月夜裏 野々香 小説の部屋

    

ファンタジー系火葬戦記

 

『魔業の黎明』

 

第30話 1970年 『主義者は人を殺す』

 暗く、臭い、闇の中、

 犯罪の温床、悪の巣窟が広がっていた。

 醜く、品性の欠片もないケルベロス、トロール、ゴブリン、オークがうごめき、

 家々を襲い始める。

 「きゃー! 助けてぇ〜!」

 「あははは、泣き喚いて、命乞いをしろ」

 あれぇ〜〜〜!!!!!

 この闇の世界は、光の世界も、光の勇者も存在しなかった。

 

中国大陸   面積 台湾比 友好国
アメリカ極東権益地 満州、朝鮮半島

135万2437

   
軍閥七雄
(北京) 河北、山東、山西、河南、東・内モンゴル 106万8200 5.93 アメリカ
(上海) 江蘇、安徹、浙江、 34万4000 3.91 ドイツ
(重慶) 湖北、貴州、湖南 57万3800 3.19 中立
(成都) 四川 48万5000 1.66 中立
(広州) 広東、福建、江西、広西、 70万2900 4.06 日英同盟
(蘭州) 甘粛、青海、陝西、寧夏、西・内モンゴル 182万0800 1.32 ソビエト
大理 (昆明) 雲南 39万4100 1.23 中立
 
ウイグル ウルムチ ウイグル 166万0000 0.44 中立
チベット ラサ チベット 122万8400 0.34 中立

 涼(蘭州)

 文化大革命は続いていた。

 大多数を占める貧困層は、やっかみ、僻み、妬み、

 民衆の狂気が資産の再分配を求め知識人、富裕層を血祭りに上げてた。

 そして、残る軍閥六雄は、共産革命に巻き込まれまいと国境を閉ざし、

 国内に巣くう共産主義勢力を弾圧し、

 ドサクサに紛れ、国権を脅かす自由主義者と民主主義者も抹殺していく。

 初期の資本主義は、近代化で力を付けるまで搾取を続けなければならず、

 既得権益者にとって自由主義者と民主主義者は負担であり、

 邪魔者でしかなかった。

 涼(蘭州)の亡命者が命からがら、燕(北京)に逃れてきていた。

 「中国は中華思想で呪われた国ある」

 「アレさえなければ、日本と同じ統一されたまま、近代化できたある」

 「国民は、もっと自由で民主主義だったある」

 「そんな事はないある」

 「燕(北京)は、資本家に支配されて、労働者は収容所で働かされているある」

 「それでも良いある。わたしは医者ある。給料は良いはずある」

 「貧富の格差は広がってるある。医療器具も薬も高いある」

 「庶民用の薬や医療機械より、お金持ちを助けるため、高い薬と医療器具を揃えるある」

 「みんなお金持ちのためのモノある」

 「貧民層は破傷風と肺炎で死ぬある」

 「涼(蘭州)では、一党独裁ある。権力は世襲ある。最悪ある」

 「・・・もっと自由なアメリカ極東権益地に行くある」

 「あそこは、資本主義社会ある、完全に生きた部品にされるある」

 「部品以外は捨てられるある」

 「日本は?」

 「日本人は、自己主張のない、生まれつきの部品ある」

 「「大陸は地獄ある〜!!!!!」」

 

 軍閥六雄は、多かれ少なかれ、初期の資本主義であり、

 中国民衆は、搾取されていた。

 無論、莫大な鉱物資源は大きな利権だったものの、

 腐敗官僚の懐を温め、権力を守る子飼いに資本が流出するのみだった。

 権力を直接脅かす反体制な身内より、

 外戚優遇は、古今東西、どこにでも起こった。

 軍閥諸国は、分裂し、中華思想が弱まったと言え、桁違いに不正腐敗が多く、

 日本で言うなら1900年頃の資本主義が息付き、

 格安の製品が西側諸国へと輸出されていた。

 

 

 資本主義諸国は、生産品の売却先がなければ生産を縮小させなければならず、

 薄利多売が困難となり、高利販売となって物価が高騰する、

 収益が減少すれば雇用を保てなくなり、

 交通と流通が縮小すれば利便性の良い近代的な生活ができなくなった。

 比較的モラルの高い日本でさえ、

 生活水準の低下と資産の喪失に耐えられる聖人君主は少数派であり。

 ほとんどの人間が毎年の如く、物価以上の昇給を望むのだった。

 必然的に中産階級以上の昇給率が高くなり、

 中産階級以下は、物価以下の昇給であるにもかかわらず、

 競争社会と生存圏拡大の要求は強く。

 毎月のように賃金昇給を望んで春闘を繰り広げるのである。

 もっとも、賃金闘争しなければ初期資本主義に逆戻りという事もあり、

 賃金闘争を辞めるにやめられないジレンマに陥る。

 なので利敵行為というなかれ、

 樺太から余剰の食料・生活物資がソビエトへと売られ、

 代価の資源が日本へと供給されるのである。

 そして、中国で生産された格安商品が日本に流れ込む、

 生産過多な日本とアメリカ権益地は、より利潤の大きな中級製品生産に移行しつつ、

 生活物資をソビエトに売却し、

 共産主義国家を助け持続させていく。

 もっとも、ソビエトも、世界の二大強国の米独に挟撃され、

 ソビエトの軍事偏重は、市民生活を貧しくさせて行く。

 欧州ソビエト社会生活は、バルカン・カフカスの生活物資供給によって成り立ち、

 シベリア社会生活はアメリカ権益地の生活物資供給によって成り立っている節があった。

 

 

 

