月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第13話 1953 『富国強産』

 満州帝国の資源、穀物・畜産は膨大で、

 列島と半島に流れ込み、生産と消費を増大させていた。

 大陸市場とシンジケートの上納金は、日本産業の投資を増やし、

 国際貿易の拡大は、財政破綻から日本を救う、

 公共設備投資は、再生産と副次的な産業を増大させ、経済成長を著しく加速させていた。

 政策の舵が富国強兵から富国強産へ切られ、

 人手不足を補うため機械化と自動化が望まれた。

 鉄道と道路の交通機関の発達は人の移動と物流を増大させ、

 自動車の増加は、移動と輸送と搬出搬入を助け、

 遠距離の顧客を増やし売り上げを増やした。

 列島人口は減ったものの一人当たりの購買力が増し、

 大型商店が建ち並ぶ、

 列島人口は半減したものの、一人当たりの生産量は増大し、

 国民総生産は人口が減る前と変わらなかった。

 戦争の結果、満州国は承認され、

 対中対ソ国境線が定まると日本周辺は、徐々に落ち着き、国民の意識も変わっていく、

 代わりに蜀華国の内戦が焦点になり、

 中華民国内のシンジケート戦争、

 インド大陸の儒陀皇国と、インド藩王諸国の緊張が増していた。

 そして、欧州植民地の独立運動が高まりつつあった。

 

 

 大東亜共栄圏ベトナム帝国

 バオ・ダイ保大帝は日本の傀儡で

 北部はホーチミンを中心とした共産勢力が勢力を伸ばしつつあった。

 日本がベトナムの地主制度に干渉したのは共産主義勢力の台頭を緩和させるためで、

 軍事力を背景にした検地が強行され、地主領が解体されていく、

 日本軍は、ベトナム小作人にとって解放軍であり、

 地主にとって、日本軍は凶悪な簒奪軍とみられた。

 日本軍将校たち

 「調子は?」

 「まずまずですよ」

 「水路に沿って口分田式に小作人連中に農地を割り振ってます」

 「日本でも同じことができるかね」

 「さぁ 半島と大陸移民で小作人が減ってますからね」

 「地主も耕作できない土地を抱え込んでも税金が高く取られるだけだ」

 「まぁ 農地解放のチャンスと言えばチャンスでしょうが」

 「ベトナムで成功すれば次は日本らしい」

 「小作人不足と税金対策を考えるなら地主の抵抗も少ないはずだ・・・」

 ベトナム人がお辞儀していく、

 「ん? ベトナムにお辞儀の習慣があったか?」

 「最近、覚えたんだろう。時々されるよ」

 「ふ〜ん、ほかの地域でも農地解放してみるか」

 「どうだろうね。有力者の基盤を壊しても恨まれるだけだし」

 「財閥、地主、富裕層を潰しておく方が資本集約を潰せて、近代化が遅れていいんだよ」

 「まぁ 余剰資本で独立運動を画策したり、民族資本を集めて近代化する国もあるからね」

 「小作人にとっては解放軍じゃないか」

 「まぁ 農地解放させた後、東南アジアから撤収するのも悪くないかもね」

 

 

 日本

 喫茶店 その一

 「戦争が終わると国民が不抜け出していかん」

 「互いに協力し合うことより、蹴落とし合いが始まってる」

 「戦争中は、もっと挙国一致で結束したいたものだ」

 「是非協力させて欲しいニダ」

 「もう、日本人は頼りにならんわい」

 

 

 喫茶店 その二

 「戦争が終わったというのに軍属は我田引水で軍拡ばかり」

 「これから自由と平和な社会を作りたというのに」

 「どうにかならないかしら」

 「是非協力させて欲しいニダ」

 「もう、日本人は頼りにならないわ」

 

 

