月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 

 第03話 1943 『アメリカホイホイ』

 第二次世界大戦の主戦場は、欧州戦線であり、

 太平洋戦線は、副次的なものだった。

 それは、ドイツ帝国を打倒さえすれば日本は、年月の問題であり、

 対日戦を後回しにしても良いと考えられていた。

 とはいえ、アメリカ合衆国は、その巨大な生産力を持て余しており、

 且つ、準備不足であると間違いなく、

 大西洋でも太平洋でも守勢に立たされていた。

 これは、民主主義国家の宿命と言えなくもなく、

 準備さえ整えば、溜め込んだ余力で、生産力を拡大できるのも民主主義の特性だった。

 カサブランカ会談

 偉そうな男たち

 「欧州戦線は?」

 「ソビエトがスターリングラードで包囲攻勢を仕掛けたが」

 「ドイツ軍は、周辺部の陣営を厚くしていたため、8割以上が後退した」

 「進撃したソビエト軍はスターリングラードを回復したらしいが」

 「3割の損失を出して、攻勢力が低迷している」

 「米英は、アルジェに上陸し、北アフリカ戦線に第二戦線を構築したが」

 「ドイツとイタリア軍は、北アフリカ戦線から後退した」

 「ドイツとイタリアも、戦線を下げたわけか」

 「それと、Uボートの一部がインド・太平洋に移動する動きを見せ」

 「日本がインド洋で支援する動きを見せている」

 「例の島でか」

 「例の島より・・・」

 「日独中継地点をディエゴガルシア島に置いたようだ」

 「ディエゴガルシアは、危険性が少ない」

 「危険なのは、アダムスミス島とサンポール島の方だ」

 「ディエゴガルシア島は、見せかけだよ」

 「いや、インド洋輸送は、イギリスにとって生命線だ」

 「このままでは、ビルマ戦線を維持できなくなるし」

 「重慶への空輸も不可能になる。艦隊を派遣すべきだ」

 「しかし、例のX艦の信憑性は高まるばかりで否定する根拠の方が少なくなってる」

 「だが、対日戦に戦力を割くのは時期早々だよ」

 「まだ、ニューブリテンで消耗させるべきだ」

 「ニューブリテン攻撃で消耗してるのは、むしろ、我々の航空部隊の方じゃないのか」

 「損失比は、アメリカ航空部隊の方が負けてる」

 「アダムスミス島とサンポール島の日本軍は?」

 「日本戦艦部隊が戦力を増強させている」

 「例のモンスター戦艦か」

 「モンスター戦艦はリンガ泊地を動けないでいる」

 「どうやら無駄飯ぐらいのようだな」

 「思い切って攻撃しかけては?」

 「ソロモン諸島の基地航空部隊は拡張中だ」

 「機動部隊を引き離すなら、あと三倍の規模と航空戦力が欲しい」

 「日本機動部隊が来るとは限らないだろう」

 「いや、日本は、基地航空部隊を消耗させていないし」

 「直接、戦場で対していれば感じるよ」

 「力を溜め込んでいるとな」

 「じり貧と分かり切っているのに力を溜め込んでもしょうがないだろう」

 「X艦効果というやつじゃないのか」

 「別の世界の援軍があるかもしれない」

 「あるいは、別の世界と連絡を取ろうとしている」

 「日本の場合、燃料、鉄、石炭が回ってしまうと、手がつけられなくなりそうだな」

 「科学技術は低くても、それが怖いな」

 太平洋で起きた超常現象は、太平洋の価値を一変させようとしていた。

 

 

 太平洋

 日本の第一機動部隊と第二機動部隊がアメリカ機動部隊と対峙していた。

 第三機動部隊は、第一、第二機動部隊の支援を行えるように待機していた。

 トラック環礁

 飛鷹 艦橋

 「最近、補給が遅れてると思ったら、インド洋と北太平洋で何かやってるらしい」

 「第四機動部隊の彼でしょう」

 「ちっ イギリス東洋艦隊を殲滅させたくらいでいい気になりやがって」

 「東洋艦隊は、南雲機動部隊が逃した艦隊ですからね」

 「第四機動部隊の時は、インドミタブルとフォーミタブルがいなかったからな」

 「翼無き艦隊なら第三機動部隊でもやれる」

 「霧鳳が出現していらい、大本営は、内に引き籠もりましたね」

 「どうやら、異世界の扉が開かれ、援軍があると期待されてるらしい」

 「異世界が味方とは、限りませんよ」

 「まぁな 敵かもしれない」

 「しかし、なにもしなければ、確実に負けるとわかれば、何かをしたくなるだろう」

 

 

 

 戦艦の砲撃が始まる。

 射撃盤に数値が入れられていく、

 大気の湿度と温度、地球の自転速度、

 発射火薬の温度と量、砲身命数、喫水線から砲塔までの高さ、

 照準装置と砲塔の相互関係は、歯車によって、自動的に決まる。

 しかし、状況に合わせて、刻々と変化していく、数値もあった。

 敵艦の針路、速力、距離、

 さらに自艦の針路、速力、

 そして、海面の常動、風向と命中までの時間、

 それに、艦特有の癖が加わる。

 これらは、優れた将兵と、測距儀と、蓄積された集大成で大砲の精度が決まるため、

 国家機密であり、

 砲撃された結果は、全て艦で記録され、そのたびに精度が高まっていく、

 海軍で最もシステム化した部署で時代とともに肥大化し、

 100人以上が測距から砲塔の作動に関わっていた。

 そこから叩き上げられた将校が海軍省を昇り詰めていく、

 それがため、将校たちの硬直化はいがめない。

 とはいえ、時代の流れに聡い者も現れ、

 そのたびに形骸化しつつある省を揺さぶってしまう。

 しかし、戦場が型にはまれば、無類の強さを発揮できた。

 

 深夜、ムンバイ港が砲撃に包まれていた。

 無線から入る数値に向けて大砲を動かし艦砲射撃するだけで、

 飛行場と軍施設が次々と破壊されていく、

 日向から発艦したKa31は、イギリスの飛行場を精確に索敵し、戦艦部隊へと伝えていた。

 ムンバイ港

 その日、伊勢、扶桑、山城、金剛、比叡、榛名、霧島の7隻が入港し、

 日本軍は、上陸作戦を開始した。

 イギリスは、ベンガル湾側の東インドのカルカッタに戦力を集中していたため、

 西インド側のムンバイは、無防備に近く、日本軍の上陸を許してしまう。

 そして、さらなる恐怖がムンバイを襲った。

 朝鮮半島で駆り出された朝鮮人が上陸したのだった。

 「この土地が中国人も日本人もいないパラダイスニダ」

 「万歳ニダ! 呪われた土地から解放されたニダ。朝鮮人解放ニダ」

 「でもインド人がいっぱいいるニダ」

 「性格なら朝鮮人が強いニダ」

 「インド大陸を支配するニダ!」

 「「「「アイゴ〜!!!!」」」」

 

 

 戦艦 金剛 艦橋

 「思ったより拿捕できたじゃないか」

 「実のところ、ムンバイが最大取引港だからね」

 大小1000隻の船が日本海軍の手に落ちていく、

 「朝鮮人の上陸が終わったら、武器を渡して、撤収するぞ」

 「しかし、自由インド軍は、上陸させられんな」

 「あははは・・・」

 「朝鮮人ならいくらでもいますからね」

 「しかし、朝鮮人2500万をインドに上陸させて、イギリス権益を崩壊させるとはな」

 「日本軍も、ついに外道に落ちたか」

 「朝鮮人なら武器を渡せば、補給しなくても勝手に生き延びるだろう」

 「日本民族じゃ 無理だな」

 「国がないと、人が強くなる。国の支配が強いと人が弱くなる」

 「日本人なら絶滅でも、朝鮮人なら生きていけるさ」

 「それは、そうと、大型商船を200隻以上も動かしたんだ」

 「輸送計画は、大丈夫だろうな」

 「半島で掻き集めて、ムンバイまで運ぶだけだ。帰りは、資源を載せる」

 「しかし、かなり支障がでるだろうな」

 「代わりにインドで1000隻近く拿捕できたのは大きいがね」

 「まぁ なんとか、日本に回航できるだろう」

 「これで、イギリス軍がムンバイ回復に向かうなら。朝鮮人をカルカッタ側に上陸させる」

 「インド大陸は広いし、上陸させられる場所は、一杯あるしな」

 「何人かの朝鮮人に武器を持たせれば、適当にやってくれるだろう」

 「近親憎悪か、ここまで嫌うかな」

 「イギリスだって、北アイルランド人を近親憎悪しているし」

 「フランスとも憎み合っている」

 「近い国同士ほど、利害が衝突しやすいし」

 「僻みやすくなるし、邪魔なのさ」

 その日、日本商船200隻に詰め込まれ乗せられた朝鮮人260万人がムンバイに上陸してしまう。

 イギリスのインド支配は日本軍のムンバイ上陸と朝鮮人の上陸で大混乱となり、

 インドの独立運動は、拍車がかかっていく、

 

 

 

 アメリカ ワシントン

 白い家

 世界地図を前に偉い人たちが騒いでいた。

 「インドが・・・」

 「日本の輸送計画はどうなってる?」

 「一時的な使用だろう」

 「おかげでイギリス帝国は、解体ですぞ」

 「艦隊を派遣しなければ・・・」

 「いまさら、艦隊を派遣すればインドは、なんとかなるのかね」

 「それにシチリア上陸作戦も始めねばならんし」

 「イタリア上陸もせねばならん」

 「サンポール島は?」

 「もう、そんな段階ではない!」

 「インド洋に艦隊を派遣すべきとだから言ったのだ!」

 「しかし、インド洋に艦隊を派遣して日本海軍に地の利がある」

 「そんなことを言ってる場合か!」

 「大英帝国が・・・終わりだ・・・」 涙目

 

 

 

 真珠湾 第16機動部隊

  レキシントン、サラトガ、ワスプ

  重巡ポートランド、インディアナポリス、

  重巡ペンサコラ、ソルトレイクシティ、

  軽巡アトランタ、ジュノー、

  軽巡デンバー、サンタフェ、バーミングハム

  駆逐艦

   フレッチャー、ラドフォード、ジェンキンス、ラ・ヴァレット、ニコラス、オバノン、

   バッチ、ビール、ゲスト、ベネット、フラム、ハドソン、ハッチンス、プリングル、スタンリー、

   リングゴールド、シュレーダー、シグスビー、スティーヴンソン、ストックトン、

 

 空母レキシントン 艦橋

 艦長は苛立ち気味に離着艦訓練を眺めていた。

 真珠湾と南太平洋への輸送が一段落つき、

 攻勢に出ようかと思えば、ベテランパイロットを引き抜かれていく、

 さらに護衛艦隊も旧式が引き抜かれ、新型艦が配備される。

 新型と聞こえはいいものの、個艦の優秀性だけで戦えるわけでもなく、

 マンパワーも、練達されたチームワークの中でこそ発揮される。

 当然、艦隊運動も、やり直しさせられていた。

 副長は、人事管理でやつれており、

 士官の睨みと下士官の怒号は、毎日のように続いていた。

 「酷いものだ。性能の半分も発揮できないぞ」

 「日本海軍は、第一線のみは熟練者の集まりですが」

 「それ以外は農民の子供ばかりで、車にも乗ったことがなく酷いと聞いてます」

 「第一線が丸ごと残っている状況では、慰めにならんな」

 「日本はじり貧ですから、無理攻めしてくると思ってました」

 「噂が本当なら、待つこともできるだろうな」

 「異世界からの援軍ですか?」

 「噂だ。あくまでも噂だがな」

 「将兵は、どこからか、噂を聞きつけているようです」

 「だから、艦隊を選んで、ためしに攻撃してみる気になったのだろうな」

 

 

