タイムスリップ系架空戦記
『時空巡洋艦 露鳳』
第14話 1954 『・・・・の予感』
土地の収用が進むと設備投資が始まる、
水力発電の建設と竜鳳油田を利用した火力発電の建設が増え、
発電の増大は工業力を増大させ、
新幹線の建設は列島だけでなく、
扶桑(朝鮮)半島から満州帝国まで伸びていこうとしていた。
道路の舗装が進み、コンクリートが都市を作り変えていく、
てんとうむしに似た日本製大衆車が量産されて一般家庭の足になり、
日本の工業化は工業規格化と海外貿易の黒字利益増大に比例して進み、
満州の資源と大陸シンジケート利権は、金本位制の廃止を可能にし、
1ドル=100円体制を維持し、国民総生産は膨れ上がっていく、
露鳳の未来情報、コンピュータ、技術がどの程度役立ったのか定かではない、
しかし、日本帝国は危機回避を行い、
幾つかの素材で躍進的な進歩を遂げ、
列強に並ぶ高度な機械設計が可能になっていた。
某工場
立体の合金インゴットが切削油に晒されながら工作機械によって削られていく、
工作機械の能力が高ければ強い合金インゴットが基盤になり、
工作機械の能力が低ければ脆い合金インゴットが基盤にならざるを得ない、
工作機械に無理をさせ、TV3-117ターボシャフトエンジンの耐久年数を伸ばすか、
工作機械を採算ぎりぎりの素材で、
TV3-117ターボシャフトエンジンの耐久年数が短くなるか、
二者選択が強いられる。
工作機械の精度は高くなり、
素材となる合金インゴットは、オリジナルに近いものになっていた。
関係者たち
「この調子でリューリカ=サトゥールンAL31(Su27)エンジン」
「クリーモフRD33(MiG29)エンジンも製造して欲しいものだな」
「あんないい加減なマニュアル図じゃまともなエンジンは作れませんよ」
「自動車産業で大量生産で利益を上げながら工作機械の精度を上げていく方がいいのでは?」
「ああだこうだ言いながら予算増加要求じゃないか」
「試作はともかく、生産の段階になると5軸MC制御じゃないと」
「その上、チタン加工なんて、脳みそが膿んでるとしか思えません」
「工場が火事になったらどうするんです」
「チタンだから大丈夫だろう」
「はぁ? もういいです・・・予算さえ出してもらえれば」
「・・・・」
科学技術は需要と産業基盤に比例して大きくなっていく、
無理をして大和を建造しても国力を擦り減らすだけであり、
維持することすら困難となってしまう。
それは、素材であれ小さな電子部品であれ、同じだった。
無理な公共投資では需要が足りず、失速してしまうのである。
歯舞諸島 水晶島
政府と軍は島民を追い出したのち新兵器の実験場を作っていた。
補正と修正など基本設計が定まるまでレベルの低い素材で作り、
量産型で高品質の素材に切り替える、
そういった生産方式は珍しくない、
元来、試作機は性能が低いモノといえた。
瑞燕(MiG29K)の試作機が滑走して離陸すると歓声が上がる、
着陸すると耐久寿命の短いエンジン回りが調べられ、
パイロット同士は飛行特性を確認し、
技術者は機体の不具合を修正していく、
電子部品はトランジスターが使われ、
初期のICも試験的に導入されつつあった。
「電子装備は、まだまだか・・・」
「おいおい、歩留まり最悪で民需優先なんだぞ」
「やっとこさ、持ってきたのに、なんてこと言いやがる」
「ふっ 露鳳みてたら不平くらい言いたくなるだろう」
「不平出すより金出せといいたい」
「民需に言ってくれ、軍はスッカラカンだ」
「日本で先行発明すればいいのに」
「そうもいかんだろう。模倣されたら生産力で引き離される」