 大阪万博

 人々が興味深げに日本の無人警備車を見ていた。

 コンセプトは5つ。

  1) 拳銃に耐える。

  2) 小型で移動能力が高く、カメラ、スピーカー、探知能力を有する。

  3) 定められたルートを記憶し、あるいは、人間を追跡し、リモコン遠隔操作が行える。

  4) マニピュレーター×2

  5) 短機関銃(9mm×19)の砲塔があり、射撃ができる。

 無人警備車は、人手不足を解消する手段として考えられ、

 4輪車で発信器を持つ人間を追いかけて行く。

 関係者たち

 「日本の治安の良さと犯罪検挙率の高さは魔力だけど。警備車は、いるのかな」

 「予防だよ」

 「それに警備車によって治安が守られていることにすれば警備車が外国に売れるじゃないか」

 「警察も目や耳が増えた方が良いし」

 「魔法使いは、猫やカラスを使ってるじゃないか」

 「だから、脈絡もなく犯人を逮捕できるのがおかしいって事になってるだろう」

 「それを警備車のせいにするんだよ。そうすれば売れる」

 「産業のためか・・」

 「魔業は売れないけど、産業なら売れる」

 「それに犯人逮捕の時、楽になるかもしれないだろう」

 開発者が段差を超えると、

 警備車はマニピュレーターで車体を支えつつ、

 車輪の外縁部から16本の支柱を伸ばし、

 車体を浮き上がらせ、

 「「「「おぉおお〜!!!」」」」

 段差のある階段を上っていく。

 「大したものだ」

 「監視カメラを使いながら決められたルートの巡回パトロールができる」

 「自動車や歩行者の邪魔にならないだろうか」

 「監視カメラは死角がないようにしてる、すぐ止まるようにしてるが微妙だね」

 「事故が起きた時は、誰のせい?」

 「んん・・・道を広げる口実にもなりそうだけど」

 「マニピュレーターは、本当にいるのかね」

 「拳銃は簡単に使えないし」

 「人に威圧を与えるのは “手” あるいは “げんこつ” だからね」

 「怪我させない程度に犯人を捕らえる事も出来るし、イタズラ防止にもなる」

 「むしろ、巡回パトロール路に防犯カメラを設置した方が安く済むんじゃ・・・」

 「いや、住民に監視されていると思われると支障があるよ」

 「事件のあった地域に増援できたりするし」

 「犯人逮捕の時とか、本部から沈着な指示を出しやすい」

 「動力は電気で良いの?」

 「静かな方が良い」

 「でも本部からスピーカーで話しても、住民は、無人車の言う事を聞かないよな」

 「まぁ 警察官と一緒に行動するのが良いかも」

 「警官一人の支払総額と、警備車1台の値段と維持費用か・・・」

 「稼働率だと操作する人間次第だし、警備車の方がいいような気がするな」

 「んん・・・フランス、インドネシア、中国辺りで採用してくれるなら意外と採算ベースかも」

 「不信感の強い国は採用してくれるのでは?」

 「そうだなぁ 海洋保安庁も無人巡視船を研究してるし」

 「公僕業の自動化は進めたいような気もするし、ここは、やっぱり導入かな・・・」

 

 

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F14トムキャット戦闘機
重量/全備重 全長×全幅×全高 翼面積 推力 速度 航続力 機銃 ミサイル 乗員
18191/32100 19.1×19.54(10.15)×4.88 52.5 9479kg×2 2517km/h 3227km 20mm×1 6577kg 2
アブロ・カナダ CF105Jアロー戦闘機
18615/31120 23.71×15.24×6.25 113.8 10453kg×2 3062km/h 1740km 30mm×1 8+4 2

 アメリカ海軍 ミラマー海軍航空基地

 アメリカ海軍将校たち

 「F14戦闘機は、CF105アローJより基礎設計で洗練された機体だよ」

 「しかし、安全性は確認されていないな」

 「先に開発されたCF105アローJは不具合が改修されている」

 「安全性が増して、実用機となっているだろうな」

 「勝てるだろうね。CF105に?」

 「そりゃ F14は基礎設計で12年以上、優れている」

 「補修が進めば勝てる、かもしれない」

 「自信なさげだな」

 「全長を単純計算で比べるなら、アローは容積率で24パーセント勝っている」

 「何を詰め込まれるかわかったものじゃない」

 「容積が大きければ、ECM・ECCM装置の積載量が勝るだけで有利になるな」

 「F14は、作戦に応じて各種装置ポッドを加えるしかないか」

 「それと、日本の噂が気になる」

 「日本人を魔法使いと思っているのなら、愚かだと思うぞ」

 「愚かでないなら、人間を不完全な存在だと認めるべきだと思うね」

 「進化の延長線上に魔法使いがいると?」

 「人間は、公平じゃないし、公平には作られていないよ」

 「仮に魔法の種があったとしても通常は国有財産にならず、個人で秘匿するのでは?」

 「日本は普通じゃないだろう。まぁ ジーンリッチもだが」

 「仮に魔法であっても、物理的な強さには勝てないよ」

 「F14は、値段以外の項目は、悪くないよ」

 「CF105アローは機構が単純で安いのに性能が良さそうだ」

 「艦載機じゃないからだろう」

 「アレだけ翼面積が大きいと、離着艦できるよ」

 「機体が大き過ぎて空母に載せられそうにないがね」

 「予算が減らされて数を揃えられないのに」

 「アメリカ合衆国は海軍力がなければ新大陸で孤立してしまうよ」

 「そういうのは平和主義者にいうんだな」

 「平和主義者は自己満足な偽善で国家権益を脅かすからな」

 「主戦論者だって、国家と大義名分のため財産を吸い上げ、人権を踏み躙るじゃないか」

 「利権と人権を天秤に掛ければ、利権が重くなることがあるよ」

 「海外利権を守る機動部隊とF14は、その象徴だな」

 

 

