月夜裏 野々香 小説の部屋

陰陽紀 『木漏れ人たち』

 

 第02話 『戸隠の乱』

 ・・・式神の作り方・・・ 

 料理のレシピみたいに書かれているが、

 陰陽と五行の複雑な計算が書かれ

 日付や場所で手順と順路が刻々と変わり、

 手順を手前の段階から増やすほど強くなっていく、

 しかも、統計学、天文学、天候だけでなく、元素記号やら素粒子やら・・・

 こんなものやるくらいなら、弱そうな同級生をパシリにした方がはるかに楽だろう。

 千は、本当にこんなことやっているんだろうか。

 信じがたい時間と労力の浪費だが式神で命拾いしたのは事実で、

 対陰魔、対霊対策なら何も知らない人間より式神が頼りになる。

 それに嵩張らず、手持ちにあると何かと便利だ。

 『しかし・・・これは・・・宿題の方が10倍も益しな気がするぞ』

 

 

 長野県のニュースは増え、事故事件犯罪が急増し、災厄のようになっていた。

 一般の人たちは、偶然が重なってると思い、

 陰陽の世界は、全て繋がってると判断する、

 そして、陰陽師と山伏は、訳知りの蔵元衆から事態の打開を要請され、

 残った11霊山衆から選り抜きの陰陽武師と山伏が派遣され、事態の鎮静化に当たっていた。

 

 総理官邸

 “院内感染を起こした病院から半径5kmは封鎖されました”

 “いまだ、感染源の特定はなされていませんが住民は原因不明の無気力に襲われ・・・・”

 テレビの映像が流れていた。

 「毎日毎日、大騒ぎだな。ほかの県に拡大しなければいいが」

 「ほかの県に向かう道はすべて式神を配し、結界を作っています」

 「むろん、事態を把握するため全力を尽くしていますが」

 「ですが、今回の事態を招いたのは、戸隠霊山衆ですし」

 「戸隠が何かを隠してるようなので」

 「・・・・陰魔の襲撃を受けてる。それだけですよ」

 「「「「・・・・」」」」

 「戸隠霊山衆から陰界か陰魔に対し何かしたのではないのか?」

 「い、いえ、まさか」

 「どこかの派閥の干渉かもしれませんな」

 「そんな。陰魔に手を出しても割損。いいことなどないでしょう」

 「ですが、寛永の大飢饉、享保の大飢饉のように地神(つちのかみ)を怒らせたこともある」

 「これが初めてということではないでしょう」 

 「あの頃と、いまは、状況が違うじゃないですか」

 「全国的な連絡網で大事になる前に終息させている」

 「ですが蔵元衆同士も、霊山衆同士も対立があるのは変わらない」

 「「「「・・・・」」」」

 「まぁあいい、とにかく、残った機密費を全部使うから、何とかしてくれ」

 「と言われても妖狐と戦いたがる酔狂な陰陽武師や山伏など、ほとんどいませんよ」

 「自衛隊を出してもいい」

 「自衛隊は、陰魔と戦える装備をお持ちでしたかな」

 「「「・・・」」」

 「自衛隊に式神を貸してもいいがね」

 「千差万別に移り変わっていく手順を覚えるだけでも年単位だよ」

 「とにかく何とかしてくれ」

 「蔵元衆は、依頼要件を全て凍結する」

 「裏社会も霊山衆への敵対は、中止だ」

 「「「・・・・」」」

 「中止だ」

 「いいでしょう」

 「全霊山衆衆は、すべての力を陰魔対策に集結させて欲しい」

 「「「「・・・・」」」」

  

 