「あんだけ金取ったのに工業力はまだ負けてるのか」
「あと20年くらい・・・」
「「「「・・・・」」」」
射撃場
新型突撃銃(6mm×45)の試射がされていた。
外観はAK74M(5.45mm×39)を大柄にしたものに近かった。
「集弾は良くなったけど、威力が弱いな」
「弱装弾だからね」
「突撃銃は基本的に携帯の小機関銃で護身用」
「目測で400m先を命中させられればいい、そういうコンセプトなんだよ」
「予算無いのに弾ばら撒いてどうする」
「そういう未来像なんだって」
「対車両は?」
「GP30グレネードランチャーとパンツァーシュレック」
「どうせ作るなら、AN94アバカン(5.45mm×39)がいいけど」
「だから精度の高いモノは作れんって」
「部品数は100以下にして欲しいね」
「無茶苦茶いうな」
「Kord重機関銃(12.7 x 108mm)とPP19Bizon(9mm×19)は?」
「ない」
「「「「・・・・」」」」
沖ノ鳥島のサンゴ礁が埋め立てられていく、
東西3km南北800mほどのサンゴ礁が埋め立てられると滑走路が建設されていく、
埋め立てられた理由は、沖ノ鳥島がマリアナと沖縄・台湾を結ぶ中継地点であったこと、
自然であることより、人が住んでいる既成事実の方が強いことが上げられた。
関係者たち
「空港を作るのはいいとして、誰が左遷させられるのかな」
「「「「・・・・」」」」
「やっぱり独身者でしょう」
「そうだよね。そうだよね」
「しかし、予算かけて、こんなの作るから軍部が剝れてるんじゃないの」
「いいよ。軍部は生産的なことなんもしないし、軍機で秘密主義だし」
「利益受けられる人限られてるし」
「満州帝国が攻撃されたら」
「漢民族を盾にして戦えって、らしい事になってるよ」
「マジで?」
「もう、1000万規模で督戦部隊と囚人部隊」
「ソビエト軍将兵の半分は一カ月で精神病院行きだと」
「まるでスターリン級だな」
「「「「・・・・」」」」
日本某所
秘密会議が開かれていた。
工程
1、開会中の国会を占拠、総選挙の実施、
2、閣僚を監禁し逃走者は射殺、
3、報道管制の実施、
4、自衛隊は中立働きかけ、
5、戒厳令を敷き臨時政府の樹立、
目標
無税 官公庁の大幅人員削減による財政収縮と公社公団の民営化
無失業 大規模な公共事業の実施による失業者吸収
無戦争 ミサイルや宇宙兵器の開発による外国からの侵略の阻止
といったクーデター計画が練られていた。
こういった計画に賛同する日本人は限られており、
真っ当な日本人でなくとも避ける、
なのでクーデターをする日本人は、極めて無謀か危ない人たちであり、
協力者は日本に恨みがある朝鮮系、台湾系、大陸系で占められていた。
「外資系シンジケートは?」
「彼らは国家を背景にしてるし日和見だよ」
「後から来ても十分に利権が得られると思ってる・・・」
「まあいい、我々の決起に合わせて、在日右翼を中心に主要機関を制圧する・・・」
「武器は?」
「大陸のシンジケートから入手できてる」
「あとは、身柄を押さえた陛下の承認を得て・・・」
「新聞社と出版社は?」
「臨時政府の正当性を上手く書くから大丈夫だろう」
「民衆を味方につけられるだろうな」
「民衆の善悪を決めてるのは我々だし、読者なんて騙してなんぼ」
「民衆なんて面白くもない事実より、脚色に富んだ嘘が好きだし」
「じゃ 取り敢えず軍は中立を守ってもらって・・・」
外が騒がしくなると、特高が室内に雪崩込んだ。
「その場を動くな。全員、国家反逆罪で逮捕する」
「「「「「・・・・・」」」」」
広大な農地が防風林と群落で区分けされながら地平線まで広がっていた。