 瑞樹州

 ハミハラは、チタン、新素材ナノシート・ナノチューブで人間の人体改造を経て行くうち、

 それまであまり、意識していなかった自らの人体強化も視野に入れていく。

 ガイアでは、生体素粒子の質の変革、増強だけでなく、

 肉体的な変質を志向する魔物に心当たりがあった。

 自らの価値を高め、生存圏の安寧を図るのは生命の権利であり、

 自ら自身の心身革新も辞さない欲望に感心する。

 もっとも、地球に来て、個体の出し抜き進化より、

 社会組織的な群れの持つ可能性にも驚かされる。

 魔法の力は個の根源的な力を高めるものだった、

 しかし、地球の生態系は生体素粒子が小さく、

 魔法を使えない地球人は、社会全体で巨大な有機体のような構造を組み上げていた。

 莫大な鉄資源を有し、科学技術と産業は強固な集合体であり、

 総合でガイアの魔法技術に勝るとも劣らない。

 脅威的な大量生産品と巨大な都市によって社会が守られており、

 その中心部の聖域は、安逸な生活が保障されていた。

 そして、地球人類の人口は37億ほどに達し、

 集合意識下で伝達される精神波は、飽和状態となって地球を覆い、

 生体素粒子を不透明にさせ、耳鳴りさせてしまうほどだった。

 これでは、Aクラスの喰命鬼が潜んでいても分からないだろう。

 精神伝達、召魂・召魄で支障をきたし、

 魔法使いを育て難くさせているとも思われる。

 その一方で膨大集合意識の精神波の渦をモノともしない召魂・召魄もなされていた。

 これは驚くべき、現象であり、恐るべき可能性も秘めていた。

 生体素粒子で劣る人族は、組織力と蓄積した科学技術で文明圏を押し広げ、

 物理的な兵器と弾薬が生体素粒子の究極個体を追い立て苦境に陥れていた。

 自分の使い魔は、ガイアにいた住人のどの知性より優れ、機能的であり、

 多才でスマート、そして、奇異に飛んでいる。

 無論、狭義的な既成概念の塊であったものの、

 使い魔となってからは、順応性を示し、飛躍的な発想も提示していた。

 もっとも、使い魔は誰でも良いわけでなく、条件的なモノもあった。

 無論、使い魔にしてしまえば、個性を踏み躙って支配し、

 命令で強制することも可能だった。

 しかし、嫌悪する気質が強ければ酷くくたびれ、消耗する。

 法務省の役人に使い魔で好みの女を聞かれたとき、応えたモノだ。

 “好みの女というより、どういう女が嫌いか、なのだ”

 “忍耐心がなく料理の不味い女、ガサツで向上心がなく下品な女”

 “独り善がりで自己中心な女、不誠実で自己正当化ばかりする女”

 “不従順で価値を生み出せない女、自立しておらず重荷でしかない女”

 “掃除、洗濯を嫌がり下手な女、言う事を素直に聞けない女”

 “容姿、学歴は問わないから、こういう女は疲れるから、やめてくれ” と、言うと、

 “価値というと例えば?”

 “そうだな。手に職のある女が良い”

 “小麦からパンを作れたり、うどんを作れたり”

 “それがないなら、人に好まれ、パンやうどんを高く売れる才能が欲しいな”

 役人は、苦笑いしながら “あと、無理、無駄、ムラがなければいいな”

 “おぉ 気が合うな。それも付け加えておいてくれ”

 “・・・・俺もそう思うよ” と男は答え肩を落とし去っていく。

 どうやら、女は、人族の男と同じ好みらしい。

 肩を落として去っていく光景に一抹の不安を感じたが・・・

 

 

 

 自然界の力は

 “万有引力” “電磁相互作用” “強い相互作用” “弱い相互作用”

 の4つに還元できるとされている。

 万有引力に対し、万有斥力が想定されているものの、

 斥力元素は、引力元素にも、斥力元素にも反発し、宇宙の果てに弾き飛ばされるため、

 基本的に宇宙に存在しない。

 例外的に、条件付けで斥力物資に転換される引力元素のみ、宇宙に残され、

 ガイアの飛行石のみ確認されている。

 飛行石の斥力元素を飛散霧消させず、

 精製できるなら外壁に組み込むことで反重力装置となった。

 反重力装置を別の言い方に変えると、斥力装置といえた。

 瑞樹州

 ガイア研究所

 研究者の執筆中。

 “0次元は点。1次元は線。2次元は平面。3次元は立体”

 “4次元が立体の時空連続であり、この世界と言える”

 “ここで、類似性が存在する”

 “点の0次元世界と、立体の3次元世界の類似性であり”

 “0次元(点)の連続体である線の1次元世界と”

 “3次元(立体)の時空連続体の4次元世界の類似性である”

 “そして、線の平面連続体である2次元の平面と”

 “時間連続体の平行連続体の5次元は、異世界ガイアによって確認され”

 “類似性があると思われる”

 “我々は、5次元に存在するガイアに対し、片足を踏み込んでいる”

 “とはいえ、4次元世界の人間でさえ、3次元(立体)に対する認識で限定的なのである”

 “人間が認識できる位相は、個体、液体、気体、プラズマの4位相であり”

 “仮に霊体を5位相と仮定するなら”

 “生体素粒子は第6位相でいずれも透過されてしまうのである”

 “斥力物質を第7位相。魔法の杖を第8位相と考えることもできる”

 “この3次元(立体)位相空間に隠れ存在するモノを見抜く力は、生体素粒子の質的変化であり”

 “魔法使いの生体素粒子を小太刀とするなら”

 “残念ながら、常人の生体素粒子は小さく脆いなまくらナイフと言えた”

 “3次元立体の空間に存在する原子核と電子は、場を構成しているものの”

 “巨大な空間の隙間は、視覚領外であり、透過してしまうのである”

 “その非知覚領域の存在は、魔法使いによって、ようやく、存在が証明される”

 “ガイアでは、自らの原子変動数を変化させ、物理的な攻撃をかわす魔物も確認されている”

 “視覚認識できる質量以上の存在があり、霊界・幽霊も、その類であり”

 “位相空間の層は、確認されているだけで12層に及び”

 “魔法使いでさえ、第6位相以下の存在に過ぎず”

 “生体素粒子の質と量の差で不利と言えた”

 “喰命鬼の第7位相は、生体素粒子の質的変化と考えられている”

 “無論、非認知の場・モノに介在し、介入できる力は、生体素粒子の質と量で様々といえる”

 “そして、知りうる限り”

 “生体素粒子の力で原子変動数を自由に変化させられる魔法使いはいない”

 “魔法使いたちの非知覚領域に対する認識と干渉は限定的であり”

 “生体素粒子の質と量によって位相空間の認知できる層数が左右される”

 “人族の生体素粒子量は少なく。質において過渡期と思われ”

 “今後、不足する生体素粒子を埋める、科学技術の進歩に期待したい”

