月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 

 第05話 1945 『継戦不能?』

 When(いつ) Where(どこで) Who(誰が) Why(どうして) What(何を)。

 情報を制する者は、主導権を握ることができた。

 露鳳のコンピューターは、機械式暗号を全て解読し、

 また、ナバホ族の言語も演算装置に組み込まれて解読していた。

 ロシア語で表示されたそれは、

 “一月初旬” “北緯34度、東経148” “ハルゼが” “全機動部隊で” “攻撃”

 だった。

 日本潜水艦部隊と日本機動部隊は、総力を上げて迎撃決戦の準備を進めた。

 

 

 北緯34度、東経148

 九十九里浜から760kmの洋上、

 その海域は、アメリカホイホイ、アメサギ(詐欺)城などの隠語で呼ばれていた。

 幕露守の飛行甲板は、疾風が並び、時折、零式輸送機が離着艦する、

 幕露守周辺海域は防潜網が張り巡らされ、

 その外側は、海防艦が曳航式ソナーを垂らして走り回っていた。

 94式水上偵察機は、12時間に及ぶ飛行時間を利用し、

 さらに外周の対潜哨戒を繰り返した。

 水上艦であれ、潜水艦であれ、待ち伏せする側が圧倒的に有利で、

 侵攻日時がしれてる場合、更に守備側が有利になった。

 ガト型潜水艦の作戦能力は、水中177.6km(96海里)/2ktほどでしかなく、

 艦隊と対潜水艦哨戒機が定期的に哨戒できるなら、

 哨戒密度と水中航続距離の計算になり、潜水艦の侵入は、ほぼ防ぐことができた。

 また、幕露守の周囲は、防潜と波濤防止のため、コンクリート船が海中に浮かべられており、

 雷撃も困難になっていた。

 

 幕露守 管制塔

 中央に地図が広げられ、

 何度も繰り返された図上演習のおさらいが進められていた。

 露鳳と違って古い図上演習で計算も簡単でいい加減なモノだったものの

 状況をほぼ掴むことができた。

 幕露守の疾風の総数400機、

 予測されるアメリカ機動部隊のヘルキャットとコルセアの総数1200機、

 ランチェスターの法則で計算すると戦力比1対3は1対9となり、

 ヘルキャットとコルセアは、疾風400機を全滅させても134機しか失われず、1066機が残存する。

 もっとも、レーダー誘導と性能比は加味されておらず、

 流動的な日本機動部隊の艦載機も加算されていない、

 日本機動部隊全群が加わると戦力比は変わり、損失比も変わり、天秤も違ったものになっていく、

 むろん、ランチェスターは、万能ではなく、

 いくつかの要素が加わっただけで損失比は、大きく変動した。

 

 「旗を揚げよ」

 「はっ」

 露鳳の艦橋から漏れる小さな灯りが闇夜にZ旗を浮かび上がらせた。

 「・・・どうやら、東南海地震が引き金になったらしいな」

 「はい、僅か一か月で太平洋に米英機動部隊を転進させるとは驚きです」

 「アメリカ太平洋艦隊は、それだけの物量に支えられているのだろう」

 「アメリカが無理をしているのならありがたいですな」

 「そりゃそうだ」

 「これだけの艦隊戦力を面白半分で日本近海まで持ってこられたら、日本に勝ち目がない」

 「まったく・・・」

 「アメリカ機動部隊が艦載機を発艦させるとしたら、200〜300kmの距離だ」

 「アメリカ機動部隊は、哨戒圏外から夜間に急接近し」

 「夜明けと同時に爆撃部隊を発艦させ、幕露守の航空戦力を奪おうとするはず」

 「そして、旧式戦艦部隊を前進させ、艦砲射撃で幕露守を撃沈する、と考えられます」

 「情報では、イギリスの戦艦部隊と機動部隊も参戦するだろう」

 「その場合、戦艦部隊が増えることになるし」

 「夜明け前にアメリカとイギリスの高速戦艦部隊と交戦もあるだろう」

 「戦艦部隊の進出は、南インド洋海戦とラバウル沖海戦で懲りてるはず」

 「可能性は低いと思われますが」

 「私もそう思うよ。だが可能性を捨てることはない」

 「こちらの作戦は?」

 「・・・やはり、シナリオB22が適当だろうな」

 図上の敵味方の駒が動かされていく、

 「「「「・・・・」」」」

 

 アメリカ機動部隊10群は、洋上補給を行いつつ日本の哨戒圏に近付いていた。

 そして、夕闇とともに速力を上げ西進していく、

  第1群

  空母エンタープライズ、ヨークタウン、ホーネット、

    (ヘルキャット180機、ヘルダイバー70機、アベンジャー20機)

  戦艦ミズーリー

  軽巡サンディエゴ、サンフアン、

  軽巡クリーブランド、コロンビア、モントピリア、

  駆逐艦

    シャバリア、パーシヴァル、ソーフリー、ウォーラー、ストロング、テイラー、デ・ヘヴン、

    スティーヴンス、ハルフォード、リューツ、ワトソン、フィリップ、レンショー、

    ソーン、ターナー、コンウェイ、コニー、コンヴァース、イートン、

 

  第2群

  空母レキシントン、サラトガ、インディペンデンス、

    (ヘルキャット140機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  戦艦アイオワ

  軽巡アトランタ、ジュノー、

  軽巡デンバー、サンタフェ、バーミングハム

  駆逐艦

   フレッチャー、ラドフォード、ジェンキンス、ラ・ヴァレット、ニコラス、オバノン、

   バッチ、ビール、ゲスト、ベネット、フラム、ハドソン、ハッチンス、プリングル、スタンリー、

   リングゴールド、シュレーダー、シグスビー、スティーヴンソン、ストックトン、

 

  第3群

  空母エセックス、バンカー・ヒル、カウペンス、

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  戦艦ニュージャージー

  重巡ノーザンプトン、チェスター、

  軽巡アムステルダム、サンタフェ、タラハシー、

  駆逐艦

   フート、スペンス、テリー、サッチャー、アンソニー、ワズワース、ウォーカー、

   ブラウンソン、ダリー、イシャーウッド、キンバリー、ルース、アブナー・リード、

   アムメン、ムラニー、ブッシュ、トラセン、ヘイゼルウッド、ヒーアマン、ホーエル、

 

 

  第4群

  空母イントレピット、フランクリン、ベロー・ウッド、

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  戦艦ウィスコンシン

  重巡ポートランド、インディアナポリス、

  軽巡セントルイス、ヘレナ

  駆逐艦

   マッコード、ミラー、オーウェン、ザ・サリヴァンズ、ステファン・ポッター、

   ティンゲイ、トワイニング、ヤーナル、ボイド、ブラッドフォード、ブラウン、

   コーウェル、カップス、デヴィッド・W・テイラー、エヴァンズ、ジョン・D・ヘンリー、

 

 

  第5群

  空母ベニントン、ボノム・リシャール、モンテレー、

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  大巡アラスカ

  重巡ルイスビル、シカゴ、オーガスタ、

  軽巡バーニングハム、モービル、

  駆逐艦

   フランクス、ハガード、ヘイリー、ジョンストン、ロウズ、ロングショー、モリソン、

   プリチェット、ロビンソン、ロス、ロウ、スモーレイ、ストッダート、ワッツ、レン、

   オーリック、チャールズ・オースバーン、クラクストン、ダイソン、ハリソン、

 

 

  第6群

  空母オリスカニー、ワスプ、プリンストン、

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  大巡グアム

  重巡ペンサコラ、ソルトレイクシティ、

  重巡ボルチモア、ボストン

  駆逐艦

   ジョン・ロジャース、マッキー、マリー、スプロストン、ウィックス、ウィリアム・D・ポーター、

   ヤング、チャレット、コナー、ホール、ハリガン、ハラデン、ニューコム、ベル、

   バーンズ、イザード、ポール・ハミルトン、トゥイッグズ、ハワース、キレン、ハート、

 

 

 第7群

  空母タイコンデロガ、ランドルフ、ラングレイ

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  重巡キャンベラ、クインシー

  軽巡オークランド、リノ

  駆逐艦

   メトカーフ、シールズ、ワイリー、アボット、ブレイン、アーベン、ヘイル、

   シゴーニー、ステンベル、アルバート・W・グラント、ケイパートン、コグスウェル、

   インガソル、ナップ、ビアース、ジョン・フッド、ヴァン・ヴァルケンヴァーグ、

 

 第8群

  空母ハンコック、ボクサー、カボット

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  重巡ピッツバーグ

  軽巡ヴィンセンス、ヴィックスバーグ

  軽巡フリント

  駆逐艦

   チャールズ・J・バジャー、コラハン、ダッシール、バラード、キッド、ベニオン、

   ヘイウッド・L・エドワーズ、リチャード・P・リアリー、ブライアント、ブラック、

   チョウンシー、クラレンス・K・ブロンソン、コットン、ドーチ、ガトリング、ヒーリー、

 

 第9群

  空母レイテ、キアサージ、バターン

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  軽巡スプリングフィールド、パサデナ、マイアミ、ウィルクス=バール

  駆逐艦

   ヒコックス、ハント、ルイス・ハンコック、マーシャル、マクダーマット、マクゴーワン、

   マクネーア、メルヴィン、ホープウェル、ポーターフィールド、ストックハム、

   ウェダーバーン、ピッキング、ハルゼー・パウエル、ウールマン、レメイ、

 

 第10群

  空母シャングリラ、アンティータム、サン・ジャシント

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  軽巡ビロクシー、ヒューストン、ダルース、アストリア、

  駆逐艦

   ワドレー、ノーマン・スコット、マーツ、キャラハン、カッシン・ヤング、

   アーウィン、プレストン、ベンハム、カッシング、マンセン、ジャーヴィス、

   ポーター、コルホーン、グレゴリー、リトル、ロックス

 

 

 イギリス機動部隊

 第1群

  空母インプラカブル、イラストリアス、フォーミダブル

   (シーファイア72機、ファイアフライ36機、アヴェンジャー45機)

  重巡フロビッシャー、カンバーランド、サフォーク、サセックス

  軽巡バーミンガム、グラスゴー、ベルファスト、アルゴノート、

  駆逐艦

   グレンヴィル、アルスター、ユリシーズ、アンドーンテッド、

   アンディン、アーサ、アーチン、ウラニア

 

 第2群

  空母インディファティガブル、ヴィクトリアス、インドミタブル

   (シーファイア72機、ファイアフライ36機、アヴェンジャー45機)

  重巡ベリック、ケント、デヴォンシャー、ノーフォーク、

  軽巡フィービ、シラ、シリアス、ローナ、ブラック・プリンス、ダイアデム

  駆逐艦

   ティーザー、テネイシャス、ターマガント、タープシコリー、

   トローブリッジ、チューモルト、タスカン、ティリアン

 

 イギリス戦艦部隊

  戦艦キング・ジョージ5世、アンソン、デューク・オブ・ヨーク、ハウ、

  戦艦レナウン、

  軽巡ロイヤリスト、ケニア、モーリシャス、ナイジェリア

  軽巡ニューカッスル、シェフィールド、リヴァプール、クレオパトラ、

  駆逐艦

   ソーマレス、サヴェージ、スコーピオン、スカージ、

   セラピス、シャーク、サクセス、スウィフト

 

 

 戦艦12隻

  コロラド、メリーランド、ウェストバージニア、

  テネシー、カリフォルニア、

  ニューメキシコ、ミシシッピ、アイダホ、

  ペンシルベニア、

  ネバダ、

  ニューヨーク、テキサス

 護衛空母16隻

  駆逐艦

  メトカーフ、シールズ、ワイリー、アボット、ブレイン、アーベン、ヘイル、シゴーニー、

  ステンベル、アルバート・W・グラント、ケイパートン、コグスウェル、インガソル、

  ナップ、ビアース、ジョン・フッド、ヴァン・ヴァルケンヴァーグ、チャールズ・J・バジャー、

  コラハン、ダッシール、バラード、キッド

 

 ピケット駆逐艦隊

  アレン・M・サムナー、モール、イングラハム、クーパー、イングリッシュ、

  チャールズ・S・スペリー、オールト、ウォルドロン、ヘインズワース、

  ジョン・W・ウィークス、ハンク、ウォレス・L・リンド、ボリー、コンプトン、

  ゲイナード、ソーレイ、ハーラン・R・ディクソン、ヒュー・パーヴィス、

  バートン、ウォーク、ラフィー、オブライエン、メレディス、デ・ヘヴン、

  マンスフィールド、ライマン・K・スウェンソン、コレット、マドックス、ハイマン、

  マナート・L・エベール、パーディ、ロバート・H・スミス、トーマス・E・フレーザー、

  シャノン、ハリー・F・バウアー、アダムス、トルマン、ドレクスラー

 

 

