月夜裏 野々香 小説の部屋

    

ファンタジー系火葬戦記

 

『魔業の黎明』

 

第24話 1964年 『虹の向こう』

 世代交代を計画的に行える国は、ドイツ第3帝国だけだった。

 ヒットラーが逃れることなく、安楽死を行ったため、

 安楽死は制度化され、老人、心身障害者は、淘汰されていく。

 避け難い運命を避けようと、国外逃避も行われ。

 行き先は手近なバルカン連邦だったりする。

 ドイツ帝国の非人間的な精強さは、脆さも兼ね備えていた。

 とはいえ、有能なマンパワーを集結させやすいのは確かだった。

 ドイツ帝国ノルウェー州

 ガルフピッゲン宇宙ロケット基地。

 巨大なロケットが次々に打ち上げられていく。

 そして、ドイツ帝国が宇宙ステーションを建設したのだった。

 ゲルマニア 広報局

 「ドイツ第3帝国は、恒久宇宙ステーション “アーリア” を打ち上げ建設しました」

 「ステーション・コロニーは、全長40m×直径10mの円柱で」

 「16基を静止軌道上に打ち上げ、ステーション・コロニーを連結しています」

 「直径300mのコロニーを自転させることで人工重力を作ることに成功」

 「中央連結部に4基」

 「そこから150mの支柱が12方向に伸びて12基のコロニーと連結されています」

 「周辺部の12基のコロニーも、それぞれ、隣のコロニーと支柱で連結されています」

 「支柱は、人が行き来する通路にもなっており、宇宙空間での生活を豊かにさせます」

 「月と同じ6分の1ほどの人工重力によって、長期の宇宙生活が可能になり・・・」

 

 ロビー

 列強関係者たち

 「ドイツめ、えっらそうに自慢しやがって」

 「どこか追随しないの?」

 「宇宙ステーション作りたいから国民に金をくれって? 倒閣だよ」

 「しかし、ドイツも金持ちだよな」

 「金? 全体主義は、労働力を結集させやすいな」

 「資本主義は、資本を結集させやすいじゃないか」

 「採算が合えばな」

 「しかし、技術力の高さは本物だね。真似できない」

 「やっぱり軍事目的かな」

 「軍事か・・・戦略的には大きいがね」

 「静止軌道だと片道に約1/8秒、往復で約1/4秒かかる」

 「タイムラグは、戦術的に小さくないよ」

 「低軌道は?」

 「落ちやすいし、速度が速過ぎる」

 「どちらにしろ、地表も海洋も全て見られている状況はいただけないな」

 「しかし、月に行かずに静止軌道にとどまるなんて、ドイツも夢がない国だな」

 「そこまでの電子技術はないから、静止軌道は堅実なんだよ」

 「だけど厄介だ」

 「次は、補給ロケットを打ち上げて、アーリアに自給自足させる気かな」

 「その後は、月だろう」

 「月か・・・静止軌道上に足場を作るかすら議題に出来ないというのに・・・」

 「戦後は、衣食住と日常生活が優先になったからね」

 「真っ当な商売じゃ 利潤が小さ過ぎて、何も出来んよ」

 「もっと、強制的な需要があれば、総力を結集できるのに」

 「自由と贅沢を覚え始めた国民に我慢させるなんて、戦争でもしない限り難しいよ」

 

 

 日本 法務省

 例によって、法務省詣での関係者が並ぶ。

 大臣室

 「大臣。ハミハラの次の使い魔ですが・・・」

 「君。例の件は、犯罪者に対する処罰の一環として受け取ってもらいたい」

 「大臣。例の件は、諜報と国防上、超法規的処置として、考えて貰わないと・・・」

 「超法規的とは、違法のことだろう」

 「寿命の強奪など、既に超法規的な処置がなされている」

 「現行法に寿命の強奪など、ありませんから・・・」

 「倫理的には、犯罪者だからと言って、刑以上の人権蹂躙を許すわけにいかない」

 「だから量刑の減刑。あるいは恩赦の代償としての政治的取引です」

 「法は、国家と国民を守るためにあるのだ」

 「犯罪が立証されない限り、使い魔を増やすわけにはいかない」

 「後手に回っている状況は面白くありませんね」

 「後手? アメリカ大統領ケネディの暗殺を防いだことで日本への工作員は増している」

 「あれは、作為的な工作ではないのかね?」

 「いえ、アメリカに対する友好の印ですし。優位な協定も結ばれました」

 「ふん! 偽善だな。最初から列強の諜報員に無茶をさせようとしてるのだろう」

 「現場近くに日本人がいたのは確かですがね。日本が怪しまれそうな要素はありませんよ」

 「現場にいたのは魔法使いだろう。まぁ 許可したのは私だがね」

 「無事に帰国できましたよ」

 「魔女狩りは御免だよ。海外の日本人の利権を全て失いかねないぞ」

 「無知から特殊な力を恐れるのは人間の性ですからね」

 「我々が無知でないだけだ。魔法使いの資質も限界も知ってる」

 「それなら、魔法使い第一候補はケネディ大統領になるし」

 「特殊な力で現実の力を手に入れている可能性もあると切り返せるよ」

 「アメリカの金持ちとか、権力者とか・・・連中も自分の首を絞めるものか」

 「アメリカが常に合理的な判断すると判断するのは危険だな」

 「その辺の交渉は進んでいますよ」

 「だと良いがね」

 

