月夜裏 野々香 小説の部屋

    

ファンタジー系火葬戦記

 

『魔業の黎明』

 

第32話 1972年 『統制と淘汰と群れ』

 不安からの脱却、孤立することの恐怖、

 生存圏の確保が対立の素因となり、聖域拡大が戦争の原因になるとしたら、

 日本は、世界に対する野心の半分を喪失させていた。

 己れの損を恐れる人間は、他者を損させる人間であり、

 横領、詐欺、泥棒、強盗、掠奪、侵略を繰り返すなら、

 最終的に法が敵となり、世の全てを敵となしてしまう。

 日本政府は、法的に立証できない手段で国家の優位性と、

 民族の生存圏を確保していたのである。

 それは、倫理的、道義的に不正であっても目に見えない分野での事であり、

 日本国民の大多数は、魔業の存在を知らないでいた。

 日本国民の多くは、努力とプラスアルファする、幸運の連続に恵まれてると感じ、

 国際情勢の流れが偶然、日本に味方し、上手く行っていると勘違いしていた。

 そのため、日本国民の一部は、日本政府の平和志向、

 そして、無策ぶりにヤキモキしていたのである。

 実のところ、日本政府は、覇権や世辞に関わる気もなく、

 もっと別の問題に関わっていたため、のらりくらりしていたといえる。

 霞が関

 「なに読んでんだ?」

 「戦国日本軍」

 「ふっ 惜しい」

 「あはは・・・」

 「戦記モノが増えてきたな」

 「最新のは、日英印軍でバルカン半島攻略中、アメリカが日本に宣戦布告してきたな」

 「アメリカの極東投資中にか? ソビエトと国境を接しているのに?」

 「軍事一色。政治・外交・戦略・和平抜き、聖戦で突っ走る」

 「政治、経済、外交、交易を知ってる者は失笑するけどな」

 「軍国坊やは面白がるよ」

 「どうもマスメディアは刹那的な戦争好きだな」

 「民族的な自己満足と正義の日本軍で食っている人間も少なくないからな」

 「日本最強と恐怖を煽って、部数と利益を伸ばしたいわけか。狼少年は、いやだねぇ」

 「こういう連中は、収入が絡んでるし、自己正当化で正気を失ってる」

 「まともな事を言うと左翼だの売国奴だの攻撃してくるよ」

 「酷いと、半島を占領されると自動的に日本占領と信じているし」

 「日本軍は、マスコミと国民に踊らされて満州事変をやらかしただの言うやつも出てくる」

 「戦前なら皇軍だぞ」

 「国民やマスコミに動かされるなど、あっていいわけがない」

 「というか、しっかり言論統制していたし、歯向かう者は徴兵で殺したし」

 「まぁ それで予算拡張なら嬉しいが、軍官僚を舐めてるというか・・・」

 「不敬罪と統帥権侵犯で、あの世行きだがな」

 「魔業の取り合いで陸海軍が仲違い、そのまま、不参戦にもつれ込んで」

 「天皇を座乗させた長門で、陸軍省砲撃で統合しなかったらヤバかったけどな」

 「ふっ もうカルトだ。手が付けられねぇ」

 「しかし、軍事的恐怖を煽って軍事費増大だと、社会資本が消えて本も売れなくなるだろうに」

 「戦運が大きくなれば抱えている在庫が売れる」

 「それで、軍が言論統制したら言論の投身自殺だろう」

 「その後のことは考えられないし、目先の収益しか考えられない連中だよ」

 「一番売れるとしたら、核戦争はじまるの見出しだな」

 「あははは・・・しょうがねぇな。それより、問題があったって?」

 「例の扉、召魂・召魄のズレが増えてるらしい」

 「深刻なのか?」

 「んん・・・その辺の事は魔法使い頼りだからな、どうかな・・・」

 「まぁ 元々 もっと早く消えていたのが畝傍のせいで意識されて残っていたようなものらしい」

 「超自然現象と、人間に意識化されなければ宇宙は存在しないという傲慢な発想か」

 「ユングの発想はともかくとしてだ」

 「意識が高位位相に影響を与えているよ?」

 「厳密に言うと生体素粒子だな」

 「もっと、あの海域で調べるべきだろう」

 「アメリカとドイツの原子力潜水艦が常駐してるよ」

 「ちっ まだ嫌がるのか」

 「まぁ その気になれば押し分けて行くことはできるがね」

 「それで、扉が消えると、どうなるんだ?」

 「ガイア居残りは必要だよ。それどころか、増員も・・・」

 「んん・・・魔法使いの寿命が減ると精度と生産が落ちる」

 「旧式潜水艦でなく、増員を満載で、最新型潜水艦を送るべきだろうな」

 「まずくないか?」

 「旧型を改造して、最新型に似せてしてしまうさ」

 「び、微妙だな」

 「どうせ、三陸の海軍基地は崖の中だし。活動は海の底だ」

 「しかし、むかしと違って、無知じゃない。ガイアに最新型を送っても不安だな」

 「まぁ 人員は1000人。潜水艦も2隻くらいは送らないとな・・・」

 「んん・・・」

 「次はいつ扉が出現するやら」

 「どうせなら、日本の近くにして欲しいね」

 「そうだな・・・魔物は怖いが・・・」

 

 

 旧式化した戦前の軍艦は、記念艦、あるいは解体され、

 新型の蔵王型巡洋艦と入れ替わっていた。

蔵王型 16隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離 乗員
8000 165×20×6.2 100000 32 20kt/8000海里 280
55口径120mm砲×1基 対空GWS1 シー・スラグMk1連装4基 対潜魚雷6発
70口径40mm砲×2基   ヘリ 1機
蔵王、鞍馬、斜里、阿寒。秋葉、神威、白馬、穂高
恵那、那須、阿蘇、須磨。雲仙、姫神、愛鷹、衣笠

