月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 “暁の子、明けの明星(ルシファー)よ。どうしてあなたは天から落ちたのか”

 “国々を打ち破った者よ。どうしてあなたは地に切り倒されたのか”

 

 第09話 1949 『平和と光の使徒ルシファーズ』

 加害者の恐怖は、被害者の報復であり、

 報復の根源を消滅させるまで恐怖は継続する、

 

 南北イタリア国境ヴィテルボ線

 ローマから60km北西、

 ドイツ・北イタリア軍によってヴィテルボ戦線が作られていた。

 米英軍は、便宜上、北緯42度戦線と呼称し、断続的な攻勢を加えていた。

 山間からドイツ軍のヘリが現れると、

 M47戦車の上部装甲にロケット弾を命中させて破壊すると逃げていく、

 アメリカ軍

 「・・・ちっ またやられた」

 「戦闘機は?」

 「間に合いませんよ」

 「ドイツ軍はヘリの戦力化に成功したようだな」

 「ヘリが日本の技術供与というのは、本当なんでしょうかね」

 「442連隊の日系将兵に聞いたが日本はヘリの技術に力を入れたなんて知らなかったぞ」

 「どうも攻めあぐねてますね」

 「ノルマンディーに戦力を取られたからかな」

 「というより、ドイツが原子爆弾を開発した噂が広がってますからね」

 「無理攻めして頭の上に落とされたくないですよ」

 「ノルマンディ戦線からも似たような報告を受けてる」

 「じゃ ドイツが原子爆弾を・・・」

 「いや、将兵が同じ理由で怯えてるとな」

 「「「・・・」」」

 北はイタリアはムッソリーニ率いるドイツ型全体社会主義型国家へと移行し、

 南はサヴォイア王家ウンベルト2世の立憲君主制、自由資本主義体制に移行しつつあった。

 民族分断の悲劇というものの、北イタリア人と南イタリア人は確執があり、

 イタリア半島再統一派勢力は結束できず、済し崩し的に分断国家となっていく、

 

 

 東部戦線

 吹雪きが収まると爆音が轟く、

 T34戦車が氷雪原を埋め尽くし、雪煙を吹き上げながらドイツ陣地に迫っていく、

 爆撃と砲撃が戦場を包み込み、

 爆焔と共に戦車が吹き飛ばされ、将兵の命が失われ、

 戦死者を取り残し、血塗れの負傷兵を呻かせる、

 先頭車両を撃破すれば、後続の戦車は先行車両戦車を避けなければならず、

 少なからず混乱し進撃速度にムラができた。

 そして、ドイツ軍は、そういったムラを利用し反撃する。

 ドイツ軍陣地

 「・・・あの、ゆで卵を半分に切って被せた砲塔は新型だな」

 「エンジンは暖まってるか?」

 「はっ 32両が待機中。4両は調整中です」

 冬のエンジン始動は簡単ではない、

 ドイツ戦車は前面から上・側面にかけて土嚢に埋まっていた。

 そして、車両後部も簡単に外せる保温用の覆いに囲まれている。

 「敵戦車群は、新型戦車を含む」

 「戦車隊は、こちらが支持するまで遮蔽土嚢からでないように通達」

 「はっ」

 「パンツァーシュレック隊は?」

 「配置につきました・・・」

 数百発の砲弾が降り注ぎ、戦車を守る土嚢壁を破壊し、

 塹壕に潜むドイツ軍将兵を次々と露わにさせ、吹き飛ばしていた。

 新型T54戦車の56口径100mm砲がパンター戦車を破壊し、

 突撃を繰り返すソビエト軍戦車によってドイツ軍陣地は突き崩されていく、

 ドイツ軍とソビエト軍の戦車と歩兵が入り乱れ、混戦となっていく、

 この時、戦果を上げたのは砲と機銃を塹壕に入れ、

 戦艦ビスマルクと同等の350mm装甲砲塔を被せた小型要塞だった。

 小型要塞はソビエト軍の爆撃と砲兵に晒されながらも、

 ドイツ軍が予備兵力を捻出し反撃するまで耐え、最後の砲弾まで撃ち尽くすことができた。

 ソビエト軍は、ドイツ軍を押し潰し、小型要塞を包囲孤立させるよりなく、

 歪な空白地帯は、反撃するドイツ軍に付け入る隙を与えた。

 ドイツ軍は予備戦力を集めて、数倍するソビエト軍の弱点を挟撃し、

 戦線を膠着状態にしていく、

 

 

 

