月夜裏 野々香 小説の部屋

    

ファンタジー系火葬戦記

 

『魔業の黎明』

 

第31話 1971年 『生命の木』

 国家予算を巡る各省庁の折衝は、関係業者を巻き込む、

 そして、各省庁に振り分けられた予算を巡る利益誘導は各社とも熾烈となっていく、

 国権主導の金の流れは、金融の主流と言える。

 税で吸い上げた資本を必要に応じ、

 財政支出で企業や国民に振り分ける考え方であり、

 公共投資を伴う積極財政も含まれる。

 

 もう一つ、社会資本が増大していくと、新しい考えも芽生える、

 社会資本から流れ落ちた資本の行き先が国家予算になる考えだった。

 社会資本を還流させる民権主導の金の流れであり、

 需要と供給に応じ作られる、

 公定歩合に応じて、貸し借りがなされるものの、

 片方が増え、片方が減るゼロサムの世界であり、

 常に新札の供給を受けなければ賃金昇給と物価高騰に堪えられず、

 無制限に紙幣を増刷供給すると、物価高騰を招くのである。

 また、特定の階層や産業への肥料、水のやり過ぎは根腐れの元となり、

 社会全体で傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲を蔓延させかねなかった。

 そのため、必要に応じ、既得権の淀みを破壊し、

 資本を還流させなければならないのである。

 金融の流れも、国権主導か、民権主導かの発想があり、

 国権主導の代表がドイツ帝国、中国軍閥群であるとするなら、

 民権主導の代表はアメリカ合衆国であり、

 日本、イギリスは、両者の間で迷っていた。

 どちらにせよ、国権も民権も車の両輪のようであり、

 一方を否定すべき性質ではないと言える。

 そういった国権と民権を含めての国防があるのであり、

 国防のあり方も国情に応じて様々と言えた。

 

 大型艦艇は大型であるが故に建造に年月を必要とし、

 時代に変革に遅れやすかった。

 この時期、科学技術は過渡期的に進み、大型艦艇の出現を抑制していた。

 戦艦の様にスペック変動の小さな艦艇より、

 艦載機の質と量で、戦力を一新しやすい空母は、時代に対応しやすかった。

 とはいえ、大型艦艇の建造は、余剰国力の証と言えなくもなく、

 大型艦艇の必要性が高いのは、諸外国と大洋で隔てられた国であり、

 大型艦艇を建造できる国力と野心を持つ国だった。

 大型空母機動部隊を保有していたのは、新大陸のアメリカ合衆国であり、

 大陸にへばり付き、

 隣国と隣接している国家は、陸空戦力も高水準で維持しなければならず、

 大型艦艇を容易に建造できなくなっていた。

 もっとも、国情の違いがあり、

 ドイツ帝国は宇宙開発に向かい、

 日本も経済的な理由から大型艦艇を建造していない、

 両国とも中型艦艇が多いことから侵略性が低下していた。

 

 

 

 瑞樹州

 位相研究所

 人族が通常認識できる3次元は、個体、液体、気体、プラズマの4位相であり、

 第5位相の霊、霊界の感知力は、個人差があった。

 第6位相の魂、生体素粒子に至っては、平均21g(500円玉×3枚)ほどしかなく、

 第5位相以下を動かすだけで精一杯で、自意識できないほど小さい、

 もっとも魔法使いともなれば、生体素粒子量は常人の3倍以上であり、

 魔法の杖を発揮できる程度の生体素粒子量となるのである。

 瑞樹州

 魔法教室、

 『『『『・・・・・』』』』

 子供たちが新しく始まった大戦アニメに魅入る

   国会議事堂前に近衛首相が立ち、マスコミが集まっていた。

   「陸軍が大臣選出を渋っていると聞きましたが?」

   「・・・陛下の勅命により、大日本帝国は、陸軍大臣を公募する」

   「我は陸軍大臣足らんと思う者は手を上げよ」 近衛文麿

   「「「「「「・・・・・」」」」」」

   ・・・・絶句・・・・

   『大臣の、現役制度は?』 記者

   『い、いや、というか、殺されるぞ』 記者

   『へ、陛下の勅命って・・・』 記者

   『この大変な時に第3次軍事クーデター事件かよ』 記者

   し〜〜〜〜ん!

   「はい!」

   ぴょん! 

   「はい!」

   重苦しい雰囲気の中、

   「「「「・・・・・」」」」

   一人が腕を振り上げる・・・

 「あ、あり得ねぇ〜」

 「決断って、このバカ女のことか?」

 「顔が美化されてるような気がするけど、馬鹿だよね」

 「普通、殺されるって思うよね」

 「一応、あれが日本の転換点だってことになってるけど」

 「まさか、畝傍だと、公表できないと思うよ・・・」

 !?