 海軍は、領海に十分な性能を持つ軍艦を必要な数、振り分けなければならない。

 無論、それだけの戦力を配備できる国は、世界最強の国であり、

 それも、海軍力第二位以下の戦力が小さい場合だけだった。

 どこの海軍であれ、艦艇は、機能性を求められ、

 予算上、大型艦少量配備、中型艦中量配備、小型艦大量配備となる。

 通常、大型艦、中型艦、小型艦を組み合わせるものの、

 ほとんどの海軍国が必要と感じる戦力を揃えられないというのが実情なのである。

 日本は、中型艦中量配備を選択する。

 これは組織を統括する長のポスト数で中途半端であり、

 実戦部隊で人材不足を招いた。

 なので、領海全域の警備を担当し、

 広大な領海を数で補っていたのは海洋安保庁だったりする。

 雲仙 CIC 

 巡洋艦 雲仙を中央にレーダー・ソナーを立体投影した情景が映されていた。

 これだけでも情報統括力で隔世の観があり、

 列強と比べ、はるかに進んでいた。

 さらに付け加えるなら、3頭のイルカ。3頭のアホウドリからの情報を得られ、

 立体投影されていた。

 問題は、魔法使いが法務省統括であり、

 魔法使いの多くが製造、諜報、治安に取られている事で、

 実戦部隊に配置されていないことと言えた。

 そう、一個戦隊(4隻)に2人の魔法使いしか常駐していないのである。

 しかも、本業の製造ばかりでは飽きるであろうからと、レクリエーションを兼ねているのだ。

 55口径120mm砲から撃ち出された砲弾は最大射程22000mの距離を隔てた目標に飛んで行く、

 「・・・目標粉砕を確認」

 「「「「・・・・」」」」

 「最大射程で良く当たるな」

 「魔法使いは、もっと射程を伸ばせるらしいよ」

 「やれやれ、ミサイルの価値が低下するな」

 「155mm砲を搭載したくなるね」

 「155mm砲か、橋梁計算が根底から変わるな」

 「んん・・120mm砲なら攻守で使いやすい」

 「しかし、射程20kmで迎撃できても水爆の熱線の範囲内だ」

 「155mm砲なら射程40kmは行ける」

 「装甲の防御力を足せるなら、水爆からでも守れるだろう」

 「魔法使いなら、熱線を逸らせるんじゃないか」

 「魔法使いならね。常駐させられないのが痛いけど」

 「くっそぉ〜 法務省め」

 「寿命の問題を緩和できたというのに権益を一人占めしやがって」

 「潜水艦は、魔法使いが多いようですよ」

 「潜水艦艦隊は、海軍じゃない別組織だ」

 「最近は、潜水艦そのものを使い魔。ゴーレム化させる動きもあるようです」

 「兵器を魔法使いの玩具にするのか」

 「空恐ろしい気がしますね」

 「利点は?」

 「一人でも手足のように動かせる。でしょうか」

 「人件費は浮きそうだな」

 「いいんですか、そんなこと言って、我々はクビですよ」

 「ふっ 魔法使いの性格では、国は守れんよ」

 「魔法使いに毒気がないのは良いですがね」

 「魔法使いを人工的に作るという話しは?」

 「生体素粒子の質と量が絶対的に不足だそうです」

 「ジーンリッチとは違う形で品種改良すべきでしょうか」

 「しかし、人体が個体、液体、気体で動くとしてもだ」

 「より本質的な生体素粒子がどういうものか完全に掴めていないからな」

 「研究所の話しだと、生体素粒子の強い魔物は個体、液体、気体で無理があるとか」

 「無理といえないだけの生体素粒子があるのだろう。羨ましいほどだな」

 「こうやって、鉄の城に囲まれても、不安は強い」

 「どちらにせよ。こんな最新とは言えない軍艦に乗せられるとはね」

 「武装した身内、軍に対する押さえでしょう」

 「魔業を全く知らない司令官ほど怖いものはありませんから」

 「まぁ それは言えるがね」

 「わたしも初めて魔業を知らされた時は、憮然としましたからね」

 「俺もだ」

 「・・司令。旗艦アーク・ロイヤルから入電」

 「演習予定海域に入る前に、武官を交換したいそうです」

 「了解したと伝えてくれ」

 「アーク・ロイヤルのお守ですね」

 「しかし、最近は演習が多いな」

 「イギリスは、アメリカのスペースシャトル計画で焦っているのかもしれませんね」

 「んん・・・予算を宇宙に取られると面白くないが、それだけとは言えないだろう」

 「・・・やはり、魔業の疑いは晴れず、ですか?」

 「まぁ 同盟国に知られても困るが、同盟国が無能だと困るし」

 「ばれないように偽装しないとな」

 「ええ」

 水上艦艇は、演習時、武官を交換させることが多く、

 魔業関連装備は、必要最小限に抑えられていた。

 

 

 瑞樹州

 円盤型(直径60m×全高10m)戦闘艦が設計されようとしていた。

 なぜ円盤型なのかというと平べったい方が階層が少なくて済み、

 円形は、スペースを有効に使え、最短距離で行き来出来る。

 さらに命中し難い利点も加算された。

 円盤型宇宙艦は、斥力(反重力)物質。魔法の杖。

 チタン。カーボン・シリコンナノシートなどの素材が予定される。

 究極の恒星間宇宙戦艦は、魔法使いの操るゴーレム宇宙戦艦だとも言われ、

 数百万年分とか、天文学的なほど寿命を消費させられるため、

 仮定の話し、空想上の産物となっていた。

 さらに大型になると、葉巻型へと変わっていく。

 これは、格納と修理改装がやりやすいと至極、もっともな理由だった。

 太陽系内宇宙船でさえ、最大の問題は、魔法の杖と飛行石の量と、

 何百年、何千年分の寿命が消費されるか、といえる。

 

