タイムスリップ系架空戦記
『時空巡洋艦 露鳳』
第08話 1948 『インド儒陀(じゅだ)皇帝ニダ〜♪』
中国大陸
人は平等ではない、
社会は、人種、民族、文化、宗教、言語、思想、地域などカテゴリーが形成され
縦割りな差別がされる、
それとは別に貧富、階級のヒエラルキーな層の格差も作られる。
より深刻なのは権力層が固定させたがる階級と貧富の格差であり、
縦割りな横の格差は、ヒエラルキーな保身を守るため利用されるものでしかなかった。
そして、中国社会は弱肉強食の封建社会で人権がなく、そういった概念も弱い、
時の権力者は、権力構造を維持するため教育も行わず
言葉によるコミュニケーションがされたとしても地方言語が強かった。
そして、高い視点、広い視野は、器の大きさと識字率に比例するため、
共産主義が発生したとしても民衆を糾合する人材は下から現れにくく、
民衆は南京政府や国民党など知性と財力と権力を有する権力層に従う。
そう、共産党は、強力な支援があり、権力層の不正腐敗が酷くない限り、
民衆を糾合し得ても脅威となりうる勢力となりえなかった。
日本人たちは、人海戦術で採掘される鉄鉱石を眺めていた。
漢民族は、グループ単位で一定以上の量を運ばない限り、食事が得られないため、
それなりに働いている。
「識字率が低過ぎて、これ以上、グループを小さくできねぇ」
「封建主義の老害極まれりか」
「日本もそういうところあるけど寺子屋はあったし、ここまで酷くないからな」
「識字率の低さは共有する知識が得られないから、人を孤立化させる」
「漢民族をして、己を一国家とする意識を持つに至らせた元凶だね」
「それは、善し悪しかも知れんね。漢民族個人のバイタリティは高い」
「でも集団化させるとどうしてこう効率が落ちるかな」
「弱肉強食の国家間に国際協力なんて単語はないからね」
「あははは・・・」
「笑い事じゃね」
「大陸の組織力を高めて、鉄鉱石をもっと内地に送らないと日本は戦争に負ける」
「漢民族の数を考えたら識字率が高まるのは怖すぎるよ」
「軍閥じゃないけど、馬鹿は馬鹿のままでいて欲しいと思うのもわかる気がするね」
「識字率を高めて、プロパガンダを利用すればいいだろう」
「識字率が高まれば組織を構築しやすくなるし。生産力は増える」
「どうせ、派閥抗争になるよ」
「利権団体の対立は権力抗争を巻き込んだ戦いになるし」
「利権団体が利益を追求するならアメリカみたいに搾取で社会を荒廃させる」
「利権団体が組織と序列の保身を求めるなら日本みたいに我田引水で社会を劣化させる」
「どっちも開発の余地があるなら悪影響は小さいよ」
「漢民族が利己主義が強いからアメリカ型資本主義になるか」
「歴史的な推移から日本型資本主義になるか興味あるね」
「強圧的な政治体制が取れないと、どちらにしろ、衆愚政治になると思うね」
「大陸は基本的に放置が好ましいよ。それを侵略しやがって・・・」
「満州だけで十分だっただろう」
「軍が予算を欲しかったんだろう」
「満州で開発と生産なんてやってたら予算が取られちゃうじゃないか」
「それで、大陸で強盗紛いかよ。大本営のアホどもが・・・」
「それより、航空機。まともに飛べるの減ってるよ。航空事故死急増・・・」
「もう、ラバウルもアメリカホイホイも持久戦すら困難になってるそうだ」
「マザーマシンで工作機械を作れって言ったのに兵器作るからだろう」
「どうしても作りたい部品があったらしいよ」
「日本は馬鹿軍人を真っ先に粛正すべきだね」
ブルターニュ・ノルマンディ半島戦線
米英軍と独軍の両陣営上空をF80シューティングスターとMe262戦闘機が制空権を奪い合っていた。
それまで主力だったスピットファイア、ムスタング、Ta152などプロペラ戦闘機は脇役に追いやられ、
戦略爆撃の時の長距離護衛でしか、活躍の舞台は残されていなかった。
開戦時の兵器は一掃され、
戦場は、全く違う様相を見せていた。
米英軍は、ベルリンへの原子爆弾投下を利用し、
ノルマンディに上陸し橋頭堡を築き、戦線を拡大したものの、
ドイツはルイ・フェルディナント皇帝を中心に権力構造の再構築に成功し、
軍を再編していた。
その後、ドイツ軍の先端兵器の投入と反撃により
米英ソ航空戦力とドイツ空軍の戦力拮抗は、地上戦を停滞させ、
フランス解放を困難にさせていた。
夜とともに視界が狭まり、索敵距離が縮まる、
米英軍は、狭まる視界を補おうと斥候部隊を前進させる、
アメリカ軍将兵は、身を低くめ散開しながら闇の中を歩いた。
不意に銃撃が始まると反撃もままならず斥候部隊は壊滅していく、
戦争で先に暗視装置を開発し、戦線に投入したのはドイツ軍だった。
暗視装置(ZG1229ヴァンピール)は、重たいと不評だったもののStG44に装備され、
戦果を上げていた。
突然、アメリカ軍司令部は、斥候部隊の通信が途絶えたことで全軍に警戒態勢を伝達、
将兵は、木陰や塹壕で身構え、暗闇を見つめる。
聞いたことのある爆音が迫り、
上空から幾筋もの炎が棚引いた。
M26戦車とM4戦車の上部装甲が撃ち破られて破壊される、
機銃が上空の爆音に向けて機銃を乱射し、
歩兵もM1ガーランドを空に向ける。
今度は地上から砲撃され、M4戦車が破壊され、
別のM4戦車がメクラ撃ちで反撃する。
ドイツ軍戦車は、赤外線暗視装置で、正確にアメリカ軍戦車を捕えて撃破し、
強襲を受けたアメリカ軍駐屯地は、混乱し、
銃弾が飛び交う交錯した戦場となっていく、
増援で派遣されたアメリカ軍歩兵部隊のバズーカーがキングタイガー戦車を捕え、
反撃が始まるまでドイツ軍の夜襲が続き、
夜が明ける前にドイツ戦車部隊は後退していく、
連合軍将兵たちが残骸となった戦車の周りに集まる。
「損害は?」
「M26戦車7両。M4戦車22両がやられた」
「戦死は298人、負傷者376人」
「ドイツは、タイガー1両と将兵が数十人だけか・・・」
「M26戦車は最強だったんじゃないのか」
「まともに正面同士で撃ち合えばな」
「こっちが見つける前に近距離で撃たれたら勝てんよ」
「もっと斥候を増やして前進させよう。話しにならん」
「ドイツの夜間射撃は正確ですからね、ほとんどの将兵が士気を低下させてますよ」
「「「「・・・・」」」」
「アメリカ本土は、V4大陸間弾道ロケット発射基地を破壊して欲しがってるよ」
「本土にドイツの大陸弾道ロケットの被害が出て世論を騒がせてるらしい」
「製造工場を爆撃しろよ」
「最新鋭機は、全部欧州側にもってきてるんだ」
「それでも被害甚大で上手くいかないから、地上軍を推し進めてるんだろうが」
「日本の風船爆弾もアメリカ本土に届いてるし」
「国民は細菌兵器・化学兵器が積まれているかもしれないと戦々恐々だ」
「ふん、イギリス人にしたら贅沢な悩みだな」
「「「「・・・・」」」」
朝鮮族の印度支配域は、中規模の一藩王国程度しかなかった。
1948年5月10日
しかし、初代大韓帝国皇帝高宗の第7男子、
李垠(イ・ウン)大将は、儒陀(じゅだ)皇帝を名乗ってしまう。
日本政府は、半島から朝鮮民族が消え、
イギリス帝国からインドが脱退する一石二鳥なら、どうなろうと構わないのか、
儀礼的な書簡を送って済ませてしまう。
ムンバイ港
朝鮮族軍が編成され、
儒陀皇帝が閲兵式を執り行っていた。
「我々は、インドに流されてきたニダ」
「しかし、負けたからではないニダ」
「朝鮮民族が勝つために流れてきたニダ」
「儒陀皇帝の儒は儒教で東アジアを表し、陀はインドの仏教を表すニダ」
「つまり、儒陀皇帝はアジア全体を表す皇位ニダ。とっても偉いニダ」
「強国の存在しないインドで力を付け、インドを統合し、世界に覇を打ち立てるニダ」
「儒陀皇帝万歳ニダ!」
「儒陀皇帝マンセー!!!」
「儒陀皇帝万歳ニダ!!」
「儒陀皇帝マンセー!!!!!」
「儒陀皇帝万歳ニダ!!!」
「儒陀皇帝マンセー!!!!!!」
総人口3400万の朝鮮族がインドで強力な軍隊を維持できるか不明だった。
しかし、朝鮮民族が10倍人口を誇るインド人を支配できるなら・・・
日本人たち
「儒陀皇帝だって。儒教と仏陀から取ったんだね」
「神々し過ぎるだろう」
「朝鮮人は、それくらいの希望があっいた方がいいんだよ」
「そうかな・・・」
「皇帝名乗っても、規模は儒陀藩王国だよね」
「どうなることやら・・・」
「朝鮮民族がインド統一してしまったら面白いよね」
「面白くねぇ」
「日本は、どうやったら戦争を終わらせられるかで大変だから構ってられないよ」
「まぁ それは言えるけど、不安だな・・・」
アメリカ合衆国
白い家から南に1km離れたワシントン記念碑州立公園のワシントン記念塔が破壊されていた。
今年に入ってドイツ帝国から大陸間弾道ロケット弾5発が発射され、
2発が北米に着弾し、
その1発がワシントン記念塔近くに落ち、塔を倒してしまったのだった。
また、日本から飛来する風船爆弾も増加し、北米大陸に損失を与えていた。
白い家
「戦況は?」
「欧州反攻作戦のため、太平洋作戦は一時停滞させています」