 関係者たちが建設現場を見上げていた。

 「君、仕事は慣れたかね」

 「え、ええ、軍隊と違って上官のリンチがないですし、こっちが楽ですよ」

 青年は角材を持ちあげると駆けていく、

 「・・・どこもかしこも工事ラッシュか」

 「意外と戦争後遺症が無いな」

 「むしろ、気抜けしてるのはクビになった士官以上でしょう」

 「未来の情報があると失敗を回避できて便利だよ」

 「別の失敗をしそうだけどな」

 「在日が少ないと設備投資と公共投資で無理が利かない」

 「領土は拡大してるから愛国心と少し金を上乗せすれば日本人は動くだろう」

 「在日を利用して調整したがる利権構造も少ない」

 「当然、右翼と左翼も在日を利用して勢力を伸ばすこと出来ないし」

 「在日の軒下を貸して右翼左翼の母屋を乗っ取られることもない」

 「右翼と左翼に成り済ました在日が力を得ると愛国と平和で揺さぶりを掛けて収益を上げ」

 「中道層を占めるほとんどの日本人は敵だからな。潰しにかかる」

 「彼らがいても賭博とエロで日本人の正気を失わせるか」

 「外国勢力情報を流して工作員になるし」

 「日本を暴走させるか、侵略者の汚名を被せて自虐させて喜ぶだけだ」

 「露鳳の情報によると、負けた後の日本は悲惨ですな」

 「愛国の右翼と平和の左翼が、組織と利権の拡大のため在日に国を売り渡すから呆れるし」

 「政治家でさえ、大多数の静かな支持者を信じず」

 「少数派で煩いだけの非支持者に金を渡すのだからな・・・」

 「まぁ 人間のエゴの発露ってやつでしょう」

 「と言っても民族的に島国根性の皮被りだから外国の支配を受けないと民族性は変わらんだろうな」

 「支配されて、いい方に変わるとは限らないでしょう」

 「まぁ それはあるが・・・」

 アメリカ製の巨大ボーリングマシーンが激しい音を立て、大地に穴を空けていく、

 穴が大きく深くなるほど建造物は大きく、頑丈に作ることができた。

 

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 医療フロア

 露鳳の医療器具と薬品の複製が作られ、

 翻訳された医学書が並べられていた。

 これだけの知識とノウハウを得るため、

 どれほどの人体実験をしてきたかわからない技術レベルだった。

 少なくとも欧米を越える医療技術があり、ノウハウがあった。

 解体した731部隊がなくてもお釣りがくるほどで、

 日本医療は飛躍的な進歩を遂げていく、

 「翻訳。まだ〜」

 「まだです」

 「なんでそんなに時間かかるかな」

 「専門用語だからです」

 「早くぅ〜」

 「自分たちで努力したらどうです?」

 「人体実験? なんか、良心が咎めるよね。あれ」

 「人体実験じゃなくても、動物実験があるでしょう」

 「だって、必死にやってもな」

 「それ以上の結果が翻訳でわかっちゃうんじゃ 萎えるよねぇ」

 「そんなの業界と若手に広めないでください。医療関係者が怠け者になりますから」

 「わかってるよ」

 「これでも病院に行くと発明発見を自画自賛に自慢しないって評判でさ」

 「尊敬の眼差しなんだからさ」

 「誰のおかげなんでしょう」

 「翻訳者様で〜す」

 「そうじゃなくて、他力本願の事を言ってるんですよ」

 「わかってるけど、あるモノは全部使わないと勿体無いでしょうが」

 「ばれないようにしてください」

 「研究過程の資料見せてくださいと言われた時は死にたくなったよ」

 「なんて答えたんです」

 「教授仲間と研究したモノでどこ行ったかわからなくなったって・・・」

 「あはははは・・・ありえねぇ〜」

 「もう、上向いて歩けねぇ」

 「あはははは・・・30近くわからない単語がある。大使館経由で聞くしかないか」

 「この前、半分近くわからなかったって聞いたけど」

 「後からできる造語ですよ。人の名前から取ったモノや原語を捻ったモノもありますから」

 「ソビエトに疑われてるよね」

 「ソビエトは仲間外れですから、欧米は気付かれ難いでしょう」

 「だといいけど・・・」

 

