月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第19話 1959 『浸蝕 悪発症 自滅 伝染』

 蒼い空に向かって、ずんぐりむっくりな海燕(Ka31)が上昇していく、

 海燕というより熊蜂であり、ワイバーンとコード名を付けたアメリカ軍に共感する。

 積載能力が高くても美的センスで反発したくなる。

 そういうヘリなのだが世界で最も優れている事に変わりなかった。

 国防省は、アグスタウェストランドEH101を模倣した新型ヘリの開発を検討していたものの

 概略図では、開発が進むはずもなく、

 いまある機体を新素材で軽量化する方がよりベターという結論になっていた。

 X海域

 9000t級相模(さがみ)型巡洋艦

  全長190m×全幅18m×吃水6m

  M70ガスタービンエンジン(10000馬力)2基+M8KFガスタービン(45000馬力)2基

  110000馬力 速度34kt 航続距離10000km/16kt   300人

  AK100 70口径100mm単装砲2基 AK630 65口径30mmCIWS4基

  91式航空魚雷型(5.270mm×450mm)対空対潜対艦ミサイル VSLサイロ60基

  海燕(Ka31)2機

 CICルーム

 モニターのレーダーレンジがヘリの高度に合わせて広がっていく、

 他省庁とのICとトランジスターの奪い合いの結果が性能向上につながる、

 無論、それが種もみを食べてる行為に等しかったとしても、

 海軍は、露鳳のC4-ISRレゲンダ・システムとマルス・パサートの機能複製を望み、

 さらに進化した統括システムの構築を考えていた。

 ロシア語は日本語仕様に置き換えられ、精度も露鳳オリジナルに近付いていた。

 「艦長。SSN578スケートの音紋記録に成功しました」

 「そうか」

 「思ったより、調子いいようです」

 「わざわざ、向こうから出向いて来てくれるとは有り難いな」

 「味方潜水艦に当たらないようにするためとはいえ」

 「音紋を魚雷に記録させて命中させられるものなんでしょうか」

 「さぁ 実験には成功してるらしいし、技術者の言うことを真に受けるしかない」

 「とはいえ、ICが増えないと宝の持ち腐れなんだが・・・」

 「ICを取られましたか」

 「政官財とも、CADがいるとかで煩くてな」

 「設計関係ですか」

 「理屈はわかっても、現場は納得したくないものだな」

 「そうですね」

 

 

 

 満州帝国

 竜鳳(大慶)油田を中心に石油化学工場が作られていた。

 ここで作られた素材のインゴット(塊)が半島と列島に送られ、

 工場で加工され、製品として世界中に輸出されていく、

 “石造りの捨てた石が隅の頭石になった”

 “これは主がなされたことで、わたしたちの目には不思議に見える”

 棄民政策によってアメリカ合衆国が作られたように満州帝国も作られていく、

 満州帝国の日本人人口は重工業化が進むにつれ増加し、500万に膨れ上がっていた。

 満州帝国は権力構造の構築と共に法制化が進み、

 漢民族の社会資本は増え、人権と権利が徐々に強まっていた。

 