 エスピリットサント島 第18機動部隊

 エンタープライズ、ヨークタウン、ホーネット、

  重巡ノーザンプトン、チェスター、ルイビル、シカゴ、オーガスタ、

  軽巡サンディエゴ、サンフアン

  軽巡クリーブランド、コロンビア、モントピリア、

  軽巡セントルイス、ヘレナ

  駆逐艦

    シャバリア、パーシヴァル、ソーフリー、ウォーラー、ストロング、テイラー、デ・ヘヴン、

    スティーヴンス、ハルフォード、リューツ、ワトソン、フィリップ、レンショー、

    ソーン、ターナー、コンウェイ、コニー、コンヴァース、イートン、

 空母エンタープライズ 艦橋

 「日本海軍に移動はないか?」

 「インド洋の戦艦部隊の一部が太平洋側に移動してきた形跡があります」

 「それ以外は、変化がないようです」

 「基地航空部隊同士が消耗戦。機動部隊同士が睨み合って身動きとれずか・・・」

 「大統領は、戦果を望んでいますが?」

 「ドーリットル空襲で、日本海軍は、突撃かましてくると思ったんだがな」

 「逆に斜に構えられて、インド上陸作戦では、藪蛇ですかね」

 「まったくだ。ミッドウェーでも攻撃してくるなら好都合だったものを・・・」

 「F4Fワイルドキャットでは、本格的な海上航空戦は、気が進みませんね」

 「まぁ それは言えるがね」

 「それなら戦艦部隊を動かしたくなるだろうな」

 

 

 護衛艦隊

   シムス、ヒューズ、アンダーソン、ハムマン、マスティン、ラッセル、

   オブライエン、ウォーク、モリス、ロウ、ウェインライト、

   サマーズ、ウォリントン、サンプソン、デイヴィス、ジョーエット、

   ベンハム、エレット、ラング、メイラント、トリップ、リンド、ローワン、スタック、スタレット、ウィルソン、

 

 

 アメリカ戦艦部隊

  ワシントン、ノースカロライナ、

  サウスダコタ、インディアナ、マサチューセッツ、アラバマ、

  重巡ニューオーリンズ、アストリア、ミネアポリス、サンフランシスコ、クインシー、ヴィンセンス

  軽巡ブルックリン、フィラデルフィア、サバンナ、ナッシュビル、フェニックス、ボイシ、ホノルル

 駆逐艦

  ファラガット、デューイ、ハル、マクドノー、ウォーデン、デイル、モナハン、エールウィン

  ポーター、セルフリッジ、マクダガル、ウィンスロー、フェルプス、クラーク、モフェット、バルチ

  マハン、カミングズ、ドレイトン、ラムソン、フラッサー、レイド、ケース、カニンガム、

  カッシン、ショー、タッカー、ダウンズ、カッシング、パーキンス、スミス、プレストン、

  ダンラップ、ファニング、

  グリッドレイ、クレイヴン、マッコール、モーリー、

  バッグレイ、ブルー、ヘルム、マグフォード、ラルフ・タルボット、ヘンリー、パターソン、ジャーヴィス、

 

 戦艦ワシントン 艦橋

 「随分と集まったな」

 「それだけ、日本軍をインドから南太平洋に向けさせたいのでしょう」

 「インド洋など、イギリスにやらせればいいんだ」

 「イタリアを打倒してからでは?」

 「それまで、インドが持つかどうか」

 「一度独立の機運が高まれば、押さえがききませんからね」

 「しかし、朝鮮民族をインドに上陸させるなど、日本軍も滅茶苦茶するものだな」

 「それくらいやらないと、負けるということでは?」

 「しかし、まとまって、動かせないのが不安だな」

 「これだけの大所帯だ」

 「船団護衛と修理整備でも引き抜かれて、思い通りの編成と訓練ができないからな」

 

 

 リンガ泊地

 大小1000隻以上の船舶が並び、

 日本海運業者で振り分けられていく、

 積載していた物資も莫大であり、

 これらも日本軍で振り分けられていた。

 「では、200隻は、このまま、朝鮮人の入植用に使えるわけですな」

 「ええ、これだけの船があれば、輸送計画はなんとかなるでしょう」

 「それは助かるね」

 「無理した甲斐がありました。しかし、半島は大変な騒ぎですよ」

 「まぁ 日本人を半島に入植できますし、貧困層は、消えるでしょうな」

 「そうなると、陸軍は自然に弱体化しますね」

 「まぁ 生産手段に人を取られますからね」

 

 大和 艦橋

 露風を参考にした工事が進められていた。

 戦ってもいない戦艦がドックを埋めることで非難が集まるものの、

 海軍上層部の大和、武蔵の猫っ可愛がりは、是正されない。

 もっとも、大和、武蔵の改造に反発する者は多く・・・

 「インド上陸作戦で、焦点は、インド大陸沖になるだろうな」

 「インド大陸沖なら、地の利で勝る日本海軍が有利」

 「アメリカ機動部隊との一戦でも勝ちやすいでしょう」

 「問題は、アメリカが、インド洋に機動部隊を派遣するかでしょうな」

 「イギリスは、インド在イギリス軍のためにも艦隊を派遣してくるはず」

 「イギリス機動部隊は、北アフリカ上陸作戦と北大西洋の船団の護衛も兼ねている」

 「手が空いてないのでは?」

 「まさか、中国への空輸も絡んでますし」

 「イギリス海軍も、このまま黙ってはいないはず」

 「では、イギリス海軍の出撃に当たって、ドイツ海軍に共同歩調を取ってもらえるなら有利です」

 「どちらにしろ、インドへの朝鮮人上陸は継続する」

 「イギリス海軍とアメリカ海軍はそれを妨害するため出撃してくるはず」

 「後は、それを叩くことができれば・・・」

 「しかし、第四機動部隊の彼は碌なことを考えませんな」

 「朝鮮人のインド上陸の責は、奴に押しつけて」

 「我々は、戦果を上げればいい」

 「「「「あはははは・・・」」」」

 

 

 

 海上要塞 “幕露守” (別称 アメリカホイホイ)

 停泊していながら双発機が離着艦可能な飛行甲板を有していた。

 海底にまで伸ばした錨を利用し、

 “幕露守”の飛行甲板の向きを風上へと向けるが、その範囲は60度と広くない、

 年間、もっとも風の吹く向きに艦首を向けているだけだった。

 着艦フックを装備した鍾馗がワイヤーに引っ掛けて飛行甲板に制止する。

 「どうだ? 長谷輝少尉」

 「突入速度を保てれば、着艦はできますよ」

 「フックは、もう少し大きい方がいいでしょう。壊れると怖いですから」

 「そうか・・・」

 「たぶん、実際に配備されるのは翼面積の大きな3式か、4式になるだろう」

 「聞いた話だと。海軍さんが離着距離の制限を掛けたがっていますよ」

 「まだ狭いかららしい。しかし、性能を考えるなら、目を瞑って欲しいものだな」

 「ところで、この大きな御まじないは、なんだ?」

 艦上から海面にかけて、巨大なアーチが建設されていた。

 「陸軍機以上に、こいつの方が邪魔だろう」

 「さぁ なんか、敵艦隊を引き付ける御まじないらしい」

 「ふっ 観覧車みたいで喜ばれてますよ」

 「上は、何を考えてるんだか・・・」

 

 管制塔 赤レンガの人たち

 「工事は?」

 「インド洋の作戦で捕獲船舶を得ている」

 「幕露守の建設は危ぶまれていたが、全長1000m級への増築も可能かもしれないな」

 「朝鮮人のインド上陸で、中国への空輸も断つことができるはず」

 「中国戦線で無理しなくて済むはずです」

 「しかし、朝鮮人のインド上陸作戦は、人道上、問題になってるらしいぞ」

 「もう、私のせいにしてくれていいですよ」

 「・・・済まんな」

 「どこまでも、綺麗な軍、綺麗な国、綺麗な国民ですか」

 『『『『・・・・』』』』

 

 

 欧州 東部戦線

 メッサーシュミット戦闘機の機銃掃射が、シュトルモビク爆撃機を襲う。

 爆弾が投下され、ドイツ軍陣地に爆炎が立ち昇る。

 爆撃で震えるタイガー戦車が砲撃すると、T34戦車が吹き飛んだ。

 敵と味方の機銃掃射が辺りを薙ぎ払い、

 後方支援のカノン砲が大地を吹き飛ばし、

 歩兵砲の砲弾が機銃掃射を続ける塹壕の周囲に落ちて、爆発を起こした。

 負傷者が後方に下げられ、

 失われた命には、簡単な冥福が挙げられた後、状況が許されるなら埋められ、

 認識票が持ち去られていく、

 認識票と戦友の報告で死亡確認が取られるため、行方不明者の数も少なくない。

 フリードリヒ・パウルス元帥は、爆撃で振動する司令部で地図を見詰めていた。

 ソビエト軍の損失は、ドイツ軍の損失に倍する。

 これまでより、はるかに苦しい損失比であり、

 表面的に勝っている数値でも、攻守の判断を決めかねていた。

 これは、単純な損失比で収められないレベルの事柄であり、

 下士官以下なら見過ごせても、

 将校以上は、確実に意識しなければならない、もう一つのファクターが存在する。

 ドイツ帝国とソビエト連邦の国力比で考えると戦果も違って見えた。

 一見して大戦果でも国力比の比率でドイツが負けている計算も成り立っていた。

 そう、ドイツ軍は攻勢の限界に達し、確実に苦境に立たされていた。

 「損失比をバルバロッサ作戦並みに戻さないと、ドイツは確実に負けるぞ」

 「後退して、戦線を立て直すべきでしょうが・・・」

 「総統からの連絡は?」

 「それが、日本の戦線を気にしているようで・・・」

 「あんな辺境の国に何ができる」

 「インドを落としましたよ」

 「インドが降伏したのか?」

 「いえ、ですが、最大の港ムンバイを占領され」

 「イギリスは、不利なベンガル湾側のカルカッタで苦境に立たされているようです」

 「それでイギリスが落伍するのなら構わんがな」

 「問題は、予算をUボートに取られるということでしょうかね」

 「ちっ 戦線が維持できなくなっても知らんぞ」

 ドイツ軍将校は、雲霞のように押し寄せるソビエト軍に辟易しており、

 ドイツ軍将兵は、人を殺し過ぎて、疲弊していた。

 

 

 連合国軍は、シチリア上陸作戦のため、

 インド回復を後回しにせねばならなかった。

 そう、欧州戦線は、イギリスにとって直接的な死活問題であり、

 イギリスのインド支配は、単にイギリスの生命線に過ぎなかったのだ。

 そして、対インド侵攻の遅れは、日本軍のインド上陸作戦を許すだけだった。

 日本軍は、朝鮮半島の朝鮮人を船に詰め込むと、

 武器を持たせて、インド大陸の沿岸に上陸させたのだった。

 イギリス守備隊は、大混乱乱となって、朝鮮人狩りを始めるものの、

 数十万単位の上陸作戦のため、すぐに人手不足となっていく、

 インド社会は大混乱に陥り、

 インド独立運動も急速に拡大していく、

 

 

 峯風、澤風、灘風、汐風、秋風、夕風、太刀風、帆風、野風、波風、沼風 (太平洋)

 神風、朝風、春風、松風、旗風、追風、朝凪、夕凪、(太平洋)

 睦月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、長月、菊月、三日月、望月、夕月 (インド洋)

 若竹、呉竹、早苗、朝顔、夕顔、芙蓉、苅萱 (インド洋)

 峯風型、神風型、睦月型は、旧式駆逐艦であり、

 若竹型は比較的新しい2等駆逐艦だった。

 露鳳発見の影響なのか、全艦が海上護衛総隊へと編入され、

 海上航路の哨戒と監視を行っていた。

 この時期、最も忙しい、艦艇だったと言える。

 

 

 ソロモン海域

 アメリカ機動部隊は、ソロモン海域で日本機動部隊の出撃に備えていた。

 空母エンタープライズ 艦橋

 「ラバウルは、守勢のまま力を温存しているし」

 「日本機動部隊は、引き籠もっている」

 「ええ、アメリカ機動部隊を引き込んで、東洋艦隊のように撃退するつもりのようですね」

 「これでは、機動部隊は、ソロモンから引き抜けられないじゃないか」

 「イギリスは、シチリア上陸を中止てでもインド救援に向かいたがってますからね」

 「ふん! 植民地を手放せんとは、意地汚い連中だ」

 「真珠湾の機動部隊も基地航空部隊の増加がなければ動けないそうですよ」

 「アメリカ機動部隊2群も日本の第一機動部隊と、第二機動部隊が怖くて身動きが取れないとはな」

 「ソロモンとポートモレスビーの基地強化を急がせるべきでしょう」

 「ある程度戦力が整えば、インド洋に機動部隊を出撃させられるはず」

 「それでも、互角とはいえんよ」

 「ええ、不利ですね」

 「特に日本の第四機動部隊は別のプレッシャーを感じますね」

 「小型空母の集まりだ」

 「ですが、例のX艦が第四機動部隊に配備されると・・・」

 「X艦か、そんなものがあるとは思えないがな」

 「私の知ってる日本人は、まじめで小心で誠実でした」

 「日本軍は、奇襲、迂回戦術、夜襲、力押しの4択」

 「ペテンなんて気の効いたことはしないと思いますが」

 「まぁ そういう報告は受けてるな」

 

