月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第12話 1952 『軍艦つくりてぇ!』

 蜀華合衆国で起きた内戦は、共産主義の波及を恐れる米英日独中を結束させ

 反共諸国対ソビエトの代理戦争の様相を見せ始めていた。

 アメリカ軍事顧問軍と支援国軍が揚子江を遡上して国民軍と共闘しつつ共産軍と交戦する、

 その光景は、戦後余った兵器武器弾薬の減価償却であり、新兵器の実験上でもあった。

 重慶

 アメリカ軍将校たち

 「ったくぅ アメリカ人が、なんで中国人のために血を流さなきゃならんのだ」

 「アメリカが日本に負け、中国人に負けてはやり切れんだろう」

 「ふっ 派遣軍は少ないし、黒人兵ばっかりじゃ 説得力がない」

 「大戦が終わって3年しかたってないし、死に過ぎたからな」

 「だから黒人将兵に死ねってか。原爆でも落とせばいいんだ」

 「原爆は使いたくないそうだ」

 「蒋介石も中華民国に頼ればいいのに」

 「死んでも嫌だと」

 「中華民国内は別の戦争だしな」

 「あっちは、外資企業と匪賊マフィアが結託したシンジケート戦争になってるからな」

 

 

 中華民国

 そこは、外資系資本と現地匪賊マフィアのシンジケートが国を支配する大陸だった。

 漢民族華僑系行政シンジケート

 中華民国行政と結託した民族資本であり、特質すべき技術はないものの、

 人の利を得やすく、最大の人口を利用して勢力を拡大しつつあった。

 性格的に眠れる獅子であり、

 状況が好転すれば一気に国外に巻き返す気質と力を秘めていた。

 「反外国運動を起こすある」

 「いまは駄目ある」

 「列強のシンジケートに好きなだけ投資させるある」

 「投資させた後、人民の力で奪うある」

 「人の利の力は大きいある」

 

 

 アメリカ系金融シンジケート

 世界最大最強の工業生産力を有し、潤沢な経済力と進んだ技術を利用し、

 中華民国に食い込みつつあった。

 この種の抗争は慣れており、徐々に勢力を拡大していた。

 「自動車と医療品の売れ行きは?」

 「ぼちぼちある」

 「武器は?」

 「売れてるある」

 「銃の保有は個人の権利なのだ」

 「個人の権利が侵された時、個人が形成する社会が崩れ、国家が失われるのだ」

 「家族という単位が無いある」

 「そんなものどうでもよいから、武器を売って中国統一を阻害しろ」

 「それは国家支配を憎む漢民族の願いある」

 「対価は、麻薬、女、金銀財宝、古物品がいいな」

 「わかってるある」

 

 

 ロシア系思想・武器シンジケート

 共産主義と共に赤い勢力を拡大していた。

 蜀華内戦の首謀者であり、

 中華民国の赤化も視野に入れ農村を中心に蔓延っていた。

 とはいえ、満州帝国は健在である限り、本格的な軍事介入はできないでいた。

 「これで武器が欲しいある」

 麻薬、女、金銀財宝、古物品・・・・

 「武器は渡せる」

 「その代わり、中華民国の我々ロシアシンジケートのシマに手を出すな」

 「わ、わかったある」

 

 

 イタリア系本場シンジケート

 イタリア最大の企業であり

 マフィアの伝統と蓄積された組織統制と集金ノウハウは世界最強だった。

 衣類食器など販路を足場に急速に勢力を拡大しつつあった。

 「賭博場の収入は?」

 「ぼちぼちある」

 「馬鹿な奴に借金を背負わせたら、ほかのシンジケートの人間を殺して仲違させるんだ」

 「我々が漁夫の利を得られるようにな」

 「そうするある」

 

 

 

 ドイツ系工業シンジケート

 この種の非合法組織構築を苦手とするところは、日本と似ていたものの、

 必要とする希少金属を求め、工業機械輸出を利用して足場をい築きはじめていた。

 シンジケート間の勢力均衡を利用し、上手く入り込めたと言える。

 マフィアとヤクザ映画が流れていた。

 生粋ドイツ人の最が苦手とする分野に戸惑う。

 「というわけで折半で頼むよ」

 「まぁ 支援が得られるのならいくらでもやれますよ」

 「得意ですから」 東欧人

 

 

