月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第11話 1951 『大陸シンジケート戦争』

 一旦作られた戦後国際情勢は惰性で続く、

 内政的な不正腐敗と軋轢を断行を出来なければ国内紛争や内戦に至る。

 平時の軋轢を含めた清算を戦争で付けることは不思議ではなく、

 内政の不正腐敗を誤魔化すため、組織の保身と地位の安泰のため、

 戦争に打って出ることも珍しくない、

 露鳳の出現は日本の運命を変え、歴史を未知の別世界へと捻じ曲げてしまう。

 日本は敗北を回避し、議会制民主主義を回復したものの、

 政党政治の離合集散も、官僚の聖域保持も、財界の我田引水も、

 戦前に戻っただけといえる。

 無論、国際情勢と国力比が変化し、財政が安定し、

 不況を脱し、雇用が安定し余裕ができたなら世情も落ち着く、

 

 日本の某工場

 露鳳は、東西の航空機のスペックが納められたデーターベースがあった。

 それらはレーダーで探知した機体を判別するためにも使われており、

 大まかな外国製の機体の設計図も存在する。

 最も詳しい設計図は自国製の海軍機だったものの、空軍機も詳細だった。

 「開発機体で流用できそうな双発機はAn32。4発機はAn70輸送機か、Tu95爆撃機かな」

 「いいと思うがエンジンが無いぞ。現物はクリモフTV3-117は2400馬力だけだからな」

 「それだって、不完全な複製だけどな」

 「クリモフTV3-117なら、双発のAn140旅客機か」

 「ジェット機は?」

 「現物はないがジェット機のマニュアルもある」

   Yak38フォージャー    R27V300推力6100kg + RD36-35FVR推力3050kg

   Su33ジュラーヴリク    サチュルン/リューリカAL31K推力12500kg

   MiG29Kラーストチュカ  クリーモフRD33ターボファンエンジン推力8300kg

 「機体の模倣は、だいたいの構造がわかったとしてもな」

 「エンジンは精密な設計図があっても難しい」

 「まして、いい加減なマニュアルじゃ・・・」

 「なにもないところから開発するよりましだよ」

 「ジェットエンジンの機体ならAn148。イリューシン96あたりか」

 「日本製かアメリカ製の機体を作りたい」

 「参考にはなるけど形と長さとスペックだけじゃ 年月がかり過ぎる」

 「戦闘機の機体はMiG29Kか。予算が増えたらSu33かな」

 「推力は徐々に上げていけばいいし」

 「ステルスならMiG35、Su35なんだけどねぇ」

 「参考にするとしてもデーターが少な過ぎて辛い」

 「なんか、歪な開発になりそうだな」

 

 クリーモフRD33ターボファン(推力11000kg)エンジンモドキが焔を吹いていた。

 炎の形が綺麗で絞り込めるほどエンジンの性能が期待できた。

 とはいえ、細部の設計が不明で材質も品質も劣るため直ぐにお釈迦となってしまう。

 「品質も新素材やチタンじゃないと」

 「設計を原型に近付けさせればいいさ、推力が11000kgである必要はないんだから」

 「じゃ 基本の推力を落とすの?」

 「設計が定まって品質を確保できるまではね」

 「リューリカ=サトゥールンAL31エンジンは?」

 「そっちはまだ無理かな」

 「まぁ 原型の設計を知るため試作するとしても重量が大きすぎる」

 「それにエンジン径を考えるとクリーモフRD33の方が優先か」

 「当面の推力は、どのくらい?」

 「ファンの形が良ければ熱をうまく流せるから寿命は延びるけどね」

 「3000kgから4000kgくらいかな」

 「低い」

 「チタン工場作れ」

 「無茶言うな」

 「・・・そろそろ、時間か。エンジンを止めて爛れてる部品を記録して調整しよう」

 エンジンが止まると熱が冷めるまで待機することになる。

 「完成は、いつになるやら」

 「少なくとも手探りで開発するより、10倍早いよ」

 「機体の方は?」

 「ステルス系の設計にするとしても、予算が無いからな」

 「また、予算かよ」

 「50年分の技術の結晶があるからね」

 「思想と設計の優位性を利用しつつ勢力均衡に持ち込んで、余力を国力に転換させたいらしいよ」

 「しかし、レーダーに反応しにくいとわかったら真似されるのでは」

 「レーダーに反応させればいいさ。その方が航空管制しやすいし」

 