 朱条彰人は、人気のない夜中にテント一式を持って、行ったり来たり、

 順路の線が時折変わるので、歩調も速くなったり、遅くなったりと・・・

 さすがに昼間に、この大荷物を持って珍道中は歩けない、

 そして、目の前に陰界、

 「はぁ やっと着いた・・・」

 「あんたって、ホント、危ないことするのね」

 「千・・・重たかったんだから、見てないで手伝ってくれよ」

 「あら、式神あげたでしょ 当然、暇なときは、テントも使わせてもらおうかしら」

 「ぅぅ・・・」

 「だけど、上級の陰陽師だって、こんなことできないはずなんだけどな」

 「千だって、入ってきたじゃないか」

 「あの時はたまたま好調で気まぐれだったのよ」

 「その上、あんたの変な、気配のせいね」

 「どんな気配だよ」

 「鬼子」

 「ひどす!」

 「あはははは・・・」

 「まぁ おかげでコツがだいたいわかってきたし」

 「わたし、一人でも順路を見つけて出入りできるわね」

 「俺の方が先生じゃないか」

 「あら、言われなくてもコツのわかる私と」

 「言ってもわからない朱条君とは、立場が違うのよ」

 「そうか?」

 「式神作れる? 教えたはずだけど」

 「ぅぅ・・・」

 「でも朱条君。いくつテントを置くつもり」

 「陰界の探検もあるけど、自分だけの土地って嬉しいし、家と学校の途中には欲しいな」

 「風水っていうのがあってね。陰界でも土地の良い場所ってあるのよね」

 「式神を使えば良くなるけど、不自然でほかにシワ寄せが行って無理するし」

 「どうせなら、自然な風水で良地を取った方がいいわね」

 「どう違うのさ」

 「土地と水利が良くて、捕れる作物のエネルギーが違う」

 「当然、家運と人体も調子がよくなるの」

 「そうねぇ 陽界は、人の恨み辛みの霊障が風水の良地より強いときがあるけど」

 「陰界は、原野だから純粋に風水で決めてもよさそうね」

 「三乗町だと・・・・私の神社の近くか、西区の3丁目辺りか・・・」

 「うぇええ〜 どっちも遠い・・・」

 「たぶん、空気がいいし、人が良くて、犯罪が少ないはずよ」

 「そ、そういえば、なんとなく、あの辺はいいかなぁ・・・て・・・」

 「そういえば、あの交差点とかも町の中心で便利だから、いいと思ったけど」

 「あそこか・・・交通事故が少なそうだから、悪くはないわね」

 「そういう問題なんだ」

 「あら、霊障って、大きいのよ。成仏させるの手間かかるし」

 「そういうこともするんだ」

 「陰陽師の収入源の一つよ。酷くなると自治体からがっぽり」

 「あ、そう」

 「戦国時代の時なんて、大忙しだったみたいだけど」

 「へぇ〜 戦争の時も?」

 「なんで国外に出て行ったと思ってるのよ」

 「あ・・・」

 「でも、絨毯爆撃の後、軍政やめられないのなら、こんな国に滅びてしまえって」

 「恨み辛みの霊障で、大変だったみたいだけど」

 「そ、そうなんだ・・・」

 「まぁ 国より軍隊を大切にしちゃダメよね」

 「というわけで、霊山衆もそれなりに需要があるわけ」

 「な、なるほど・・・」

 「まぁ 軍政になったのは、蔵元衆に頼まれたらしいからだけど」

 「あはははは・・・」 脱力

 「はぁ・・・・ 帰る。テント張りは、昼間やればいいし」

 「そうね」

 千はそういうと、先頭に立って歩き出す、

 どうやら順路の線が見えていないらしく、

 周囲を見渡し、携帯か何かで計算しながら動いている。

 不意に間違うと、軌道修正しながら順路を見つけ、

 何度か遠回りしながら・・・・

 そう、千は、暗闇を壁伝いに手探りで歩くような感覚に思えた。

 で、陽界

 「・・・・・」 ほっ

 「まぁまぁかな」

 「むっ 朱条君、生意気・・・あ・・・見つかった・・・」

 千は、空を見上げて舌打ちする。

 「喫茶店に行こう。驕るよ」

 「えっ 珍しい」

 「あんた。私を守銭奴か何かと思ってない?」

 「あははは・・・」

 「たっくぅ その代り、話しを合わせるのよ」

 「何に?」

 「私の話しによ」

 

 喫茶店に入って、千はケーキセットを注文すると、 

 少しばかり年上そうな少女が入ってくる。

 「あら、羽鶴じゃない・・・その男の子は誰かな」

 「「・・・・」」

 「ま、デートの邪魔をするつもりはないから、すぐ帰るけど・・・」

 「私の弟子。朱条彰人君よ」

 「はぁ?」

 「だそうです」 はにかみ

 「・・・・」

 