 イギリス系謀略シンジケート

 香港・マカオを中心に失地を回復しつつ、

 植民地開発需要を利用した浸透を試みていた。

 「ちっ 香港島は丸ごと日本人に占領されてる」

 「九龍半島、新界を活動の拠点にするしかないでしょう。英語が使えますし」

 「ステンガンは?」

 「安いですから短機関銃の中では、一番売れてますね」

 「武器で中国人を買って植民地を開発させよう」

 「植民地の人間を中国に売って、資源を手に入れよう」

 「いいんですか? 人身売買は国際的に叩かれるかもしれませんよ」

 「どうせ、シンジケートがやることだ」

 「それにイギリス経済は、もう後が無い」

 「植民地を日本に売却して金を作りたいくらいだ」

 「それを思えば、人身売買くらい・・・」

 「マフィアで香港島を封鎖して取引を妨害すれば香港島は廃れるはずだ」

 

 

 

 上海 某レストラン

 上海ガニが皿に盛られ、

 中国人と日本人が食べていた。

 「日本人のせいで中華民国行政は国際シンジケートに支配されたある」

 「違うだろう。漢民族が金をくれる者の味方だからだろう」

 「漢民族は支配者が嫌いで愛国心が無いある」

 「支配者に盲目的に従う日本人が羨ましいある」

 「そりゃ 日本人だって地位名誉財産は欲しいけどさ」

 「国を裏切ると村八分で全て失う可能性が高いし」

 「大陸と違って島国は逃げ場がないからね」

 「裏切りで村八分で済む日本は天国ある」

 「生き地獄は辛いからな」

 「逃げ道は用意するある♪」

 「麻薬と女を日本に輸出できるある♪」

 「大陸にいると命が縮むから無理」

 「日本人は憶病ある」

 「それはそうと例の土地は?」

 「共産主義者が居座り始めてるある」

 「あとドイツ系シンジケートも同じ土地に食い込もうとしてるある」

 「抗争になりそうか?」

 「わからないある。そっちで話しを付けないなら修羅場ある」

 「んん・・・」

 「こっちは折半より、組織で満額欲しいから何人死んでもやりたいある」

 「どの道、人口が多くて邪魔ある」

 「ソビエトはともかく、ドイツとの関係は悪化させたくないからな」

 「ぼやぼやしてるとほかのシンジケートも嗅ぎつけてくるある」

 「二日、待ってくれ」

 「わかったある」

 日系資源シンジケート

 日本資本は中華民国行政に食い込み、大陸資源を押さえ

 地の利を得た防御力の高い租界城塞を持ち、大陸で最大勢力を誇っていた。

 惜しむらくは日本出身のヤクザは性格的に院政化したがる傾向があり、

 バイタリティに欠けてるのか、

 外資系新興シンジケート勢力に押さえられつつあった。

 

 

 日本

 某工場その1

 MiG29Kのモックアップが作られていた。

 露鳳の情報を元に見よう見真似で作られた模型だったものの

 日本軍将兵は見惚れる。

 「Su33Kの方がよかったんじゃないか」

 「エンジンがまだだからな。大きな機体を設計しても推力不足になるだけだ」

 「名前は何にするの?」

 「瑞燕」

 「瑞燕かぁ いいなぁ」

 「多分、同じ機体を使って制空用機体と攻撃用機体になるだろうな」

 「いつ量産?」

 「まだ開発中だろう。それに予算が入ってからかな」

   瑞燕(MiG29ラーストチュカ)

   全長17.32m×全幅11.99m×全高4.73m 主翼面積:42.0u

   通常離陸重量21550kg/最大離陸重量24500kg

   推力4200kg×2基 速度M1.8 航続距離1500km/増槽2900km

      (通常離陸重量18550kg/最大離陸重量24500kg)

      (推力8200kg×2基 速度M2.25 航続距離1500km/増槽2900km)

   30mm機銃×1 空対空ミサイル、空対艦ミサイル

 「取り敢えず部品を交換しながら、性能を仕様に近付けていけばいいかな」

 「あ、あれは? アビオニクス火器管制システム」

 「それ、マジありえんから」

 「あれあると絶対に勝てると思うがな」

 「自動操縦くらいなら何とかするが手動で戦闘してくれ」

 「なんて志の低いやつだ」

 「真空管じゃ逆立ちしても作れんよ」

 

 