 

 日本の某工場 その2

 日本軍兵士が “大日本帝国勝利” の垂れ幕を落とし、

 ビール瓶を片付けさせていた。

 将校が現場監督と工員相手に訓戒を述べていた。

 「戦勝祝いは禁止だと公文が出てたはずだ」

 「そんなぁ 日清・日露のときは率先してやってたじゃないか」

 「そんなバカな記憶は全部忘れてしまえ」

 「で、でも一生懸命にやってきたし」

 「ビールは各自持ち帰りだ。戦勝は祝ってならん」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「あ、田中! こいつ、今日誕生日なんです」

 「本当か?」

 「え、え、ええ、は、はい」

 「・・・それならば、誕生日だけ祝ってよし」

 「戦勝は、絶対にまかりならん」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 

 社長室

  AN94アバカン(5.45mm×39) 装弾数 30発(箱型弾倉)

  重量3850g 銃身長405mm/全長943mm

  発射速度 連射時は2発目まで1800発/分、3発目以降600発/分、

  銃口初速900m/s

 「作れん」

 「現物はある。そこをなんとかならんかな」

 「設計図は?」

 「設計図は無いって言ってるだろうが」

 「設計図があっても作れんのだから、無かったらもっと作れんだろう」

 「だいたい小口径弾は諦めただろう」

 「それは1900年以前の話だろう。いまは1950年だ」

 「6mm×45くらいなら量産できるっていうじゃないか」

 「弾の大きさ変えたら銃本体の設計も変わってしまうだろうが。そんくらいわかれ」

 「AK74は?」

  AK74(5.45mm×39) 装弾数 30発/45発(箱型弾倉)

  重量3300g 銃身長415mm/全長943mm

  発射速度 600~650発/分

  銃口初速900m/s

 「それなら、なんとかなりそうだが小口径弾の量産がな・・・」

 「6mm×45で」

 「・・・・」

 「Sv98」

  AK74(7.62mm×54R) 装弾数 10発

  重量6200g 銃身長650mm/全長1270mm

  射程950m

 「どっから持ってきたんだ。こんなもの・・・」

 「・・・・」

 「設計図は?」

 「ない」

 「出来んことはないが、ソビエトと同じ弾薬になるぞ」

 「6mm×45に変えてくれ」

 「・・・・」 ため息

 「MP443グラッチ・・・」

  MP443グラッチ(9mm×19) 装弾17発

  重量950g 銃身長113mm/全長198mm

  銃口初速370mm/s

 「まぁ 微妙にいけそうだな」

 「そうか・・・」

 「出所はどこだ?」

 「秘密」

 「「「「・・・・」」」」 憮然

 

 

 

