114mm砲から120mm砲への調整は？」

　「多少改良は必要ですが、砲弾はチーフテン戦車と共有できます」

　「それなりに数を揃えると、どうしても、規格を合わせる方がいいからね」

　「しかし、もう少し、艦幅がないとプラットフォームとして安定しないな」

　「対艦兵装も不安だ。どうせなら155mm砲で合わせれば良かったのに」

　「対空射撃なら120mmで良いよ」

　「機関と艦体基礎構造に金を掛け過ぎかな」

　「魔法使いが乗れば、対艦ミサイルと砲弾を散らせるかもしれない」

　「魔法使いが乗れば、対艦ミサイルと砲弾を有効に誘導できるかもしれない」

　「それなら耐久性能に金と寿命を掛けた方が良いよ」

　「だけど、実戦でミサイルや砲弾を本当に散らせて、誘導できるか別だよ」

　「レーダーとソナーは、魔法の杖と同じ構造で造られている」

　「飛行石がなくても、攻守で有利なはずだ」

　「潜水艦と違って外交武官は乗る。救助した人間も乗る。ばれなきゃいいね」

　「たとえ、イギリス海軍将校が搭乗しても、魔力がなければ理解できないよ」

　「蔵王型巡洋艦のライバルは、アメリカ海軍の8957トン級ベルナップ型ミサイル巡洋艦」

　「あるいは、イギリス海軍の6200トン級カウンティ級ミサイル駆逐艦」

　「ドイツの12000トン級シュヴァルツヴァルト型巡洋艦も脅威だね」

　「戦えば、勝てるのでは？」

　「希望的観測では勝てるよ」

　「魔業は、隠し玉の一つだよ」

　「しかし、隠し玉を持っているのは日本だけじゃないかもしれない」

　「アメリカは開発力があり。ドイツは、工業力がある。そういう恐れはあるね」

　「それより、もっと大型潜水艦でガイア行きを考えるべきだろうね」

　「大型過ぎると不自然だよ。いまの6500トン級でさえ不自然がられているのだから」

　ベトナム半島南端の坤城(こんじょう)島　(800k�u)

　造成が進み、区画整理に沿って、資本投下が行われていく。

　高層ビルになるほど、ビルを支える土台も深く強靭になり、

　地下深く掘削し支柱を立てなければならない。

　そして、暑い熱帯雨林で少しでも涼もうと土木工事が行われ、

　造成が進むにつれ海抜が高くなっていく。

　日本国内の資本集中は寡頭であり、

　中小企業のすそ野は広く。

　資本層に対し、規制もあった。

　しかし、外地は、規制が弱く、独占的な資本主義に任されやすかった。

　外地である方が規制が小さいことから、資本投下が行われやすく、移民も増えていた。

　綾風が飛行場に着陸するとアオザイを着た乗客が降りてくる。

　坤城では日本人もアオザイを着ることが多く。正装の一つになっていた

　「大陸は久しぶりね」

　「南沙にずっといたから飽きちゃったわ」

　「坤城も発展したんじゃない？」

　「タイ王国と昆明、穂国まで鉄道が繋がったからね」

　「でも、まだ台湾の方が発展してる」

　「台湾で作って、ここに集積しているから」

　「他の国も坤城に商品を置き始めたみたいよ」

　「でも香港、シンガポールに挟まれて、分が悪いんじゃない？」

　「坤城は、日本人ばかり整理され過ぎ。もっとカオスじゃないと」

　「でもベトナムとタイの人口を合わせれば6000万近いし、需要さえあれば何とかなりそう」

　「その前にベトナム料理フルコースで、わたしたちの需要を満たして欲しいわね」

　「異世界アンテナを建設するんじゃないの？」

　「表向き、展望塔兼電波テレビ塔よ。日本圏内だけじゃ　難しいけど」

　「足りない分は、潜水艦に代行させれば良いよ」

　「基本的に魔法使い頼みだし」

　瑞樹州　ガイア研究所

　研究者の考察

　“ガイア世界との接触は、未知との出会い。と同時に人類が己を知る手掛かりともなった”