 「「「「・・・・・」」」」

 すぅ〜

 「・・・行ったよ」

 「霊体か・・・」

 「この場所を嗅ぎつけたのかな」

 「イギリスの霊能者みたいだね」

 「ったくぅ 油断を隙もねぇ」

 「まぁ 魔法の杖を持っていないだけで、舐めちゃ いけないってこった」

 「・・・じゃ 始めようか」

 一人の魔法使いが場を形成していく。

 大気の圧力急増減で水蒸気の凝結作用を起こさせる、

 これは、プラントル・グロワート・シンギュラリティと呼ばれ、

 戦闘機が音速に近付いた時、起きる現象だった。

 魔法使いの周囲は真っ白になり、

 粒子を鏡のように反射を利用すると姿を隠す事も出来た。

 「どうかな」

 「微妙・・・夜じゃないと隠れられないかも」

 「やっぱり、光を屈折させる方がいいのか」

 「斥力物質は、引力物質の10倍も光を屈折させられるけど、まだ弱いよ」

 「電磁波は?」

 「魔力で強化させることはできるけどね・・・」

 「電磁波は、使い勝手が悪い」

 一人がバチバチと放電させ、椅子を持ちあげ、目の前に持ってくる。

 「・・・卵には、やらない方がいいよ」

 「うん」

 「それより、仮定だけど、ガイアは、原爆も通用しない魔物もいるらしい」

 「マジ?」

 「一時的に個体、液体、気体、プラズマ以外に体を変質させ」

 「必要最小限のコアだけを全力で守る」

 「出来ねぇ」

 「実は、地球に12位相の神が存在して」

 「俺たち人間は、12位相の神が作った第6位相以下のキャラ社会という考えもあるよ」

 「神は、モニターでキャラ社会を眺めて面白がっている可能性もあるからね」

 「それだけは嫌だな。鬱になりそう」

 「人間だって、問答無用で将棋やったり、囲碁やったりで遊んでいるじゃないか」

 「それなら、ガイアからの侵食が少ないのも分からなくもないけど」

 「まぁ 自分で自分を創造したわけでもないし、そういう点で言うと人間は傀儡だからねぇ」

 「しかし、俺たち人類の経験値をその神に奪われているみたいで、無性に腹が立つ」

 「斥力物質が第7位相だとしたら、あと残り5位相あるのか・・・」

 「食命鬼のハミハラは、第8位相を持ってるとか、持ってないとか」

 「どちらにしろ、鍵は生体素粒子の質と量じゃないか」

 「理屈さえわかれば研究しやすいけど、第8位相は、まだ微妙だな」

 「質だけでなく、量の問題もあるからな・・・第8位相があるだろうじゃ・・・」

 

 

 ドイツ第3帝国は、静止軌道上を堅実に固めていた。

 中心から6本の支柱を持つ、全長600mの二重リングが回転していた。

 外縁部に人工の低重力を発生させ、上下の概念を保つ事ができた。

 閉じた世界に野菜が作られ、魚が育ち、

 自然循環が作られつつあった。

 太陽光熱発電は、必要なエネルギーを供給し、

 人間の日常生活を保障しているかに思えた。

 静止軌道上から見ると、地球の直径は、人差指の内側に収まるほど小さく見えた。

 「来た」

 「「おぉおお〜」」

 「やっぱり変化があると嬉しいねぇ」

 「「うんうん」」

 アメリカ合衆国は、夢と希望と成果を求めやすい社会であり、

 月へ向かうアポロ14号が静止衛星ステーション “アーリア” の横を抜け、

 地上であればいがみ合うはずの双方の乗員が互いに手を振り、

 互いに任務の成功と幸運を心から祈る。

 それほどの恐怖に包まれていると、本国は知りえないだろう。

 「アポロ14号か・・・いいなぁ」

 「月に行くのはもっと先だな」

 「ステーションが自給自足が可能になってからか」

 「だろうね」

 「そういえば、ソビエトも打ち上げるらしいよ。宇宙ステーション」

 「金も技術も貧相なくせに無理しやがる」

 「しかし、これだけの規模の質量に囲まれているのに数人しか生きていられないからな」

 「あと、数百倍の規模が欲しいね」

 「上水下水循環システムは、もっと大規模じゃないとね」

 「安全性を考えると、全長500kmの小惑星を刳り抜いて自転させたいね」

 「いいねぇ それくらいやらないと、宇宙移民は無理だ」

 「しかし、宇宙を開拓できればジーンリッチ種族の優勢は確実だよ」

 「結局、宇宙を支配する国が地球を支配できるわけだな」

 「いよいよ、優性人種の時代になるわけだ」

 「しかし、アメリカと覇を競わなければならない」

 「ふん、金に欲に目が眩んだ連中だ」

 「まだ、日本の方が危険だよ」

 「だけど、日本は、宇宙に出ていない」

 「日本も人工衛星は、打ち上げているだろう」

 「だけど、有人じゃない」

 「日本に魔法使いがいる噂は本当かな」

 「普通は、下が信じて、上は信じていないが」

 「日本の場合、下が信じず、上が信じている節があるからね」

 「ジーンリッチ人種でさえ、気付かない内容を日本人は、知っているのだろうか?」

 「ドイツで、日本人の学会を研究しているらしいけど」

 「なんの蓄積もないのに的確な命題がされているとか」

 「欧米の論文で注目を浴びている論文が日本の学会で関心が払われず」

 「逆に欧米で意識されていない論文が日本の学会に注目されているとか」

 「翻訳できなかったとか?」

 「まさか」

 「まぁ 珍しいことじゃないだろう」

 「だけど、利口な奴が無理して、バカに合わせているところもあるらしい」

 「引っ掛けると、ボロを出したことがあったそうだ」

 「「「・・・・」」」

 

 

 瑞樹州

F14トムキャット戦闘機
重量/全備重 全長×全幅×全高 翼面積 推力 速度 航続力 機銃 ミサイル 乗員
18191/32100 19.1×19.54(10.15)×4.88 52.5 9479kg×2 2517km/h 3227km 20mm×1 6577kg 2
アブロ・カナダ CF105Jアロー戦闘機
18215/31120 23.71×15.24×6.25 113.8 10453kg×2 3062km/h 1860km 30mm×1 8+4 2

 CF105Jアロー戦闘機の機構と装備が更新され、

 チタン部品が増え、軽量化も進む、

 表面上の変化より、質的な向上で目覚ましく、

 航続距離が延びるにつれ、

 迎撃機より、攻守で運用できる万能戦闘機と化してくる。

 ECMは、レーダー着信に対し、自動的に同じ波長でレーダー波を出し、

 相対距離を3分の1以下に誤認させる、

 ECCMは、自動的にレーダー周波数を切り替えることで、敵のレーダー妨害を回避する。

 その性能差によって、空戦結果も変わってる。

 このECM・ECCM装置自体消耗品であり、

 CF105アローの方が耐久時間が長く、性能も良かったのである。

 アローの軽量化が進むと加速がつきやすく、

 翼面積が大きいと旋回時、慣性に流され難く、立ち上がりも早かった。

 これは、後ろからついてくるトライデント戦闘機がG側に大きく沈むように流され、

 大きな旋回から、遅れつつ追いかけてくる。

 特に瑞樹航空部隊は、後部座席に魔法使いを搭乗させる事が多く、

 機体構造に魔法の杖を利用し、

 寿命を気にしないのであれば、索敵能力は全天球に及び、

 いざという時は、ミサイル、機銃掃射の弾道すら狂わせ、無敵の戦闘機に思えた。

 「・・・ぅ・・・酔った。降ろして〜」

 「お、お前なぁ〜」

 無論、魔法使いとパイロットの適性は別であり、

 それに対する解決策は、慣れしかないと言えた。

 