 露鳳のフェイズドアレイ型多目的探知レーダー(マルス・パッサート)は同時追尾可能目標数80個だった。

 性能的に怪しいものの、この時代の航空機に対して不足なく、

 日本陸海軍は、マルス・パッサートシステムを模倣したレーダサイトを構築していく、

 もっとも真空管の全盛で、トランジスターは日本もアメリカも試作段階に過ぎず、

 膨大な数の真空管を並べることになった。

 性能は10分の1以下の簡易型レーダーサイトは、オリジナルに比べ貧弱なモノに過ぎず、

 用兵を剝れさせ、技術者を悩ませる。

 真空管の一つが消えて反応しなくなり、交換が始まる。

 「駄目か・・・」

 「金持ってこい、もっとましなモノ作ってやる」

 「アイス食うか」

 モナカアイスが出される

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 

 赤レンガの住人たち

 露鳳型の設計図が押し広げられていた。

 ほかの艦艇は詳細が危ういものの、

 露鳳は精密で、ミリ単位の不具合ならどうにかなるのが軍艦だった。

 「参考にはなるが、あまり感心しないね」

 「むしろ、詳細な設計図が無くてもアメリカ空母がいい」

 「まぁ 建造するなら全通型空母と全通型揚陸艦だからね」

 「とはいえ、予算ないよ」

 「設計を検討するくらいなら支障ないだろう」

 「しかし、将来的には、ミサイル時代とステルス時代を迎えるはず」

 「その後はレーザー兵器だろうな」

 「思いっきりレーダーに反応する形式にして、戦時に剥がすというのは?」

 「まぁ そういうのも面白いけどね」

 「大慶油田で燃料の目処がついたと思ったら軍縮か・・・・やり切れんな」

 「日本はデトロイト並みの工場群を建設しない限り戦争不可だと思うね」

 「日本人は勝って増長気味だし。何十年って先になりそうだ」

 「アメリカは戦争で負けた反動で労働意欲が上がってると聞いてるぞ」

 「対して日本人は慢心してる」

 「X艦のおかげで勝てたというのに。相変わらずの馬鹿だな日本人は」

 「俺たちは露鳳のおかげで、戦後日本の情報を知ってるからね」

 「秘密にされてる庶民は日本の実力と勘違いしてるのさ」

 「将兵と新聞は抑えてるんだろうな」

 「まぁ 戦勝祝いを禁止させて、馬鹿将校は予備役に回したし」

 「新聞には勝って兜の緒を締めよ。とは書かせてるがね」

 「国威高揚のやり過ぎだな。このままだと屑民族になるぞ」

 「戦後の立ち直りを考えるなら東京辺りに原子爆弾を落してくれた方が良かったかもね」

 「そういや、日本は戦火に晒されてなかったっけ、先が思いやられるな」

 「そういうこと」

 「日本沖海戦とアリューシャン海戦の損害と死傷者が無かったと思うと怖いよ」

 「ふっ 嬉しさのあまり、馬鹿曝け出して、そのまま後ろにひっくり返っていただろうな」

 「「「「・・・・・」」」」 ぞぉ〜

 

 

 

 アメリカホイホイは解体処分され、

 なにもない海上にアメリカ深海調査船が浮かんでいた。

 海底に網を降ろして漁る作業は続けられている。

 深海調査船 船橋

 甲板にはいろんなものが載せられていた。

 「日本海軍が散々漁った後に漁っても何も出ないと思ったが、どうしてどうして・・・」

 「どうやら半径数km分の土砂が海底に崩れ落ちて堆積して押し広げられた状態のようだ」

 「上層部は地上の建築物の残骸が残されてる」

 「これだけの量が沈めば普通、浮力を維持できず、一緒に沈むはず」

 「X艦はなぜ浮かんでいられたんだろう」

 「X艦が中心で何かに守られていたか」

 「海面まであった土砂がX艦に反発して、ゆっくり崩れてX艦だけが残されたか・・・」

 「拾い上げたモノは、ボロボロになって形を保てなくなってるようだ」

 「んん・・・時空を移動したときの衝撃かな」

 「この辺は、黒潮だから北の方に軽いモノが流されてないか」

 「X艦をなんとしても調べたいな」

 「あいつら、隠匿するだろう」

 「まぁ そうだろうけど・・・」

 「艦長。ドイツの船です」

 水平線上に船影が現れていた。

 「どうやら、考えてることは同じらしいな」

 

 

 

 

 