満州帝国は、日本に政治・経済を支配された傀儡国家だった。
満州軍閥はそのまま日本軍隷下の満州帝国軍に移行していた。
いまだ満州の民族資本が育っていなかったことから工業力を育てられず、
独自の兵器体系を構築することもできない、
そして、満州帝国の基幹産業は日本資本が握っていたことから日本軍の兵装が使われていた。
日本が満州の農地解放に乗り出したのは、満州の民族資本を潰すためであり、
満州の軍閥資産となる基盤が解体されていく、
満州の国民総生産は日本資本を中心に急速に増大し、
都市部を中心に国民服は隅に追いやられ、
衣食住は種類を増し華やかな社会が作られていた。
もっとも、農村部の日本の開拓団は匪賊の恐怖と極東ソビエト軍の脅威に備え、
同心円状に家屋を並べ、堀と塀と壁を作り、
武装することで自衛手段を高めていた。
雇用増大と自衛力向上により匪賊稼業はリクスの高い賭けとなり、
匪賊の出現数も減少していく、
竜鳳油田から採掘された燃料は、広大な原野を機械で開拓させ、
それまで開拓の主力だった馬と牛は機械に変わられていく、
広大な田畑で育った穀物が収穫され、
トラックに載せられると鉄道によって半島、列島、
そして、大陸やソビエト領へと運ばれていく、
それほど収穫が大きく、満州の農業利益は莫大だった。
日本人開拓団の若者たちが射撃訓練を受けていた。
軍縮が進むと、一人当たりの兵装と装備が圧縮され潤沢になっていく、
とはいえ、小銃の命数は8000発ほどであり、1日10発撃つと1年で3650発。
3年も持たずして命数切れとなった。
それを歩兵の数で掛けるととんでもない弾薬量が消費されてしまう、
貧乏国の貧乏省の日本軍で、そんな消費が許されるはずもなく、
日本軍が命中率に拘るのも滅多に実弾演習ができないという帰結された現象に過ぎず、
というわけで通常、分解と組み立て清掃と基本動作で終始、
実弾はあまり使われず、
「「「「バン、バン」」」」 と口で言いつつ旧式小銃の寿命を伸ばし、
新型銃の更新を待つことになった。
正規軍でさえ、銃と弾薬の消費で神経質な日本軍であり、
屯田兵な開拓農民の訓練と銃と弾薬の管理はさらに厳しいといえた。
「いいか。我々は正規の軍人ではない」
「しかし、軍から武器を供与されている」
「発砲許可を受けず、勝手に発砲した場合、軍人と同様、軍法会議となる」
「そして、軍法会議で下される刑罰は軽くないからな」
「「「「はい」」」」
年間、数発ほどしか撃つことが無く、基本的な撃ち方しか教わらない、
「よし、今年の実弾演習はこれで終わりだ」
「撃った時の感覚は忘れないように」
「「「「はい」」」」
「解散!」
「「「「はい」」」」
射撃訓練が終わると青年部はパラパラと仕事に戻っていく、
「また、弾薬が変わるらしいよ」
「戦後軍縮中に装備更新は悪くないと思うけどな」
「大国ならともかく、日本の工業力はまだまだだからな」
「新型小銃は100万丁で計算してるみたいだけど」
「生産に入っても次の大戦争まで装備を更新できるか怪しいよ」
「そんなんで良くアメリカに勝てたものだ」
「だよな」
「それに変なのは、日本沖海戦とアリューシャン海戦なんて戦果だけ」
「日本海海戦の半分も詳しく書かれてないんだぜ」
「日本国民の驕り高ぶりを戒めるためらしいけど」
「まぁ 小銃より公民館作って欲しいけどね」
「あははは・・・」
延辺朝鮮族自治州は閉鎖的な区画だった。
暗い部屋に朝鮮人たちが集まっていた。
電話が鳴り・・・
「絶対愛国右翼連合ニダ」
「・・・・」
「日本軍上層部は政府の軍縮案に応じたニダか・・・」
「・・・・」
「やるニダか?」
「・・・・」
「残念ニダ」
がちゃ!