 第1群 空母エンタープライズ

 粉雪が暗い窓に当たって左舷側へ滑っていく、

 灯火管制中の艦橋は非常灯だけの薄暗がりで、外は、寒々とした闇に包まれていた。

 明日は激戦、カフェインの入ったコーヒーの香りさえ、戦意の高まりを落ち着かせた。

 アメリカ合衆国は国力比で日本に勝ち、

 アメリカ太平洋艦隊は戦力比で日本艦隊に勝っていた。

 そして、日本の第一機動部隊、第五機動部隊は呉、

 第二、第三機動部隊はトラック、

 第四機動部隊、戦艦部隊は、リンガ泊地で確認されていた。

 この作戦は陽動作戦と巧みな情報工作により隠蔽され、日本海軍に気付かれていないはず、

 日本側に知られているアメリカ海軍の次の作戦は、来月のポナペ島とトラック環礁攻略だった。

 とはいえ、日本艦隊出撃の可能性は否定できず、

 図上では、日本海軍全艦がX海域後方に配置されている、

 無敵艦隊と思えるアメリカ艦隊は、日本艦隊と同様、洋上に浮かぶ鋼の城に守られているだけに過ぎない、

 砲弾や爆弾が命中すれば死ぬかもしれず、

 魚雷が何本か命中すれば海の藻屑だった。

 冬の海で漂流しても生存率が低く、運が悪ければ艦と一緒に海の底だった。

 前方を進む戦艦ミズーリーの小さな艦尾白色灯が頼もしく思えた。

 点々と見える周囲の白色灯と、

 右舷側の赤色灯、左舷側の緑色灯は、空母が輪形陣に囲まれている事を意味し、

 不安な気持ちを和らげさせた。

 通信管制が敷かれ、艦隊内の交信は、探照灯のモールス信号が使われる、

 それすら敵潜水艦に発見されると脅え、交信は必要最小限にとどめられていた。

 見張り員は、暗い海面に現れるかもしれない雷跡だけでなく、

 用心深く、闇夜を見上げる。

 公式的には、戦艦日向が新型戦艦6隻を葬った事になっていた。

 しかし、人の口に鍵は掛けられず、

 確認されていない流言が将兵の間で飛び交う。

 ある者は、新型戦艦6隻の艦橋を破壊した存在をデストロイヤーと呼び、

 ある者は、クラッシャーと呼び恐れた。

 アメリカ軍のコード名で、朱雀(Ka54)は、グリフォンと呼ばれ、

 海燕(Ka31)はワイバーンと呼ばれていた。

 ワイバーンとグリフォンが戦艦6隻撃破と関係があるのか不明で、

 別の兵器が存在する可能性もあった。

 レーダースコープのモニターを覗き込む将校も多い、

 新兵だけでなく、ベテランも目視よりレーダーに頼る、

 近代兵器の先端を行く自負と同時に、

 古い海の男の感性を薄れさせ、漠然とした脆さを感じさせる、

 海図の上にアメリカ機動部隊10群、イギリス機動部隊3群の13個の輪形陣の駒がおかれ、

 日本の巨大空母とX艦が対局側に置かれ

 その方向に連合艦隊の輪形陣5つの駒が並べられていた。

 士官は、刻々と駒を動かし、夜間戦闘機編隊の駒を艦隊上空に並べていく、

 アメリカ機動部隊は、ラバウル沖海戦の経験で、日本の夜間爆撃を極度に恐れ、

 夜間護衛機も配備していた。

 勝利の期待と敗北の不安は、戦場でつきものだった。

 日米の将校は、不安を解消するため、不鮮明な推測を元に、似たような図上演習を何度も繰り返す。

 アメリカ海軍の圧倒的な戦力差も、未知戦力に掻き消されていく、

 今回の作戦は、未知の巨大空母と、X艦を恐れてのことだった。

 そもそも、座標に固定されたそれを巨大空母といえるものなのか、

 別の目的を予感させる構造物が巨大空母に存在し、不安を増長させる。

 アメリカの不安の元凶は、目標のX海域に集約されていた。

 アメリカ軍将兵は、敵に勝る大部隊でありながら慢心せず敵を恐れ緊張している。

 理想的な指揮が可能に思えた。

 『『『『物量で勝てるはず・・・』』』』

 「X海域までの距離は?」

 「300kmです」

 「日本のレーダーは、本当に我々か、ドイツと同レベルなのだろうな」

 「常識的に日本のレーダーは、我々より劣ってるはずです」

 「非常識な噂が起きていなければですが」

 「何度も起きてるよ・・・」

 そう、テーブルの上に載せられた証拠写真が全ての噂を現実のものにさせていた。

 「どちらにしろ、噂は確認せねばならん」

 「・・・夜襲部隊を出撃させろ」

 「はっ」

 F6F5NヘルキャットとTBM3アベンジャーが出撃していく、

 アメリカ機動部隊は、夜間戦闘部隊、夜間攻撃部隊を配備させていた。

 日本機が巨大空母から発艦する前に巨大空母上空の制空権を奪い、

 後続の攻撃部隊が来るまで、日本の戦闘機を低空に押さえ込み、

 あわよくば、巨大空母の飛行甲板を爆撃し、

 夜のうちに日本機の発艦を食い止める編隊だった。

 夜間攻撃は、ランチェスターの法則で3対1の戦力差を広げ、

 4対1、5対1にさせる可能性も秘め、

 天秤をアメリカ機動部隊に傾ける、そのはずだった。

 「夜襲部隊、全機発艦」

 「直ちに第二次攻撃部隊を甲板に並べろ」

 夜間攻撃は、前座の部隊で、第二次攻撃が主力の攻撃部隊だった。

 暗闇の中、飛行甲板は淡い小さな光に照らされていた。

 艦載機がエレベーターで飛行甲板へ持ち上げられ、次々と並べられていく、

 将兵たちは、訓練通り、というより実弾を使うため訓練より慎重に動いた。

 艦橋の士官は表情もなく、時計と甲板作業を測っていく、

 攻撃が始まったことで、互いの攻撃圏内に入ったことになり、

 噂と現実の狭間で言い知れぬ不安が深まり、危惧と疑惑が交錯する。

 甲板に攻撃部隊が並び始めると、攻撃部隊到達が夜明けと重なるように計算する。

 「・・・提督、南左翼第5群のピケット艦オールトより、緊急無電」

 一瞬にして、作戦の失敗の恐れと、不審がよぎる、

 「北右翼から通信。敵機接近。数23機。速度200km/h。距離150km」

 「機種は?」

 「レーダーの反応から・・・零式水上偵察機と思われます」

 「提督、南左翼から敵機接近。数26機。速度200k/h。距離180km」

 「機種は?」

 「レーダーの反応から・・・零式水上偵察機と思われます」

 「北右翼と南右翼の夜間戦闘機を向かわせろ」

 「左翼第5群に接近する艦隊約16隻をレーダーが捕捉」

 「日本の哨戒艦隊か・・・」

 「・・・提督、北右翼第8群のピケット艦パーディより、緊急無電」

 「北右翼第8群に接近する艦隊19隻をレーダーが捕捉」

 「第5群より通信!」

 「空母ベニントン、ボノム・リシャール、モンテレー。被爆しました!」

 「右翼の第8群より通信。敵艦隊と交戦に入りました」

 「提督。この規模は・・・待ち伏せです」

 「馬鹿な・・・」

 「北の敵強襲艦隊は、戦艦を含んでいます」

 「なんだと」

 艦橋は、ラバウル海戦の悪夢を思い出し総毛立っていく、

 「通信管制解除」

 「全艦隊は、当海域より離脱する」

 「第58機動部隊は南と北から挟撃された。全護衛艦隊は、空母を守り迎撃せよ」

 「南側の敵強襲艦隊に戦艦3隻を確認」

 無線封鎖が解かれ、艦橋に暗号と音声が飛び込む、

 敵艦隊の方向と位置が通報され、

 海図の上に確認された敵艦隊の駒が動かされていく、

 「提督、南北の日本艦隊は、後方の機動部隊側へ回り込み、退路を断とうとしています」

 「敵艦隊の正確な布陣はまだ分からないのか?」

 「どちらも戦艦8隻から10隻を含む艦隊としか・・・」

 「正面からくる艦隊は?」

 「そちらはまだです」

 「第8群より通信」

 「空母ハンコック、ボクサー、カボット、被爆!」

 「魚雷なのか?」

 「いえ、爆弾です」

 「夜間爆撃なのか」

 「かもしれませんが、砲撃かもしれません」

 「わからないのか」

 「飛行甲板が被爆してます」

 闇夜の中、水平線上が赤炎に照らされ、火焔が次々と立ち上っていてく、

 将校たちは騒然とし、さらなる報告を求め、司令官の命令を待った。

 「・・・夜襲部隊より入電、艦隊正面より艦隊数16隻が接近中です」

 「北と南から、そして、正面の西から・・・」

 不意に爆弾が投下された時に空気を穿つような音響が伝わる、

 そして、闇に爆炎を立ち昇らせた。

 「ホーネット被弾!」

 「レーダー手は何をしていた!」

 「レーダーに反応ありません」

 「馬鹿な。これは、砲撃じゃない。爆撃だぞ」

 「夜間戦闘機は何をしてる」

 「日本の水上機編隊と交戦中です」

 「すぐに艦隊上空に戻せ、そいつらは囮だ」

 「ヨークタウン被弾!」

 「な・・なぜ、レーダーに映らない・・・」

 次の瞬間、エンタープライズの飛行甲板に爆弾が着弾し、

 衝撃と爆圧と爆炎がエンタープライズを揺さぶり将校たちを倒れさせた。

 誘爆は、飛行甲板全体に広がり、爆弾と魚雷を炸裂させ、

 機体の粉砕と同時に満タンだった燃料が飛び散りならが引火させ、

 飛行甲板を火の海に変えていく、

 これほどの衝撃は、800kg爆弾しかありえず、

 飛行甲板中央から紅蓮の炎と黒煙が噴出していた。

 「提督、機関室から航行不能です」

 「第2群に指揮を移す、総員退艦!」

 もはや沈没は免れない損失だった。

 「第2群は、攻撃を受け、空母部隊壊滅です」

 「第3群も空母3隻被弾」

 「左翼の第5群、右翼の第6群が敵艦隊と交戦に入りました」

 「吊光弾が投下されました」

 艦隊上空が昼間のように明るく照らされ、

 海上に輪形陣を浮かびあがらせた。

 輪形陣は対空防衛に都合のいい陣形で、艦隊戦に向く編成ではなかった。

 「艦隊上空に反応、水上機と思われます」

 

 

 日本沖海戦

 北方強襲艦隊

  大和、武蔵、富士(ワシントン)、八島(ノースカロライナー)、 (Ka31 10機)

  金剛、比叡、

  長門、伊勢、日向、

  高雄、愛宕、摩耶、鳥海

  最上、三隈、鈴谷、熊野、

  島風

  夕雲、巻雲、風雲、長波、玉波、涼波、藤波、早波、

  浜波、沖波、岸波、朝霜、早霜、秋霜、清霜

  朝潮、大潮、満潮、荒潮、朝雲、山雲、夏雲、峯雲、霞、霰、

  陽炎、不知火、黒潮、親潮、早潮、夏潮、初風、雪風、天津風、

  峯風、澤風、灘風、汐風、秋風、夕風、太刀風、帆風、野風、波風、沼風

 9650t級軽巡 浅間(ホノルル)、

 1850t級駆逐艦 ききょう(ウィンスロー)、ぼたん(クラーク)、あやめ(バルチ)、

   千歳 (水上偵察機 瑞雲24機)

 

 

 南方強襲艦隊

  敷島(サウスダコタ)、朝日(インディアナ)、

  初瀬(マサチューセッツ)、三笠(アラバマ)、

      (Ka31 10機)

  榛名、霧島、

  陸奥、扶桑、山城、

  妙高、那智、足柄、羽黒

  古鷹、加古、青葉、衣笠

  阿賀野、能代、矢矧

  巻波、高波、大波、清波

  白露、時雨、村雨、夕立、春雨、五月雨、海風、山風、江風、涼風

  時津風、浦風、磯風、浜風、谷風、野分、嵐、萩風、舞風、秋雲

  神風、朝風、春風、松風、旗風、追風、朝凪、夕凪、

 1500t級駆逐艦 しおん(ドレイトン)、あじさい(ラムソン)、

 1360t級駆逐艦 ばしょう(デイル)、かきつばた(モナハン)、つつじ(エールウィン)、

 千代田 (水上偵察機 瑞雲24機)

 

 Ka31、Ka54は30機は、艦隊上空の敵編隊に気付くと、

 水上機部隊を囮で発艦させた。

 そして、アメリカ機動部隊上空の夜間戦闘機が減少した隙を突き、空母直上から爆弾を投下していく、

 Ka31、Ka54の攻撃終了後、司令機を除く、機体は、後方の露鳳へ後退し、

 引き続き、水上機が出撃し、

 司令機の誘導に従って、アメリカ艦隊上空に吊光弾を落とした。

 Ka31の誘導に従って、全ての水雷戦隊が回頭し、雷撃し、砲撃を加えた。

 ka31の眼下、

 至る所で爆炎が立ち昇り、アメリカ艦艇が沈められていく、

 早期警戒管制機指揮下で、日本の艦隊が手足のように動き、

 世界最強の戦艦でさえ、ただの駒に過ぎなかった。

 航空戦艦の艦尾は、弱点だった。

 そのため大和、武蔵、富士(ワシントン)、八島(ノースカロライナー)、日向の艦尾側に、

 金剛、比叡、長門、伊勢が護衛に付いていた。

 戦艦 大和 艦橋

 「撃て! 撃て! 撃ちまくれ!」

 「上空の指揮官機より入電」

 「爆撃部隊は、爆弾と吊光弾を全て投下、後方の露鳳に帰還させるとのことです」

 「了解したと伝えよ」

 「ヘリを戦艦より可愛がりですか?」

 「我々の艦隊が全滅してもオリジナルのヘリは守るよ」

 「第三駆逐隊、雷撃終了。空母の護衛のため後退します」

 「「「・・・」」」

 「水上機は?」

 「全機発艦しました」

 「敵艦隊に吊光弾を投下させろ」

 大和が全速で航行する光景は、滅多に見られない、

 それほど多くの燃料を消費する。

 日本近海ならの凶行だった。

 

 第一機動部隊

  加賀、瑞鶴、翔鶴 (零戦226機)

  利根、

  松、竹、梅、桃、

 

 第二機動部隊

  赤城、飛龍、蒼龍 (零戦191機)

  筑摩、

  桑、桐、杉、槇、

 

 第三機動部隊

  飛鷹、隼鷹、龍鳳、(零戦120機)

  新月、若月、

  樅、樫、榧、檜、楓

 

  第四機動部隊

   露鳳 (Ka54 5機、Ka31 10機 零戦60機)

   大鳳 (零戦30機 彗星20 天山10機)

   祥鳳、瑞鳳、龍嬢、(零戦72機)

   大淀、

   涼月、初月、

   若竹、呉竹、早苗、朝顔、夕顔、芙蓉、苅萱

 

 第五機動部隊

   雲龍、天城、葛城  (零戦162機)

   酒匂、

   秋月、照月、霜月、冬月

   