「日本海軍に変化は?」
「攻勢を行う予定はないようです」
「日本は攻勢をかけられないほど、産業が破綻してしまったかな」
「あちらこちら不具合が生じ、配給もままならず弱者病傷者から死んでるようです」
「結核患者だけでなく、不衛生から来る感染症と皮膚疾患も増大しているとのことです」
「艦隊を維持するため相当な犠牲を払っているかと」
「いつまで国民が我慢しますかね」
「ふっ このまま生殺しにして共産化させてやるか」
「半島移民で食糧事情だけは、回復してるようです」
「農業国ならやっていけてもな」
「工業化の段階になれば国民に強いる犠牲は計り知れない。資源のない国は特にな」
「満州の石油を入手。ほかにも資源開発に成功してるようで・・・」
「そうだったな」
「いったい日本人は、どこで山師の才能を身に付けたのやら」
「例のX艦の技術では?」
「だとしたら計り知れない宝船になるな」
「日本人にもたせておくのは惜しいですな」
「X艦とヘリをくれるのなら日本と講和を結んでもいいですかね」
「無論だ」
「数十年先の技術を更新できるなら」
「プラス。エセックス型空母5隻と艦載機を付けて交換してもいい」
「とはいえ、外交のパイプもないことだし、どうしたものか・・・」
「中立国を介して、非公式に予備折衝しては?」
「そうだな。そろそろアメリカ国民の戦意も低下してきているし、頃合いではあるね」
「ラバウル沖海戦と日本沖海戦。ベルリン爆撃の損失。大き過ぎましたからね」
「バルリン爆撃はともかく」
「ラバウル沖海戦と日本沖海戦は、前大統領時代の作戦で良かったよ」
「欧州反攻作戦の状況は?」
「ドイツ帝国再興で指揮系統が立て直され、防衛線が堅固になったようです」
「ドイツ本土進攻は?」
「それがドイツの新兵器。手強いようで・・・」
「ドイツが核兵器を開発したら、ワシントンDCが標的となるぞ」
「ワシントン記念塔近くに落ちたのは偶然だと思われますが」
「例えそうだとしてもだ。国民は不安を覚えてる」
「核かもしれないとな」
「そして、アメリカ国民の不安を解消するには、ドイツ帝国を打倒するよりない」
「幸か不幸か、日本への核攻撃は被害が及ばず脅迫で収まって講和を結びやすいともいえる」
「将来日本が核兵器を保有する可能性があると?」
「日本がX艦絡みで核兵器を保有していたとしても驚かんよ」
「持っていたとしたら使用してるのでは?」
「ベルリンの映像は見たかね」
「「「「・・・・」」」」
「もし結果を知っていたら、核使用は躊躇するだろうな」
「「「「・・・・」」」」
「時に・・・インド情勢は、どうなってる」
「朝鮮人が儒陀皇帝を名乗りました」
「日本は、朝鮮民族を支援し続ける気だろうか」
「まさか、朝鮮民族のインド強制移民は、半島利用と、イギリスに対する嫌がらせに過ぎず」
「日本に、それほどの国力はないと思われます」
「朝鮮人は、日本人を恨んでいるだろうな」
「ええ」
「戦後の対日戦略で生かせるかもしれない」
「朝鮮民族のいい評判は、聞いたことがありませんが」
「例え、そうであっても日本の勢いを削がすことができるだろう」
未来の技術があっても習得出来ない限り、借り物でしかなかった。
仮に未来の技術力を習得できたとしても
技術を生かした産業で生計を立てるなら自由貿易が望ましかった。
しかし、時、既に遅く、戦時下にあって自由交易が絶たれ、
未来の技術は、国家基盤でなく、
再生産の効かない軍需産業に転用される。
そして、深刻なことは日本が資源をほとんど産出できない島国だった事であり、
近代化を低減させ、農業立国とさせるには人口が多過ぎた。
幸運というべきか、不運というべきか、
日本産業に必要な資源の多くは大陸に存在した。
日本の大陸進出と列強の反発と対立は、自然な流れと思われた。
大陸は、日本の傀儡である南京政府(陳公博)、
米英ソの支援する重慶の国民党(蒋介石)、
共産党(毛沢東)の3勢力に分かれ、攻防戦を展開していた。
南京中華民国は優勢だったものの、日本に対し、面従腹背であり、
日本への軍事的な協力関係はほとんどなかった。
中国大陸 上海港
貨車から降ろされた資源が船積みされ、日本へと出航していく、
日本人たち
「上手く資源開発できたとは言え、大陸に依存するのは気が進まないね」
「そうはいっても最大の貿易国アメリカと戦争しちゃな」
「大陸の資源と市場がなければ日本の近代化と経済成長は得られない」
「かといって、大陸支配はできそうにないがね」
「問題は、大陸の利権を安定して得る方法だよ」
「だいたい、戦後構想も考えず戦争始める軍部が馬鹿すぎる」
「日中戦争は、国民軍に攻撃されたからじゃないの」
「攻撃させた、なら一流だが。攻撃された、なんて三流のいいわけだよ」
「政府は、蒋介石と交渉を再開したと聞いたけど」
「大陸はね〜 誰が統一したとしても血を流さない限りまとまらないと思うよ」
「いっそのこと、まとまらせない」
「資源をどうするんだよ。市場も・・・」
「「「・・・・」」」
アメリカ合衆国
白い家、
偉い人たちが中立国、ソビエト経由で届いた文章と3枚の地図を見入っていた。
中央の男は、同封されていた白い手袋の親指と小指を摘まんでもてあそんでいる。
果たし状
アメリカ合衆国殿
1948/10/01〜
アリューシャン沖にて決闘を申し込む、
戦闘終結後、停戦し、国交を正常化するものとする。
日本の勝利が確定した時、アメリカ合衆国は東アジアに対し不介入とし、
ハワイ、グアムを日本に譲渡し、
日本が敗北が確定した時は、日本は占領地より撤退し、
ミクロネシアをアメリカ合衆国に譲渡するものとする。
勝敗は旗艦の撃沈、
あるいは旗艦から白旗が揚げられた事により確認する。
日本艦隊の旗艦は戦艦大和である、
勝負付かずの場合、地図の如く、現状のまま停戦とする
なお、戦争における賠償は、無きものとする。
立会人は中立国の代表とする。
尚、怖気づかれたなら事前に連絡されたし、
快く決闘を撤回する。
大日本帝国
「日本は卑怯な騙し討ちで始めた戦争を決闘で綺麗に終わらせたがっているらしい」
「新聞社は?」
「ソビエトや中立国経由で入ってきてますし、既に3枚の地図を含め号外が出されてますよ」
「舐めた真似しやがって・・・」
「国民の様子は?」
「黄色いサルの分際でと怒ってますね。決闘を受けろと・・・」
「ちっ アメリカ人の気性を知ってやがる」
「こういう挑戦をされるとアメリカ人は燃えますからね」
「占領地からの撤退というと、どこまでかな」
「ニューブリテンも入ってますし。地図の通りでしょう」
「両国間条約で保障されてない、占領地ということでしょう」
「しかし、このタイミングで来るとは考えたものだな」
「ドイツの大陸間弾道弾は北米大陸に届いてますし。日本の風船爆弾も被害が増してます」
「国民は、科学細菌兵器を恐れてますし、ドイツの核爆弾開発と報復も恐れています」
「厭戦機運は高まってますし、一海戦で決着がつくなら・・・」
「しかし、これでは、勝ち負けにかかわらずX艦が手に入らないではないか」
「そうそう、ミクロネシアの代わりにX艦をよこせ」
「まぁ ニューブリテンに上陸作戦をするより血を流さなくていいし」
「幕露守に突撃するより地の利はあるよ」
「日本の空母艦載機は、ゼロ戦、彗星、流星の旧式機」
「アメリカの空母艦載機は、F8Fベアーキャット、A1スカイレイダー」
F8Fベアーキャット
全長8.61m×全幅10.92m×全高4.22m 翼面積22.67u
2100馬力 重量3210kg/全備重量5900kg
最大速度678km/h 航続距離1780km
武装20mm×4 爆装454kg×2 乗員1名
A1スカイレイダー
全長11.84m×全幅15.25m
2800馬力 最大速度520km/h 最大航続距離4800km 乗員1名
固定武装20mm×4、
魚雷または増槽、
2000ポンド爆弾×2または増槽×2、ロケット弾・爆弾パイロン×12
「空母決戦の方が勝ちやすいんだがな」
「艦隊決戦も日本の計算のうちか・・・」
「ところでジャパンバーグ海戦で大敗北した海軍は勝てるのか?」
「アリューシャン沖は、時期的に空母戦力の運用が困難です」
「アメリカ戦艦はモンタナ、オハイオとケンタッキー、イリノイの4隻」
「日本戦艦は、大和、武蔵、長門、陸奥」
「ワシントン(富士)、ノースカロライナー(八島)」
「サウスダコタ(敷島)、インディアナ(朝日)、マサチューセッツ(初瀬)、アラバマ(三笠)の10隻」
「4対10で負けてるではないか」
「モンタナ、オハイオは最新最強の戦艦ですし」
「補助艦艇も新型が多く」
「日本戦艦は艦尾砲塔を剥がして戦力は3分の2以下です」
「それに日本海軍は42年以降、10000t以上の艦艇を建造しておらず旧式化しています」
「X艦を考えなければ互角以上に戦えると思いますが・・・・」
「まさか、日本は、その海戦でX艦を沈める気じゃないだろうな」
「それは一番困る」
「X艦は捕獲だ」