 

 露鳳

 軍艦でありながら政府機関・官庁・財界から技師が派遣され、

 軍人の大半は追い出されていた。

 CIC

 電子プログラム関係者は解析が進むほど一つの結論に到達していく、

 冷戦時代、ソビエトがどうやってアメリカと張り合えたのか不思議に思える、

 露鳳の電子機器のコアは全て “Made in Japan” “Made in USA” と記されていた。

 そして、有機的に連結すべき電子機器は、お粗末なプログラムに支えられている。

 一方、高級将校愛用のノートパソコンは日本製で、あっさり日本語ウィンドウズに化けてしまう。

 民生用はゴテゴテして虚飾に富み、売るための努力をしていた。

 この違いは、あまりにも大きく・・・

 「ロシア人のプログラマは納期のため徹夜したことがないのかもしれない」

 「ふっ 西側の繁栄を考えると、しょうもないプログラムのために徹夜続きだと思うね」

 「問題はコンピュータをどうするかだな」

 「結果がわかってるのなら、日本語用に新しく作ってしまう方がいいと思う」

 「機械言語から?」

 「その方が処理速度が速くなるし」

 「日本語でプログラムが組めるならプログラマー人口でも引き離せる」

 「問題は軍用と民生用かな」

 「分けるのか?」

 「分けると秘密を守り易いが、民間に負ける」

 「分けなければ秘密を守り難いが、民間の力を借りられる」

 「民生を使うとしたらプログラム構造はC++言語を使うのがいいか」

 「そうだな・・・」

 「日本語その他で3バイト分は欲しい」

 「TRONコードは150万字で、4バイトらしいけど」

 「値段が張りそうだ」

 「しかし、LSIになれば処理速度で不利にならずに済むし」

 「大陸市場を考えると多国語仕様が有利になると思うね」

 「ところでトランジスター工場は作れるって?」

 「まぁ 軍属連中がぶすくれていたけど、なんとかなりそうらしいよ」

 「結局、負けなかったのは、電子技術の差だったからね」

 「トランジスター工場が作れないと、話しにならないからな」

 「しかし、民間にお任せなのが、どうもねぇ」

 「結局、市場競争で勝ち抜いて利益を上げられない限り駄目だと思うよ」

 「アメリカにも輸出するのか」

 「トランジスターもICもアメリカに倣えだよ」

 「機密扱いでソビエト電子産業のように廃れるか」

 「首つり用の縄を売ってでも工場を大きくした日本・アメリカ産業のように自立させるかだ」

 「アメリカと同レベルで電子機器を量産して輸出したら驚くだろうな」

 

 

 

 中華民国

 封建的な軍閥集合体と

 外資系と結託したアウトローの新興シンジケートが支配する暴虐の大陸、

 国家権力機構と旧軍閥特権は、台頭する新興シンジケートにむしばまれ機能不全だった。

 社会的な有り様は、無秩序と暴力を基盤にした簒奪者たちの支配する世界か、

 国家権力と法律を基盤にした権益者たちの支配する世界かの違いでしかなく、

 実弾を使わないだけともいえる。

 そして、どちらであれ、搾取する側は人口の数パーセント台を超えることはなく、

 それを越えると文明と社会そのものが荒廃する、

 中国社会は、圧政の荒廃スレスレと、混沌の荒廃の二つの状態を延々と繰り返してきたのであるが、

 大陸シンジケートの規模は、シャバ代で収まらない規模で、生産、流通、販売、警察、行政を支配していた。

 そして、外国製品の輸出入特権を得ると資源の売却利益だけでなく、

 売れ残った外国製品を国内に流し込み、対価の国債が外国資本の名義になり、

 借款が漢民族の労働に肩代わりさせられる構造が作られていく、

 とはいえ、中国社会に雇用が作られ、店頭は物資が溢れ、

 庶民は、清国末期・内戦・戦争中より生きやすかった。

 