 “まず、3次元世界である立体空間の全て、非認知領域の認識を期待したいものであり”

 “それなくしては、時空連続体である4次元の認識すらおぼつかず”

 “時間の逆行も認識外といえる”

 “また、3次元の認識拡大は、並列時空連続体の5次元に立体面を加えたものであり”

 “3次元(立体)の類似性であるところの6次元の扉を開くカギになるのである”

 “誤解のないように書くとすれば、ガイアは3次元の位相ではない”

 “なぜなら、5次元(ガイア)は、非認知領域ではなく”

 “ガイアと地球は、原子振動数で変化がないからである”

 “そのため、ガイアは、場に隠れた透過世界でなく”

 “別の平行次元の宇宙であるといえるのである”

 “日本は、ガイアの存在によって、大きな利権を得たのであるが”

 “それは、特権的な権力者とか、お金持ちとかの利幅に過ぎず”

 “他国に対し、秘密を知り得ていることによってのみ、成り立っているのである”

 “そして、人族が未発達で無知で脆弱な存在であったことを認識できたのである”

 

 

 

 ガイア研究所は、新兵器開発の青写真を作っていた。

 この新兵器は、技術上の問題としてではなく、

 寿命の消費年数の問題として認知されていた。

 なので、現段階で完成できるからと言っても、

 倫理上、緊急に完成させられるべき、兵器と言えないのである。

研究中の次々々期 水中排水量6500トン級 凰龍 型潜水艦
排水量/水中排水量 飛行石 全長×全幅×吃水 最大速度 斥力レーザー 乗員
ミサイル×36発
3600/6500 1200 120×12×7 9.80665m/s^2×最大3G加速 6管 80