 ハルピンに46t級54式戦車が並べられ、

 戦車の数量が徐々に増えていく、

 敵対勢力に3倍攻勢以上という数的な強制を強いる要因だけでなく、

 国内事情で生産ラインが軌道に乗ったことだけでなく、

 人件費高騰もあった。

 歩兵数十人分をフル装備させると、戦車を買って、お釣りがくる給与に加え、

 戦死した場合の遺族年金、見舞金などが加わり、

 負傷した場合の治療費と負担も、いっそ死んでくれたら・・・と思うほど加算される、

 無論、生活保障は、将兵の戦意と直結してるため手抜きすることもできず、

 生活保障が過剰過ぎれば、漢民族との格差が広がって反感を買ってしまう

 という堂々巡りにもつながった。

 財政負担は、税収だけにとどまらず、

 死傷者を出した将兵の身内の厭戦と離反も含め、

 特定産業の利権すらも脅かしかねなかった。

 それなら治療費、遺族年金、見舞金を考えずに済む戦車を増やした方がよい、

 といった発想も生まれ、

 かくして、装備の近代化と正規兵の減少と督戦部隊と囚人部隊の依存は加重されていた。

 また、地の利を得るための増築工事増大も招き、

 大陸防衛は、列島・半島の日本軍と異質な戦略体系が求められた。

 そして・・・・

 ハルピンで銃撃戦が起きていた。

 大陸シンジケートの浸透に対し、満州自警団が組織され、銃の所持が認可されてしまう。

 毒を持って毒を封じるといった手合いだったものの

 正規軍は動かし難く、

 法に縛られた警察でも対処し難い相手であり、

 現状は、庶民・公僕の家族を暗に人質に取り、

 脅迫されかねない情勢が形成される予備段階といえた。

 日本の教育を受けた漢民族が浸透してくる大陸シンジケートを迎撃することで、

 満州と大陸の離反を広げるといった構想が含まれ、

 日本民族を核にした漢民族支配と反共対策のため信教の自由が認められていく、

 人種、言語、文化、歴史の違いを埋め、

 人間不信を越える共感のため宗教を利用する。

 古くからある支配の常套手段であった。

 単一民族の日本民族は、大同小異を針小棒大に拡大したとしても高が知れており、

 宗教による結束の必要性は小さかった。

 しかし、5000万も漢民族を抱え込んでは宗教的な力を意識しなければならず、

 権力と宗教が相互補完関係にあることは、歴史が証明しており、

 民族的な絆のない日漢関係を埋めるため、政府筋で宗教が研究されていた。

 某所

 「最近、法的な日漢の格差が縮まってるからな」

 「人権的な格差はしょうがないよ」

 「日本円と満州国圓で経済的格差だけは保ちたいね」

 「同じ職場で働いてるのになんで日本人だけ円なのってなるし」

 「円圓為替に気付けば、日漢の賃金格差も限界だと思うけどな」

 「だからと言って、漢民族に円を渡し過ぎるのも怖いし」

 「かといって、日本人の賃金に圓を渡しても剥くられるし」

 「だよねぇ」

 「このままだと共産主義に被れるやつも出てくるからな」

 「対共産主義的な宗教でも考えないと・・・」

 「神道ベースの教理にするか」

 「日華思想は、まずいと思うな」

 「傲慢な日本人は、有害だし。漢民族に見つかる前に殺したくなるほど虫唾が走るよ」

 「まぁ そういう日本人はいるし、下手に理論武装させると醜悪さが増すな」

 「むしろ、キリスト教の方が欧米の支持を得られるしいいと思うけど」

 「神道じゃ 駄目かな」

 「お前、神道信じてるのかよ」

 「い、いや・・・」

 「仏教は?」

 「中国仏教は日本仏教の先輩格に当たるんだけど」

 「だいたい、日本の仏教って冠婚葬祭の寄り合いでだろう」

 「教理的な争いで血を流す力はないよ」

 「取り敢えず、選民主義を排して、日漢融和を考えた宗教にしないと」

 「宗教未満で哲学でもいいんじゃないか」

 「神道ベースにキリスト教を取り入れたようなのは?」

 「教祖はどうする?」

 「教祖なんていない方がいいよな気がするね」

 「教理的な古文書をでっちあげるのは?」

 「そんな歴史。日本にあったかな」

 「むしろ、満州で発見されたことにしたら」

 「それいい」

 「そうだ。少数民族のにしよう。調べられてもわからないし」

 「「「「うんうん」」」」

 「取り敢えず、大陸少数民族出で、歴代王朝に名を残した学者が引退して残した古文書」

 「いい〜」

 「あとは、教理の一部を学校の教科書に載せる」

 「あははは・・・・」

 「じゃ 古文書作りのプロと宗教学者を探さなきゃ」

 「「「「うんうん」」」」

 日本経済は、数千万の人間を軍事力だけで押さえておけるほど豊かではなかった。

 日漢両民族を含んだ利権構造が形成され、

 民衆の福祉と公共設備と人権の保障が求められ、

 徐々に改善させられていく、

 満州帝国は、日本の内地から非人道的な社会と思われていたものの、

 相対的な比較に過ぎず、

 中華民国のシンジケート社会と比べれば満州帝国は天国に近く、

 漢民族の密入国は絶えることがなかった。

 

 