 むしろ、居住区画で余裕のあるバルカン爆撃機は、魔法使いの好みであり、

 機動力が弱いだけで、

 攻撃力・防御力が同程度ならバルカン爆撃機が有利だった。

 もっとも、瑞樹州の第123特別実験部隊のバルカン爆撃機のみ、

 斥力(反重力)装置を装備していた。

アブロ バルカン爆撃機
重量(kg) 飛行石(kg) 推力 全長×全幅×全高 翼面積 最大速 航続力 武器 爆弾 乗員
37144/113398   9070kg×4 30.45×33.83×8.28 368.26 1038km/h 7403km 9525kg 5
30600/113398 10000 10453kg×4 30.45×33.83×8.28 368.26 G3加速 21400km 20000kg 5

 一見ジェットエンジンに見せつつ、ジェットの爆音を出すものの、

 本質は、マッハ1以上から機能しする斥力(反重力)圧のラムジェットエンジン機であり、

 その気になれば、宇宙も飛行できる特注の機体だった。

 機内のカレンダーは、ローテーション表も兼ねた名前が書き込まれ、

 線が引かれていた。

 結局、日々の教育 & 製造作業だけでは、つまらないと、

 息抜きを兼ねた魔法使いの巡回パトロールだった。

 機体中央に巨大な水晶が置かれ、2人の魔法使いが周囲をうかがう。

 バルカン爆撃機の周囲を円盤状の物体が飛行していた。

 いわゆる未確認飛行物体と言えるもので、魔法使いが操作している魂魄機である。

 寿命を保ちつつ、魔法を使おうとすると、

 生体素粒子を器に入れるしかなかったのである。

 斥力(反重力)を利用し、

 空中を自由に機動させられる魂魄機は、索敵で有利だった。

 さらに発見されても、日の丸は描かれておらず、

 波長の合う魔法使いでなければ起動させることもできない。

 もっとも、不審がられるため、不用意に使い難いという欠点もあった。

 「宇宙には出ないのかな」

 「ドイツが監視してるし、このバルカンや潜水艦で行くと、もう、言い訳できないでしょう」

 「無所属宇宙船を建造すればヨシ」

 「宇宙か・・・」

 「しかし、これだけ戦力差が開いても不安なのは問題だね」

 「ガイア研究が進むほど、人族の脆弱な部分が浮き彫りにされるからね」

 「それに地球側の反応も怖いし、ばれたら日本は総スカンだ」

 「魔法使いの資質のある人間が生まれると分かれば、世界中で魔女狩りが起こるだろう」

 「権力者にとって、自分の権力や権益を脅かす、気味の悪い存在だからね」

 「それに魔業とガイア権益を先行独占している日本は、世界中で目の敵にされるし」

 「日本の国内世論も保守本流が強いし、どっちに向くか分からないから」

 「すぐに名声を得るために多数派を作り上げるやつが、いるからね」

 「支配欲と権謀術数で主導権を握ろうとする正義の味方、多数派の味方、偽善者・・・」

 「寄生虫だね」

 「でも日本の権益を支え守っているモノが、その得体のしれない力なんだけどね」

 「そりゃ 認めたくない連中も多いと思うよ。先天的な資質で魔法なんて」

 「後天的な資質の魔法使いだっているよ」

 「弱過ぎて魔法剣どまりだろう」

 「だよねぇ まぁ 魔法使いだって12位相級の神の存在は、微妙だけどね」

 「人間が自ら自身で存在を確立していないのが問題だよ」

 「自分自身で自分を製造したわけじゃないからね」

 「だけど、魂魄機を人間みたいに自律させて、どうなるか見てみたい気もする」

 「経験値とエネルギーだけ奪い取って?」

 「まぁね」

 「それにしては、神の創造は下手な気がするな」

 「そうでもないさ、寿命は適度で、リピートするし、滑稽な人間も多いし」

 「痛い、渋い、苦いも他人事なら経験値として大きいだろう」

 「死ねば自動的に回収できそうだし」

 「んん・・・旨みがわかるが故に無性に殺意が湧いてきた」

 

 

 

中国大陸   面積 台湾比 友好国
アメリカ極東権益地 満州、朝鮮半島

135万2437

   
軍閥七雄
(北京) 河北、山東、山西、河南、東・内モンゴル 106万8200 5.93 アメリカ
(上海) 江蘇、安徹、浙江、 34万4000 3.91 ドイツ
(重慶) 湖北、貴州、湖南 57万3800 3.19 中立
(成都) 四川 48万5000 1.66 中立
(広州) 広東、福建、江西、広西、 70万2900 4.06 日英同盟
(蘭州) 甘粛、青海、陝西、寧夏、西・内モンゴル 182万0800 1.32 ソビエト
大理 (昆明) 雲南 39万4100 1.23 中立
 
ウイグル ウルムチ ウイグル 166万0000 0.44 中立
チベット ラサ チベット 122万8400 0.34 中立

 楚(重慶)