 米英連合戦略爆撃部隊のドイツ本土爆撃は、

 損失の大きな大都市爆撃から損失の小さい地方都市爆撃へと移行していた。

 ブルターニュ・ノルマディー半島戦線

 高空でF80シューティングスターとMe262戦闘機が空中戦を展開し、

 低空ではスピットファイアMk.47、F8Fベアーキャット、P51HムスタングがTa152と空中戦を演じていた。

 ジェットエンジンの品質と耐久性向上の努力は絶え間なく続けられ、

 ジェット機の増加するに連れ、

 レプシロ戦闘機は制空戦闘機としての役割は果たせなくなり、

 A1スカイレイダーを護衛しつつ爆撃もこなす戦闘爆撃機へ格下げされていく、

 ドイツの機体はいずれも黒白赤の国旗を模したものか、黒鷲の国章が描かれていた。

 両陣営は爆撃と砲撃に晒され、粉塵が舞い硝煙と血の匂いが漂っていた。

 焦点となる丘や町は、M26パーシングとキングタイガーV戦車が撃ち合い、

 対戦車ロケット弾が飛び交う戦場が展開していた。

 地上戦と戦術爆撃が増えるにつれ、

 ドイツ空軍にも隙が生まれる。

 その隙を突くように米英戦略爆撃部隊は内陸を爆撃する、

 数百機単位の飽和陽動作戦は犠牲が大きかったものの、

 ウィルヘルムスハーフェン海軍基地は閃光に包まれ、

 巨大なキノコ雲が立ち昇る

 

 

 北アメリカ大陸 アメリカ合衆国

 某航空基地

 ピースメーカーと呼称される爆撃機コンベアB36の調整が進んでいた。

 巨大な空の要塞B29爆撃機が二回りほど小さく見える。

 それほど巨大な爆撃機だった。

 関係者たち

 「前線は生存性の高いA1スカイレイダーか。新型B47ストラトジェットを生産したがってたぜ」

 「それが駄目なら戦術爆撃型のB17爆撃機」

 「戦略爆撃は損失が激しいか」

 「新型B47ストラトジェットの生産ラインはともかく、教育はなぁ」

 「パイロットを全部教官にしてネズミ算で計算したとしてもだ」

 「教官まで500時間を掛けないとな」

 「ジェット機になるとプラス100時間は欲しい」

 「人的損失の大きな無茶な作戦はしないでくれ」

 「前線の言い分だとな」

 「犠牲を払っても強行しないといけない作戦があるそうだ」

 「後方の言い分だとな」

 「政治的に言うとイギリスが根を上げつつあるから」

 「イギリスに頼らずに済む爆撃機の開発は必要だよ、らしい」

 「さすがに数を作れそうにないがな」

 「制空権は持ち直せないのか」

 「数のアメリカ。質のドイツってね。前回の大規模爆撃の損失から立ち直れてない」

 「対日戦と言い、対独戦と言い、人的被害が多過ぎる」

 「海軍は特にそうだな。たった半日で万単位の熟練艦隊乗員をサメのえさにしてしまうのだから」

 「戦略爆撃は損失が増えてるから戦術爆撃に切り替えつつあるみたいだけどな」

 「ソビエトが剝れてるらしい」

 「ちっ 剝れてるのはこっちだ。日本の味方をしやがって」

 「アリューシャン(アダック沖)海戦で旗艦を撃沈されてるからな」

 「観戦武官を死なされて怒ったんだよ」

 「殺したのは日本の攻撃だろう」

 「日本側の観戦武官が生きてたらしいから・・・」

 「もう過ぎたことはいいよ。それより、生産比率だろう」

 「そうなんだけどねぇ・・・!?・・」

 眩いばかりの光が工場内に差し込んだ。

 熱は届かないほど遠かったものの、

 その閃光が何を意味し、立ち昇る巨大なキノコ雲が何か。

 気付かないアメリカ人はいなかった。

 それは、ドイツ帝国の新型大陸間V5ロケット弾であり、

 一発は、デトロイト西方28kmのウェストランドに落ち、

 もう一発は、ワシントン北西54km。ボルチモア西方10kmのウッドラーンに落ちた。

 巨大な閃光と火の玉は、爆心地から1kmを破壊し、

 3km圏の人々にやけどを負わせ、

 爆風は10km四方にも及んだ。

 大陸弾道ロケット弾は、デトロイトを狙ったものが逸れてウェストランドに落ち、

 ワシントン、あるいは、ボルチモアを狙ったものが逸れてウッドラーンに落ちたと誰もが気付いた。

 それは戦略的に重要でない田舎でも落ちるということであり、

 アメリカ人をして恐慌状態に陥らせた。

 