 

 西八乗高校

 1年C組

 ひそひそ ひそひそ ひそひそ ひそひそ

 ひそひそ ひそひそ ひそひそ ひそひそ

 今日はいつになく、視線が痛い気がする。

 定着してしまった奇行・変わり者キャラは、覆せそうにない、

 しかし、今日ほど好奇な視線に晒されたことはなかった。

 普通じゃなくても普通の範疇を装ってると自負してる身としては

 何やら不穏な状況に鼓動が高まっている。

 「よお、朱条」

 「や、やあ。田中。おはよ」

 「夜の喫茶店で、女の子とデートしててたって本当か」

 「ど、ど、どこで、そういう・・・」

 突きつけられた携帯に言い逃れできない構図と画質で、それが写されていた。

 「・・・・」

 「なんというか、かわいい子だな。AKBの左の中辺りの子に似てる」

 「いや、全部、同じに見えるし」

 「お前、老化が始まってるぞ」

 「朱条が謎の少女と深夜の喫茶店で密会〜♪」

 「お、おい」

 「「「なにぃいいい!」」」

 「こ、これ・・」

 「「「おぉおおお〜!」」」

 「きゃー! 朱条君隅に置けない」

 「朱条。どこの子だ。この学校じゃ見かけないぞ」

 「朱条。お前だけはそんなことする奴じゃないと信じてたのに・・・」

 「・・・・」

 「裏切ったな」

 「い、いや、それは・・・」

 「朱条は、俺たちの気持ちを裏切ったんだ」

 「「「「・・・・」」」」 うんうん

 「あはははは・・・」

 「どこの子だよ」

 「ひ、東八乗高校・・・」

 ざわざわ ざわざわ ざわざわ

 ざわざわ ざわざわ ざわざわ

 「な、馴れ初めは!」

 「な、馴・れ・そ・め・・・」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 『全裸を見られたなんて言えんな』 

 「あはははは・・・」

 「「「「笑って、誤魔化すな!!!」」」」

 『若気の至りってやつだろうな』 ため息

 

 

 どこかの町の駅

 千羽鶴、朱条彰人、仙堂菜月が改札から出てくる。

 朱条にすれば両手に花に近い、

 しかし、陰陽の経験と実力で負けてる、

 二人には軽んじられ男の尊厳にかかわる瀬戸際に立たされてる、

 『どうしたものか・・・』

 「羽鶴。あんた。いつの間に弟子を持つようになったの」

 「こいつ、陰魔に殺されかけるくらいの危ないやつでね」

 「助けた代わりに仕事を手伝わせてるの」

 「ふ〜ん、陰魔に襲撃されるなんて、よっぽどね」

 「え、陰魔って人間を襲わないの?」

 「襲うよ。襲うけど、陰魔にとって、人間は、ごちそうというわけじゃないの」

 「よほど陰魔を怒らせたか、ゲテモノ食いの陰魔と出会っただけ」

 「そ、そうなんだ」

 「むしろ、怖いのは、人間の方・・・」

 

