月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第23話 1963 『みんな、あの夕陽に向かって・・・』

 インド空軍のフォーランド・ナット戦闘機とパキスタン空軍のF86セイバーが空中戦を展開していた。

 インド大陸は、イスラムとヒンズーの対立が激化し、

 ハイデラバード藩王国、パキスタン、儒陀藩皇国 VS インド藩王諸国の内戦が勃発していた。

 2324t級タルボット・カウンティ型戦車揚陸艦

 5800t級テレボーン・パリッシュ型戦車揚陸艦

 3560t級デソト・カウンティ型戦車揚陸艦が儒陀の海岸に戦車を降ろし、

 1720t級クロスレイ型高速輸送艦が物資を港に降ろしていく、

 原子力空母エンタープライズの甲板からヘリUH1イロコイが飛び立つと、

 儒陀在米空軍基地へ向かっていく、

 空母艦橋の下のVIPルーム

 背広を着た政府関係者が集まっていた。

 「これがカレーねぇ」

 「まぁ 食べられなくもないね」

 「副大統領。将兵の間にインド内戦参戦の疑問が湧いてるのですが」

 「儒陀駐留アメリカ軍が攻撃された。正当防衛だ」

 「そして、アメリカが迅速に行動すればインドは救われる」

 「それで充分だろう」

 「将兵の間では、儒陀がインド内戦をし向けさせたと」

 「そんなのはデタラメだ!」

 ・・・・・・・・

 ・・・・・

 「やれやれ、インド内戦を疑うとはキレる将兵が多いな」

 「優秀だからでしょう」

 「馬鹿じゃないのも困ったものだ」

 「日本人のように盲目的に従うか。見ざる聞かざる言わざるを見習えばいいのに」

 「それはアメリカ人と言えないでしょう」

 「しかし、何の理由もなしに軍産複合体の補填をするわけにいかない」

 「軍産複合体の人員整理と再建計画を取らなかったのは後悔しそうですよ」

 「アメリカにとって、運命の分かれ道かもしれないな」

 「しかし、原子力空母が運搬船代わりに使われるとはね」

 「大西洋から喜望峰を回ってインド洋まで往復しやすいのはエンタープライズですから」

 「取り敢えず、必要な戦略物質を置かないと」

 「ケネディ大統領はインドからの早期撤退を考えてるそうですが」

 「それは困るねぇ 軍産複合体への財政投資が無理なら戦争を起こしてもらうしかないし」

 「航空機が売れなくなると航空会社が潰れる」

 「ソビエトがインド藩王諸国は支援し始めたようです」

 「誘った甲斐があったよ。好都合だね。赤狩りがしたかったところだし」

 「問題は、ドイツと日本の航路の間を擦り抜けなければならないことでは?」

 「ドイツと日本は通常交易が脅かされない限り日和見だよ」

 「昔と違って・・・ですか」

 「覇気がないかね」

 「生存圏を確保して収入の目処があるなら戦争などせんよ」

 「アメリカは?」

 「アメリカは戦争しないと軍産複合体が連鎖倒産だ」

 「それは困りますねぇ」

 「困るよ」

 「そういえば儒陀人がアメリカと日本を戦争させたがってましたよ」

 「ふっ ソビエト連邦の高官も “ソビエトが対日参戦するなら儒陀は一緒に参戦したいニダ” って、言われたらしいな」

 「よっぽど日本が嫌いなんでしょうね」

 「いまの日本と戦争したがる国はないよ」

 「どんなビックリ箱を持っているのかわからないからね」

 「副大統領。艦長が全機発艦したとのことです」

 「そうか。代わろう・・・」

 「艦長、問題は?」

 「・・・・ないのなら、もう一度、ノーフォーク海軍基地に戻り。次のヘリを載せる」

 

 

 