 ワシントン 白い家

 沈痛な表情の男たちがテーブルを囲んでいた。

 もはや戦略云々ではなく、政争だった。

 和平を唱えた政党が勝利する。

 民主主義は、国民の生命財産が人質にされた時、萎縮する。

 そして、戦略目標から外れた場所に落ちるようなロケット弾から

 逃げる術は権力者も持ち合わせていなかった。

 「早急に講和を結ぶべきだ」

 「国力比では有利だったのだがな」

 「アメリカ将兵も浮足立ってるし、イギリスもガタガタらしい」

 「どこに仲介を頼む」

 「スウェーデン?」

 「バチカン」

 「原子爆弾持ってる国同士の戦争の仲介なんて怖くてするかな」

 「日本は?」

 「碌な国が残ってないな」

 「日本は核兵器を持ってるかもしれないし。アメリカにもドイツにも気後れしてないだろう」

 「確か、フォードが自動車部品を日本に発注しただろう」

 「そのパイプで味方してくれるのでは?」

 「なんで、日本なんかに自動車部品の発注なんかするんだよ」

 「X艦の情報を集めるには取引量を増やさないと」

 「ダグラスもDC3輸送機の部品を日本に発注しただろう」

 「いやだねぇ 資本主義って節操がないよね」

 「戦争が終わってるのにいつまでもいがみ合っていられないだろう」

 「それで情報は? X艦は、どこから来たって?」

 「まだわかるか!」

 「少なくとも、X艦が来た場所とは切られてるらしいけど」

 「人為的に繋げられるのではないのか」

 「そんなの調査してみない限り分からないだろう」

 「あれは? アメリカホイホイ」

 「あれは改造空母も6隻ほど連結させたものらしい、解体してるよ」

 「やっぱりまんまと罠に引っ掛かってんじゃないか」

 「取り敢えず、あの海域に何かがあると仮定しとこう、でないと戦死した将兵が哀れ過ぎる」

 「だよなぁ」

 「X艦出現の時の爆発も原子爆弾だったのかな」

 「さぁね。潜水艦を派遣して調査してるけど。まだわからんよ」

 「ところで、中国は?」

 「日本が満州国の承認と資源開発した利権地の保障だけでいいと妥協し」

 「国民党の蒋介石は満州国を承認。日本軍は引き揚げたらしい」

 「ずいぶんと引き際がいいな」

 「半島への移民も進んでるし」

 「南部国境を封鎖して漢民族の流入を止めて治安を安定させているし」

 「満州の資源開発が進んでいるらしくてな」

 「大陸全土がなくても何とかやっていけるらしい」

 「ちっ 戦争が終わって高みの見物か」

 「それより、講和だよ」

 「そうそう。原子爆弾は2発ずつだ」

 「ここで停戦し、講和までもっていかないとアメリカ人の結束が壊れる」

 「我々のアイデンティティは人権の保障と個人主義にあるのだから」

 「仕方がない・・・」

 

 

 日本 首相官邸

 原子爆弾が落とされ、

 焼け野原となった広島の写真が注目されていた。

 「やれやれ、巷じゃ 勝った勝ったで大騒ぎか」

 「連合艦隊がアメリカ太平洋艦隊と決闘して勝ったのなら嬉しいでしょう」

 「けっ 露鳳がなければ負けていた事も知らんで・・・」

 「いい加減、もっと軍を縮小しないと、この写真のような繁栄はない」

 「下手をすれば自滅だというのに」

 「軍縮は、軍属を中心に反発してますよ」

 「国が強くなったら自分も強くなったと錯覚してる畜生連中か」

 「日本人ももう少し、文化的になって欲しいモノだ」

 「国民の大半は非軍属で収入とあまり関係ないですし」

 「家族を戦争で殺されて、うま味がないので離反してますがね」

 扉が開けられ、

 「総理。アメリカの大使が会見を申し込んでいます」

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・

 「アメリカが日本に講和会議の仲介?」

 「な、なんで日本なんだ」

 「場所はハワイだそうで・・・」

 「ハワイか・・・」

 「原子爆弾の被害は、アメリカが2発。ドイツも2発です。丁度いいと思ったのでは?」

 「そういう問題なのか」

 「ソビエトは、講和で便乗できて幸運かもしれませんね」

 「これ以上、戦争を継続しても国力を衰退させるだけだからな」

 「とはいえ、核兵器の光と炎が戦争終結の動機になるとはな」

 「原爆は、才運で回避できない痛みと恐怖ですからね」

 「人類の馬鹿さ加減が滲み出てて、いいですな」

 「日本とアメリカは古式に則った決闘で終わらせたじゃないか」

 「少しは、人類歴史に希望が持てるのではないか」

 「だといいのですが・・・・」

 「取り敢えず、ドイツに講和斡旋の話しを通してくれないか」

 「はい」

 「成功すれば、戦雲は低くなって、もっと軍縮も進むだろう」

 「いつまでも軍属の我田引水に国策を左右されるわけにいかない」

 

 