 

 ブラジル (8511965ku)

 国土は世界第4位。資源はアメリカ以上であり、

 近代化を妨げる要素は、国土が熱帯側に属し、

 ブラジル人である事と言えた。

 戦後、アメリカ、イギリス、独伊同盟の投資によって、経済成長が見込まれる。

 ところが投資の多くが掻き消えて行くほど腐敗していたのである。

 基幹産業を建設すれば、上は私腹を肥やし、下は怠けるため、

 道路は半端のまま、砂地に水を撒くように資金が消えていく。

 日本は、当初、信用できるブラジル企業を探すが見いだせず。

 魔法使いの助言に従って、新規の移民者と日系移民者に投資したのだった。

 日系移民者は、42年以降、瑞樹州へ向かい、

 その後、バルカン・カフカスに向かい。

 さらにアメリカ権益地に釣られて、立ち消えてしまい、

 日系社会は20万ほどしか存在していない、

 戦後の日系人投資は、日系人の結束と、中流以上の生活を保障し、

 日本人のアイデンティティを保つ上で弾みになっていた。

 日系人の町リベルダージ

 塩を振りかけた肉の塊を部位ごと串刺しにして、木炭で素焼きするシュラスコ。

 牛、豚、川魚を焼いた匂いが店内に籠もり、

 ボーイがナイフで肉を削ぎ、皿に載せていく。

 長く住めば、好みの部位も分かりやすくなり、

 濃いめのコーヒーも、マテ茶にも慣れる。

 「日系人の混血が進んでいるな」

 「日本からの移民が途絶えたからね。日本への帰国も珍しくないよ」 日系人

 「土地は?」

 「押さえたけど、大丈夫か?」

 「日本のダウジング開発能力は世界最強だよ」

 「まぁ 魔法社のお陰で、日本人が買おうとすると地価が数百倍に跳ね上がる」

 「買う素振りを見せるだけで政府・企業・マフィアを巻き込んでしまうし」

 「小金が転がり込んでくるからやめられない。日系人の土地成金は少なくないよ」

 「悪党」

 「あはは・・・ブラジルは誠実さが評価されにくい国だから・・・」

 「まぁ そういう詐欺が増えた方が地価が抑えられていいだろう」

 「詐欺収入が、まじめに働いての実利より大きいからね」

 「やり過ぎると殺されるぞ」

 「積極的にはやってないさ。勝手に地価が上がるんだ」

 「しかし、いったいどうやっているんだか・・・」

 「ふっ 副次的な産物でダウジング能力者が見つかっているだけだけどね」

 「どうせタネ明かしを教える気はないんだろう」

 「ああ・・・」

 「まぁいいや ところで、軍事クーデターが起こると聞いたけど」

 「とある国の言い分だと、解放神学の浸透で共産化を防ぎたいというのが口実らしい」

 「本音は、日英同盟、独伊同盟、ソビエトがブラジルに足場を作るのを嫌っているのだろう」

 「その国が裏にいる」

 「じゃ クーデターが起こると日系人の利権が奪われて、国営にされてしまうのか?」

 「イギリスとも検討しているが、いま危惧しているのがそれだよ」

 「どうしたら・・・」

 「アメリカ大統領と交渉中だ」

 「たぶん、日系人の利権は、保障してくれるらしい」

 「なんで?」

 「まぁ いろいろあるから・・・」

 「いろいろ?」

 「ベネゼエラとブラジルの軍拡競争を煽りたいのだろう」

 03/30

 ブラジルで軍事クーデター発生。

 

 

 日本連邦は、既存の巨大産業と

 数百人の小さな魔業とそれを支える数万人の二重構造になっていた。

 手工業的な魔業は既存産業に比べ、30年以上の技術格差があり、

 移民によって人口が薄められ、気薄になった日本産業を支えていた。

GDPランキング
01 アメリカ合衆国 11 カナダ
02 ドイツ 12 ベネゼエラ
03 日本&瑞樹 13 ブラジル
04 イギリス 14 穂 (広州)
05 (アメリカ極東権益地) 15 インド
06 バルカン連邦 16 オランダ
07 ソビエト連邦 17 カフカス連邦
08 イタリア 18 ヴィシー・フランス
09 スペイン 19 メキシコ
10 燕 (北京) 20 呉 (上海)

 国家においても富める者はますます富み、

 貧しき者はますます貧しくなっていく構図が作られていく。

 資源の価格は低く抑えられ、加工品の利潤は増していく。

 また、利権を奪われないが為、ライバルの生存圏拡大を防止するのである。

 そして、最小の製品でありながら、その可能性から高額製品が作られようとしていた。

 