 正面突入部隊

 天龍、龍田、

 球磨、多摩、北上、大井、木曾

 長良、五十鈴、名取、由良、鬼怒、阿武隈

 川内、神通、那珂

 夕張

 初春、子日、若葉、初霜、有明、夕暮、

 吹雪、白雪、初雪、深雪、叢雲、東雲、薄雲、白雲、磯波、浦波

 綾波、敷波、朝霧、夕霧、天霧、狭霧、朧、曙、漣、潮

 暁、響、雷、電

 

 駆逐艦 綾波 は、北と南の紅蓮に照らされながら中央の闇に向かって突き進んでいた。

 艦橋

 「まだか?」

 「針路そのまま、全速を保ち、0330 0-8-5へ最大速で魚雷発射です」

 士官が時計と速度を計算し、

 コンパスと定規、分度器で海図に敵艦の推定位置を描き込んでいく、

 「・・・また、闇の中を突き進んで闇の中に向かって撃ち込むのか」

 「Ka31は、相対距離、相対速度の計算が精確ですからね」

 「くっそぉ 俺らの訓練成果を上から目線で・・・馬鹿にしやがって」

 「左雷撃戦用意・・・」

 時が刻まれ、無線に聞き耳を立てる、

 「面舵一杯〜!」

 回頭が始まると艦が傾き、

 取っ手を握る手に力が入る、遠心力に体が引っ張られ・・・

 「てぇ〜!」

 圧縮空気が魚雷9本を次々と押し出していく、

 魚雷を射出した後の駆逐艦は、一気に気が抜けてしまう。

 戦艦同士の艦隊戦の中、127mm砲は、護身用の玩具に過ぎず、

 大砲で敵艦を沈める事など思いも及ばない、逃げることを考えるものの、

 Ka31の誘導は、明らかに敵中突破でアメリカ艦隊の混乱を誘う命令だった。

 辺り一面、北方も南方も紅蓮の炎が夜空を照らしていた。

 周囲はほぼ敵艦ばかりで綾波は、アメリカ機動部隊群の奥深くへ入り込んでいた。

 正面の闇から砲火が見えると、

 砲弾が艦の周囲に着弾し水柱が次々と立ち昇る、

 この時点でわかるのは、火砲の方位だけであり、

 敵艦の距離、針路、速度とも不明だった。

 爆発が敵艦の艦影を浮かび上がらせていく、

 「フレッチャー型駆逐艦、距離7800m。方位0-4-7 全力射撃!」

 瞬間的に計算した距離が砲科に伝えられ、

 砲塔が動き、50口径127mm連装砲3基6門が火を吹く、

 後方の僚艦から次々と戦果と被害報告が伝えられ、

 そのたびに一喜一憂する。

 

 

 夜間航空戦は、レーダー出力とレーダーレンジ(範囲)と精度で決まる。

 レーダーが敵より優れ、

 ECM・ECCMで優れていれば、機体の性能差を埋めることができた。

 露鳳と滞空しているKa31のレーダーに映し出された標的に向け、

 月光を誘導し、敵機を撃墜させていく、

 そして、露鳳の100mm砲と30mm砲が撃ち上げられると、

 アメリカ夜間攻撃部隊が次々に落ちていく、

 第四機動部隊

 露鳳 CIC

 Ka31とデータリンクされた大型モニターに戦果が映し出された。

 これほど、戦況が克明に映し出された戦場は過去なかった。

 作戦室で行われている図上演習でさえ、これほど精確ではない、

 おかげで、護衛艦全てを敵艦隊に突撃させる決定もなされた。

 戦況は、敵と味方が交錯し、

 将兵は、敵艦の撃破に喜び、味方艦の損失に顔を曇らせる。

 日本艦隊は敵味方識別が可能であり、

 アメリカ艦隊の敵味方識別は困難だったことから、混戦になるほど日本艦隊が有利になった。

 そして、戦果は、ランチェスターの法則を超えてしまう。

 「幕露守へ、敵機動部隊は大打撃だ」

 「疾風の3分の2を本土へ帰し。本土の彗星、天山、飛龍と交換してくれ」

 “了解しました”

 「機動部隊も零戦の3分の2を本土へ」

 「代わりに夜明けと同時に彗星と天山を着艦させてくれ」

 「追撃戦に移る」

 「アメリカ夜間攻撃隊は、撃退しました」

 「夜襲艦隊による、米英機動部隊13群攻撃は、ほぼ成功です」

 「ほぼか・・・」

 “球磨撃沈されました”

 “夜襲部隊が包囲されてるぞ”

 “大和、魚雷2本命中です”

 “山城。沈没します”

 「・・・やはり、敵艦が多過ぎるな」

 「艦数が少ないと護衛も足りないから、反撃が始まると苦戦だな」

 「いくら夜間でも少数で多数に攻撃を仕掛けるのは、無理攻めじゃなかったのか」

 「いいじゃないか、大和、武蔵に獅子奮迅の活躍をしてもらえれば、翌日の空襲の戦果が期待できる」

 「空襲もなにも迎撃機ばかりだ。爆弾と魚雷だけは積み込んでるが」

 「攻撃部隊の準備は、まだろう」

 「まぁ 誰が指揮官でも次は、夜明け前の空襲と思うさ」

 「しかし、昼間に空襲してくる可能性は捨てきれなかったからな」

 「アメリカの航空戦力さえ削ぎ落せば戦艦比で勝ってる」

 「駆逐艦、島風より通信。アイオワ型戦艦撃沈!」

 歓声が上がる。

 「これで、幕露守への艦砲射撃は防げるな」

 「三番機、四番機、準備完了」

 時計を見つめて計算する。

 「・・・直ちに出撃させろ」

 「零戦10機を護衛に付けて追いかけさせてくれ、帰還は、夜明けだ」

 

 露鳳 艦橋

 CICにいるとわからないことがあった。

 闇と潮風の香り、

 そして、艦橋と並行する海燕(Ka31)2機のパイロットらの敬礼。

 「副長・・・」

 「はい」

 「あのパイロットは?」

 「長谷輝少尉、木崎修准尉です」

 「戦闘機のパイロットじゃないか。大丈夫か?」

 「訓練は受けています。それに運のいい男たちですから」

 「そうか・・・」

 艦橋の将校たちが答礼すると、

 前傾姿勢を取った海燕(Ka31)2機が闇の中に消えていく、

 

 

 

 凍えるような冬の海、

 暗闇は、紅蓮の炎に照らされ、掠れた巻雲が赤白く反射する、

 煙幕とも爆煙ともつかぬ煙と硝煙が海域全体を漂い、

 砲声と同じ数の砲弾が飛び交い、

 多くの水柱と、時折、起きる爆炎が海上を照らし、夜空を震わせた。

 日本の戦艦部隊は、南北から夜襲を仕掛け、

 アメリカ機動部隊の退路を断つように針路を執っていた。

 米英機動部隊の輪形陣。群と群の間は十数km離れており、

 一つの群が夜襲を受けると、艦隊戦の隊形へ移行していく、

 とはいえ、輪形陣ばかり訓練されており、

 艦隊戦隊形への移行は、空母の盾になる単縦陣を作ることだった。

 南方強襲艦隊

 敷島(サウスダコタ)、朝日(インディアナ)、

 初瀬(マサチューセッツ)、三笠(アラバマ)、

 榛名、霧島、陸奥、扶桑、山城と、

 キング・ジョージ5世、アンソン、デューク・オブ・ヨーク、ハウ、

 レナウン、レパルスの砲撃戦が続いていた。

 敷島(サウスダコタ)艦橋

 「正面、フレッチャー型駆逐艦4隻」

 「2時からS型駆逐艦2隻接近!」

 「キングジョージ5世は、艦尾側に回り込みつつあります」

 「米英艦隊に包囲されつつあります」

 「ちっ 敷島は、改装を終えたばかりで慣熟訓練中・・・」

 「艦尾を護衛する旧式戦艦は、人事と疲弊で、まともに戦えずか」

 「距離が近いというのに、もう少し、命中させられんのか」

 「イギリス駆逐艦に割り込まれてるぞ」

 「戦艦を機能させるには、まだ、技量不足かと」

 「熟練層以外の人材層が薄過ぎる」

 「インド砲撃で艦隊の人材を育てたと思ったのだがな」

 「他の新造艦にも、人員をとられましたからね」

 「キングジョージ5世に着弾!」

 艦橋に歓声が広がる。

 しかし、すぐに衝撃で艦が揺れた、

 「艦中央に被弾」

 後続の陸奥が炎に包まれる。

 「撃て! 艦首をキングジョージ5世に向けろ!」

 「それでは、駆逐艦に横っ腹を見せることになります」

 「・・・構わん、キングジョージ5世に艦首を向けろ」

 航空戦艦の艦尾を旧式戦艦が守護していたものの砲撃が集中し、

 次々と撃破され、大破し、沈んでいく、

 

 

 北方強襲艦隊

 大和、武蔵、

 富士(ワシントン)、八島(ノースカロライナー)、日向は、全周から砲撃され、

 前後左右に砲撃していた。

 アメリカ艦隊は、航空戦艦の弱点側である艦尾側に回り込もうとし、

 艦尾を守る金剛、比叡、長門、伊勢は、砲撃に晒される。

 平文でアメリカ艦隊の位置が伝えられていたものの、夜の帳が下る頃、

 ヘリ部隊は、戦場の空を去り、

 戦場の上空は、水上機ばかりが飛び回っていた。

 日本戦艦部隊は、アメリカ・イギリス艦隊との決戦を望み、

 積極的に撃ち合っていた。

 戦艦 大和 艦橋

 「艦尾被雷!」

 「ちっ! 避け切れなかったか」

 航空戦艦の艦尾を守護する金剛、比叡、伊勢は沈むか、沈みつつあった。

 長門も炎上していた。

 アメリカ駆逐艦は、数に任せて、戦艦を狙い、

 「5時にニュージャージー」

 「面舵」

 「11時、距離12000、フレッチャー型駆逐艦6隻」

 「完全に包囲されてるじゃないか」

 「長門が盾になるそうです」

 無数の砲撃が戦艦の上甲板上の施設を破壊し、ささくれさせていく、

 戦艦の砲撃は、アメリカ駆逐艦を寄せつけさせなかった。

 460mm砲弾の直撃ならフレッチャー型駆逐艦は吹き飛び、海上から消え失せた。

 155mm砲弾の直撃ならフレッチャー型駆逐艦は大破し、戦場を離脱していく、

 127mm砲弾の直撃ならフレッチャー型駆逐艦は、中破か、小破した。

 日本戦艦部隊の戦況が悪化していく頃、

 戦場に日本航空部隊が現れ、アメリカ駆逐艦への空襲が始まり、

 ようやく、アメリカ駆逐艦の逃亡が始まる。

 

 

 夜明けとともに砲撃戦は止み、

 幕露守と日本機動部隊を出撃した艦載機の爆音が日本艦隊上空を通過していく、

 アメリカ機動部隊の残存空母から発艦した戦闘機が制空権を保とうとし、

 爆撃部隊が艦隊攻撃で日本艦隊に迫ってくるものの、

 零戦と疾風の圧倒的な戦力差によって、日本艦隊上空から駆逐され、

 急降下爆撃と対空砲火の轟音は、アメリカ艦隊を水平線の向こう側へと押しやっていく、

 海上から点々と吹き上がる数十条の黒煙は、そこに沈んだ艦船が存在したことを意味した。

 日本艦隊は戦場に残って生存者の救助活動をし、

 アメリカ・イギリス艦隊は、残存空母を引き連れて後退した。

 

 敷島(サウスダコタ)艦橋

 「だいぶやられたな」

 「命中弾4。魚雷1本。中口径砲弾以下は40発以上です」

 「キングジョージ5世型4隻を相手でしたからね。手数で負けました」

 「砲数で6対10では、36対100になる。艦尾主砲なしは、辛過ぎたな」

 「旧式戦艦の援護がなければ撃ち負けていたよ」

 「しかし、旧式戦艦は脆かったですね」

 「近距離で356mm砲弾を受けて、駆逐艦に雷撃されたら一溜まりもない」

 「艦としての寿命だろうな」

 「ボートを全て下ろして、救助を急がせろ」

 

 

  ※ 赤字沈没艦

 北方強襲艦隊

  大和、武蔵、富士(ワシントン)、八島(ノースカロライナー)、

  金剛、比叡、

  長門、伊勢、日向、

  高雄、愛宕、摩耶、鳥海

  最上、三隈、鈴谷、熊野、

  島風

  夕雲、巻雲、風雲、長波、玉波、涼波、藤波、早波、

  浜波、沖波、岸波、朝霜、早霜、秋霜、清霜

  朝潮、大潮、満潮、荒潮、朝雲、山雲、夏雲、峯雲、霞、霰、

  陽炎、不知火、黒潮、親潮、早潮、夏潮、初風、雪風、天津風、

  峯風、澤風、灘風、汐風、秋風、夕風、太刀風、帆風、野風、波風、沼風

 9650t級軽巡 浅間(ホノルル)、

 1850t級駆逐艦 ききょう(ウィンスロー)、ぼたん(クラーク)、あやめ(バルチ)、

   千歳 (水上偵察機 瑞雲24機)

 

 南方強襲艦隊

  敷島(サウスダコタ)、朝日(インディアナ)、

  初瀬(マサチューセッツ)、三笠(アラバマ)、

  榛名、霧島、

  陸奥、扶桑、山城、

  妙高、那智、足柄、羽黒

  古鷹、加古、青葉、衣笠

  阿賀野、能代、矢矧

  巻波、高波、大波、清波

  白露、時雨、村雨、夕立、春雨、五月雨、海風、山風、江風、涼風

  時津風、浦風、磯風、浜風、谷風、野分、嵐、萩風、舞風、秋雲

  神風、朝風、春風、松風、旗風、追風、朝凪、夕凪、

 1500t級駆逐艦 しおん(ドレイトン)、あじさい(ラムソン)、

 1360t級駆逐艦 ばしょう(デイル)、かきつばた(モナハン)、つつじ(エールウィン)、

   千代田 (水上偵察機 瑞雲24機)