 大東亜共栄圏

 駐留日本軍が存在し、租界を中心に日本権益が作られていた。

 航路を進む船舶は増え、空路をDC3輸送機が繋いだ。

 鉄道の施設は利権となって陸路を押し広げていく。

 フィリピン共和国はホセ・ラウレル大統領の下、独立していた。

 部族社会で国家意識に目覚める前であり、

 強国の都合で独立したのであり、

 自ら戦って独立を勝ち取っておらず、

 その国家機構は不安定で、まだ脆弱なものだった。

 マニラ

 日本人が闊歩していた。

 街の至る所にタガログ語、英語、日本語が併記されていた。

 公共工事は、雇用と安定収入を得られる打ち出の小槌だった。

 水力発電と火力発電が建設され、鉄道が敷かれていく、

 大東亜共栄圏の基幹産業の中核に日系社会があり、

 日本国内において、官僚は公僕であると意識付けがなされていたものの、

 外地は官僚ではなく、

 権益貴族といった歪なステータスが作られていく、

 日本民族が日本人の官僚を信任する部分が多く、

 対し、フィリピン人は日本権益に対し敵意を見せた反動でもある。

 そして、基幹産業に従属する副産物の産業が形成され、

 その一部はフィリピン民族資本だった。

 日本人たち

 「ルソン島からヴィサヤス諸島を越えてミンダナオ島まで鉄道を敷くのか?」

 「大きな権益になるぞ」

 「電力代、輸送代、運賃だろう。左内輪左内輪の錬金術」

 「人口少ないし、所得も小さいのに、収益になるかなぁ」

 「そんときは、税金でテコ入れしてカンフル剤代わりに」

 「それって、国家事業だから、税金使って当たり前みたいな」

 「軍隊だってやってんだから、俺たちだってやりたい」

 「フィリピン人の労働意欲って高かったかな」

 「そんときは、日本人が働けばいいだろう」

 「アメリカ人は、日本式の植民地経営に嫌悪感タラタラみたいだけど」

 「アメリカは、心臓が資本主義で、頭が民主主義だからね」

 「国家形成時から資本主義があったからしょうがない」

 「日本は、武家世襲の破壊ために民主主義に移行したし」

 「近代化のために資本主義に移行したようなものだからね」

 「そして、自然発生じゃなく、上からの改革で既得権の意向だし」

 「地が民主主義と資本主義の国民だからね」

 「親方日の丸式で統制するやり方に嫌悪感を持つのはしょうがないよ」

 

 日本領コレヒドール島(9ku)要塞

 旧アメリカ軍の要塞は、日本軍によって頑強に作りかえられ、

 フィリピン日本権益を守る牙城となっていた。

 Ka31(海燕・ワイバーン)モドキが滑走路に着陸する。

 日本のヘリの戦果は、旧支配者の白人・アメリカ人を打倒したと、

 フィリピン人の間に伝説となって伝わっていた。

 そのため、偽物であっても飛ばすだけでも効果があった。

 「ようやくお客さんのお帰りか」

 「しかし、戦後は、文民上がりが強くなりやがる」

 「まぁ 当分、戦争しないと思われてもしょうがないよ」

 「国民も軍事費にお金を取られることに嫌気がさせてるし」

 「しかし・・・フィリピンは島が大きいし、人口も多い」

 「属国化は本気なんだろうか?」

 「フィリピンは独立国。日本人の自由にはできないとしてもだ」

 「国家権力機構は定まっていかないし」

 「言語は170以上、識字率は低い、部族以上の集団も少ない」

 「フィリピンが近代化するには、日本との二人三脚が必要だよ」

 「権益に上手く食い込めたら台湾みたいにできるかもしれないだろう」

 「そうは言ってもなぁ フィリピンは独立国だし」

 「台湾の沖縄化だって進んでないだろう」

 「まぁ それはあるけどね」

 「文民は戦争未満ギリギリで折衝するからな」

 「まったくぅ だいたい、国が大きくなっても国民が豊かになるとは限らないし」

 「国民の税負担も考えずに国家機関を大きくしようとしたところで破綻するよ」

 「手遅れだろう」

 「そういや、財政破綻してたっけ」

 「いくら軍事費を減らしてもな」

 「公共投資だって採算率が高くて副産業が伸びないと赤字だろう」

 「アメリカとの取引が一番、金になるらしいよ」

 「ふっ よくもまぁ 元の鞘におさめられたものだ」

 「というか、例のモノがどういうものか、興味津々らしい」

 「艦上機付きでパールハーバー型空母3隻と交換したいと言ってきたらしい」

 「涎が出そうな話だが、さすがにまずいだろう」

 「日本の底・・・といより上限が知れるということだからね」

 「日本の基礎工業力が露鳳の科学技術の上限に届いてないのが問題だな」

 「何十年もかかるらしいよ。特に電子関連」

 

 

 

 ハワイ米英ソ・独伊講和条約

 国際条約は当事国間だけで調印されたものより、

 第三国を含めて調印さした国際条約に重みがある。

 それがブルターニュ・ノルマディー半島戦線、

 あるいは東部戦線を挟んで講和調印が行われなかった理由といえた。

 現中立国の日本は旧日独伊同盟国であり、連合国に分が悪かったものの、

 ハワイは日本行政ながらアメリカ人居住者が大半を占めており、

 講和条約調印の場として適当と考えられていた。

 

 真珠湾

   日本海軍 大和型戦艦武蔵、

 

   アメリカ海軍 モンタナ型戦艦メイン、

   イギリス海軍 インプラカブル型空母インディファティガブル、

   ソビエト海軍  ガングート型戦艦セバストーポリ

   南イタリア海軍 軽巡エマヌエル・フィリベルト・デュカ・ダオスタ

 