 黒竜江は国境線として価値はあったものの

 冬季になれば大河は凍り、防衛線としての意味が薄れてしまう。

 その黒竜江で護岸工事が始まる。

 端的に戦車の揚陸を防ぎ、ソビエト軍の内陸侵攻の時間稼ぎしたい思惑だったものの、

 片岸だけ護岸工事をするとどうなるかというと、

 洪水が起きた時、対岸の被害のみ増してしまう。

 そして、国境線を越えた往来を規制しやすくできた。

 満州帝国の資源、労働力、穀物は、日本経済の牽引役でもあり、

 満州帝国の安全保障の向上は、日本の満州投資を加速させる。

 日本軍将校たち

 「どうせなら、54式戦車を買えばいいのに。どうして漢民族に金を渡すかな」

 「意図的に使わせてるって気がするね」

 「公共投資の資金は日本の借金だし」

 「そういう仕組みなの?」

 「土木建築機械はタダじゃないからね」

 「満州国に借金を背負わせて、日本の利権を守らせるって事かな」

 「満州帝国軍を増強するより、ドカタで陣地構築させた方が安心だしね」

 「ついでに満州民族資本に余剰資金を作らせないで、強制的に社会資本を大衆に還元させる」

 「いや、素晴らしい善政だ」

 「嫌だねぇ 上層部の考える事って陰湿で」

 「それに雇用がある方が匪賊を押さえられるし」

 「商工業的なノウハウを身につけさせるより、ドカタで終わって欲しいしね」

 「それは言えなくもない」

 

 

 日本 首相官邸

 「総理。例のモノです」

 「おお、少年マガジンと少年サンデーか。露鳳の情報通りだな」

 「ええ、人口気薄で流通価格上乗せでしたから軌道に乗るのか不安でしたよ」

 「まぁ 沿線集約型経済になってしまうのは仕方があるまい」

 「貧富の格差は、意外と広がってないようです」

 「一人当たりの土地面積が広いからな。生産力はある」

 「おかげで製造部門は苦しいですが」

 「基幹産業に集約できるなら何とかなるだろう」

 「インスタントラーメンは大丈夫のようです」

 「それは良かった」

 「在日資本が伊勢湾付近に集まってるようです」

 「ふっ ああいう犯罪者がいないと、国民の不満が政府に来るからな」

 「適当な数でバラケていてくれた方がいいか・・・」

 「総理。アメリカから未確認飛行物体に関し、非公式に問い合わせが来てますが」

 「興味はあるけど、知らんよ。そうだろう?」

 「ええ、むしろロズウェル事件をアメリカに問い合わせたいものですね」

 「露鳳と関連性があるのだろうか」

 「わかりませんが、露鳳上空とX海域でUFOの出現が多く確認されています」

 「未確認飛行物体の特異性は、露鳳に通じるモノがあるかもしれません」

 「上手く生かせれば “不明の劣勢” を補えると思います」

 「不明か。無恥な状態がこれほど危険だとは思わなかったな」

 「未確認飛行物体からすれば、我々は道路近くの公園で遊ぶ子供か」

 「未開地の原住民のようなものでしょうか」

 「では、未開の原住民が海上に浮かぶ軍艦を見て驚くように」

 「我々も空中に浮かぶ物体を見て驚くわけか・・・」

 「読むので?」

 「責任者として、時空変化の内容を確認せねばあるまい・・・」

 

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 軍事費縮小に伴い “贅沢は敵” という標語は庶民でなく、軍内部に向けられ、

 砲口兵器の種類を最小限に、数量を最大限にといったテーゼが出来上がる。

 機能性の強化は、柔軟性と抵堪力を失う恐れがあった。

 とはいえ、定数揃えるのも困難な財政状態であるなら、無い袖は振れない。

 技術者たち

 「次の戦車砲は46口径120mm滑空砲に決まったよ」

 「では次期主力戦車は50t級ということに?」

 「生産はかなり後になるし」

 「どちらにしろ、督戦部隊と囚人部隊が陸軍主力で」

 「最終的に侵攻軍を核で吹き飛ばす事に変わりなさそうだな」

 「核戦争になる可能性は?」

 「ソビエト領に核を撃ち込むわけじゃないし」

 「満州国内で使う分なら核戦争にはならないと思うね」

 「邪魔な漢民族ごと核で消して、ソビエトに擦り付けて、遺憾の意を表明するの?」

 「正面装備じゃ 満州国守れないし、しょうがないよ」

 「ソビエト軍も気付いてるよね。そういうの」

 「そりゃ ロシア人のえげつなさは、日本人の数倍だからね」

 「正面装備の戦力比5対1と配備状況を考えたら日本軍の手の内ぐらい見当つくでしょう」

 「ソビエト軍が攻めてこないことを祈るよ」

 