「決闘を受けるんですか?」
「ドイツに原子爆弾や科学細菌兵器を使われかねない情勢だぞ」
「戦後を考えるなら、これ以上、日本と戦ってもうまみはない」
「負けたら、ハワイですか・・・」
一人が勝った場合の地図をパチッと弾く、
「勝てば大陸権益と占領地を放棄させて、ミクロシアが手に入る」
「決闘は、本来そういうものだよ」
日本
首相官邸
「たっくよぉ 軍上層部は聖域に入って切磋琢磨せず淀みっぱなし」
「綺麗事と浪花節の美学と上っ面の偽善者の老人クラブか」
「内輪の派閥争いと権謀術数に明け暮れるわ」
「若手の才能を搾取して使い潰すのが気に入らん」
『『『『てめぇが言うな!』』』』
「査定を入れて5年間に、上層部の3分の1くらい入れ替えるべきだな」
「そうすれば膠着した組織も風通しが良くなるだろう」
「まったく、今まで何をやってたんだか」
「年功序列と権威主義者の馬鹿が庇い合って豚になってるだけだろうが」
「大本営は悪化良貨を駆逐するの見本だな。醜悪過ぎる」
「「「「・・・・」」」」
「総当たり戦で図上演習やらせて負け越した将官のクビを切っちまえ」
「図上演習と現実は違うのでは?」
「組織大事で、ぬるま湯で踏ん反り返った馬鹿どもを養うよりましだ」
「「「「・・・・」」」」
「それくらいやらんと上層部に残るのは愛国者ぶったバカ賊臣ばっかりになってしまう」
「「「「・・・・」」」」
「もう、お前らは生きる屍なんだよ。腹を切れ、腹を・・・」
「・・・総理」
「ん?」
「参謀総長、参謀次長。軍令部総長、軍令部次長が到着しました」
「お、そ、そうか。通してくれ」
将校たちが現れ、
テーブルに茶菓子が置かれていく、
「アメリカは、日本の決闘を受けるだろうか」
「大国が小国から決闘を申し込まれて逃げれば政治的に致命的でしょう」
「アメリカ国防省も体面を失いますな」
「引き分けなら現状のまま」
「勝てばハワイで。負ければ占領地から撤収で、ミクロネシアか・・・」
「どうでもいいよ」
「引き分けでも、勝っても、負けても」
「地図にある形で戦争を終わらせられるなら日本の勝ちだ」
「まぁ 勝つ方が露鳳の交換価値が高まっていいがね」
「戦後、アメリカが無理難題、言ってきたらどうする?」
「そんなの戦前と変わらんよ。政治外交で処理するよ」
「だいたい、小国が軍事力で問題を解決しようとした時点で負けだよ」
「戦後、国は、どう再建を立てると?」
「アメリカとの交易が再開されるだろうし」
「技術的な優位性があるならビジネスも成り立つだろう」
「問題は中国大陸だな」
「半島確保なら衣食住は問題ないよ」
「負けたとしても、最悪、満州鉄道を残せるはずだ」
「といっても満鉄なんて赤字だし、いらんがな」
「それに日本が開発した資源帯は権利があるはずだ」
「とはいえ、日本経済を安定させるには、資源と市場が足らないのでは?」
「最善と最悪、どちらにも対応できるように検討するしかないだろう」
「それと東シナ海の油田の位置は、わかってるはずだ」
「海底油田を掘る技術なんて・・・」
「だよねぇ とはいえ、場所はわかってる」
「予算を注ぎ込んでもモノにするしかないだろう」
「「「「・・・・」」」」 憮然
「ところで、日本艦隊の調子は?」
「人事を尽くして天命を待つのみです」
「人事ね・・・」
「アリューシャンは、これまでの戦場と違って地の利がないぞ」
「それに日本軍はキャリア主義と年功序列のムラ社会。同好会だろう」
「常に実績が査定され昇降格に晒されてるアメリカ海軍将兵に勝てんのではないのか」
「そんなことはありません。全軍が結束して事に当たりますれば・・・・」
「そ、そうか・・・」
「はい、もちろんです!」
「そうか・・・」
「「「「・・・・」」」」 ため息
赤レンガの住人たち
届けられる原稿に目を通し、ため息をつく、
「ったくぅ どいつもこいつも碌な提案を出しやらねぇ」
「んん・・・これは?」
「X艦関連で、未来の情報を持った男が西海岸に流れ着いて」
「アメリカに協力すると見せかけ」
「このまま、日本と戦争を続けるとアメリカは内戦が起こるとミスリードさせるというやつだ」
「そんな芸当できる芸人が日本の諜報機関にいたかな」
「まず内戦の元を潰して戦争継続だと思うよ」
「内戦を元が日本に情報を流していた真珠湾の海軍大将になってるけど」
「そういう作戦は、日本人の諜報能力と人材の力量を考えて立てるもんだろう」
「ていうか、嘘発見器でばれるだろう。あほが」
「日本作家。全滅だな」
「頭いてぇ〜」
「このままだと欧州のジェット戦闘機が太平洋に回ってきたら一気に制空権を奪われ」
「日本のニューブリテン戦線は崩壊だな」
「ジェット戦闘機は航続距離が短い」
「もうしばらく余裕があるよ」
「いつまでもつやら・・・」
一人がおもむろに書類に目を通す」
「48年のチャンス・ヴォートF7Uカトラスが量産される頃まで・・・」
「制空権で負けてもベトナムのように戦えばいいさ」
「日本人には難しいと思うけどな」
ドイツ帝国 ポツダム
ツェツィーリエンホーフ宮殿は、ルイ・フェルディナント皇帝の居城と
ドイツ総司令部を兼ねていた。
ドイツ空軍は、キルレートで米英ソ空軍に勝り、国内の制空権を回復しつつあった。
そして、制空権確保は、地上戦での抗堪性を高め、戦線を拮抗させる。
「スギハラ。日本は、アメリカと講和を結ぶつもりなのかね」
「残念ながら国力が限界を迎え、これ以上の交戦は困難になりました」
「日本にドイツ軍がいるはずだが」
「可能な限り返還させます」
「いや、帰国は困難であるし、ギリギリまで戦闘を継続させて欲しい」
「停戦後、ドイツ将兵兵は、そのまま日本に居留させ」
「居留費用は、艦艇を日本に購入してもらい」
「残金はスイス銀行に支払ってもらいたい」
「本国にそう伝えます」
「ところで、日本が、もっと有用な技術を隠し持っているなら売ってもらいたいのだが」
「日本にドイツに輸出できるような技術は存在しません」
「「「「「・・・・」」」」」
庭園にKa31、Ka54を模したヘリが駐機してるため説得力がなかった。
そのどちらも日本のモドキヘリより数段性能がいいものであり、
戦線では潜水艦キラー、戦車キラーとして名を馳せていた。
そして、日本の大使がそのことを知ってる可能性は低かった。
「まぁよい。しかし、我が国の戦果は、日本の安寧と直結していると理解しているだろうか」
「無論です」
「ドイツ帝国と日本の敗北は、全体主義が民主主義に負けるだけではない」
「家族主義が個人主義に敗北することも意味する」
「家族主義の敗北は父権喪失であり、家族の秩序を破壊し国家基盤を危うくするものだ」
「アメリカとの戦争に負ければドイツも日本も女子供を付け上がらせ」
「手の施しようにない社会にしてしまうだろう」
「家に警察や弁護士を入れてしまう情けない国になるだろう」
「個人主義の台頭を許してはならない」
「確かに・・・」
「では、可能な限り、日本の技術供与に期待していると本国に伝えて欲しい」
「はい」
外に出ると田園風景の中の巨大な邸宅に思えた。
新しい日本大使館はポツダムの街に作られていた。
「家族主義か・・・」
「飲んだくれの親父になら一言二言言いたくなるだろうし」
「馬鹿で心の狭い怠け者の母親なら見限りたくもなるだろう」
「親や夫というだけで子や妻の尊敬を勝ち得られるなら苦労はせんよ」
「それにドイツも日本も孝より忠が強い社会だからな・・・」
「大使。日本にはなんと・・・」
「日本はいつの間に科学技術が発展したのやら・・・」
「例のX艦のせいでは?」
「民族の自存自衛を成すなら民族の力で成すものだ」
「そんな拾い物に国家と民族の命運を託すなど、それが日本民族の尊厳か」
「まるで無能な物乞い民族じゃないか」
「切っ掛けが与えられたと思うべきでは」
「ふん! 開発する力は造力と経験と意欲だ」
「日本の技術がX艦を超えたとき、そう思うことにするよ」
38000t級空母 露鳳
フェイズドアレイレーダー “マルス・パッサート” のデーターは、CICルームに伝わる、
コンピューターが演算処理した内容がモニターに映されていた。
「海図が3次元で、潮流も、これほど詳しいとはな」
「天候は、わからないみたいですね」
「しかし、幾つもの状況を仮定して演習できるのはいい」
「時期的に航空戦は無理のようですね」
「そうだな。それに時化を考えるなら巡洋艦以上でなければ戦力になりそうにない」
「戦艦の艦尾砲塔を剥がしたのが惜しまれますよ」
「ほとんどが大破してたからな」
「国産ならともかく、外国製の砲塔や砲身を作れそうにないし、しょうがないよ」
「国産でも作れなくなってきてるのでは?」
「まぁ 大口径の大砲に未来がないと分かれば、無理して作る必要もなかろう」
「かといって、ミサイル開発も怪しいですがね」
「基礎設計がわかっても作れんとは情けない限りだ」
「コンピュータでわかるのは概略図だけですし」
「品質とコアになるコンピュータ部品が複製できない限り無理ですね」