 瑞樹州 ガイア魔業工場

 ハミハラと魔法使いたちがカーボン分子、シリコン分子の鎖を変えていく。

 各国の先端技術でさえ成しえない素材が作られていた。

 さらに局外秘の魔法の杖、飛行石、生体素粒子の精製も研究されていた。

 「毎日毎日、内職ばっか」

 「♪〜 ♪〜」

 「ハミハラは、楽しそうだね」

 「僕の代わりにシンディが外で楽しんでいるからね」

 「ぅぅ・・・分身がいるのって羨ましい」

 「シンディのおかげで日本語も話せるようになったし。もっと増やしたいなぁ」

 「最大7人だっけ?」

 「うん、離れてても大丈夫みたいだ」

 「くっそぉ〜 寿命を足せるし、知識も得られるし喰命鬼って、理想だよな」

 「ていうか、やった女を支配できるのは、男の夢だよ」

 「むっ 男のエゴ・・・」 女魔法使い

 「あははは・・・」

 「でもねぇ この仕事は、みみっちくないか?」

 ハミハラは、ICチップを弄ぶ。

 「もっと、情報戦とかカッコイイのないの?」

 「日本はね。諜報するより、諜報される側だからね」

 「素材作りは、産業の基礎だし。無理して、探さなくても良いんだよ」

 「小さな宝石を繋げて大きくする方が分かりやすいよ」

 「ガイアで魔法使いが小遣い稼ぎでやってる」

 「まぁ 倍以上の金額になるのが面白いし」

 「曇ってる部分を抜くだけでも一財産だからね」

 「やり過ぎると値崩れするらしいけど」

 「イギリスばっかりダイヤを押さえているから、いい気味だ」

 「出自不明の大型ダイヤは、警戒されるらしいよ」

 「イギリスの某ダイヤモンドメジャーがスパイを送り込んできたらしいし」

 「イギリスの産業女スパイか・・・むふっ♪」

 「ハミハラ・・・」

 

 

 赤紙で安価に徴兵出来た時代。

 口減らしに将兵を見捨てる事ができた時代は、過ぎ去っていた。

 志願制になれば将兵の価値は高くなり、

 評価価値の高い将兵を見捨てる事で起きる士気の崩壊を恐れた。

 大型飛行艇が離着水を繰り返す。

64式飛行艇
機体重量 最大着陸/着水重量 全長×全幅×全高 hp 速度 航続距離 乗員
25500 44000 33.5×33.2×10 3667×4 580km/h 4700km 11

 戦前、戦中、戦後を経て、飛行艇は、攻撃的なものから哨戒、輸送。

 そして、救難機へと変貌していく。

 将兵と国民の生命と安全を守ることで国防省は、戦前のイメージを払拭し、

 予算を勝ち得ようと画策する。

 しかし、救難機に近付くほど、海洋安保庁のテリトリーに踏み込み。

 海軍は、海洋安保庁と同型機を運用することになっていく。

 国防省が国土を守り。

 警察・海洋安保庁が国民を守る分担は、少しずつ定着していく。

 

 

 

 津軽海峡トンネル

 掘削用カッターヘッドは、戦略物資だった。

 交換するまでどれほど掘削できるかであり、

 採算率の差は、国力の目安ともなった。

 そして、日本製のカッターヘッドは、世界最高水準だったのである。

 関係者たち

 「北に産業を押し上げても貿易上、採算率が悪いような気がするね」

 「採算率がそんなに重要かね」

 「血税だよ。自己満足な美学で血税を浪費されたらたまったものじゃないよ」

 「まぁ 海底トンネルより、飛行機が良いような気もするがね」

 「トライデントは、良い旅客機だよ」

 「イギリスより、日本で製造した方が安く上がるって?」

 「歩留まり率が全く違うらしいからね」

 「雇用と国防で海底トンネルは重要だよ」

 「まぁ 特定産業なら動脈硬化しても稼げるのも、潜在的に価値のある産業を潰してしまうのも微妙だな」

 「社会整備で基礎は必要だよ」

 「宗谷海峡トンネルと合わせて樺太まで引っ張れば、採算は良くなりそうだけどね」

 「沿線沿いに人口を集めても人口が増えないとな」

 「日本は、まだ持続的に成長できるということじゃないの?」

 「だといいけどね」

 「税金か・・・むかしみたいにむしり取れないに」

 「公私の配分が問題だからな・・・」

 「代替用地があるあいだはね」

 「日和見な自給自足人口が増えると近代化が進まない」

 「機械化すれば良いよ」

 「というより、土着農民が近代化の足を引っ張ることはよくあるよ」

 「鉄道を敷けば地価は高くなる」

 「農民が自分の土地を高く売りたいと思ってもしょうがないよ」

 

 

 