 

 時空テスラーフロア

 時空障壁に干渉できる位相力場が形成され、

 「24時間が経過・・・」

 沸騰したカップの水は、温度が下がることなく沸騰し続けていた。

 「「「「・・・・」」」」 呆然

 「熱力学を無視ですか」

 「位相力場の現象は、理論的にわかり難いですね」

 「通常の時空は、12時にAを通過。13時にBを通過。14時にCを通過する」

 「位相力場は、12時にA、B、Cを同時に存在し、同時存在しないということじゃないのか」

 「ますますわかりませんね」

 「当事者じゃなく、観察者の立場になったということじゃないの?」

 「その証拠に・・・」

 研究者が指を沸騰したカップに入れて掻き混ぜる。

 「・・・熱くない」

 「そして、スイッチを切ると・・・」

 あつっ!!!

 「・・・時空という箱に閉じ込められた状態から抜け出せたと」

 「時空という箱を認識できたと言えるかもしれないが、概念を理解するのは大変だな」

 「兵器として使えば圧倒的に有利になりそうですね」

 「まぁ こちらから攻撃できなくても相手の弾薬を浪費させることはできるかもしれないな」

 「対核兵器防衛の役に立つかもしれないな」

 「そういえば、政府がUFO関連も研究して欲しいそうですよ」

 「ああ、ロズウェル事件の報告書が来てたな」

 「気球だっけ?」

 「まさか」

 「どちらにしろ、日本が蒸気船を自力建造できなければ欧米に対抗できなかったように」

 「未確認飛行物体を開発建造しなければ彼らと互角の立場には立てないね」

 「第二次文明開化でしょうか」

 「まぁ そういうことになるかもしれないな」

 「しかし、未確認のまま、公式的な接触がないということは・・・・」

 「1、潜むことも含めて目的を達成している」

 「2、干渉する価値がない」

 「3、知られたくない。だろうな」

 「知られたくないモノはたくさんありますしね」

 「そうだな」

 「しかし、地球規模で維新ということもあり得る」

 「「「・・・・・」」」

 

 

 

 ドイツ海軍の主力艦艇は原子力潜水艦へと移行しつつあった。

 そして、原子力潜水艦を支援する艦艇も建造される。

 当初、潜水艦を挟み込める双胴空母型巡洋艦が検討されたものの実証段階に満たないことから

 42000t級原子力自走型ドック巡洋艦ワルプルギス

  全長291m×全幅40m ドック(120m×25m)

  80000馬力 速度26kt

  55口径149.1mm連装砲6基 71口径88mm砲8基。

  対艦ミサイル2基 対空ミサイル2基、対潜ミサイル20基。

  対空哨戒ヘリ10機。対潜哨戒ヘリ10機。

 が建造されていた。

 それは、露鳳の影響を受けたような全通型飛行甲板を持った巡洋艦だった。

 もっとも、その役割は、潜水母艦と言えるもので、

 艦尾が大きく∩状に抉れ、飛行甲板で蓋をされているような艦体で、

 外洋作戦中のドイツ潜水艦の補給支援を目的とした艦艇だった。

 西太平洋

 ワルプルギス 艦橋

 「艦長。モルトケを固定しました」

 「お客さんの到着か」

 「しばらく、接待業務になりそうだな」

 「潜水艦乗りは、空を見てぼんやりするのが好きですからね」

 「それに生鮮食料品の積み込みもしないとな」

 「しかし、まさか太平洋が作戦海域になるとは思いませんでした」

 「それだけ、気になる物質なのだろう」

 「まだ使い道に苦慮してるとか」

 「どうにも使い道がないゴミみたいなものらしいが・・・」

 “それ” が艦橋から数キロ先の海上に浮かんでいた。

 「・・・艦長。UFOです」

 「警戒警報」

 将兵たちが慌てふためいて配置に付くと、

 その未確認飛行物体は忽然と消える。

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 インド洋

 