 

 

 正面突入部隊

 天龍、龍田、

 球磨、多摩、北上、大井、木曾

 長良、五十鈴、名取、由良、鬼怒、阿武隈

 川内、神通、那珂

 夕張

 初春、子日、若葉、初霜、有明、夕暮、

 吹雪、白雪、初雪、深雪、叢雲、東雲、薄雲、白雲、磯波、浦波

 綾波、敷波、朝霧、夕霧、天霧、狭霧、朧、曙、漣、潮

 暁、響、雷、電

 

 

  第1群

  エンタープライズ、ヨークタウン、ホーネット、

    (ヘルキャット180機、ヘルダイバー70機、アベンジャー20機)

  ミズーリー

  軽巡サンディエゴ、サンフアン、

  軽巡クリーブランド、コロンビア、モントピリア、

  駆逐艦

    シャバリア、パーシヴァル、ソーフリー、ウォーラー、ストロング、テイラー、デ・ヘヴン、

    スティーヴンス、ハルフォード、リューツ、ワトソン、フィリップ、レンショー、

    ソーン、ターナー、コンウェイ、コニー、コンヴァース、イートン、

 

  第2群

  レキシントン、サラトガ、インディペンデンス、

    (ヘルキャット140機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  アイオワ

  軽巡アトランタ、ジュノー、

  軽巡デンバー、サンタフェ、バーミングハム

  駆逐艦

   フレッチャー、ラドフォード、ジェンキンス、ラ・ヴァレット、ニコラス、オバノン、

   バッチ、ビール、ゲスト、ベネット、フラム、ハドソン、ハッチンス、プリングル、スタンリー、

   リングゴールド、シュレーダー、シグスビー、スティーヴンソン、ストックトン、

 

  第3群

  エセックス、バンカー・ヒル、カウペンス、

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  ニュージャージー

  重巡ノーザンプトン、チェスター、

  軽巡アムステルダム、サンタフェ、タラハシー、

  駆逐艦

   フート、スペンス、テリー、サッチャー、アンソニー、ワズワース、ウォーカー、

   ブラウンソン、ダリー、イシャーウッド、キンバリー、ルース、アブナー・リード、

   アムメン、ムラニー、ブッシュ、トラセン、ヘイゼルウッド、ヒーアマン、ホーエル、

 

 

  第4群

  イントレピット、フランクリン、ベロー・ウッド、

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  ウィスコンシン

  重巡ポートランド、インディアナポリス、

  軽巡セントルイス、ヘレナ

  駆逐艦

   マッコード、ミラー、オーウェン、ザ・サリヴァンズ、ステファン・ポッター、

   ティンゲイ、トワイニング、ヤーナル、ボイド、ブラッドフォード、ブラウン、

   コーウェル、カップス、デヴィッド・W・テイラー、エヴァンズ、ジョン・D・ヘンリー、

 

 

  第5群

  ベニントン、ボノム・リシャール、モンテレー、

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  大巡アラスカ

  重巡ルイスビル、シカゴ、オーガスタ、

  軽巡バーニングハム、モービル、

  駆逐艦

   フランクス、ハガード、ヘイリー、ジョンストン、ロウズ、ロングショー、モリソン、

   プリチェット、ロビンソン、ロス、ロウ、スモーレイ、ストッダート、ワッツ、レン、

   オーリック、チャールズ・オースバーン、クラクストン、ダイソン、ハリソン、

 

 

  第6群

  オリスカニー、ワスプ、プリンストン、

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  大巡グアム

  重巡ペンサコラ、ソルトレイクシティ、

  重巡ボルチモア、ボストン

  駆逐艦

   ジョン・ロジャース、マッキー、マリー、スプロストン、ウィックス、ウィリアム・D・ポーター、

   ヤング、チャレット、コナー、ホール、ハリガン、ハラデン、ニューコム、ベル、

   バーンズ、イザード、ポール・ハミルトン、トゥイッグズ、ハワース、キレン、ハート、

 

 

 第7群

  タイコンデロガ、ランドルフ、ラングレイ

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  重巡キャンベラ、クインシー

  軽巡オークランド、リノ

  駆逐艦

   メトカーフ、シールズ、ワイリー、アボット、ブレイン、アーベン、ヘイル、

   シゴーニー、ステンベル、アルバート・W・グラント、ケイパートン、コグスウェル、

   インガソル、ナップ、ビアース、ジョン・フッド、ヴァン・ヴァルケンヴァーグ、

 

 第8群

  ハンコック、ボクサー、カボット

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  重巡ピッツバーグ

  軽巡ヴィンセンス、ヴィックスバーグ

  軽巡フリント

  駆逐艦

   チャールズ・J・バジャー、コラハン、ダッシール、バラード、キッド、ベニオン、

   ヘイウッド・L・エドワーズ、リチャード・P・リアリー、ブライアント、ブラック、

   チョウンシー、クラレンス・K・ブロンソン、コットン、ドーチ、ガトリング、ヒーリー、

 

 第9群

  レイテ、キアサージ、バターン

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  軽巡スプリングフィールド、パサデナ、マイアミ、ウィルクス=バール

  駆逐艦

   ヒコックス、ハント、ルイス・ハンコック、マーシャル、マクダーマット、マクゴーワン、

   マクネーア、メルヴィン、ホープウェル、ポーターフィールド、ストックハム、

   ウェダーバーン、ピッキング、ハルゼー・パウエル、ウールマン、レメイ、

 

 第10群

  シャングリラ、アンティータム、サン・ジャシント

    (ヘルキャット150機、ヘルダイバー60機、アベンジャー20機)

  軽巡ビロクシー、ヒューストン、ダルース、アストリア、

  駆逐艦

   ワドレー、ノーマン・スコット、マーツ、キャラハン、カッシン・ヤング、

   アーウィン、プレストン、ベンハム、カッシング、マンセン、ジャーヴィス、

   ポーター、コルホーン、グレゴリー、リトル、ロックス

 

 

 イギリス機動部隊

 第1群

  インプラカブル、イラストリアス、フォーミダブル

   (シーファイア72機、ファイアフライ36機、アヴェンジャー45機)

  重巡フロビッシャー、カンバーランド、サフォーク、サセックス

  軽巡バーミンガム、グラスゴー、ベルファスト、アルゴノート、

  駆逐艦

   グレンヴィル、アルスター、ユリシーズ、アンドーンテッド、

   アンディン、アーサ、アーチン、ウラニア

 

 第2群

  インディファティガブル、ヴィクトリアス、インドミタブル

   (シーファイア72機、ファイアフライ36機、アヴェンジャー45機)

  重巡ベリック、ケント、デヴォンシャー、ノーフォーク、

  軽巡フィービ、シラ、シリアス、ローナ、ブラック・プリンス、ダイアデム

  駆逐艦

   ティーザー、テネイシャス、ターマガント、タープシコリー、

   トローブリッジ、チューモルト、タスカン、ティリアン

 

 イギリス戦艦部隊

  キング・ジョージ5世、アンソン、デューク・オブ・ヨーク、ハウ、

  レナウン、レパルス、

  軽巡ロイヤリスト、ケニア、モーリシャス、ナイジェリア

  軽巡ニューカッスル、シェフィールド、リヴァプール、クレオパトラ、

  駆逐艦

   ソーマレス、サヴェージ、スコーピオン、スカージ、

   セラピス、シャーク、サクセス、スウィフト

 

 ピケット駆逐艦隊

  アレン・M・サムナー、モール、イングラハム、クーパー、イングリッシュ、

  チャールズ・S・スペリー、オールト、ウォルドロン、ヘインズワース、

  ジョン・W・ウィークス、ハンク、ウォレス・L・リンド、ボリー、コンプトン、

  ゲイナード、ソーレイ、ハーラン・R・ディクソン、ヒュー・パーヴィス、

  バートン、ウォーク、ラフィー、オブライエン、メレディス、デ・ヘヴン、

  マンスフィールド、ライマン・K・スウェンソン、コレット、マドックス、ハイマン、

  マナート・L・エベール、パーディ、ロバート・H・スミス、トーマス・E・フレーザー、

  シャノン、ハリー・F・バウアー、アダムス、トルマン、ドレクスラー

 

 露鳳

 「我が方の損失は、海軍将兵25042名。戦艦8隻。重巡9隻。軽巡13隻。駆逐艦56隻です」

 「残存艦艇は、航空戦艦8隻、空母14隻、軽空母4隻、戦艦2隻、重巡9隻、軽巡10隻、駆逐艦59隻です」

 「また、夜戦に参加した艦艇の3分の1が損傷しています」

 「「「「・・・・」」」」

 日本海軍が営々と築き上げてきた艦隊は、ほぼ半数が失われていた。

 「こちらの戦果は?」

 露鳳とKa31のレーダーレンジは広く、

 戦場の全てを把握し、探知圏外で沈んでいなければ、ほぼ正確な判定が可能だった。

 「我が軍の戦果は、空母10隻、軽空母4隻、戦艦6隻、重巡9隻、駆逐艦79隻以上の撃沈です」

 「敵残存艦隊は、空襲と潜水艦の攻撃を合わせ、帰還途上で沈んでいなければ」

 「空母8隻、軽空母4隻、重巡7隻、軽巡22隻、駆逐艦180隻ほどと思われます」

 「「「「・・・・」」」」

 「・・・勝ったんだよな」

 「「「「・・・・」」」」

 部隊の半数を失うは、部隊壊滅を意味していた。

 そう、日本海軍、アメリカ太平洋艦隊、イギリス艦隊は、壊滅していた。

 将兵らは、失われた人材の大きさに顔色を失い、

 ランチェスターの法則を超える大戦果を薄れさせた。

 

 

 オアフ島 真珠湾

 ストレッチャーに載せられた死傷者が次々と埠頭に降ろされていく、

 今にも沈みそうなボロボロの艦隊が真珠湾に停泊していた。

 夜戦での砲撃と雷撃、

 その後の空襲と潜水艦の攻撃は碌な反撃もできず、多くの艦艇が撃沈され、

 残存艦隊は、燻ぶり傷付き、傾いていた。

 集計が進むにつれ、アメリカ海軍とイギリス海軍は顔面蒼白となっていく、

 アメリカ海軍は、海軍将兵13万1649名を失い、

 レキシントン型2隻。エンタープライズ型空母3隻。空母ワスプ、

 エセックス型11隻。インディペンデンス型軽空母6隻、

 アイオワ型4隻。アラスカ型大巡2隻。重巡11隻。軽巡13隻。駆逐艦100隻を撃沈されていた。

 そして、イギリス海軍は、海軍将兵25140を失っており、

 インプラカブル型2隻、キングジョージ5世型4隻。重巡4隻。軽巡8隻。駆逐艦12隻を撃沈されていた。

 大損失を負った艦艇は、次々と修復ドックへ入っていく、

 そして、工作艦が軍艦が沈まないよう応急処置で鉄板で穴の空いた舷側を塞いでいく、

 アメリカの工程管理は、混乱しつつも世界最高峰だった。

 無慈悲なほど合理的な取捨選択が効率的な生産補修体制を築き上げていた。

 同時に残存将校の配置換えも行われ、早期の艦隊編成が行われていく、

   アメリカ海軍 残存艦隊

    空母5隻、軽空母2隻、重巡3隻、軽巡17隻、駆逐艦120隻

    空母ランドルフ、ハンコック、ボクサー、レイテ、アンティータム

    軽空母バターン、サン・ジャシント

    重巡オーガスタ、ペンサコラ、ボルチモア

    軽巡サンディエゴ、サンフアン、リノ

      クリーブランド、アムステルダム、デンバー、サンタフェ、バーミングハム、

      セントルイス、ヘレナ、モービル、ヴィンセンス、ヴィックスバーグ、

      スプリングフィールド、パサデナ、ダルース、アストリア、

    駆逐艦ウォーラー、ストロング、テイラー、デ・ヘヴン、スティーヴンス、ハルフォード、

      リューツ、コニー、コンヴァース、イートン、ラ・ヴァレット、ニコラス、オバノン、

      バッチ、ビール、ゲスト、ベネット、フラム、スティーヴンソン、ストックトン、

      アンソニー、ワズワース、ウォーカー、ブラウンソン、ダリー、イシャーウッド、

      ヘイゼルウッド、ヒーアマン、ホーエル、ザ・サリヴァンズ、ステファン・ポッター、

      ティンゲイ、トワイニング、ヤーナル、コーウェル、カップス、ジョンストン、

      ロウズ、ロングショー、モリソン、プリチェット、ロビンソン、ロス、ロウ、

      クラクストン、ダイソン、ハリソン、スプロストン、ウィックス、

      ウィリアム・D・ポーター、ヤング、チャレット、コナー、ホール、

      トゥイッグズ、ハワース、キレン、ハート、アボット、ブレイン、アーベン、

      ヘイル、シゴーニー、ステンベル、インガソル、ナップ、ビアース、

      ジョン・フッド、ダッシール、バラード、キッド、ベニオン、

      ブライアント、ブラック、チョウンシー、クラレンス・K・ブロンソン、

      コットン、ヒコックス、ハント、ルイス・ハンコック、ホープウェル、

      ポーターフィールド、ストックハム、ウェダーバーン、ピッキング、

      マーツ、キャラハン、カッシン・ヤング、アーウィン、プレストン、ベンハム、

      カッシング、ポーター、コルホーン、グレゴリー、

      アレン・M・サムナー、モール、イングラハム、オールト、ウォルドロン、ヘインズワース、

      ジョン・W・ウィークス、ハンク、ウォレス・L・リンド、ゲイナード、ヒュー・パーヴィス、

      バートン、ウォーク、メレディス、デ・ヘヴン、マンスフィールド、コレット、

      マドックス、ハイマン、マナート・L・エベール、パーディ、

      アダムス、トルマン、ドレクスラー、

 「酷い有様だな」

 「ほとんどの艦艇が損傷しており」

 「空母で、もっとも早い再就役は、ボクサーで4ヶ月です」

 「日本の空母は無傷だというのに、アメリカは空母が壊滅で翼無き艦隊か」

 「練度の低い空母部隊まで夜間に突撃をかけさせたから大損害だ」

 「ですが、日本の水上艦艇も大損失のはず」

 「基地航空部隊は戦力が十分ですし、日本海軍は攻勢を仕掛けてくるとは思えませんが」

 「だといいがな。しかし、前線と後方への航空部隊は増強した方が良いな」

 「欧州側からクレームが来るかもしれませんね」

 「X艦の情報は、重要だよ」

 