   ドイツ海軍 アドミラル・ヒッパー型重巡プリンツ・オイゲン、

   北イタリア海軍 軽巡ライモンド・モンテクッコリ

 7隻の軍艦が並んでいた。

 ホスト国の日本は、あれこれと忙しく、

 米英ソ・独伊は、それぞれ策謀を巡らしていた。

 モンタナ型戦艦メイン 艦橋

 「ハワイで講和を結ぶ必要があったんですかね」

 「政治の都合だろう。国の犠牲になるのが軍人の使命ってやつだ」

 「ソビエト海軍に恥をかかせて、モンタナ型戦艦を買わせるつもりなのでは?」

 「ふっ それはあるかもしれんな・・・」

 ハワイの白人住民が手を振っていた。

 アメリカ軍将兵と住人の交流は自由であり、歓迎パーティも行われる。

 「ハワイ住人達は?」

 「日本憲法下で戸惑ってるよ。資本家は目敏く動いてるようだが」

 「二重国籍の人間も増えてるようだな」

 「日系人もせっかく、自由と平等な世界に飛び出したのに日本の国境の内側ですからね」

 「442連隊はどうすると?」

 「日本に帰国したり、アメリカに残ったりですね」

 「まぁ 戦後もいがみ合う必要はないか」

 

 

 ドイツ海軍

 アドミラル・ヒッパー型重巡プリンツ・オイゲン 艦橋

 「日本は本当にアメリカからハワイを掠め取ったんだな」

 「アメリカ海軍の戦艦は壊滅。空母と補助艦艇も半分近く撃沈されてる」

 「日本軍の地の利のないアリューシャンの戦いでさえ、アメリカ海軍は大損害だからな」

 「日本侵攻作戦なんて怖くてできるもんじゃないよ」

 「日本との講和は未知の恐怖だよ。X艦のせいだろう」

 「X艦の情報は?」

 「戦争が終わったとたん、日本は情報提供を渋り始めたらしい」

 「日本製よりいいKa31、Ka54のモドキを量産したから驚いたのだろう」

 「どうせ、オリジナルより劣るよ」

 「まぁ 濃霧の夜に飛ばして爆弾を命中させるような芸当は無理だな」

 

 

 戦後、各国は軍事費を維持できず軍用機生産が縮小していく、

 とはいえ、国防と直結する航空産業基盤を衰退させるわけにもいかず、

 航空技術も向上させなければならなかった。

 政府は退役したパイロットと整備士を民間航空機に吸収させ、生産を民間機に移行させていく、

 しかし、航空機産業は膨大な投資を必要とし、

 産業基盤の拡充は中長期的に年月を要した。

 航空機需要が大きく、高額所得者数が多ければ財政負担は小さく、

 航空機需要が小さく、高額所得者数が少なければ財政負担は大きくなった。

 大日本帝国も紆余曲折を経ながら軍需から民需へ転換していた。

 首相官邸

 「やっと世界平和か」

 「軍需で儲かりかけたのに少し残念ですよ」

 「民需に転換するいい機会だ」

 「東シナ海のガス油田の掘削を急がせないと」

 「後は、国内の戦争キチガイを黙らせないと」

 「公職から駆逐するしかないね」

 「あと新聞と出版関係ですか」

 「まったく、国威高揚をしてる連中が産業の足を引っ張ってるから、困ったものだ」

 「あと、蒋介石が蜀華合衆国の承認を求めています」

 「蒋介石が中華統一を諦めてくれるのは、かなり嬉しいね」

 「陳公博の中華民国も信用できないし、蜀華合衆国を認めよう」

 「あ、そうそう、インドから電報が・・・」

 

 