 

 セイロン島

 深夜のセイロン島が砲撃に包まれていた。

 艦砲射撃は、無線から入る数値に向けて大砲を動かし砲撃するだけだった。

 飛行場と軍施設が次々と破壊されていく、

 金剛 艦橋

 「空母の護衛かと思えば一転して、上陸作戦の支援艦か」

 「しかもかなり無理されてるな」

 「インド洋は、まともな敵艦隊がいないのなら、戦艦部隊だけでも十分だろう」

 「というより、Ka31を搭載しているだけで、ほとんどの不安が解消する」

 「しかし、護衛艦も引き抜かれて、睦月型と神風型だけだと不安だよ」

 翌日、伊勢、扶桑、山城、金剛、榛名、比叡、霧島がコロンボ港に入港していた。

 イギリス空軍の大半は、ムンバイ戦線に移動しており、

 さらに戦艦部隊の艦砲射撃によって、飛行場が壊滅し、

 日本の上陸作戦に反撃が取れなかった。

 日本軍1万がセイロン島に上陸し、

 その後、武器を手にした数十万の朝鮮人が上陸し破局が始まる。

 イギリス軍は、朝鮮人を含めた人海戦術の波に押し切られていく、

 セイロン島 イギリス軍司令部

 「駄目だ。日本軍の督戦隊と、朝鮮人囚人部隊のコンボ攻撃には対処できないぞ」

 「どうやら、日本は、朝鮮人を全てインドに上陸させるつもりのようです」

 「くっそぉ〜 日本軍め、なんという非道なことを」

 「こうなったら、我が軍も日本本土にインド人を逆上陸させては?」

 「あははは・・・いいねぇ」

 

 

 第四機動部隊

 露鳳

 「提督」

 「どうした?」

 「露鳳の暗号解読システムに日本の暗号を入れたのですが・・・」

 「ロシア語で解かれてしまいました」

 「な、何だと?」

 「「「「・・・・」」」」

 「ほ、他の国のもやってみろ」

 「はっ!」

 

 

 ラバウルは、日本とアメリカの最大の焦点であり、

 アメリカ航空部隊の攻勢が続いていた。

 日本海軍の零戦32型と陸軍の鍾馗が、

 アメリカのライトニング戦闘機、F4Fワイルドキャット、P40ウォーホークと空中戦を展開し、

 日本陸海軍将校たちが見上げていた。

 「アメリカ本土から離れているはずだが、アメリカ航空部隊の増強は目覚ましいな」

 「ムンバイ上陸とセイロン上陸で、イギリスのインド支配は崩れる」

 「上手くいけば、戦争は終結するかもしれないな」

 「どうかな。朝鮮人に武器を渡してインドに上陸させているだけだし」

 「日本軍は、引き揚げているから、直接インドを支配しているわけじゃない」

 「インド大陸を混乱させてるだけだ」

 「朝鮮半島が遺族に振り分けられるらしいよ」

 「へぇ〜 そっちが本当の狙いか?」

 「外道・・・」

 「朝鮮人だって、インドの主要都市を押さえられるなら悪くないと思うけどな」

 「それは、朝鮮人の個人としての資質によるな」

 「日本人と違って、気質が強いから武器さえ渡せば可能だろう」

 「国をまとめられないくらい性格が強いのが問題なんだけどな」

 「しかし、鍾馗は、意外とがんばってるな」

 「鍾馗がアメリカ航空部隊のサッチ・ウィーブを防いで、零戦で乱戦に持ち込めば数次第だ」

 「その数で押されているのが問題なんだけどな」

 「損失比で勝ってるだろう」

 「しかし、遮二無二攻撃してくるじゃないか」

 「インド洋に戦艦7隻を派遣したから、牽制しているんだろう」

 「戦艦は、機動部隊同士の戦いで、的代わりに過ぎないよ」

 「それだけで済めばいいがね・・・」

 

 

 アメリカ戦艦部隊 戦艦6隻、重巡6隻、軽巡7隻、駆逐艦46隻

  ワシントン、ノースカロライナ、

  サウスダコタ、インディアナ、マサチューセッツ、アラバマ、

  重巡ニューオーリンズ、アストリア、ミネアポリス、サンフランシスコ、クインシー、ヴィンセンス

  軽巡ブルックリン、フィラデルフィア、サバンナ、ナッシュビル、フェニックス、ボイシ、ホノルル

 駆逐艦

  ポーター、セルフリッジ、マクダガル、ウィンスロー、フェルプス、クラーク、モフェット、バルチ

  ファラガット、デューイ、ハル、マクドノー、ウォーデン、デイル、モナハン、エールウィン

  マハン、カミングズ、ドレイトン、ラムソン、フラッサー、レイド、ケース、カニンガム、

  カッシン、ショー、タッカー、ダウンズ、カッシング、パーキンス、スミス、プレストン、

  ダンラップ、ファニング、

  グリッドレイ、クレイヴン、マッコール、モーリー、

  バッグレイ、ブルー、ヘルム、マグフォード、ラルフ・タルボット、ヘンリー、パターソン、ジャーヴィス、

 アメリカ戦艦部隊は、ニューブリテン島とニューアイルランド島の間、

 僅か30kmほどの海峡を通過していく、

 ラバウル港が日本軍によって要港として注目され、

 占領された理由は、自然の要害であるという事実に他ならない。

 出入り口の海峡は、程よく広くて監視しやすく、

 背後に回り込もうとすれば発見される公算が著しく高くなった。

 ラバウルは、航空戦力を考慮しなくて済むなら強力な防衛力を誇る島であり、

 前衛の島など必要ないほどの要衝だった。

 アメリカ艦隊は、作戦のため、暗闇の海峡を100kmほど走らなければならない、

 その間、狭い海域で艦隊を展開できず危険に晒される。

 アメリカ海軍は、何度もラバウルを空襲しており、そのたびに海峡の航空写真を検討していた。

 前方のデュークオブヨーク島を目印に10時方向に切って、28kmほどがラバウル港だった。

 砲撃は20000mほどから始めるため、

 デュークオブヨーク島よりさらに内側に進まなければならなかった。

 ニューブリテン島とデュークオブヨーク島の間は、最短で9kmほど、

 さらに奥に入り込むと19kmほどの湾が作られていた。

 ラバウル沖

 ワシントン 艦橋

 「提督、ラバウルまで距離20000m」

 「見てろよ、夜間砲撃でラバウル航空部隊を壊滅させ、翌日の空襲で一気に滅ぼしてやる」

 「成功すれば大戦果ですね」

 「日本海軍は、大艦隊で夜間攻撃できると思っていないでしょう」

 「レーダーに反応は?」

 「いえ、今のところ、ありません」

 「・・・提督・・」

 「どうした?」

 「それが・・・無線輻射です」

 「方向は?」

 「・・・4時方向と9時方向です」

 「距離は?」

 「15000mほどです」

 「味方のものじゃないだろうな?」

 「通信管制してるはずですが・・・いえ、日本語のようです」

 「気付かれてるのか?」

 「いやな予感がしますね・・・」

 

 

 ニューアイルランド島は、ニューブリテン北方の島で、細くて長い地形だった。

 直線距離でラバウルまで70kmと離れていなくても、

 空を飛べない艦船にとっては、遠い距離に当たる。

  第四機動部隊

   露鳳 (Ka54 5機、Ka31 10機 零戦40機、99艦爆30機)

   日向 (零式水上偵察機15機 Ka54 2機)

   祥鳳、瑞鳳、龍嬢、(零戦30機、97式艦攻42機)

   古鷹、加古、青葉、衣笠

   阿賀野、

   巻波、高波、大波、清波

   白露、時雨、村雨、夕立、春雨、五月雨、海風、山風、江風、涼風

 

 航空巡洋艦 露鳳 艦橋

 Ka31からの情報がデーターリンクされ、艦内のモニターに表示されていた。

 全てロシア語だったが、通訳者が配備され、

 画像でも、だいたい見当がついた。

 「ラバウル沖に進出してきたら、いきなり実戦か・・・」

 「暗号が本当だとは・・・」

 「解読と通訳が間に合ってよかったよ」

 「インド洋に戦艦部隊が行ってるので、こちらを攻撃しようとしてるのでは?」

 「インドに朝鮮人が上陸すると困るのだろうか」

 「それは困るでしょう」

 「ふっ 運がいいのか、運が悪いのか、また妬まれそうだな」

 「運も力ですよ。提督」

 「ラバウル港に艦隊は?」

 「いまは、護衛総隊の峯風、澤風、灘風、汐風、秋風、夕風、太刀風、帆風、野風、波風、沼風の11隻」

 「それと、伊号3隻、呂号3隻、甲標的4隻です」

 「また、随分と、捨て駒だな」

 「ラバウル航空隊の防空能力の高さでしょう」

 「というより、艦船を狙って海上に降りたところを零戦と鐘軌で撃墜するのだろうな」

 「あ、あと、阿武隈と綾波、敷波です」

 「阿武隈、綾波、敷波は、戦艦部隊の配属だったが?」

 「連絡事項と人事の関係で、ラバウルに入港したようです」

 「どうされますか?」

 「やるしかないな」

 「我々の艦隊だけで?」

 「太平洋にいるのは空母部隊ばかりで夜戦には使いにくい」

 「それにトラックの第二、第三機動部隊は間に合わないだろう」

 「Ka31に吊光弾と800kg爆弾を装備だ」

 「はっ」

 「空中から指揮してみよう。留守は、Ka31を3機と駆逐艦2隻を残しておく」

 夕闇の露風の飛行甲板からKa31が次々と発艦していく、

 ヘルメットにロシア語の表示がされる、

 単純な話し、ロシア語が読めるなら、操縦することができ、

 最適な火器管制システムも運用可能だった。

 

 

 ラバウル沖、

 Ka31とKa54が音もなく滞空していた。

 真っ暗に見えてもコクピットからは、島陰に沿って、艦影が二つの列を作っていた。

   日向

   古鷹、加古、青葉、衣笠

   阿賀野、

   巻波、高波、大波、清波、

   白露、時雨、村雨、夕立、春雨、五月雨、海風、山風、

 

   阿武隈、綾波、敷波。

   峯風、澤風、灘風、汐風、秋風、夕風、太刀風、帆風、野風、波風、沼風

 「ほぼ、こちらの配置通りです」

 「上手くタイミングを合わせてくれよ・・・」

 「露鳳が心配です」

 「江風と涼風を護衛に付けているだろう」

 「駆逐艦2隻で露鳳と瑞鳳、祥鳳、龍嬢を護衛させるのですか?」

 「対潜哨戒の主役は、Ka31だよ。露鳳のソナーも常軌を逸している」

 

 

 駆逐艦 綾波 艦橋

 「本艦の敵の座標は、12-44-56です」

 艦長と副長が海図を睨む、

 「随分細かい座標まで指示してくるじゃないか」

 「第四機動部隊は、本当に分かっているのか」

 「攻撃は二マルマルです」

 「本当に全部計算しているんだろうな。敵艦は止まっていないぞ」

 「たぶん・・・」

 「もういい、二マル、12-44-56に一斉雷撃だ」

 定刻に61cm3連装魚雷発射管3基から、

 「てぇ〜!」

 一斉に魚雷が放たれていく、

 

 