「なんで小指大の部品のために工廠より大きな工場を建設したがるのかわからんね」
「国賊じゃないのか」
「だよな。組織は自己増殖するし、予算あるだけ使うからな」
「提督。イギリスがヴァンガード。自由フランスがリシュリューを派遣する動きがあるようです」
「ま、まずいな。計算が狂う」
「10対4から10対6ですからね・・・」
「でも果たし合いに外国戦艦を参戦させるなんて、アメリカも・・・」
「ハワイがかかってるからな、でも、ずるいよな」
「そうなると大和、武蔵とモンタナ、オハイオの一揆打ちの時間が長引くな」
「大和が40秒に6発。モンタナが30秒に12発で、手数で負けてますからね」
「巡洋艦以下の数と質でも圧倒的に負けてるし・・・」
「Ka31を飛ばして、レーダー観測砲撃をさせたとしても苦しいかな」
「しかし、全天候型ヘリっていいな。濃霧だと有利だな」
「ピケット艦を前進させてくるはずだから、一概には言えないよ」
「じゃ 露鳳とヘリのECM・ECCMが頼りか・・・」
「まぁ 艦内のデザインは気に入らないが、レーダーの性能がいいからねぇ」
「航空戦でも護衛機を誘導せれば、数と性能で負けてない限り勝てるだろう」
「航空機の数と性能で負けてるのが最大の問題だな」
「だから、アリューシャンを選んだんだろう」
「露鳳と同じシステムをほかの艦艇にも載せたいものだ」
「作り方が分からないものも多いですよ」
「この光ファイバーなんて、いまだに・・・」
「まだ、複製ができないのか」
「開発側は、決まって金寄越せですからね」
「特に原子爆弾なんか・・」
「くそぉ あれもこれも金、金、金か・・・」
「開発だけで軍事費、消えちゃいますよ」
「だが、露鳳の技術体系そのものが巨大な利権の塊」
「財閥連中は予算目当てと世界市場の利権分けで戦争終わらせたがってるし」
「軍部もお零れに預かろうと派閥を作ってる」
「戦争中に何やってんだか」
「そういう連中に限って、私心はないとか大義名分と権威を利用しやがる」
「滅私奉公とか。七生報国とか。お国のためとか・・・」
「問題は例の手が通用するかどうか・・・」
真珠湾
2050t級フレッチャー型駆逐艦バッチ、
艦首に衝角の付いた爆弾が取りつけられ、
船体中央に10mほどの葉巻型カプセルが横向きに載せられ、
改修工事の火花が散っていた。
艦橋
「艦長。工事は進んでいるかね」
「ハワイを守るためとはいえ、駆逐艦で体当たりさせられるとはね」
「駆逐艦だけじゃない。巡洋艦も同じ改造をしている」
「そこまでやらないと、アメリカ海軍は日本海軍に勝てないと?」
「大和、武蔵はモンタナと同クラスらしい、大きな時化でもヘリを離着艦させられそうだし」
「それに日本のワイバーンとグリフォンは、アリューシャンでも飛べると仮定している」
「上空から観測砲撃されると、艦尾砲塔がなくても計算上、ヤバいわけですか」
「そういうことだ」
「しかし、1艦で1艦を撃沈すれば日本艦隊は全滅し、アメリカ艦隊だけが残る」
「馬鹿でもわかる単純な引き算だ」
「脱出艇の射出実験は?」
「20度以下なら圧縮空気で10m級カプセルボートを打ち出せた」
「そちらの幸運も祈りたいですな」
「10月のアリューシャンで、どの程度生き残れるか・・・」
「救出は全力で当たる。停戦後ならリバティ船を救助に出せるだろう」
10月のアリューシャン
晴天と呼ばれる天候は365日のうち、8〜10日に過ぎなかった。
吹雪き、
時に暴風雨と雹が叩きつけ、
時に濃霧に閉ざされ、
時化、流氷が押し寄せる、
大船に乗っていても生きた心地のしない海域、
それがアリューシャン列島だった。
日本軍の地の利は全くなかったものの、
アメリカ軍も索敵基地を置くだけで、侵攻の拠点にすることもできなかった。
航空基地がある優位性も全天候型航空機がなければ生かされず、
この時代、高度なレーダーを装備した機体は、日本のKa54とKa31のみだった。
アッツ島
薄暗い強風の中、B29爆撃機が風に翻弄されながらも滑走路に着陸する。
大型機でさえ、レーダーによって誘導されなければ自機の位置を見失う世界でもあった。
司令塔
「どうだった。カムチャッカ側は?」
「吹雪いてましたよ」
「レーダーは妨害されて、日本艦隊の位置は不明です」
「じゃ 海戦当日の天候は風雨と時化だな」
「こんな海域で艦隊は戦えるのか」
「戦艦ならまともに砲撃できそうだが、巡洋艦は命中率が低いだろうし」
「駆逐艦は、ほとんど当たらないな」
「濃霧より良かったのか?」
「さぁね、少なくとも一方的に砲撃される事はないだろう」
「まさか、アメリカのレーダーが日本のレーダーに負けるなんて・・・」
「何かの間違いであって欲しいよ」
「日本のレーダーじゃないらしいよ」
「では、ドイツの?」
「いや、X艦のモノらしい」
「ほかの世界から出現したという?」
「全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙な事であっても、それが真実となる、からね」
「シャーロックホームズの消去法ですか?」
「民主主義は衆愚政治。共産主義は労働意欲喪失」
「だからファシズムがいい、というのと変わらないじゃないですか」
「しかし、眉唾でも、戦果から逆算するとあり得そうだろう」
「まぁ 確かに・・・」
日本海軍 艦隊総数
第一機動部隊
加賀、瑞鶴、翔鶴 (零戦114機、彗星74機、天山40機)
利根、妙高、那智、
吹雪、白雪、初雪、深雪、叢雲、綾波、敷波、朝霧、夕霧、天霧、暁、響、
第二機動部隊
赤城、飛龍、蒼龍 (零戦74機、彗星54機、天山63機)
筑摩、高雄、愛宕、
長波、玉波、涼波、藤波、早波、朝霜、早霜、秋霜、清霜
第三機動部隊
飛鷹、隼鷹、龍鳳、(零戦42機、99艦爆36機、97艦攻42機)
最上、三隈、古鷹、
朝潮、大潮、満潮、荒潮、朝雲。早潮、夏潮、初風、雪風、天津風、
第四機動部隊
露鳳 (Ka54 5機、Ka31 10機 零戦40機、彗星30機)
大鳳 (零戦30、彗星30機)
祥鳳、瑞鳳、龍嬢、(零戦72機)
大淀、
秋月、照月、霜月、冬月、涼月、初月、新月、若月、
白露、時雨、村雨、夕立、春雨、
第五機動部隊
雲龍、天城、葛城 (零戦84、彗星54、天山24機)
富士(ワシントン)、八島(ノースカロライナー) (Ka31 6機 瑞雲30機)
阿賀野、酒匂、
巻波、高波。谷風、野分、嵐、萩風、舞風、秋雲
戦艦部隊
大和、武蔵 (Ka31 6機 瑞雲50機)
敷島(サウスダコタ)、朝日(インディアナ) (Ka31 6機 瑞雲30機)
初瀬(マサチューセッツ)、三笠(アラバマ) (Ka31 6機 瑞雲30機)
長門、陸奥、
9650t級軽巡 浅間(ホノルル)、
1850t級駆逐艦 ききょう(ウィンスロー)、
1500t級駆逐艦 しおん(ドレイトン)、あじさい(ラムソン)、
1360t級駆逐艦 ばしょう(デイル)、
長良、五十鈴、阿武隈
川内、神通、那珂
初春、子日、若葉、
千歳、千代田 (水上偵察機 瑞雲54機)
敷島(サウスダコタ)
艦首と艦尾が伸ばされ、第三砲塔が剥がされ飛行甲板となっていた。
艦型は、ややスマートになったもののサウスダコタ型と分かる形容だった。
艦橋
「ECM・ECCMの調子は?」
「多少位置を誤魔化せる程度のようです」
「原理がわかっても手動じゃな・・・」
「艦長。積み込み完了しました」
「そうか、あれこれ重量配分を移動させてバランスをとっても第三砲塔の分の余剰浮力が増しただけか」
「アリューシャンの波に弄ばれることにかわりはなさそうですが」
「そんなに酷いのか」
「潜水艦の報告だと、いま7mだそうです」
「じゃ 三角波に当たったら20mを超えるな」
「ヘリは、大和、武蔵に集中させていますが発艦させられるかどうか・・・」
「耐波性のいい日本艦艇でもトップヘビー気味だと横波受けて転覆しそうです」
「大和、武蔵はともかく、元アメリカ戦艦だと時化を押し切れるか不安ですね」
「Ka31とKa54の調子は?」
「いまのところ、不具合は無いようです」
「日本製エンジンが次々に壊れてるのに信じられない耐久力だな」
「露鳳備付けの工作機械が無かったら危なかった思います」
「旋盤、横型フライス盤、ボール盤、縦型フライス盤か・・・工作機械の複製は?」
「交換用治具の種類を増やさなければならないらしく。そちらも調子がいいといえませんね」
「今回の作戦で稼働率の維持は限界かもしれんな」
「モドキヘリの性能は向上してるが、まだまだだからな。先が思いやられる」
「露鳳も交換しなければならない部品が増えてますからね」
「結局、露鳳規格で行くのか」
「そうなりそうです」
「しかし、X艦ほどじゃないとしてアメリカ艦艇の技術力の高さは呆れる」
「艦の住み心地も日本艦艇よりいいですからね。将兵に人気ありますよ」
「だが、それも次の海戦で生き残ることができればの話しだ」
「問題は、アメリカ側の戦略ですかね」
「どう来ると読む?」
「可能な限りの水上艦艇をアリューシャンに突入させてくるのでは?」