 シンジケートは、弱小組織から成り上がるためアヘンに手を出すのであって、

 アヘンが経済基盤を潰してしまうことを知っていた。

 そして、シンジケートがある程度大きくなると

 労働の対価で安定した収入を得ようとアヘン流入を自制していく、

 これは真っ当な国家の発想で、大陸シンジケートの規模と利権が寄生虫を超えたことを意味していた。

 シンジケートが戦う相手は庶民というより、

 正当な権力機構である中華民国と、競合するシンジケートであり、

 当然、収入と直結する縄張り争いは命懸けで血で血を洗う。

 中華民国のあらゆる場所で銃撃戦が行われ、

 銃撃戦が終わったのち、

 中華民国警察が遅まきながら現れる。

 これは中華民国警察がシンジケートの身内で

 国家の体面とシンジケートの私腹の妥協で “遅れる” 選択がなされただけに過ぎない、

 欧米列強と日本でも清濁癒着は起こりえることではあるが、

 企業とアウトローの関係はここまで密接ではなく、

 国家権力との癒着も、ここまであからさまではなかった。

 大多数の庶民は、国家とシンジケートに二重に搾取され、

 中華民国の予算は、国民総生産に比べ微々たるほどしかなく、

 シンジケートに食い荒らされた残りかすだった。

 さらに予算を公共設備に投資すると、それもシンジケートが喰い漁っていく、

 とはいえ、モラルの高さと合法性の格差の違いを除くなら中華民国も、ほかの国々と形が同じもので、

 日本政府と特定産業の関係と、どこが違うのかでいうと、秩序とモラルだけだった。

 中華民国大統領官邸

 執務室に煙が立ち籠もっていた。

 シンジケートに軍と警察の手足をもぎ取られた国家機関ほどみじめなモノはない、

 綺麗ごとな政府の命令は、途中から消えるか歪められてしまう。

 挙げられてくる報告者は、埒もつかない事後報告か要望書でサインするよりない・・・

 「日本は、なぜ負けなかったある」

 「露鳳の知識ある」

 「露鳳とはなにある」

 「巨大な軍艦ある」

 「どこから来たある」

 「まだわからないある」

 「未来の兵器と知識かもしれないある」

 「それで日本は変わったある」

 「変わったのは軍部の一極集中から産業の一極集中で、見かけだけある」

 「日本人は漢民族より秩序があり、保守が穏健なことだけある」

 「人間の基本的な精神構造と中身は変わらないある」

 「日本の国家中枢と省庁組織は我田引水に予算を欲しがるある」

 「膨れ上がる組織は自己増殖を繰り返し、癌化するある」

 「予算特権を受けられなくなると日本政府を誹謗中傷し脅迫し罵倒し倒閣させるある」

 「軍部が軍票で庶民から金を徴収したように中枢組織も勝手に集金ある」

 「中枢組織の聖域化と黒幕と院政の始まりある」

 「妻が家長の不出来と不能をなじりながら、子供の教育費を使い込み」

 「家長に黙って勝手に借金してる光景ある」

 「それが日本の行きつく未来ある」

 「「「・・・・」」」 にやにや

 日本人が執務室に入ると

 「わぁ!」

 驚く、

 「げほん! げほん! げほん! 酷いな。空気を入れ替えろよ」

 日本人が執務室の窓を開けると

 「んん〜♪・・・」

 黄砂交じりの風に煙草の煙が流され、

 バタンッ!