 満州帝国

 日本政府は、竜鳳油田精製所からのパイプラインを満州・半島の全域に張り巡らせると、

 半島と列島の底上げに回していた資本を満州基幹産業に振り分けていく、

 満州鉄道は赤字から黒字に転換し、

 消費材と社会資本が潤うと歓楽街を中心に商業が発展していく、

 城郭神社仏閣と豪雪に強い日本風の三角屋根が街並みが広がり、

 ハルピン・タワー(333m)が完成していた。

 入植した日本人は精神的に安定したのか家族持ちが増えていく、

 関係者たち

 「随分、早く完成したな」

 「道幅が広いから搬出搬入が楽だし、潰しの効く中国人もいるからね」

 「それに企業秘密だが軽量な素材も使われているらしい」

 「ほう」

 「しかし、中国人に日本語を教えるのはどうかと思うが」

 「その方が高度な仕事ができるし」

 「一旦、日本語が根付けば満州帝国と中華民国の間で言語対立の構造が作られる」

 「まぁ 数世紀かけてのことだろうけど」

 「それだと中国人に日本が浸透されるから、危機的な状況でもあるわけか」

 「少しばかり危険を冒さなければ、東アジアは安定しないよ」

 「安定ねぇ 満州帝国が日本と大陸の緩衝地帯になれるかどうか?」

 「且つ、策源地でもある」

 「その二つは両立しにくいと思うよ」

 「日本人人口比が半分になって、日本語人口が8割を越えれば・・・」

 「いつになるやら」

 「だからテレビ放送を急がせてるんだろう」

 「テレビねぇ」

 「特に子供は漫画が好きだからね。あ・・・何だっけ・・」

 「鉄腕アトムだろう」

 「そうそう」

 「被り付きで日本語を覚えてくれるよ」

 「だといいけどねぇ」

 

 

 

 日本

 どこか暗い場所

 「うひょ! ひょ! ひょ!・・・」

 きゃー! やめてー!

 ・・・・・・・・

 ・・・・・

 「ふぅ〜 やったあとの一服は美味いニダ」

 「死んだニカ?」

 「死んだニダ」

 「逃げるニダ。捕まるのは嫌ニダ」

 「大丈夫ニダ。この近くは同和部落ニダ」

 「「「「・・・・」」」」 にやぁ〜

 「話題になるニダ」

 「違うニダ。話題にするニダ」

 「犯罪の陰に同和、右翼、左翼ありニダ」

 「日本人同士を不信させ、憎み合わせ、いがみ合わせるニダ」

 「一般人と同和の戦争。いい気味ニダ」

 「日本人同士の対立と人間不信を煽って経済不信させてやるニダ」

 「日本人は狭心で浄・不浄が強いから同和を排斥して、儒陀の側に押しやってくれるニダ」

 「あとは日本の最下層に同じことを繰り返すだけで、次々に我々の側に押しやって自滅するニダ」

 「本当に日本人は馬鹿ニダ」

 「次はどうするニダ」

 「死ね死ねノート見るニダ」

 「反対派の政治家の家に火を付けるニダ」

 「捕まるの嫌ニダ」

 「頭の悪そうな同和にやってもらうニダ」

 「次はどうするニダ」

 「爆弾を使った連続犯罪事件で警察の威信を落としてやるニダ」

 「楽しそうニダ」

 「警察が謝ってきたら、やめてあげるニダ」

 「インド内戦で日本が儒陀に味方したら許してあげるニダ」

 「日本だけ戦争してないのは許せないニダ」

 「一杯、悪いことして、日本を虐めてやるニダ!」

 「「「虐めてやるニダ!!」」」

 「一杯、悪いことして、日本を虐めてやるニダ!」

 「「「虐めてやるニダ!!!」」」

 「一杯、悪いことして、日本を虐めてやるニダ!」

 「「「虐めてやるニダ!!!!」」」

 

 

 偉い人たちの巣窟

 偉い人たちとアウトロー

 「同和産業は儲かるニダ」

 「いっぱい、話題にして予算とポストを取るニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「国の仕事は左内輪の生活ニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「だから、犯人は同和ニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「尊い犠牲ニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「インド内戦で儒陀側に付いて参戦してくれたら」

 「儒陀政府から賄賂が貰えるニダ」

 「だから儒陀を援助するニダ。キックバックがポケットマネーニダ」

 「先生。国益と大義のためニダ。選挙で勝てるニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「先生が選挙で負けたら日本はお終いニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「一番良い妓生も送るニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「10代ニダ〜♪」

 「「「「・・・・・」」」」

 

 

 某平和団体

 「日本は、アメリカと違って自由がないな」

 「特高を廃止させて、もっと自由な気風を作った方がいいニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「日本の自由と平和のためニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「善意も金になるニダ」

 「日本の近い同胞がインド内戦で苦しんでいるニダ」

 「同情して運動を起こして欲しいニダ」

 「善意は金になるニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 

 

 夜道

 「あそこだ! 悪い奴ニダ!!!」

 はっ!