 ラバウル沖で爆発音が轟き、

 熱発光する砲弾が闇の中を飛び交い、アメリカ艦隊へと降り注ぐ、

 ラバウルに迫るアメリカ夜戦艦隊に対し、日本の水雷戦隊が割り込んだ。

 カモフKa31が音もなく、上空を飛んでいた。

 日本の水雷戦隊を指揮していたのは、カモフKa31だった。

 アメリカ艦隊は、雷撃と砲撃で次々と大破し、炎上していた。

 ワシントン 艦橋

 最新鋭戦艦は見るも無残に粉砕され、傾いていく、

 死に直面し、絶望した者は泣き叫び、

 誰もがもうやめてくれと、心のうちに叫ぶ、

 艦長は、絶望的な戦況でも必要最低限の指示を出していた。

 「右舷艦尾に2本と左舷艦尾に1本です。現在、航行不能です」

 「サウスダコタに指揮を譲ると伝えろ」

 「交信不能!」

 「何だと?」

 「第1、第3砲塔使用不能です」

 「馬鹿な、雷撃が先に届いて、戦艦部隊の砲撃だと?」

 「雷跡に気付かなかったのか?」

 「見えませんでした」

 「注水して、艦の水平を保たせろ」

 「護衛艦隊を吊光弾の外に散開させろ」

 「炎上している艦に近づくな」

 「撃ち返せ!」

 生き残った二番砲塔の3門が一斉に火を吹いて敵艦らしき影に向かって砲弾が飛んでいく、

 「僚艦との交信は?」

 「攻撃を受けてから、不通です」

 「もっと早く云いたまえ」

 「言いました」

 「・・・敵と同じ周波数を使え」

 「それでは」

 「構わん」

 近くにいた駆逐艦に砲弾が命中して火災が起こると四方から砲弾が集まり、

 火達磨となって誘爆し、艦体が二つに折れ、沈没していく、

 「いったいどこから」

 「むしろ、どうやってでしょうか・・・」

 衝撃で、艦が震える。

 「・・・逆探で知られたのかもしれないな」

 「それとも赤外線・・・」

 「これだけ、精度が良いと、その両方のような気がします」

 「もうひとつ、最大の問題は、どうやって夜襲を予測できたかだ」

 「X艦の存在・・・事実かもしれないな」

 

 サウスダコタ 艦橋

 右舷に魚雷3本を受け、

 日本戦艦の主砲弾が浴びせかけられていた。

 爆発と衝撃で金属が破壊され、艦橋付近まで爆炎と黒煙が立ち昇っていた。

 艦内中が阿鼻叫喚といった状況が作られていく、

 反撃の砲撃は、傾いた艦体を計算しなければならず、

 爆煙と爆炎の合間、闇の中で敵の撃ち出す砲口の発光に向けてであり、

 精密射撃は期待できなかった。

 「この威力は、356mm砲だな。戦艦がいるようだ」

 「距離12000mからでは、356mm砲弾でも致命傷ですがね」

 「金剛型。伊勢・扶桑型は、インド洋にいると思ったが・・・」

 「いえ、インドで確認されたのは7隻でしたので、残った1隻なのでは?」

 「駆逐艦と潜水艦ばかりと思っていたのに・・・」

 「問題は、日本がタイミング良く、こちらの攻撃に合わせて、戦艦1隻を持ってこれたかだな」

 「事前に攻撃が知られていたと?」

 「いや、ラバウルが焦点なのは違いない」

 「しかし “どこ” は決まっていても “いつ” は、決まっていないはず」

 「アメリカの暗号は、ナバホ族しか知りませんよ」

 

 Ka31が次々と吊光弾を敵艦の前方直上に落としていくため、

 アメリカ戦艦部隊は、光の中に晒され、

 日本艦隊は、常に闇の中で砲撃できた。

 

 日向 艦橋

 5番、6番砲塔が剥がされ、水上機とヘリを搭載できるように改造されていた。

 そのため、1番、2番、3番、4番の連装砲塔4基しかなかった。

 そして、4基の連装砲塔は、まったく別の標的に向けられ、火を吹いていた。

 「ワシントン型命中!」

 「アメリカ艦隊は、左舷側に転舵しつつあるようです」

 「速度を維持、頭を押さえろ」

 356mm砲弾は、ほぼ30秒毎に一斉射が撃たれていく、

 連装6基は、12門であり、30秒で12発。1分間で24発が撃ち込まれていく計算だった。

 僅か30秒の時が遅く感じ、誰しもが、もっと発射速度を求め、

 燃え上がる敵艦隊と時計を見つめ、反撃を恐れた。

 

 

 日向 艦橋

 吊光弾の下にいる敵巡洋艦に砲弾が集束して火達磨となっていく、

 もはや、どの艦の砲弾が命中しているかも分からないありさまだった。

 「雷撃を終わらせた駆逐艦は下がらせろ。邪魔だ」

 「これだけの戦果ですからね、主砲を撃ちたがるのもやむえないのでは?」

 「戦艦の主砲と副砲で十分だ」

 「魚雷を持たない駆逐艦に何ができる」

 「後は、戦艦部隊に任せて後方で支援砲撃でもしてればいいんだ」

 「今やってるのが支援砲撃では」

 「後ろに下がらせろ」

 「駆逐艦は、戦艦の後ろに下がれなんて珍妙な命令に従わないかもしれませんね」

 

 

 

 アメリカ戦艦部隊は、絶妙なタイミングで、吊光弾を直上に落とされ、

 南北から日本の水雷戦隊に挟撃され、

 レーダーの索敵範囲の外から先制の雷撃を受け、

 日向の砲撃がアメリカ戦艦部隊へと吸い込まれ、爆発する。

 砲弾に包まれたアメリカ戦艦部隊に爆炎が立ち昇り、

 周辺の護衛艦艇は散開し、日本艦隊へと突撃していた。

 そして、適当な時期にアメリカ戦艦の直上から800kg徹甲爆弾が次々と投下され、

 ワシントン、ノースカロライナー、

 サウスダコタ、インディアナ、マサチューセッツ、アラバマの艦橋が破壊され、

 指揮系統を喪失してしまう。

 艦橋を失った戦艦6隻は、砲撃と雷撃に晒されながら、

 そのまま、ニューブリテン島に向かって進み続け、

 ラバウル近くの海岸に座礁してしまう。

 アメリカ海軍将兵は、圧倒的な戦力で必勝を信じていた。

 しかし、突如、攻撃を受け、指揮系統を喪失、

 生き残ったアメリカ巡洋艦と駆逐艦は、必死に戦うものの混乱は、やまず。

 沈みつつあるサンフランシスコから、撤退の命令が伝わるまで戦艦の周りで守護しようとし、

 撤退の命が下るや、総退却が始まった。

 

 アメリカ戦艦部隊 戦艦6隻、重巡6隻、軽巡7隻、駆逐艦46隻

  ワシントンノースカロライナ

  サウスダコタインディアナマサチューセッツアラバマ

  重巡ニューオーリンズアストリアミネアポリスサンフランシスコクインシーヴィンセンス

  軽巡ブルックリンフィラデルフィアサバンナナッシュビルフェニックス、ボイシ、ホノルル

 駆逐艦

  ポーターセルフリッジマクダガル、ウィンスロー、フェルプス、クラーク、モフェット、バルチ

  ファラガットデューイハルマクドノーウォーデン、デイル、モナハン、エールウィン

  マハンカミングズ、ドレイトン、ラムソン、フラッサー、レイド、ケース、カニンガム、

  カッシンショータッカーダウンズカッシング、パーキンス、スミス、プレストン、

  ダンラップファニング

  グリッドレイクレイヴン、マッコール、モーリー、

  バッグレイブルーヘルムマグフォードラルフ・タルボットヘンリー、パターソン、ジャーヴィス、

   ※ 赤字 沈没

 アメリカ戦艦部隊は、ラバウル砲撃を目前に攻撃され、

 戦艦6隻、重巡6隻、軽巡5隻、28隻が撃沈され、

 残存艦隊の軽巡2隻、駆逐艦19隻のうち、

 軽巡ボイシと

 駆逐艦11隻フラッサー、レイド、ケース、カニンガム、パーキンス、スミス、プレストン、

 マッコール、モーリー、パターソン、ジャーヴィスが脱出し、

 軽巡ホノルル、

 駆逐艦ウィンスロー、クラーク、バルチ、デイル、モナハン、エールウィン、ドレイトン、ラムソンが

 大破した状態で日本艦隊に包囲されてしまう。

 二時から始まって、僅か1時間で勝敗が決し、

 日本戦艦部隊は、巡洋艦3隻と駆逐艦3隻が小破しているだけだった。

 日向 艦橋

 「敵艦隊に降伏を要求しろ」

 無線と発光信号で降伏要求が伝えられ、

 アメリカ艦隊から白旗が上がり始めていた。

 そして、軽巡1隻と駆逐艦8隻は、ラバウル港へと入港していく、

 「提督。ブナから、ポートモレスビーのアメリカ航空部隊がこちらに向かっているそうです」

 「到着予定は?」

 「約2時間後です」

 「艦隊の接収は基地に任せて、撤退する」

 「ラバウル航空隊に艦隊上空を守らせればいいのでは?」

 「艦隊を守りながら戦う航空部隊は不利だ」

 日本戦艦部隊は、アメリカ航空部隊の空襲を恐れて後退し、

 “ラバウルの捕鯨撃ち” と揶揄された海戦は、日本艦隊の一方的な勝利で終息していく、

 

 

 夜が白む前から爆音がラバウル上空に轟く、

 「ウィスキー中隊とブランディー中隊は先行して、爆撃部隊の空路を空けさせろ!」

 『『了解』』

 「ビスコ中隊とマール中隊は左右上方に展開」

 『『了解』』

 「全戦闘機、全爆撃部隊に次ぐ」

 「昨夜の夜戦で艦艇が日本海軍に捕獲された可能性が高い」

 「離脱時は、可能な限り湾内の艦船の撮影を強行せよ」

 『『『『了解』』』』

 『敵機来襲、上方6時 約12機』

 『敵機来襲、下方10時 約9機』

 『各戦隊は展開、B小隊続け』

 爆撃部隊の空路を切り開こうとするライトニング戦闘機と、

 爆撃部隊に斬り込もうとする鍾馗、零戦が乱舞する、

 『日本機にコースが読まれてるぞ。一斉に攻撃してきた』

 戦場は、夜戦の海上戦から黎明の航空戦へと移行していく、

 ラバウル上空は、日米の航空機700機が軌跡を描き、

 狂ったように飛び回る。

 日本陸海軍将校と米海軍捕虜が空を見上げていた。

 「Ka31の空中哨戒能力は、本物だな」

 「しかし、夜襲の朝に空襲して来るとはな」

 「思った通りか・・・」

 「敵艦隊の追撃が難しいですね」

 「元々 迎撃の島だから、敵艦隊攻撃といってもな」

 「第三機動部隊のお出ましを願うか」

 「そうなると、アメリカ機動部隊が出てくる」

 「じゃ こちらも第二機動部隊が・・・」

 「しかし、外洋では、Ka31の航続力が不足で出られませんよ」

 「どうせ、飛ばすのは夜だろう。ヘリコプターは目立たせたくない」

 「本当は、空母に搭載できればいいのですがね」

 「もっと、頑丈に建造しないとな」

 

 

 エスピリットサント 第18機動部隊

 エンタープライズ、ヨークタウン、ホーネット、

   (ワイルドキャット108機、ヘルダイバー108機、アベンジャー45機)

  重巡ノーザンプトン、チェスター、ルイビル、シカゴ、オーガスタ、

  軽巡サンディエゴ、サンフアン

  軽巡クリーブランド、コロンビア、モントピリア、

  軽巡セントルイス、ヘレナ

  駆逐艦

    シャバリア、パーシヴァル、ソーフリー、ウォーラー、ストロング、テイラー、デ・ヘヴン、

    スティーヴンス、ハルフォード、リューツ、ワトソン、フィリップ、レンショー、

    ソーン、ターナー、コンウェイ、コニー、コンヴァース、イートン、

 