 G加速は、(飛行石質量×10)/全質量。

 飛行石(斥力元素)の重量が潜水艦の10の1強であれば、

 地球(引力元素)の重力に反発して、潜水艦は空中に浮かび上がる。

 余剰分の飛行石(斥力元素)を大気(引力元素)に反発させると反作用で潜水艦は前進する。

 もっとも、艦体が大気摩擦に耐えられるG加速の限度があり、

 艦体を守るため外壁に向け、万有斥力を反発させることもある。

 この斥力装置を有効に使うなら、円盤型が理想で、

 潜水艦型、葉巻型で構わないと言えなくもない。

 もっとも、斥力原子は精製が困難であり、希少資源で量が少なく、

 何らかの推進エネルギーを足し、加速させる方が得といえた。

 斥力装置で高圧縮・集束したラムジェットエンジン推進は有力だった。

 空中に浮くために-1G+αを必要とし、推進のために-1Gとする。

 宇宙に飛び出した場合、天井から床に向け-1Gで人工重力を発生で来た。

 つまるところ、潜水艦=宇宙艦で建造するのなら、(3600/10)×3で飛行石の重量を計算し、

 飛行石を精製した斥力・反重力物質1950トンであれば、

 宇宙空間で人工重力で-1G、斥力防御で-1G、推進で-1G加速が可能だった。

 そして、魔力と斥力を利用して圧縮し、撃ち出す超音速ミサイルは、マッハ4以上。

 さらに同じ発射管を用いた半物質化ビーム兵器は、驚くべき効果を発揮する。

 直径533mmの発射管は魔力と斥力で光粒子を3G圧縮で収束し半物質させる事に成功、

 直径533mmのビームは、直径155mmにまで集束させられ、

 光速29万9792.458m/s / (9.80665m/s(1G) × 3)となった。

 ビームの速度は、1万0190.1m/sと光速以下となったものの、

 半物質化したビームエネルギーは、熱と光の3分の1を内側に向けて秘匿し、

 光と熱エネルギーを3倍の時間と距離を保たせた。

 そして、艦と飛行石と比重が、この種の斥力・反重力を利用した艦艇の戦闘力を決める、

 軍艦の等級を決めるのも3G級戦艦。あるいは4G級戦艦といった具合だった。

 小型機であれば防御力が不安でも飛行石の比重を上げ、6G級、7G級も可能であり、

 宇宙戦闘機といった兵器も開発できそうだった。

 無論、ガイアの飛行石を採取できるからであり、

 技術上の問題ではなく、寿命をいくら搾取できるかであった。

 研究者たち、

 「対位相防御はどうなんだろう」

 「第5位相まではなんとか・・・」

 「霊界とか、霊体に対してか」

 「問題は、対第6位相の生体素粒子。対第7位相斥力。対第8位相の魔法の攻撃だ」

 「どこまで耐え得るかだね」

 「もっと高い位相からの攻撃に対しても無防備だよ」

 「ふっ もう、アメリカは仮想敵国から外れてるな」

 「ガイアのAクラスの魔物の方が怖いからね」

 「連中からすると、人間は、壁に張り付けられ、もがいてる様に見えるのだろうな」

 「地球は、いい狩り場にされるよ」

 「それは、どうかな。Aクラスの魔物にとっての餌は生体素粒子だ」

 「人間は、不純物が多過ぎて、餌として効率が悪い」

 「ちっ 餌としても三流扱いかよ。ムカつくぜ」

 「とはいえ、対地球用兵器なら問題なく最強だな」

 「もっと平べったくして、階層を減らした方が有利な気がするね。円盤型とか・・・」

 「それじゃ 潜水艦じゃないと思われるだろう」

 「そこまで世界に隠す必要があるのだろうか」

 「列強は、核兵器持ってるからな、あまり、刺激を与えない方がいいと思うよ」

 「んん・・・建造は、単純に予算と寿命の問題だけなんだけどね」

 「まぁね。完成するとしても、何百年、何千年分の寿命が奪われるか、計算したくないね」

 「それを考えるのは、為政者だし、責任は、そっちにあるよ」

 「最大の問題は、斥力の方向を決める光の照射、あるいは熱になるけど?」

 「これをスムーズに制御できれば、発生した斥力の反発によって、物体を動かせる」

 「反発の対象が気体だと空回りしやすく、個体だと空回りし難い、液体は中間だ」

 「宇宙だと天体に対し、斥力を反発させて推進する」

 「真空は抵抗が小さいから意外と速く進めるだろう」

 「主力の半物質ビーム兵器は、摩擦が小さく、突き進めるし、海中・空中・宇宙でも使える」

 「発射速度はともかく、艦のエネルギーなので物理的な弾薬消費じゃないのがいい」

 「熱と光を内側に閉じ込めるのは、どういうのだろうね」

 「微粒子太陽みたいなものだろう」

 「太陽の28G重力だと光速を484m/s近く閉じ込められるからね」

 「ビーム速度が遅いと回避されそうだな」

 「熱と光の放出を押さえるからエネルギーの量にもよるけど、探知し難いはずだよ」

 「光線そのものが、魔法びんに入っているような感じか」

 「問題は、それより、さらに低速で目立つ物理的なミサイルが役に立つかだ」

 「低速といっても斥力の反発を利用して撃ち出すからね」

 「ブースター加速も含めると相当なモノだよ」

 「それにミサイルというより、変形戦闘ガーゴイルみたいなものだな」

 地下格納庫に試作ミサイル(直径533mm×全長6m)が並んでいた。

 推進器を除いた弾頭部が変形を開始する。

 カシャ カシャ カシャ カシャ

 そして、全高3m×全幅67.6mmの2足歩行機械に変形していく。

 「等身大の人造人間の方が便利だろう」

 「魔法使いは気質で不安だからね」

 「自律制御とか、遠隔操作も含めると大きくなるんだよ」

 「それに等身大だとミサイル1発に2体で潜入で便利だけど、戦闘能力が著しく低くなりそうだし」

 「ミサイルを使う必要性が低い」

 「それに内骨格の研究は遅れている」

 「まだ、改造人間の段階だからね。人造人間は、すぐばれる」

 「あと、動かせる個数が同じなら、質量が大きい方が戦闘力が高く、いいと考えるだろう」

 「魔法使いの能力にもよるが1人当たり2体から3体を操作できる」

 「特に土系と水系は、自律制御の才能があって同じレベルでも3体から4体は行けるな」

 「戦闘ガーゴイルなら最大36体を格納できるか」

 「敵陣を強襲、魔法使いの操作で作戦ができるわけか」

 「相手が潜水艦なら、外壁に穴を開けるか、錘を付けて海底に直行だよ」

 「怖いねぇ」

 「しかし、なぜ人型なんだ。戦車、戦闘機型は強いのでは?」

 「魔法使いがイメージして生体エネルギーで動かしやすいのが人型だっただけだ」

 「イメージし難い戦闘機や戦車で1体になるより、人型で3体が良かっただけか」

 「人型の方が強ければね」

 「-3G級の斥力を使っているし、陸海空は自在自在に戦える」

 「どちらかというと大気は、斥力を空回りさせ易いから、大地を踏み蹴って走る方が速い」

 「重量を気にしないで済むなら、鉄人28号級の巨大ロボットでも良いわけだな」

 「それは生体素粒子の制御能力と予算次第になるね」

 「不可能じゃないけど標的になりやすいし、避けたいね」

 「ミサイルが36体なら魔法使いが12人必要になるのか」

 「そっちの方が不可能に近いな」

 「魔法使いは、産業と取り合いになるだろうし、法務省が剥れそうだ」

 「じゃ しょうがないから、斥力の反発を利用して超音速弾頭ミサイルを撃ち出すか」

 「その方が賢明だよ」

 「最大の問題は、使う機会が訪れそうになさそうなことかな」

 「戦争したくなるけど、平和だからねぇ」

 「何で平和なんだろう」

 

 

 

 近代戦争は、列強間における欧州の主導権の奪い合いであり、

 ドイツ第3帝国は、欧州の半分を押さえる覇者と言えた。

レオパルト2

 ドイツ帝国で新型戦車が駆け抜けて行く。

  重量 全長 車体長×全幅×全高 HP 速度 航続力 武装 乗員
レオパルド1型 54 10.54 8.09×3.25×2.61 830 45km/h 600km 65口径105mm 7.92mm×2 4
レオパルド2型 60 9.67 8.72×3.75×2.79 1500 65km/h 340km 50口径120mm 7.92mm×2 4

 そして、欧州を大半を支配するドイツ第3帝国の戦車は、それが適正であれ、不適正であれ、

 世界的に影響力があった。

 「数より、質よりか・・・」

 ドイツ国防省の新型戦車を臨む、外交武官は口々に呟く。

 単純な話し、予算内で何両の戦車を作るか、質と量の最大公約数的な戦車といえる。

 最強の戦車は、必ずしも戦争に勝てる戦車ではない。

 戦車は、一定の戦線と場を制さなければならず。

 一定の戦線と場を制するには、数を揃えなければならなかった。

 そして、モノを言うのが1両いくらで製造できるかの工業力であり、

 国民の許容できる国防予算でり、

 国情と制度などを含めた国力といえた。

 「レオパルド2型戦車を揃えると、無理をしなければならないな」

 「ソビエトの滑空砲とイギリスの複合装甲に備えたのでしょう」

 「慌てぶりがトン数に出ている」

 「島国にはない苦労ですな」

 「バルカン連邦とカフカス連邦は、レオパルド2の大きな圧迫を受けますよ」

 「ドイツ帝国は、戦車より、宇宙ステーションの “アーリア” に予算を割かれている」

 「戦車で攻勢に出るだけの数は造れない気がしますね」

 「このままだと、ドイツ帝国に月を支配されかねませんね」

 「日本はどうするので?」

 「どうにもこうにも、技術的な格差が埋められませんし」

 「予算も付けようがない。お手上げですな」

 「ほぉ 日本は、ポケットに宇宙戦艦を隠してるくらいに余裕に見えますが」

 「まさか」

 「では、何とか、追いかけているのは、資金力で余裕のあるアメリカ」

 「そして、ハートランドに押さえ込まれているソビエトですか」

 「予算で国民に無理をさせれば貧富の差が広がり、権力構造が脆くなるはず」

 「ドイツも、日本も成功者の利権が少な過ぎて、それはなさそうですな」

 「不評は買ってますが我慢してもらってますよ」

 「まぁ 貧富の格差、勝ち負けの尺度で、アメリカ資本主義が正しいと決まってませんがね」

 「日本は大乗仏教の思想が強い」

 「個人主義、小乗仏教的な出し抜きは、反発があるのですよ」

 「なるほど、しかし、なぜか日本に出し抜かれているような気持ちがするのですが・・・」

 「気のせいですよ」

 「日本は1869年の開国以来100年あまり、欧米諸国に追い付けでやってきましたから」

 「日本は、まだまだ、これからです」

 「・・・・・」

 