中国大陸   面積 台湾比 友好国
アメリカ極東権益地 満州、朝鮮半島

135万2437

   
軍閥七雄
(北京) 河北、山東、山西、河南、東・内モンゴル 106万8200 5.93 アメリカ
(上海) 江蘇、安徹、浙江、 34万4000 3.91 ドイツ
(重慶) 湖北、貴州、湖南 57万3800 3.19 中立
(成都) 四川 48万5000 1.66 中立
(広州) 広東、福建、江西、広西、 70万2900 4.06 日英同盟
(蘭州) 甘粛、青海、陝西、寧夏、西・内モンゴル 182万0800 3.32 ソビエト
大理 (昆明) 雲南 39万4100 1.23 中立
 
ウイグル ウルムチ ウイグル 166万0000 0.44 中立
チベット ラサ チベット 122万8400 0.34 中立

 国家で必要とされる機構一つ一つは、国を豊かにし、国民を結束させるのである。

 国防は、国家運営機構の一分野に過ぎず。

 予算配分の質と量でなされる。

 愛国心や国防意識を軍人のみ限定するのは、軍人の傲慢であり、

 そして、その傲慢な世界が中国大陸に作られようとしていた。

 軍閥間は対立しながら軍拡を続け、

 陸軍戦力は、列強を超えていた。

 蜀 (成都) 48万5000ku

 蜀軍の将兵が街路を行き来していた。

 中華飯店 四桃

 日本人たちが傲慢そうな蜀軍官僚と昼食を共にする。

 「我が蜀は、楚(重慶)、穂(広州)、涼(蘭州)の脅威を受けているアル」

 「日本に協力して欲しいアル」

 「もちろんです」

 「チーフテンとライトニングが欲しいある。イギリスに口添えして欲しいアル」

 ライセンス生産は、国産と違って勝手に輸出できない決まりごとがあった。

 「穂と利害関係があるので、難しいかもしれませんが善処します」

 「旧型のセンチュリオン戦車、ホーカー ハンターは、容易かもしれません」

 「穂国を守るためなら、資源はいくらでも渡すあるアル」

 「わかりました。イギリスと交渉してみましょう」

 「よろしくアル」

 『一人当たりのGDPが小さいのに無理しちゃって』

 『内陸軍閥側の戦力を増強させる方が沿岸軍閥国が海軍に力を入れなくていいから』

 『社会整備に金を掛ければ良いのに・・・』

 『なんかデジャブ・・・』

 『成長期の国はどこでも軍国病を経験するからね』

 『おかげで儲かるけど』

 『大陸が荒れると儲かるという神話が作られそうだね』

 『うんうん。どいつもこいつも欲の皮を突っ張らせそうだな』

 『資源がないと回らないもの。しょうがないよ』

 

 

 赤レンガの住人たち

 崩壊シミュレーションB22

 核ミサイルと化学兵器の奇襲攻撃によって国家権力が瓦解し、

 日本の国防戦力はズタズタにされる。

 敵国の侵攻は続き、

 周辺諸国は、獲物に群がるジャッカルやハゲタカに化けた。

 「戦力の6割が破壊され、生産力は半分以下」

 「・・・先任将校は5位以下から繰り上げ」

 「さらに予備役を引っ張り出して、指揮系統の再構築」

 「権謀術数から統制が執れるまで数カ月以上かかりそうだな」

 「下手すりゃ 派閥争いから内戦だよ」

 「サイコロ運が悪過ぎたな。普通は降伏だよ」

 「政府が降伏せず、継戦を望んだ場合だよ」

 「国軍によるゲリラ作戦を展開しながら、有利な瑞樹州へ避難すべきでしょう」

 「降伏して避難する方が楽じゃないか」

 「とりあえず。主権を守るために降伏しない仮定だよ」

 「主権を守るために国民を犠牲にするのが戦争だね」

 「国民だって、外国人に人権や財産を奪われたら戦うさ」

 「一度、そういう目に合わないと国防予算は増えないよ」

 「しかし、ゲリラ戦をしようにも日本は訓練を受けた将兵が少な過ぎる」

 「それに武器を持たない日本民族がゲリラ戦を戦えるだろうか」

 「下町の工場にFN FALを作らせたら弾薬を含めて1週間で軌道に乗ったよ」

 「潜在的にゲリラ戦は可能かもしれないがね」

 「衣食住を破壊されて機能を失った世界では、意欲しだいだよ」

 「占領地から民間人を避難させるべきか、残すべきかは?」

 「避難させるべきだと思うよ。敵国の生産力として使われたくない」

 「それには生産基盤を破壊して、避難民の生活保障が出来なければ」

 「そのまま、残してゲリラ戦は?」

 「日本人同士憎み合う事にならないだろうか」

 「そりゃ 日本人は小心者だから大同小異で憎み合う事もあるよ」

 「もうちょっと、ふてぶてしく鈍感で大らかな性格になれば良いのに・・・」

 「A型タイプだからね。アメリカみたいにO型が多くなればそうだろうが」

 「アメリカは血液型の性質を信じていないよ」

 「素材の性質を否定することはないよ」

 「しかし、こうも予算が小さいとお手上げだな」

 「日本民族のゲリラ戦は、信用できない?」

 「数値に出しにくいのが嫌なだけだ」

 「ゲリラ戦は、権威主義な組織じゃなく。自発的な集団による自衛だから」

 「日本人は、自己主張の少ない飼い犬民族だからねぇ」

 「保守が良い面もあるよ」

 「日本の近代化は閉鎖的で長いモノに巻かれやすい日本人の気質に負うところが大きい」

 「バルカン、カフカスの日本人はかなり違うようだが」

 「期待の新日本人は、土着な日本人と衝突しやすいからね」

 「しかし、どうしたものか・・・」

 「日本民族は武器を与えたら侵略軍に対してゲリラ戦をするだろうか・・・」

 「問題はその後の治安かも、武器の回収は命懸けだよ」

 「結局、権力構造を守るための国防という見方もあるからね」

 