「・・・源田も根性無しある」
「三無事件と言い。最近の軍部と日本右翼はヘタレで困るニダ」
「昔は在日組も元気があって良かったニダ」
「軍縮なんて言ったら、天皇挿げ変え軍事クーデターだったニダ」
「日本の軍属右翼を騙くらかして、閔妃の復讐で天皇もやれたかもしれないニダ〜♪」
「そしたら日本内戦で自滅だったニダ〜♪」
「それが駄目でも軍属右翼と組んで中国、アメリカ相手に日本を暴走させ」
「ソビエトと戦争させて日本を滅ぼして、天皇を廃位させられたニダ」
「そしたらアメリカとソビエトと組んで日本と日本人を支配出来たニダ」
「体制反体制のどちら側にも加担して、出世するニダ」
「これが軒下借りて母屋もいただく作戦ニダ」
「しかし、わけのわからん軍艦のせいで全部駄目になったニダ」
「そして、半島の兄弟はインドに行きニダ・・・」
「組長。軍国事大も難しく、平和事大も難しいとなると・・・」
「やはり、延辺朝鮮族自治州80万人では弱過ぎるニダ」
「半島の朝鮮人がおらず経済的な背景が無いと辛いニダ」
「日本軍部と組む事大主義では限界があるニダ」
「もっと平和団体を盛りたてたらいいのでは?」
「お金に余裕ができたら右翼系と左翼系のマスメディアを買収して日本人を躍らせて見せるニダ」
「楽しいニダ」
「でも、やり過ぎると日本の特高に殺されるニダ」
「あいつら人でなしニダ」
「朝鮮人は、軍属右翼か、平和団体に保護されてないと生きていけないニダ」
「あいつら馬鹿だから愛国心や平和を叫べば勢力拡大のため味方と思うニダ」
「本当は仇国心しかないニダ」
「馬鹿な軍属を煽って、もう一回、太平洋戦争を起こさせるニダ」
「そして、今度こそ、天皇と日本民族は終わりニダ」
「・・・組長。インドの兄弟が会見したいと」
・・・・・・
・・・・
「頼みがあるニダ」
「なにニダ?」
「ヤクザとH映画を作って欲しいニダ」
「なぜニダ」
「インド人にヤクザがどういうものか知って欲しいニダ」
「H映画は?」
「2本立てで金になるニダ」
「面倒ニダ」
「インド人はヤクザがどういうものかわからないと入り難いし、教育が大変ニダ」
「同和啓蒙用の日本映画のならあるニダ」
「日本人が集約だとダリットが共感がわかないニダ。ダリットでやって欲しいニダ」
「自分のところでやればいいニダ」
「金は払うニダ」
「わかったニダ」
日本圏に残留した延辺朝鮮族自治州朝鮮人は近代化に成功しつつあり、
同和と組めたことで幾つかの技術とノウハウを持っていた。
日本海軍は予算不足のため実質開店休業中となっており、
まともに動いてる軍艦は駆逐艦以下だった。
大型艦艇の記念艦化とモスボール化が取りざたされていた。
また陸軍も装備の更新がままならず、
クーデター未遂事件のせいか、実質、軍縮になっていた。
国会
“総理。列強各国は軍事力を強めておるように思えます”
“現状戦力で日本の国防は可能なのでしょうか?”
“総理大臣”
“ええ、国防は近隣諸国との国際関係の中で相対的なモノであり”
“総力戦の時代にあっては戦力比だけで語られるモノではありません”
“国力と資源、外交戦略など含め、包括的な視野に立たなければならず”
“利害関係で失敗すれば世界中を敵に回しかねない事態も起こりえるのです”
“先ほど列強が軍事力を強めてると言われましたが”
“国力の応じた軍備の更新がなされているだけで、危険な兆候はないと思われます”
“戦後、7年ほどですが国際情勢は厭戦機運が高く”
“列強各国とも戦力より国力の増強に務めており”
“日本だけが勇み足で軍事力を突出させますと”
“国際緊張を無駄に高め”
“日本は国力で不利な状況下で軍拡競争に追い立てられるのは必至であります”
“そういう状況になりますと国民の皆様方の負担は大きくなりますし”
“国際緊張低減が引き金となって、特定利権業者の収益が落ちたとしても”
“膠着した価値観と組織体系に縛られて民需転換を怠ったことで競争力を喪失しためであり”
“不自然に危機感を煽って私腹を肥やすべき時勢ではないのであり”
“ここは、忍従しつつ国の発展に人事を尽くすべきだと思うわけです・・・”
国会答弁には幾つか決まりごとがあった。
最大は、与野党とも共通して、露鳳の不問だった。