 再開された国際貿易の利益と、

 大陸の資源と市場から収益は日本を富まし、

 南洋の島々にも経済波及効果が及び資材の集積が始まる、

 南太平洋

 弥生(ニューブリテン)島、飛鳥(ニューアイルランド)島、端花(ブーゲンビル)島

 日本軍将兵は戦後から道路、鉄道、水利と田畑と土地区画を作り、

 家屋を建てていく、

 柵のない土地で利権抗争の関与しない区画整理は理想的であり、

 日本人たちは軍票の代わり払い下げられた家と土地を見に来くると

 どこか欧州的な曲線と直線の道路と

 整然と配置された区画配置に驚いてしまう。

 単純に鉄が国を作るという観点からすると、南洋諸島の鉄材はハワイにも劣る。

 しかし、人の住む土台が機能しているなら産業はスムーズに起こし易かった。

 「お父さん、暑い」

 「スコールが来るよ」

 「スコール?」

 父親が黒雲を指差した。

 「雨だ。浴びてもすぐ乾くだろう」

 「わーい!」

 子供が走っていく、

 「ねぇ 本当に来てよかったの?」

 「家は、いくらでも増築できるし、土地も広い」

 「ゆったりできそうじゃないか」

 「それに大陸の毒気に充てられるのは嫌だからね」

 「その大陸の毒気が日本まで来るの?」

 「大陸戦線で嫌というほど彼らを見てきたからね」

 「たとえ、大陸貿易のおかげで道路が広がり、公民館が大きくなり」

 「仕事があって商品が安くてもだ」

 「彼らとは御近付きになりたくないよ」

 「・・・・」

 大陸戦線を経験した日本軍将兵は、なぜか南洋移民を好んだ。

 

 

 

 大東亜共栄圏インドネシア

 日本はインドネシアの独立をなかなか認めようとはせず権益圏を押し広げていた。

 現地民の反発は次第に大きくなり、

 日本政府と実情を憂慮する現場の確執は大きくなっていく、

 関係者

 「もう、インドネシアを独立させるべきだと思うがな」

 「独立させると言ってもな。まともな民主選挙すらできないし、スカルノ独裁だろう」

 「未来の情報を知ってるなら独立させればいいんだ」

 「インドネシアに関しては、二つに分かれてるからね」

 「権益が大き過ぎてか。嫌だねぇ 欲に目が眩んでから」

 「アメリカが東南アジア全域に武器を密輸してるって話だぞ」

 「共産ゲリラとの結託もあるそうだ」

 「やれやれ、いい加減、占領地から足を洗わないと碌な事になりそうにないな」

 

 日本の船が着岸すると

 「頑張ってこいよ」

 「お勤め、行ってまいります」

 と刑務官にお辞儀をした日本人たちが降り、

 船に乗り込もうとする日本人が現地の刑務官に

 「お世話になりました」

 「もう戻ってくるんじゃないぞ」

 日本で犯罪を犯すと大東亜共栄圏建設のため島流しにされる。

 壁に囲まれているかと思えば、ジャングルの中に日本人町を作らされ、

 重犯罪者は刑期後、現地追放になっていた。

 日本の受刑者数は平均40000人に達し、ほとんどが国内の建設作業に送られる。

 日本人第87囚人村

 「ずいぶんと受刑者が減ってきてるじゃないか」

 「んん・・・受刑者は60000人台から徐々に減ってきてるし、困るな」

 「塀がありませんからって量刑増やせばいいんじゃないか」

 「被害者感情もあるからね」

 「そ、そこはほれ、受刑期間が長くなるからって・・・」

 「もう、証拠を捏造させて無理やり犯人にでっちあげる」

 「そりゃ いくらなんでも・・・・」

 「だって警察だって検挙率が名誉と地位を保障するし」

 「殺人なんて関係者が9割。無関係が1割だろう」

 「だいたい当たるよ」

 「冤罪された人間はたまらんな」

 「そこはそれ、こっちで心機一転、一財産作って豊かに暮らせばいいし」

 「もう、なんだかな・・・」

 「日本国内の公共工工事やらせた方がいいと思うけどな」

 「俺もそう思ったよ」

 

 