 

 ベネゼエラは、周辺国からの移民を増やし、急速に近代化を進めていく。

 矢面に立ったのは、アメリカより国境を接するイギリス領ガイアナだった。

 防衛費は、現地の経済力の大きさに比例するため、

 日本の積極的な投資を誘致して防衛を行うしかなく。

 イギリスは、ガイアナの南側に日本自治区を整備。

 日本資本は、川をさかのぼり、ダウジングで資源開発を進め、

 ガイアナ経済を押さえていく。

 この状況は、イギリス連邦の各地で見られ、

 日英同盟は、年ごとに強化され、

 元々少ない総人口だったことから、

 日本人の人口は、それまで最大人口のインド人と並びはじめていた。

 ガイアナ

 駐留ガイアナ軍

 大地に叩きつけるような土砂降りの雨。

 格納庫の中にホーカーハンター戦闘機が置かれ、

 センチュリオン戦車も格納庫に入れられていた。

 整備士たちは、錆びを気にしているのか、頻繁に油で拭いていた。

 「雲が抜け始めている。もうすぐ止みそうだな」

 「じゃ 予定通りか・・・」

 日系のイギリス軍将校が現れると、将兵は不承不承に敬礼する。

 キビキビさに欠けているが士官も下士官も、それが普通と考えていた。

 「ベネゼエラとガイアナの戦力比は開きつつある」

 「ベネゼエラ軍の侵攻が、もし始まれば、我がガイアナ軍は、苦戦するだろう」

 「日英同盟の援軍は困難だ」

 「正義の味方はアメリカ合衆国になるかもしれないが、あいつらも火事場泥棒に過ぎん」

 「ガイアナ防衛は、諸君らの壮健に掛っている」

 「では、演習を始めてくれ」

 元日本軍将校の現イギリス軍将校の演説が終わると、土砂降りだった雨が止み。

 将兵たちが予定通りの行軍を開始する。

 小国は、演習一つでも予算が削られていく。

 元日本軍将校は、貯水所でお茶を飲みながら団扇で扇ぐ。

 「あついぃ〜 何が悲しゅうて、老後を、こんな暑い場所に・・・」

 「栄転でしょ」

 「栄転じゃなくても涼しい国で良かったんだ」

 「土地と家と収入。電力と水の確保ができれば便利な場所の方が良いですからね」

 「天下り先が蒸し風呂と知っていたら、考えなおしていたよ」

 「日本人でさえ暑いんだ。イギリス人が入植しないわけだ」

 「でもスポンサーは、金鉱を掘り当てたらしいですよ」

 「けっ 老後は安泰か、やれやれ」

 「イギリスは、インド人の代わりに日本人を使って植民地維持を目論んでいるのでしょう」

 「良い手だな」

 「ベネゼエラの方が利便性が良くて楽しそうだな」

 「でも戦争になるのでは?」

 「こんな暑い場所で戦いたくねぇ〜」

 「もう、ラテン系ですかね」

 「あははは・・・人間は気候に支配されてるよ。勝てねぇ」

 「でも日本人部隊を作らないと」

 「戦争が始まって、相手が優位だと敵前逃亡だな」

 「こけおどしでも戦車を増やすべきでしょう。それか、日本兵」

 「イギリスと交渉してるがね。日本人も警戒されている」

 「それに親方日の丸組織。特に軍隊上がりの人間は、権威主義と受け身が強い」

 「経済成長の足枷になりやすい」

 「日本政府もそれがわかっているから、国営の民営化を検討してるし、兵力増強も望んでいない」

 「最低限必要な人員もあるのですがね」

 「日本企業は、無線装甲部隊の導入を検討しているらしい」

 「妨害電波で機能停止されるのでは?」

 「金鉱を掘り当てたのなら、その辺は上手くやるんじゃないかな」

 「だと良いですが・・・」

 「虹だな」

 「ええ・・・」

 原生林をまたぐように巨大な虹がアーチを作っていた。

 「虹と夕陽と星空だけは綺麗だな」

 「ええ」

 

 