弥生(ニューブリテン)島、飛鳥(ニューアイルランド)島、端花(ブーゲンビル)島
しがらみが少なく、軍主導で行った区画整理は合理的なのか入植者は増えていた。
田畑だけでなく、
ココナッツ、サツマイモ、バナナ、ヤムイモ、
コーヒー、カカオ、コプラの大規模栽培が広がり
農業移民が進むと工業化も進む。
ヘリによる空輸と開発は成果を収め、小型発電ダムが建設され、
電灯の数は毎年増え、工場の建設も進んでいた。
「94年にタブルブル火山とブルカン火山が大噴火するって?」
「らしいね」
「ラバウル港は良港なんだぞ」
「火山でできた良港だよ」
「じゃ もっと南に入植地を広げないとまずいのか」
「むしろ、西の大きな湾を開発した方がいいかもしれないな」
「また開発に金のかかりそうな・・・」
「しょうがないよ。まぁ 平和ないまのうちにやっちまえと言えなくもないね」
「偉く余裕じゃないか」
「というより軍事的に回復させる戦力ないから自分で守れという・・・」
「また棄民政策か」
「日本の最前線は満州だし」
「南洋を開発してしまえば、こっちが高みの見物する側になるじゃないか」
「だといいけど・・・」
中国大陸
外資系企業と組む匪賊がシンジケートを作り勢力を拡大していく、
匪賊は利己主義と仇国心しかなく、金をくれる組織に味方した。
大陸南部の高山域にドイツ系東欧シンジケートが根を張っていく、
中国大陸の統一国家が最も怖い列強は、利権が脅かされない限り、
侵入を妨げることはなく、
利権が脅かされ抗争になった時、争うのは匪賊同士であり、
列強マフィアが直接出てくるとしたら最終局面だった。
アメリカ系ホテル
「これが品種改良されたトウモロコシあるか」
「ああ、これで我々のシンジケートは、食糧で差を付けることができるだろう」
「やるある」
「それで・・・」
「これある」
宝箱が白人に渡される。
アメリカ製のモノが流れ込み交換の金銀財宝がアメリカへと流れていく、
国家が機能していたらこのようなことはない、
しかし、シンジケートが国家機能の一部を肩代わりしていたら可能だった。
「ところで日本のX艦の調査は?」
「いままでで分かったことは、一回限りの現象で、その後、接触がないことある」
封筒が渡され、
中から空母バクーとカモフKa31、カモフKa54の写真が出てくる。
「ほかには?」
「来月、日本海軍は、もう一度、例の海底を漁るある」
「そうか・・・・」
礼金の封筒が渡される。
大陸匪賊会議
「資源基盤は日本資本ある」
「アメリカ系は医療と自動車が強いある」
「ドイツ系は東欧人を利用して巻き返しある怖いある」
「怖いのはロシア系ある。あいつら残虐過ぎるある」
「イタリア系の結束力とえげつなさも強いある」
「イギリス系は香港を中心に北上してるある」
「地場系マフィアも強いある」
「地場マフィアは駄目ある。我々は売国扱いされて一族皆殺しある」
「我々は結束し、中華民国を滅ぼしてでも天下を取るしかないある」
「一番チョロそうなのは日本シンジケートある」
「日本を勝たせて、全部奪えばいいある」
「逆にイタリアマフィアとロシアマフィアは駄目ある、引金引く時、躊躇しないある」
「人として完全に壊れてるある」
「きっと黄色人を家畜と思ってるある。白人は危険ある」
「しかし、地場マフィアより100倍益しある」
「「「「・・・」」」」
そう、大陸はギブ&テイクの社会であり、
それは愛国心より上だった。
大東亜共栄圏
その国は、産業革命未満の封建社会でありながら独立を保った王国だった。
タイは日本と協力しつつ連合国とも連絡を取り合い、
戦後も日本との同盟を維持したまま、
連合国側とも一定の距離を保ち続けることができた強かな王国であり、
大東亜共栄圏で日本軍が駐留していない唯一の国だった。
タイ王国領海は820t級丙型海防艦が艦隊を組んで遊弋し、
1530t級松型駆逐艦の配備も進みつつあった。
バンコク
日本と欧米の資本が進出し、近代化の兆しが見られていた。
迎賓館
「日本が大東亜共栄圏で行ってる干渉は、一方的じゃないのかね」
「干渉?」
「農地解放ですよ」
「反共の一環ですよ」
「共産主義者が革命勢力を結集する前に上から農地解放してしまう」