　“外国に行って、日本国と日本民族を知る現象に近い”

　“魔法の本質を突き詰めると、生命エネルギーに取り込まれた素粒子に行き着く”

　“生体素粒子は、生命の根源であり。超常現象の源であると推測される”

　“死後、体重から失われる質量21gは、魂の質量21gとも言われており”

　“生体素粒子の因果関係は、確立されていない”

　“なぜなら老若男女21gという数値が弾き出され”

　“21gを消費しながら生きているのではないのである”

　“しかし、魔法使いは魔力消耗に際し、カロリー消費と合わせ、体重軽減があり”

　“喰命鬼ハミハラの寿命吸収は被験者との間で、数gの体重移動が行われている”

　“そこから導き出された結論で、魔法使いは、魂の質量21gを消耗しつつ魔力を消費しており”

　“媒体により、生体素粒子をコントロールし超常現象を発揮する、と仮定される”

　“生体素粒子は、壊れやすく、魔力を運用すれば生命エネルギーを消失しやすい”

　“制御能力の不完全さは、寿命を縮める現象をもたらしていると考えられる”

　“ハミハラは、他者から生体素粒子を吸収し”

　“補充最大60gの生体素粒子を保有しているとも考えられている”

　“ガイア産の木、宝石、金属は、生体素粒子を保存する媒体として優れており”

　“現在開発されている新素材のカーボン、シリコンは、第4の素材として可能性を見出している”