 日本の某工場その2

 戦後、開発が急がされたのは2基の大砲だった。

  AK100  70口径100mm単装砲

  AK630  65口径30mmCIWS

 どちらも火砲として優れているだけでなく、

 火器管制システムと直結し、

 この時代にあって圧倒的に有利な火器だった。

 そして、現物はなかったものの

  艦対空ミサイル9K330トール

  対潜ミサイルRBU12000

  対艦ミサイルP500バザーリトの詳細な設計図があり、

 その開発も検討されていた。

 「どれもこれも巨大な電子産業の裏付けがなければ開発不能だね」

 「ソビエトはそんな巨大な電子産業とは思わないけどな」

 「それでも、日本の工業力は勝てんよ」

 「取り敢えず、新型艦艇に載せられる火器として開発しないと」

 「ヘリで勝ってるから全通甲板型艦艇がいいと思うがな」

 「機関は?」

 「アメリカの蒸気タービン電気駆動機関か。ドイツのディーゼル電気駆動機関か」

 「ターボシャフトエンジンは小型艇に使えそうだな」

 「ガスタービン機関は?」

 「M63、M70、M8KFガスタービンエンジンの設計図があったが詳細なモノじゃなかったな」

 「んん・・・日本沖海戦とアリューシャン海戦でかなり沈んでる」

 「とはいえ、予算が無いからな。当面、旧式艦艇で騙し騙し・・・」

 「潜水艦は建造してるだろう」

 「潜水艦は別格だろう」

 

 

 某工場その3

 関係者たちが完成した糸状のモノを珍しげに見つめる。

 「これがカーボンファイバーか・・・」

 「取り敢えず5、6年待って公開だと」

 「俺が発明したって本当?」

 「年表によるとそうらしいよ」

 「ふ〜ん」

 「何とか工業化して産業を軌道に乗せるとして・・・」

 「ずいぶん急だな」

 「チタン、カーボン、シリコン、セラミック、ケブラは軍関係者と財界が煩くてな」

 「地下で作れって?」

 「半島は地震が無いらしいし、埋まる心配はないよ」

 「モグラ生活は辛いな」

 「機密だそうだ」

 

 

 某工場その4

 コンセプトは “見かけは第1世代戦車。中身は第3世代戦車” だった。

 「大砲はどうするって?」

 「70口径100mm砲が有望らしい」

 「それ、艦砲の流用だろう」

 「ソビエトのT54戦車も54.6口径100mmだからね」

 「向こうも同じことを・・・」

 「まぁ 車体は大きくなるが一番威力のある大砲だからな」

 「滑空砲にするのか?」

 「滑空砲は115mm以上が望ましいから。新型砲を開発するまで待つべきだろう」

 「砲塔を乗せ換えればすぐ使えるモノなら尚よしだろうね」

 「じゃ 120mm砲を載せられるくらいの車両を開発すればいいわけか」

 「車体と砲塔の関係が悪いと無駄にならないか」

 「開発の方向がわかってるなら、それに合わせた設計をすればいいだけだ」

 「T80U、T90戦車の設計が一番参考になる」

 「蜀華内戦も始まってるし。いい加減、督戦隊と囚人部隊だけじゃ 満州北方も危ないからね」

 「それで滑空砲と複合装甲とエンジンは?」

 「まだ」

 「・・・・・」

 

  61式戦車

  45t級 全長9.270m  車体長7.55m×全幅3.4m×全高2.4m

  800馬力 54km/h 航続力350km

  70口径100m砲  機銃(6mm×45)2丁

 

 そして、対戦車専用の主力戦車に随伴できる対空戦車も開発される。5280

  61式対空戦車

  40t級 車体長7.55m×全幅3.4m×全高3m

  800馬力 54km/h 航続力350km

  65口径30mm6束 機銃(6mm×45)1丁

 この車両は、航空機、対戦車ヘリだけでなく、

 対人掃討も兼ね。

 増強されるであろう対戦車ロケットを近付けさせない役割もあった。

 

 

 