「日本は、タイ王国の内政に干渉するつもりはない」
「だがタイ王国国民の一部は、日本と組んで農地解放を画策してる」
「タイ王国の権力機構を切り崩そうとしてるのではないのですか」
「タイ王国は独立国ですよ」
「日本はタイ王国の農業問題に干渉する気はないので安心してください」
「本当でしょうな」
「日本は利権の強い独立国の民族資本を切り崩し、近代化を遅らせたいと思ってるだけですし」
「既に独立国家であるタイ王国に野心などあるわけがない」
「だといいのですが日本でも農地改革を行ってると聞いてます」
「日本はソビエトと国境を接してますし、ソビエトが近いですからね」
「日本の場合、産業革命が軌道に乗ってますし」
「独善的な大地主より法規制しやすい企業を中心が統治しやすいですからね」
「国内の貧富の格差が広がり過ぎたようですし」
「まぁ 農地解放は生産効率で問題になりますが」
「軋轢を解消するためのガス抜きですよ」
「企業なら実力主義と能力主義を取り入れやすいですし」
「人材も有効活用しやすいのです」
「そういうことなら・・・」
大東亜共栄圏全域で、日本軍が地主から土地を奪い、
小作人に分配し農地解放を進めていく、
農地解放軍を気取った富裕層潰し、民族資本潰しであり、
近代化を抑制するための名目に過ぎなかった。
とはいえ、大多数の小作人を味方につけた日本軍は発言力を増し、
駐留軍残留の実質的な支持基盤と名目を得ることになった。
アメリカ合衆国
ジェット機は第2世代に移行していた。
制空戦闘機 F100スーパーセイバー
迎撃機 F102デルタダガー
軽戦闘機 F104スターファイター
戦闘爆撃機 F105サンダーチーフ
この時期次々と思考錯誤しながら開発される戦闘機群は、戦訓が求められていた。
結局、スペックで優劣がわかっても、戦わせない限り実証されない、
アメリカ空軍の人たち
「ドイツとソビエトはジェット戦闘機を主力に戦力を整えてきてるが」
「日本はドイツ製ジェットエンジンを改良して、機体は間に合わせで作ってる節があるな」
「公共事業と軍縮でそれどころじゃないというところか」
「X艦が無ければ突っ込みどころだがな」
「いや、日本も原子爆弾を開発した事だし、攻撃対象から外したいね」
「それは言えなくもない」
M48戦車が群れをなして疾走していく、
戦線に送り込める物量差、戦力差が戦場を支配する。
戦争を兵器性能だけで考える将校は少数派だった。
しかし、兵器の性能差と練度差が戦力差を覆し、
一つの戦いの帰趨を変えてしまうことがある。
そう、合理性を追求するアメリカ軍将校が合理性を疑わされる経験をし、
その存在に悩まされる、
蒼い空をホバリングするシコルスキーS58は見た目でヘリコプターに見える。
全長14.25m×主回転翼直径17.07m×全高4.85m
重量3754kg/全備重量5900kg 出力700HP×1
超過禁止速度198km/h 巡航速度157km/h 航続距離450km
素人ならアメリカはヘリコプターで日本に追いついたと喜ぶだろう。
スペックがわかる者なら舌打ちし、
日本沖海戦とアリューシャン海戦の生き残りなら目の前が真っ青になる、
そして、ここにいる将校の半分は、一つ、あるいは二つの海戦の生き残りだった。
「これでは、オリジナルどころか、モドキにすら劣る」
「財界は採算効率で、間に合わせの部品で開発してるんじゃないだろうな」
「ま、まさか・・・」
「開発陣がシエスタ取ってるとしか思えん」
「そんな・・・」
「ヘリコプターは戦争の主戦力ではない」
「しかし、日本のヘリコプターは、海戦の雌雄を決するだけの性能を発揮した」
「これがどういうことかわかるか?」
「は、はぁ・・・」
「それが一つの兵器であれ、他の列強を圧倒的に引き離していたら交戦不可だ」
「これでは空輸するだけのヘリコプターじゃないか」
「ま、まずは段階を踏まないと」
「それで量産ベースで利益を上げてか?」
「ま、まぁ き、企業ですから・・・」
「とにかく、もっとましなヘリコプターを作れ」
「レーダーを装備して、1t爆弾を載せて250km/hで飛べるくらいだ」
「そんな無茶な・・・」
「「「「・・・・」」」」 ギロッ!