 「なんなんだ。内も外も・・・」

 「・・・日本人のせいで、まともな政治ができないある」

 「独裁政治すると民衆が反感持つし、民意も多少入れないと」

 「外資マフィアの何が民意あるか。我々は、ただの神輿ある」

 「任せるところは任せないと、何でもかんでも圧政支配するわけにもいかないでしょう」

 「日本の大臣だって、ここまでお飾りじゃないある」

 「日本の大臣だって、ななかな官僚のクビを切れないよ」

 「日本人は波風立てたくなくて切りたくないだけある」

 「我々は切らなくてはならないのに切れず、切りたくても切れないある」

 「それに日本官僚は学閥ある。マフィアの背景がないある」

 「中国官僚は外資マフィアの代理人で天と地ほど違うある」

 「暴力か・・・」

 「コネが無くても勉強ができなくても知恵が回って腹が座っていたら成り上がれる」

 「暴力は識字率の低い漢民族の希望でしょう」

 「文明的じゃないある」

 「だったら、もっと漢字をわかりやすくして、庶民の識字率を上げるべきでしょう」

 「庶民に知恵を付けると権力が脅かされるある」

 「旧軍閥はそうかもしれませんが」

 「シンジケートは商品の利潤を大きくしたがってますからね」

 「外資シンジケートなんか滅びてしまえばいいある」

 「日系資源シンジケートはどちらでもいいですよ」

 「開発収益で成り立ってますから不便ですが識字率に頼ってませんし」

 「・・・サインしたある」

 「助かります」

 「どうして、この土地に鉱山があるとわかるあるか?」

 「企業秘密でしょう」

 「もういいある。利権が折半ならどうでもいいある・・・」

 「煙草はほどほどに・・・」

 大統領は5本加えて火を付け、煙を出してみせた。

 「「・・・・・」」

 

 

 

 満州帝国

 国境の手前も後ろも同じような青々とした大自然だけが広がる、

 ウスリー川は300mほどの川幅を作って南に流れ、

 対岸の東は、ソビエト沿海州が広がっていた。

 釣竿をたらせばサケ、マス、チョウザメなどの釣果が見込め、

 休日を貰った将兵は手近な街に繰り出すか、釣りを楽しんだ。

 川は11月頃から凍結し、4月頃まで氷は溶けず、

 川を挟んだ中央で赤い線が敷かれてるわけではなく、

 雪が降れば大地は白銀に覆われ、国境線を隠してしまう。

 極東ソビエト軍は増強されつつあるものの、

 いまのところ緊張関係になく、至って静かに思えた。

 地対地ロケットの精度と射程が伸びると虎頭要塞の存在価値は低下し、

 いまでは、贅沢な国境警備隊駐屯地でしかない、

 「本隊はずいぶん後方に下がっちゃったな」

 「先制攻撃に対処するためだろう」

 「俺たちは時間稼ぎも出来ない」

 「戦車くらい配備して欲しいな」

 「まったくだ」

 

 