 挙国一致の動機付けで強いのは、危機的状況か。負けること。

 そう言えなくもない。

 敵愾心と緊張感と意欲は持続し、慢心は消え、

 悔しさと謙虚さが全国民に刻み込まれる。

 戦後、アメリカの国民総生産は持続的に増加し、

 この生産量の伸びを知った日本は、戦勝祝いを中止させ、

 断続的な財政投資をするものの、

 油断と気抜けと慢心が残ってしまい、

 驕りと高ぶりが全国民を覆っていた。

 戦後、日本の国民総生産は土地持ちが増えて生活が楽になり、

 資源とエネルギーを得たものの

 製造人口と意欲が低迷、工業生産の伸びは、緩やかなモノになっていた。

 首相官邸

 「製造人口が足りない」

 「私有地と農地が増えたからでしょう。自分の田畑を耕すので懸命ですね」

 「それでは国民生産が伸びないだろう」

 「まぁ 国民総生産増大と幸福の指標は一致しませんから」

 「だからと言って、このままじゃまずかろう」

 「土地を奪って、労働者にしないと戦力どころか国力が伸びない」

 「もう少し、積極財政を中心に社会資本を集めるしか」

 「だよな。社会資本増やしても歓楽街が大きくなるばかりだしな」

 「人間の欲望なんてそういうもんですから」

 「それはそうと、日米航空機乗り入れの話しは?」

 「ダグラスDC6で強気のようです」

 「日本はいまだにDC3輸送機だからな」

 「DC6ライセンス生産の話しは来てるようですが」

 「国産は?」

 「クリモフTV3-117なら双発のAn140旅客機型が早いかと」

 「プロペラの? それも双発機じゃないか」

 「なにぶん、工業が歪なモノですから」

 「国内の工業力が小さいと新規格に移行してもアメリカ工業力に圧倒されるだけでしょうし」

 「何とか、工業人口を増やしたまえ」

 「国民にとってあまり幸福感を得られなさそうな政策になりますが」

 「このまま後進国になるわけにはいかん」

 

 

 

 扶桑(朝鮮)半島

 建設機械が動きまわり、

 作業員の生活を支える衣食住を中心とした街が作られていく。

 街は近代的な計画都市として建設され、

 日本風の地名に置きかえられていく、

 港湾が整備され、

 鉄道が施設され、道路が満州まで伸びていた。

 半島の朝鮮人は全てインド大陸へ送り込まれ、日本人しかいなかった。

 半島各地に工場団地が作られ、日本人移民者が増えていく、

 鴨緑江に接する山岳地帯に防衛線が作られ、最終防衛線が構築されていた。

 太白山(2744m)

 日本人たち

 「すげぇ カルデラ」

 「綺麗だな」

 「自然だけは文句のつけようがない」

 「ロープウェイ作って、スキー場にしたいな」

 「いいねぇ」

 「でもこの辺は、ソビエト軍が攻めてくると怖いからな」

 「ロシア人だって戦後だし、無暗やたらに戦争したがるわけじゃないよ」

 「だといいけど」

 「実のところ原子爆弾持ってると思われてる節もあるし、大丈夫だろう」

 「満州の主力陸軍が督戦隊と漢民族だと知ったら」

 「なおの事、こないと思うよ。命懸けでゴミ掃除させられるなんて割に合わないし」

 「まぁ満州は負けても、半島は守れるだろう」

 「カムチャッカ半島と北樺太くらい占領できるから丸損はないと思うけどな」

 「いや、満州の資源帯を失ったら負けだろう」

 「まぁ そうだけどね」

 

 

 

 半島と大陸は日本人の郷愁を防ぐ意味を込め城郭風の省庁舎が多く、

 神社仏閣も建設されていた。

 関係者たち

 「発電、上下水道、鉄道、道路、橋、学校、公民館、警察の公共設備とその他諸々か・・・」

 「民間も工場と上下水道を欲しがってるし・・・」

 「もっと予算が要りますね」

 「軍が取り過ぎなんだよ。アフォが」

 「それと大陸投資、なんであんなに投資してんだ」

 「半島もですけど日本の港も鉄鉱石と石炭が山積みだとか」

 「回収分が大きいからでは?」

 「どうも中華民国の取り分が多いような気がするが」

 「それはわかりませんが」

 「少なくとも、それが無いと半島と日本の開発は遅れますよ」

 「満州だって大きいだろう」

 「大陸の方が人権が無くて無理が聞きますから」

 

 