　魔法使いたちは、電子顕微鏡を覗きながら飛行石、炭素繊維を編んでいく。

　微細加工であるほど魔力消費は少なく。

　喰命鬼のハミハラが来た後も装甲強化は避けられていた。

　法務省の監督の下、

　ハミハラと魔法使いたちは、最小の負担で最大の成果を上げようとしていた。

　「生体素粒子を増やすって、仙人みたいになれるのなら良いけどね」

　「喰命鬼みたいになるんじゃないの」

　「訓練で増やせるって言うけど、こうやって使われてると寿命減らしてるよね」

　「ガイアの生態系は、生体素粒子を含みやすくて運用しやすいよ」

　「何かを作るのならガイアに工場を作る方が早いかもしれないな」

　「鉄鉱石が希少金属だと工業は起こせないよ」

　「それに日本人の生体素粒子はガイアの住人より少なく、操作能力も小さい」

　「この素材をガイアの住人に教えるのは、まずいよ」

　魔法使いは、その服を羽織り、

　手を差し伸べると、文庫本が飛んでくる。

　「・・地球もだ」

　「仮に誰かがこの服を着たとしても生体素粒子が合わないと力を発揮できないよ」

　「服だけじゃなく、兵器も可能だ。無論、規格化は無理だがね」

　「それに、せっかく作っても、寿命が縮むのが最大の問題だよ」

　「カーボンとシリコンは、生体素粒子を保有させなくても十分強力な素材だよ」

　「器を作っても真に真価を発揮出来るのは、生体素粒子を吸収・変換できる喰命鬼だけじゃないか」

　「それは言えるね」

　ガイア研究所は、地下奥深くにあった。

　生体素粒子、魔法の杖、飛行石の活用。

　内骨格でチタン骨格。シリコン樹脂、炭素繊維の皮膚と神経。

　外骨格で飛行石を含んだ装甲服を検討していた。

　「外国だけでなく国民からも隠れて秘密主義でコソコソ」

　「やっている事といえば、国民の寿命を奪って、改造人間か魔法怪人を作って・・・」

　「良く予算が降りるモノだ」

　「主計長が上手く調整してるんじゃないか」

　「どれか一つでも、様になれば大きな戦力になりそうだけどね」

　「ていうか、人間捨てますかって、レベルじゃないの？」

　「仲間の中で優越感に浸りたいって、誰でも思うよ」

　「とりあえず。戦傷者か特殊任務者向けってことにするか」

　「とりあえず。魔法で強化すれば、10パーセント増しじゃないか」

　「無理。ハミハラも魔法使いも兵器より工作機械、電子機器、バイオ関連だからな」

　「法務省も縛りが強過ぎるよ」

　日英同盟のFN FALを採用している国は多く。

　イギリス連邦。バルカン連邦、カフカス連邦。穂国。インド。

　オランダ(インドネシア)軍で使われ、弱点のない中庸な武器と言えた。

　悪く言えば、帯に短し襷に長し、といえる。

　日本人は違和感を感じつつ共有化を重視、FN FALを運用する。

　現場の欲求と裏腹に突撃銃は護身用で重量制限があり、

　多くを望むべくもないのである。

　ロンドン

　共有兵器の開発は、ロンドンでなされることが多く。

　FN FALの小改良に合わせ、携行兵器の比較検討がされていた。

　「プラスチックはいいけど。木製の方がしっくりくるよね」

　「飛行石で作れれば・・・」　ぼそ

　「飛行石でも反動の大きさは押さえられないよ」

　「携行武器を大型にできれば、弾数は増やせるさ」

　「飛行石を精製出来るなら外骨格装甲でも十分いけるよ」

　「10kgも使えば100kgは浮かせられるからね」

　「姿勢制御と合わせて光と温度調整が上手くいけば空中浮揚も自由自在・・・」

　「機密保持で配備は潜水艦だけなのが悲しいね」

　「あ・・・新型戦車の来場だ」

　「やれやれ、なんか、しらけるな」

　「ほら、感動した振りをしろよ」

　新型戦車がお披露目される。

　日本人もチーフテン戦車開発に投資しており、

　自動的にライセンス生産することになっていた。