 魔法使いはカーボン・シリコンナノシートを器用に操り、ゴーレムを作る。

 その光景は、神が塵で人型を作ったという、それに近い。

 ガイアで作られるゴーレムが武骨な出来なのに比べ、

 工場制手工業でカーボン・シリコンナノシートを製造し、

 それを素材に作ったゴーレムは洗練されており、

 機動性、強靭で数段上だった。

 魔法使いは、透明なシートに自分の血を垂らし、

 水を包み込むと人間の形に変えてしまう。

 魔法使いの先輩と後輩、

 「シートがあると楽だし、水を使うと動きが滑らかだね」

 「この透明な薄さと強靭なシートは圧倒的だよ」

 「骨格はどうやっているの?」

 「水を1万気圧くらいで圧縮させると体積半分くらいで、常温の氷になる」

 「氷だから土や金属より脆いけど、血が体を覚えているなら自己修復は速いよ」

 先輩の魔法使いがゴーレムに触れると槍に変形する。

 「だから血が覚えていないモノは、イメージしやすい単純な構造になってしまう」

 「凄い・・・」

 「まぁ 化学実験の結果で、魔力と生体素粒子の続く限りだけど」

 「気圧を掛けられるなら数百度の氷の槍で串刺しも可能かな」

 「できるんですか?」

 「生体素粒子が壊れてしまうから無理」

 「だけど、ガイアで、そういう魔物が確認されたことがあるらしい」

 「そういやつには、近付かない方がいいね」

 とはいえ、なのである。

 結局、生体素粒子の質と量がモノをいうのであり、

 素材の差は、同じレベルの魔法使い同士の戦いで顕著に現れるだけで、

 生体素粒子が10倍も違えば、意味を成し得ないのだった。

 「あっ それより、吾妻ハヤテのやつ、戦闘ゴーレム側に移ったんだってよ」

 「すげぇ〜」

 「よっぽど、相性が良かったんだな」

 「だけど、戦闘ゴーレムじゃな」

 「どうせ移るなら人造人間じゃないと」

 「これから人造人間型の予算を増やすらしいよ」

 「んん・・・ゴーレムは3体くらいしか動かせないし」

 「数が同じなら大型って、言ってたじゃないか」

 「“たまたま” が起こり得るなら、人造人間型もありと思ったんじゃないか」

 「実は、権力者の夢、不死狙いとか」

 「常人の生体素粒子じゃ 余程、相性が合わないと指一つ動かせないぞ」

 「そうだな」

 「常人の10倍以上の生体素粒子なら、少しくらい合わなくても動かせそうだけど」

 「んん・・生体素粒子が擦り切れるというか、くたびれそうだな」

 「魂ごと、生体素粒子が全部移動ってというのは、普通はないですよね」

 「よほど、相性が良くないとね」

 

 

 

 ドイツ第3帝国

 ドイツ帝国をローマ帝国の継承で言うなら、その建築技術の粋で成し遂げたと言える。

 ゲルマニアは、非人間的な側面があるものの、世界首都と言える風格を見せており、

 生産力の高い、ジーンリッチ人口は、急速に増し、

 ドイツ工業生産は、日本を除く列強を抜いていた。

 工業規格は、国力の一つの目安であり、それ以上ではない、

 しかし、工業規格のみで表せるなら、ドイツ帝国は世界最高といえた。

 世界首都ゲルマニア

 ポツダム公園の一角、角ばったモニュメントが並べられた広場があり、

 “ドイツ国内で亡くなった異邦人の墓” と呼ばれていた。

 異邦人を具体的に言うとユダヤ人のことであるが、ドイツ帝国は認めず。

 さりとてミュンヘンオリンピックで困ったのが戦後処理問題であり、

 一等地の “ドイツ国内で亡くなった異邦人の墓” の建設がドイツ帝国の最大譲歩といえた。

 

 ドイツ参謀本部

 ドイツの国家予算の固定費を除く余剰分の多くは、宇宙開発に向けられており・・・

 「ちっ! またあそこに金を取られた。宇宙軍でも作る気か」

 「この狭い、ドイツ帝国内に核ミサイルを置けってか」

 「ドイツ帝国にとってのフロンティアは、残念ながら宇宙しかないよ」

 「だからと言って、新規の師団創設もさせないとはね」

 「宇宙空間で自給自足させるには金がかかるのだろう」

 「それより、また、日本製部品を使うのか」

 「まぁ 価格比でね。たくさん作れる方がいいだろう」

 「日本は、ロクな車を造れないのに、何でまともな部品が作れる」

 「ドイツより採算重視なんだろう。それでいて、アメリカよりサービスがいい」

 「面白くない」

 「アメリカ、ソビエトに追随されているから、日本の部品を使うのは悪くないよ」

 「工業製品はドイツのはずだ」

 「宇宙開発やめて、工業開発できればね。もう少し資本の回収が良いんだが」

 「軍は?」

 「軍は必要なだけだ。可能な限り設備投資に回して維持する方がいいんだと」

 「日本の噂は嘘なんだろうな。そうじゃなきゃ バルカン方面の戦線は崩壊だぞ」

 「噂の半分でも本当なら、かなりヤバいらしいが信じられないな」

 「だが信憑性のある報告も受けているらしい」

 「だから、あの海域に原子力潜水艦を置いてるんだろう」

 「バカな話しだ。世迷い言で原子力潜水艦を危険に晒すなんてな」

 「アメリカ原子力潜水艦とお見合いだからいいじゃないか」

 「どっちもアホだ」

 

 

 イギリス

  01/30 北アイルランド・ロンドンデリー

        カトリック系住民のデモとイギリス治安部隊が衝突。

        市民13人死亡(血の日曜日)。

  02/02 アイルランドで反英運動。

        ダブリンで英大使館、イギリス人所有の事務所・住宅に放火。

 北アイルランド問題でイギリス社会は荒れていた。

 さざれ石ウォーターフロント

 日本庭園は、人気があり、日本人だけでなく、イギリス人も歩いていた。

 日本人たち

 「北アイルランドをどうしたものか・・・」

 「同盟国のイギリスがこけると、植民地が独立して権益が失われるな」

 「原因は、宗教の利権闘争でこじれてるからな」

 「キリスト教信者同士で殺意が湧くほど憎み合うとはね」

 「宗教で働き口が狭められたり、出世が閉ざされたら死活問題だし、殺意も湧くと思うよ」

 「宗教間の違いで殺し合うなんて」

 「日本は世俗が強いからね」

 「イギリスに協力している日本人もターゲットらしいけど」

 「じゃ 魔法使いを何人か派遣してもらわないと・・・」

 「広域感知は寿命の減りが早いから、むかしと違って嫌われるよ」

 「とにかく協力して欲しいらしいよ」

 「タダじゃいやだな。寿命が消えるんだから」

 「ていうか、生活保証してやればいいのに」

 「宗教でこじれるとそういう問題じゃなくなるから」

 「そうそう、生かされている状態じゃなくて、利権が欲しいわけだから」

 「とにかく何人か回してもらわないと・・・」

 

 

中国大陸   面積 台湾比 友好国
アメリカ極東権益地 満州、朝鮮半島

135万2437

   
軍閥七雄
(北京) 河北、山東、山西、河南、東・内モンゴル 106万8200 5.93 アメリカ
(上海) 江蘇、安徹、浙江、 34万4000 3.91 ドイツ
(重慶) 湖北、貴州、湖南 57万3800 3.19 中立
(成都) 四川 48万5000 1.66 中立
(広州) 広東、福建、江西、広西、 70万2900 4.06 日英同盟
(蘭州) 甘粛、青海、陝西、寧夏、西・内モンゴル 182万0800 1.32 ソビエト
大理 (昆明) 雲南 39万4100 1.23 中立
 