 

 イギリス艦隊

 インドミタブルの飛行甲板に大きな穴が開いていた。

 「また酷い目にあったな」

 「投下高度は、高くなかったのだろう。800kg徹甲爆弾程度なら沈まないさ」

 「しかし、できたばかりのインプラカブルとインディファティガブルがやられるとはね」

 「装甲がなければ、格納庫どころか、弾薬庫から機関室までやられる」

 「艦載機の誘爆でも飛行甲板は、崩れ落ちるし、格納庫にまで火災が広がる」

 「装甲していれば、飛行甲板が破壊されるだけで、格納庫にまで被害が及びにくい」

 「エセックス型は、魚雷にやられていなければ4、5隻は余計に残っていたよ」

 「しかし、我々が夜戦で負けるとはな」

 「日本軍は、事前にあの海域に攻撃があると掴んでいた」

 「そして、こちらの夜明けと同時の攻撃を予測し」

 「レーダー誘導で艦隊を3つに分け、北と南から突撃し、西からもだ」

 「こちらの動きを正確に知っていなければできない作戦だな・・・」

 真珠湾に入港したタイコンデロガ型空母レイテが浸水に耐えられず、

 ズブズブと真珠湾に沈み、着底する。

 「・・・修理と改装に時間がかかりそうだな」

 「ああ・・・」

 

 

 アメリカ合衆国 ワシントン

 白い家

 情報が集められ、審議が追及され、集計される、

 敵の損失は、不明が多く、

 味方の損失は、明確に判明する。

 史上最大規模の無敵艦隊アメリカ機動部隊は、攻撃に失敗し、

 13万もの海軍将兵と153隻の艦艇が失われていた。

 そして、攻撃目標の巨大空母とX艦は無傷のまま残されていた。

 「ユトランド海戦をはるかに超える損失になったな」

 「史上空前の戦いに史上空前の損失だよ」

 「呼称はゲティスバーグから取って、ジャパンバーグ海戦だそうだ」

 「艦隊は再編成できるのかね」

 「艦隊は、あと5年もあれば・・しかし、艦隊乗員は、平均15年くらいは欲しいところです」

 「「「「・・・・」」」」

 「大型艦艇は、ほぼ壊滅、残存空母も大破しています」

 「800kg爆弾の直撃を受ければエセックス型空母でも大破炎上だろう」

 「その上、甲板上は、艦載機を載せていた」

 「沈まなかった空母は、爆撃されなかったか、幸運以外の何物でもない」

 「これだけの損失を受けたのは、X艦とあの巨大空母のせいか?」

 「それとも日本に超兵器があったのかね」

 「いえ、それより大きな二つの敗因があるようです」

 「一つは、我が軍の攻勢情報が事前に知られたことです」

 「暗号が解読されていたと考えられます」

 「「「「・・・・」」」」

 「手の内が全て読まれていたと?」

 「迎撃側の待ち伏せと戦力集中は、日本の全艦隊の9割に及びます」

 「日本側が内線とはいえ、戦域の広大さから異常な出来事と言えます」

 「「「「・・・・」」」」

 「我々の中に裏切り者がいるのかね。それとも暗号が解読されていた?」

 「現在、両面より調査中です」

 「暗号の変更をしたまえ」

 「疑惑の解明が先では?」

 「時間の無駄だよ」

 「我々は、憶測や疑心暗鬼に耐えられないし、新しい暗号はアメリカ合衆国の力となるだろう」

 「はっ」

 「もう一つの敗因は?」

 「日本海軍は、アメリカ機動部隊の進攻に対し、絶妙な頃合いで夜襲を合わせてきました」

 「これは、事前に攻勢情報を知りえたとしても不可能なことです」

 「索敵能力と電子戦で負けていた可能性があります」

 「では、その二つの問題が解明しない限り攻勢は不可能になるな」

 「はい」

 「今後の対日作戦は?」

 「艦艇の再就役と人員の再配置を早急に行います」

 「問題は今回の作戦のため大規模な艦隊動員を行っており、輸送計画のローテーションが最悪です」

 「ローテーションの立て直しのため、艦隊から護衛艦艇を引き抜く必要があります」

 「仕方があるまい」

 「日米の戦力比は縮まっている」

 「空母は壊滅し、戦艦は生き残った空母を守ろうとして全滅」

 「建造に年月を要する大型艦ばかりが撃沈されている」

 「大型艦がなければ、上陸作戦は不可能だよ」

 「旧式戦艦が残ってるだろう」

 「その旧式戦艦で、日本の長門、陸奥、新型戦艦2隻と捕獲戦艦6隻と戦えるのかね」

 「日本の新型戦艦は推測でしかないが世界最強といっても過言じゃない」

 「長門、陸奥と、捕獲された戦艦6隻も世界最強の戦艦に準じる」

 「それにX戦艦とヘリ。そして、巨大空母は残ってる」

 「ではどうするね。再攻撃ができるとしたらいつだ?」

 「「「「・・・・」」」」

 「我々は国力でも戦力でも勝っていた」

 「しかし、この損失比で推移するなら、日本とドイツにステールメイトされる事になるぞ」

 

 

 ドイツ第3帝国 ベルリン

 米英爆撃部隊がドイツ主要都市を爆撃していた。

 ドイツ空軍の戦闘機群は精強さを増し、

 アメリカ・イギリス爆撃部隊は、生産比と損失比を悪化させていた。

 現状は、爆撃の成果が戦力に反映されていないように見えないだけで、

 ドイツ帝国の産業基盤は、根底から破壊され、

 軍需の犠牲にされたドイツ国民は、必需品の配給が滞り生活が困窮していた。

 飛行場

 フレットナーF1282コリブリ回転翼機と、

 設計図通り開発した朱雀(Ka54)モドキの比較検証が行われていた。

 ドイツ軍将校たち

 「まさか、ヘリコプター開発で日本に負けるとはな」

 「負け? これは日本で開発されたものではない」

 「日本は出所不明の機体を模倣しているだけだ」

 「これほど完成度の高いヘリコプターが日本に存在するわけがない」

 「しかし、模造品とは言え、160馬力と600馬力2基では、勝ち目がないな」

 「機構さえ分かれば、1000馬力2基で拡大改良型を開発できるよ」

 「この戦いで、その機体の開発が間に合うかギリギリだな・・・」

 飛行場に血相を変えた将校が現れる。

 「大変だ。日本列島沖で日米英艦艇400隻が艦隊戦を繰り広げたらしい」

 将校の一人が持ってきた地図を見せた。

 「それで、どっちが勝ったんだ?」

 「痛み分けのようだが、双方大損失だ」

 「・・・なぜ、こんな海域で、大海戦が行われるのだ?」

 「不自然だな」

 「アメリカ艦隊は、中部太平洋を力押しでフィリピンまで西進し」

 「日本とニューブリテンを分断すると思っていたが・・・」

 「例の何かあるという、北緯34度、東経148じゃないのか」

 「噂だろう」

 「日本のガスタービン技術と、X艦と、ヘリコプターは、現実だよ」

 「情報が不足している」

 「この海域にUボートを派遣したのか?」

 「いや、幾つかの海域は、日本海軍に無警告に撃沈すると・・・」

 「この海域は、その幾つかの一つだ」

 「じゃ アメリカとイギリス機動部隊は、その罠にかかったわけか」

 「Uボートを太平洋に派遣して情報を得るべきだろう」

 「潜水艦は数だ。大西洋の戦果が低下している」

 「だが太平洋では戦果を上げているだろう」

 「特に太平洋は、1月になってからの戦果が大きい」

 「無理な作戦の歪みだな。輸送船団の足並みが揃っていない」

 「この分なら大西洋の船団も影響が出るはずだ」

 「ですが、日本が欲しているのは、大型工作Uボートのようです」

 「工作機が必要ということはだ。蓄積された技術と技能以上の兵器が日本に存在するということだ」

 「それがX艦とヘリか・・・」

 「何としても手に入れたいものだ」

 「X艦は1隻だけなのか?」

 「さぁな、突然、出現するのなら、同型艦が数隻いてもわからないだろうよ」

 

 ヴィルヘルムスハーフェン港

 水中トン数871t級VIIC型Uボート30隻が出港準備を整えていた。

 乗員は通常44人の3分の1で15人。

 発射管の魚雷5本と甲板上の大砲以外は、燃料と食料ばかりが積み込まれていた。

 新型を日本へ回航させるより痛手が小さく、

 それでいて、3分の2を日本海軍に使わせれば、人的損失も少なくでき、

 高価な魚雷と訓練課程、運用経費も日本海軍持ちだった。

 1隻回航させれば護衛艦3隻を大西洋から減らせる。

 大西洋でのXXI型潜水艦の戦果は単純計算で好転する。

 太平洋に派遣するUボートは、逃亡が目的のため、

 米英艦隊が必死に索敵攻撃しても発見に至り難く、見逃してしまうことが多かった。

 日本への土産物は、日本の戦線を支える上で役に立つ工作機械か、機関部品が多く、

 武器は少数だった。

 「VIIC型は、大西洋で戦果を上げられなくなってる」

 「日本は、北太平洋で大戦果を上げたらしいから弾みになるだろう」

 「日本海軍の被害も大きかったと聞くが?」

 「両方とも主要艦隊のほとんど失って共倒れしたらしい」

 「Uボートの回航は、見舞いと、餞別ってわけか」

 「最大の目的は情報収集だそうだ」

 「しかし、いくら、日本近海でもアメリカ太平洋艦隊を相手に戦果が大き過ぎるような気がするが・・・」

 

 

 日本海軍 艦隊総数

  第一機動部隊

   加賀、瑞鶴、翔鶴 (零戦114機、彗星74機、天山40機)

   利根、妙高、那智、

   吹雪、白雪、初雪、深雪、叢雲、綾波、敷波、朝霧、夕霧、天霧、暁、響、

 

  第二機動部隊

   赤城、飛龍、蒼龍 (零戦74機、彗星54機、天山63機)

   筑摩、高雄、愛宕、

   長波、玉波、涼波、藤波、早波、朝霜、早霜、秋霜、清霜

 

  第三機動部隊

   飛鷹、隼鷹、龍鳳、(零戦42機、99艦爆36機、97艦攻42機)

   最上、三隈、古鷹、

   朝潮、大潮、満潮、荒潮、朝雲。早潮、夏潮、初風、雪風、天津風、

  

  第四機動部隊

   露鳳 (Ka54 5機、Ka31 10機 零戦40機、彗星30機)

   大鳳 (零戦30、彗星30機)

   祥鳳、瑞鳳、龍嬢、(零戦72機)

   大淀、

   秋月、照月、霜月、冬月、涼月、初月、新月、若月、

   白露、時雨、村雨、夕立、春雨、

 

  第五機動部隊

   雲龍、天城、葛城 (零戦84、彗星54、天山24機)

   富士(ワシントン)、八島(ノースカロライナー) (Ka31 6機  瑞雲30機)

   阿賀野、酒匂、

   巻波、高波。谷風、野分、嵐、萩風、舞風、秋雲

 

 戦艦部隊

  大和、武蔵 (Ka31 6機  瑞雲50機)

  敷島(サウスダコタ)、朝日(インディアナ) (Ka31 6機  瑞雲30機)

  初瀬(マサチューセッツ)、三笠(アラバマ) (Ka31 6機   瑞雲30機)

  長門、陸奥、

 9650t級軽巡 浅間(ホノルル)、

 1850t級駆逐艦 ききょう(ウィンスロー)、

 1500t級駆逐艦 しおん(ドレイトン)、あじさい(ラムソン)、

 1360t級駆逐艦 ばしょう(デイル)、

 長良、五十鈴、阿武隈

 川内、神通、那珂

 初春、子日、若葉、

   千歳、千代田 (水上偵察機 瑞雲54機)

 

 護衛艦隊

  松、竹、梅、桃、桑、桐、杉、槇、樅、樫、榧、檜、楓、

  若竹、呉竹、早苗、朝顔、夕顔、芙蓉、苅萱、

  峯風、澤風、灘風、汐風、秋風、

  神風、朝風、春風、松風、

 

 

 