 ハルピン

 関東軍は長大な満州帝国国境線(4500km)を支えられない。

 満州帝国の防衛計画が侵攻を許さない戦線防衛から

 山道と都市防衛を盾にした機動防御に移行するのは戦力差の必然で、年月を必要としなかった。

 チチハル、ハルビン、新京、奉天、大興、吉林、竜鳳、山海関、通河の

 9都市が幅100m深さ100mの巨大な堀と土塁に囲まれる事になったのも

 内陸に入ったことで開戦と同時の先制攻撃を受けずに済むこと、

 防衛線が約半分(2000km)で済ませられ、都市市民を徴兵しやすく、兵力不足を補えるためだった。

 一つの都市は数年間持ち堪えられるだけの備蓄があり、抗堪力も期待された。

 土木作業は建設機械と人海戦術でなされ、雇用対策にもなった。

 そして、防衛力の向上は日本人の移民を足し、

 中枢となる日本人が増えると満州帝国行政の安定にもつながっていく、

 赤ちょうちんの日本軍将校たち

 「新型戦車配備されないのかな」

 「まともな戦車がないなんて近代国家とは言えないよ」

 「問題は漢民族がソビエト軍に対し、銃口を向けるかどうかなんだけどね」

 「漢民族の共産主義者も少なくないし、むしろ、日本人に銃口を向けそう」

 「ソビエト軍将兵は強姦魔だから、男は戦うだろう」

 「男日照りの主婦が・・・」

 「ソビエト軍将兵が狙うのは若い娘で、主婦は相手にしない」

 「むしろ一度、満州を占領させて、色白な娘が生まれるのを・・・」

 「あはははは・・・」

 「実をいうとソビエト側も似たような悩みを抱えているらしい」

 「そうなの?」

 「日本人が極東ソビエト軍を買収したらどうしよう。ってね」

 「あはははは・・・」

 「だから互いに相手国を不信させ、敵と認識させて内通を防ぐしかないわけだ」

 「やれやれだな」

 「基本的に先制攻撃で外征できる国家は少ない」

 「内政破綻、財政破綻で不満を抱えてる国民が多いと暴動になったり」

 「倒閣か内戦になる」

 「それで、一旦、既得権を破壊して新規まき直しするか」

 「権力構造の安泰を賭け、一発逆転で仮想敵に戦争を仕掛けるか」

 「といっても、将兵に引金を引かせることができたとしても」

 「庶民にすれば内政の失態を仮想敵に責任転嫁して誤魔化してるプロパガンダは見え見えだし」

 「戦意は別の問題で、下手に外征させて攻勢が頓挫すれば軍崩壊にもつながりかねないし」

 「そうなると自分の地位の失墜にもつながる」

 「今回の日本は、かなり危なかったが露鳳のおかげで戦線を維持できたし」

 「支配地を確保して内政の軋轢を分散できた」

 「ドサクサに紛れて朝鮮人を強制移民させることもできて」

 「国際情勢の安定を理由にした軍縮も上手く誤魔化せた」

 「徴兵は人気なかったからね」

 「しかし、精神論者っていうのは、どうして、ああも馬鹿なんだろうね」

 「大和が工作機械で作られたって、知ってるんだろうか」

 「露鳳みたいに愛国心で飛んできたと思ってるんじゃないか」

 「まぁ わかっていてもさ」

 「督戦隊と囚人部隊作戦なんて、軍人やめたくなるし」

 「武器弾薬の備蓄より、軍艦の新造か、師団の新設でポストを望むからね」

 「組織依存と地位名誉財産は、人の性ってやつか」

 「地位名誉財産は内堀で、組織は外堀だろう。どっちも自分を守るための盾と矛だ」

 「中国人は唯我独尊の内堀主義で、日本人は世間体を気にする外堀主義かな」

 「中国人の識字率が向上してるのが怖い」

 「学校を作るからだろう」

 「満州帝国のお金だし、日本人のポストも増えるし、日本語習得者も増えるし・・・」

 「「「・・・・」」」 ため息

 

 

 

 蜀華合衆国

 内戦は、成都側と重慶側に分かれ膠着状態となって燻りながら終息していた。

 アメリカ軍は蜀華合衆国の自由と平和を守るためと称し、

 軍隊を駐留させたものの、蒸し暑さに辟易したのか、

 重慶の東、揚子江沿いの2000m級の山岳地に全長5km全幅5kmの巨大航空基地を建設する、

 アメリカにすれば、アジア唯一の軍事的拠点であり、

 そこを失えば、アメリカ本土に後退するか、

 東ニューギニア、あるいはアメリカ領サモアまで後退しなければならなかった。

 建設中のアメリカ軍基地

 「やれやれ、決闘で日本に負けたせいでとんでもない場所に赴任させられたものだ」

 「しかし、国民党の不正腐敗は酷過ぎる」

 「中華民国の地場シンジケートとほとんど変わらないし、守る価値があるかどうか・・・」

 「まぁ アメリカの国益だよ」

 「上海を日本に封鎖されたらおしまいだろう」

 「その時は原爆を落とす口実になるよ」

 「日本が原爆以上のもの持ってる可能性があるんじゃないか」

 「X艦のせいで、何かと気を使うな」

 