ウイグル ウルムチ ウイグル 166万0000 0.44 中立
チベット ラサ チベット 122万8400 0.34 中立

 アメリカ極東権益地

 東アジア最強の戦闘集団は、極東アメリカ軍と言えた。

 飛行場には、迎撃機F102デルタダガー、

 そして、爆撃軍のF4ファントム、F111 アードバーク、B56ストラトジェットが並び、

 国境線は、地の利を造成させた要衝にM95戦車が配備されていた。

 最新最強の兵装によって身を包み、

 極東ソビエト軍も、燕(北京)軍も敵ではなく。

 資本主義の牙城は揺るぎないように思えた。

 摩天楼が並び立つハルピンは、東京、大阪を超えていた。

 貧富の格差は力だった。

 貧富の格差を縮小すれば、その分だけ支配圏を失い、統一性が失われる。

 アメリカ合衆国の自由資本主義は、資本の支配と民主主義の二重性であり、

 富と公平の天秤のバランスを保つことで民を集約し、統合する。

 資本主義は、国内の貧富の格差を埋めることより、

 味方を作り利害を調整しつつ、権力構造を保とうとし、

 同時に貧富の格差を押し広げ、敵を作った。

 そして、貧富の格差を誤魔化すため、満州投機を行い、

 アメリカ合衆国の支配権を維持しつつ、莫大な富を満州にストックする。

 この手法は、欧州大陸で起こった市民革命の時も行われた。

 貧富の格差が縮まる事を恐れた資本家がアメリカ大陸へ資本を退避させたのだ。

 ロシア革命のときも資材を持ち逃げした貴族たちと同様であり、

 今度は、アメリカ合衆国の泡銭が極東権益地へと流れ込んだ。

 問題があるとすれば、不平不満の少ない日本人労働者が減少していること。

 莫大な私財の砦を持つことより、祖国の日本の地で安らかに生きたい。

 といった感性は、アメリカ人より日本人の方が強かった。

 とはいえ、1941年の極東権益地転売から31年を経ており、

 アメリカ人の入植も少なくなく、人口の3分の1を白人が占め始めていた。

 摩天楼が立ち並ぶ下に店が並び、

 英語表記、日本語表記、漢字表記の看板がならび、

 アメリカ車が走り回る。

 周囲にスラム街が作られ、

 地平の先までプランテーションが開発されていた。

 アメリカ資本が金を貸し、日本に建設させ、

 アメリカで生産されたモノが山と積まれ、大陸全域へと流れて行く。

 ドルで中国人を働かせ、対価を支払い、生活すると自動的にドルは回収されていく、

 この輪廻を断ち切って、成功し得た漢民族は極少数であり、

 法を作り排他特権の印紙を張るだけでアメリカ資本に金と権力と生産力が転がり込んでくる。

 財欲、名声、権力に動機の全てが支配される世界が広がっていた。

 北辺半分を共産主義国家に囲まれていても、共産化の兆しはなかった。

 世界最高峰のホテル

 日本人の政府高官たちが訪れていた。

 「・・・こりゃまた凄い、人が蟻のようだ」

 「まるで札束の上に立っているよな錯覚を起こしますね」

 「視界に入る全てを支配している気になるな。良い気分だ」

 「日本もこれくらいのビルを造りたいものですよ」

 「貧富の格差が広がると、犯罪が増える」

 「アメリカ社会の犯罪発生率は、急増中ですからね」

 「どちらにしろ、日本は津軽・宗谷海底トンネル完成で一息ついた」

 「あとは、土建族の縮小」

 「それとも、民間需要と海外需要に任せるしかないな」

 「これまでのような、うまい汁は、なしですかね」

 「まぁ 大陸需要が高まっているから、そっちに乗れば良いだろう」

 「ですがニクソン大統領は、日本の頭越しに中国6軍閥交易強化ですからね」

 「アメリカと中国6軍閥の結束強化か、足場がある強みだな」

 「中国需要に乗れない企業が出てくるのでは?」

 「じゃ 国内の欠陥住宅も増えるかもしれないな」

 「手抜き工事で利鞘を稼ぎ」

 「無駄な耐震補修工事で金を騙し取る業者が出てくるかもしれませんよ」

 「信用より金の方が大事になると、そうなるだろうね」

 「他人事のように」

 「政府が資金を回収できないビルを建ててもしょうがないだろう」

 「たとえ、欠陥無しのどんなに良い建物でもね」

 「じゃ 銀行と結託して、農民に借金を背負わせ、ビルを建てさせ、失敗させて根こそぎとか」

 「あははは・・・」

 「どちらにしろ、産業は大きくなりすぎたし、積極財政で国民に頭割も限界だろうね」

 「土建屋は、世界最高峰です。業種変更も縮小も嫌がりますよ」

 「日本は魔業がある。底上げできるだろう。自由に使えるわけではないがね」

 「魔法使いの寿命は、緩和されていると思うのですが」

 「素材の製造過程で寿命を消耗するから、法務省はそう思っていないのだろう」

 「法務省特権ですか」

 「まぁ 軍部集中の方が怖いがね」

 「寿命の件で公平を帰すなら、喰命鬼を確保しなければ」

 「期待したいが出現率は不明だよ」

 「しかし、現状で寿命を奪うなら、やはり外国人を買うべきだろう、大陸の足場は必要だよ」

 「むしろ、食命鬼に寿命を取られた方が安楽死に近いのですがね」

 「結果論では、そうだ」

 「しかし、だからといって、同じ日本人を無分別にはできないだろう」

 「したくなる日本人もいますがね」

 「あははは・・・その方が人口が増えるかもしれんしな」

 「ですがドイツ帝国の様に安楽死法を通すのは・・・」

 「無理だな・・・たぶん」

 「自殺志願者は、いるんですがね」

 「まさか、政府がほのめかすわけにもいかんだろう」

 「たしかに・・・」

 「それはそうと、国防省は、もっと魔法使いを欲しがっているようです」

 「バカが魔法使いの造る装備と工作機械の方が何百倍も価値があるのだ」

 「理屈でわかってても感情の問題で納得できないのでしょう」

 「ったくぅ〜 今時、戦争なんて流行らんよ」

 「ええ」

 「それは、それとして、極東権益地の日本人が減るのは面白くないな」

 「日米の利害不一致が増えると、国防費の負担が増しますからね」

 「国防省は喜べても、金を取られる他省は、面白くないだろうな」

 「ですが日本人の総人口1億1000万」

 「日本、瑞樹州、バルカン・カフカス。イギリス植民地と分けると・・・」