 「この同和野郎!」

 「なにを・・・」

 「悪やつだ」

 ばき! ぼこ! ばき! ぼこっ!

 ぐはぁ!

 ・・・・・・

 ・・・

 “強姦殺人の犯行は、同和出身の・・・”

 同和の人たち

 「どうしたんだ大怪我してるじゃないか」

 「街の連中に同和だからって、突然・・・」

 「「「「「・・・・」」」」」

 「なんで俺たちばっかり・・・」

 「「「「「・・・・」」」」」

 「酷い・・・」

 「ちくしょ ちくしょ ちくしょ・・・」

 「頑張るニダ」

 「はっ!」

 「お前だ誰だ」

 「俺は、右翼ニダ」

 「「「「「・・・・」」」」」

 「右翼は日本人に虐められないニダ。逆に日本人を虐め返せるニダ」

 「日本と天皇と日本人に復讐できるニダ」

 はっ!

 「日本は儒陀半島の文化を4000年に渡って奪ってきた歴史があるニダ」

 「日本にオリジナルはないニダ。尊厳もないニダ」

 「それなのに日本人は捏造した嘘の歴史に浸ってるニダ」

 「そんな嘘の歴史と儒陀から奪ってきた文化は認めないニダ」

 「いまでは儒陀半島そのものが日本によって奪われたニダ」

 「儒陀と同和は日本に騙され奪われてきた同志ニダ」

 そっと手が差し伸べられ

 「おれは・・・」

 がっしりと握手が交わされ、

 「おれは・・・日本をぶっ壊してやる!」

 「頑張るニダ〜♪」

 「「「「「おお!!!」」」」」

 「みんな。あの夕陽に向かって走るニダ」

 「「「「「おお!!!」」」」」

 だっーーー!

 

 

 中華(シンジケート)民国

 高層ビルが立ち並び、店頭に商品が溢れていた。

 権力と多くの資産は外資シンジケートのモノで、

 中華民国工業規格に独自仕様はなく、

 全て外国仕様で成り立ち、そのことで繁栄していたといえる。

 人々は目先の財欲にかられて競争し、労働していた。

 選挙事務所

 中国人が投票していく、

 投票された箱は、そのまま、焼却処分され、シンジケート議員の当選が発表される。

 シンジケートの代理人は名ばかりの議員でしかなく、

 中国人は見せかけだけの民主主義であると幻想を抱いていた。

 中華民国の実権は日系、イタリア系、ロシア系、アメリカ系、イギリス系、

 ドイツ・東欧・バルカン系シンジケート派閥が政府と行政官を占め、

 その力関係によって、中華民国の政治経済が決まっていく、

 結局、同族支配の圧政と搾取より、

 異民族支配の妥協と搾取の方が中国庶民の取り分が大きく、

 漢民族も外資シンジケートを利用してしまう。

 選挙管理員の日本人たち

 「漢民族は、民主的な選挙がなされてると勘違いして、ガス抜きされて」

 「紛いモノの民主主義で満足か」

 「日本がこういう風にならないことを心から願うね」

 「なってたりして」

 「「「あははは・・・」」」

 「でも中華民国は発展してるじゃないか」

 「そうなんだよな」

 「やっぱり、軍事力で手抜きすると、国が発展するんだな」

 「とういうより、中華民国軍の実態はシンジケート軍閥軍なんだよな」

 「ふっ」

 「しかし、漢民族もだけど、イタリア系、ロシア系、東欧・バルカン系マフィアは怖すぎないか」

 「だよなぁ」

 「そういえば朝鮮人が味方したいとか言ってたぞ」

 「あいつらどうも信用できねぇ」

 「だけど、日本人って、役に就くと汚い仕事嫌がるから人手不足だしねぇ」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 そして、中華民国軍の兵装も全て外資シンジケートから購入したものだった。