 インド大陸

 多種多様な種族で構成されるインド大陸に新参の種族が現れた。

 新参種族は、幾つかの沿岸域に分かれて根付いていくかに見えた。

 しかし、新参種族の王族に連なる将校が儒陀皇帝を名乗ると、

 ムンバイ港を中心に新参種族が集まり、地場を押し広げ、

 儒陀藩王国と呼ばれるようになっていく、

 この時期、インド大陸を支配していたイギリス軍は日本軍攻勢で後退し、

 インド人は、くびきを解かれて混沌としていた。

 そして、日本軍と一緒に上陸してきた新参の種族の台頭を許してしまう。

 その時の殺戮戦で流された血の量は、計り知れない、

 彼らは元々 朝鮮民族と呼ばれていた。

 しかし、儒陀皇帝が即位すると、自らを儒陀民族と名乗り、

 儒教と仏教を統べる天啓の民族として喧伝する。

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「クーラーが欲しいニダ」

 「電気を通さないと」

 「電気を通すニダ」

 「日本人がやってたニダ」

 「日本に電気を発注するニダ」

 「暑いニダ。握り鮨が食べたいニダ」

 「で、では誰かに・・」

 「朝鮮人の握った寿司が食えるかニダ」

 「で、では・・・」

 「日本人を呼んで寿司作らせるニダ」

 「はい・・・」

 「なんでインドは水道電気がないニダ」

 「インドは、イギリスの植民地でしたので」

 「イギリスは宗主国のくせに怠慢ニダ」

 「宗主国は、植民地の面倒を見ないと駄目ニダ」

 「イギリスは植民地経営の義務を果たしていないニダ」

 「これなら朝鮮半島の小さな町の方が住みやすいニダ」

 「はぁ・・・」

 「全部、日本人が悪いニダ」

 「日本人に橋と道と鉄道と社会基盤を作らせるニダ」

 「しかし、それには予算を用意しないと」

 「儒陀国民から吸い上げるニダ」

 「しかし、儒陀国民はまだ、貧しく・・・」

 「何とかするニダ!!!」

 儒陀皇帝領で、両班制度が復活しつつあった。

 

 

 植民地支配は、軍事力と世襲により支配国の富を増大させ、国力を押し上げさせた。

 しかし、支配という名の根拠のない優越感は、国民を尊大に増長させ

 人間力を喪失させ、貧富の格差を広げさせる、

 植民地防衛は、利権を受けられない下層国民の負担を増やし、

 本国の防衛を歪めさせた。

 オランダ、ベルギーは国を失い、

 フランスは国土の大半を喪失し、残った国土も主権を失って属国化していた。

 辛うじて、ブルターニュ・ノルマンディ半島だけが国民主権を得られたものの、

 米英両国の対独戦略の橋頭堡という位置づけでしかなかった。

 イギリスは、本国を守り切れたものの大英帝国の根幹であるインドを喪失し、

 国家財産と利権の大半を喪失させてしまう。

 第二次世界大戦は、植民地支配の功罪を明確にさせる、

 イギリスは、経験に裏打ちされたやり直しを求められたものの、

 生活水準を落とすことは困難であり、貧富の格差はさらに広がり、

 国民の尊大さを消し去ることも困難でカナダ、豪州への移民が増えていた。

 そして、イギリス本国は、小さな島国でしかなく、

 独立を維持するには、アメリカ軍の駐留を認めるしかなかった。

 ロンドン

 売店で終戦と同時に新しい世界地図が売られる。

 真っ当な商売は国家権力と軍事力を背景としたものではなく、

 採算性と誠実さが求められる、

 各国の言語に書き換えられた地図は、イギリス国内だけでなく、国外にも売られていた。

 とはいえ、サービス精神の全くないイギリス人に販路を広げるのは無理があった。

 イギリス人たち

 「元植民地に逆に支配されてしまうとはイギリスも落ちたものだ」

 「ポーランドを守るために大英帝国を解体させた馬鹿がいるからだろう」

 「チェンバレンか・・・パワーゲームの代償だろう」

 「ポーランド軍がショボ過ぎ。フランス軍がヘタレ過ぎ」

 「日本のせいだろう。あの国がなんか東洋の魔法でインチキしたに決まってる」

 「ヘリで夜襲して、アメリカやイギリスの戦艦や空母を撃沈したってやつか・・・」

 一人が売店で新聞を買う。

 「ふっ SF小説でも考え付かないし。オカルトでもあり得んね」

 「あり得んと言っても、従兄弟はアリューシャンで戦死してる」

 「ほう・・・日本の新型戦艦は68000tで45口径460mm3連装2基だそうだ」

 「な、何だとう! ・・・って、タブロイド紙だろう」

 「真珠湾で写した写真を見る限り、本当だと思うがな・・・」

 「じゃ こいつの砲弾が落ちてきて、それをヘリの爆撃と勘違いしたのか」

 「そうかなぁ 俺たちもドイツに散々爆撃されたけど」

 「砲撃と爆撃の違いくらい分かると思うがな」

 「艦尾は飛行甲板か・・・本当にヘリが乗ってるな」

 「ドイツヘリのパクリモノだろう」

 「しかし、ヘリを夜中に飛ばして爆撃したなんて聞いたことないぞ」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 ドイツ占領地、ヴィシー・フランス、ブレスト・フランス(83761ku)

 フランスは三分割されていた。

 ヴィシー・フランスはドイツの属国であり、

 ブレスト・フランスのはアメリカとイギリスの保護国として独立していた。

 自由フランス国 首都ブレスト

 シャルル・ド・ゴールを首班とした建国が進んでいた。

 米英軍が駐留し、

 アメリカのM47戦車とイギリスのセンチュリオン戦車が配備されていく、

 大統領執務室

 「エッフェル塔より高い塔を建てよ」

 「シャンゼリゼ通りを作れ」

 「ルーヴル美術館を建設しろ」

 「しかし・・・」

 「ブレストをパリより大きなパリにするのだ」

 「しかし、予算が・・・」

 自由フランスの国家財政は破綻していた。

 さらにブレスト・フランス(83761ku)は、開戦前より559666kuも小さく、

 そこから上がる財収も小さかった。

 「それより国防は?」

 「当分、戦争なんか起きるか」

 