 「日本国内消費は当てにできないな」

 「いまのところ企業の競争力で圧倒しているので貿易黒字で補っています」

 「バルカン・カフカスの日本人はどうするのだろう」

 「基幹産業は、全て日本人が握っています」

 「しかし、総選挙後、日本人特権は失われるので、帰還組は増えるかもしれません」

 「内需が増えるのは助かるが・・・」

 「輸出先の外需が減るのは困りますね」

 「治安が安定しているし、支配圏が安定するのなら」

 「バルカン・カフカス維持もあります」

 「まぁ イギリス植民地も日本人街が買い支えているようなものだし・・・」

 「このままということもあるだろうな」

 「青い目の日本人は増えるかもしれませんね」

 「民族主義は、国粋主義を保ちやすいがね」

 「国益保護すると同時に国益を損なう弊害にもなるよ」

 「匙加減というか、何を持って日本人とするか定義付けをしなければなりませんね」

 「伝統を貶めれば繋がりを失い。伝統に固執すれば根腐れる」

 「民族の枠を縮小し過ぎれば自滅。拡大し過ぎても国体の破滅だ」

 「国際外交上、排他的に日本民族である事が良いわけでもないし」

 「かといってアイデンティティを破壊できるわけでもない」

 「微妙ですかね」

 「まぁ 徐々にというところだろう・・・」

 そして、室内にアメリカ通商代表部がやってくる。

 「事務次官。お待たせしました」

 「では、日本人労働者の件で、交渉を始めましょうか」

 そう、アメリカ極東権益地のモラルを保ち、

 生産性を押し上げていたのは、日本人労働者だったりする。

 資本主義世界であっても、その中核で求めるのは自制であり、

 自己犠牲、自己否定できる人間だった。

 

 

 瑞樹州

 魔法使いが作る即席ゴーレムは一時的なものであり、

 生体素粒子と魔法の杖のみの力で動かす。

 その場しのぎのモノでしかなく、時間とともに崩れ去っていく。

 ゴーレムに何十年もの持続性を持たせる、

 それには、総合的な魔力だけでなく、

 電子顕微鏡を用いた分析と緻密な素材構成が必要であり、

 人間と同様、代謝機能、生殖機能を持たせなければならなかった。

 チタンフレームの骨格。

 カーボンナノチューブ・シート。

 シリコンナノチューブ・シート。

 析力(反重力)物質、魔法の杖・・・

 考えられる限りの技術と素材が集められ、人体モドキが造られていた。

 男たちがため息をつく。

 「・・・まったく人間は良くできてる」

 「改造人間の方が楽ですかね」

 「ガイアの魔族は、自分の毛や血を混ぜて5mほどのゴーレムを作るそうだ」

 「そこまで細胞を自己増殖させられる魔法使いはいないな」

 「人族の生体素粒子の小ささと弱さにあるよ」

 「しかし、代謝機能だけで身体を動かしていることが社会を構成できる要因であり」

 「科学技術を発展させられる原動力では?」

 「だがガイアを知った今では、泣きたくなる現状だね」

 そして、研究所に数十人の若者が入ってくる。

 「準魔法使いたちか・・・今回は多いな」

 「最近、扉が不安定らしくて、強行召喚を検討しているらしい」

 「そりゃ まずい」

 「まぁ 喰命鬼が足りないから、魔法使いたちの寿命を消費させてしまうことになるな」

 「それは、もっと、まずい」

 「魔法使いの生産品のほとんどが準魔法使い向けのモノに切り替わるはずだ」

 「やっぱり、準魔法使いを出すと?」

 「魔業の根幹は人。生体素粒子だから、ほとんどは後天的な準魔法使いだろうね・・・」

 訓練に来た準魔法使いたちは、魔法剣を思い思いに使い始める。

 サファイア・レーザーの威力と射程は、生体素粒子の質と量に比例し、人それぞれだった。

 常識的に銃器類に対し、刀剣類は不利であり、

 弱い魔物に対しては都合が良かった。

 しかし、最新のオーラローブは小銃弾や拳銃弾に耐えやすく、

 ガイアは、FN FAL(7mm×43)とH&K MP5(9mm×21)が通用しない魔物が存在するのである。

 そうなると対抗手段は、多位相に対し影響を与えやすい、魔法剣となってしまうのである。

 そして、強い魔物だと拾った枝で、魔法剣の斬撃を止めてしまうのだから呆れる。

 ガイアでは、概ね拳銃より好まれ、

 総合でFN FAL(7mm×43)に劣ると言われ、

 H&K MP5(9mm×21)といい勝負とまで言われ、

 ガイアでの戦訓は、地球にも届けられていた。

 

 

 研究者の執筆

 “魔法使いは、どうしてゴーレムを動かせるのか”

 “魔法使い(生体素粒子)と魔法の杖(ブドラフ)の魔力が素材に干渉すると”

 “素材に生体素粒子のDNA・RNAに似た固有波長が形成される”

 “その固有波長が魔法使いとの差が相性である”

 “魔法使い(生体素粒子)と魔法の杖(ブドラフ)のズレが5パーセントなら”

 “魔法使いと素材のズレは、50パーセントにも及ぶ”

 “魔法使い(生体素粒子)、魔法の杖(ブドラフ)、素材の間で生じたズレが相性になる”

 “相性が近ければ器として優れ”

 “相性が合わなければ、魔力の浪費は大きくなる”

 “相性が一致するのなら、より優れた素材に生体素粒子を移すこともできるのである”

 “とはいえ、魔法の杖(ブドラフ)は、人体の素材として優れておらず”

 “相性が一致する素材の発生確率は低い”

 “現状は意図しても成功に覚束ない”

 “しかし、魔法使いが量産するカーボンナノシート、シリコンナノシートは多く”

 “いずれ、魔物に近い人造生命体が誕生する可能性もある”

 “とはいえ、人は生体素粒子で人体を動かしていない”

 “また人の生体素粒子は、人体を動かせるだけの力はない”

 “人体を動かしているのは、歴然とした代謝機能であり”

 “生体素粒子と魔法の杖の力だけでは自身の体すら機能しえないのである”

 “魔法使いでさえ、魔法の杖を使う事によってようやく、魔力を発揮できるのであり”

 “通常の3倍以上の生体素粒子を持たずして、ゴーレムを動かし得ないのである”

 “そして、その魔力によるゴーレムの機動も一時的なのである”

 