 ドイツ帝国

 兵器省

 「日本がユモ012ターボプロップエンジンの設計を先取りしてる?」

 「ええ、詳細は不明ですが、こちらの基本設計概念をほぼ、知ってると言えます」

 「スパイされたのか?」

 「こちらは重量3000kgで6000馬力」

 「日本は重量1700kgで5000馬力を目指し、最終的には15000馬力を狙うとか」

 「んん・・・」

 「むしろ、向こうの方が進んでるかもしれないかと・・・」

 「技術力はともかく、同じ概念でというのは・・・」

 「もう一基は1600馬力。こちらは戦中に日本が提案したターボシャフトエンジンです」

 「日本のプロペラエンジンは、この2タイプですね」

 「この二つのエンジンで、DC3輸送機の後継機を開発する気かもしれません」

 「やはり、X艦の技術だろうな」

 「しかし概念が似てるとなると、ひょっとすると我々の技術と関連があるのかもしれない」

 「まさか、ドイツ帝国海軍はあのような不格好な軍艦を建造したりはしませんよ」

 「ふっ まぁ それはそうだな」

 

 Ka31モドキとKa54モドキが対空していた。

 機体性能だけなら日本のモドキヘリより強力だった。

 「どう思うね」

 「機体性能だけで判断するなら日本製ヘリより上でしょう」

 「しかし、アリューシャン海戦を調べるとオリジナルのヘリに勝てる気がしませんな」

 「もっと強力なエンジンが必要か・・・」

 「むしろ夜間飛行に耐える姿勢制御とレーダーの類でしょう」

 「そんなものか」

 「ええ、アリューシャン海戦に関して言うとヘリの数だけ差がついてます」

 「情報によると悪天候にもかかわらず、最低でも15機が発艦」

 「日本艦隊からアメリカ艦隊は丸見え」

 「妨害電波でアメリカ艦隊から日本艦隊はほとんど見えず」

 「アメリカ艦隊の動きは曝け出され、手の内を全て読まれて勝ち目がないですね」

 「ランチェスターの法則は15対0以上ですよ」

 「アメリカ海軍が最初から特攻作戦をとっていなければ一方的に負けていたでしょう」

 「「「・・・・」」」

 「この経験則は我々の側よりアメリカの方が生かされ膨大な予算が投じられると思います」

 「「「・・・・」」」

 

 

 満州国 南の国境線

 鉄条網が何重にも張り巡らされていく、

 漢民族の浸透を防ぐためであり、

 麻薬と不正腐敗の浸透を防ぐための盾といえた。

 とはいえ、船舶の往来は増え、

 鉄道は敷かれ、航空機は往復していて、無駄に見えなくもない、

 国境警備隊

 「漢民族は朝鮮民族よりマシだって聞くけど」

 「ギブ&テクが成立すれば国だって売りかねない人たちだからな」

 「生活が良くなれば、愛国心が芽生えるんじゃないかな」

 「どうだろう」

 「外資系が人間扱いしていると同族に知られると困る軍閥が日中戦争を起こしたと言えなくもない」

 「じゃ いまは・・・」

 「ばれてしまった状態で、国家権力機構は機能しなくなってるだろうな」

 「みんな外資系シンジケートに加入して甘い汁を吸おうと必死になってる」

 「なんか。国境の向こうに行きたくないな」

 「まぁ そうだけどな・・・」

 南の国境から列車が国境を越えて満州国へ入っていく、

 そう、日本が最も怯えているのは、大陸シンジケートの日本浸透だった。

 

 

 中華民国軍の本隊は軍閥と何十もの匪賊連合であり、

 中華民国の権力機構は日本軍軍政と匪賊の両輪によって支えられていた。

 暴力が支配する世界であり、法律は、あって無きが如きだった。

 陝西省延安にソビエト製兵器が集積し、

 中国北辺から共産軍が勢力を増し、

 延安を包囲しとうとする中華民国軍と激しい戦闘を繰り広げていた。

 共産主義勢力は徐々に戦線を越えて伝播し農村に拡大し、大陸全域に不穏な空気を広げていた。

 