 バルカン連邦は、既存勢力の国家群をさらに都市単位でバラバラにしていた。

 国家基幹産業と軍部を占めたのは日本人であり、

 それまでなかったマスメディア、通信、新幹線も押さえていた。

 無論、利権配分は、細分化されながらも行われており、

 連邦法は、民族的な差別はなく、政教分離化され、

 自治都市法で差別化されていた。

 徐々に民族、宗教、言語、文化の住み分けが行われ、

 生産力は成長し、治安も安定していく。

 そして、高まっていく経済成長は地中海・黒海貿易の牽引役となっていた。

 連邦議会は、連邦党(連邦国家集権)。共和党(共和国分権)。ポリス党(都市分権)に分かれていた。

 考え方としては、どこの利権を強めるか、政策的な議員派閥であり。

 現状より、国家集権よりが連邦党。共和国集権よりが共和党。都市分権よりがポリス党といえる。

 最大は、ポリス党6割であり、次席は、連邦党3割。共和党は1割もなかった。

 元々、国権集中は困難な国情であり、大きな成長はなくても、安定が優先されていく。

 ハンガリー ヘェーヴェス

 直径220mほどの温泉湖(水深30m)があった。

 温泉湖の中央にホテルがあり、観光客で賑わっていた。

 温度は30度から32度で、水着を着て浮き輪に掴まって漂う。

 三鷹イズミ(17歳)と火園ミナモ(16歳)は、ロビーのベンチに腰かけ、

 ぼんやり仕事をする。

 二人とも魔法使いだった。

 媒体の魔法の杖は、服に編み込まれており、杖を持っていない。

 仕事が終われば、温泉に入れることになっていた。

 「・・・あのセルビア人。まだ武器を集めているみたい」

 「ハンガリーで反日運動か・・・でも、迷ってるみたいだね」

 「準備段階で、連邦警察が直接警告して、仕事を紹介すると言われたら誰だって躊躇するよ」

 「何の仕事?」

 「農園管理だっけ」

 「農園管理か・・・連邦警察より安全そうだ・・・」

 「わたしたちは、連邦警察内定だから、ちょっと危ないわね・・・」

 後ろからカサカサと音がすると、二匹の黒猫が現れ、二人の膝に乗る。

 「アサギリ。お疲れ」

 「カゲロウもね」

 「武器のありかもわかったし。もう一度、連邦警察に警告してもらった方が良いかも」

 「犯罪予防って手柄にならないらしいけど」

 「でも、せっかくの反日組織に投資しても、準備段階で崩されたら、外国勢力も退くわね」

 「いい気味」

 程度の低い魔法使いでも猫、ネズミ、鳥なら使い魔にできる魔法技術が確立される。

 使い魔は、魔法使いにとっての目であり、耳であり、

 相性や経験によって、使い魔を自由に動かせるようになった。

 後方の視界を確保するのに優れ、直接的な戦力にならなくても諜報で役に立ち、

 尾行は容易となり、尾行されても事前に察知できた。

 そして、ガイアと違って地球は、猫、鳥の使い魔の方が有効だった。

 最大の特徴は生体素粒子の損傷が少なく。魔法使いたちに好まれる。

 

 

 ギリシャ

 バルカンの内陸から運ばれた土壌が肥料と混ぜられながら積まれ苗木が植樹されていく。

 「なんか、難しい土地と思っていたけど、むかしの朝鮮半島より楽だな」

 「もっと強硬派が現れて、テロとか、行われると思ったのに」

 「アメリカ人の観光客の話しだと、強硬派が立ち上がる前に芽が摘み取られるらしいよ」

 「どうやって?」

 「さぁ〜 まともに話せないのに連邦警察の方が検挙率が良いし、どうなってるんだろう」

 「何にしても、これで経済成長が進めば悪くないよ」

 「こんなので、森林が蘇るのかね」

 「豊な海も蘇るかも」

 「公共工事って楽しいよね」

 「バルカン連邦に国債を押し付けて、左団扇でお金が入ってくる」

 「でも日本での開発分もこっちに乗せるじゃないの?」

 「アメリカ権益地ほどじゃないけど新幹線作ったり、道路作ったり、大変だからな」

 「国債って水増しだから、先に買った奴が得するんだよな。有力者はホクホクだね」

 「ババ引くのは誰かな」

 「さぁ 条約の1997年までは管理できそうだけど、その後は・・・」

 「そのまま、日本人が権益を握れないか?」

 「利権の奪い合いで内戦するより、日本人に任せそうな気もする」

 「連邦議会次第だ」

 「謙虚な日本人次第じゃないか」

 「国債抱えて左団扇な日本人が謙虚であり続けられればね」

 「人口比1対7弱なら傲慢になれないと思うがね」

 「地下資源を当てるし、土地転がし詐欺で儲けるし、嫌われてるだろう」

 「日本人が買う土地は資源が眠っていると思い込んでるからしょうがないよ。自業自得」

 「あまり、やり過ぎると、やっかみで日本人死んでくれって、思われるぞ」

 「無理やり奪っているわけじゃないよ。勝手に値を吊り上げるんだよ」

 

 

 

 瑞樹州

 ガイア研究所

 “ガイア探索によって、いくつかの仮定が推測される”