 呉

 55口径406mm砲弾が直撃した装甲は破壊され内部が露わにされていた。

 相対距離が短ければ、重防御のバイタルパートでさえ持たない。

 救いは、装甲を撃ち破っただけでエネルギーを喪失し、

 艦内の破壊に至らなかったことにあった。

 大和型戦艦の装甲でさえ堪えられない距離で撃ち合った結果であり、

 旧式戦艦が堪えられなかったのも頷ける。

 もっと大きな致命傷を与えられるのは、魚雷であり、

 アメリカのMk.14魚雷(トーペックス292kg・TNT467kg)は、

 日本の酸素魚雷93式魚雷(97式爆薬490kg・TNT588kg)と比較しても劣るものでなく、

 喫水線より下の鉄板が剥がされると、巨大な穴を見せた。

 艦隊の再編成が行われたものの、

 艦艇の修理改装は、これからだった。

 赤レンガの住人たち

 「酷いやられ方だな」

 「海軍将兵を25000人も失ったよ」

 「平均練度10年以上で計算したら泣きたくなるな」

 「国家的損失だろう」

 「まったく・・・」

 「しかし・・・直すのに時間がかかりそうだ」

 「幕露守を犠牲にしてでも米英機動部隊を殲滅するんじゃなかったのか」

 「昼戦ならそうなっていたけどな」

 「夜襲で来るとは思わなかった」

 「あんな。でかいだけの・・・」

 「まぁ アメリカ機動部隊が、もう一度、幕露守に攻めてくるのなら悪くないだろう」

 「あそこがダミーと知れなければな」

 「日本に未知の秘密がある状況は作り出しているはずだ」

 「それでも、アメリカが攻めたくなる状況を作り出すべきでは?」

 「しかし、危なく罠を食い破られそうな戦況だったぞ」

 「アメリカ軍将兵の対応力も侮れないし」

 「アメリカの軍艦がダメージコントロールで優れて沈み難いのも脅威だ」

 「それにアメリカ駆逐艦のタフさと、奮戦は驚いたね」

 「レーダーの精度が高いこと、それと数が多いこともかな」

 「だれでも退路を断たれると思ったら必死になるだろう」

 「アメリカの再攻撃がいつになるか、それが気がかりだな」

 「むしろ、積極的に打って出る方がよくないかね」

 「戦艦、巡洋艦、駆逐艦のほとんどは、破損している」

 「空母と護衛艦だけで敵陣地攻撃は、困難だろう」

 「露鳳ならやれそうなんだがな」

 「しかし、露鳳の予備部品は失われ、ヘリ同士の共食いも始まってる」

 「将兵も休養が必要だよ」

 「長門と陸奥は航空戦艦にするのか?」

 「航空戦艦を守るため艦尾側に付いてたからね」

 「長門は第3砲塔、陸奥は第4砲塔がやられてるし、ちょうどいいよ」

 「しかし、そうなると、航空戦艦の艦尾を守る戦艦がなくなりそうだな」

 「いまのところアメリカとイギリスに航空戦艦を追撃できる高速戦艦はないよ」

 「いまのところだろう」 

 「捕獲戦艦の修理は?」

 「共食いさせれば、初瀬(マサチューセッツ)と三笠(アラバマ)との再就役は早いな」

 「早々に就役させて、ドックを空けたいがな」

 「産業は、軍艦を後回しにしてでも、設備投資と輸送船を欲しがってる」

 「無理だろう」

 「それがな。国内備蓄が切り崩されて、もう限界らしい」

 

 日本海軍

 航空戦艦10隻、空母14隻、軽空母4隻、重巡9隻、軽巡10隻、駆逐艦59隻

 

 

 厚木基地

 Ka31モドキ “海燕(かいえん)”

 Ka54モドキ “朱雀(すざく)”

 オリジナルに遠く及ばないヘリコプターが宙に浮かぶ、

 「いい感じになって来たじゃないか」

 「しかし、心臓部に当たる部品は、ドイツの工作機械任せ」

 「ドイツ製もあるよ」

 「それでも、重砲を山頂付近に運び込むには、まだ馬力不足だな」

 「アメリカ軍と平地でまともに戦えば負ける」

 「山頂に重砲を運び込めれば、なんとか戦えるだろう」

 「だが、街亭の戦いの例もあるぞ」

 「砲の射程は長いよ。水路を守るくらいできる」

 「ヘリは、空挺作戦でも使えそうだな」

 「オリジナルはともかく、空挺作戦を強行できるほど強靭じゃないと思うね」

 「空輸はともかく、オリジナルを地上戦に投入するのは嫌だな」

 「モドキのヘリでも、戦車キラーになりそうなんだけどな」

 「そりゃ 戦車撃破はできるかもしれないが対空砲や戦闘機に狙われたら撃墜されるな」

 「空輸で防衛線を作る方が得だ」

 「オリジナルほどじゃないが、モドキでも対潜哨戒は有用だ」

 

 

 

 インド大陸

 インドの総人口は3億5000万、

 入植した朝鮮人は2400万で総人口の7パーセントに満たない、

 言語人口でいうと、

 ヒンディー語、テルグ語、ベンガル語、タミル語、マラーティー語の順で、

 朝鮮語は2400万人で第6位だった。

 日本軍の上陸とイギリス軍の敗北は、イギリス軍の権威と実権を破壊し、

 その後の朝鮮人の強制移民は、イギリス領インド帝国を滅亡させる。

 日本軍の武器を手にした朝鮮人は生存圏を拡大し、

 インド社会を混乱させ、動乱を起こした。

 自由インド政府は、混乱したインド社会で権力を奪うものの、

 イギリス領と独立藩王国の統合。

 そして、新興勢力の朝鮮人に手間取っていた。

 ニューデリー

 「朝鮮人は、インド大陸で日本人の代理人になれそうなのか?」

 「さぁ 日本の武器弾薬供給は、朝鮮民族の自存自衛存亡と直結しているし」

 「当てにできると思うけど、海岸線にいるから、それが弱点であり利点かな」

 「朝鮮人は、イギリスの役割をやりたがってるけど、大丈夫か」

 「今後を考えると、武器を渡すのは、気が引けるけど」

 「人口比ならインドを支配していたイギリスより有利だし」

 「朝鮮半島は得てるから、駄目元でやらせてもいいと思う」

 「まぁ 嫌われるほど日本人の代理人になれそうだけどね」

 「実のところ、インド人と朝鮮人どうなの?」

 「朝鮮人は、武器を持ってるから残虐に足場を作ってる」

 「日本人は国がないと1年で死滅かも知れんが、朝鮮人なら毒の強さで、いい勝負かな」

 「このまま、代理人として支援し続けるのは、人道的に問題では?」

 「半島を奪っておいて、支援しない方が人道的に問題の様な気もするが」

 「やり過ぎな気もするね」

 「じゃ 小銃はやめて、弾薬だけということに・・・」

 

 

 満州帝国

 軍事支配は、表面的に過ぎず、

 経済支配も形ばかりの支配に過ぎなかった。

 満州帝国を実質支配していたのは、侵入してきた漢民族で、

 民族移動による人民支配は、恒久的なものだった。

 日本人の繊細さは、大陸支配に向かない気質で困難といえた。

 竜鳳油田を中心に日本人の産業移民が進んでいく、

 油の一滴は血の一滴であり、

 大陸の資源を押さえた日本軍は、資源開発を強行し、日本産業を進出させていた。

 日本の政府関係者たちが建設中の石油精製所を見上げる、

 「この石油精製が成功すれば、日本経済は一息だな」

 「ああ、しかし、極東ソビエト軍が怖いな」

 「戦車は?」

 「戦車よりトラックだろう」

 「あと、土木建築機械に産業機械」

 「艦隊の修復と改装で、それどころじゃないらしい」

 「相変わらず、工業力が乏しいな」

 「基礎工業力で劣っているからね」

 「馬鹿が、軍事ばかり傾倒するからだ」

 「資材、人材、資金を民生に回さないと・・・」

 「それより、対米英との講和は?」

 「アメリカがハルノートを撤回しない限り、見込み立たずだな」

 「イギリスと非公式協議をしていないのか?」

 「ニューデリーで何回か、やっているがね」

 「どちらにしろ、戦後軍縮ができないと日本経済は終わりだぞ」

 「むしろ、日本経済の破綻が戦争を招いたのだろう」

 「そうなんだけどね・・・」

 

 

 日本沖海戦は、アメリカ太平洋艦隊機動部隊の攻勢力を削ぎ、

 中部太平洋への進攻を躊躇させ、

 飛び石(アイランドホッピング)作戦を困難にさせていた。

 ラバウルは、太平洋戦線の焦点であり続けたものの、

 ポートモレスビーのアメリカ航空部隊は、一転して、攻勢から守勢へ移行し、

 ラバウル爆撃は減少していた。

 トラックまで大型輸送船で輸送し、前線は、高速船の一号輸送艦と二号輸送艦が使われた。

 ラバウル港

 ヘリと物資が結び付けられていく、

 「500kgあるが、大丈夫か?」

 「ああ、何度も運んでるからな」

 「知ってるか。アメリカでも、これだけのヘリコプターはないそうだ」

 「嘘だろう」

 「いや、本当だって」

 「信じねぇよ」

 一号輸送艦から朱雀(Ka54)モドキが飛び立つと、物資をラバウルへと空輸していく、

 将兵にとって、ヘリコプターは、比較的小型の輸送船でも離着艦可能で、

 ヘリの哨戒と空輸も珍しいものではなくなっていた。

 ニューブリテン島は、内地のローカル線を剥いだ資材で、1000kmに及ぶ鉄道が建設されていた。

 戦時下ながら製糖事業、水産、農園、製酒、鉱業、油脂工業などの産業移民が行われ、

 軍は、木材を伐採し、地下要塞だけでなく、住宅も建設していく、

 とはいえ、ほとんどの住宅は、風土病の治療のためのもので、

 マラリア、アメーバ赤痢、デング熱、腸チフス患者がベットに横たわっていた。

 陸海軍将校たち

 「日本への帰還は?」

 「闘病兵を帰還させると、内地の生産力を削がれて、輸送が減りそうだな」

 「じゃ このまま・・・」

 「しかし、帰還させないと死出の旅路で、これもまた困る」

 「どっちなんだよ」

 「「「「・・・・」」」」

 「まぁ 闘病兵も帰還中に撃沈されなければ良いけどね」

 「軍と殖産産業のため人生が踏み躙られか・・・」

 「御国の為とはいえ、滅私奉公も哀れだねぇ」

 「大正デモクラシーでアメリカの影響を受けている国民は多いし」

 「初期資本主義は、社会運動を踏み躙るし」

 「殺人的な資本主義といっても過言じゃないから共産主義のシンパも少なくない」

 「犯罪は増加してるし、社会も荒んでるからな」

 「こんな状況は、いつまでも続けられないぞ」

 「しかし、下手に民主化すると無茶苦茶になる」

 「この際、荒くれ者を戦場に駆り立てて、死んでもらった方が・・・」

 「それだと、皇軍のイメージが悪くなるばかりだよ」

 「徴兵だし、綱紀が下がりそうだな」

 「軍が力付くで国権を奪って正当化してるようじゃ 将兵も庶民もおかしくなるさ」

 「しかし、軍属に社会を仕切られると国民は悲惨だな」

 「過剰防御反応ってやつだろう、アナフィラキシーで死ぬ奴もいる」

 「そんな可愛いものじゃないよ。軍需利権に目が眩んでいるのだろう」

 「予算が大きいし、大義名分もあるし、逆らうと売国奴、非国民で殺される」

 「それでも日本沖海戦で一息つけてよかったじゃないか。輸送も増えてるし」

 「それだって、マーシャル・ギルバート再上陸を仕掛けるより、内線を固めたからだろう」

 「それに満州と中国で資源を見つけたらしい」

 「つまり、アメリカを負かさなくても、日本が負けなければいいと?」

 「アメリカはマーシャル・ギルバート防衛のため、輸送船団を派遣しなければならない」

 「その間、こちらは、ニューブリテン島に生産拠点を作るわけか」

 「輸送負けしているのがつらいがね」

 

 

 深夜の南太平洋

 護衛空母 艦橋

 無線にレシーバを付けた士官が無線輻射の波長を計算しつつ、海図に印をつけていく、

 船団の端と端で輻射を計測するとずれが生じ、

 ズレに向かって線を引いていくと、潜水艦が潜んでいそうな無線の源に近付く、

 連合軍船団は、当たらず遠からずな情報で潜水艦の待ち伏せを避けようと、船団の航路を調整していく、

 不意に、二つの水柱が立ち昇ると、

 薄い船腹が軋み音を立て、亀裂を走らせた。

 輸送船の船内は、海水が流れ込み、傾き、浮力を失うと、誘爆を起こさなくてもズブズブと沈んでいく、

 ベテランになれば、海中で聞いた音で、その光景が脳裏に浮かぶ。

 北大西洋の倍の距離を対潜哨戒しながら輸送船団を走らせる、

 これは、物量以前に乗員の体力と神経の疲労が大きくなることを意味した。

 護衛艦

 「護衛空母がやられたぞ」

 「なんてことだ。いったい、何隻潜んでいるんだ」

 「日本潜水艦に船団のコースがばれているんじゃないのか?」

 「もし、そうなら護送船団は、常に潜水艦に待ち伏せされることになる」

 「護衛は不可能に近いぞ」

 「左舷7時、雷跡2!」

 「最大戦速。面舵一杯!」

 日本海軍は、一定の海域に電波機雷を敷設し、

 潜水艦がいるように見せかけ、護送船団の乗員の疲労を高めさせた。

 そして、アメリカ護送船団を潜水艦(電波機雷)のいなさそうな海域へと誘導させ、

 逆に群狼作戦中で待ち伏せている潜水艦隊へ誘き寄せていた。

 数条の雷跡が輸送船団を襲い、リバティ船と護衛艦が沈んでいく、

 

 

 日本に火力発電所が建設され、満州の竜鳳油田の燃料が届く、

 電力は、工場を動かし、工業製品を生産し始める。

 軍民需要に必要な資源が港湾に集積され、少しずつ日本経済が立て直されていく、

 帝都 東京

 咳き込むような煤煙が空を覆う。

 石油精製能力は、二の次で電力だけが必要だった。

 男たちが大きな倉庫に入ると、露鳳に積まれていた電子部品、計測機械が解析した。

 多言語機能を持つコンピューターは、日本語に書き換えられ、情報処理に使われていた。

 「ごほん! ごほん! 外は、酷い空気だな」

 「煤煙より、絨毯爆撃の方が自然に与える打撃が小さいかもしれませんね」

 「そんな計算は出さないでくれ。投げやりになってしまうからな」

 「精密機械に良くないんですよ。扉を三重にしたいのですがね」

 「まぁ 善処するか。引っ越しを考えるよ」

 「それで、実験の内容は?」

 「時間移動が目的だったようです」

 「時間移動・・・現物を見ない限り信じられんな」

 「軍艦をフェムト秒ほど過去の軍艦と入れ替えようとしていたらしい」

 「あんな大きな軍艦で?」

 「固有振動数の以外を作用を排除しようとすると一定以上の質量が必要になるようです」

 「これで、時間を移動できるのか?」

 「ですが、バクーの実験場所は、黒海ですよ」

 「バクーが出現した場所と、緯度も経度も違うじゃないか」

 「フェムト秒後の世界が、まるで違うのか」

 「計算ミスで時間だけでなく、空間まで移動したかだね」

 「それも分からないのか?」

 「記録計をみると、最後の瞬間は、メーターを全部振り切ってるし」

 「エネルギー量をTNT火薬に換算すると、東京壊滅じゃ済まないかな」

 「じゃ 失敗したのか」

 「この実験は、リスクが大き過ぎますね」

 「今大戦に使えそうな技術なのかね。例えば爆弾・・」

 「使った電力が桁違いですね」

 「実験器の一部に真空管が使われているのも高周波大電力を使用したからでしょう」

 「日本にある電力を全部足して10倍にしても足りない」

 「威力は小さくてもいいよ」

 「一定以上のエネルギー、質量、原子共有結合制御を超えた段階で発動するのですから」

 「そういう、次元の問題じゃないですよ」

 「「「「???」」」」

 「んん・・・こうなったら即席の戦況に合わせて、精密機械を使うべきだろうな」

 「LSIが無理でもトランジスターならなんとかなるのだろう。それを集積したICも・・・」

 「設備投資は、大変な額になるはずですよ」

 「少なくとも、露鳳の出現を探るより、効率がよさそうだ」

 「しかし、将来性のある実験結果では?」

 「いまの日本は、御先真っ暗闇で、王手詰めを掛けられている」

 「将来性を考えられるような国際情勢ではないな」

 「露鳳という手駒があれば、入玉で手詰まり、逃げ切れるのでは?」

 「その筋道を考えられる人間がいればいいが」

 「また、派閥原理の権謀術数で足の引っ張り合いしてるんじゃないでしょうね」

 「まさか、海軍も陸軍もみんな仲良し挙国一致だよ、あははは・・・」

 「「「「・・・・」」」」 しらぁ〜〜〜

 