 

 ドイツ帝国のパリ

 黒白赤の三色旗と鷲の国章が至る所で翻っていた。

 ドイツ支配を受けていたとしてもエッフェル塔は高く、

 凱旋門は威風を漂わせていた。

 画家志望の青年はキャンパスに向かい、

 レストランのメニューにエスカルゴがあり、

 フランスパンが出され、ワインが飲まれていた。

 もっとも、走ってる車はドイツ車で、広告もドイツ語が増えていた。

 この時代、パリは列強の工作員が暗躍し、

 シャンゼリゼ通りのレストランで食事をしてる黄色人種がいたら日本人と思われた。

 「ドイツ帝国は、原子力潜水艦を開発してるようだ」

 「戦争に負けなかったドイツは別格だな」

 「アメリカもソビエトもドイツの技術に負うところ大だったからね」

 「日本はいまだにオリジナルのターボシャフトエンジンのレベルに達してないのに」

 「ドイツは、日本が亜流で作ったターボシャフトエンジンをモノにしてしまうし」

 「基礎工業力と社会基盤の分母が違うからね」

 「必然的に数と質で差が付いてしまうんだよ」

 「日本はまだ社会基盤と基礎工業力を育ててる途上か」

 「何にしても大型原子力潜水艦なら如何なる国とも交戦可能になるね」

 「起工はいつ頃になるって?」

 「3年後を目処にしてるらしいよ」

 「3年か・・・日本はまだだよな」

 

 

 

 朝もやの中、タグボートに押されながら捕鯨船が入港してくる。

 捕鯨母船で解体加工しつつも満載になったら島に卸し、再捕鯨に行くことが多くなった。

 この島で残りの鯨肉を捌いて加工し、

 別の船で鯨肉を日本に輸送する事も増えていた。

 捕鯨産業は南氷洋の2島の産業基盤を整えさせ、人口を増やしていた。

  