 玄海(釜山)港

 巨大造船所が建設されつつあった。

 「軍艦作りてぇ」

 「列島と半島の間を行き来しても軍艦じゃ モノ運べないし、客船や輸送船じゃないとな」

 「民間に金渡したって繁華街が大きくなるばかりで国は守れないんだがな」

 「いいよ。勝った勝ったで浮かれてる馬鹿どもばかりだし」

 「一度、国土を蹂躙されちまえばいいんだ」

 「銃を渡せば自分たちの繁華街を守るために戦ってくれるだろう」

 「ふん! 素人に銃なんて危なくてしょうがない」

 「ハワイを取り返されても知らんぞ」

 「アメリカ人は、今更、ハワイのために血を流すかな」

 「決闘で取られたなら決闘で取り返す理屈は成り立つだろう」

 「まぁ そう言えなくもないけどね」

 「いまどき、日本を軍拡させたがってるとしたら利権の絡んでる軍属か」

 「日本を対ソ対中対米で暴走させたがってる在日ヤクザぐらいのものだ」

 「軍の愛国心と地位名誉と。軍属の財産が軍拡で満たされてもね」

 「大多数の一般人は郷土を侵略されたわけでもないのに重税だろう」

 「その上、死傷者続出じゃ 愛国心が薄れることもあるし」

 「「「「・・・・」」」」 むっすくうう〜

 「ほら、未来の大綱表でも見て喜んでろ」

   45000t級強襲ヘリ強襲艦  4隻

   25000t級輸送艦       2隻

   9000t級巡洋艦       24隻

   9000t級原子力潜水艦   24隻

   2300t級通常潜水艦    16隻

 「いつ建造するのかわからん上に貧弱すぎて喜べねぇ」

 

 

 満州帝国

 1908年、1583万人だった人口は、日本軍の進出に伴って治安が改善し、

 南満州鉄道と日本資本の産業投資による雇用と、

 悪化する大陸(清国)から逃れるように漢民族が流入、

 1931年には4300万に膨れ上がってしまう。

 日本は山海関を封鎖し、漢民族の流入を制限したものの

 満州帝国の漢民族は5000万人という大台に乗っていた。

 流入した漢民族は、拡大する農地の農民として働き、

 あるいは戦中から戦後にかけて次々と開発される油田、鉱山で働くことで収入を得られた。

 安定した収入は、匪賊を減少させたものの

 漢民族は膨れ上がる社会資本で商才を発揮し豊かになっていく、

 そして、漢民族の富裕層は子供に英才教育と日本語を受けさせ、

 社会的な地位を押し上げていた。

 日本は日本支配を強めるため日本人で行政と基幹産業を固めていたものの、

 扶桑(朝鮮)半島ほどには人口流入が進んでおらず、

 日本人の人口比は圧倒的に不利であり、

 日本教育を施していたものの、

 中国人が暴動を起こせば権力構造が破綻しかねない情勢となっていた。

 満州帝国

 満州帝国首相官邸は、お飾りの首相と実質支配者層の日本人行政官がいた。

 「資源開発と農地開発と機械化で、労働価値が高まっている」

 「そろそろ、国際的にアヘンの専売はヤバいと思うね」

 「量は減らしてるだろう」

 「歳入の5パーセントは専売によって得られてる、それを失うのは問題だと思うよ」

 「アヘンがあるせいで犯罪も多い」

 「満州の公共設備の幾つかがアヘン収入で作られていると思うと複雑な気分になるね」

 「すぐ減らすと暴動が起こるし」

 「専売しなくても、どこからか手に入れるに決まってるだろう」

 「とにかく、もう潮時だと思う。相乗りしてるシンジケートとも手を切るべきだ」

 「むしろ、シンジケートの凶悪化が怖いと思うが」

 「日本人の移民も足してるというのに?」

 「日本人を安心して移民させられないだろう」

 「そうだよ。日本人の人口が増えれば、基幹産業ももっと大きくできるし」

 「そうなったら、税収はもっと増えるだろう」

 「これ以上の移民は、難しいらしいけど」

 「そういえば、インドの儒陀民族が漢民族の人手を欲しがってたけど」

 「日本人を増やせないなら漢民族を減らす方法もある」

 「あいつら、漢民族を使ってインドを支配するつもりかな」

 「大陸シンジケートは前向きになってるらしい」

 「金と暴力支配のシンジケートとはあまりかかわりたくないのだが」

 「シンジケートは中華民国そのものだよ」

 「「「「・・・・」」」」

 