 

 インド大陸

 イギリス東海艦隊とアメリカ太平洋艦隊の壊滅は、インド統一戦争を決定付けた。

 自由インドのスバス・チャンドラ・ボースは、公式的にイギリスにインド独立戦争を宣言。

 イギリスの利権を収奪分配することで内輪争いに終止符を打ち、

 済し崩しにインド統一を進めていく、

 それに伴い、朝鮮人居留地が十数か所に形成され、

 インド行政への代表権を得てしまう。

 インド国会

 「日本人は、半島において善政を敷いてきた」

 「バラバラだった朝鮮人を教育し、原野だった社会基盤を整え」

 「列強国家と同列の種族として抱え込んできた」

 「しかし、このたび、朝鮮民族は、インドの大地において根付き、主導的な民族となっていくでしょう」

 「ち、違うニダ! 違うニダ!! 断じて違うニダ〜!!!」

 「「「「・・・・・」」」」

 「愛は寛容であり、愛は情深いニダ」

 「日本は、寛容ではなく、非情ニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「愛は、妬むことをしない。愛は高ぶらない、誇らないニダ」

 「日本は、朝鮮人を妬んで、高ぶり驕ってるニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「愛は、不作法をしない、自分の利益を求めない、いらだたない、恨みをいだかないニダ」

 「日本人は、嘘つきで利己主義で短気で、朝鮮人を恨んでるニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「愛は、不義を喜ばないで真理を喜ぶニダ」

 「日本人は不義を喜び、真理を嫌うニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「そして、愛は、全てを忍び、全てを信じ、全てを望み、全てを堪えるニダ」

 「日本人は、身勝手で疑い深く、諦め逃亡するニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「愛はいつまでも絶えることがないニダ」

 「支配を愛とすり替える日本人とは、もう、縁切りニダ!!!」

 『あの自尊野郎・・・』 日本人

 『綺麗ごと言うから付け込まれるんだよ』 インド人

 「「「「・・・・・」」」」

 「誠実な朝鮮人は、一度も侵略をしたことがない、世界で最も清い民族ニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「朝鮮人は、卑しい日本人とは違うニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「朝鮮民族は、インド独立の立役者ニダ。独立の父ニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 「朝鮮人は、イギリス権益を相続する権利があるニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 「朝鮮料理は最高ニダ。早急にキムチカレーを開発するニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 「御釈迦様は、朝鮮人ニダ。だからインド人は、朝鮮仏教に従うニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 「朝鮮語は、世界で最も優れた言語ニダ。だから朝鮮語でインド語を統一するニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 「一部、朝鮮人に不満を持つインド人がいて自尊心が傷つくニダ」

 「しかし、それは、誤解ニダ」

 「インドにとっては、逆に幸福なことで喜ばしいことなのに残念ニダ」

 「朝鮮人の血統に連なるダリットは、スードラに昇格ニダ」

 「朝鮮人の血統に連なるスードラは、ヴァイシャに昇格ニダ」

 「朝鮮人の血統に連なるヴァイシャは、クシャトリヤに昇格ニダ」

 「朝鮮人の血統に連なるクシャトリヤは、ブラフミンに昇格ニダ」

 「朝鮮人の血統に連なるブラフミンは、朝鮮民族に昇格ニダ」

 「今日から朝鮮・インド帝国ニダ〜♪」

 「「「「・・・・」」」」 ぶちっ!

 

 

 中国大陸

 中国国民軍は、アメリカ、イギリスから支援を受けられなくなると攻勢力を喪失し、

 中国共産軍は、ソビエト連邦から支援を受けつつ戦力を充足させ、戦況を盛り返していた。

 日本軍は、露鳳の戦略目標から新たな資源帯を押さえ、

 資源を採掘しながら採掘地とルートの防衛線を構築していた。

 中国人が鉄鉱石が山積みされたトロッコ列車を押し、

 輸送列車へと運び込む、

 生産手段と土地などの生殺与奪権を奪い、敗者を労働力にする。

 これは古来帝王学で利用され、

 初期資本主義で踏襲され、帝国主義の手法ともなった。

 富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる図式が作られると、

 持たざる労働者で異議を唱え、新たな関係を求める者が、社会運動を起こし、共産革命を画策した。

 そして、持たざる国家で異議を唱え、新たな国際社会を狙う国家が立ち上がると、国家間戦争が起きた。

 古来より人は、既得権の証文を書きかえる為に立ち上がって血を流し、

 民族は独立を目指し、国家は戦争する。

 そして、20世紀、日独同盟は、民族国家の生存圏を確立しようと戦い、

 国際社会で成り上ろうとしていた。

 それは、無法な手段で法を書き換える行為で、グローバル国家にとって既得権の侵害だった。

 善悪を超えた生存権が存在する限り、

 新たな支配と、被支配を構築する既得権の戦いは常に起きた。

 

 中国大陸  某鉱山

 三式指揮連絡機が周辺空域を巡回し、

 新たに配備された朱雀(Ka54)モドキが高台に重機関銃を空輸していた。

 この時期、日本軍は、火力の掃討面積を増やし、

 余剰人員を生産部門へと異動させていた。

 94式装甲列車の指令室は、フローリングされ、質素ながら調度品が整えられていた。

 国を離れるとモラルも低下するのか、

 濁り酒が注がれると、独特の香りが広がる。

 「こうやって、軍の規律が緩んでいくんだな。堕落だな」

 「何をしみじみと言ってるんですか」

 「それはそうと、次の出来は?」

 「なかなか良いようですよ」

 士官が蒸した白米に麹と水を足していた。

 「日本で造ると、捕まるのがいただけない」

 「戦争なんかするからですよ」

 「やっぱり、日清・日露戦争が原因かな」

 「酒税の財源は大きいですからね」

 「美味い “ろぶろく” が作れる士官は貴重だよ」

 「悪酔いしない程度にしてください」

 「分かってるよ。交替で正気を保っていれば、指揮はできるだろう」

 「国民軍が本気で攻めて来ても知りませんよ」

 「ふっ 本気なものか。せいぜい、民間人を襲撃するだけ、軍は攻撃できないだろうよ」

 「それより、また、付け届けが来てますよ」

 指令室の片隅に箱が山積みになっていた。

 「こういうのは良くないんだけどね」

 「わかってちゃいても、みんな怖がってやるんだよ」

 「まぁ 巡回を増やしてくれってことかな」

 「ほどほどにしないと、ほかの業者から訴えられるかもしれませんよ」

 「まさか、軍を訴えられるような業者はいないだろう。揉み潰されるだけ」

 「法律より、他の派閥から横槍を入れられる方が怖いかな」

 「もう、無法地帯ですね」

 「あははは・・・」

 「しょうがないよ。そういう社会にしてしまったのだから」

 「日本人は長いモノに巻かれるし、事勿れだし」

 「強いモノに媚びて弱いモノを虐める」

 「だんだん嫌な国になっていませんか」

 「そうなんだよな。だから将校になると、国外に自分の聖域を作りたがる」

 「聖域は作れそうなんですか?」

 「そうだなぁ 作れそうな、作れなさそうな」

 「だいたい、いくら装甲列車の数を増やしても戦争しながらでは、割に合わないだろう」

 「資源地の価値が高まるほど、防衛力は嵩みますからね」

 「いつまでも占領政策ができるとは思えないがな・・・」

 「鉱山を機械化しないので?」

 「機械化すると、現地民を雇えず、匪賊化して襲撃される」

 「仮に雇っても高価な採掘機械を壊される」

 「薬付けにすると、生産力が低下する」

 「薬付けして、機械化するのでは?」

 「大陸まで来て、売人を仕事したがる奴は少ないし」

 「中国人の売人任せだから、大陸支配は、難しいよ」

 

 

 

 

朱雀 (カモフKa54)
  備重/全備重kg 馬力hp 回転翼 全長×全高m 速度 航続距離 武装 爆装kg
オリジナル 7800/10400 1638×2 14.50m 13.50×4.90 300km/h 1160km 30mm×1 2000
モドキ 2500/3500 600×2 14.50m 13.50×4.90 260km/h 760km 7.7mm×4 500

 

海燕 (カモフKa31)
  備重/全備重kg 馬力hp 回転翼 全長×全幅×全高m 速度 航続距離 武装 爆装kg
オリジナル 5520/12200 2200×2 15.90m 11.60×3.80×5.50 255km/h 680km 30mm×1 5000
モドキ 3500/5600 1080×2 15.90m 11.60×3.80×5.50 215km/h 600km 7.7mm×4 1500

 朱雀(Ka54)、海燕(ka31)は、哨戒と空輸で有用なことから各部隊で最優先で欲しがられ、

 試作量産中にもかかわらず、慣熟訓練を受けた後、部隊に配備されていた。

 厚木基地

 「ヘリでの飛行時間は?」

 「100時間です」

 「・・・・」 ため息

 「済まんな。先方には無理をさせないように伝えている。壊さない程度に頼むよ」

 「・・・・」 敬礼

 プロペラが回り始めると風圧が大地を押し、機体を浮上させていく、

 オリジナルより数倍困難なモドキヘリの操縦は、簡単ではなく、

 航空機で300時間を超えた者から選出され、

 オリジナルの機体で訓練され、

 その後、モドキヘリの飛行訓練が行われる。

 

 呉

 初瀬(マサチューセッツ)、三笠(アラバマ)、

 38000t 全長240m×全幅33m×吃水11m

 130000馬力 速度30kt 航続距離25700km/14kt

 45口径406mm3連装砲2基 38口径127mm連装砲6基

 56口径40mm24門 70口径20mm22門、

 海燕(Ka31)25機 朱雀(Ka54)5機

 初瀬(マサチューセッツ)の全長は、伸ばされ球状艦首と合わせて、速度が向上していた。

 艦尾の管制塔から飛行甲板(80m×35m)が見え、

 スクリューの起こす水流が百数十メートルほど伸びていた。

 風の方向と管制塔の気流で吹き流しが乱れていた。

 飛行甲板の大半が非装甲化されていたものの、橋梁だけは十分に保たれる、

 オリジナルの海燕でも最大積載量で離着艦可能だった。

 赤レンガの住人たち

 「・・・意外に早く、修理改装できたな」

 「損傷艦の兵装を流用できたからな」

 「その代り、敷島(サウスダコタ)、朝日(インディアナ)」

 「富士(ワシントン)、八島(ノースカロライナー)の4隻は、日本の主砲になりそうだ」

 「45口径410mm砲は?」

 「45口径356mm砲になりそうだ」

 「それじゃ 火力が弱体化する」

 「サウスダコタ型は、火力が強力で防御も強靭だ。当然、砲撃戦に強い」

 「しかし、コンパクトで艦体が小さ過ぎる」

 「ただでさえ、少ない浮力を集中防御で、さらに小さくして、魚雷一本の浸水で沈む可能性もある」

 「戦艦以前に船だってことを忘れてるわけか」

 「その上、悪いことに電子装備の重量が増して重心を上にあげてる」

 「全長を伸ばしただけじゃ浮力が足りず、火砲を減らしても浮力は、不足気味だ」

 「レーダーか。凹凸のない艦橋が気に入らん」

 「露鳳型艦橋は、凹凸が少なく、多角面の方がレーダーに映り難いし、悪くないよ」

 「それに艦橋がフェーズドアレイレーダーに囲まれているようなものだ」

 「それよりAK100mm砲とAK30mmCIWSを装備して欲しいモノだな」

 「AK100mm砲のMR184射撃指揮装置の製造は、困難に近い不可能だし」

 「AK30mmCIWSのMR123-02火器管制レーダーとSP521光学式追尾装置は真空管で真似できるものじゃないよ」

 「トランジスターは?」

 「まだ、これからだろう」

 「じゃ 手動だ」

 「どちらも、無人砲塔だろう」

 「・・・・」

 「まぁ 構造だけなら模倣できなくもないがね」

 「砲身命数や品質は、全然違うモノになるよ」

 「当然、オリジナルより命中率が劣る」

 「現状より良ければいい」

 「こういうのは、もっと、鉄製品を量産して技術を蓄積して、ノウハウを向上させないと話しになんよ」

 「それに比べて、外装を多角面にするのは難しくない」

 「いまだに板切れしかまともに作れんのか」

 「鉄鋼生産量が違うから数を作るほど、歩留まりと品質に差ができる」

 「サウスダコタ型の冶金技術を見る限り、板切れと接合部の差もあるようだ」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 回転翼を回しながら数機のヘリが近付いてくる。