　日本人たち

　「また、随分と重くなったじゃないか、一般公道はともかく。寄り道は出来ないね」

　「他国の農地を徒歩行軍するのさえ気が退けるのに・・・」

　「国内農地を荒らしてしまうと、なに言われるかわかったものじゃない」

　「国内で戦車戦をやろうものなら、橋と道路補修だけで大損害だな」

　「それも味方の戦車でか・・・」

　「日本も瑞樹州も戦場になり難い」

　「戦車戦になるとしたらバルカン、カフカスだよ」

　「だと良いがね」

　「しかし、戦車は、費用対効果で微妙だな」

　「せめて装甲だけでも強化できればいいのに」

　「法務省が五月蠅いからね」

　「まぁ　魔法使いなら銃弾を逸らせるからね」

　「砲弾やミサイルも逸らせるかもしれない」

　「だけど、攻撃を察知してなければならないし、集中力次第だよ」

　「さらに寿命を削っての事だ」

　「有利でも決定的じゃない」

　「昔と違って、魔法は制約が多くなってきたからね」

　「ハミハラが来てからガイドラインも厳しくなってきてるし」

　「いくら寿命を削らされたくないからって、軍人が愛国心を言わなくなったら終わりだな」

　「軍人だって志向が国防に向いているだけだし、生活の手段だからね」

　「いざ、自分の寿命を削られるとなったら、誰だって躊躇するよ」

　バルカン連邦

　連邦空軍のライトニング戦闘機が4機編隊を組んで空を横切っていく。

　パイロットは日本人であり、ライトニングを整備しているのも日本人だった。

　そして、連邦軍を支えているのは、連邦予算であり、

　軍事費は、少なからず多からずと言える。

　日本民族は、バルカン・カフカスの基幹産業と軍事を押さえていた。

　支配構造を安定させたままの経済成長は、ドナウの奇跡と呼ばれ、

　支配体制の存続と安定は、世界の目でも奇跡とされ、

　内戦の可能性は、低かったのである。

　しかし、混血は徐々に増え、

　日本民族のカテゴリーも曖昧で融和的なモノになり、

　日本・瑞樹とバルカン

　公園

　三鷹 イズミ(15歳)は、シンディ・カーティス(15歳)と歩いていた。

　「・・・シンディ。久しぶりだね」

　「ふん！　分かってみればタネも仕掛けもあり。魔法で紛争の芽を抜いていたわけか」

　「事が大きくなる前に潰していくんだ」

　「わたし達みたいに？」

　「そうそう」

　「ったくぅ〜　なんなの。ハミハラって生き物。どこから来たの？」

　「彼と上手くやっていけそう？」

　「はあ！　あんたのせいで前科持ちで本国から干されたのよ」

　「その上、酷い目にあって・・・」

　「何で私があんな奴の女にされるわけ、人生台無しよ」

　「そ、それは、君が僕を誘拐したからじゃ・・・」

　ぼこっ！

　「いでっ！」

　「全部、知ってて罠掛けといてぬかすな」

　「お、お悔やみを・・」

　「なにを白々しい」

　「シンディ。日本語上手だ」

　「わたし、これでもジーンリッチよ。凡人のあんたたちと違って、天才なんだからね」

　「学校じゃ　イタリアだって」

　「そういう、工作してバルカン連邦に潜り込んだのよ。大変だったんだから」

　「ねぇ　君の目や耳を通して、ハミハラにも伝わるの？」

　「ええ、ハミハラの代弁だって出来るわ」

　「わたしは、あいつの手足でスポークスマンよ」

　「魔力とかは？」

　「まぁ　彼次第ね」

　「完全にハミハラに支配されているの？」

　「そうねぇ　制約あるけど基本的に自由かな」

　「ジーンリッチは、魔力の素質があるみたいだね」

　「どうかしら、私だけって、可能性もあるけど」

　「ジーンリッチが少しわかって良かったよ」

　「それは、どうかしら、私が生まれたのは15年前よ」

　「いま、産まれているジーンリッチは、遺伝子で、もっと優れているはず」