 ハルピン日本軍司令部

 「これが新しい戦闘服?」

 「ボディアーマーってやつだ。露鳳に積んであったモノを真似した」

 「ふ〜ん、日本製よりはるかにいい」

 「本物はチタンとケブラ樹脂の板が使われている」

 「それはいつできるの?」

 「ケブラは65年移行でアメリカかな」

 「量産になれば日本が追い抜きを駆けて、ごぼう抜きする予定だ」

 「日本で先に作らないの?」

 「露鳳の可能性を把握されるのが面白くないし、先に作って敵に教えるつもりはない」

 「まぁ 試作量産品を軍内配備するつもりだがね」

 「取り敢えず助かるが、もう少し、装備を一新してくれよ」

 「そりゃ 政府が漢民族とソビエト軍の両方を磨り潰したいのはわかるけど」

 「おれ、自分の経歴と評判を気にしたいな」

 「その時は、辞任して泥を被れれる後任にまかせてくれ」

 「大日本帝国に綺麗事いう将官はいらないから」

 「恰好つけたいのなら転職を勧めるね」

 「「「「・・・・」」」」

 窓から見える白色と紅色の日章旗はどこまでも美しく日光に照らされていた。

 『『『『白が黒に見える・・・』』』』

 

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 時空研究室

 テスラコイルが作られ、

 電界が場を覆う。

 ある鋼板だけが青白い靄のようなものに覆われていた。

 「どうだね」

 「・・・やはり、露鳳のモノだけ、反応が違いますね」

 「どういうことだろう。あの海域で拾ったものは、マイナス反応だし」

 「時空の障壁を越えたことで目に見えない位相が露鳳の物質構成に刷り込まれているような・・・」

 「そして、海底のモノは、逆に抜け殻・・・」

 「個体、液体、気体、プラズマ以外の第5位相ということかな」

 「時空移動したときの電力は、10000000分の1なんですがね」

 「その第5位相を利用できれば時空移動は、容易になるということだろうか」

 「それは、なんとも・・・」

 「露鳳は腐食に強い性質があって変わってますからね」

 「・・・露鳳の機材・・・連合軍側に取られていないだろうな」

 「さ、さぁ いまのところ、4機が全損回収してるはずです」

 「改造した時の廃材も回収させてくれ」

 「それと露鳳のモノは、個別管理だ。番号振っとけ」

 「露鳳そのものが、とんでもない価値があるモノかもしれないぞ」

 「今頃、気付くとは・・・」

 「海底の物資も集めた方がいいな、物理学上の発見につながるかもしれない」

 「あと、露鳳に元々積まれていた食料を食べた者」

 「医薬品を使った者は人間ドックで精密検査だ」

 「我々も戦勝ボケしていたとしか思えん」

 

 

 蜀華合衆国

 四川盆地の戦場は、蜀華軍と共産軍の人海戦術的な戦いがメインで、

 砲兵、戦車、航空機は、滅多に現れなかった。

 戦闘は一進一退でどちらも決定的な戦果に欠けていた。

 アメリカ軍基地

 アメリカ軍将兵たち

 「旧式のサンダーボルトにM4戦車か・・・」

 「在庫一掃セールだな」

 「新型でも旧型でも人海戦術に飲み込まれると大して変わらないよ」

 「大砲より機関銃をたくさん積みたくなる」

 「それに雨と霧が多いから射撃距離が接近してる」

 「ガーランド小銃よりカービン小銃やトンプソン短機関銃が有利だ・・・」

 ヘリコプターが近付いてくると滑走路に着陸する。

 日本の海燕(Ka31モドキ)と朱雀(Ka54モドキ)はアメリカに売却され、

 ライセンス生産されることになっていた。

 “日本は自分の首を絞める縄をアメリカに売った”

 と揶揄され、売国扱いされたものの

 日米貿易は拡大し見返りも大きかった。

 一方、世界最高峰のヘリであるにもかかわらず、

 アメリカ側も不満タラタラで、

 夜間飛行も駄目なら

 空母を撃沈できるような爆弾をまともに持ち上げられないのだ。

 「日本が何かを隠しているとしてもだ」

 「ヘリは使えそうだな」

 「雨と霧ばかりだからな。ヘリだってうまく運用できるかどうか」

 「準備ができたら、四川盆地から共産主義を追い出して終わりさ」

 「準備ができたらね・・・」

 霧が濃くなると滑走路全体が白い靄に包まれていく、

 

 

 