 円札の力を知りたいのなら、後進国に行くべきであり、

 この地で円札を使えば、第一次産品が山となって積まれる。

 そして、二次産品など工業製品、自動車は、日本の数倍の値段で売り買いされる。

 思い付くのは、一次産品を日本に輸出し、

 日本から二次産品を買って、中国で売ることだった。

 もちろん美味しいルートは、財閥系が独占しており、

 中小企業も抜け道があったりする。

 なので、重慶のデパートに日本の最新機器が売られても、おかしくなく、

 貢物を貰えないレベルの軍閥関係者が景気良く買っていく。

 日本人たち

 魔法使いの徴兵は、徴兵制でなく、志願制でもなかった。

 選出法は、魔法社から魔法使いOBの猟官制へと移行していく。

 中国人は、幼少なら日本人として育てやすく、

 貧乏であれば、金次第で引き抜きも容易だった。

 そして、倫理的に問題ありとされhながら、ハミハラの餌も求められた。

 中国人なら良いのか、というわけではないものの、

 日本の犯罪件数が減少している中、

 ハミハラの仕事は増えていた。

 「み〜つ〜け〜た〜」

 生後、数か月の赤ん坊が公園に捨てられていた。

 捨てられるのなら、まだよく、

 中国大陸だと、喰われることもあった。

 「生体素粒子は、どのくらい?」

 「4倍以上だよ。すげぇ」

 「・・・87gくらいか」

 「生まれたてで、この生体素粒子の質量はいいねぇ」

 「むしろ、俺たちがガキに呼ばれた気もするね」

 「喰命鬼に化けないだろうな」

 「そん時は、そん時だよ」

 「国益のためだからって魔法使いばかり、寿命を犠牲にするのって嫌じゃん」

 「初期の魔法使いは悲惨だったからね」

 「国益のため、生体素粒子をボロボロにされて殺されたようなものだし」

 「かわいそうだったからねぇ」

 日本人たちは、周りを見渡し、

 「まぁ いいや・・・」

 赤ん坊を拾う。

 日本に里親候補が待っていた。

 

 

 チリ議会は、アメリカ資本の銅山国営化を否決。

 チリ政府は日本資本優遇を決め、

 日本資本は、チリに入り込み、新鉱山の開発を進める。

 新鉱山開発は、アメリカ資本の銅山の価値を相対的に押し下げ、

 社会的な敵意に囲まれ、利潤を押し下げてしまう。

 日本資本から借り入れによる公共投資は進み、チリの近代化は進んでいく。

 日本は、近代化ししていながら、貧富の格差が小さく、一億総中流と言われ、

 共産主義の浸透も弱かった。

 日本から、はるかに遠いチリが共産主義あろうと資本主義であろうと構わず、

 利権になる資本投資してしまう。

 貧富の格差の大きなアメリカ合衆国は、共産主義に拒否反応を起こしやすく。

 かといって、極東権益地を守るため、日本との関係を悪化させるわけにもいかず、

 歯噛みすることになった。

 

 

 この年、津軽海峡トンネルと宗谷海峡トンネルが完成し、

 日本列島縦断鉄道が完成する。

 採算性で言うと、恐ろしく安く建設され、

 トンネルの二階を電気自動車が行き来し、下を新幹線が行き来した。

 そして、海底トンネルの完成と合わせ、

 日本でガソリン・ディーゼル自動車の規制が完全撤廃される。

 無論、状況的に電気自動車優勢は変わらず、

 世界の趨勢から取り残されていた。

 「ようやく日本経済の重心を北に押しやれるよ」

 「しかし、アメリカ権益地産業が軌道に乗ると輸出が低下しそうだ」

 「日本経済を内需に切り替えるしかないよ」

 「内需だと、庶民側に金をばら撒く事になるから、インフレになるよ」

 「ところで海底トンネルの建設費が実は、10分の1だった噂が流れているけど?」

 「まさか、いくらなんでもそれはないでしょう」

 「事故がなく、あっさり、掘り進めたとか?」

 「事前調査の結果でしょう」

 「まぁ 確かに微妙にずれはある気がしますがね」

 

 

 宇宙ステーション “アーリア” から宇宙艇が切り離され、

 ソビエトソユーズ11号に接舷する、

 そして、空気を供給し、修復作業を行う。

 ソ連の宇宙船ソユーズ11号で空気漏れ事故が発生し、

 ドイツ宇宙艇によってロシア人の乗員3人全員が救出される。

 

 

 三陸基地

 日本の潜水艦は、斥力(反重力)装置が組み込まれ、

 魔法の杖の構造が組み込まれていた。

 その気になれば、空中を飛び、宇宙にも行ける。

 斥力圧のラムジェット推進であり、

 主兵装の艦首6門は、魚雷発射管を兼ねた斥力圧の集束レーザービームであり、

 魚雷は、魚雷型魂魄機で艦載戦闘ゴーレムと言えるものだった。

 魂魄機は、魔業と科学技術の粋を集めたものだった。

 チタンフレーム、カーボンナノシート、シリコンナノシートを複合的に組み合わせ、

 魔法の杖、斥力(反重力)装置を組み込んだ一品だった。

 試作中の全長3m×全幅1.4mの人型戦闘ゴーレムが立っていた。

 「吾妻ハヤテ君。古鷹ミホ君。これが新型人型ゴーレムだ」

 「真田さん。なんとなく中途半端な大きさですね」

 「まぁ 魚雷管から射出できる大きさだよ」

 「無理に魚雷管に入れる必要があるんですか?」

 「垂直発射もあるがね。ほら、潜水艦が深く潜れなくなるだろう」

 「それでレーザービーム砲兼魚雷発射管ですか?」

 「一応、潜水艦だし、そういうことだ」

 「もう、地球の国が相手なら負ける気がしないな」

 「だがガイアの魔物が相手だと、厳しいらしい」

 「だから、対地制圧用戦闘ゴーレムですか?」

 「まぁ 自律コンピューターと遠隔操作で補助するがね」

 「どうしても、魔法使いの遠隔操作が頼りになる」

 「「・・・・」」

 「じゃ 吾妻君。頼むよ」

 「はい・・・」

 魔法使いが妙な一体感を感じながら、

 新型ゴーレムに生体素粒子を送り込んでいく・・・

 !?

 どさっ!

 「あ、吾妻君」

 魔法使いが倒れ、

 !?