 エンタープライズ 艦橋

 期待されていた報告が一転し、重苦しい戦況ばかりが伝わる。

 「提督、日本艦隊の包囲は解かれた様です」

 「軽巡ボイス以下、駆逐艦11隻が大破した状態で14ktで帰還中です」

 副官は、海図でラバウル沖を指さした。

 「14ktとは酷いやられようだな」

 「日本艦隊の包囲が解かれただけでも幸運では?」

 「いや、日本空軍は、艦隊防空で無理しなくて済む」

 「航空戦の状況をみるなら、爆撃される前に艦隊が退避して正解だよ」

 「本当なら今頃、艦砲射撃でラバウルは、壊滅していたはずだがな」

 「戦艦部隊は、戦力も、艦の性能も、レーダー射撃も、優勢だったはずです」

 「日本艦隊は交替制を執っていないから、練度で勝っているはずだ」

 「練度で、他の要素を覆したと?」

 「X艦の不意打ちを食らったと考えるのは、簡単だが、安直過ぎるだろう」

 「確かに、しかし、報告では日本の戦艦は1隻のみ」

 「アメリカの戦艦6隻の指揮系統が十数分で失うなど起こりえるでしょうか」

 「んん・・・」

 「救援に向かわないので?」

 「機動部隊は発見されると負ける」

 「たぶん、トラックの第三機動部隊と第二機動部隊が出てくるはずだ」

 「この状況下で日本機動部隊とぶつかるのは、不利ですね」

 「しかし、行かなければならんだろうな、出来立てほやほやの護衛艦ばかりで・・・」

 縦列陣形は最も容易でありながらも、海上航空戦に向かない。

 かといって、複雑な艦隊運動は混乱を招く恐れがあった。

 総司令官は、能力の可否を含めた指揮をしなければならず、

 各艦の位置を固定した輪形陣となっていた。

 「提督、爆撃部隊より入電、戦艦6隻がラバウル沖に座礁」

 「写真を撮るように命令しろ」

 「提督、困ったことに・・・」

 「昨夜、座礁したのなら乗員は残ってるだろうな」

 

 

 ポートモレスビーのアメリカ航空部隊は、夜襲艦隊を守るため低空に降りるよりなく、

 日本機に対し、サッチ・ウィーブが使えないでいた。

 艦隊の弾幕は、夜戦の結果なのか、酷く心もとなく、零戦を追い切れずにいた。

 そして、零戦は、鈍重なアメリカ戦闘機を翻弄し、

 低空のライトニング戦闘機とF4Fワイルドキャットは機銃掃射を食らって、

 翼を捥がれ、胴体を破壊され、海面に叩き付けられていく、

 軽巡ボイス 艦橋

 「まだ、ラバウル沖か・・・」

 「もっと速度は出ないのか?」

 「機関室の浸水が止まりません」

 「護衛艦だけでも先に行かせるか」

 「編成を解けば輪形陣が崩れます」

 「単艦では、航空機の護衛が受けにくくなり、被害が増すかもしれません」

 「このままでは、損害ばかり増していくぞ・・・」

 零戦の機銃掃射で撃墜されたF4Fが舷側近くに落ちて爆発する。

 対空砲のアメリカ軍将兵は、血のりの付いた機銃座で失望し、

 他の友軍機に声援を送る。

 ほとんどの艦隊乗員は、航空機パイロットの事情を知らず、

 不利な戦いを強いられることに気付かない。

 アメリカ航空部隊は一気に消耗し、

 日本航空部隊は戦力を温存しつつ戦うことができた。

 

 激しい航空戦が繰り広げられる中、

 日米の偵察機が敵機動部隊を捜索するため、次々と出撃していく、

 

 

 第二機動部隊

  赤城、飛龍、蒼龍 (零戦74機、99艦爆54機、97艦攻63)

  筑摩、妙高、那智、足柄、羽黒

  時津風、浦風、磯風、浜風、谷風、野分、嵐、萩風、舞風、秋雲

 赤城 艦橋

 「くっそぉ〜 また第四機動部隊にやられた」

 「ラバウル沖への遠征など認めなければよかったのに」

 「指揮系統が違う。それに哨戒圏入りは、夜間のみに限定していた」

 「こちらも手柄を立てるしかありませんね」

 「敵機動部隊は、第18機動部隊、エンタープライズ、ヨークタウン、ホーネットか」

 「高速戦艦をインド洋に持って行かれちゃいましたし」

 「第一機動部隊が来ないと、寂しいですね」

 「第一機動部隊が来れば、レキシントンとサラトガも来るだろう」

 「レキシントンとサラトガが、いないことを祈りますよ」

 「そうだな、少なくとも、隻数が互角になると、地の利があっても不利だ」

 「しかし、アメリカの側からノコノコとラバウルに出てくるとは・・・」

 「新型艦艇が量産されているから、この辺で戦果をあげたかったのだろう」

 「それにインド洋に艦隊を出したがってたみたいでしたからね」

 「まさかインドに上陸するとはな」

 「上陸してるのは、朝鮮人ですよ」

 「日本軍は先に上陸して、後から上陸した朝鮮人に武器を渡して引き上げですからね」

 「酷い話しだな」

 

 

 

 第三機動部隊

  飛鷹、隼鷹、龍鳳、(零戦42機、艦爆36機、艦攻42機)

  最上、三隈、鈴谷、熊野、

  夕雲、巻雲、風雲、長波

  朝潮、大潮、満潮、荒潮、朝雲、山雲、夏雲、峯雲、霞、霰、

 飛鷹 艦橋

 「第四機動部隊は?」

 「露鳳の発覚を口実に後方に下げさせたはずです」

 「ふっ いよいよ。出撃か。待ってた甲斐があった」

 「ラバウルの基地航空隊にパイロットを引き抜かれそうになったのを必死に止めましたからね」

 「ここで活躍できないと、何言われるかわかったものじゃないな」

 「提督、味方の二式大艇が、敵機動部隊発見!」

 「よし、出撃だ」

 第三機動部隊から、零戦30機、99艦爆36機、97艦攻10機が飛び立っていく、

 そして、第二機動部隊からも零戦40機、99艦爆54機、97艦攻23機が飛び立っていた。

 

 

 アメリカ機動部隊上空を零戦70機とワイルドキャット80機が乱舞していた。

 そして、99艦爆90機、97艦攻33機が迫りつつあった。

 日本機動部隊に先制攻撃を許した時点で勝敗は決しており、

 アメリカ機動部隊は、直営戦闘機だけは足りず、

 ヘルダイバーとアベンジャーを索敵で出撃させ、

 さらに戦闘機を全て上げても防空に成功しなければ後がなかった。

 しかし、それはどちらも錯誤が生んだ勘違いに過ぎなかった。

 アメリカ機動部隊の護衛艦が多過ぎたのだ。

 雷撃機は低空を侵入するため、周囲の護衛艦によって狙い撃ちされかねなかった。

 99艦爆隊は、飛行甲板を使用不能にするだけでなく、

 護衛艦を減らす目的を持っていた。

 「まずいな、これじゃ 第二波の艦攻が壊滅する」

 「半分は駆逐艦を攻撃」

 

 

 エンタープライズ 艦橋

 「全機出撃しました」

 「これで、撃破されても機体だけは残せる」

 「日本機動部隊を発見したらポートモレスビーとガダルカナルに通報させればいい」

 どの無線も零戦に追い立てられる声が流れ、断末魔の叫びで事切れていく、

 時折、零戦を撃墜したと声が聞こえるが、数分後には、顔色が変わる。

 「ラバウルに近付き過ぎたのが、失敗だったか・・・」

 「いえ、戦艦部隊を見殺しにすれば、全将兵の戦意が失われます」

 「戦意を保つための作戦か・・・」

 「はい」

 「ゼロファイターは強い。どう思うね」

 「ギリギリまで、機体を軽くしているのではないかと」

 「だろうな。被弾するとバラバラになって落ちていくことで、見当が付く」

 「しかし、人命軽視ではパイロットの戦意を保てない、真似ができませんね」

 「考え方の違いだろうな・・・」

 「面舵一杯!」

 99艦爆の最初の狙いは、周辺を取り巻く護衛艦だった。

 多少、攻撃力が削がれても、空母に辿り着ける公算は逆に大きくなっていく、

 輪形陣の一角の駆逐艦4隻に爆弾を命中させると、雷撃機が隙間から滑り込んでくる。

 対空砲火が弾幕を作り、火薬の臭いを充満させながら弾薬の山がたちまち崩れ、

 薬莢の山が対空砲の周りに散らばる、

 99艦爆の7.7mm機銃弾が辺りを跳弾し、将兵を殺傷していく、

 爆弾が投下されると、小さな黒い塊がまっすぐと迫り、飛行甲板で爆発する。

 衝撃と爆風が甲板をなめ火薬の臭いを別の火薬の臭いを吹き流していく、

 爆炎は、艦橋を超えて噴煙で辺り包み込み、

 喧騒と怒声と断末魔が聞こえる。

 飛行甲板に穴が開けられ、格納庫の中にも被害が及ぶ。

 次の機体に機銃の弾道が集まるより早く、矢継ぎ早に爆弾が投下され、

 99艦爆が爆音を上げながら引き起こされていく、

 軽量な機体、手頃な250kg爆弾は、被害は小さくても命中率が良かった。

 2発が飛行甲板に落ち、格納庫から黒煙を吹き上げていく、

 そして、決定的な被害を与えるのは、魚雷であり、

 エンタープライズに1本が命中する。

 艦橋

 「提督。魚雷1本、爆弾2発が命中です」

 「ダメコン要員に消火させろ」

 「ヨークタウン2発、ホーネット1発の爆弾が命中」

 「雷撃されたのは、本艦だけです」

 「全艦、飛行甲板は、使用可能です」

 「第二波は、雷撃機を主力にしてるぞ」

 「この海域から離脱する」

 「空母を撃沈するには、弱い爆弾だな」

 「203mm砲弾の倍の重さですから飛行甲板を使用不能にするための爆弾か」

 「護衛の駆逐艦を血祭りに上げる爆弾のようです」

 「駆逐艦は6隻が大破してます」

 「まだ13隻残ってる」

 「とりあえず、命中させたいわけか・・・ジャブだな」

 「ええ・・・ボディブローも一発食らいましたが」

 

 第二機動部隊の第二波(零戦10機、97艦攻40機)と、

 第三機動部隊の第二波(零戦10機、97艦攻30機)が第18任務部隊を襲う。

 「なんだ。全然、駆逐艦が減ってないじゃないか」

 「しかも戦闘機を離発着させてるし」

 アメリカ機動部隊上空に達した時、護衛の零戦は、生き残ったワイルドキャット20機と交戦に入る。

 零戦とワイルドキャットが軌道を描きながら互いの後方に付こうと旋回し、

 零戦が小さな円を描いてワイルドキャット戦闘機内側に回り込むと20mm機銃と7.7mm機銃を撃ち込んでいく、

 そして、97艦攻が隙間の増えた輪形陣の中に突入し、

 機体に向かって集束する機銃弾の恐怖に耐えながら接近し、

 「てぇ!」

 雷撃していく、

 ヨークタウン、爆弾2発、魚雷3本、

 ホーネット、爆弾1発、魚雷2本、

 エンタープライズ、爆弾1発、魚雷1本が命中し、

 アメリカ機動部隊は、エスプリットサント島へと帰還することができた。

 

 空母 赤城 艦橋

 被弾した機体が次々と着艦してくる。

 周辺の駆逐艦を攻撃した99艦爆は、3分の2が残存したものの

 艦隊の内側に突入した97艦攻は、7割を喪失していた。

 「第2波は、攻撃成功と言いがたないな」

 「アメリカ機動部隊の護衛艦は30隻以上でした」

 「空母1隻当たり、護衛艦10隻か・・・」

 「特に軽巡の2隻は対空能力が高く危険です」

 「この調子だと航空機よりたくさんの護衛艦を建造するかもしれませんね」

 「こんなことなら、撤収中の艦隊を攻撃するんだった」

 「というより、艦爆隊は、全機で駆逐艦を攻撃すべきでしょうね」

 「それでは、機動部隊が空襲を受けてしまう」

 「では、艦載機が全滅してもいいと?」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 アメリカ戦艦部隊の残存艦隊にとどめを刺したのは、第四機動部隊だった。

 零戦10機、99艦爆30機、97艦攻42機と零式水上偵察機10機は、ノロノロと後退する軽巡ボイシと

 駆逐艦11隻フラッサー、レイド、ケース、カニンガム、パーキンス、スミス、プレストン、

 マッコール、モーリー、パターソン、ジャーヴィスを空襲し、爆撃し雷撃していった。

 満足な対空砲火も上げられず、速度も低下していた艦隊は、成す術もなく雷撃され、撃沈されていく、

 モーリー、パターソン、ジャーヴィスのみがブーゲンビル島に座礁させて艦を保全させることに成功していた。

 

 

 第四機動部隊

 露鳳 艦橋

 戦果を上げた攻撃部隊が広げられた飛行甲板に着艦してくる。

 しかし、垂直離着陸が可能なKa31、Ka54に比べ、如何にも邪魔に思える、

 まだ腑に落ちないものの空母でヘリが運用されるようになったのか、

 わかる気もしてきた。

 「損失は97艦攻2機。アメリカ残存艦隊の軽巡1隻、駆逐艦11隻を全滅させました」

 「そうか・・・」

 「また、やっかまれそうですね」

 「ふっ 露鳳と日向を危険に晒したと、文句を言われそうだな」

 「云われるでしょうね」

 