 三人は豪邸を訪れていた。

 「紹介元は確かなのに、こんな若い陰陽師さんたちで大丈夫なのかしら」

 「護符は、知識と才気次第ですので」

 「そ、そういう話しは、伺ってはいますけど・・・」

 「「「・・・・」」」

 「・・・ではよろしくお願いしますね」

 「はい」

 クライアントのおばさんが家の中に戻っていく、

 「見て、あそこから、地脈が崩されてる」

 仙堂菜月は、丘のほうを指差した。

 「へぇ〜」

 「あんた。本当にわかってんの」

 朱条には、豪邸の周りの線が乱れ、壊れてるように見えていた。

 『余計なこと言っちゃだめだからね』

 「な、なんとなくかな」

 「まぁ 少しは、勘めいたものがないと陰魔に襲われるわけないか」

 「この呪符は、対人じゃなく、対物よ」

 「この家に対して、地脈が相克になるよう呪符が置かれてる」

 「それで、家の周りに陰が集まるように結界を配置してるの」

 「だから結界の式神を封じて、地脈を元に戻す」

 千羽鶴と仙堂菜月は、携帯を見ながら何かを確認し、

 呪符を見つけては、燃やし、

 護符を置いて、地脈を正常に戻していく、

 「携帯で何かわかるの」

 「この携帯は特別製で、式占計算してるのよ」

 「ふ〜ん」

 「三重結界か、念入りな上に巧妙ね。この家、よっぽど恨まれていたのね」

 「悪いことしたんだ」

 「「・・・・」」 ため息

 「朱条君・・・悪いことしても恨まれるとは限らないし」

 「良かれと思ってしたことでも恨まれるし、逆恨みもざらなの」

 「少なくとも私たちの世界じゃ 悪いことと、恨まれることは違うからね」

 「そ、そうなんだ・・・」

 「対物呪符は間接的で」

 「対人呪符のような直接的じゃないだけに気付きにくいの」

 「仕掛ける陰陽師にとっても精神的に楽だから江戸時代以降は対物呪符が主流ね」

 「でも、あんまりやり過ぎると陽界の地脈が狂って地神(つちのかみ)を怒らせて」

 「陰界が近づいて、陰魔が大量に出現する。そして、手が付けられなくなる」

 「土神?」

 「何というか、天災という形で現れるわね」

 「江戸の四大飢饉とか、津波、地震とか」

 「そして、陰魔は人の気を奪っていくから活力が一気に減退する」

 「・・・・だから、陰陽師が作った結界を陰陽師が壊していくんだ」

 「そう、それも仕事なんだけど、因果な商売よね」

 「やめたりしないの」

 「でもねぇ 理不尽な世の中だし、恨み辛みで誰かが依頼するし」

 「金になるから誰かが引き受けちゃうのよ」

 「だから、やめようと思っても護符の仕事が舞い込んじゃうわけ」

 「それと護符を作れるということは、理屈上、呪符も作れる」

 「じゃ呪符をやめたら」

 「一応、30歳未満は呪符を禁忌にしてるけど。やらない人は死ぬまでやらないし」

 「やる人でも、よほど金を積まれたか、共感しない限りやりたがらないわね」

 「私たちの場合、発覚しても法的に裁けないから完全犯罪に近いの」

 「それに物理的にやると証拠が残って仕返しされるかもしれないでしょ」

 「だから証拠の残らない呪符の対象は、怖い人系が多いわね」

 「おかげで表ヤクザと、私たち闇ヤクザは犬猿の仲」

 「昔の武士と、陰陽師の関係に近いわね」

 「そうそう」

 「なんか、武士のイメージが変わるよ」

 「あら、武士もヤクザも結束が高くて無法な私兵集団なのよ」

 「武士道で日本刀を持ってるか。仁義で拳銃を持ってるかで、同じよ」

 「だいたい、特権の朝廷貴族が武士を利用するのも」

 「いまの蔵元衆や特権富裕層がヤクザを利用するのも同じ構造よ」

 「暴力を利用するつもりが暴力を制御しきれなくなって力関係が覆される」

 「それで、無法地帯の乱世になって同じことの繰り返し」

 「少しは、教訓とか知恵ってものを身につければいいのに」

 「ほんと、インテリぶってるけど、見境なしのバカばっかりなんだから」

 「それ、凄い歴史観だよ・・・」

 「この仕事やってると、こういうのが常識になるのよ」

 「まぁ 私たちも裏じゃ闇ヤクザとか言われてるし」

 「・・・・」

 最後の呪符が剥がされると、地脈が正常に流れ、

 「な、なんか、空気が甘い感じになった」

 「「・・・・」」

 

 