　「でも、あんたが魔法使いで。ジーンリッチより、魔法使いの方が上だと思わなかった」

　「数は少ないよ。ジーンリッチと違って、規格化できないし」

　「当たり前よ。魔法使いにウジャウジャいられて、たまるもんですか」

　「シンディ。やっぱりドイツの味方をしたい？」

　「そりゃ　親近感はあるけど、いまはハミハラの味方するわね」

　「ハミハラを好きになった？」

　「・・・・」　むっすぅうう〜

　「複雑な女心ね」

　ぼこっ！

　「いでっ！」

　11/22　アメリカ合衆国テキサス州ダラス

　リムジンがメイン通りからヒューストン通りへと右折していく。

　不意に銃声が響くと4人乗りのリムジンが次々と被弾していく。

　アメリカ大統領ジョン・F・ケネディは危地を脱し。

　暗殺未遂事件は、映像として撮られ、

　アメリカ合衆国　ホワイトハウス

　関係者たち

　「「「「「・・・・・・・・」」」」」

　ケネディ大統領暗殺事件の映像が流れていた。

　「「「「「・・・・・・・・」」」」」

　7発の銃弾がケネディ大統領を掠め、リムジンは被弾しつつ逃走していく。

　「死ななかったのが不思議だな」

　「犯人は？」

　「オズワルドは、射殺されましたよ」

　「・・・オズワルドは海兵隊で狙撃の名手のはずだ」

　「海兵隊切っての狙撃の名手が7発撃って失敗した」

　「暗殺と未遂は、二重の意味で失望を禁じ得ない」

　「我がアメリカ合衆国海兵隊の実力に甚だ疑問を感じてしまうな」

　「精神的なプレッシャーですよ。きっと・・・」

　「なにしろ、あなたは、アメリカ合衆国大統領ですから」

　「ほぉ　ターゲットスコープから覗くと大統領が神々しく見るとは知らなかったよ」

　「自分の姿をターゲットスコープから覗けないのが残念だ」

　「オズワルドの履歴からすると。増大する資本主義による貧富の格差を危惧し」

　「共産主義に傾倒した若者が、偏執的な衝動で大統領を暗殺しようとしたと推測されます」

　「私が暗殺されていたとしたら、君らにとって都合の良い話しだな」

　「大統領。勘違いされていませんか」

　「執権者は常に暗殺の危険に晒されている」

　「事件は風が吹くように偶発的に起きるものだ」

　「風が吹くかもしれないと行動したからといって保険でしかなく、関与しているとは限らない」

　「むしろ、有能な証拠でしょう」

　「では犯人役のオズワルドを含め、関係者が不慮の死を遂げている説明は？」

　「不慮、ゴタゴタで、敵が背後があると国民に思わせた方が国民をまとめやすく」

　「軍事力を維持する口実になりますよ」

　「いまのアメリカ合衆国の国防費は、寂しいモノがありますからね」

　「暗殺の背後に共産主義者がいてと匂わせるのかね」

　「大統領。我々は右翼でも左翼でもありません」

　「右手は必要ですし、左手も軽んじていない」

　「どちらの政策も国家と国民に必要ですし、偏っていませんし、大切に考えています」

　「多少、右利きかもしれませんがそれだけです」

　「君らの資本家の良識は、信じたいがね」

　「しかし、今回の件。多少は妥協してもらうよ」

　「・・・まぁ　多少の度合いにもよりますが、勘違いされたままでは良くない」

　「変に勘ぐられても困りますし・・・」

　「しかし、大統領。未遂の背後に日本がいるのでは？」

　「・・・・」

　「日本と何か取引をしたのではないですか？」

　「君らには、もう少し、節度を求めたいものだ」

　「我々は、内戦を欲していません、お互いに妥協は可能ですよ」

　「では、暗殺の件は、これで済ませるとしよう」

　アーリントン国立墓地

　大物実業家が亡くなり、参列者が集まっていた。

　白人と日本人たち

　「このたびは、御愁傷様です」

　「我々の間では珍しいことですが心労がたたったのでしょう」

　「資本主義は、不安に苛まれますね」