 

 宇宙ステーション “アーリア”

 ドイツ人は、宇宙を臨みながら、レポートを書いていた。

 宇宙戦艦・空母と宇宙戦闘機に対する考察。

 “宇宙船と宇宙機の違いをどこに求めるか”

 “太古においては、人の数で軍船と民船を分けることができた”

 “10人以下は宇宙機。20人以下は宇宙艇。50人以下は宇宙駆逐艦”

 “100人以下は宇宙巡洋艦。100人以上は宇宙戦艦といった分け方である”

 “しかし、機能主義のドイツにおいて、これは、当てはめ難い”

 “別の分け方をするなら1人/50トン、1人/100トンという質量比の考え方もある”

 “しかし、これも、機能的とは言えない”

 “そこで、宇宙で最も気になり、重要なモノで分ける方法もある”

 “生命維持装置である”

 “宇宙船と宇宙機の違いは、生命維持能力の差”

 “居住区画の有無の差でしかないと考えられる”

 “居住区画が存在する戦闘艦はどんなに小さくても宇宙船であり”

 “居住区画が存在しない戦闘機は、どんなに大きくても宇宙機と言える”

 “現段階では、生命維持日数で仮定すべきである”

 “宇宙機の生命維持機能を3日と仮定し”

 “宇宙艇を7日”

 “宇宙駆逐艦を21日”

 “宇宙巡洋艦を90日と考えても良いだろう”

 “宇宙戦艦は、巡洋艦の90日以上であるとし、別の規定をもうけるべきといえる”

 “宇宙空間における戦闘は、居住区画の攻防であると推測される”

 “重量のかさむ、生命維持を最小限有する宇宙機の攻防によって制宙権を奪い合い”

 “貴重な居住区画を有する宇宙駆逐艦以上を破壊することで場を制し”

 “勝利を得るのである”

 “しかし、我がドイツ帝国の科学技術でも、宇宙戦闘を考えるべきでなく”

 “宇宙に存続するだけでも、死線と紙一重といえる”

 

 

 ベネゼエラ産業は、莫大な借金を背負いながら急速に国力を付けていた。

 採算を度外視する無理な近代化は、過剰に資本を吸い上げるため、国民に皺寄せがいく。

 ベネゼエラ政府は、近代化による歪と、貧富の格差を誤魔化すため、

 他国の脅威を煽り、国民に挙国一致を強制する。

 ベネゼエラは、次第に右翼化し、対外強硬路線を執り始める。

 そして、直接、国境を接するガイアナは、不利益をこうむりはじめていた。

 イギリス領ガイアナ 日本人町 “豊葉”

 「日本資本は、もっと来れないのか?」

 「日本資本のベネゼエラとガイアナ比は8対2」

 「理由は簡単。アメリカ資本の投機がベネゼエラ産業を買い支えている」

 「採算で怪しい、日本のガイアナ投資は、同盟イギリスへの義理だよ」

 「イギリスが損失を保障してくれるのであれば、もう少し、投資が増えるがね」

 「損失保障の代わりに利権保障してるだろう」

 「あいにく、資本が不足していてね」

 「日本国民から金を集められるのでは?」

 「日本国民も、社会資本を求めてる」

 「まぁ 基幹産業に程遠い、他愛もない業種ばかりだがね」

 「それでも日本産業のすそ野を広げ、予備人材になるし」

 「日本経済を盤石なものにしていくから、これ以上の余裕はないね」

 「だが、このまま、ベネゼエラと戦力比が広がると、最初の獲物は、ガイアナになるな」

 「・・・・」

 

 

 ロードス島、

 バルカン連邦から船で栄養価の高い土壌が供給され、

 大地に表土が積み重ねられて植樹が進み、

 青々とした森が作られていく。

 この状況は、ギリシャ半島も同様で、緑化が進んでいた。

 日本政府の視察団が訪れていた。

 「少し、海の色が青くなった気がするな」

 「土壌が豊かになっている証拠だろう」

 「地中海に孤立した日本民族か、日本列島よりはるかに状況が悪いな」

 「野望を持たなければ平穏に暮らせるのでは?」

 「周辺国が、それを許せばだな」

 「周辺国に強国はありませんよ。トルコは、少し怖いですがね」

 「近くて大国だからな」

 「むしろ、バルカン連邦の方が大国だ」

 「バルカン連邦は、日本軍駐留軍が少ないから、そっちも不安だ」

 「都市国家の群れだ。攻勢が無理でも、これまでの歴史の中では、もっとも強靭だよ」

 「バルカン国内に裏切り者や内紛がなければ簡単に介入させないそうだ」

 「だけど、連邦は、喧嘩が多いそうじゃないか」

 「流血未満なら良いよ」

 「都市ごとに差別が緩和されているし」

 「他国に支配されるより、現状を望む」

 「むかしと比べたら内紛は、次元の低いレベルで収まってるよ・・・」

 4機編隊のCF105アロー戦闘機がエーゲ海上空を旋回していた。

 「でかい戦闘機だな」

 「むかしでいうと、P38ライトニングを主力戦闘機にしているような感じなんだろうな」

 「それだけ、日本も経済力が付いたってことじゃないの」

 「戦闘機は、先制発見先制攻撃ができるかだろう」

 「領空内ならECM・ECCMとも最強だと思うよ」

 

 

 