 大東亜共栄圏 ビルマ

 日本は、カレン族(7パーセント)と組んでビルマをしていた。

 ビルマ族(68パーセント)、シャン族(9パーセント)は少ないものの特権を利用した支配は便利だった。

 日本資本はビルマ政府と折半では、石油、ルビー、サファイアの採掘を行い、

 日本は残りのルビー、サファイアを対価にビルマの公共事業に乗り出し、利益を上げていた。

 一方、ビルマは港湾が整備され、鉄道が敷かれ道路が伸びていく、

 ビルマ北部の水源地に発電ダムの建設が始まり、

 商店街が作られ、日本商品が溢れだしていた。

 植民地時代にこのようなことはなく、

 ビルマ人は、表面的な産業革命に驚いていた。

 しかし、実態は近代的な生活と産業を維持するため働かなければならなくなったと言える。

 そして、ビルマで売れたのは三式指揮連絡機と

 朱雀(ka54モドキ)、海燕(ka31モドキ)のヘリだった。

 「へぇ〜 ずいぶん、性能が良くなってきたんじゃないか」

 「ドイツ製に負けてるって噂だけどな」

 「なんで教えた日本の日本製ヘリがドイツ製に負けるんだよ」

 「結局、ターボシャフトエンジンの出来かな」

 「アメリカはH43ハスキーを飛ばしてる」

 「まだ性能は勝ってるよ」

 「アメリカは蜀華内戦にヘリ部隊を送ってヘリ産業を育成してるからな」

 「いつまで優位を保てるやら」

 「日本だって、金さえあれば、スムーズに性能を向上させられるさ」

 「AH1コブラを開発する前にまともにエンジンを作れるんだろうな」

 「TV3-117は72年に開発されたエンジンで、使ってるのは、その後期発展型のエンジンだ」

 「現物があっても簡単に模倣できるわけがないよ」

 「それより、租界地は?」

 「北方の発電ダムの一角に貰えた」

 「また、ずいぶんな場所だな」

 「山岳地で涼しいし、ヘリで行くしかないし、難攻不落だよ」

 「なにしに行くんだか」

 「だから推力発電所建設だって」

 「ビルマはタイと近代化競争してるし、日本にとってどっちもいいお客さんだよ」

 「国境の近い中国と揉めなきゃいいけど」

 「中華民国のシンジケート戦争と蜀華内戦だからな」

 「揉めたときの脱出用じゃないの」

 「ふっ シンジケートは、いったいどんな悪ことしてるんだ」

 「何というか、悪事を全部マニュアル化してフローチャート作って組織的にやってたな」

 「どうでもいいけど、ほかの国でヤクザな仕事は、やらんで欲しいよ」

 「それだけ、統一中国が怖いのだろう」

 

 

 