 

 ニューブリテン島

 ラバウル港

 9650t級軽巡ホノルル、

 1850t級駆逐艦ウィンスロー、クラーク、バルチ、

 1360t級駆逐艦デイル、モナハン、エールウィン、

 1500t級駆逐艦ドレイトン、ラムソン、

 生き残ったアメリカ海軍将校が艦から降ろされていく、

 死傷者は多く、

 自力航行の困難な艦の修復は五分五分に思えた。

 日本海軍将兵が乗り込み、穴を塞ぎ、海水を汲みだし、損傷個所の修復を始めていた。

 「どうしたものかな」

 「第四機動部隊に割り当てたらいいんじゃないか」

 「ふっ まぁ 連中の戦果だからね」

 「しかし、艦隊をあまり大きくすると、列強に漏れやすくなるぞ」

 「そうだな。同盟国のドイツ、イタリア。中立国のソビエトは探りを入れてきてるからな」

 

 

 ラバウルの浜辺

 ワシントン、ノースカロライナー、

 サウスダコタ、インディアナ、マサチューセッツ、アラバマ、

 6隻の新鋭戦艦は、2kmほどの海岸にまたがって座礁していた。

 乗員の大半は、生き残り、戦う術は残っていたものの戦意を喪失させていた。

 日本軍将校が海岸側で、アメリカ戦艦群がどう出るのか、見守っていた。

 日本軍将校たち

 「部隊の配置は完了しました」

 「そうか・・・」

 「攻撃しますか?」

 「まさか。食料か、水がなくなるまで待つよ」

 「しかし、あの大砲がラバウル基地に向けられていた、と思ったら、空恐ろしいねぇ」

 「自爆されるかもしれません」

 「その権利はあるだろうが・・・自爆したら全員殺すと伝えろ」

 「はい」

 艦橋の上半分は、直上から落とされた800kg爆弾が内部から炸裂したことで消え去っていた。

 そして、上甲板より上も、ほぼ廃墟となっていた。

 主砲塔の3分の2から3分の1は、使えそうなものの、6隻とも大破していた。

 

 ラバウル沖海戦で最大の戦果は、ポートモレスビーのアメリカ航空部隊を著しく消耗させたことにあった。

 それは、第二、第三機動部隊艦載機の消耗率よりはるかに大きく、

 ラバウル爆撃をしばらく中止しなければならないほどの損失だった。

 そして、ラバウルの飛行場には、大量に墜落したアメリカ軍機が集められ、

 部品の整理がされていた。

 日本軍パイロットたち

 「なぁ いい加減、零戦の整備をしろよ」

 「零戦より、ウォーホークか、ワイルドキャットか、ライトニングに乗れよ」

 「味方に撃墜されるだろうが!」

 「深緑色に塗って赤い丸を描いてやるよ」

 「おいおい」

 「いや、拾ってきた部品を組み立てるだけだから、まじ整備が早く終わるよ」

 「そうそう、ヤスリなんて使わなくていいし」

 「パッキンは油漏れしなくてもいいし」

 「脚は丈夫で折れそうにないし、着陸のたびに怖い思いしなくていいだろう」

 「まぁ 着陸のたびに泣きたくはなるけどね」

 「しかしなぁ」

 「撃たれても簡単には落ちない」

 「「「「・・・・・」」」」

 ラバウルに捕獲した米軍機部隊が編成された。

 

 

 

 欧州では、シチリア上陸作戦が強行され、

 東部戦線では、ドニエプル川の攻防が始まっていた。

 ドイツ軍は橋を爆破して川を盾に戦い、

 ソビエト軍の舟艇を撃破することで戦線を保っていた。

 東部戦線が膠着状態となったことで、

 ドイツは生産をキエフ、ウクライナなど東部側へ移動させ、

 前線への戦力を増強させようとしていた。

 兵站で余裕が生まれれば、ドイツ軍の総力は増し、

 地の利を含められるなら、数の劣勢を補うことができた。

 ベルリン

 「日本は、太平洋でアメリカの新型戦艦6隻を撃沈したそうだ」

 「はっ 合わせて、21万t弱です」

 「ふっ まだ大したことはないが、戦艦6隻という事実に変わりなかろう」

 「はい」

 「日本のX艦の仕業だと思うかね」

 「報告では、夜戦を仕掛けてきたアメリカ戦艦部隊を返り討ちにしたそうです」

 「地の利があったとしてもだ」

 「日本戦艦は、たったの1隻だったと聞く」

 「駆逐艦の魚雷の方が脅威だと思われます」

 「X艦の報告は?」

 「いえ、大型空母とヘリコプターの存在が確認されているだけで、深い内容は不明です」

 「この戦いの帰趨を決する秘密があるかもしれないというのに大使は何をしてる」

 「情報は収集していますが、存在が確認されていること以上は・・・」

 「もっと、Uボートをインド・太平洋に移動させろ。技術も渡していい」

 「はっ しかし、大型航洋型Uボートは少なく・・・」

 「最小の人数と武装。最大の燃料と食料で日本に回航させればいい」

 「3隻も送れば1隻は、ドイツ人だけでUボートを動かせるし、練度も高まる」

 「しかし・・・」

 「どうせ、旧型は性能が低く、損失が増しているのだろう」

 「日本に経費を使わせ、日本人に運用させればいい」

 「旧式Uボート1隻が護衛艦3隻をインド・太平洋に連れて行ってくれるのなら勝てる」

 「はっ」

 「日本が望む物を隙間に入れてやれば喜んで死地に赴くだろう」

 「そして、X艦の情報を持ち帰るのだ」

 「はっ」

 

 

 

 北緯34度、東経148 九十九里浜から760kmの洋上、

 幕露守 (別称アメリカホイホイ)

 巨大であるは、それだけ、浮力を有し、重量を増やすことができた。

 周囲に防潜網と波濤を縮小させる網が張られ、ブイが幾つも立っていた。

 進入航路は、決まっており、輸送船が補給し、零式輸送機が空輸していた。

 管制塔

 赤レンガの住人たち

 「へぇ〜 陸軍の4式戦闘機か、いいな」

 「試作量産中だよ」

 「名前は?」

 「疾風」

 「いいなぁ」

 「幕露守を航空基地に陸海軍統合か・・・」

 「上へ下への大騒ぎだったよ」

 「俺は国を愛しているんだ。軍を愛しているわけじゃない」

 「しかし、本当に量産可能な戦闘機なんだろうな」

 「まぁ 派閥原理がどう働いているのか・・・」

 「直接、工場で調べるしかないな」

 第四機動部隊の男は去っていく

 「・・・やれやれ、50年先の戦力を手に入れても足元が脆弱過ぎるよ」

 「新技術の導入は?」

 「品質と精度は真似できなくても、構造だけは、真似できるよ」

 「かなり大きくなりそうだけどね」

 「あれの方が頼りになるけどね・・・」

 哨戒中だったKa31が飛行甲板に着陸する。

 「戦果を上げたって?」

 「今月に入って、潜水艦2隻を撃沈したらしい」

 「味方と間違えていないだろうな」

 「この周辺海域は、航行禁止だろう」

 「そうだがね」

 「ところで、このまま、露鳳を第四機動部隊に任せてしまうのか?」

 「そうだな。上手く使えてるようだし」

 「なるべく、眼を触れさせたくないなら、人員の少ない第四機動部隊所属だろうな」

 「緘口令がいつまでもつかな」

 「ラバウル沖の戦いに、X艦が新聞に出そうになったのを慌てて止めさせたんだぞ」

 「あれは、運が良かったね。もちろん、紙面に載らなくての方だが」

 「ドイツの諜報も激しくなってるし」

 「流石にドイツにも言えないな」

 「しかし、この戦争の落とし所が見えないのがつらいな」

 「んん・・・まぁ アメリカが諦めるまで戦うしかないのでは?」

 

 

 呉

 クリモフTV3-117エンジンの試作がなされていた。

 書類の剥離が進んでいるため、エンジンを分解し、

 原寸の寸法を測って製図を引き直す為、どうしても差異が生じた。

 さらに品質、精度も模倣が不可能なため劣化ものとなっていく、

 しかし、航空機エンジンが怪しくても、

 船舶用ガスタービンエンジンは、拡大設計で製造の見込みが立ち・・・

 技師は、焼け溶けた羽(ファン)をため息混じりに見つめる。

 「資源も技術も電力もないのだから、根本的な解決には、至らないんだがな」

 「そうそう」

 「しかし、石川島芝浦のガスタービンが玩具に見えるな」

 「これほど差があると、別物だろう」

 

 

 イタリアでムッソリーニ総統が失脚、ピエトロ・バドリオが首相就任

 

 イタリア本土上陸作戦

 

 イタリアのバドリオ政権連合国に無条件降伏(イタリアの講和)

 

 ドイツ軍が北イタリアを制圧、

 

 

 インド独立戦争

 

 

 ワシントン 白い家

 偉い人たち

 机の上に航空写真が載せられていた。

 「5隻の旧式戦艦を沈められた事を笑った国が、6隻の新型戦艦を撃沈されるとはな」

 「戦艦か・・・捕虜になった海軍将兵の安否はともかく」

 「航空部隊の損失の方が痛手に感じるよ」

 「これ以上の南太平洋の作戦は、出来かねる」

 「直ちに艦隊をインド洋に向けるべきだ」

 「ドイツ打倒が先決ではないのかね」

 「インド回復が先決だ」

 「回復できるのかね?」

 「「「・・・・」」」

 「とにかく、インド洋に艦隊を差し向けるべきだ」

 「確かに戦艦部隊を失って、対日侵攻を考え直さねばならなくなってきている」

 「日本の本拠地に無理な強襲をかけたからではないのか?」

 「まさか、戦力比では成功確率は95パーセントを超えていた」

 「日本海軍に、あれだけの幸運はあり得ない」

 「だが、たった1隻の旧式戦艦に、6隻の新型戦艦が全滅させられているじゃないか」

 「・・・この艦橋の破壊され方は、不自然過ぎる」

 一枚の写真がテーブルに放られた。

 「・・・356mm砲弾の艦橋直撃じゃないのか?」

 「いや、356mm砲弾では直撃でも無理だし、このような破壊のされ方はしない」

 「1500m上空から、まっすぐ、800kg徹甲弾が落ち・・・」

 「天井を突き破って、内側から粉砕したような破壊のされ方だな」

 「水平爆撃かね?」

 「ブーゲンビル島で救出したアメリカ軍将兵の報告で水平爆撃された事はない」

 「しかし、6隻とも艦橋をピンポイントで狙われてる」

 「まず、第一に、日本海軍は、夜間に水平爆撃のできるだけの予算はない」

 「急降下爆撃か」

 「仮にだ」

 「日本に夜間に急降下爆撃するバカがいても、この命中率は不自然だ」

 「800kg爆弾を急降下爆撃できる機体はない」

 「あの噂のヘリコプターとかいうのでは?」

 「まさか、800kgの爆弾を空中に持ち上げられるようなヘリコプターは存在しない」

 「X艦ではないのか?」

 「日本が未知の世界と協定を結んでいる噂があるが・・・」

 「まさか」

 「日本を早急に叩くべきだ」

 『『『『・・・・』』』』

 

 インド大陸

 次々と上陸してくる朝鮮人とイギリス軍の掃討戦によって誘発され、

 英インド兵の反乱とインド人の暴動が増加していた。

 そして、自由インド軍の参戦によってカルカッタは火の海となって、

 インド独立戦争は、全インド大陸に広がっていた。

 イギリス軍は、要衝で守勢に立たされ、

 インド人とインド兵から身を守るだけで精一杯だった。

 この狂乱を引き起こした朝鮮人は、400万に達し、

 インド東海岸側のチェンナイへも朝鮮人の上陸が始まり、

 女子供の入植もはじまっていた。

 

 

 セイロン島には100万の朝鮮人が上陸しており、

 イギリス軍は、降伏し、

 日本軍は、中心になるコロンボ港を占領していた。

 長門、陸奥、伊勢、扶桑、山城、

 金剛、比叡、榛名、霧島は、チェンナイ上陸作戦を終了させて休息していた。

 そして、少し離れた場所にUボート艦隊も並んでいた。

 