 人型ゴーレムは、外見において素材において、

 外見上、ほぼ人に似せることができた。

 法務省の統括司令室から遠隔操作も可能であり、

 コンピューター自律制御機能も有していた。

 しかし、科学技術は、あくまでもエネルギーの補助機構でしかなく。

 魔法使いがゴーレムの9割を支配している。

 「感情表現がいま一つだな。すぐにばれる」

 「無理ですよ。独立した生体素粒子でも入らないと」

 「まぁ それだって、自然とは程遠いね」

 「ひょっとして相性が良ければ、ゴーレムが魔物に支配されることはないだろうな」

 「そのために法務省がいろんな装置を組み込んでいる」

 「まぁ そうだが、これだけ強靭だと怖いからな」

 「基本的に登録されている魔法使いだけでしょう」

 「いくら丈夫でも、合わない服は着たくないですし」

 「まぁ 生体素粒子で、人体を動かしているわけじゃないから」

 「四六時中、魔力だけで人体モドキを動かすなんて無理でしょう」

 「人間は、血液、約4000ml。細胞60兆個」

 「代謝機能は、1日平均90W以下。1.5W/kg以下だから、かなりいい」

 「素材は強化するとしても、人体を模倣する方が省エネだな」

 「戦闘ゴーレムみたいに機械化すると1.5W/kgじゃ済まないからな」

 「ヘリウム3の核融合は?」

 「析力(反重力)装置で包んで、熱を内側に圧縮させれば莫大な発電を得られる」

 「制御を上手くやれば、1万年分くらいの代謝機能を維持できるだろう」

 「戦闘ゴーレムは、人力の数百倍だろう」

 「その分、寿命は縮むがね」

 「やはり、通常は、人型で、いざという時、リミットを外す方がいいね」

 「まぁ 列強に隠し通すなら人型だけど」

 「しかし、隠し過ぎると、人類の敵にされかねないな」

 「それは言える」

 

 

 

  重量/全備重 全長×全幅×全高 翼面積 推力 速度 航続力 機銃 ミサイル 乗員
CF105 17815/31120 23.71×15.24×6.25 113.8 10453kg×2 3062km/h 1860km 30mm×1 8+4 2
F14 18191/32100 19.1×19.54(10.15)×4.88 52.5 9479kg×2 2517km/h 3227km 20mm×1 6577kg 2
F15 12973/30845 19.43×13.05×5.63 56.5 10640kg×2 3062km/h 3450km 20mm×1   1

 世界最強の戦闘機 F15イーグルが初飛行を行う。

 基礎設計で10年以上の開きのあるCF105アローは、一見、不利であるものの、

 改良が進み成熟期に入っていた。

 また、F14、F15より全長で4m長いアローの機体はチタン化で軽量化するにつれ、

 絶大な効果を発揮する。

 同じ性能のレーダー装置を使用しても耐久時間が3倍違うなら、

 スペックに収まり切れない格差となった。

 そして、その性能差は技術を除けば、容積と質量によって、もたらされるものであり、

 代替が効かないのである。

 F15、F14がその性能差を埋めようとするなら増槽。

 あるいは、CFT装着するしかないのである。

 アメリカ軍の関係者たち

 「アローに勝てるか?」

 「基礎設計でイーグルの方が優れているがね」

 「日本がアローをぽんぽん製造できるのが信じられんよ。本当にチタン製部品が増えているのか」

 「日本のチタン輸入を逆算すると、そう判断するしかないね」

 「賃金格差を割り引いても、3分の1以下で製造しているとか思えないな」

 「アメリカ人の賃金が3倍高いと思うべきでは?」

 「賃金の格差を広げ過ぎたんじゃないのか?」

 「むしろ優秀な日本人をヘッドハントすべきだろう」

 「してるよ、極東権益地でね。事実、日本人が極東権益地の利権を安定させている」

 「もっと金に任せて雇えばいいんだ。それで日本の屋台骨を骨抜きにできるだろう」

 「だから、これ以上、賃金格差を広げるとヤバいだろう」

 「そうそう、アメリカ国内の労働運動が激しくなるばかりだ」

 「しかし、賃金格差を小さくすると労働意欲が低下する」

 「それに元々 アメリカは移民国家だ」

 「日本人と違って民族的なアイディンティティはない」

 「個人資産を保障しなければ、優秀な頭脳が他国に逃げられるぞ」

 「んん・・・」

 

 