「沈んでも新造艦に乗り換えられるアメリカ海軍と」
「沈むと新造艦なしで乗り換えの怪しい日本海軍では、作戦の根柢が違いますから」
「沈めると恨まれるからな・・・」
「新造艦建造があればもう少し積極的に戦えるのですが・・・」
「新造艦どころか、訓練費用だけで疲労困憊だしで、訓練費用すらままならなくなってる」
「国民は、これ以上の軍事費に耐えられそうにないからな」
「むしろ、資源開発に流れてるのが原因で生活必需品の生産すら事欠いてる有様です」
「配給の段階で飢餓も生じてるらしいからな」
「この戦いで終わらせたいものだ」
「それはアメリカ次第です・・・」
港湾で汽笛が鳴り響いた。
「提督。錨揚げ、です」
「出航!」
第01任務部隊
空母ランドルフ、ハンコック、ボクサー、軽空母バターン、
重巡オーガスタ、
軽巡サンディエゴ、サンフアン、リノ、
駆逐艦ウォーラー、ストロング、テイラー、デ・ヘヴン、スティーヴンス、ハルフォード、
駆逐艦リューツ、コニー、コンヴァース、イートン、ラ・ヴァレット、ニコラス、
駆逐艦オバノン、バッチ、ビール、ゲスト、ベネット、フラム、
第02任務部隊
空母レイテ、アンティータム、プリンストン、軽空母サン・ジャシント、
重巡ペンサコラ、
軽巡クリーブランド、アムステルダム、デンバー、サンタフェ、バーミングハム、
駆逐艦スティーヴンソン、ストックトン、アンソニー、ワズワース、ウォーカー、ブラウンソン、
駆逐艦ダリー、イシャーウッド、ヘイゼルウッド、ヒーアマン、ホーエル、ザ・サリヴァンズ、
駆逐艦ステファン・ポッター、ティンゲイ、トワイニング、ヤーナル、コーウェル、カップス、
第03任務部隊
空母シャングリラ、レイク・シャンプレイン、エンタープライズU、
重巡ボルチモア、
軽巡セントルイス、ヘレナ、モービル、ヴィンセンス、ヴィックスバーグ、
駆逐艦ジョンストン、ロウズ、ロングショー、モリソン、プリチェット、ロビンソン、
駆逐艦ロス、ロウ、クラクストン、ダイソン、ハリソン、スプロストン、
駆逐艦ウィックス、ウィリアム・D・ポーター、ヤング、チャレット、コナー、ホール、
第04任務部隊
空母ヴァリー・フォージ、ヨークタウンU、ホーネットU
軽巡スプリングフィールド、パサデナ、ダルース、アストリア、
駆逐艦トゥイッグズ、ハワース、キレン、ハート、アボット、ブレイン、
駆逐艦アーベン、ヘイル、シゴーニー、ステンベル、インガソル、ナップ、
駆逐艦ビアース、ジョン・フッド、ダッシール、バラード、キッド、ベニオン、
第05任務部隊
空母パールハーバー、レキシントンU、サラトガU
重巡フォール・リバー、メイコン、ロサンゼルス、シカゴ、
軽巡トピカ、プロビデンス、リトルロック、アムステルダム、
駆逐艦ブライアント、ブラック、チョウンシー、クラレンス・K・ブロンソン、コットン、ヒコックス、
駆逐艦ハント、ルイス・ハンコック、ホープウェル、ポーターフィールド、ストックハム、ウェダーバーン、
駆逐艦ピッキング、マーツ、キャラハン、カッシン・ヤング、アーウィン、プレストン、
第06艦隊
戦艦モンタナ、オハイオ
戦艦イリノイ、ケンタッキー
重巡セントポール、コロンバス、ヘレナ、ブレマートン、
軽巡ポーツマス、デイトン、ファーゴ、
駆逐艦ベンハム、カッシング、ポーター、コルホーン、グレゴリー、
駆逐艦アレン・M・サムナー、モール、イングラハム、オールト、ウォルドロン、ヘインズワース、
駆逐艦ジョン・W・ウィークス、ハンク、ウォレス・L・リンド、ゲイナード、ヒュー・パーヴィス、バートン、
駆逐艦部隊
駆逐艦ウォーク、メレディス、デ・ヘヴン、マンスフィールド、コレット、マドックス、
駆逐艦ハイマン、マナート・L・エベール、パーディ、アダムス、トルマン、ドレクスラー、
駆逐艦ブルー、ブラッシュ、タウシッグ、サミュエル・N・ムーア、ハリー・E・ハバード、ヘンリー・A・ワイリー、
駆逐艦シェア、J・ウィリアム・ディッター、アルフレッド・A・カニンガム、
ジョン・R・ピアース、フランク・E・エヴァンス、ジョン・A・ボール、ビーティ、
米英仏連合艦隊
リシュリュー(仏)、ヴァンガード(英)
駆逐艦パットナム、ストロング、ロフバーグ、ジョン・W・トマソン、バック、ヘンリー、
駆逐艦ロウリー、リンゼイ、グイン、アーロン・ワード、ヒュー・W・ハドレイ、ウィラード・キース、
駆逐艦ジェームス・C・オーエンス、ゼラース、マッセイ、
ダグラス・H・フォックス、ストームズ、ロバート・K・ハンチントン、ブリストル
駆逐艦パットナム 艦橋
「イギリスとフランス戦艦のお守りか」
「頭数を揃えないと厳しいらしい」
「決闘の立会人でもいいよ。アメリカ海軍の勝ちだ」
「いまのところ、負け越しだけどな」
「それもこの海戦で終わりだ」
45000t級空母パールハーバー 艦橋
飛行甲板にA1スカイレイダーとF8Fベアキャットが並んでいた。
新型機ダグラスXTB2DスカイパイレートとF2Hバンシーが開発されていたものの、
欧州が優先され
さらに数を揃えることと整備性で新型機の配備が後回しにされていた。
「ノルマンディー上陸作戦が終わったと思ったら、今度は太平洋か」
「空母は、アリューシャンで活躍できそうにないですからね」
「日本にいいように戦場を決められやがって」
「一応、地の利があるのでは?」
「地の利があっても侵略の拠点にならんよ」
「ニューブリテンに上陸をすればよかったのに・・・」
「ノルマンディー上陸作戦を優先したのだろう」
「大統領は、風船爆弾より、V4ロケットの方が怖いのだろうな」
「・・・提督。艦隊再編は、戦艦を中心にするそうです」
「航空支援があてにできないとわかると、簡単に見限られるな」
「空母は、艦上機を運用できなければ戦力になりませんからね」
「昼間の航空戦なら日本艦隊を全滅させてやるのに・・・」
戦争で日本の工業力が衰弱しつつあることはわかっていた。
しかし、同時にX艦の技術が日本産業に波及しつつあることも予測され、
大陸資源で再興可能なことも予測されていた。
断続的な攻撃を仕掛ければ日本国力は潰えると誰もが考え、
暗号が解読されていると疑心暗鬼に陥り、
X艦の未知の脅威に侵攻を断念していた。
そう、アリューシャンの決闘は、膠着状態にあるアメリカ海軍にとっても渡りに船だった。
暴風雨が水平線を隠していた。
海面が上下し、幾つものうねりが重なり、白波の壁が近付いてくる。
大波が艦首を呑み込もうと激しくぶつかり、
激しく吹き飛ばされた海水と雹交じりの雨が甲板、砲塔、艦橋に叩きつけ
海水が窓辺を滑り流れ落ちる。
巨大な艦首が何度も波の中に潜り込み、海面を押し分け、
艦首が持ち上がる反動で海水を艦橋まで吹き上げさせる。
世界最大の戦艦が波に煽られ、横滑りする。
大型の波が接近すれば艦首を波に向けなけれならず、
波と衝突しながら突き進む、
室内は結露防止のためか、外と変わらず氷点下だった。
将兵は防寒具を着込んで震え、
熱いお茶を飲み、乾パンを頬張って、頭をはっきりさせる。
艦と艦の間は、木の葉のように波に弄ばれながら徐々に広がり、
関係はいびつになって、相互支援を困難にしていた。
アリューシャン
大和 艦橋
「前が見えねぇ・・・」
「これだけの大艦隊。レーダーがなかったら衝突モノですよ」
「レーダー障害を起こした艦はいるか?」
「いえ、いまのところはありません」
「これだけの雹だ。支障が生じたらKa31の誘導が頼りになる」
「そういえば露鳳の無線機は幸いでした」
「戦隊旗艦同士の無線は敵に傍受されず済みますからね」
「デジタル無線機の複製もまだなのか」
「そのようですね」
「日本の技術は欧米に追いついてると誰か言ってたぞ」
「国威高揚のための方便でしょう」
「御山の大将でいたいがために外国の進んだ知識を制限しようとしたか」
「威信か、見えを張って国の首を絞めたわけか」
「まぁ 庶民もその方が気分がいいですし・・・」
「Ka31より入電。B29と思われる機体が高度4000mで前方12時方向」
「距離300kmを時速380kmで飛行中・・・離れていきます」
「この天候で飛ばしてるのか。流石だな」
「見つかったら敵艦隊を誘導され、爆撃されますね」
「この天候だと急降下爆撃でも難しいだろうな」
「船酔いした者は?」
「本艦の船酔いは二人です」
「大和で二人なら、ほかの艦はもっと酷いか」
「揺れ方にもよりますが小型艦の方が辛いはずです」
「戦闘に支障がなければいいが・・・」
「これだけ上下が大きいと命中率が心配ですね」
「お互い様ならいいがね」
「ですが、この海で沈没すると・・・」
「古来から戦いに勝つため地の利に自軍を導いて戦う場合と」
「自軍を背水の陣に追い込み人の利で戦う場合がある」
「では・・・」
「せっかく、待ち焦がれていた艦隊決戦の場を与えられたのだ。戦場は怯えた方が負けだよ」
「Ka31より入電。アダック島北100km沖でアメリカ主力艦隊を発見しました」