 チリのとある場所、

 電話がかかる。

 『サンチアゴのアウマダ通りに政府系マフィアが集まっている』

 『放っておくと、君らは利益を失い不利になるぞ』

 「わかった。こちらで処理しよう」

 10/24

 チリのレストラン、

 日本人たちは、交易上の理由で集まっていた。

 貧しい子供たちが食事を分けてもらおうと寄ってくる、

 日本人が分けたり、

 新聞を頼んで駄賃を渡したり、

 ラテン系は、人の施しと、貰う事に躊躇しない。

 テレビを見ると、

 チリ大統領選で人民連合のサルバドール・アジェンデ当選する。

 「・・・まさか、共産主義が選挙で誕生するとはね」

 「暴力革命じゃないから正統性は否定できないが・・・」

 「でもCIAが動いてるよ」

 「資本主義国家は、既得権益を奪われることを恐れ」

 「封建主義国家は、世襲権力が崩れることを恐れるからね」

 「国民全体が、その両方を否定すると権力者は泣きたくなるよ」

 「というより、殺意も湧くわな」

 「日本はどうするって?」

 「アメリカと違って、チリは遠いからね。利権の確保だけ」

 「鉱物資源や水産資源は、主義主張を言わないから」

 「結局、既得権者と奪う側の戦いか」

 「チリの貧富の格差は大き過ぎて殺人レベルだそうだ」

 「それに公共設備も少ないし、貧困層は守るべき私財もない」

 「それだと、共産化に対する免疫効果は弱い」

 「アメリカは社会設備が整っているが、貧富の格差で言うと大きいからね」

 「日本は巨大資本が少なく、中小企業の占める割合が多い」

 「共産主義に対する免疫はあるだろう」

 「ピラミッドを大きくすると賃金格差が広がり過ぎて、国民の不満が増す」

 「もっと国際競争に対応しやすいように自由競争をさせた方がいいのでは?」

 「相変わらず、日本は小心だねぇ 自由資本主義国家とは思えないな」

 「資本主義より、民主主義の方が少し強いだけだよ」

 「アメリカの価値が基準というわけでもないか」

 「アジェンデは、鉱山開発で協力してくれるのなら日本資本の利権を認めるそうだ」

 「でも4割株なんて、アメリカより、少ないじゃないか」

 「それでも、有望な鉱山を見つけて、採掘するだけでだろう。悪くないよ」

 「炭鉱は見つけられそう?」

 「ああ、アメリカ資本を国営化しなくても、良いくらいだ」

 外で銃撃戦が始まる。

 力と富のある者と組みする政府系マフィアと、

 力と富のある者に反逆する共産ゲリラの殺し合い。

 権益を守ろうとする勢力と権益を奪う勢力が殺し合う。

 主義主張は、利権集団の枠組みを作る方便であり、便宜上のモノでしかなかった。

 そして、単純な主義・思想ほど、民衆を狂気を駆り立てやすく、

 まとめやすかった。

 食後、

 日本人たちがレストランから出ると、政府系マフィアが路上で撃ち殺されていた。

 「・・・どうやら、共産ゲリラのおかげで、命拾いしたようだ」

 「やれやれ、ここまで来ると、中道勢力は、お呼びじゃないって感じだな」

 「利権の奪い合いは、殺し合いだからね。妥協は裏切りだよ」

 「あふぉうどもが・・・」

 「日本資本が鉱物資源を掘り当てると、アメリカ資本の鉱山収入が低下するからね」

 「しかし、俺たち本当に幸運なのか?」

 「さぁ 日本の幸運ペンダントは、外国で人気あるくらいだからね」

 「そういえば、中国人とか、朝鮮人が売ってたっけ」

 「この連中も付けてるじゃないか、日本の幸運ペンダント」

 撃ち殺されている政府系マフィアたちの胸にペンダントが付けられ、

 ペンダントの鉄板には “幸運” と漢字が書かれていた。

 「あははは・・・」

 

 

 

 

 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異境ガイア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 鬼ヶ島

 未開地

 鬼碧は、ぼんやりと餌を探していた。

 !?

 『おやぁ うまそうな匂いがしますねぇ』 

 センリ猫又の使い魔 魂鬼 が鬼碧を見下ろしていた。

 『ひっ!』 鬼碧

 『ふふふ どうしよう。お腹すいてないけど、腹の足しにしちゃおうかな』

 こうなると蛇に睨まれた蛙。

 !?

 『おっと・・・』

 センリ猫又の使い魔 魂鬼が火線を避ける。

 大和の砲撃が大地を震わせ、

 L7機関銃(7mm×43)の弾道が闇の中を走る。

 巨大な影を火線が突き抜けて行く。

 『いけませんねぇ ちょっと、位相を落とすとこれだ』

 『・・・しかし、人鬼村は、少しずつ手強くなってますねぇ』

 鬼碧は、スタコラ逃亡。

 魂鬼も、不承不承に後退する。

 

 森の中、

 「あの魔物に通じねぇ・・・」

 「見えてるのは影か」

 「実体は原子の波長を変えて、位相空間の向こう側にいるというわけだ」

 「その種の加工を弾丸に施したんじゃないのか?」

 「魔法使いの網羅している位相空間層なんて、たかが知れているよ」

 「ヤバくないか?」

 「下がろう」

 「ちっ 鬼ヶ島の制圧すらできないのか」

 

 

 蒼乃ツバキ(15)は、カルザン茨が突き刺さって頭痛に悩まされる。

 鬼碧がいなくなって、能力は6割に低下、

 4つの魂魄機

 スペード (攻撃)、 ダイヤ、(索敵)

 クラブ、(変体) ハート (防御)

 の操作もおぼつかず、監督官がブスくれる。

 「鬼碧は、戻ってこないのか?」

 「は、はぁ〜」

 「んん・・・先制発見率で後れをとると、部隊が全滅することもあるんだぞ」

 「申し訳ありません」

 「彼女は、別の器を見つけたのか・・・」

 「・・・・」 しょんぼり

 「まぁ そんなに簡単に波長の合う器が見つかると思えないが・・・」

 「来年は初陣で前線に行くことになるぞ」

 「はい・・・」

 「まぁ 少なくともこっちで生まれた人間の魔法使い出現率は高いし」

 「能力も、第一世代の我々より強いことには違いない」

 「最新の魔法剣なら第5位相から第6位相くらいなら切り割けるらしいし・・・」

 未開地との攻防は、喰うか食われるかの戦いだった。

 

 

 うどん屋

 黒光は、うどんを食べていた。

 喉ごしが心地よく、ちょっとした品の良い、おやつで、地球にいた頃を思い出す。

 黒光は、3次元で言うところの第10位相まで知覚でき、

 4次元で言うところの未来予知、過去検知も、十数分の範囲で可能で、

 5次元で言うところの次元の扉をも感知し得た。

 そして、黒猫を演じつつ、

 その能力は魔法使いでさえ、知覚しえない高みで隠している。

 猫又のセンリにとって、今の日々は、余暇で暇潰しであり、酔狂でしかない。

 「ただいま〜 黒光」

 五十鈴タマが戻ってくる。

 にゃあああ〜!