 日本は儒陀インド移民を成功させるため

 航路防衛のためディエゴガルシア島(390ku)を占領し、そのまま領有していた。

 財政難から、一時、放棄を考えられたものの、

 日独連絡のため保持が決まり、

 アメリカ・イギリス海軍がインド洋に進出すると、

 竜鳳油田の利益で財政再建の目処が立ったことから基地強化がされていた。

 4000m級の滑走路が建設され、日独空路の要衝となり、

 港湾が整備されて日独連絡関連施設が建設され、

 日独連絡客船が定期停泊する島になっていた。

 「こんな小さな島に原子炉ですか」

 「小型原子炉は調整管理しやすいですし」

 「もしもの時でも、被害が小さくて済みますからね」

 「戦闘機は配備しないので?」

 「財政的に不可能です」

 「レーダーサイトと対潜哨戒機と対空哨戒機」

 「後、対艦対潜対空ミサイルのサイロだけですよ」

 「ミサイルを地下に入れるとは、日本のミサイル技術は進んでますな」

 「日本は、原子力潜水艦の建造で遅れてますから」

 「実証試験を兼ねて。軍事基地のある離島くらいですよ」

 「いい様に使われてますな」

 「国からの予算でやりくりしてますからね。実証試験で浮かせるモノもありますし」

 「ドイツは、原子炉を置けるような島を持ってないので・・・」

 「ドイツは南極に原子炉を?」

 「いえ、風力発電で考えてますよ」

 「その方が安心ですね」

 「ドイツ国民は、原子爆弾の嫌悪感が強いですから原子力機関を使うとしても艦船くらいですよ」

 「そういえば、日本人も原子力にいいイメージを持っていないようです」

 「衝撃的なレビューでしたからね」

 「ベルリンとウィルヘルムスハーフェン基地の被害は、大変な衝撃でした」

 「アメリカは大型原子力空母を建造するようですが日本は?」

 「日本は遠征する予定がなさそうですから空母の代艦はないようです」

 「建造予定の大型強襲母艦が最大になるでしょう」

 「国防の負担は厳しいモノがありますからね」

 「まったくです」

 

 

 

 インド 儒陀藩皇国

 儒陀皇帝と両班の専横政治に対し、儒陀民族の蜂起が起きていた。

 儒陀警察が民衆に発砲、死者183人・負傷者6259人を出していた。

 儒陀軍はアメリカ軍に恫喝され、インド藩王諸国軍の牽制で動けず。

 「こ、皇帝。暴動が全土に拡大してるニダ」

 「警察はなにしてるニダ」

 「押し切られたニダ」

 「両班に推挙した一族は狩り出されてるニダ」

 「民衆が皇帝府にも迫ってるニダ」

 「ぐ、軍を出して民衆を鎮圧するニダ。皆殺しにするニダ」

 「軍は中立を表明したニダ」

 「全部、インドが悪いニダ。謝罪と賠償を要求するニダ」

 「インドの公共施設を作らなかったイギリスが悪いニダ。謝罪と賠償を要求するニダ」

 「我々を支持しない日本が悪いニダ。謝罪と賠償を要求するニダ・・・」

 「き、来たニダ」

 「に、逃げるニダ」

 「国庫から資産を持ち出して身の安全を図るニダ」

 「間に合わないニダ」

 「仕方がないニダ。スイスの預金だけで凌ぐニダ」

 儒陀皇帝一族はUH1イロコイに乗って、アメリカ駐留基地に逃げ、

 さらにアメリカへと逃亡していく、

 儒陀藩皇国は民主化により、

 選挙で儒陀皇帝と両班が選出されることになり、

 儒陀藩皇国の専横政治が打倒されていく、

 “余は、第3代儒陀皇帝ニダ”

 “皇帝と両班は、これから選挙で選ばれるニダ”

 “儒陀の新しい夜明けニダ”

 “儒陀の民主化は、儒陀民族の自由意思によって成された偉業ニダ”

 “アメリカ駐留軍とインド藩王諸国は一切関係ないニダ”

 “4月革命は、儒陀民族が主体的に強行した世界史上最高の民主化革命ニダ・・・”