「ずいぶん、奥に引っ込んでるじゃないか」
「レーダー索敵で優位ですし、荒れてますからね」
「10個艦隊に分かれ、展開しています」
「アッツ島の2個艦隊を含めると12個艦隊か」
「空母は?」
「いないようです」
「この荒海ではパールハーバー型空母でも苦しいだろうな」
「ハワイ沖で待機してるのでは?」
「・・・燃料は?」
「5分の1を消費しました」
「やれやれ、馬鹿食いだな」
「海流に乗っている間は、まだいいかと・・・」
「しかし、こういう捨て鉢な作戦は、引き締まるね」
アダック島沖
60000t級モンタナ型戦艦 モンタナ
「酷い揺れだな」
「細長いことが災いしましたね。横波を受けると艦ごと持って行かれます」
「もう少し、流氷域に近づいた方が波が静かだろうか」
「流氷でも大きいのに当たると危険です」
「日本艦隊は?」
「まだ発見されていません」
「日本艦隊はどうするかな」
「艦隊温存主義と果たし状の “板挟み” にあってると思いますね」
「イタバサミ?」
「日系人は、行くことも退くこともできない葛藤をイタバサミというそうです」
アメリカ軍将校は敵国人に対する知識を深め、
日本軍将校は敵国人に対する知識を忌避する傾向があった。
「この位置なら日本艦隊は燃料消費を考え、攻めにくい」
「仮に攻めてきたとしたら帰りは、漂流することになるだろうな」
「そして、攻めてきたら巡洋艦以下の体当たり攻撃ですか」
「この天候で中小艦艇の砲撃は当たりそうにないからな」
「1艦1殺なら勝てるだろう」
「基地が近いなら救助も・・・」
「左舷、10時。三角波。来ます」
「全艦全速、取り舵。艦首を波濤に向けろ」
巨艦であるはずのモンタナがうねりに乗り上げ、
三角波が艦首に衝突しすると衝撃と飛沫で天窓まで真っ白になった。
「提督。第05艦隊。重巡フォール・リバー艦首切断」
「駆逐艦ルイス・ハンコック、ホープウェル、ポーターフィールドが転覆!」
「第05艦隊。破損した艦隊多数・・・9隻です」
「ば、馬鹿な。救助を急がせろ」
「第05艦隊は、いったい何をしてるんだ」
「燃料が少なかったのでは?」
「ちっ 第05艦隊はアダックで給油させろ、修復後は待機」
「ほかに燃料不足の艦隊はないか」
「いえ、給油は第05艦隊が最後でした」
大口径砲特有の砲声が嵐の中で轟いた。
「そんな・・・」
「前衛艦隊は何をしていた」
「日本艦隊は、北方から来ました」
「さらに北に回り込んだのか」
「流氷は、燃料は・・・」
「それほど、日本のレーダーが優れていたということでは・・・」
「全艦隊、戦闘配備! 撃て、撃ち返せ!」
大和 艦橋
暴風雨の中、水平線が見えない海は荒れていた。
しかし、モニターには、レーダー解析された艦影が映し出されていた。
一際大型の4隻は、こちらに向けて回頭中・・・
「Ka31、12機。Ka54、2機。無事全機発艦しました」
「ギリギリだったな」
「はい、大変だったそうです」
「ご苦労と伝えてくれ、これで勝てると・・・」
「はっ」
「・・・手前の大きい2隻がモンタナ型、奥がアイオワ型2隻だな」
「ええ、敵の本隊ですね」
コンピューターで計算された数字が制御盤に伝えられる。
「撃て!」
「ふっ どうせ引っ込むならアンカレッジにでも引っ込んでいればいいものを・・・」
「本隊の護衛艦隊がこちらに進路を向けています」
「護衛艦を前進させて妨害させろ」
「Ka31より入電。敵前衛艦隊8隊が転進。こちらに向かいつつあるようです」
「反応が早いな」
「しかし、敵の動きが手に取るように分かる」
「おかげで、軍艦を建造するより、発電所建設や工場建設ですからね」
「こういう優位性を一度でも手にすると手放したくなくなるからな」
「第一、第二、第三艦隊は、敵本隊を包囲しつつ砲撃」
「接近中の敵前衛艦隊に備えなくてもいいので?」
「この嵐だ。中小艦はまともに砲撃できないだろう」
「敵本隊を潰せば、大したことは出来まい・・・」
「モンタナに命中弾です」
薄暗い暴風雨の彼方から爆音と赤黒い噴煙が立ち昇り、艦橋に歓声が上がる。
中小艦艇の砲撃相対距離は、15000mにまで縮まっていた。
この距離は、ユトランド海戦で英独艦隊が撃ち合った距離だった。
しかし、艦の揺れによる誤差は大き過ぎだ。
離れるほど命中率が異常に落ちたため相対距離は縮まり、
日本海海戦の10000mを切って砲撃が始まる。
互いに波飛沫を盛大にまき散らしながら砲撃し、
砲弾は暴風雨の中を突っ切って、海面に落ち、水柱を吹き上げた。
第一艦隊 利根 艦橋
「敵艦隊の隊列は変です。バラバラのまま突っ込んできます」
「何を・・・そうか、どの道、この荒れようでは管制砲撃も困難ということか」
「距離9000」
「撃て!」
日本艦隊は隊列を維持しながら砲撃し、
アメリカ艦隊は、バラバラになって突進してきた。
砲撃戦は、命中率が悪いものの、
命中すると爆発してもすぐに波に揉まれ、火が消えていく、
と、同時に金属が破裂する音を立てながら駆逐艦が沈んでいく、
そして、30ノットで突進すると、9000mの距離は、10分もかからない。
「か、艦長・・・」
「お、面舵一杯!」
「主砲を右舷に向けろ」
一際大きなうねりの奥からフレッチャー型駆逐艦の艦首が飛び出し、
利根に迫ってくる。
「いったい、どういうつもりだ」
利根の右舷とフレッチャー型駆逐艦の左舷の舷側が擦れ合い金属音が響く、
「撃て!」
利根とフレッチャー型駆逐艦が同時に砲撃し、
艦体を衝撃が襲う。
「命中弾2発。艦橋、被弾しました」
「くっそぉ この距離では駆逐艦の大砲でも脅威だな」
「敵艦は?」
「命中弾1発。傾いていきます」
艦首砲塔直下に命中した砲弾は、甲板ごと剥ぎ取って誘爆し、
すぐに波を被って、傾斜していく、駆逐艦の船体強度は弱く、
嵐の中にあって、損傷は致命的だった。
「艦中央からカプセルが打ち出されました」
「なんだあれは・・・魚雷か」
「い、いえ、救命ボートのようですが」
「別の駆逐艦2隻がこちらに向かってきます」
「いったい・・・」
衝突音と爆発音が轟く、
僚艦の妙高の右舷中央は、軽巡ポーツマスに体当たりされ爆発していた。
軽巡ポーツマスの艦首は明らかに爆発物が仕込まれており、
軽巡からは、大型のカプセルが打ち出されていく、
「まさか・・・」
「妙高。沈みます!」
「旗艦に通報だ」
「敵中小艦艇は艦首に爆発物を搭載」
「魚雷の代わりに大型脱出用カプセルを積載してる模様」
「7時から三角波」
「2時と4時からアレン・M・サムナー型駆逐艦です」
「全速前進。2時の駆逐艦に主砲を撃て、近付けさせるな」
時化の中、敵と味方の艦隊は交錯し、日本艦隊の隊形もバラバラにされてしまう。
アリューシャン海戦、別称アダック沖海戦は、既存の戦隊戦術が御破算にされ、
単艦が自由に動いて戦う、混戦となっていく、
45000t級パールハーバー型空母パールハーバー
荒海の中、艦が波に弄ばれる、
飛行甲板は横風に煽られ、航空機を駐機させることもできなかった。
さらに小型の1140t級エヴァーツ型護衛駆逐艦、1450t級タコマ型フリゲートは、生きた心地もしないだろう。
艦橋
「低気圧が南に下がってるのか」
「提督。護衛艦隊は、これ以上は無理だと・・・」
そして、護衛駆逐艦の爆雷投射が始まる。
「提督。潜水艦です」
「200km南下する」
「了解」
「希望的観測だが、この風だ。ワイバーン、グリフォンといえども飛べまい・・・」
そう、Ka31、Ka54は重量があり、
風に翼が煽られない分だけ艦上機より発艦しやすい、
そして、必ずしも北側の方が風が強いとは限らなかった。
艦上機を発艦させられない空母など、標的に過ぎず。
艦隊戦に近づくことなどナンセンスでしかなかった。
それなら南に後退し、発艦出来うる海域にいる方がましなのだ。
アダック島沖
11800t級クリーブランド型軽巡ファーゴは、ピッチング、ローリング、ヨーイングと波に翻弄されていた。
波の中に突っ込んだ艦首が海水を吹き上げながら海面から現れる、
自然と戦いながら、敵艦とも戦わなければならず、
そういった戦いは、北大西洋の戦いにも似ている、
いや、数倍、過酷であると将兵は言うだろう。
砲弾が周囲に落ちて水柱を上げる。
外に出て目を凝らそうとしても海水で目が洗われ、真っ赤に充血してしまう。
それなら窓際で目を凝らしていた方がましと言える。
艦橋
「くっそぉ 前がほとんど見えん」
「砲撃の方向に向かっていくしかないのでは」
「それでは、後方に回り込むどころか、遠回りになる」
「レーダーはどうした?」
「どうやら大和、武蔵のレーダーの方が優秀らしく。本艦はまだ・・・」
「どうせ、X艦とヘリ観測のおかげだろう」
後方から爆音が轟く、
「どうした。旗艦がやられたのか?」
「いえ、波に煽られた味方の駆逐艦同士が衝突。艦首の衝角爆弾が炸裂したようです」
「隊列をもっと散開させろ」
「レーダーに反応。前方11時、距離9000」
「全速!」
「艦長。サウスダコタ型マサチューセッツ(初瀬)です」