 「げっ うそっ!」

 古鷹ミホは、新型ゴーレムを凝視する。

 大騒ぎとなった。

 医務室

 数刻後、吾妻ハヤテは、目を覚ました。

 「・・・死ぬかと思った」

 「ったく慌てたわよ」

 「一体どうしたんだ?」

 「真田さん。生体素粒子が戦闘ゴーレムに全部移ってしまったよ」

 「・・・・」 真田

 「やっぱり」 ミホ

 見ていたもう一人の魔法使いも他人事ではない。

 「ほ、本当に戦闘ゴーレム側に生体素粒子が移動してしまったのかね?」

 「あんなに相性が良いとは思いませんでした」

 「なるほど・・・」

 「じゃ 老化した時は、向こうに移れば、ずっと生きていられないか」

 「そんな。まるで牢屋ですよ。せめて、スピーカを付けてくださいよ」

 「吾妻君。そういう問題なの?」

 「普通に喋れないのは嫌だろう」

 「ていうか、どうせなら人造人間に移りたいよ。あんな3m級のゴーレムなんて」

 「いや、ここは、いっそ、潜水艦とか、バルカン爆撃機とか、CF105アローとか」

 「絶対嫌です。人造人間にしてください」

 「・・艦魂」

 「バカですか、あんたわ」

 「だって、機械の方が長生きだし」

 「機械に移ったんじゃありません」

 「魔法の杖の構造が相性が良かっただけです」

 「んん・・・となると、珍しい現象だな」

 「ええ、万に一つの相性ですかね」

 「んん・・・しかし、相性さえ合えば、無敵の魔法使い軍団か、悪くないな・・・」

 「あ、吾妻君。どうだろう・・・」

 「いやです」

 「まだ何も言ってないだろう」

 「しばらく、戦闘ゴーレムに入ってくれないか、でしょう」

 「さすが魔法使い」

 「いや、真田さん。もう、あんたの人格だから」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・創世記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 神である主は、土地のちりで人を形造り、

 その鼻に生命の息を吹き込まれた。

 そこで、人は生きものとなった。

 神である主は、東のエデンに園を設け、

 そこに主の形に造った人を置かれた。

 神である主は、その土地から見るに好ましく、

 食べるのに良い木を生えさせた。

 そして、園の中央に生命の木と善悪の知識の木とを生えさせた。

 エデンの園を潤すため一つの川が出ており、

 そこから分かれた四つの源となっていた。

 

 第一の川の名はピションであり、ハビラの全土を巡って流れていた。

 そこには、良質の金があり、ブドラフと縞メノウもあった。

 第二の川の名はギホンであり、クシュの全土を巡って流れていた。

 第三の川の名はヒデケルで、それはアシュルの東を流れていた。

 第四の川、それはユーフラテスである。

 神は、人をエデンの園に置き、そこを耕させ、守らせ、

 人に命じて仰せられた。

  「あなたは、園のどの木からでも思いのまま食べてよい。

  しかし、善悪の知識の木からは取って食べてはならない。

  それを取って食べるその時、あなたは必ず死ぬであろう」

 その後、神は仰せられた。

  「人が、ひとりでいるのは良くない。わたしは彼のために、彼にふさわしい助け手を造ろう」

 神が土から、野の獣と空の鳥を形造られたとき、

 どんな名をつけるか見るため、人のところに連れて来られた。

 人が生き物につける名は、その名となった。

 こうして人は、全ての家畜、空の鳥、野の獣に名をつけた。

 