 日本人外交関係者たち

 「ったくぅ〜 よく言うよ。アメリカの傀儡のくせに・・・」

 「アメリカは、儒陀民族の反皇帝勢力が高まってたから上手いことやったよね」

 「アメリカの計画通りでしょう。李朝も駄目。軍政も駄目。第三代で民主制移行」

 「これなら儒陀民族も反発しないし、アメリカの都合のいい操り人形になるな」

 「まぁ クーデターを起こすのはともかく」

 「アメリカ軍の支持がなければ儒陀の権力は維持できないからね」

 「しかし、儒陀藩皇国のアメリカ権益は拡大か」

 「別に欲しくないけど」

 「ドイツは儒陀のアメリカの権益拡大を面白くないってぶすくれてたみたいだけど」

 「儒陀民族の事よく知らないんだよ」

 「儒陀駐留費は、特別手当を出さないと維持できないくらい嫌われてるからね」

 「だいたい、アメリカ駐留軍の兵舎作ってんの日本の業者だぜ」

 「儒陀の建築会社は何やってんだか」

 「インドは暑いからな。建設中、ずっと見張ってるの、疲れたんじゃない」

 「でもいよいよ儒陀も民主化か・・・李朝と軍政の専横政治は酷かったからな」

 「民主政治だって、権力に立つと変わると思うけど」

 「そんときは、アメリカが潰して利権拡大」

 「やれやれ、アメリカ駐留軍を許すと、こうなるってことか・・・」

 「日本。負けなくてよかったね」

 「しかし、民主制の専横化を防ぐ意味で、外国勢力の介入は欠かせない気もするね」

 「体制が外国の干渉を排すと専横化しやすいし」

 「反体制が外国の干渉を利用すると売国化しやすいからね」

 「日本が体制の専横化気味なのはしょうがないよ」

 「でもまぁ アメリカとソビエトの脅威もあるし」

 「日本が民意を踏み躙るまではいかないと思うね」

 「せいぜい、踏む程度か」

 「国民だって、公約が嘘ってくらい、わかってるだろう」

 「政府だって一々既得権や民意に従ってたら無政府化するよ・・・」

 “儒陀藩皇国の新しい夜明けニダ!”

 「「「「マンセイー!! マンセイー!!!」」」」

 「「「「マンセイー!! マンセイー!!!」」」」

 「「「「マンセイー!! マンセイー!!!」」」」

 ぱち ぱち ぱち ぱち

 ぱち ぱち ぱち ぱち

 

 

 

 日本

 豪雨の中、人々が高台にたたずむ

 海は荒れ狂い、濁流が家々を押し流していく、

 “下がって下がって”

 “そこっ! 下がりなさい”

 「酷いニダ。せっかく、借家を買ったのに・・・」

 「軒下借りて母屋を手に入れるはずだったのに・・・酷いニダ〜!!!!」

 伊勢湾台風は、悲喜交々を洗い流していく、

 

 アメリカ合衆国

 白い家 上層部が新聞に見入っていた。

 “9月21日21:00、台風が発生”

 “9月23日。太平洋沿岸で警戒警報発令”

 “9月24日、伊勢湾で緊急避難命令が発令され、軍警察が投入”

 “9月26日。伊勢湾上陸”

 “その被害状況は全壊家屋36135棟・半壊家屋113052棟、流失家屋4703棟”

 “床上浸水157858棟に及ぶも住人の多くは、事前に退避を完了し”

 “船舶被害もなかった”

 “その際の日本軍の救難作戦と手際の良さは、神軍のようであり”

 “ヘリコプターは、その特性を如何なく発揮・・・”