 「・・・来たようだ」

 航空機にとって狭い飛行甲板でも、ヘリは、十分なスペースらしく、

 朱雀(Ka54)モドキと海燕(Ka31)モドキは、ゆっくりと近づくと、着艦する。

 「新人パイロットのヘリ飛行時間は?」

 「100時間ほどだそうです」

 「大丈夫なのか?」

 「離着艦と移動だけなら」

 「あまり気休めにならんな」

 「教官が少ないのが問題かと」

 「オリジナルの機体も食い合いが始まっている」

 「教官を増やし、戦力化しないとまずいことになるぞ」

 「航空戦艦を生かすも殺すも、パイロット次第ですから」

 「しかし、艦隊内の移動が容易になるのは、好都合ではあるな」

 「巡洋艦クラスは、連絡用飛行甲板を設置させている」

 「水上機より、ヘリか」

 「哨戒と輸送はヘリでも、索敵は航続距離のある水上機だがな」

 「双発水上偵察機の開発は?」

 「99式よりコンパクトに開発できるだろう。艦尾から出入りできる」

 「ますます、戦艦から逸脱していくな」

 「厳密に言うと音響魚雷の目星が付いてきている」

 「大型駆逐艦を随伴させて、魚雷があれば、十分という話しもある」

 「露鳳では、格納庫から垂直発射で誘導ミサイルを敵艦に撃ち込むようだ」

 「現物が欲しかったですね」

 「コンピューターにそれらしい設計図があったが工学的に詳細なものじゃないらしい」

 「一応、製造しているが、現物を見ないことにはな」

 「ドイツ帝国のV1、V2ロケットが参考になるのでは?」

 「むしろ、自分たちで作ったほうが・・・」

 「全機、着艦しました」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 日本 陸軍射撃場

 Kord重機関銃(12.7mm×108)、PK(7.62mm×54R)、

 AKS74U(7.62mm×39)、AK107(5.45mm×39)、

 PP19Bizon(9mm×18)の比較がなされていた。

 露鳳の武器庫には、銃器だけが存在しており、

 銃弾は、全て日本製だった。

 「短銃型AKS74UとPP19Bizon(9mm×18)は艦内での防衛戦のため」

 「長銃型AK107は、艦外での戦闘用だろうな」

 「しかし、威力が小さくないか」

 「たぶん、Kord(12.7mm×108)とPK(7.62mm×54R)が戦場を支配してるから」

 「AKとPPは、機関銃の護身用なのだろうな」

 「んん・・・確かに撃ち合う距離が近いなら四式自動小銃(7.7mm×58)よりいいな」

 「そういう戦場になるのなら6.5mm×50弾と8mm×21弾の方が良いのか」

 「しかし、隙間が多いし、随分と雑だな」

 「いや、元々の仕様に余裕があって、全て同一の規格だ」

 「食い合いも容易だな」

 「仕様が甘いと、命中率が低下するだろう」

 「代わりに耐久性と、乱暴な扱いにも耐えられる」

 「たぶん、泥から拾い上げても洗うだけで使える」

 「それは、それでいいと思うが・・・」

 「問題は、優れていても、仕様弾薬が違い過ぎて量産できない事だな」

 「同じ機構で7.7mm×58、6.5mm×50、8mm×21を作るか」

 「8mm×21はともかく、6.5mm×50は微妙な大きさになるぞ」

 「それに機関銃の比率がもっと増えるとしたら、7.7mm×58は、大き過ぎる気がするね」

 「んん・・・現状で最短で最善となると・・・」

 「俺に言わせれば露鳳にあったフォークリフトやハンドリフトを量産した方が良いと思うよ」

 「あははは・・・」

 

 

 白レンガの住人たち

 「ジャパンバーグ海戦の残存艦隊」

 「空母5隻、軽空母2隻、重巡3隻、軽巡17隻、駆逐艦120隻の修理改装は、ほぼ完了しました」

 「新造艦隊は?」

 「空母9隻、重巡8隻、軽巡7隻、駆逐艦32隻」

 アメリカは、ジャパンバーグ海戦以降も軍艦を完成させ就役させ続ける、

 それは、海軍国が夢見てやまない最大保有トン数を年間ごとに建造していた。

 「新型艦艇の詳細は、空母パールハーバー、フランクリン・D・ルーズベルト」

 「エンタープライズU、ホーネットU、ヨークタウンU」

 「ワスプU、レキシントンU、サラトガU、ヴァリー・フォージ」

 「重巡セントポール、コロンバス、ヘレナ、ブレマートン」

 「フォール・リバー、メイコン、ロサンゼルス、シカゴ」

 「軽巡トピカ、プロビデンス、リトルロック、アムステルダム、ポーツマス、デイトン」

 「ファーゴ」

 「駆逐艦ブルー、ブラッシュ、タウシッグ、サミュエル・N・ムーア、ハリー・E・ハバード、

  ヘンリー・A・ワイリー、シェア、J・ウィリアム・ディッター、アルフレッド・A・カニンガム、

  ジョン・R・ピアース、フランク・E・エヴァンス、ジョン・A・ボール、ビーティ、パットナム、

  ストロング、ロフバーグ、ジョン・W・トマソン、バック、ヘンリー、ロウリー、リンゼイ、

  グイン、アーロン・ワード、ヒュー・W・ハドレイ、ウィラード・キース、

  ジェームス・C・オーエンス、ゼラース、マッセイ、ダグラス・H・フォックス、

  ストームズ、ロバート・K・ハンチントン、ブリストルです」

 「総数は、空母14隻、軽空母2隻、重巡11隻、軽巡24隻、駆逐艦152隻になります」

 「まだ攻勢に出られないか・・・」

 日本のX艦とヘリ。

 そして、巨大空母の3つが世界最大最強のアメリカ合衆国を躊躇させていた。

 

 

 

 イギリス機動部隊

 第1群

  イラストリアス、フォーミダブル

   (シーファイア72機、ファイアフライ36機、アヴェンジャー45機)

  重巡フロビッシャー、カンバーランド、

  軽巡ベルファスト、アルゴノート、

  軽巡ロイヤリスト、ケニア、

  駆逐艦

   グレンヴィル、アルスター、アーチン、ウラニア

   セラピス、シャーク、

 

 第2群

  ヴィクトリアス、インドミタブル

   (シーファイア72機、ファイアフライ36機、アヴェンジャー45機)

  重巡デヴォンシャー、ノーフォーク、

  軽巡フィービ、シラ、シリアス、ローナ、

  軽巡リヴァプール、クレオパトラ、

  駆逐艦

   ターマガント、タープシコリー、タスカン、ティリアン

   ソーマレス、サヴェージ、

 

 

 ポートモレスビー アメリカ航空基地

 スコルスキーR5とR6ヘリコプターが10機ほど宙に浮かび、

 何度も離着陸が行われていた。

 将兵たちは、珍しげにヘリを見上げ、面白がっていた。

 そう、誰の目で見ても標的が宙に浮いてるように思えた。

 そこにDC3輸送機が爆音を響かせ、滑走路に進入し、着陸する、

 基地の将兵は、タラップを降りてくる一種独特な風体の男たちを訝しげに見つめ・・・

 「いいか、貴様ら、行儀よくするんだぞ」

 「「「「へいへい」」」」

 「それと、官給品と私物を盗むな」

 「「「「へいへい」」」」

 「返事は一回!」

 「「「「へいへい」」」」

 「・・・・」

 『つったくぅ・・・暑いな』

 『ふっ 御国のためだってよ』

 『よくいうぜ、国が一番の泥棒頭じゃないか、ふざけやがって』

 『俺らにとっては、減刑のためだろう』

 

 アメリカ軍将校たちが図上演習を繰り返していた。

 「部隊は、正規の精鋭ホワイト中隊、不正規の囚人ブラック中隊、日系イエロー中隊の3つだ」

 「先に潜入しているインパチェンス小隊、パフィオ小隊、ペディルム小隊と合流させるか」

 「別個に作戦させるかだが、情報交換のため、一旦、合流させるべきだと思う」

 「囚人って、泥棒で刑務所に入っていた連中か?」

 「ああ、一応、軍事訓練だけは受けさせたが、天性の才能を生かしてもらいたい」

 「日系中隊は、信用できるのか?」

 「成功した場合、収容所と周辺地所の譲渡契約が結ばれる」

 「気前が良いな」

 「空母を撃沈されるよりましだ」

 「しかし、小隊(30〜50人)から、中隊(200人)となると規模が大きくなる」

 「潜水艦で潜入するのも、空挺部隊で潜入も、成功率が低下する」

 「仮に上陸に成功しても輸送量が増えれば発見される率も高くなる」

 「日本軍のヘリコプターを奪うより、ドイツ製ヘリコプターを奪う方が容易な気がするね」

 「欧州に手柄を取られれば、それだけ、物資を欧州にとられる」

 「それに日本製はオリジナルだよ」

 「やはり、オリジナルのワイバーン(Ka31)、グリフォン(Ka54)と」

 「偽物のザイロコーパ(Ka31モドキ)、ヴェスピナ(Ka54モドキ)の間には大きな性能差があるようだ」

 アメリカ軍が日本軍機に付けるコード名は、意味のない仮称が多かった。

 しかし、ヘリコプターに付けられた仮称は、脅威の現れで、次元の違いを十分に感じさせた。

 「情報によるとラバウルにオリジナル3機。偽物20機が存在するらしい」

 「シコルスキーR5とR6、より、性能が良いのだろう」

 「偽物でさえ、R5の200パーセント、R6の300パーセントの性能だそうだ」

 「オリジナルに至っては、偽物の300パーセントの性能があると見込まれている」

 「命がけで盗む価値があるというわけか」

 「こいつを盗み出して性能を分析しない限り、大規模作戦は不能だそうだ」

 「しかし、ラバウルの状況を完全に把握できていない」

 「特にヘリは、滑走路を必要としないからどこでも降りられる」

 「つまりヘリの配備場所は不明で、飛行場に駐機してるなら運が良いわけだ」

 「さらにヘリは、夜間飛行も容易で索敵能力が高い」

 「イギリスのコマンド部隊は、夜のジャングルに潜んでいるにもかかわらず発見され壊滅している」

 「なぜ見つけられるのだ?」

 「研究者によれば、集音器か、赤外線かもしれないそうだ」

 「あり得んな。どうせ、見つからないと高をくくっていたのだろう」

 「もう一つ、偽物は、ブローニングM1919重機関銃で撃墜できるそうだ」

 「本当に?」

 「無線ではそうだ」

 「それは、オリジナルを撃墜できなかったといことかな」

 「妨害電波の雑音でよくわからなかったがね」

 「イギリスのコマンド部隊の報告でも、ブレン軽機関銃で撃ったが撃墜できなかったヘリがあるそうだ」

 「「「「・・・・」」」」

 「噂ならVT信管がヘリの手前で炸裂したというのもある」

 「本当に?」

 「なにぶん、夜戦だからな。噂だよ」

 「じゃ ブローニング機銃を担いで運ばないとな。なあに、本体だけで、ほんの38kgだ」

 「「「「・・・・」」」」

 「・・・とにかく、オリジナル。それが無理でも偽物を捕獲したい」

 「問題は、盗み出せても運び出す方法がないだろう」

 「夜間、決まった時間に巡洋艦をニューブリテン島に接近させる」

 「乗ったこともない機体を操縦してか?」

 「操作はR5、R6と、それほど変わらないだろう」

 「まさか、オリジナルの性能からプロペラのフラッピング、ドラッギング、フェザリングが推測されてる」

 「日本の技術力では有り得ないが、それだけ多くの機構が組み込まれている」

 「見てすぐ操縦など、不可能に近いな」

 「その時は、ヘリを爆破、機構の一部でもいいから持ち帰って欲しい」

 「ふっ 巡洋艦が撃沈されなければ、帰還できるかもしれないが」

 「日本沖海戦で、我々の艦艇は多くの艦船を失った」

 「しかし、それは、日本も同じだ」

 「アメリカも日本も、巡洋艦を撃沈できる艦艇は減少している」

 「いざとなったら潜水艦に括りつけてでも帰還させたい」

 「航空攻撃を受けるのでは?」

 「ライトニング戦闘機とムスタングを支援に出すよ」

 「そこまでやるのか・・・」

 「日本沖海戦では、それだけ大きな損失を出している」

 「これ以上の損失は、選挙の敗北を意味する」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 ポートモレスビーを出撃したアメリカ爆撃部隊は、夜間飛行でラバウルに向かっていく、

 P61ブラックウィドウとDC3十数機の編隊が本隊と別れ、

 高度300mほどでニューブリテン島に近付く、

 編隊は、爆音を響かせないようにエンジン音を絞り、

 暗い海面から海岸線を飛び越えると黒い地表に変わる、

 「ルーク中尉。3度、左です」

 オペレーターが地図とレーダーを確認しつつ、指示を出していく、

 「投下用意・・・・落とせ!」

 黒と緑の斑模様のパラシュートが幾つも開きながらニューブリテン島の密林に消えていく、

 「戦力は十分な割に、せこい作戦だな」

 「機動部隊が大打撃を受けたので基地も大規模攻撃を控えるのでしょう」

 「日本機動部隊がポートモレスビーに攻めてくれば全滅させてやるのにな」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 日本沖海戦で日米英艦隊が大量喪失です。

 

 ワイバーン(Ka31)は翼竜。グリフォン(Ka54)は鷲とライオンのキメラ

 ザイロコーパ(Ka31モドキ)はクマバチ。ヴェスピナ(Ka54モドキ)はスズメバチです。

 

 日本は、クリモフTV3-117エンジン複製が可能でしょうか、

 設計図があってもエンジンの複製は最後になるそうで、

 DB601エンジンでさえ怪しかったのですから、

 一部を除くと、たぶん駄目という感じです。

 せいぜいオリジナルの延命部品と、

 似たような劣化モノを製造という感じです。

 

 

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第04話 1944 『ラバウル要塞の攻防』

第05話 1945 『継戦不能?』
第06話 1946 『愛国貧乏』