 人にはふさわしい助け手が見あたらなかった。

 そこで神である主は、深い眠りをその人に下されたので彼は眠った。

 それで、彼のあばら骨の一つを取り、そのところの肉をふさがれた。

 こうして神である主は、人から取ったあばら骨で、一人の女に造り上げ、

 その女を人のところに連れて来られた。

 すると人は言った。

  「これこそ、私の骨からの骨、私の肉からの肉。

  これを女と名づけよう。これは男から取られたのだから」

 それゆえ、男はその父母を離れ、妻と結び合い、

 ふたりは一体となるのである。

 そのとき、人とその妻は、ふたりとも裸であったが互いに恥ずかしいと思わなかった。

 さて、神である主が造られたあらゆる野の獣のうちで蛇が一番狡猾であった。

 蛇は女に言った。

 「“あなたがたは、園のどんな木からも食べてはならない” と神は、本当に言われたのですか?」

  女は蛇に言った。

 「私たちは、園にある木の実を食べて良いです。

 しかし、園の中央にある木の実について、

 神は、

 『あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。

 あなたがたが死ぬといけないからだ』

 と仰せになりました」

 そこで、蛇は女に言った。

 「あなたがたは決して死にません。

 あなたがたがそれを食べると、あなたがたの目が開け、

 あなたがたが神のようになり、善悪を知るようになることを神は知っているのです」

 女が、その木を見ると、まことに食べるのに良く、

 目に慕わしく、賢くするという、その木はいかにも好ましかった。

 それで女は、その実を取って食べ、いっしょにいた夫にも与えたので夫も食べた。

 このようにして、ふたりの目は開かれ、

 それで彼らは自分たちが裸であることを知った。

 そこで、彼らは、いちじくの葉をつづり合わせ、自分たちの腰のおおいを作った。

 そよ風の吹くころ、彼らは園を歩き回られる神である主の声を聞いた。

 それで人とその妻は、神である主の御顔を避けて園の木の間に身を隠した。

 神である主は、人に呼びかけ、彼に仰せられた。

 「あなたは、どこにいるのか」

 彼は答えた。

 「私は園で、あなたの声を聞きました。それで私は裸なので、恐れ、隠れました」

 すると、仰せになった。

 「あなたが裸であるのを、だれがあなたに教えたのか。

 あなたは、食べてはならない、と命じておいた木から食べたのか」

 人は言った。

 「あなたが私のそばに置かれたこの女が、あの木から取って私にくれたので私は食べたのです」

 そこで、神である主は女に仰せられた。

 「あなたは、いったいなんということをしたのか。」

 女は答えた。

 「蛇が私を惑わしたのです。それで私は食べたのです」

 神である主は蛇に仰せられた。

 「おまえが、こんな事をしたので、おまえは、あらゆる家畜、あらゆる野の獣よりも呪われる。

 おまえは、一生、腹ばいで歩き、ちりを食べなければならない。

 わたしは、おまえと女との間に、また、おまえの子孫と女の子孫との間に敵意を置く。

 彼は、おまえの頭を踏み砕き、おまえは、彼のかかとにかみつく」

 女にはこう仰せられた。

 「わたしは、あなたのみごもりの苦しみを大いに増す。

 あなたは、苦しんで子を産まなければならない。

 しかも、あなたは夫を恋い慕うが、彼は、あなたを支配することになる」

 また、アダムに仰せられた。

 「あなたが妻の声に聞き従い、食べてはならないとわたしが命じた木から食べたので、

 土地は、あなたのゆえに呪われてしまった。

 あなたは、一生、苦しんで食を得なければならない。

 土地は、あなたのために、茨とアザミを生えさせ、

 あなたは、野の草を食べなければならない。

 あなたは、顔に汗を流して糧を得、ついに、あなたは土に帰る。

 あなたは、そこから取られた塵だから、塵に帰らなければならない」

 さて、人は、その妻の名をエバと呼んだ。

 それは、彼女がすべて生きているものの母であったからである。

 神である主は、アダムとその妻のために皮の衣を作り、彼らに着せてくださった。

 神である主は仰せられた。

 「見よ。人は我々の一人のようになり、善悪を知るようになった」

 「今、彼が手を伸ばし、命の木からも取って食べ、永遠に生きないようにしなければならない」

  そこで神は、人をエデンの園から追い出され、

 人は自分がそこから取り出された土を耕すようになった。

 こうして、神は人を追放し、

 生命の木への道を守るため、

 エデンの園の東に、ケルビムと回る炎の剣を置かれた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・創世記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 瑞樹州

 ガイア研究所

 “もし、ガイアが創世記におけるエデンとすれば、人類の発祥はガイアとなる”

 “神が土と塵で人間を作ったとしたら、それは人間の正体は、自律型ゴーレムであり”

 “神と人間の決定的な関係を表わすものである”

 “しかし、既存の魔法使いとゴーレムの関係より、はるかに高度であると言わざるを得ない”

 “神に対し、自律し”

 “生体素粒子を連綿と子孫に伝える再生産は思いもよらないのである”

 “神と人間との関係は、既存のゴーレムより数段上の関係と推測する”

 “気になるのは、神がエデンの東を閉ざしていることであり”

 “つまり、地球はエデンに対し西側に存在し”

 “ガイアは東側に存在する、ということになる”

 “もし仮にケルビムと回る炎の剣がガイアに至る扉であるなら”

 “日本人の一部は、そこに帰還したといえる”

 “そして、扉はあるものの、閉ざされている”

 “これは、一つの推論であり、保証するところではない”

 “また4つの川が流れていると書かれている”

 “第一の川の名はピションであり、ハビラの全土を巡って流れている”

 “そこには、良質の金があり、ブドラフと縞メノウもあった”

 “第二の川の名はギホンであり、クシュの全土を巡って流れていた”

 “第三の川の名はヒデケルで、それはアシュルの東を流れていた”

 “第四の川、それはユーフラテスである”

 “ガイアは、エデンの可能性があり”

 “あるいは、ピションであり、ハビラの可能性もある”

 “これを4つの4次元。時空連続体と見ることもできる”

 “そして、地球は、その一つと考えても良いだろう”

 “そして、次元を超える川越えは、困難であると言える”

 “召魂(精神)連絡。召魄(物質)移動で、僅かでも川を越えるなら多くの寿命を失う”

 “まして、召喚(人間)移動は可能であるものの、莫大な寿命を失うため”

 “さらに困難である”

 “確かにガイアは、命の木に至る道があるものの”

 “代償が寿命では、到底、往来できるものではないのである”

 “また、行った先のガイアは、とても楽園と言えない、危険な世界といえた”

 “地球とガイアの間に時空連続の平行連続の「壁」”

 “この場合は、「川」があり”

 “二つの平行連続の扉が開かれるケルビムの時があり”

 “命を危険に晒す、回る炎の剣が存在するのである”

 “気になるのは人間が食べたとされる 「善悪の知識の木」 の実である”

 “我々の内面にガイアから追放される資質が内在しているのであろうか”

 “それとも、聖書の話しは、タダの絵空事であろうか”

 “注意すべきは、聖書が人類にとって、もっとも古い古書であり”

 “無視すべき本ではないということである”

 “善悪の知識の木。その実の正体は “自己矛盾” であると推測される”

 “矛盾の主な発生は、利己主義と利他主義の間で起きる摩擦と軋轢であり”

 “個人のみで存続しえるのであれば、起きないのである”

 “利己的でなく、矛盾が小さければ、魔力が大きくなる”

 “これは、魔法使いの資質で確認されている”

 “しかし、強大な魔力を持つ魔物は、利己主義的な側面に気付く”

 “それは、集団、組織、社会を構成しなくて済むほど強大な魔力を持ち”

 “自己完結型の個体であるからに他ならない”

 “その資質は、言うなれば一つの目的しか持たない傀儡的な印象を受ける”

 “つまり、より高次元の存在に操られている、という可能性であり”

 “天使の可能性である”

 “自己矛盾に苦しむ人間は、逆に操り人形ではない可能性があり”

 “二つの意志の間で抵抗している可能性と思われる”

 “これは、逆説的であり、神と人間の関係を示唆するものである”

 “人類は、蛇にそそのかされ “善悪の知識の木” の実を食べたことであり”

 “天使になり損ねた種族かもしれない”

 “それは、高度なアリ社会といったものかもしれない”

 “あるいは、異質で望むべくもない蛇の資質を受け継いだ可能性もある”

 “そして、他のエルフ族、鬼族、ドワーフ族も似たような資質があり”

 “彼らを人族と合わせて川と見ることもできる”

 “彼らも同じように 「善悪の知識の木」 の実を食べたのかもしれない”

 “つまり、人族は、エルフや鬼と同類の可能性もある”