「ぶつけろ!」
周辺の波間に日本巡洋艦、駆逐艦のマストが見え隠れしていた。
周囲に203mm砲弾、152mm砲弾、12.7cm砲弾の水柱が立ち昇り、
それまで、上空を飛び越えていた日本戦艦の砲弾もファーゴに集まる。
荒れ狂う海の中、簡単に命中しないものの、
揺れの小さい戦艦の砲撃は、至近弾となって艦を損傷させた。
「右舷2時、三角波来ます」
「面舵! 耐えろ」
「もう少しだ。突っ込め!」
艦が三角波に乗り上げるとエレベータに乗ってるような錯覚を覚える。
もっとも、艦がローリング(横揺れ)するわ、ヨーイング(左右揺れ)するわ、ピッチング(上下揺れ)するわ
時間の流れが緩やかになり、
降下とともに巨大なマサチューセッツ(初瀬)が迫ってくる。
艦首2砲塔6門が同時に炎を吹き上げ、ファーゴに衝撃が走った。
「ぶつかるぞ!」
伝声管に向かって叫ぶ、
「衝撃に備えつつ、艦首側の乗員は艦尾側に移動!」
「機関部員は、上甲板へ上がれ!!」
そして、軽巡ファーゴは火達磨になりながらマサチューセッツ(初瀬)の船腹に激突する。
衝撃から立ち直ると正面のマサチューセッツ(初瀬)は炎上し、
ファーゴは、沈みつつあった。
「総員退艦!!!」
大和 艦橋
「Ka31より入電。アダック島の爆撃に成功したそうです」
「艦隊の被害報告は?」
「第一艦隊、妙高、夕霧、天霧、暁、響が沈没」
「第二艦隊、筑摩、早波、朝霜が沈没」
「第三艦隊、古鷹、朝潮、大潮、満潮が沈没」
「本艦隊、初瀬(マサチューセッツ)、敷島(サウスダコタ)大破。神通、那珂、初春、子日が沈没」
「第五艦隊は、阿賀野が沈没」
「提督・・・」
「やられたな・・・隊列がバラバラにされた」
「周囲を囲まれつつありますし、相互支援なしでは数で圧倒されてしまいます」
「んん・・・・囲むというより、ぶつからないように広がってるだけ」
「そして、どこにいるのか分からないという印象だな」
「敵本隊は?」
「モンタナ命中弾12発、オハイオ命中弾8発、イリノイ命中弾7発、ケンタッキー命中弾5発」
「あとリシュリュー(仏)命中弾4発、ヴァンガード(英)命中弾3発です」
命中弾の大半がKa31とKa54が投下した800kg爆弾だった。
「悪くないが・・・」
「Ka31より入電。アメリカ前衛艦隊距離30000m。接近してきます」
「やれやれ、前衛艦隊も衝角爆弾付きだろうな」
「艦尾砲がないので後方から突っ込まれると痛いですね」
「魚雷の何倍くらいだろうか」
「3倍でも4倍でも・・・」
「衝角爆弾の爆発後の脱出を考えるなら、それくらいが限度だろう」
「ほかの艦艇は?」
「砲撃と回避運動で、何とか避けてる状態です」
「Ka31より入電。アトカ島の湾が静かだそうです」
日本艦隊は、洋上補給もままならないアリューシャンで給油も考えず戦闘し、
戦闘後は、波静かな湾で給油を受ける計画だった。
片道覚悟の作戦は、アメリカ艦隊の油断を誘ったものの、
アメリカ海軍の1艦1殺の反撃も大きく、
挫けそうな空気も流れる
「・・・なにか、音楽を流してくれないか」
“負けないで” の曲が艦内に流れる。
露鳳のCDラジカセに日本の曲が幾つかあってレコードに落とされ、
日本軍艦隊の間に広がっていた。
もちろん、軍機として扱われ、門外不出になっていた。
「8時、アレン・M・サムナー型駆逐艦2隻、10時、クリーブランド型軽巡1隻」
「左舷、高角砲は何をしてる、撃て!」
「敵艦を近付けさせるな」
「主砲を軽巡に回せ」
時化の中での砲撃、
プラットフォームで有利な戦艦は命中率が良かった。
とはいえ、比較的にではある。
当たる時は当たり、当たらないときは当たらない。
クリーブランド型軽巡ヴィンセンスが大和の左舷中央に向かってきたとき、
横合いから長良が飛び出し、艦首を軽巡ヴィンセンスの横腹に突き立てた。
日本艦隊は、アメリカ艦隊と違って脱出艇を増設しておらず、
救命ボートと救命具を増やしただけだった。
沈没すると凍死する可能性が高く、
それでも長良は大和を救うため、敵艦に向けて突進したのだった。
軽巡ヴィンセンスの慣性ベクトルは狂わされ、大和の左舷擦りながら抜け、
波濤と浸水に耐えられず沈んでいく、
脱出カプセルが射出され、
救命ボートにもアメリカ軍将兵が乗っているのが見えた。
「長良は?」
「艦首を破損してます。沈没は免れていますが・・・」
「・・・全艦。アトカ島の湾に向かう」
「長門より入電 “護衛艦隊とともに、しんがりを務める” です」
「「「「・・・・」」」」
アトカ島アメリカ軍飛行場は艦砲射撃によって燃えていた。
暴風雨は雪に変わって吹雪き、視界はほとんど得られず、
レーダーだけが艦隊の全容を教えていた。
日本艦隊艦艇は、レーダーの手探りの中、
第四艦隊の給油艦に接舷させ、給油せていた。
第四艦隊
露鳳
大淀、
駆逐艦 秋月、照月、霜月、冬月、涼月、初月、新月、若月、
駆逐艦 白露、時雨、村雨、夕立、春雨、
工作艦 明石
給油艦 知床、佐多、鶴見、尻矢、石廊、
給油艦 隠戸、早鞆、鳴戸、風早、速吸、針尾、稲取
露鳳 艦橋
「提督。Ka31より入電です」
「アメリカ艦隊はアダック島に集結してるそうです」
「給油を急がせろ、天候が回復すれば原子爆弾を落とされるぞ」
「我々は勝ったのでしょうか・・・」
Ka31が集計した数字がモニターに映し出され、
地図から日本艦艇の駒とアメリカ艦艇の駒が抜き取られていた。
「確認はしてないがレーダーではモンタナ、オハイオ、イリノイ、ケンタッキーを撃沈している」
「リシュリュー(仏)とヴァンガード(英)は不明だが・・・」
「損失艦はアメリカ艦隊の方が多いから、無事に帰還できたら、勝ちかもしれないが・・・」
「まさか、あのような手で来るとはな」
「1艦1殺なんて、まるで日本軍ですよ」
「先にアメリカ戦艦を叩いてなかったら、プラットフォームの優位を発揮出ず」
「日本艦隊の損失の方が多かったかもしれないな」
「大和も武蔵も守り切れなかったのでは?」
「それはあるかもしれない」
アダック島
吹雪きが航空基地と重油タンクの煤煙と炎を舞い上がらせる。
ワイバーン(ka31)は暴風雨にもかかわらず、航空基地と重油タンクの爆撃を成功させ、
艦隊の稼働率を押し下げていた。
リシュリュー(仏)とヴァンガード(英)が崩れるように湾内に沈み込んでいた。
ほかの艦艇も損傷艦が多く、補修を受け、順番に給油していた。
重巡ボルチモア 艦橋
「くっそぉ〜 日本海軍め〜」
「本土からタンカーと工作艦を呼び寄せろ」
「駆逐艦ジョン・A・ボール、ビーティの2隻が流氷との衝突で沈没したとの報告です」
「信管をもっと鈍くさせろ」
「提督。このままでは、負けということに・・・」
「日本艦隊旗艦を沈めれば条件は同じだろう」
「好都合なことに日本艦隊は東側のアトカ島」
「アメリカ艦隊は西側のアダック島だ」
「アトカ島基地は生きてるし。日本艦隊が動けば全艦隊を上げて突撃する」
「これから荒れていきますからね」
「流氷も増えてますし、果たして、艦隊戦が可能かどうか・・・」
「提督!」
「“アトカ島 日本海軍艦隊旗艦大和発 我、アメリカ艦隊主力を撃破せり”」
「日本艦隊が勝利宣言を発信しました」
「なっ・・・」
時化と暴風雨が日本艦隊の味方だった。
給油を受けた日本艦隊は、アトカ島をバラバラに出航し、
各艦は、流氷を押し分けながら日本への帰路に就いた。
アトカ島のアメリカ軍守備隊は日本艦隊の減少に気付き、通報。
しかし、アダック島の航空基地は復旧中、
復旧したとしても悪天候で飛べる状況ではなく、
アリューシャン沖に迫ったアメリカ機動部隊も悪天候で日本艦隊を索敵できず。
仮に索敵に成功しても天候が不安定過ぎて、全機発艦など困難だった。
アトカ島
燃料を給油できなかった五十鈴、川内、若葉、ばしょう(デイル)が湾内で自沈し、
最後まで残っていた軽巡、酒匂が濃霧の中、出航する。
酒匂 艦橋
「レーダーがなければ、とても出航したくないな」
「越冬するだけの余裕はありません」
「まぁ そうだがね」
呉
日本海軍 艦隊総数
空母13隻。軽空母4隻。戦艦6隻、重巡5隻、軽巡3隻、駆逐艦40隻。
第一機動部隊
加賀、瑞鶴、翔鶴 (零戦114機、彗星74機、天山40機)
利根、妙高、那智、
吹雪、白雪、初雪、深雪、叢雲、綾波、敷波、朝霧、夕霧、天霧、暁、響、
第二機動部隊
赤城、飛龍、蒼龍 (零戦74機、彗星54機、天山63機)
筑摩、高雄、愛宕、
長波、玉波、涼波、藤波、早波、朝霜、早霜、秋霜、清霜
第三機動部隊
飛鷹、隼鷹、龍鳳、(零戦42機、99艦爆36機、97艦攻42機)
最上、三隈、古鷹、
朝潮、大潮、満潮、荒潮、朝雲。早潮、夏潮、初風、雪風、天津風、
第四機動部隊
露鳳 (Ka54 5機、Ka31 10機 零戦40機、彗星30機)
大鳳 (零戦30、彗星30機)
祥鳳、瑞鳳、龍嬢、(零戦72機)
大淀、
秋月、照月、霜月、冬月、涼月、初月、新月、若月、
白露、時雨、村雨、夕立、春雨、
第五機動部隊