　「我々は、特権階級ですよ。時に・・・君たちは真相を知ってるのかね？」

　「謎の失踪事件が続いていることと、いくつかの局と企業が潰れた事でしょうか？」

　「我々としては、穏便にしておきたいのだよ」

　「ケネディ大統領も同意している」

　「大統領は、暴力に屈したわけですか」

　「いやいや、大統領の望む再配分の改革は行われ。我々も打撃を受けた」

　「そして、アメリカは、外国の干渉を受けたくないだけだ」

　「アメリカ極東権益地があるので、改革は構わないと？」

　「まぁ　内戦よりマシだよ」

　「日本は、アメリカと公平な取引ができるのであれば内政干渉するつもりはありませんよ」

　「我々が魔女狩りを出来ないとでも」

　「魔女狩り？」

　「日本と日本人のことですよ」

　「ふっ　アメリカ国民に日本人を魔女だと告げるのですか？」

　「議員は、票を失いかねませんね」

　「だが、暗殺未遂事件の様子を見れば、超自然的な力が働いていることは明白」

　「そして、暗殺未遂事件をたどれば、日本から始まっていると思うだろう」

　「民衆は日本人を魔女と思い、勝手に動くという事もある」

　「なるほど、民衆ですか・・・」

　「しかし、仮に超自然的な力が働いているとしたら、日本人ではなく」

　「奇跡の生還を遂げたケネディ大統領という事になるのでは？」

　「そして、アメリカの民衆は、アメリカの富裕層や権力者を魔女の対象に含めるかもしれません」

　「・・・我々が、そんな脅しに乗るとでも？」

　「あなたたちが仮定した通り、超自然的な力が日本人にあるとしたら出来ないと思いで？」

　「・・・・」

　「アメリカの民衆は、あなた方が特異な力を発揮して実権力、金を手に入れたと思い込んだら？」

　「まぁ　いいだろう。我々とて、極東権益地の生産力と防衛で日本に依存する分野は多い」

　「日本と妥協するのも悪くはない」

　「助かります」

　「しかし、どんな手品を使ったのかね？」

　「はて？　何の事でしょうか」

　「ふっ　まぁいい。君らの力は全能ではない。そして、見当が付いている」

　「ジーンリッチ側と誤解しているのでは？」

　「ジーンリッチは、全ての能力で我々を上回る」

　「しかし、延長線上でしかない。日本の異質な力とは違うな」

　「もし、日本でなかったとしたらどうです？」

　「あなた方は、第3者の陰謀によって、見当違いの方向を警戒し」

　「無駄に精力を注ぎ込んでいることになる」

　「では、ケネディ大統領は、日本に有利な外交を執っている。その説明は？」

　「それは、バランスの問題でしょう。あなた方は強過ぎる。それだけですよ」

　「好都合な向かい風だな」

　「日本が起こした風ではありませんよ」

　「出来れば、風向きの変化は事前に教えていただきたいものだ」

　「そういう予測は、高く付くかもしれませんね」

　「多少高くても、今回のような不意打ちを食らうよりマシだよ」

　「平和的な解決が一番ですよ」

　「日本の平和、かね？」

　「日本はむかしから、日米修好通商条約以上の関係を求めているだけですよ」

　「排他的な民族権益が孤立と停滞を招くと思わないのかね？」

　「・・・オブラードが必要でしてね。そうでない地域も作ってますよ」

　「その地域が成長するだけだ。そして、聖域が腐り始める」

　「瑞樹、バルカン・カフカス権益が日本民族の精神を腐らせないでしょうね」

　「おや、もっと別の世界の扉があるのでは？」

　「はて、何の事でしょう」

　「ふっ　ファンタジーでは、付け込めないか」

　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異境ガイア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