 “これも、推測であって、なんら保証すべきものはない”

 “しかし、人族がガイアへ向かうことで、回答を得られるのではないかと考えられる”

 “そう、既に魔法使いは生命の木”

 “魔法の杖を手にしているかもしれないのである”

 “魔法の木は生体素粒子のを増幅させる力があり”

 “相性が良ければ、魔法の木そのものが生体素粒子の器になる可能性を秘めている”

 “それは新しい実(身)であり”

 “人間自身が魔力を帯び、魔物になる事を意味しているのである”

 “とはいえ、人の生体素粒子の絶対量が少ないことから、低いレベルでの進化であり”

 “血統を失ってまで行使すべき個別進化でないと考えられる”

 “しかし、魔法使いは、永遠の生命に対し、一歩踏み出していると考えられる”

 “そして、土と塵から人間をゴーレムの如く作った神に対し、一歩近付いたのである”

 “生命の木に辿り着けば、人族は、神の傀儡から逃れられる可能性を秘めるのである”

 “もう一つ、蛇の正体である”

 “ガイアの魔物であり、神に準じる存在の可能性もある”

 “無論どっちの味方というわけではない”

 “しかし、どちらの傀儡とも御免蒙りたいのが本音であろうか”

 “とはいえ、最高峰の魔法使いでもゴーレムとの関係で”

 “神と人類の関係を模倣することができないのであり”

 “力関係において、人とアリ以上にあると推測される”

 

 

 バルカン連邦

 基幹産業を握っているのは日本人だった。

 そして、歴史的なしがらみが少ないのか、日本語熱は高まり、

 言語人口は、ルーマニア語を抜き、

 バルカン連邦で、もっとも話されている言葉になっていた。

 とはいえ、まだ総人口の3分の1ほどであり、

 多国言語国家のマイナス要素、足枷になっている。

 そして、カフカス連邦の日本語人口も2分の1を占め、

 相乗効果により、さらに日本語人口は増えそうだった。

 この事は、1998年、総選挙による完全独立に影を落としていた。

 実のところ、バルカン都市群は、バラバラでありながらも国民総生産は伸び、

 アメリカ、日本、ドイツ帝国、バルカン連邦、イギリスと第4位を占め、

 オスマントルコ帝国支配より安定し、

 オーストリア・ハンガリー帝国時代より繁栄していた。

 基幹産業を握る日本人が全体を支配していたものの、

 諸民族は、都市ごとに自由を謳歌していたのだった。

 首都 サラエボ

 日本人が公園をプラプラと歩いていた。

 日本人は、白人と比較するとどうしても体格的な落差が大きく。

 同じ年齢でも頭一つ低いことはざらであり、

 なんとなく、年下と歩きたくなるのである。

 目の前に車が急停車すると、

 !?

 手が伸び、あっという間に後部座席に引き込まれてしまう。

 『げっ 誘拐されちゃったよ』

 そして、急発進した途端にブロックがフロントガラスに叩きつけられ、

 運転手を直撃。

 そのまま、車は、土肩に乗り上げ、ひっくり返る。

 

 某ファーストフード店

 目の前で8頭身美人のジーンリッチ人種がハンバーガーを食べている。

 「おみごと・・・」

 「何が?」

 「フィーネが、と、とっても美人だから」

 「まぁ ユウヤって、おませな小学生ね」

 日本人は、高校生でさえ、小学生と間違えられたりは珍しくない。

 「あ、ありがとう、助けてくれて」

 「ぼくぅ 誘拐されそうになるなんて、お金持ちなのね」

 「親は、テレビ局の支長だよ」

 「まぁ 一人で歩いて大丈夫なの?」

 「誘拐なんて滅多にないから」

 「そう、珍しいところに出くわしたわけね」

 そう、このジーンリッチの観光客が誘拐した車にレンガを投げた娘だった。

 とはいえ、脚本ドイツ、

 犯人役は、無知で愚かで騙された反日民族主義組織だった。

 『さてと、同い年なんだけど、どうしたものかな』

 魔法使いたちは、反日勢力を根元から断ち切っていた。

 

 

 

 

海洋安保庁 瑞嵐型 ヘリ巡視船 2隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離
14000 210×32×7 100000 30 20kt/8000海里
FCS 70口径40mm砲×4基 ヘリ × 4〜12機
瑞嵐  、 瑞雪

 瑞嵐の飛行甲板にイギリス製の新型ヘリが着艦する。

アグスタウェストランド リンクス
重量/全備重 全長×直径×全高 hp 速度 航続距離 武装 乗員 乗客
3291/5330 13.33×12.80×3.67 1000×2 289km/h 686km 短魚雷×2 or 対艦ミサイル×4 2 11
TOW対戦車ミサイル×8

 イギリスは、新型ヘリを売り込みに来ていた。

 日本側は、別段欲しくもなく、

 買わないと疑われるから、どうしようかという、態度だった。

 瑞嵐 船橋

 「素晴らしいヘリです」

 「・・・準軍隊がヘリ空母を保有しているとは羨ましい限りですな」

 「日本政府は戦争する気がないようです」

 「日本民族は、凶暴な戦闘民族だと疑っていましたが、どうやら、誤解だったようですね」

 「ええ、まぁ・・・」

 「日本は、最新のヘリ空母を補助兵器にしてしまうような兵器があるのでしょうか?」

 「まさか、純粋に国力の上澄み分で国防を行っているだけですよ」

 「日本の国力。随分大きいですな」

 「巨大資本が少ない割に経済力はアメリカに匹敵している」

 「運が良いだけでしょう」

 「運ねぇ・・・」

 

 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異境ガイア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 個体として脆弱な人間は、集団防衛で身を守る。

 集団防衛だった組織は、次第に形を変えて変質し、

 物々交換だった物流は、紙幣を介在させる、

 需要と供給は、公共施設などの産業を興し、

 個人も社会も効率性から機能化し、全体に組み込まれやすくなった。

 脆弱な個体として、よりよい人生を送ろうとするなら、

 組織の頂点に立つか、自由を得られる資本を手に入れる、

 