 「もう、かわいい〜」

 頬摺り頬摺り、

 にゃあああ〜!

 「見てみて、魔法剣よ」

 五十鈴タマは、チタン・サファイアレーザーを出して見せる。

 センリの目には、普通の人間の3倍近い生体素粒子が弱々しく光っているだけに見え、

 「もう、味方を斬らないだろうって、やっと、許可されたの」

 にゃあああ〜!

 「第6位相の生体素粒子も斬れちゃうんだって、凄いでしょう」

 にゃあああ〜!

 『くだらん』

 猫又のセンリは、うどんを食っちゃ寝生活をしたいだけで、

 その様相は、パソコンのモニターに自分の猫キャラを描き、

 画面を見ながら他のキャラの変化を傍観している、光景といえる。

 タマは、習ったように剣を振り回し、

 黒光は、眺めつつ、うどんを食べる。

 

 

 その夜

 蒼乃ツバキ(15)は、ハート (防御)を残し、

 3つの魂魄機 スペード(攻撃)。ダイヤ(索敵)。クラブ(変体)を未開地側に送り出し、

 索敵していた。

 人が死ぬ事もなく、生体素粒子を保護しやすい魂魄機は、利便性が良く。

 夜間の索敵に使われる。

 !?

 ダイヤ(索敵)が黒い影を感知、

 『よっ 蒼乃ツバキ。少しは、凝りたか?』

 『鬼碧』

 『戻ってやろうか?』

 『い、いままでなにやってたんだよ』

 『住み家になりそうな木を3本ほど見つけたけど、飽きちゃってね』

 『どうする?』

 『むっ 何かムカつくけど、戻って欲しい』

 『あたしに当たらないのなら、戻ってやってもいいかな〜』

 『あ、当たらないよ』

 『よ〜し、戻ってあげよう』

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 地球の反日勢力は、魔業(インチキ)によって、根元からコントロールされた世界、

 戦後日本は、表面上は、程よい緊張感を保ちつつ、悠々自適な気がします。

 とはいえ、ガイアの存在で人族(生体素粒子)の矮小な限界を知り・・・

 

 

 異世界ガイア

 研究が進むにつれ、

 なんとなく、人間の矮小さを出してしまいました。

 暗中模索で生体素粒子の変革と増大を求めるか。

 機械力に頼って、補うかです。

 

 

 さて、3次元の位相をなぜ12層にしたのかというと・・・

 

 都には神の栄光があった。

 その輝きは高価な宝石に似ており、透き通った碧玉のようであった。

 都には大きな高い城壁と12の門があって、それらの門には12人の御使いがおり、

 イスラエルの子らの12部族の名が書いてあった。

 東に3つの門、北に3つの門、南に3つの門、西に3つの門があった。

 また、都の城壁には12の土台石があり、

 それには、小羊の12使徒の12の名が書いてあった。

 また、私と話していた者は、都と門と城壁を測る金の測りざおを持っていた。

 都は四角で、その長さと幅は同じである。

 彼がそのさおで都を測ると、1万2千スタディオン(約180m×12000)あった。

 長さも幅も高さも同じ(2160000m)である。

 また、彼がその城壁を測ると、人間の尺度で144ペーキュス(約44.4cm×144)あった。

 これが御使いの尺度(63.93m)でもあった。

 その城壁は碧玉で造られ、

 都は混じりけのないガラスに似た純金でできていた。

 都の城壁の土台石はあらゆる宝石で飾られていた。

 第1の土台石は碧玉、第2はサファイア、第3は玉髄、

 第4はエメラルド、第5は赤縞めのう、第6は赤めのう、

 第7は貴かんらん石、第8は緑柱石、第9はトパーズ、

 第10は緑玉髄、第11は青玉(サファイア)、第12はアメジストであった。

 また、12の門は12の真珠であった。

 どの門も、それぞれ一つの真珠からできていた。

 都の大通りは、透き通ったガラスのような純金であった。

 私は、この都の中に神殿を見なかった。

 それは、万物の支配者である、神であられる主と、小羊とが都の神殿だからである。

 都には、これを照らす太陽も月もいらない。

 というのは、神の栄光が都を照らし、小羊が都のあかりだからである。

 諸国の民が都の光によって歩み、地の王たちはその栄光を携えて都に来る。

 都の門は一日中決して閉じることがない。

 夜がないからである。

 こうして、人々は諸国の民の栄光と誉れを携えて来る。

 しかし、すべて汚れた者、憎むべきことと偽りとを行なう者は決して都に入れない。

 小羊のいのちの書に名が書いてある者だけ入ることができる。

 

 黙示録からでした。

 12数が多いからでしょうか。

 

  0次元 1次元(点の連続) 2次元(線の連続)
  平面
       
       
  3次元(平面の連続) 4次元(空間の連続) 5次元(並列空間の連続)
  立体・空間 時空連続体 平行次元連続体(ガイア)
第01位相 個体 時間 平行次元宇宙
第02位相 液体
第03位相 気体 波動  
第04位相 プラズマ    
第05位相 霊界・零体    
第06位相 生体素粒子    
第07位相 斥力物質    
第08位相 魔法の杖    
第09位相      
第10位相      
第11位相      
第12位相      
       
  6次元 7次元 8次元
  立体次元連続空間 6次元の連続空間 7次元の連続空間
  多次元宇宙    

 

 

 

 

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第29話 1969年 『黎の時代』
第30話 1970年 『主義者は人を殺す』
第31話 1971年 『生命の木』