 “二つの世界の共振素粒子と強い忘避の念が小さな裂け目を作ることがあり”

 “別の世界から異種族が現れることがある”

 “ガイアが平行次元世界におけるハブ惑星である仮説が強まった”

 “平行次元を経由しながら宇宙を行き来できる可能性は高く”

 “ドイツの宇宙開発を先行できると思われる”

 “無論、宇宙開発は、有望な分野ではあるが飛行石を精製することで宇宙開発は容易になるだろう”

 “飛行石は、光を当てると浮き上がるため、飛行石の精製は、暗視ゴーグルを付けて暗闇で行われる”

 “反重力装甲は、人類の夢でもあるが、消費させられるであろう寿命を思うと悲しくもある”

 “最近は、寿命より、削られ破壊されるであろう魂。生体素粒子を思うと心が痛むのである”

 “人が食物連鎖上、下位に転落したからと言って、それは、自然である”

 “としても損なわれた魂の尊厳は、やはり悲しいものだ”

 “せめて、寿命の尽きた魂を食らうようにと、ハミハラに言うが上手くいかないらしい”

 “生者と死者の魂は、量が同じでも質の点で何かが違うのだろう”

 工場

 ハミハラが被験者の右腕の内骨格技術を終える。

 「痛みは?」

 「特にないです」

 「気分はどうかね?」

 「自分の腕じゃないような感覚です」

 「神経は全て残しているはずだ。しかし、違和感はあるだろうな」

 「できそうです」

 「そうか、やってみたまえ」

 20〜30代男性の平均握力は約49kg

 被験者が握力計を握る。

 「だいたい、常人の3倍以上になるわけか」

 「世界記録とはいかないが下手に訓練するより上そうだな」

 「靭帯は?」

 「・・・異常なさそうです」

 「汗腺と皮脂腺は?」

 「・・・許容範囲内です」

 「まぁ 連続した運動は、当分、避けるべきだろうな」

 「世界中は遺伝子操作に向かっているのに、日本は良いんですか?」

 「一般企業でやってるよ」

 「まぁ 別の選択肢もあるのなら、こっちも悪くないだろう」

 「個人に投資し難い日本でもこれだから、欧米でも遺伝子改良は進んでいるだろうな」

 「ほかに手段がなければ、そうなるよ。アメリカの精子バンクは、大人気だ」

 「生体素粒子との絡みがあるので何とも言えませんが、普通の人間なら圧倒できますよ」

 「鍛練による生体素粒子の強化は、厳し過ぎて脱落者続出だよ」

 「やはり、内骨格技術優先ですか?」

 「ヴィシー・オリンピックを見ただろう。ジーンリッチのマンパワーは、圧倒的だ」

 「オリンピックに内骨格技術を出すのはまずいのでは?」

 「パラリンピックなら・・・」

 「あふぉ」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異境ガイア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 鬼ヶ島 人鬼村

 1943年 伊161号(30人)の異世界出現

 ヒルコ島 鬼族との接触と人鬼村入植

 1951年 伊400・401号(160人)の異世界出現

 1956年 出産

 装甲飛行艦 大和 の優位性と確保した飛行石鉱山の利権。

 そして、地球との召魂、召魄による取引。

 高度な科学知識と冶金技術によって生存圏を確立していた。

 人鬼村は公共施設とともに急速に大きくなり、

 出産が増加、

 1964年 子供の数は一世の190人を超え、

 近代化も進んでいた。

 地方の利権が拡大すれば、統制から離れ易くなり、

 統制を強化すれば、地方分権の力が寂れて利権が縮小する。

 とはいえ、この時期、人鬼村は、日本からの移民を渇望しており。

 日本は、人鬼村の投資を惜しまない。

 

 