 戸隠

 陰魔を封じる結界が形成されていく、

 しかし、力の強い陰魔は、結果を崩し、人を襲っていく、

 陰魔に気を食われると気力や生命力を失い、

 病死するか、負の感情に支配され犯罪を起こしやすくなっていく、

 陰陽師と山伏たち

 「南側の結界が破られた」

 「午星を陣馬平山まで下げる。西と東の人員を回してくれ」

 「一般人が残ってる避難が進んでないぞ」

 「院内感染が広がってるとニュースを出してるはず」

 「自衛隊は何やってるんだ。守れないぞ」

 「それより、結界の外に100ほど出て行ったようだが」

 「まずいな。陰陽師も山伏も足りない」

 「若いのにやらせるか」

 「陰魔は地に縛られないから対物は利きにくい。対人呪符を教えてないからな」

 「護符の逆だろう。こういうのは習うより慣れろだよ」

 「ていうか、俺たちでさえ、対人呪符は、滅多にやらないからな」

 「ふっ 言えてる・・」

 声が上がる

 「また、結界の外に一匹、出たぞ!」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 

 どこかの町

 「さてと、仕事も終わったし、昼飯食べて帰るか」

 「でも凄く実入りのいい仕事だね。札束の封筒を貰うなんて」

 「だって、家が滅ぶかどうかの仕事だし」

 「蔵元衆が価格協定を作ってるから」

 「蔵元衆って? 価格協定って?」

 「蔵元衆は代々の常連さん」

 「価格協定は、時価や力関係で高騰したり、暴落したりすると蔵元衆は困るし」

 「陰陽師も蔵元衆の保障があると楽だし、生活が安定しないでしょ」

 「それに安い金額で大量に呪符を発行されると亡国モノだし」

 「新参の陰陽師が護符や呪符を安く作らせないようにするためでもあるし」

 「あと、蔵元衆も紹介で手数料が入る」

 「持ちつ持たれつですか」

 「日本ってどうしてもそうなっちゃうのよね」

 「元々は、室町末期の堺の会合衆で作られて」

 「明治頃から蔵元衆って呼ばれるようになって、その制度が続いてるらしいの」

 「教わってる歴史と違うこと話してないか?」

 「だって、私たちの職業史みたいなものだから普通は、外に出ないもの」

 「別に言ってもいいけど」

 「いや、馬鹿にされそうだからやめとくよ」

 「朱条君が賢明でよかったわ」

 「・・・ところでさ・・・千・・・あれ何?」

 朱条が山の峰の辺りを指差した。

 「「・・・・」」 じーーー

 「う、嘘!」

 「陰魔じゃない」

 「なんでこんなところに」

 「あ、わ、わ、羽鶴。式神、式神」

 「ちょっ 37枚。菜月も出して!」

 「ええぇと・・・全部で、67個だから・・・」

 「私は内結界で二重、羽鶴は外結界で一重よ」

 千羽鶴の式神は、折鶴で、

 仙堂菜月の式神はミサンガだった。

 「わかった」

 「陰魔は、なんでこっちに来るんだろう」

 「霊山衆は、普通の人より、気が美味しいらしいのよ」

 「話しかけないで気が散る」

 即席の結界が作られると、

 千羽鶴と仙堂菜月は、携帯を握って、ブツブツ言い始める。

 陰魔は、数度、結界の周囲を周り、走り去っていく

 「「・・・・」」 へたへた

 「じゅ 寿命が縮まったわね」

 「あっさりと引き上げたね」

 「馬鹿言わないで、三重結界だったからよ」

 「二重だったらこっちもあっちも、ただじゃ済まなかったわ」

 「携帯型の式神なんて、滅茶苦茶高いんだから泣きたくなったわよ」

 「そうなんだ」

 「式神っていろいろあるの?」

 「陰陽文師が作ったものは別として」

 「自分で作れて嵩張らないものが基本ね。他人が作ったものだと半減」

 「でも羽鶴くらいじゃない、いまどき、折鶴なんて」

 「折鶴が好きなのよ」

 「女の子は、ミサンガとか、シュシュが多いかな」

 「男は?」

 「そうね。タバコとか、名刺を使う人が多いかな」

 「紙幣大で財布に入れてる人もいたよ」

 「陰魔って、妖怪みたいなものなの?」

 「同じよ。私たちは陰陽師だから陰界と陰魔と呼んでるだけ」

 「山伏だと、妖怪と言ったり、物の怪と言ったり・・・」

 「ていうか、朱条。私たちより先に陰魔に気付くなんて、あんた。何者」

 「普通の高校生だと思うけど」

 「「ちっとも普通じゃないわよ!」」

 

 

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 月夜裏 野々香です

 陰陽才気ある少年と、陰陽武師少女が二人の黄金比率

 ちょっと、ラブコメバトル風です (笑

 

 

 

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第01話 『陰界と陰陽武師』
第02話 『戸隠の乱』
第03話 『式神の作り方は・・・』