　アルフヘイムの辺境

　爬虫類に似た魔獣が迫る。

　赤い光線が弧を描いて、一閃すると魔獣が断ち切られた。

　刃渡り60cmほどの小太刀でありながら、塚元から発する赤い光線は180cmにも及ぶ。

　時には、300cmほどにも伸びた赤い光線が魔獣を貫く、

　飛行石を消化した動物を食べると体重が僅かに軽くなり、

　さらに飛行石を編み込んだ軍服は、体温の熱で数kg分を浮かせられた。

　訓練の成果とあいまって、人間離れした体術をみせた。

　無論、ガイア産の魔獣もそうなのである。

　人と鬼が背を向け合う。

　「洗剤一式贈ったのに怒るなんて酷い」

　「だから食い物か、衣服が常道だって言ったんだよ」

　「いや、エルフ族と仲が悪いって聞いてたから、ちょっと奇をてらってね」

　ヒュブロ蜘蛛が魔族を牽制し、斥候部隊は、さらに後退する。

　「・・魔力結界で体を守ってやがる」

　「こいつらヤバいよ・・」

　「斥候失敗かな・・・」

　人族2人は機動力を生かせる魔法剣で斬り込み。

　鬼族2人は巨大な槍を振り回し、魔獣を近付けさせず。

　エルフ1人は弓を射ながら、使い魔のヒュブロ蜘蛛と虎ハチの2匹で魔獣を牽制する。

　5人は、多勢に無勢で押し切られ、じりじりと後退していた。

　不意に火線が魔獣たちに迫る、

　魔獣の群れはL7汎用機関銃(7mm×43)の掃射に押され、散らばり逃げていく。

　「助かった・・・」

　「ほっ」

　人鬼村の日本軍将兵は、魔力で弾道を逸らされやすいFN FALより、

　サバイバルで利便性のある魔法剣を使う事が多かった。

　「5人とも御苦労」

　「中佐。この先は、爬虫類系の魔族が生息しています」

　「数は？」

　「確認しただけなら2000ほど、テリトリーは、人鬼村の3倍強です」

　「それ以上の可能性もあるわけか」

　「はい」

　「手間取りそうだな」

　「観測機はどうします？」

　「200mほど後方の丘に建設する」

　「ガイアと地球規模で扉を観測するなら、もっと北の方が・・・」

　「まだ力不足だ。それに実験的なものだろう」

　「観測機で地球の扉を探知できればいいのですが」

　生命体は、単細胞から多細胞生物へと進化し、

　その過程で、自己増殖から耐性と変異を得やすい雌雄異体となっていく、

　当初　個体　＞　群れ　だった関係は、個人と集団が高度になるにつれ、

　個人の欲望と集団が求める決まりごとが対立していく、

　個人　＞　社会　から　国家　＞　個人　へと変化し、

　社会が要求する法と利他的な強要と個人の欲望の対立は増大。

　さらに人権、自由、平等が認められ、

　個人　＞　社会　へと回帰。

　それぞれの国情に応じた個人と社会の関係が構築されていく。

　そして、異世界ガイアも同じだった。

　そこには、矛盾があり、

　不和、貧富、嘘、盗み、殺しが存在し、人族だけの地球と似ていた。

　人外の存在によっても人類の結束は、なされないという事であり。

　有限な世界での生存闘争は、必然に思われた。

　人鬼村の公園

　人族の主婦たちがドワーフ族の乳母が子供を世話をしているのを見つめていた。

　「結局、異種族間でも信用できれば信用できるし」

　「信用できなけりゃ　親子・夫婦でも信用できないのね」

　「いまは人族の数が少ないから融和的だけどさ」

　「日本からの移民が増えたら、もっと排他的にならないかな」

　「エルフ族と違って、人族の場合、そういうのはあるかも・・・」

　「でも、本当に次の便は来るのかしら」

　「潜水艦は、準備しているみたいだけど、扉を開けてだと大変だもの」

　「自然に開くまで待つんじゃないかな」

　「自然って、2013年頃でしょ　待てない」

　「でも寿命を縮めてまで扉を開けたくないわ」

　「喰命鬼を地球側に送れば・・・」

　「それだって、不特定多数の寿命を奪うんでしょ」

　「子供たち魔法の素質あるもの、特定多数じゃ　困る」

　「後天的な修練を受けた同士の子供でも魔法使いになりやすいのかしら」

　「ガイアは生体素粒子を活性化させやすいみたいだし、修練は続けるべきよね」

　「でも主婦なのに厳しいのよね。修練」

　「まだ、家に収まるには早いってことじゃないの」

　「健康を保つには良いけどね」

　「そういえば、魔力のある子供の頭に茨を被せるか、会議するらしいけど」

　「やだ、痛いし、血が出るんでしょ」

　「それに出来るか、わからないって」

　「どうしてそういう実験的な事を子供にさせるかな」

　「わたしたちって、魔力が弱過ぎて無理らしいもの」

　「子供たちが自分自身で身を守れるかどうか、わかれ道らしいけど」

　「でも、茨って嫌よね。かわいそうだし」

　「でも警備の仕事とか楽そう」

　「蜘蛛とか、ムカデとか、蛾とかじゃなく、もっと、知的な魔物は駄目なの？」

　「上位レベルの魔法使いでも無理だって、出来るとしたら喰命鬼レベルね」

　「喰命鬼か、子供の中に生れたらどうしよう」

　「その時は、地球に送るんじゃないの」

　「排斥されなきゃいいけど」

　「大丈夫よ。人口が多くて間引きしたがってるから」

　「人口は増えても、移民で人手不足みたいよ」

　「それだって、飛行石は欲しいわよ」

　･･･････････････････････････････････････････････････････････････････････････・・・・・・・・・・・・・・・・

　月夜裏 野々香です。

　この頃、世界の総人口は32億です。

　人類の人口を増やした根源は、なんでしょう。

　やはり大量生産、大量輸送、大量販売を可能にした資本主義でしょうか、

　史実のF104Jスターファイター。F4ファントムと違って、

　ホーカー ハンター。ライトニング。ハリア

　史実の61式戦車、74式戦車と違って、

　乗って安心のセンチュリオン戦車、チーフテン戦車です。

　こういう日本も微妙に良しと言う感じです。

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