 長門 艦橋

 「インド独立戦争のために砲身を全部使い果たすかね・・・」

 「どちらかというと、戦艦部隊をすり減らしているような気もしますね」

 「まったく、何度も砲身交換させるし、往復させるし」

 「アメリカ戦艦部隊の壊滅で、余裕ができたのでは?」

 「その前からやってる」

 「まだミズーリー級が残っているし、旧式戦艦部隊も残っている」

 「それにイギリスの戦艦部隊も残ってる」

 「Uボート部隊の話しでは、イタリア上陸作戦が終わったら、インド洋に回航されるそうです」

 「Uボートもついに60隻か、本気で南アフリカ、インド、豪州を孤立させる気らしいな」

 「そのうち、ティルピッツとポケット戦艦もインド洋に来るのでは?」

 「イギリス機動部隊を率いてくると割が合わないから来なくてもいいけどな」

 「ドイツ軍は、潜水艦作戦のための人員を派遣したがっています」

 「かまわんだろう。コロンボ港をドイツ海軍に任せて、太平洋に戻りたいものだ」

 「日向ばかりいい思いしてますからね」

 「アメリカの新鋭戦艦6隻を日向1隻で壊滅させたことになってるからな」

 「夜中に大砲撃ったら、運良く、6隻の新型戦艦の艦橋を吹き飛ばした、ですか?」

 「ふっ アメリカやイギリスが、そんな幸運を信じてくれるか不安だがな」

 

 ドイツUボート艦隊

 Uボート艦橋

 「戦艦7隻が勢揃いか、ドイツ海軍じゃ お目にかかれない光景だな」

 「ティルピッツの方が大きいですよ」

 「しかし、日本海軍は戦艦1隻で、アメリカ新型戦艦を6隻を全滅させたんだぞ」

 「それが7隻もいる」

 「日本海軍は、幸運だったと」

 「あり得んな。何かを隠してる」

 「こちらに来た朝鮮人の話しだと、X艦は存在すると」

 「もっと、X艦を知ってる朝鮮人を見つけて、聞き出そう」

 「日本人は、朝鮮人を信用しない方がいいと」

 「まぁ 街で、やっていることを思えばそうだろうが・・・」

 「インド人といい勝負だと思ったが」

 「「「あははは・・・」」」

 「交渉はどうなっています?」

 「横須賀のUボート150隻配備は渋られている」

 「数を減らして、トラック環礁なら構わないらしいが」

 「トラックでは、維持管理が不安では?」

 「大型輸送船を改造して潜水艦用の浮きドックを建造するそうだ」

 「それでは、目的が達成できないのでは?」

 「つまり、何かを隠している」

 「しかし、コロンボ港60隻、横須賀150隻は、ドイツ本国が不利になるのでは?」

 「大西洋では、月の戦果が半分以下の30万tに落ちて、沈んだ潜水艦は数倍の40隻に達している」

 「大西洋だけでなく、インド・太平洋全域で活動させて護衛空母と護衛艦を分散させる必要がある」

 「それに沈める数が増えるなら、どこで沈もうとほとんど変わらないそうだ」

 「まぁ 空襲で港や出港入港時に沈められる心配は減りますがね」

 「日本軍は、少なくともイタリアより信用できる」

 「勝手に対米参戦したのにですか?」

 「大ポカだが最悪でもイタリアと違って戦う気概はあるよ」

 「しかし、魚雷の代わりに工作機械の備品を欲しがる国ですからね」

 「コロンボの工廠があればしばらくは戦えるだろうが、とんだ後進国だ」

 

 

 イタリアのバドリオ政権、連合国側に立ってドイツに宣戦布告。

 

 泰緬鉄道が全線接続(開通式は10月21日)。

 

 

 フィラデルフィア計画 駆逐艦エルドリッジで実施

 

 

 呉

 35000t級戦艦ワシントン、ノースカロライナー、

 35000t級戦艦サウスダコタ、インディアナ、マサチューセッツ、アラバマ、

 9650t級軽巡ホノルル、

 1850t級駆逐艦ウィンスロー、クラーク、バルチ、

 1360t級駆逐艦デイル、モナハン、エールウィン、

 1500t級駆逐艦ドレイトン、ラムソン、

 損害は大きかったものの、修復改装は可能だった。

 旧式戦艦から捕獲戦艦への乗り換えが決まっており、

 旧式戦艦の捨て所と捕獲戦艦の改装項目が検討されていた。

 赤レンガの住人たち

 「酷くやられたものだ」

 「敵だからね。遠慮する奴はいない」

 「戦艦は、酸素魚雷を何本も受けてる割に沈んでないな」

 「ダメージコントロールが優れているのだろう」

 「艦橋がやられても士官以下は機能してたんだな」

 「個人主義と自由主義の社会で育ったから柔軟性が高いのだろう」

 「日本軍将兵だと上手くいかないかもしれないな」

 「修理すれば使えそうか?」

 「機関室は海水をかぶってますが、洗って油で拭いて蓋してますし、使えるでしょう」

 「無事に日本まで持ってこれた方が驚きだね」

 「ラバウル沖海戦で、アメリカ航空部隊と艦隊は消耗してるようです」

 「潜水艦も、露鳳のおかげで、近付けなかったようですし」

 「本当に潜水艦を22隻も撃沈したのか?」

 「そっちの方が大手柄だ」

 「戦艦を再浮上させていたのは、気付かれてましたからね」

 「日本までの航路を監視されていたようです」

 「第四機動部隊大活躍か・・・」

 「しかし・・・戦艦は使い道がないな」

 「まったく・・・」

 「こうなったら旧式戦艦7隻を使い潰して、アメリカ戦艦に乗り換えるか」

 「いいねぇ しかし・・・」

 「サウスダコタ型4隻は全長を伸ばして、バルバス・バウにしないと使いにくそうだ」

 「あと、艦首砲塔2基で艦尾を飛行甲板にするか。Ka31を搭載すれば戦果も大きいだろう」

 「露鳳と、いま建造してる大鳳で集中運用が楽だと、思うがね」

 「艦橋を露鳳型にするとしても、Ka31を配備できないとうまみがない」

 「平坦過ぎて面白みのない艦橋だな」

 「対電探用だろう。露鳳は、電探に映り難くい構造になっている」

 「・・・艦内構造が不便なのは、それでか」

 「問題は艦尾のみの飛行甲板にするか。露鳳と同じ、アングルド・デッキ型にするか」

 「艦体構造から艦尾のみだろう。大規模な改造は、大戦に間に合わない」

 「まぁ 水上機でもいいよ。数を載せた方が哨戒で艦隊を守りやすいし」

 「でも大砲はどうする? 50口径406mm砲なんて作ってないぞ」

 「いまある分を使い潰したら日本製だな」

 「45口径356mm3連装2基か。45口径410mm連装2基か」

 「45口径410mm3連装2基でもよくないか」

 「大砲なんて飾りだよ。偉い人はわかってる」

 「ラバウル沖海戦で戦艦を見直したんだがな」

 「それだって、戦艦の主砲より魚雷だろう」

 「最初の雷撃で戦いは決したそうじゃないか」

 「まぁ それは言えるがね」

 

 

 エスピリットサント島

 第51任務部隊が集結していた。

 1943年後半になると、アメリカの軍需生産は軌道に乗り、

 枢軸国の多少の戦果など覆い尽くす情勢をみせた。

 真珠湾の航空戦力は、航空部隊だけで日本艦隊を壊滅させられるほどであり、

 ポートモレスビーとガダルカナルの航空戦力は、新型機へと換装され、

 F6Fヘルキャット、F4Uコルセア、P47サンダーボルト、P38ライトニングへと変わり、

 質と量の両方で、ラバウル航空部隊の零戦、鍾馗を圧倒していた。

 そして、フリーハンドを手に入れたアメリカ海軍は世界最大最強の規模の艦隊となっていた。

 アメリカ海軍は、イタリア上陸作戦を終わらせると、

 その主力を太平洋に向けることができた。

 もしアメリカをして大攻勢を思いとどませるモノがあるとしたなら敵国ではなく、

 アメリカ国民の厭戦機運しかなかった。

 そして、それは、死傷者と比例するものだった。

 

 

 エスピリットサント港

 アメリカ海軍将校たち

 「やはり、ラバウル沖航空海戦で空母の犠牲を最小限にできた要因は護衛艦の多さだな」

 「日本の艦爆は威力が小さく、艦に致命傷を与える機体は艦攻に頼っている」

 「艦爆で周囲の護衛艦を損傷させても」

 「それ以上の駆逐艦で空母の周囲を埋めれば艦攻を撃墜して、空母への被害を減らせる」

 「日本は、どういう手で来ると思う?」

 「日本の国力、燃料、資源の備蓄から逆算すれば、日本軍のできることは限られている」

 「大規模な攻勢は困難になるはずだ」

 「アメリカ軍は、ランチェスターの法則。多対一の原則に従って進めばいいと思うな」

 「しかし、夜戦は避けた方がいいだろう。昼戦でも十分に圧倒できるはずだ」

 「問題は、X艦か、びっくり箱のように何が飛び出してくるのかわからん」

 「そういえば、潜水艦の被害の多さは、異常だな」

 「日本のソナー技術は、そんなに高くなかったと思ったが」

 「逆にUボートの損失が増して、船団護衛に護衛空母と護衛艦を引き抜かれている」

 「このままだと上陸作戦艦隊の編成で支障がでそうだな」

 「日本は、捕獲した艦艇を改装しているようだが」

 「戦力としては、大したことはないだろう」

 「戦艦6隻を?」

 「航空部隊の練度は向上している。400機で空襲すれば確実に撃沈できる」

 

  第1群

  空母エンタープライズ、ヨークタウン、ホーネット、

    (ワイルドキャット108機、ヘルダイバー108機、アベンジャー45機)

  軽巡サンディエゴ、サンフアン、

  軽巡クリーブランド、コロンビア、モントピリア、

  駆逐艦

    シャバリア、パーシヴァル、ソーフリー、ウォーラー、ストロング、テイラー、デ・ヘヴン、

    スティーヴンス、ハルフォード、リューツ、ワトソン、フィリップ、レンショー、

    ソーン、ターナー、コンウェイ、コニー、コンヴァース、イートン、

 

  第2群

  空母レキシントン、サラトガ、インディペンデンス、

  軽巡アトランタ、ジュノー、

  軽巡デンバー、サンタフェ、バーミングハム

  駆逐艦

   フレッチャー、ラドフォード、ジェンキンス、ラ・ヴァレット、ニコラス、オバノン、

   バッチ、ビール、ゲスト、ベネット、フラム、ハドソン、ハッチンス、プリングル、スタンリー、

   リングゴールド、シュレーダー、シグスビー、スティーヴンソン、ストックトン、

 

  第3群

  空母エセックス、バンカー・ヒル、カウペンス、

  重巡ノーザンプトン、チェスター、

  軽巡アムステルダム、サンタフェ、タラハシー、

  駆逐艦

   フート、スペンス、テリー、サッチャー、アンソニー、ワズワース、ウォーカー、

   ブラウンソン、ダリー、イシャーウッド、キンバリー、ルース、アブナー・リード、

   アムメン、ムラニー、ブッシュ、トラセン、ヘイゼルウッド、ヒーアマン、ホーエル、

 

 

  第4群

  空母イントレピット、フランクリン、ベロー・ウッド、

  重巡ポートランド、インディアナポリス、

  軽巡セントルイス、ヘレナ

  駆逐艦

   マッコード、ミラー、オーウェン、ザ・サリヴァンズ、ステファン・ポッター、

   ティンゲイ、トワイニング、ヤーナル、ボイド、ブラッドフォード、ブラウン、

   コーウェル、カップス、デヴィッド・W・テイラー、エヴァンズ、ジョン・D・ヘンリー、

 

  第5群

  空母ベニントン、ボノム・リシャール、モンテレー、

  重巡ルイスビル、シカゴ、オーガスタ、

  軽巡バーニングハム、モービル、

  駆逐艦

   フランクス、ハガード、ヘイリー、ジョンストン、ロウズ、ロングショー、モリソン、

   プリチェット、ロビンソン、ロス、ロウ、スモーレイ、ストッダート、ワッツ、レン、

   オーリック、チャールズ・オースバーン、クラクストン、ダイソン、ハリソン、

 