 中国大陸

 日本資本は露鳳の情報を利用し資源開発を進める、

 新規開発の大陸資源の半分を押さえ、採掘権を得ていた。

 日本は半島と満州国の支配だけで十分なのか、気前よく大陸市場を列強に開放し、

 最大勢力のホスト役に収まっていた。

 日本租界地は安全なことから日本人だけでなく、欧米諸国人も多く、

 漢民族は条件の良い外資系で働きたがり、

 同時に土地を収奪された農民を中心に反政府と反外資が強まっていく、

 このことは矛盾しない、

 大陸の支配者層は、弾圧者であり搾取者であり、民衆の敵以外の何物でもなく、

 仇国心があっても愛国心などとういうものは存在しない、

 戦後、日本で愛国心が気薄になる心配がされていたとしても些細な問題に過ぎないほどだった。

 それどころか、個人と個人の関係が気薄で対立関係にある国民性でもあった。

 日米欧の資本家が労使関係で手を差し伸べたところでギブアンドテイクが成り立たない限り、

 漢民族は習慣的に敵対関係でしかない、

 例えアメリカ資本が中国に浸透しても同じで憎しみの対象でしかない、

 この場合のギブアンドテイクは特権のことで、

 一般的な近代国家で忌み嫌われている類のモノだった。

 その特権が呼び水となり、麻薬と売春が日本本土に浸透し、

 最終的には国家規模の取引となり、

 大陸の如く人心を乱し、日本を衰退死させ兼ねないマイナス効果も考えられた。

 そして、中華民国も人民蜂起と国家転覆を防ぎ、

 国民統制のため政府に向かう憎しみを国外に逸らすため、

 表向きは外国資本の誘致を受け入れつつ、

 裏では反日・反米教育をしていた。

 そういった、御近付きになりたくない人種と国であったとしても

 大陸の資源と市場は日本の企業の収益を確かなものにし、

 投資を拡大させ、日本産業を支え、

 生産拡大は、物価を引き下げ、雇用を支え、賃金袋の厚みと税収を増やし、

 日本国内の社会基盤と産業基盤を大きくすることができた。

 列強各国と企業は巨大な大陸利権を守るため現地に投資信託法人を作り、

 現地裏社会と結託した大陸シンジケートを形成していく、

 それは一見、企業に見せ掛けた大陸匪賊を統括するシンジケートの本拠だった。

 

 

 漢口ドイツ系シンジケートの人たち

 「どうやら新しく開発したニッケル鉱山は日本人に押さえられてるらしい」

 「日本人は、いつから山師になったんだ。百発百中じゃないか」

 「結局、日本人の代理人と取引しないとニッケルを得られないことになるな」

 「ゴムもだ」

 「こっちの山師たちは?」

 「まぁ まだ調査中だ」

 「採掘と輸送ルートを抑えるために山賊や匪賊の頭目と組まないといけないそうじゃないか」

 「日本もそうしてるよ」

 「大陸はマフィアの親玉が支配してるようなものだからね」

 「正規ルートでやろうとしても邪魔されて高くつくことになるし」

 「それなら匪賊連中に金をわたして、採掘と輸送をやらせた方がいい」

 「何とも無法な大陸だな。呆れてものが言えんよ」

 「だがうまみもあるだろう」

 

 

 重慶アメリカ系シンジケート

 アメリカ資本は、医療品を中心とした販路で中国有力者とパイプを繋ぎ、

 徐々に勢力を浸透させていた。

 アメリカ系資本と結ぶ中国人マフィアはトミーガンの量産に成功していた。

 「勢力的に日本が4で、アメリカが1、ドイツが1、イギリスが1、ロシアが1、イタリアが2か」

 「ちっ こちらはシンジケート形成に手探りなのに」

 「イタリア人はあとから来たくせにパスタを茹でるみたいにシンジケートを作ってしまう」

 「この手の非合法組織を作るのが得意だからでしょうね」

 「面白くない」

 

 