 村の外縁でカルザン茨の植樹と

 ヒュブロ蜘蛛、ケスムカデ、虎ハチの生育が検討されていた。

 これらの生態系は、人族にとって危険な魔虫だった。

 しかし、未開地自体が危険そのものであり、

 ヒルコ島産の生態系で似たような関係の共生関係も研究されていた。

 人鬼村 総督府

 ドワーフの魔法使いが生体素粒子をコントロールし、石と土のゴーレムを操る。

 「凄いモノだな。羨ましい」

 「魔法使いは生体素粒子を取り込んでいるわけでなく、一時的に操っているだけのようです」

 「喰命鬼は、生体素粒子を取り込みながらゴーレムを動かせるわけか」

 「だいぶ、わかってきたぞ」

 「子供たちは出来るかもしれませんね」

 「ええ、我々の中で魔法使いは、ガイアで生まれた20人ほどでしょう」

 「魔法使いは普通1000人に1人」

 「10人に1人の魔法使い率は、ガイア最大です」

 「訓練によって魔力を得た結果か、平行次元を通過した事による過渡期的な現象だろう」

 「子供たちの寿命を縮める事には違いがありませんが・・・」

 「しかし、ゴーレムか・・・生物を使うのと、どっちがいいかな?」

 「生物は自律間接操作で負担は小さく、死ぬとお終いという生物学的な弱さがあります」

 「無機物のゴーレムは、生体素粒子と土さえあれば即興で作れる」

 「無機物の遠隔操作は魔力を大量に運用しなければならない」

 「代わりに生体素粒子の温存で優れている」

 「遠隔直接操作は負担が大きく、不自由そうだな」

 「双方の利点を伸ばせれば、有力なガーディアンになるかもしれないな・・・」

 召魂術による通信が行われる。

 「・・・総督。ムー大陸ミストス村でインド人1人を保護したそうです」

 「日本人を保護したいねぇ」

 「日本人だからと言って上手くいくかは別だがね」

 「最近、利権慣れして受け身に弛んでいますから人口を増やさないと不味いですね」

 「子供が生まれれば所帯染みてくるし、どうしても、そうなるよ」

 「日本人らしく家族主義的な甘え、ですか」

 「個人主義が行き過ぎるとバラバラになるし」

 「家族主義が強過ぎると束縛が強くなる。一長一短だな」

 「もう少し、中庸な伝統が作れないものでしょうか」

 「それぞれ悪癖と美徳があるし、中庸が良いとは限らんよ」

 「まぁ 考えてはみるがね」

 

 

 アルフヘイムの辺境

 エルフが矢を射ると弓から解き放たれ、

 矢は魔力加速しながら、逃げようとする魔物を追いかけ命中する。

 フェイルノ木から造られた矢は、魔法の杖と同質のものであり、

 魔力誘導させやすく、魔力を持つ敵の妨害に対して、一定の有用性があった。

 人口100人ほどの村。

 日本人2人は、武器を行商しながら、情報を入手していく。

 狩猟前のエルフたちは下ごしらえの準備をしていた。

 ドワーフ、鬼も数人混ざっており、排他的な空気はなかった。

 40代くらいのエルフは、ナイフで指先を刺すと、自分の血を矢に塗っていく。

 「ミレイナス。それがエルフの矢の命中率の秘密?」

 「ええ、フェイルノ木は、契約を結んだ者の魔力に反応しやすいですから」

 「エルフの魔法技術は最も高いですね。噂通りだ」

 「科学技術は人鬼村の日本人に負けてますよ」

 「特に大砲、機関銃、魔法剣は良い」

 「人鬼村の日本人は、魔力が弱いので仕方ないのです」

 「しかし、魔物相手では命中率は望めない」

 「いや、魔力の強いモノは多くない。人鬼村の日本人は優位だ」

 「それに長距離からの狙撃なら、そのFN FALでも十分でしょう」

 「まず交渉が前提ですから、いきなり狙撃はありませんよ」

 「だろうね。いきなり狙撃なら38式が良かった」

 エルフは、布を剥ぎ取ると錆び付いた小銃を何本か見せた。

 !?

 「これは・・・」

 「辺境のさらに奥の森で見つけたモノですよ」

 「リー・エンフィールド(7.7mm×56)・・・Kar98(7.92mm×57)・・・」

 「おや、38式(6.5mm×50)と違うので?」

 「え、ええ・・・」

 「貴重な鉄なので普通は、加工してしまうのですが弾の作り方がわかったので・・・」

 「そうだ。あと、これも・・・」

 箱を開けて、取り出す。

 ごとっ!

 『げっ マウザーM1918(13mm×92)・・・なんちゅうマイナーな・・・』

 「これは、威力があったのですが、肩が壊れてしまって駄目ですね」

 「それを撃てる者は、屈強の兵士でないと。人族でも少数派ですよ」

 「そうだろうな」

 「こういった武器は、よく見つかるので?」

 「いや、滅多にないな」

 「も、持ち主は?」

 「さぁ 未開地で生き残るのは大変で。人族は、弾を使い切ると銃が邪魔になって棄てる」

 「持ち主に心当たりは・・・」

 「この辺で最後に人族の出現を聞いたのは、いつだったかな」

 エルフは、鬼族の男に聞く。

 「ああ・・・東のビブロス村で・・・20年前だった。15年くらい前に死んだって聞いたな」

 「ビブロス村・・・」

 「あそこは、妖精が多いらしい」

 「妖精・・・」

 「老いて死ぬと、相性の良い木を宿主にして、魂が生きることがあるらしい」

 「木を切られると妖精は死ぬから未開地の木に潜む」

 「ビブロス村の木は堅くて強いから、町に良く現れるらしいな」

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 日本の軍国主義化は、選択の余地のなかったものなのか、

 日本民族は、全て主戦派だったのか、

 視点を過去に戻せば、中江兆民「三酔人経綸問答」(1887)というのがある。

 民主主義の紳士君。武闘派の豪傑君。中庸の南海先生の会話だった。

 日清戦争前であり、個人の思い付きというより、

 当時、日本が置かれた状況を反映している。

 まったく、考慮すべき内容がなければ、捨てられ消え失せていた。

 

 

 

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第23話 1963年 『魂21gの攻防』
第24話 1964年 『虹の向こう』
第25話 1965年 『国境線に異常なし』