 人鬼村は、そういった社会的な側面を持ちつつも、別の価値観が存在する。

 人類が至高の生命体でないこと、

 喰うより、喰われることがあることだった。

 危機意識は、個人の成功より、村の総力が重要視されやすくなり、

 権力者と富裕層にも対処を求められ、

 人鬼村の人々を種族を越えた結束で固めさせる、

 地球の科学技術は、Aクラスの魔物が造る魔法物質を辛うじて解析し、

 手工業で生産しようとしていた。

 

 人鬼村は、優秀な発電所と製鉄所を有し、

 ガイアで最も近代化していた。

 とはいえ、命知らずで優秀な魔法使いが多ければ補える差であり、

 相対的なモノと言える。

 人鬼村は近代化に伴い、徐々に人口を増やし、

 周辺の未開地を切り開いていた。

 人鬼村魔法研究所

 魔法と魔法の杖が存在し、飛行石(斥力物質)があり、

 鉄が希少資源の惑星ガイアは、近代化が遅れている。

 未開地開発の戦利品がテーブルに並んでいた。

 「・・・Aクラスの魔物は、物質を圧縮強化させている」

 「魔法使いの強化魔法がそれですが桁違いに強大な圧縮ですね」

 「これなんか、タダの水を固めたモノですよ」

 所員は、その氷の刃を弄ぶ、

 「水を1万気圧で圧縮させると、体積は約半分の常温の氷になる」

 「そして、10万気圧の圧縮を水に掛けると、数百度を超える氷の刃物になる」

 「まともに食らうとズタズタにされ、蒸発させられるか、燃やされるな」

 「魔法使いはできるかね?」

 「一世は無理ですね」

 「二世なら血の半分とカーボンナノシートと寿命を削れば常温の氷くらい造れるかもしれませんが・・・」

 「Aクラスの魔物が武器に使えばタダの枝でさえ、大和に穴があくからな」

 「いまのところ、地球からの斥力物質と魔法の杖を使った兵器体系で未開地との均衡が保たれていますが」

 「そろそろ、次の移民を日本から集いたくなりますね」

 「まったくだ。しかし、藪蛇も怖いからな」

 「日本人が増え過ぎると害虫駆除されかねん」

 「この世界にいると自信喪失させられますよ」

 「それより、地質調査は?」

 「惑星ガイアは、4つ以上の世界と周期的」

 「あるいは不定期、あるいは偶発的に繋がるようです」

 「その世界も地球と同様に一部の利権だけが扉の存在を知ってる可能性があるな」

 「ええ、最大勢力のエルフ族も、総力という感じではないですからね」

 

 

 

 妖魔、魔物、妖怪・・・

 いろいろな呼び方をされる生物がいた。

 炎狐 (えんこ)

 人族、エルフ族、鬼族、ドワーフ族に害を成す存在であり、

 自覚はあるものの、

 餌が天敵をどう呼ぼうと構わないのだが、一応、餌も知的生命体なのである。

 もっとも、餌の質は、平均21gとショボく、

 その割に手強いのである。

 なので非常食用に増えるままに任せている。

 彼は、鬼族に化け、彼らの中に入っていく、

 鬼族たち

 「人族の世界の扉は、開いていないのか?」

 「閉まっている扉を無理やり開いているらしい」

 「人が死ぬのではないのか」

 「んん・・・むかし、召魂術で地球と交信したがね。大変な寿命を喪失している」

 「追加の移民が来るだろうか」

 「さぁあ、寿命を喪失させてまでやりたくないだろう」

 「我々の世界も閉じているからな。どこか、扉の開いた世界はないだろうか」

 「仮にあったとしても、未開地の魔物を押し返せるだけの力に達しないよ」

 「ドワーフ族は?」

 「あそこも、閉じてたな」

 「じゃ 一番強いのはエルフ族か」

 「んん・・・」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 

 01/01 カバトット

 01/03 アンデルセン物語 (楽天)

 02/15 珍豪ムチャ兵衛

 04/03 アニメンタリー 決断 (楽天)

 04/08 さすらいの太陽

 09/01 新オバケのQ太郎

 09/25 天才バカボン

 10/01 世界ものしり旅行

 10/03 ふしぎなメルモ

 10/04 さるとびエッちゃん

 10/06 アパッチ野球軍、国松さまのお通りだい、

 10/07 ゲゲゲの鬼太郎、スカイヤーズ5

 10/24 ルパン三世 (楽天)

 10/30 原始少年リュウ

 

 『魔業の黎明』は、既存の世界相手どころか、

 某アニメのあんな悪の組織、

 某特撮のあんな侵略者が来ても、大丈夫でしょうか。

 この年、特撮の 仮面ライダー (楽天)  も始まります。

 たぶん、ショッカーも自力排除可能です。

 むしろ、違法集団の法務省そのものがショッカーでしょうか、

 さすがファンタジー系火葬戦記。

  

  0次元 1次元(点の連続) 2次元(線の連続)
  平面
       
       
  3次元(平面の連続) 4次元(空間の連続) 5次元(並列空間の連続)
  立体・空間 時空連続体 平行次元連続体
第01位相 個体 宇宙 ハビラ土地 クシュ土地 アシュル土地 宇宙(地球?)
第02位相 液体 時間 ピション川 ギホン川 ヒデケル川 ユーフラテス川
第03位相 気体 平行次元宇宙
第04位相 プラズマ 波動
第05位相 霊界・零体    
第06位相 生体素粒子    
第07位相 斥力物質 (縞メノウ?)    
第08位相 魔法の杖 (ブドラフ木?)    
第09位相 (金?)    
第10位相      
第11位相      
第12位相      
       
  6次元 7次元 8次元
  立体次元連続空間 6次元の連続空間 7次元の連続空間
  多次元宇宙    

 

 

 

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第30話 1970年 『主義者は人を殺す』
第31話 1971年 『生命の木』
第32話 1972年 『統制と淘汰と群れ』