 強風雨の中を飛んで子供を救出する写真が撮られていた。

 「ヘリコプターの姿勢制御能力の高さがわかるな」

 「同軸反転式メインローターは、有効ですよ」

 「それはともかく、例の噂は、本当だったのか」

 「天災があるかもしれないって?」

 「というより、発信者不明で、予知した人間が出てこないところが怪しいね」

 「だいたい、台風上陸の2日前に台風の進路を伊勢湾と見極めて退避させるって可能なのか?」

 「「「「・・・・」」」」  ┓(・_・)”┏

 「“この日本軍の災害救出により軍部の信認は高められ”」

 「“伊勢湾の再建後、国防だけでなく民防的な意味でも軍事費の増大は可能と思われる”」

 「“また、伊勢湾住人の半島・大陸移民も加速され・・・” か」

 「作為的な気がしますね」

 「作為的でも天災を利用されては言い掛かりも付けられんな」

 「しかし、日本の損失は大きいだろう」

 「市場は中華民国と大東亜共栄圏全域に広がってますし」

 「アメリカ市場も民間機輸出の対案で日本製の輸入障壁を崩してますから・・・」

 「日本製は安かろう悪かろうで売れないだろう」

 「それが品質の向上が認められつつあるようで・・・」

 「「「「・・・・」」」」 ぶっすぅうう〜

 「それより、戦争しないと潰れる航空産業が出てきそうなんだが」

 「日本が民間機を買ってくれただろう」

 「中華民国も日系シンジケートと組んで売れてる」

 「あんなもんじゃ 月産数千機の航空会社が維持できるわけがないでしょ」

 「特にベル・エアクラフト社はUH1イロコイ開発と需要が細って倒産寸前」

 「それに漢民族の日本渡航は規制されて、正味5分の1程度」

 「じゃ 日本が漢民族の渡航規制を外せば、航空機は5倍売れるということか」

 「日本は嫌がるでしょうけどね」

 「どこかと戦争するか」

 「問題はどこと、ですかね」

 「列強とはまずいな。核攻撃されたら選挙で負ける」

 「じゃ 反共か、反イスラムくらいしか・・・」

 「アフリカ大陸の独立運動は?」

 「ヘリは売れるかもしれませんが、ジェット機を買える資本はないかと」

 「資源があるのではないのか」

 「資源は抑えられますが需要が・・・」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 

 

 国家は、全体主義的な枠組みで考えるピラミッド型国家と

 個人の多重的な結び付きで社会が積み重ねられると考える衛星型国家があった。

 個人個人は好みが様々でも総意を求めようとすると偏りがみられ、

 歴史的な趨勢と体制的に許容できる国家形態に収まる。

 ドイツ帝国は、ピラミッド型国家の一つのモデルであり、

 国家の枠に全ての集団が含まれる思想で構築されていた。

 これが衛星国家型だと個人の自由意思や企業収益が尊重され、

 国益に反するような取引が行われやすくなる、

 ドイツ帝国 ベルリン

 原爆の後遺症といえるモノは限定された一角に押し込められ、

 観光客が並んで入っていく、

 巨大な環状線が幾重にも広がり樹木林でさえ人工的に統制され機能的に見えた。

 画一的な看板は、景観を損なわないことが義務付けられており、

 幾何学的で、どこか、非人間的な首都が作られていた。

 政治的に旧帝政ドイツ、経済的にナチスドイツであり、

 全体的に足して割ったような世相となっていた。

 そういった意味で、やや、衛星国家型に近付いた世相になっていた。

 ドイツ空軍基地

 単発戦闘機He1100グングニールと双発戦闘機Ta300ファフナーと

 ライセンス生産している海燕(Ka31)と朱雀(Ka54)が並んでいた。

 ドイツ軍将校たち

 「Ta300ファフナーと日本の新型戦闘機“瑞燕”は、どっちが強いかな」

 「戦う機会はなさそうだけど、瑞燕の方がやや大型のようだ」

 「洋上作戦も含んでいるからだろう」

 「ドイツの戦闘機はどちらも迎撃戦闘機だからな」

 「機体設計は、瑞燕がいいようだが」

 「遠目に見てだろう。近くで見ないと何とも言えないな」

 「Ta300ファフナーと交換を申し出たが断られたよ」

 「じゃ 機体にX艦の技術が導入されているということか」

 「未知なモノがあるのは、焦燥感が漂うね」

 「確かに・・・」

 「ところで、朱雀はいいけど。海燕は、いま一つ気に入らんな」

 「日本も海燕のデザインが気に入らないらしい」

 「本家の性能は超えてるんだろう」

 「最近は、負け始めてるらしい。日本のヘリは台風の中を飛んでる」

 「強風なのに?」

 「ある程度、収まってからだと思うがね」

 「それでも姿勢制御能力は高いな」

 「どこで負けてるんだ?」

 「情報では素材らしい」

 「例の物質?」

 「さぁ いまのところ、屑みたいなものだが、日本は何か秘密を知ってるな」

 「情報は、得られそうにないのか?」

 「わかったら、すぐ導入するよ」

 