 延安ロシア系シンジケート

 ロシアマフィアは武器と交換に中国共産党に浸透し勢力を伸ばしていた。

 シマの取り合いで共産主義は凶暴性を発揮し、大陸の南へと浸透していた。

 「新聞と出版社を押さえよ」

 「しかし、中国人は文盲が多く・・・」

 「事実を捻じ曲げ、中国人と日本人、欧米諸国の有力者を脅迫するための言論だよ」

 「少数派が多数派を打倒するには、味方に成り済まして自作自演を繰り返し」

 「国の文化や象徴を誹謗し、愛国心を失わせることだ」

 「中国人には元々 愛国心がありません」

 「それならなおのこと結構だ」

 

 

 イタリア系シンジケート

 イタリアも武器と交換に資源を手に入れ、

 シンジケートを拡大していく、

 漢民族の男が人気の無い場所へ呼び出された。

 「陳国軒」

 「はいある」

 「我がカモッラに入会するか」

 「はいある」

 「我がカモッラの秘密を外に漏らしてはならぬ」

 「はいある」

 「国家権力に決して屈してはならぬ」

 「はいある」

 「裏切りは死の報復を受ける」

 「はいある」

 「銃を持つ手を出せ」

 指にピンが差され、聖母マリアの絵に血が滴り落ちていく

 絵は両手に包みこまれ、火が付けられ、

 「私が誓いを破る事があれば聖人の貴方の様に我が身も燃え尽きるある」

 「おめでとう。君は正式に我がカモッラファミリーの一員となった」

 

 

 

 日本租界 “さくら丸”

 炭鉱と石炭を採掘する資源帯の中心部にあった。

 周囲は大地を埋め尽くすほどの中国人が採掘し、鉄鉱石と石炭を移送していく、

 星型城塞と呼べるような租界地は、資源地帯の中心に作られ、

 台湾・中国傭兵らが城塞を監視し、少なからず自衛できた。

 日本資本が有利な間は彼らが信用できると思われ、

 暴動が大きくなり負けると分かれば掌を返すと考えられていた。

 日系ホテル

 日系シンジケート

 この手の仕事に慣れてるヤクザ系が雇われていた。

 「大陸はいいねぇ 女性がやさしくて」

 「中国人男性より日本人男性の方がやさしいからカモ扱いされてるんだよ」

 「ぅ・・やっぱり」

 日本人のビジネスマンが走ってくる。

 「大変だ! 蜀華合衆国で暴動が起きて全土に広がってるぞ」

 「な、なんで?」

 「アメリカが民主化させようとしたらしい」

 「・・・アホか」

 アメリカ合衆国は蜀華合衆国の民主化を望むあまり時期を見余ってしまう。

 封建社会で軟弱な手段を執れば王朝の弱体化と思われ、

 人民の反旗が強まり、共産軍にツケ入れられる。

 権力構造を独裁で確固たるものにしなければならなかった時期、手を抜いてしまったのだ。

 暴動は武装蜂起に発展し、四川省に侵入した共産軍と合流してしまう。

 アメリカは緊急の派遣軍を編成し、

 日本は共産主義の波及を恐れ、アメリカ軍の揚子江の航行を承認、

 蜀華内戦は、アメリカ・蜀華軍VSソビエト・中国共産軍という内戦に発展し泥沼化していく、

 

 

 

 

 儒陀民族曰く “天孫儒陀民族降臨、インド大陸の支配者ニダ”

 儒陀民族曰く “儒陀民族は儒教と仏教を完全に修得したニダ”

 しかし、なぜか、インド全カースト、インド全種族から忌み嫌われ、

 インド人曰く “儒陀民族を見るな、近付くな、触れるな” となっていく、

 儒陀民族 VS インド人の戦いは熾烈を極め、仁義無き戦いに移行していた。

 インド大陸 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「暑いから全インド藩王国に賠償を要求するニダ」