 アムステルダム島とサンポール島は、日本の監視基地が残っていたことから

 戦後、日本領として残され、

 そのまま、日本の捕鯨と日独間定期船の寄港地とり、

 南極観測の基地にされていた。

 サンポール島の直径1kmほどの湾は浚渫されて港湾施設が整備され、

 全長3kmの滑走路が建設されていく、

 関係者たち

 「南極用の基地ならラバウル港にでも置けばいいのに」

 「アムステルダム島は南緯37度49分。サンポール島は南緯38度49分」

 「南緯40度を越えると暴風雨と時化の嵐だから、この島がギリギリになる」

 「南に3500km飛ぶと南極だから、どうしても基地にしたかったんだろう」

 「政府は南極大陸を占領する気かな」

 「まさか。ただ、ほかの国に出遅れたくないだけでしょう」

 「それにしちゃ 本格的な滑走路じゃないか」

 「やはり日独連絡のための島が大きいのかな」

 「日本じゃ農地と農産物が増えて」

 「満州帝国じゃ牧畜業が増えてるのに捕鯨産業を押してると思ったら・・・」

 「鯨肉だって需要は悪くないさ」

 「そのうち牛肉を売りたいアメリカが捕鯨反対を言いだすかも」

 「ふっ その頃には満州の畜産業が軌道に乗ってると思うね」

 「政府は、畜産より農業に力を入れたがってるらしいけど」

 「なんで? 肉美味しいだろう」

 「アメリカとの交易を維持する方が国益らしい」

 「国益ねぇ」

 「そういえば、アメリカが儒陀と協定を結んだとか、結んでないとか」

 「噂だけは、尾鰭をつけて大きくなりますからね」

 「仕事じゃなかったら三日と居たくないですよ」

 「しかし、儒陀がアメリカから武器を買い始めたのは本当らしいぞ」

 「日本が儒陀と手を切れるのなら嬉しいような気もしますよ」

 「義理とか人情で支援していた部分もありますからね」

 「儒陀が艦隊を持ったら、こっちに圧力をかけてきそうだな」

 「そういうのは、あるかもしれませんね・・・」

 「そろそろ、始まりますよ」

 カウントダウンが近付くにつれ、

 ゴーグルを付けた人々の視線は、水平線の先に向けられていく、

 最終確認で船舶の有無が確認され、

 カウントダウンゼロで水平線上に光球が広がり、

 閃光が輝き、対照的に空と海を暗く染めていく、

 日本が原子爆弾を開発し日本が核の傘に守られていることが世界中に伝わる、

 「・・・使いたくないね」

 「だよね」

 

 

 

 インド

 儒陀の木工場

 インドのチャイカップが紙に包まれ、箱詰めにされていく、

 素焼きの歪なカップは、インド侵攻時に発見され、日本に輸出されていた。

 「・・・あのう、箱は精確に正四角形にしないと蓋をするときに困るから」

 「全然困らないニダ」

 「間違いじゃない方に回すだけで、ぴったり合うニダ」

 「いや、どの方向でも一回で蓋できるように精確に正四角形にして欲しいんだけど」

 「ケンチャナニダ」

 「いや、だから・・・」

 「ケンチャナニダ!!」

 「・・・・・」

 「日本人は小心で細か過ぎるニダ」

 「・・・・・」

 

 

 儒陀空軍基地

 アメリカからサンダーボルトが納品されると、

 寄贈され運用されていた隼戦闘機3型が滑走路脇に捨て置かれてしまう、

 なぜサンダーボルトになったかというと、

 日本軍将校が “整備しやすい空冷がいいと思う” と助言したからだと言われる。

 なにはともあれ、軽量級の隼から重量級のサンダーボルトになったのだからこれまでと扱いが違う、

 離着陸距離は伸び、離着陸速度も変わる。

 十分な速度に達することなくスロットルレバーを引き上げられた機体は失速し、

 もんどりうって引っくり返った。

 そして、着陸速度が低過ぎて揚力を保てず、こちらも失速して落ちてしまう。

 ムスタングが良かったかもしれない、といった様々な思惑がからみながらも、

 サンダーボルト戦闘機は増え、

 後に追加納品されたA1スカイレイダー爆撃機と合わせて、儒陀空軍の一翼を担い、

 アメリカと儒陀の軍事同盟は強化されいく、

 

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「発電所と港湾施設と造船所と鉄道と製鉄所と学校はまだニダか?」

 「ぎ、技術を持ってる者が少ないニダ」

 「あっても運用ノウハウのわかる者が少ないニダ」

 「なぜニダ。半島にはあったニダ。動いてたニダ」

 「に、日本人が作ったニダ。日本人がやってたニダ」

 「違うニダ。日本人が儒陀民族から技術と運用を奪ったニダ」

 「だから技術が無いニダ。だから運用する者がいないニダ」

 「日本に技術を持つ者と運用できる儒陀民族の返還を要求するニダ」

 「日本に残ってるのは日本生まれの日本人育ちか。日本人と結婚してる者くらいニダ」

 「それか日本に密入国した儒陀人ニダ」

 「違うニダ。優秀な儒陀民族を日本人が奪ったニダ」

 「きっと日本に強制連行されたニダ」

 「儒陀人の返還を要求するニダ」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 まぁ 戦後の厭戦はもうしばらく続くと思います。

 少しくらい隙があっても戦争仕掛けられるなんてことはないでしょう。

 た・ぶ・ん

 

 

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第12話 1952 『軍艦つくりてぇ!』

第13話 1953 『富国強産』
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