3520t級原子力潜水艦ノーチラス
原子力機関の優位性を最も発揮できる艦艇は潜水艦だった。
艦橋
「20隻もあればハワイを海上封鎖できるんだがな」
「実験艦ですし、対日戦の予定はまだなさそうですが」
「ちっ 戦争で負けて引き籠もりなのが面白くない」
「中国大陸で、いい思いしてるみたいですよ」
「非合法過ぎて、関わりたくないね」
「一応、中国の法人に投資してる形みたいですけど」
「法人? 無法組織だろう」
「配当はいいみたいですけど」
「そりゃ いいだろうよ」
インド大陸にハングルの看板が並び、儒陀系社会が作られていく、
親分子分と兄弟仁義の任侠道は儒陀特有の主従関係といえた。
そして、インド社会全般から忌み嫌われる儒陀民族と組むインド人も現れる。
それがダリットと呼ばれる最下層の人々で、
日本だと同和(エタ・ヒエ)な人たちに当たる。
彼らの手口はいつも同じであり、
戦前あまり話題に上らなかった同和を一気に表に焙り出し、
差別に晒させた張本人であり、在日社会は同和に手を差し伸べ、
ヤクザ社会の傘下に組み込んでいく、
マッチポンプなのだが、それと同じ光景がインド社会でも展開されていた。
社会的な軋轢と差別の対立を憎しみに変えて増長させ、
利用しながら社会の隙間に溶け込んでいく、
儒陀民族は、インド社会の底辺から勢力を伸ばし、
暴力的な裏社会を形成し、インド裏社会と抗争を繰り広げていた。
「儒陀(じゅだ)?」
「유타(ユタ)ニダ」
「ユダ?」
「ユ!! タ!! ニダ!!」
「親分子分の契りを結ぶニダ。杯ニダ」
「はい」
「「「「「・・・・・」」」」」 ごくん! ごくん!
ぽいっ!
「さ、杯を捨てるなニダ!」
チャイカップは捨てるのが常識だった。
『日本人は良かったニダ・・・』 涙々
儒陀皇帝府
ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!
ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!
ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!
「暑いニダ〜」
「儒陀人参はまだニカ」
「日本から輸入してもらってるニダ」
「早くインドでも作るニダ」
「日本人はインド産のアシュワガンダー・セキトメホオズキでもいいのではないかと」
「儒陀民族は、儒陀人参ニダ!!」
「し、しかし・・・」
「儒陀人から儒陀人参を奪った日本人に謝罪と賠償を要求するニダ」
「儒陀人参を栽培できないインド大陸とインド人に謝罪と賠償を要求するニダ」
「インドで儒陀人参の栽培を怠ったイギリス人に謝罪と賠償を要求するニダ」
「暑くて死にそうニダ」
「日本のモナカアイスが食べたいニダ」
「民族の誇りキムチアイスを開発したニダ」
「アイゴー! すぐ食べるニダ」
・・・・・・
・・・
「ま、不味いにニダ!!」
「そ、そんなことないニダ」
「不味いニダ!!!」
「それにこれは氷キムチニダ。アイスクリームじゃないニダ」
「ア、アイスクリームも難しいニダ」
「モナカアイスは、和菓子じゃないニダ」
「モナカは儒陀発祥の儒陀菓子ニダ」
「すぐ作るニダ」
「モ、モナカの皮は餅米ニダ。韓国の餅はうるち米ニダ」
「それに、モナカ作れる職人がいないニダ」
「日本人に作らせるニダ。連れてくるニダ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です
取り敢えず産業基盤と公共設備優先、
日本陸海軍はもうしばらく冷飯暮しです、
正規軍らしいまともな装備は、もう少し先の話でしょうか (笑
なんとなくクーデターモノを調べていると、
社会は、政治不信、膠着した利権と市場の潰し合いによる経済的な閉塞感、
貧富の格差は相変わらずで利己主義と拝金主義が蔓延、
少子高齢化で見通しのない未来像、
周辺国の外圧は高まり国内は内輪揉めで閉塞感一杯、
ああ、もうこの国、駄目だ〜 なんて感じですが、
世相から、あの団体、あの企業、あの国とか協力者がたくさんいそうな気配 (笑
失敗も成功も関係なく、クーデター事件を起こさせ
自滅させることが目的な勢力ですし、
短絡な人やアホな愛国自衛軍官僚が真に受けて現れなければいいかなと思ったりです。
日本以上に危機的な国もあるのに日本人より楽観的だったりなので民族的な気質でしょうか。
第14話 1954 『・・・・の予感』 |
第15話 1955 『・・・・の野望』 |