  第6群

  空母オリスカニー、ワスプ、プリンストン、

  重巡ペンサコラ、ソルトレイクシティ、

  重巡ボルチモア、ボストン

  駆逐艦

   ジョン・ロジャース、マッキー、マリー、スプロストン、ウィックス、ウィリアム・D・ポーター、

   ヤング、チャレット、コナー、ホール、ハリガン、ハラデン、ニューコム、ベル、

   バーンズ、イザード、ポール・ハミルトン、トゥイッグズ、ハワース、キレン、ハート、

 

 

 戦艦12隻

  コロラド、メリーランド、ウェストバージニア、

  テネシー、カリフォルニア、

  ニューメキシコ、ミシシッピ、アイダホ、

  ペンシルベニア、

  ネバダ、

  ニューヨーク、テキサス

 護衛空母16隻

  駆逐艦

  メトカーフ、シールズ、ワイリー、アボット、ブレイン、アーベン、ヘイル、シゴーニー、

  ステンベル、アルバート・W・グラント、ケイパートン、コグスウェル、インガソル、

  ナップ、ビアース、ジョン・フッド、ヴァン・ヴァルケンヴァーグ、チャールズ・J・バジャー、

  コラハン、ダッシール、バラード、キッド

 揚陸指揮艦(AGC)2隻

 攻撃輸送艦(APA)12隻、兵員輸送艦(AP)1隻

 ドック型揚陸艦(LSD)6隻、戦車揚陸艦45隻、揚陸輸送艦49隻(貨物輸送艦(AKA)、

 貨物船27隻、病院船2隻、その他65隻

 

 

 一方、日本は、インド上陸作戦で、イギリスのインド大陸支配を終わらせ、

 ビルマ戦線を喪失させてしまう。

 また、イギリスのインド支配終焉は、米英軍が空輸していた中国支援も終わらせてしまう。

 中国戦線の中国軍は、攻勢力を喪失し、

 日本軍は、余剰戦力を引き抜く事で、太平洋の戦線を維持しようとしていたものの、

 生産力より消耗の方が多く、戦前より生産品が劣化していく、状況も生まれ、

 性能向上型の大量生産は望むべくもなくなっていた。

 赤レンガの住人たち

 「もう、零戦と鍾馗を共有機にすればいいではないですか」

 第四機動部隊の男は投げやりに応える。

 「疾風は?」

 「疾風ですか、吹かしたら爆発して落ちそうなエンジンに命を預けられませんよ」

 「性能はいいのだ」

 「性能が良くても落ちるかもしれないエンジンじゃ無理させられないし」

 「それなら飛びそうなエンジンで戦う方がいいですね」

 「それでは勝てん」

 「アメリカ軍は、1000機単位で空襲してくるのですよ」

 「100機の疾風か? 400機の零戦と鍾馗か?」

 「そ、そんなに差は生まれんだろう」

 「稼働率を考えれば、それくらいの差は生まれますよ」

 「とにかく、まともに飛ぶエンジンでなければ、パイロットは安心して乗れない」

 「しかし、零戦や鍾馗では、F6Fヘルキャットには勝てない」

 「先に見つければどうです?」

 「・・・・」

 「先制攻撃できるのなら、性能でなく、数の戦いになる」

 「100機ほどの疾風を飛ばして喜んでいたって勝てませんよ」

 「背伸びして飛びもしない不良品を多量生産するより、堅実な戦闘機が、よほど戦える」

 

 

 北九州

 Uボート30隻が集結しつつあった。

 工作艦型5隻と輸送艦型5隻が外洋Uボート艦隊に含まれ、

 これらの艦艇は、日本のインド上陸作戦が始まると建造が検討され、

 インドと太平洋でUボート艦隊を運用させることができた。

 工作艦型と輸送艦型は、魚雷が積まれておらず、

 工作機械とエンジン、マウザー20mm機銃が積み込まれていた。

 特に工作艦型は、狭い艦一体型の旋盤、フライス盤、中ぐり盤が効率良く置かれ、

 原材料、燃料、電力を供給するだけで、高品質の部品を製造することができた。

 日本陸海軍将校たち

 軽く回すだけでベアリングが音もなく、振動することもなく回り続けた。

 『品質の安定してない原材料じゃ 長く使える部品が作れないな・・・』 ドイツ職人

 「凄いな。30隻全部、工作艦型にしてくれたら助かるけどな」

 「「「あははは・・・」」」 ため息

 『『『・・・・・・・・・・・』』』 ため息

 日本は後進国だった。

 Uボート工作艦が八幡製鉄所近くに配備されたのは、最高の原材料を優先的に回す為だった。

 もっとも、マザーマシンとして使うか、戦闘用の部品を作るかで一悶着、二悶着あり、

 結局、共有部品が大量に作られていく、

 そして、工作Uボート艦隊と幕露守(アメリカホイホイ)が、陸海軍の戦闘機を疾風に統合させ、

 結果的に日本脅威は高まり、

 連合国軍の欧州と太平洋の予算比率を変えてしまう。

 

 

 ドニエプル川攻防戦

 モスクワの東220kmにある標高220mのヴァルダイ丘から始まる川は南へ流れ、

 2290kmほど蛇行して黒海へと流れ込んでいた。

 冬になれば凍って戦車が渡れ、

 夏でも渡河作戦が可能になるほどソビエト軍は増大していた。

 ドイツ軍は、緒戦の勢いを喪失しつつあり、

 ソビエト軍は、戦意と練度を高め、粛清時代の機運を一新していた。

 ドイツ軍とソビエト軍の戦力差は逆転し、戦線の拡大が困難になり、

 防衛線の厚みを縦深陣地で増すことでソビエト軍の攻勢に堪えていた。

 補修用の貨車で、タイガーが修理され、前線へと移動していく。

 ドイツ軍将兵たち

 焚き火でウィンナーが焼かれていく、

 前線では、見つかって砲弾が飛んできそうでも後方なら比較的安全だった。

 「ベルリンが爆撃されたようだ」

 「南イタリアが占領されたからな。包囲が狭められてるって感じだな」

 「山岳地だから何とか持ち堪えられるらしいよ」

 「東部戦線をもっと縮小しないと戦力の振り分けが効かないんじゃないか」

 「そうだよな。パルチザンも出没してるし」

 「でも武器持って向かってくる奴もいるけど、武器を密売する奴もいるからね・・・」

 ウクライナ人が戦場で拾ってきた武器をドイツ軍に売り始める。

 彼らの中にスパイが紛れ込んでいたとしても不思議ではないものの、

 ドイツ軍は、戦場で武器が増えれば有利であり、

 ウクライナ人もルーブルを分けられると生活が楽になった。

 ドイツ軍は、都市を占領すると銀行も襲撃しており、

 ルーブルを燃やして暖を取っていたところ、ウクライナ人と取引が始まった。

 たとえ、共産主義社会で紙幣の価値が相対的に低くても労働の対価は、ルーブルで支払われ、

 店でモノを買う時、ルーブルが使われていることに変わりがなかった。

 ドイツのウクライナ占領政策が変化したのは、スターリングラードの戦いでソビエト軍に圧倒され、

 後退したからにすぎない。

 ウクライナ人は、ルーブルを貰い、ほくそ笑みながら次の武器を拾いに行く、

 「裏切り者」

 隠れてみていた隣家のニキータが呟く、

 「酷いことを言うなよ」

 「だって、ドイツ野郎に武器を売るなんて」

 「おまえ、ロシア人。好きか?」

 「大っ嫌いよ」

 「ドイツ軍に武器を渡せば金を貰えて」

 「憎たらしいロシア人を殺してくれて、上手くいけばドイツ人も戦死してくれる」

 「・・・私もやるわ」 にや

 金のためだけに危険を冒して生きる人生は空し過ぎる、

 目的がなければ人生は張り合いがない、

 この時代、東欧で吹き荒れる暴力と無法は、憎しみの感情を高め、

 人に生きる目標と生き甲斐を与える存在がいた。

 ウクライナ人にとって、ドイツ人とロシア人は、憎むべき敵という関係でしかなかった。

 

 

 インド

 インド独立戦争は、日本軍の上陸とイギリス軍の敗走、

 その後の朝鮮人の大量上陸という迷惑な混乱から始まった。

 日本軍の武器を手にした朝鮮人は、生存圏を得ようと拡大し、

 ガンジーとその一派の民衆は、非暴力を望むものの、

 イギリス軍は、次から次へと上陸する日本軍と、

 その後に上陸する朝鮮人の群れに対応できず。

 暴走する朝鮮人と怒ったインド人の紛争は、ついにイギリス軍へ向けられる。

 日本軍の勝利と占領は一時的なものであり、

 恒久的に築き上げてきたイギリス植民地世界を挫く力に足りなかった。

 しかし、ダムの決壊は、小さな亀裂から起こるものであり、

 日本軍の上陸は、その亀裂を走らせるのに十分だった。

 朝鮮人の大量上陸は、インド民衆との軋轢を増大させ、

 独立戦争という形で決壊させてしまう。 

 最大派閥の非暴力を貫くガンジー一派が片隅に追い込まれ、

 代わりに自由インドのスバス・チャンドラ・ボースが頭角を現し、

 インド民衆の支持を集めたことだった。

 藩王国は、統一か、分離独立かで揺れ動き、

 カースト打倒の民衆も立ち上がろうとしていた。

 そして、日本海軍がラバウル沖でアメリカ艦隊の一部を捕獲したことがインドの混乱に拍車をかけた。

 日本海軍が旧式戦艦の使い潰しを決めると、

 日本軍のインド上陸作戦は増え、朝鮮人の上陸も急速に増えていた。

 混乱は混乱を呼び、インド独立も混迷を深めていく、

 

 

 露鳳 艦橋

 試行錯誤の解析と訓練で曲がりなりにも使えるようになっていた。

 それだけ燃料を消費したということであり、

 それだけ日本海軍将校が露鳳に集中したからともいえる。

 Ka31とKa54は、所属配置替えと、予備部品の消耗で減らされ、

 零戦、彗星、天山が換わりに配備されていた。

 決戦を前に露鳳の主戦力は、分散され、消耗していきそうな勢いだった。

 露鳳の有用部品の劣化物が形を変えて、日本の工場で作られていたものの、

 オリジナルとは、明らかに性能で開きがあった。

 天山がワイヤーを引っ掛け着艦していた。

 「・・・艦橋が大きいと、明らかに邪魔だな」

 「その分を埋め合わせるだけの管制ができますよ」

 「連合艦隊旗艦も可能ですね」

 「大和と武蔵は大戦にまったく寄与していないからな」

 「インドで旧式戦艦7隻を使い潰せば、自然と大和と武蔵を出すことになるでしょうね」

 「そうだな」

 「そういえば、大和と武蔵も艦尾に飛行甲板を作りたがってたな」

 「Ka31を搭載して、旗艦として返り咲きたいのだろう」

 「最前線に出ず、艦を守れますからね」

 「460mm砲弾も惜しんでいるのだろう。対地攻撃には勿体無さ過ぎる」

 「410mm砲を装備すれば、もう少し派手に撃ちまくれたのにな」

 「ですがインドを独立させたからって日本が助かると限らないのでは?」

 「戦争に勝つと、敵艦を沈めるは、違うからね」

 「窮地に陥ったイギリスがどう出るかな」

 

 CIC 技術者たち

 「このコンピューターというのは、凄いものだな」

 「ああ、どうやって作っていいのか、見当もつかない」

 「それに、これは、材料が炭素らしいが、どうやって作るんだろうな」

 「石油、石炭、コールタールで試しているが・・・」

 「同じものが作れたら、戦える気がするんだがな」

 「しかし、肝心の燃料がないとな」

 「中東に燃料があるらしいけど」

 「あそこまで行くとなると潜水艦が怖いからな」

 「Ka31で護衛させればいいじゃないか」

 「いや、戦艦でKa31を護衛したいくらいだ」

 「蓄積された技術の容量がまったく違うからな」

 

 

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 月夜裏 野々香です

 日向は、事故のせいで大活躍〜♪

 一つの兵器で、どの程度、歴史を改竄できるでしょうか。

 余裕が生まれたことで、もう少し、緩やかな戦後を迎えられたら・・・

 

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第02話 1942/04 『それは、神風とともに』

第03話 1942 『アメリカホイホイ』
第04話 1944 『ラバウル要塞の攻防』