 ドイツ帝国

 原爆が投下されたベルリンとウィルヘルムスハーフェン海軍基地は再建が進み、

 街々から瓦礫が取り除かれると人々の生活は平常に戻っていく、

 ウィルヘルムスハーフェン海軍基地

 ドイツ軍将校の軍服は旧帝国とナチ時代の中間で、貴族風に仕立てなおされていた。

 海軍工廠では3000t級新型潜水艦が就航していた。

 「ドイツ帝国の国土はアメリカとソビエトに比べて狭い」

 「大陸間弾道ロケットを配備するとしても狙われやすい」

 「新型潜水艦は、もっと大型で大陸弾道弾装備がいいだろう」

 「アメリカが警戒するのでは?」

 「警戒か・・・投下された原爆が2発ずつでもドイツとアメリカは被害の大きさが違うからな」

 「割損はともかく、ナチスドイツを一掃できたことは救いだと思うよ」

 「それより、建造はいつになるんだ」

 「財政再建と戦争被害者の救済が優先かな」

 「国防はないがしろかよ」

 「どこの国も厭戦機運が高いし。戦後軍縮は同じだよ」

 「人が死に過ぎて満足に動員もできない」

 「というより、日本のX艦がどの程度か気になって、技術向上に勤しんでる状況かな」

 「日本はドイツから工作機械を買ってるそうじゃないか」

 「X艦と言っても大したことが無いのでは?」

 「X艦の技術を製造するため工作機械を欲しがってるのだろう」

 「売らない方がいいのでは?」

 「売らないと必要な資源がドイツに入ってこないじゃないか」

 「じゃ 日本が優位になるばかりだろう」

 「一番困るのはアメリカとソビエトだし。ドイツは全然困らないね」

 「ジャパンカードってわけか」

 「中華民国の資源が入ってくるならもう少し選択肢も増えると思うが・・・」

 「東欧の人間にシンジケートを作らせてると聞いてるが上手くってるのか?」

 「南部の山岳地帯は涼しくて、東欧の人間も住みやすいらしいそうだ」

 「丁度、ヘリを欲しがってる」

 「資源を持ってこれるんだろうな」

 「まぁ 日本と組んだ方が確かでも、それとは別にリスク分散で投資すべきだろう」

 「最大の理由は東欧人の処理だしね」

 「ドイツ帝国はいつから選民主義になったんだ」

 「自治を認めると面倒だし、ナチ時代の名残は簡単に消えない・・・」

 汽笛が鳴ると水平線に資源を満載した日本商船が入港してくる。

 日本とドイツは軍事同盟が破綻しても協調関係にあった。

 

 

 インド大陸

 「女が沐浴してるニダ〜!」

 「いいニダ。結構、上のカーストニダ」

 「カースト最高は儒陀民族ニダ。やるニダ」

 「「「「・・・・」」」」 ゴックンッ!

 「突撃ニダ!!!!」

 キャー!!

 

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「皇帝。幾つかの藩王国が強姦事件で儒陀国民を訴えてるニダ」

 「儒陀民族は、儒教と仏教の境地に至った選民中の選民ニダ」

 「儒陀民族に匹敵する民族は世界にユダヤ人とドイツ人しかいないニダ」

 「儒陀民族の男に抱かれる女は名誉なことニダ」

 「儒陀の男の名誉を傷付けてはいけないニダ」

 「名誉棄損でインド女に賠償を要求するニダ」

 「でも儒陀の女を強姦した外国人は聖なる女を汚したので死刑ニダ」

 「それにインドの軒下を借りたら次は母屋のインド大陸ニダ」

 「もうすぐ儒陀大陸ニダ」

 「あっ そうニダ!」

 「日本女性は特別運賃で儒陀旅行できるように手配するニダ」

 「どうするニダ?」

 「やるニダ〜♪」

 「「「「・・・・・・」」」」 じゅるっ〜 ごっくん!

 「日本の男なんて半分人形みたいな草食動物ニダ」

 「そんな男に抱かれる日本女がかわいそうニダ」

 「男の中の男の儒陀の男が日本の女をかわいそうから救ってあげるニダ」

 「「「「・・・・・・」」」」 にやにや

 「・・・皇帝。ヒンズーの牛肉とイスラムの豚が手に入ったニダ」

 「焼き肉ニダ〜♪」

 「宗教で食事制限するなんて馬鹿ニダ」

 「一定の手順で清めると食べられるニダ」

 「そうニカ?」

 「じゃ 清めたことにして売れば儲かるニダ」

 「駄目ニダ」

 「なぜニダ?」

 「いつの間にか、儒陀民族の半分がダリット扱いにされてるニダ」

 「売ることも買うこともできなくなったニダ」

 「せ、戦争ニダ!!」

 「ぶ、武器が足りないニダ」

 「儒陀民族を仲間はずれにしたインド人に賠償を請求するニダ」

 「謙虚と接待の気持ちをインド人に教育しなかったイギリスに賠償を要求するニダ」

 「不良品の武器を渡した日本に補償を求めるニダ」

 「それとアメリカがインドを占領したいのなら有料で通行させてあげるニダ」

 「元寇の時、使った手ニダ〜♪」

 「そういえば元寇の時の通行料未回収だったニダ」

 「中華民国に未回収の通行料を要求するニダ」

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です

 やっと時空巡洋艦らしくなってきたというか。

 敗戦から日本を救った露鳳は、もう一働きするのでしょうか

 あと、勝ったことで生じる慢心は馬鹿みたいというか、

 日清・日露戦争で自信を付けて、

 その後の軍部の暴走で日中戦争、太平洋戦争と自滅自爆フラグですから何とかしないと

 でも人間って、こういうのは老若男女、痛いめみないとわからないんですわ。

 

 大陸系の腐り具合は、どんな想像しても想像以上と確信できるというか。

 ちょっと書けませんな、の事実もあったです。

 

 インドの儒陀民族は煩悩免許皆伝でしょうか。

 不戦戦記の天皇と違ってスラスラと・・・・

 

 

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第11話 1951 『大陸シンジケート戦争』

第12話 1952 『軍艦つくりてぇ!』
第13話 1953 『富国強産』