 

 ドイツ帝国

 ルイ・フェルディナント皇帝を中心に貢献者・功労者が集まり、

 貴族制を回復させつつあった。

 これは皇帝と貴族の存在がナチス再興を防ぐ上で大きいと考えられたからといえた。

 もっとも民衆側の反発も少なくないことから、

 ドイツ帝国より緩やかな民主制で中庸的な国風へと変貌していく、

 ベルリンは瓦礫が片付けられ、

 ベルリン宮殿を中心にした都市が計画され、

 200m幅の公園区画と1000m幅の都市区画を同心円状に5重に広げていた。

 東部国境線は、独ソ権益線に戻ったものの、

 独ソとも戦意を喪失させ、

 防衛線を強化していくだけで、冷戦となっていく、

 日本人たち

 「ずいぶん思い切った都市計画だな・・・」

 「真ん中に落とせって感じだな」

 「ふっ ベルリンは飾り」

 「本城はポーツマスのツェツィーリエンホーフ宮殿だろう」

 「そういえば、本土が無事だったのって、日本だけか」

 「そ、そういえばそうだな。奇跡」

 「むしろ、新規まき直しで困るんじゃないか」

 「半島と満州と南洋を使って何とかするだろう」

 

 

 南北イタリア国境ヴィテルボ線(42度線)

 国境線の鉄条網と鉄条網の幅は、5mほどで高さは2mほどだった。

 国境線を焼けたピッザとワイン瓶と金が飛び交っていた。

 店員は飛んでくるピッザとワイン瓶を器用に受け取り、

 北イタリアのピッザが皿に載せられ、ワインと一緒に南イタリアの客の前に出され、

 南イタリアのピッザが皿に載せられ、ワインと一緒に北イタリアの客の前に出された。

 国境線をまたぐカフェテラスは、なぜか、人気があり

 最初、駐留ドイツ軍将兵と駐留アメリカ・イギリス軍将兵は諜報を警戒していたものの呆れたのか、

 見て見ぬ振りを決め込むと、イタリア人と観光客が集まって延々と延びていた。

 フォルツァ(Forza)などの声援が聞こえ、

 店員が右手のパーラでピッザを受け取り、同時に左手でワインを受け取るスタンドプレーを見せると拍手喝采、

 日本人たちのテーブルに皿とワインを並べる。

 「「「「グラツィエ(Grazie)」」」」

 「・・・何とも妙な光景だな」

 「民族分断は悲劇だと思ったがね」

 「悲劇だろう」

 「悲劇を喜劇に変える力がイタリア人にあるんじゃないか」

 「なにはともあれ、簡単に情報が行き来できるのは悪くないね」

 ピッザの生地から紙を抜き取った。

 「北と南は電話線が通じてるのに意味ないだろう」

 「試したくなるだろう」

 「分断されたポーランドは悲劇のようだけど」

 「権力世襲と実力能力主義は互いに格差を認めて妥協できても」

 「権力世襲と格差を破壊する共産主義は相いれない」

 「当然、実力能力主義と格差を破壊する共産主義も相いれないからね」

 「格差を広げ過ぎるのも問題だがな」

 「まぁ 適当な分水嶺で収まるなら安定するだろうけど」

 「上も下も右も左も欲をかき過ぎると社会的な軋轢が増して結束が破綻するからね」

 「取り敢えず、戦争が起こる可能性が低ければそれに越したことはないよ」

 「一番、危なそうなバルカン半島は?」

 「ドイツが力付くで押さえこんでる」

 「チトーのパルチザンも掃討されつつあるようだ」

 「ドイツがバルカン半島を支配すると国力が大きくなるが、その辺はどうかな」

 「たくさん死んだからね。最低でも15年以上は国力を付けなければならないと思うよ」

 「だといいけど」

 

 

 

 蜀華合衆国

 アメリカ船籍の船が揚子江を遡上し、重慶に停泊する。

 揚子江は国際河川となり、

 アメリカは引き続き、蒋介石に味方した。

 無論、日米の取引が正常な間であり、

 蜀華合衆国は、アメリカ合衆国の人質といえる存在だった。

 そして、工作機械、電子機器、航空機、戦車などの交易品目が制限されていた。

 逆に言うと火砲以下の武器弾薬は輸出できた。

 この抜け穴は一種のガス抜きであり、

 蜀華の脅威が中華民国を日本の影響圏に囲い込ませる謀略でもあった。

 日米とも中国を統一させないという共通認識が作られていく、

 蜀華政府軍が武装蜂起した農民を掃討していた。

 この光景は、蜀華合衆国だけでなく、中華民国でも見られ、

 共産党支配下であるはずの江西省瑞金でさえ、粛正が行われている。

 アメリカ人たち

 「暑い・・・」

 「成都まで行けば涼しくなるらしいよ」

 「蒋介石はアメリカの代理人になれるだろうか」

 「国民政府は不正腐敗が酷いからな」

 「陳公博(ちんこうはく)の中華民国は?」

 「日本人が入り込んで不正腐敗を正してるらしい」

 「国民政府よりましらしいがそれでも酷いらしいがね」

 「毛沢東の共産党は?」

 「農村を中心に反政府機運が浸透してる」

 「共産主義は大人気か」

 「ふっ 共産党は民衆の不満と憎しみを煽っているだけだ」

 「学校も行ってない農民は共産主義がどういうものか知らないよ」

 