雲龍、天城、葛城 (零戦84、彗星54、天山24機)
富士(ワシントン)、八島(ノースカロライナー) (Ka31 6機 瑞雲30機)
阿賀野、酒匂、
巻波、高波。谷風、野分、嵐、萩風、舞風、秋雲
戦艦部隊
大和、武蔵 (Ka31 6機 瑞雲50機)
敷島(サウスダコタ)、朝日(インディアナ) (Ka31 6機 瑞雲30機)
初瀬(マサチューセッツ)、三笠(アラバマ) (Ka31 6機 瑞雲30機)
長門、陸奥、
9650t級軽巡 浅間(ホノルル)、
1850t級駆逐艦 ききょう(ウィンスロー)、
1500t級駆逐艦 しおん(ドレイトン)、あじさい(ラムソン)、
1360t級駆逐艦 ばしょう(デイル)、
長良、五十鈴、阿武隈
川内、神通、那珂
初春、子日、若葉、
千歳、千代田 (水上偵察機 瑞雲54機)
露鳳 艦橋
「酷い有様だな」
「アメリカは?」
「停戦に応じるらしい」
「後は、判定か」
「勝ちですよね」
「だよな」
「日本政府はなんと?」
「講和優先だそうだ」
「引き分けでも占領地の維持でいいのでしょうが・・・」
オアフ島 真珠湾
第01任務部隊
空母ランドルフ、ハンコック、ボクサー、軽空母バターン、
重巡オーガスタ、
軽巡サンディエゴ、サンフアン、リノ、
駆逐艦ウォーラー、ストロング、テイラー、デ・ヘヴン、スティーヴンス、ハルフォード、
駆逐艦リューツ、コニー、コンヴァース、イートン、ラ・ヴァレット、ニコラス、
駆逐艦オバノン、バッチ、ビール、ゲスト、ベネット、フラム、
第02任務部隊
空母レイテ、アンティータム、プリンストン、軽空母サン・ジャシント、
重巡ペンサコラ、
軽巡クリーブランド、アムステルダム、デンバー、サンタフェ、バーミングハム、
駆逐艦スティーヴンソン、ストックトン、アンソニー、ワズワース、ウォーカー、ブラウンソン、
駆逐艦ダリー、イシャーウッド、ヘイゼルウッド、ヒーアマン、ホーエル、ザ・サリヴァンズ、
駆逐艦ステファン・ポッター、ティンゲイ、トワイニング、ヤーナル、コーウェル、カップス、
第03任務部隊
空母シャングリラ、レイク・シャンプレイン、エンタープライズU、
重巡ボルチモア、
軽巡セントルイス、ヘレナ、モービル、ヴィンセンス、ヴィックスバーグ、
駆逐艦ジョンストン、ロウズ、ロングショー、モリソン、プリチェット、ロビンソン、
駆逐艦ロス、ロウ、クラクストン、ダイソン、ハリソン、スプロストン、
駆逐艦ウィックス、ウィリアム・D・ポーター、ヤング、チャレット、コナー、ホール、
第04任務部隊
空母ヴァリー・フォージ、ヨークタウンU、ホーネットU
軽巡スプリングフィールド、パサデナ、ダルース、アストリア、
駆逐艦トゥイッグズ、ハワース、キレン、ハート、アボット、ブレイン、
駆逐艦アーベン、ヘイル、シゴーニー、ステンベル、インガソル、ナップ、
駆逐艦ビアース、ジョン・フッド、ダッシール、バラード、キッド、ベニオン、
第05任務部隊
空母パールハーバー、レキシントンU、サラトガU
重巡フォール・リバー、メイコン、ロサンゼルス、シカゴ、
軽巡トピカ、プロビデンス、リトルロック、アムステルダム、
駆逐艦ブライアント、ブラック、チョウンシー、クラレンス・K・ブロンソン、コットン、ヒコックス、
駆逐艦ハント、ルイス・ハンコック、ホープウェル、ポーターフィールド、ストックハム、ウェダーバーン、
駆逐艦ピッキング、マーツ、キャラハン、カッシン・ヤング、アーウィン、プレストン、
第06艦隊
戦艦モンタナ、オハイオ
戦艦イリノイ、ケンタッキー
重巡セントポール、コロンバス、ヘレナ、ブレマートン、
軽巡ポーツマス、デイトン、ファーゴ、
駆逐艦ベンハム、カッシング、ポーター、コルホーン、グレゴリー、
駆逐艦アレン・M・サムナー、モール、イングラハム、オールト、ウォルドロン、ヘインズワース、
駆逐艦ジョン・W・ウィークス、ハンク、ウォレス・L・リンド、ゲイナード、ヒュー・パーヴィス、バートン、
駆逐艦部隊
駆逐艦ウォーク、メレディス、デ・ヘヴン、マンスフィールド、コレット、マドックス、
駆逐艦ハイマン、マナート・L・エベール、パーディ、アダムス、トルマン、ドレクスラー、
駆逐艦ブルー、ブラッシュ、タウシッグ、サミュエル・N・ムーア、ハリー・E・ハバード、ヘンリー・A・ワイリー、
駆逐艦シェア、J・ウィリアム・ディッター、アルフレッド・A・カニンガム、
ジョン・R・ピアース、フランク・E・エヴァンス、ジョン・A・ボール、ビーティ、
米英仏連合艦隊
リシュリュー(仏)、ヴァンガード(英)
駆逐艦パットナム、ストロング、ロフバーグ、ジョン・W・トマソン、バック、ヘンリー、
駆逐艦ロウリー、リンゼイ、グイン、アーロン・ワード、ヒュー・W・ハドレイ、ウィラード・キース、
駆逐艦ジェームス・C・オーエンス、ゼラース、マッセイ、
ダグラス・H・フォックス、ストームズ、ロバート・K・ハンチントン、ブリストル
白レンガの住人たちと各国代表団たち
「酷いもんだ」
「戦艦4隻撃沈では、アメリカは敗北を認めざるをえませんね」
「アメリカ海軍も日本戦艦4隻を撃沈している。損失比は互角だ」
「日本海軍の損失戦艦は、戦前の戦艦2隻と拿捕戦艦2隻じゃないですか」
「アメリカ海軍は、最新鋭の戦艦4隻です。損失比が同じとは思えませんが」
「アメリカはモンタナ型戦艦3隻を建造中だ。日本はゼロ」
「国力比ならアメリカの勝ちだ」
「しかし、アメリカは、今回の海戦で勝敗を決めると・・・」
「「「「・・・・」」」」
アメリカ合衆国
白い家
「アメリカは、戦艦4隻、重巡6隻、軽巡12隻、駆逐艦56隻が撃沈」
「日本は、戦艦4隻、重巡4隻、軽巡7隻、駆逐艦19隻が撃沈しています」
「ジャパンバーグ海戦の損失よりは少なかったな」
「時化で至近距離まで接近しないと命中弾を与えられない海域だろう」
「もっと戦えたのではないか。これでは負けだ」
「駆逐艦が戦艦に接近するのは、嵐の中でも危険なのです」
「アメリカ海軍将兵は、誇りえる英雄です」
「「「「・・・・」」」」
「どうするね」
「速やかに停戦して、対独戦に集中すべきだ」
「それはドイツと日本のどちらが脅威か。ということだろう」
「力不足ながら未知の兵器技術を有する日本か」
「既存で最高水準の兵器技術を作るドイツか」
「現実問題として、日本は遠過ぎるが、ドイツは足場があるからな」
「「「「・・・・・」」」」
48年10月15日 日米は停戦を確認する。
48年11月15日 ハワイ
日米講和条約が調印され、
星条旗が降ろされ、変わりに日章旗が挙げられる、
戦艦大和とモンタナ型戦艦メインが並んで停泊していた。
大和 艦橋
将校たちが戦艦メインを見ていた。
「60000t級モンタナ型戦艦か・・・よくもまぁ ポンポン戦艦を建造できるもんだ」
「出来立てほやほやで、試験航海のまま、講和調印に間に合わせたらしい」
「無理して戦艦を持ってこなくても、アメリカは十分脅威だよ」
「それはそうと、アメリカホイホイは、解体するって?」
「もう要らないからね」
「露鳳が現れなかったら、とてもじゃないけど勝てなかっただろうな」
「「「「・・・・」」」」
ハワイの日本領化が決まると、アメリカ人の本国移動も始まる。
もちろん、日本国憲法が施行されたとしても、
国権と財産・居住権は別物で、居留してるアメリカ人も少なくない。
結局、国は税金を払ってくれるのなら自国民でなくてもいいという理屈も成り立っていた。
ハワイ日本政庁
「取り敢えず、日本国憲法を施行し」
「残留アメリカ人の外国人登録と、居留・財産権と、保護を確認する必要があるな」
「まぁ 日系人も多いし、白人は住み心地が悪くなれば本国に戻るだろう」
「日系人の多くはアメリカ軍に入隊してるんじゃないのか」
「状況的にしょうがないだろう」
「戦争が終わったのにゴネてたってしょうがないよ」
「アメリカとの交易は?」
「残留アメリカ人が仲介に立つらしい、元々 そのつもりで残ったようだが」
「それより、日本のドイツ潜水艦は?」
「結局、買い取ったらしいよ」
「ドイツ軍将兵は、戦争が終わるまで、避暑地に居住するらしい」
「後は、欧州戦がどうなるかと。中国との講和かな」
「インドも気になるところだね」
「インドか・・・朝鮮人は上手くやっていけるんだろうか・・・」
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月夜裏 野々香です
「だよな。組織は自己増殖するし、予算あるだけ使うからな」
部活、クラブの経験があると身に覚えがあると思います。
国も企業も同じです。
適当な項目作って予算を使っちゃいます (笑
給油艦の重油積載量は8000tほど、12隻だと96000t。
各艦の燃料は、大和型戦艦6400t、秋月型駆逐艦1080t、
戦争が終わってしまいました。
どうしませう、どうしませう
第08話 1948 『インド儒陀皇帝ニダ〜♪』 |
第09話 1949 『平和と光の使徒ルシファーズ』 |