 「皇帝。先ほど、橋が落ちたニダ」

 「インドにまともな橋を作らなかったイギリスに賠償を要求するニダ」

 「儒陀民族が作った橋ニダ」

 「なんで落ちる橋を作るニダ。もっと頑丈に作るニダ」

 「作れる技術を持つ者が少ないニダ」

 「白丁どもは作れると言ったニダ」

 「白丁どもはケンチャナと言ったニダ」

 「こんな場所に強制移住させた日本に賠償で作らせるニダ」

 「財政が悪化してるニダ」

 「それなら4000年間面倒を見てきてやった中国に補償を要求するニダ」

 「これで財政を持ち直させるニダ」

 「・・・・」

 「儒陀皇帝。アメリカの代表です」

 ・・・・・

 ・・・・・・・・

 「儒陀に投資しましょう」

 「本当ニダか?」

 「儒陀藩王国の利権と交換になりますが」

 「アメリカが日本に負けたから儒陀民族はインドに強制移民させられたニダ」

 「だから戦争に負けたアメリカが悪いニダ」

 「なので賠償としてアメリカは無償で儒陀に投資するニダ」

 「「「「・・・・」」」」 呆然

 「儒陀民族に投資するニダ」

 「大丈夫ニダ。日本は戦争に勝って慢心してるニダ」

 「儒陀民族は日本語がわかるニダ」

 「日儒友好を叫びながら近付くニダ」

 「そして、儒陀民族はよく話し、人の聞かない民族ニダ」

 「日本民族は話しが少なく、人の話しを聞く民族ニダ」

 「我々はいくらでも汚い仕事ができるから日本の政官財に需要があるニダ」

 「本当に?」

 「本当ニダ。我々が後ろに付けば大きな工場も一発で建設できるニダ」

 「金さえあれば暴力団と結託して、日本の右翼と左翼に成り済ませるニダ」

 「金と暴力と女で政官財と癒着し」

 「金ができたら新聞と出版社を買収するニダ」

 「そして、記者と作家を操って世論を動かすニダ」

 「日本民族の精神的支柱、天皇を扱下ろすニダ」

 「覚醒剤を撒き散らして日本人を廃人にするニダ」

 「儒陀民族の対日戦略を知らない日本民族はバラバラになるニダ」

 「気付いた日本人は個人攻撃で潰してやるニダ」

 「日本人は臆病で事勿れで日和見だから大丈夫ニダ」

 「そして、内側から集団になった単細胞な日本人を扇動してソビエトと中国と戦争させるニダ」

 「儒陀民族は利口だから自分で戦わず、後ろから馬鹿な日本人を操って戦わせるニダ」

 「日本人は必ず自分で戦おうとするニダ」

 「弱ったところでアメリカと戦争させるニダ」

 「そうすれば日本人は自滅するニダ」

 「アメリカは好きなだけ日本に原爆を落とすニダ♪」

 「日本を焼け野原にしたら半島を取り戻して、西日本も儒陀民族のもニダ」

 「残りはアメリカにあげるニダ」

 「「「「・・・・」」」」 唖然

 

 

 

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 月夜裏 野々香です

 戦後日本人の増長を思うとかなり怖い戦記になってきました。

 増長した人間は視野が狭くなり周りも見えなくなり、

 正気を失って唯我独尊状態のキチガイになってしまいます。

 自分の聞きたいことしか耳に入らず、

 忠告は敵意としか受け取らず、警告も耳に入らず、

 ひょっとしたら読者の身近にそういう人がいたりするかも (笑

 臭いモノに蓋をし現実逃避と自画自賛と美学で、

 日本民族ごと自滅に向かって突進していくでしょうか。

 よいしょしながら後押しする某民族も現れるかもです。

 こうなると露鳳の秘密を知ってる上層部だけが頼りでしょうか。

 

 

 冤罪事件って嫌ですね。

 警察のメンツを守るため無実の罪で人生を狂わされるとか。

 そりゃ 辛い仕事で、組織防衛大事で、

 警察官も楽して出世と名誉は欲しいかもしれませんけど、

 そこは自制すべきでしょう。

 マジで、本当に

 

 

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第10話 1950 『聖域から腐るよ』

第11話 1951 『大陸シンジケート戦争』
第12話 1952 『軍艦つくりてぇ!』