 

 中華民国

 上海

 「地図は確認した?」

 「ああ、あとは資源のある土地を購入して採掘するだけだ」

 「希少金属があれば日本の状況もよくなるだろう」

 「中華民国の取り分を思うと泣きたくなるがね」

 「中華民国の近代化は露鳳の情報で決まってる」

 「その上、資本主義と国際貿易の参入も20年以上早い」

 「匪賊が頑張れば近代化を押さえてくれるだろう」

 「というより、近代化が新しい匪賊を生むというべきか・・・」

 中華民国軍が土地を収用するために農村を襲撃し、農民を虐殺していく、

 そして、収用された土地が日本資本に売られ、

 土地が採掘され、開発されていく、

 

 

 

 弥生(ニューブリテン)島、飛鳥(ニューアイルランド)島、端花(ブーゲンビル)島

 戦後、日本帝国は、ビスマルク諸島を領有してしまう。

 白人が植民地を有しても劣等民族の黄色人種は植民地を持つことなど許されない、

 そういった白人至上主義的な価値観は日本軍の勇戦によって崩され、

 東南アジア・インドの植民地解放により、

 帝国主義的な力による支配も終焉を迎えていく、

 同時に欧米ソ日は、人口、資源、生産力といった国力を背景にした国家総力戦と

 一般庶民まで巻き込んだ戦争は、損失の大きさに戦意を喪失させていく、

 人々は、厭戦平和(Pax War-weariness)時代と呼び始めた。

 南洋軍管区

 「諸君。世界大戦が終結したと言っても、戦争がなくなったわけではない」

 「闘争と不公平、不平等な関係を解消し是正するため」

 「革命、内戦、戦争という手段が講じられる」

 「我々は常に危機に対する心構えをしておかなければならない」

 「つまり、火急な情勢の変化を推測し、備えなければならない」

 「無論、開戦、不戦は、政治的な決断の下に行われる」

 「一前線指揮官の判断によって、開戦が起こるようなことがあってはならない」

 「では、火急な情勢の変化を仮定してみよう」

 「現在、北東ニューギニアはアメリカ軍の統治下にある」

 「もし、この地域で、共産革命が起こったとする」

 「「「「・・・・」」」」

 「桜田准尉。どういう対応が考えられるかね」

 「国内で呼応しようとする勢力の確認でしょうか」

 「軍事的な対処は?」

 「難民処理・・・ですか」

 「もっと、警戒態勢に入るとかあるだろう」

 「はぁ」

 「では、大村准尉」

 「端花(ブーゲンビル)島のトレジャリー諸島に所属不明の一個連隊2500人がフル装備でに上陸した」

 「どうするね?」

 「警戒態勢を敷き、情報を収集し、全軍に出撃準備を整えさせます」

 「よろしい」

 上官が地図を広げ、駒を並べる。

 「では、ニューカレドニア攻略の命令が下った」

 「戦力比は空母3対1、巡洋艦3対1、駆逐艦4対1、航空戦力200対200」

 「尚、輸送船10隻で陸上兵力は、10000対2000だ」

 「どうするね。井沢准尉」

 「はい、彼女と温泉に行って食べて飲んで寝ます」

 「馬鹿もの!」

 「我々は国防を預かる軍人である」

 「命令は絶対であり、従うよりない」

 「しかし、士官であれば上官に対し、具申はできる」

 「特にこちらが攻勢に出る場合、作戦中止も選択肢に含む」

 「そして、戦略的な観点から攻勢を犯す必要性が低いにもかかわらず攻勢の命令が出た場合」

 「具申は、必要なことである」

 「とはいえ、不謹慎な解答はしないように・・・」

 一番成績が優秀な男に視線が集まっていく、

 「まぁ 敵前逃亡で死刑なら不名誉で済むが」

 「愛国心で暴走して国家反逆罪で死刑になるのは哀れ過ぎるからな」

 「「「「・・・・」」」」

 「諸君らも近視眼に正義感ぶって死刑にならないようにしてくれ」

 「教官の俺まで狭心者連中の巻き添えだからな」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 第二次世界大戦が終結し、国際平和です。

 日本は大東亜共栄圏を作ったようですがどうなるのでしょう。

 あと、インドも火種を一つ余計に国内に抱え込んで、どうなっていくのでしょう。

 

 

 

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

第08話 1948 『インド儒陀皇帝ニダ〜♪』

第09話 1949 『平和と光の使徒ルシファーズ』
第10話 1950 『聖域から腐るよ』