 

 インド大陸 儒陀藩皇国

 アメリカ駐留地 日本語街 日本語特務学校

 「先生。日本はどんな国ですか?」

 「日本?」

 「知らない。取るに足らないくだらない国ニダ」

 「ソマリアが楽しいニダ」

 「とっても貧しくて奇形で愉快な国ニダ」

 「せ、せんせい・・・」

 

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「皇帝。インド藩王諸国が民主化支援の約束を守れ、と」

 「煩い下等人種ニダ」

 「儒陀は、儒教と仏教を集約体現した人種ニダ」

 「もう、神の領域にある神民族ニダ」

 「下等なインド人に命令される覚えはないニダ」

 「儒陀の狡猾で巧妙な英知と知性にインド人は騙されたニダ」

 「儒陀の歴史的勝利ニダ」

 「わからず屋のインド藩王諸国は、恐れ入って謝罪と賠償をするニダ」

 「儒陀4月革命を応援しなかった日本は謝罪と賠償をするニダ」

 「イギリスは、インド人の教育失敗したので謝罪と賠償をするニダ」

 「・・・何かいいことないニダか?」

 「9月26日に伊勢湾台風があったニダ」

 「日本家屋。全壊家屋36135棟・半壊家屋113052棟。流失家屋4703棟。床上浸水157858棟ニダ」

 「それは良かったニダ。9月26日は天恵の祝日にするニダ」

 「早く、日本を滅ぼすニダ」

 「麻薬を密輸中ニダ」

 「麻薬だけじゃ 日本を滅ぼせないニダ」

 「もっといい方法を考えるニダ。偽札を作るニダ」

 「日本紙幣は偽札が難しいニダ」

 「生意気ニダ。何とかするニダ」

 「それに在日は伊勢湾台風で資産を失って偽札を作る余裕がないニダ」

 「このままだと、列島から延辺朝鮮族自治州に撤退ニダ」

 「日本政府は在日の損害を保障するニダ」

 「台風は毎年来ることはわかっていたニダ」

 「堤防を作らず放置していた日本の天皇が悪いニダ。責任とって退位するニダ」

 「アメリカと日本を戦争させるニダ」

 「ソビエトと日本を戦争させるニダ」

 「中国と日本を戦争させるニダ」

 「ドイツと日本を戦争させるニダ」

 「アメリカとソビエトは、損より得るモノが大きくないと戦争しないニダ」

 「中国はシンジケートに支配されて、海を越える船がないニダ」

 「ドイツは遠過ぎるニダ」

 「だったら在日は日本の右翼と結託して日本人を焚きつけるニダ」

 「日本人は戦争の原因より、組織防衛だし、戦争美学を楽しむ傾向があるニダ」

 「何としても日本人を凶暴化させて、日本を戦争させて弱体化させるニダ」

 「最近の日本軍はおとなしくて暴走しそうにないニダ」

 「とにかく何でもいいから日本を滅ぼすニダ」

 「そうニダ。日本円に似せたウォン札を作るニダ」

 「そうしたら堂々と持ち込んでうっかり使えるニダ」

 「やってみるニダ」

 「それから日本人のいい奴を潰して、悪い奴を助けるニダ」

 「悪化良貨を駆逐する作戦ニダ」

 「日本を嘘吐きと泥棒と匪賊の巣窟にしてやるニダ」

 「やるニダ」

 「正直者を消して、悪人を助け、悪の国にするニダ!」

 「やるニダ!!」

 「正直者が馬鹿を見る国。最低最悪の国にするニダ!!」

 「やるニダ!!!」

 「弱肉強食で淫乱の国にするニダ!!!」

 「やるニダ!!!!」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 時空研究は進んでそうです。

 魔業の黎明レベルの強い国になってしまうのでしょうか。

 それ以前に、保守的な日本人に未知領域学が理解できるでしょうか。

 

 儒陀民族はウィルス化、悪の秘密結社、悪の軍団化しつつあるようです。

 無事日本を滅亡させられるでしょうか (笑

 

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

第18話 1958 『これが日本人ニダ!』

第19話 1959 『浸蝕 悪発症 自滅 伝染』
第20話 1960 『腐れっぷりがたまりません』