 アメリカ合衆国

 土地の売買で日系人が絡み始め、

 能力がなくても日系人が素振りを見せるだけで、土地の価格が競り上がる。

 中小規模の鉱山を押さえて力を付けた日系人は多業種に参入し、足場を固めていく。

 組織に埋没しやすい日系人の中にも、野心的な者が現れ、

 一定以上の階層を目指すこともあった。

 当然、出る杭であり、

  1) 非合法組織の侵食と攻撃を防がなければならず、

  2) 非合法組織と権益線を分け、

  3) 非合法組織からの独立を勝ち取る。

 一連の流れは、成り上がりの公式であり通過儀礼とも言える、

 この時期のアメリカ合衆国は、建前的な偽善が優先されており、

 成り上がった後、非合法と関係継続は少ない。

 日本資本と結びついた日系人は徐々に力を付けてネットワークを構築し、

 アメリカ国内に日系資本なるものを形成していた。

 アメリカ西部の小さな町

 寝殿造り風、書院造風の家が建てられ、

 摩訶不思議な手法で石炭を掘り当て、

 お金持ちとなった日系人が住んでいた。

 東洋の客人が遊びに来ていた。

 「日本民族であるべきか、アメリカ人であるべきか、それが問題だな」

 「ハムレットですか? それとも、マクベス?」

 「白人の様に主人じゃないからね。自分がアメリカ人という自己主張を持てなくてね」

 「それは、バルカン・カフカスでも同じですよ」

 「まぁ 日系資本の結束と基盤があれば政治経済外交上、利益が保てるでしょう」

 「大規模資本じゃありませんけどね」

 「日系人の資本は、非主流地域全域。つまり田舎に広がっています」

 「資本は都市に集中しやすいからね」

 「しかし、場を制するなら、田舎を押さえる方が良い」

 「アメリカが都市資本で、日系が田舎資本ね」

 「それはソビエトの都市革命と涼(蘭州)の農村革命の路線抗争に近い」

 「どちらにしろ、アメリカ合衆国で日系人の発言力が増せば、日本は助かる」

 「ふっ 昔の日本は、棄民とネットワークを作ろうとはしなかった」

 「日本政府は、日本民族のアイデンティティを保てるかもしれないと信じ始めたんですよ」

 「だと良いがね」

 「それはそうと、ニクソン大統領は日本より、中国6軍閥と結びつきを強化するらしい」

 「ちっ ケネディ暗殺を未遂に止めて日系の権益を得たたというのに」

 「あれは、アジソン病を苦にした狂言自殺だったと聞いてますが?」

 「んん・・・まぁ 大統領として死にたかったらしいがね」

 「アジソン病は治せたし、某産業の謀略も崩れたし」

 「それで、実のところは?」

 「ちょっと複雑過ぎて、説明できないが見物人は少なくなかったよ」

 「じゃ 日本は、万馬券を引いたわけですか?」

 「まぁ そんなところかな」

 「じゃ 今回の頭越し外交は・・・」

 「チリ支援の反発だろうか」

 「牽制的なものかもしれないな」

 「中国も貧富の格差が広がって、共産主義勢力が広がっている」

 「そこまで資本主義を強めなくてもいいと思うがね」

 「アメリカは、単一民族というアイデンティティがないからね」

 「アメリカ社会を結束させるには、自由と権利を保障するしかないよ」

 「自由と権利の保障は、個人資産の保障だ」

 「当然、経済戦争は激しくなるし、勝ち負けの差も大きくなる」

 「日本は、民族主義的な甘えで、不自由と義務が強要されて、面白くないね」

 「強者に足枷は必要だよ。天引きか、施しの違いじゃないの」

 「日本の和の精神とかいう同好会意識も、天引きにも腹が立つけどね」

 「施しは自発的でキリスト教的な偽善に包まれて気分がいいよ。優越感に浸れるし・・・」

 扉が開けられる。

 「社長、ホワイトハウスで問題が起きたようです」

 「「はあ〜」」

 アメリカ合衆国ウォーターゲート事件発覚。

 ニクソンの盗聴が明らかになる。

 

 ホワイトハウス

 日本人が呼ばれ、

 「何とかならないだろうか」

 「起きる前ならともかく、起きてしまったモノは、どうにもなりませんよ」

 「ケネディの件もある。日本は、特別な力があるのではないのか?」

 「日本が不正な手段で、国益を保っているとでも?」

 「い、いや、しかし、こう、指を鳴らすと、何かできるとか・・・」

 「まさか・・・」 苦笑い

 

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・異境ガイア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 人鬼村

 カーボンナノシート・チューブ、

 シリコンナノシート・チューブ、

 これらのモノは、魔法使いが電子顕微鏡を用いて、手工業で作っていく、

 無論、科学技術の向上に伴い、手作業は容易になっていくものの、

 まだまだ、工業化の段階でなく、魔業によって成り立っていた。

 これらのモノに魔法の杖と飛行石(斥力物質)を編みいれて行くと、

 薄い透明な膜が銃弾を防ぐなど、

 とんでもない素材に化けた。

 生体素粒子の庇護は、十数倍となり、

 同じレベルの魔法使いの数倍の戦闘力に跳ね上がる。

 人口の少ない人鬼村の日本人にとって、福音以外の何物でもなかった。

 魔法使いは生体素粒子の性質なのか、

 位相に対し、ある種の性質を持ち、

 土系魔法使いは、個体加工が得意であり、

 水系魔法使いは、液体加工が得意であり、

 風系魔法使いは、気体加工が得意であり、

 火系魔法使いは、プラズマ加工が得意といえた。

 無論、これは、矮小な生体素粒子しか持たない種族特有であり、

 生き残るため “窮すれば通ず” で、機能化しただけといえる。

 生体素粒子の過剰な種族だと、その限りではない。

 

 風系魔法使いは、大気成分で最も多い窒素を固定させていく。

 窒素を1700度、110万気圧で圧縮すると3本腕の蜂の巣状ネットワークを作ることができた。

 これはポリ窒素と呼ばれ、風系魔法使いが使う究極の防御結界であり、

 同時にエネルギーを解放することで爆発させる攻撃魔法でもあった。

 「まだまだ、無理かな」

 それは、爪の先ほどの小さなものだった。

 「まぁ 気体分子を並べて、抵抗の強い膜を作ることぐらいはできるけどね」

 「膜をいかに凝縮させ、厚みを増せるかだよ」

 「だけど、土系、水系が用意周到に準備したモノには負けるよ」

 「寿命の消費も激しいし」

 「だけど、緊急の場合は、気体の膜が速いよ」

 「まぁ そうだけどね」

 

 

 塀の上

 黒光=猫又=センリは、猫らしく、だらしなく寝そべっていた。

 人族は、強固な防御服に微かな生体素粒子を振り分け防御力を高めようとしている。

 『矮小族どもは、群れをなして必死じゃの』

 『しかし、小物の魔物相手ならいい勝負ができそうじゃな』

 そう、黒光の眼は、人鬼村が小魚の群れの溜まり場に見えていた。

 群れを成さず生きていける種族はガイアでも少なく、

 個体が強くなるほど群れが小さくなり、テリトリーも広大になっていく、

 黒光は、人鬼村に居るだけで外周囲の凶暴な魔物を近付けさせず、

 よくわかっていない小物の魔物を人鬼村を餌に飛んで火にいる夏の虫で侵入させ、

 生体素粒子を奪い取っていたのである。

 無論、魔法使いでさえ、わからないほど巧妙であり、

 囮の人鬼村も、狩り場も、根絶やしにするつもりはないのである。

 そして、センリが人鬼村にいるのは、タダの気晴らし、

 「黒光。御飯よ〜」

 タマが声を掛ける。

 にゃぁああ〜

 エネルギーで考えると、肉体を保つだけのモノでしかないものの、

 ダシの効いた汁と、歯応えと、喉越しの良い、うどんを食べるため、

 この村にいた。

 

 

 未開地

 !?

 真空の刃が樹林をズタズタに切り裂き、

 不意に目に見えない壁で止められる。

 魂魄機4機が周囲を周回し、

 全天球を監視する。

 攻守で運用できる魂魄機は、魔物の襲撃を事前に察知し、

 部隊に判断の余裕を与えた。

 機銃掃射が魔物の手前で、面白いように散らされていく。

 「・・ふっ・・」 魔物

 次の瞬間、数枚のナノシートが引き千切られ、鬼族、人族、ドワーフが負傷し、

 蒼乃も頬が切れたのか、血が滴り落ち、

 矢継ぎ早にサファイアレーザーの光線が魔物を貫いていく、

 さらにナノシートが高速で回転しながら、魔物を切り刻み、

 魔物は、崩れ落ち、事切れて行く、

 「ったくぅ〜 あぶねぇ」

 『蒼乃。もっと強い魔物だと、ナノシートの制御も奪われるよ』

 「ぅぅ・・危なすぎる」

 『人族って、生体素粒子が少な過ぎるのよ』

 「鬼族だって、ほとんど変わらないだろう」

 『鬼族は体で勝ってるわ』 と霊

 「『・・・・』」

 「やれやれ・・・」

 『・・・青乃、やっぱり、魔物の生体素粒子が引き抜かれていくよ』

 魔物の生体素粒子が急速にしぼんで消えて行く。

 「本当だ。どうやって生体素粒子が引き抜かれているんだろう」

 『私たちの知らない位相空間を使っている魔物が近くにいるみたいね』

 「や、ヤバくない?」

 『んん・・・どうせ、勝てそうにないけど』

 「生体素粒子の庇護は、もっと万全にすべきね」

 『できるの?』

 「これがいま、最高の素材だって」

 魔物にズタズタにされたナノシートを拾う。

 「はぁ タダでさえ頭が痛いというのに、面白くないことばかりだ」

 『そろそろ、頭の茨を取れるんじゃない?』

 「痛いし、早く取りたいけど、どうだろう。失敗すると操れないし」

 『潰しの利く使い魔は得よ』

 「蜘蛛も、ムカデも、ハチも、ぞっとするね」

 『まぁ 普通は近付きたくないわね』

 「グリフォン、ヒッポグリフ、ユニコーンなら痛くても我慢するし、嬉しいのに」

 『滅多にいないもの』

 『彼らを使い魔にしたいなら生体素粒子を増やすか。共闘できる関係を築くことね』

 魂魄機は、自分の分身のようなものであり、

 後方の司令基地からも遠隔操作が可能だった。

 一方、使い魔は、自律型の生物であり、

 通常は自らを自衛し、

 魔法使いは、必要に応じて操作ができる利点があった。

 

 

 人鬼村の近くに移植させられたカルザン茨は、成長して生い茂り、

 村を囲うように広がっていく、

 全長1.5mほどのヒュブロ蜘蛛

 全長4mのケスムカデ

 全長1mの虎ハチが繁殖していた。

 矮小族の十数倍の魔力を持つ紛れもない魔物であるものの、

 意思薄弱なのか、

 元々、カルザン茨を守るために生まれた共生関係の魔物なのか、

 カルザン茨を使うことで、使い魔にすることができた。

 エルフの傭兵たちが自らの使い魔をカルザン茨に自分の使い魔を放す。

 カルザン茨を外堀代わりの防御壁にする町や村は少なくなく、

 同じ危険でも、未開地が他の魔物にいられるより、マシなだけといた。

 エルフの傭兵たち

 「地球人が扉を抜けてこちらに来たのは確かなようだが、不定期のようだ」

 「我々の世界への扉も閉じてるが、今後はどうしたものか」

 「いま開いてる扉はあるのだろうか」

 「さぁな、扉の出現率は良く分からんよ」

 「出現場所も幸運か偶然に頼るしかない」

 「地表ばかりではなく、海中という事もあれば、空中の場合もある」

 「扉が開いてても気付かず、閉じて、扉自体消えてしまうこともあるからね」

 「それに気付いても他の世界ということもある」

 「人族がエルフの喰命鬼を地球に送ったのは本当だろうか」

 「喰命鬼は魔物の一種だよ。まぁ 使い道は限定的で危険だよ」

 「よっぽど人口が余っていなければ使えないはずだが・・・」

 「少なくとも、人族が強引に扉を開けて出入りしているのは事実だな」

 「追加の地球人は来るだろうか」

 「さぁね。少なくともどんなビックリ箱を持っていたとしてもだ」

 「矮小族同士で争ってはいられない」

 エルフの傭兵たちが行ってしまうと、茨の中から影が現れる。

 炎狐 (えんこ)は、非常に中途半端な存在だった。

 飛んで火にいる夏の虫より強く、

 黒光=センリ猫又より弱く、

 黒光の使い魔、魂鬼といい勝負。

 「・・・こりゃ とんでもない場所に来たかな」

 人鬼村一帯を占めるフィールド場のようなものに気付き、

 このままでは格好の餌となりかねず、

 本体が近付く前に脱出しようと空中帆船を見上げる。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 国際情勢は、

 日英同盟、独伊同盟、アメリカ合衆国、ソビエト連邦。

 バルカン連邦、カフカス連邦、

 中国7軍閥、

 自由フランス(海外植民地)、ヴィシーフランス

 などなど、中心になる国がいくつか分かれ、

 いまのところ、外交戦略上の鍔迫り合いで終始、

 軍事的に鞘に収まって、平穏無事です、

 まぁ 抜き身より、居合いに構えていた方が怖いですが・・・

 

 

 アニメは目白押しです。

 01/04  樫の木モック (楽天)

 01/09  ムーミン

 01/10  正義を愛する者 月光仮面

 04/01  海のトリトン

 04/03  魔法使いチャッピー

 04/05  赤胴鈴之助

 04/23  アニメドキュメント ミュンヘンへの道

 07/08  デビルマン (楽天)

 08/27  モンシェリCoCo

 10/01  科学忍者隊ガッチャマン

 10/04  アストロガンガー

 10/05  かいけつタマゴン、ハゼドン

 10/07  おんぶおばけ、ど根性ガエル

 12/03  マジンガーZ (楽天)

 

 

 

 

  0次元 1次元 2次元
    点の連続 線の連続
  平面
       
 
  3次元 4次元 5次元
  平面の連続 空間の連続 並列空間の連続
  立体・空間 時空連続体 平行次元連続体(ガイア)
第01位相 個体 宇宙 ハビラ土地 クシュ土地 アシュル土地 宇宙(地球?)
第02位相 液体 時間 ピション川 ギホン川 ヒデケル川 ユーフラテス川
第03位相 気体 平行次元宇宙
第04位相 プラズマ 波動
第05位相 霊界・零体 重力  
第06位相 生体素粒子    
第07位相 斥力物質 (縞メノウ?)    
第08位相 魔法の杖 (ブドラフ木?)    
第09位相 (金?)    
第10位相      
第11位相      
第12位相      
       
  6次元 7次元 8次元
  立体次元連続空間 6次元の連続空間 7次元の連続空間
  多次元宇宙    
       
       

 

 

 広義的には、

  ※ ハビラ土地 ピション川 (アラビア半島 ?)

  ※ クシュ土地 ギホン川  (エジプト ?)

  ※ アシュル土地 ヒデケル川  (アッシリア ?)

  ※ ユーフラテス川         (イラク ?)

 実のところ、エデンの園がどこなのか、わかってません。

 

 

 

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第31話 1971年 『生命の木』
第32話 1972年 『統制と淘汰と群れ』
第33話 1973年 『消える扉と最後の・・・』