 アメリカ系シンジケートたち

 「これが日本の56式突撃銃(6mm×45)か」

 「中華民国軍仕様と日本軍仕様は違うのかね」

 「互換可能な範囲でゼロ・コンマ違うくらいで、基本的に同じようです」

 「器用だな」

 「日本の工業力は世界のトップレベル。品質を落とすくらいわけない」

 「しかし、命中力の38式(6.5mm×50)。威力の99式(7.7mm×58)と明らかに違う仕様だな」

 「連射力の56式(6mm×45)といえますね」

 「突撃銃だから小銃とは基本思想が違うよ」

 「ガス圧、ロテイティングボルト方式か・・・」

 「日本人は、この手の事が苦手だと思ってたが・・・」

 「まるで手本があるかのように作りやがって」

 「M16(5.56mm×45)というよりAK47(7.62mm×39)を洗練にさせた仕上がりか」

 「やはり、X艦は宝箱のようだな」

 「数十年先の軍艦があるなら、日本の発展も納得いく」

 「しかし、日本民族の力も無視できないと思うね」

 「想像と思考錯誤が少なければ、無理と無駄を減らせて集中できる」

 「目に見えない完成品を信じる苦労は並大抵でなく」

 「なにを思い、どう考えるかで派閥が潰し合う」

 「完成品があり、考え方の方向性さえあれば、完成まで集中しやすくなるからね」

 「それだけで、苦労は数分の1だろうな」

 

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 巨大な装置からはみ出た筒状モノがあった。

 「次元空芯式共振コイル及び次元スパークギャップスタンバイ・・・」

 「あ・・・なにを送ろうか」

 「そういえば高価な次元観測機は異動が確認されてからって・・・決めてなかったな」

 「じゃ これは?」

 「「「「・・・・」」」」

 「まぁ いいか」

 「名前・・・名前っと・・・」 カキ・・カキ・・・

 『『『『いつの間に博士になったんだ。こいつ・・・』』』』

 「それじゃ セット・・・」

 「テスラコイル次元移送器共振モード準備完了」

 「原子共有結合のサーチに入ります」

 「原子軌道及び分子軌道の変数は、許容範囲内です」

 「消しゴムの固有振動数と原子共有結合を一致させます」

 「価電子波長の同調性は、80パーセント」

 「原子軌道誤差0.01パーセント。分子軌道誤差0.011パーセント」

 「重力計数は変化ありません」

 幾つものモニターに波紋が流れていく、

 実験の素材は、何でもよく、

 記念すべき、第一回、次元移送器の実験は、使い古しの消しゴムが使われた。

 「ちゃんと、異動を確認できるんだろうな」

 「もちろん、俺の名前を書いたからな」

 「いや、そういう問題じゃないし」

 「・・・共有結合オールグリーン」

 「分子軌道オールグリーン」

 「空間軸±0.6、時間軸±0.1、重力変動±0.04、最終調整確認」

 「次元磁石ローレンツ力安定しました。転移可能です」

 「転移スタート」

 筒状の中にあった消しゴムが一瞬にして消えていた。

 「・・・・次元潮流で “消しゴム” を確認」

 歓声

 「俺の名前は?」

 「書かれますよ。芹沢博士って・・・」

 「「「「・・・・」」」」 白い目

 「あははは・・・」

 

 “次元移動の方法は、巨大な筒状の中を物体が次元加速され、別の世界へと送られる”

 “その構造は 「時空フレミングの左手」 を応用したもので”

 “早い話し、巨大な次元レールガンと次元移動セーフカプセルを作るだけでよいといえる”

 “残念ながら巨大質量を射出するだけの技術力い達しておらず”

 “その初期のモノは 「人間大砲」 と呼べる代物となるだろう”

 “人間大砲と違うのは、時空平面的な移動というより時空断層を超える異動といえるもので・・・”

 「芹沢・は・か・せ。実験成功を祝って、かつ丼でも食べに行くか」

 「そうだな」

 

 

 日本の某所

 暗がりのホテルに少女が眠っていた。

 「おっとっっと・・・」 よろよろ

 「せ、先生。大丈夫ニカ?」

 「そんなに酔ってないぞ」

 「先生。どうぞニダ〜 さっきの娘が寝てるニダ」

 「おお〜 いいのか」

 「どうぞニダ、どうぞニダ、ほどよく酔った10代の妓生ニダ」

 「では・・・」

 ・・・・・・・・

 ・・・・・

 「先生。どうでしたニダ?」

 「よかったよ。か細い抵抗で涙ぐんでたからそそったよ」

 「よかったニダ。その辺で誘拐して酔わせた女子高生ニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「そ、そんな・・・」

 「大丈夫ニダ」

 「カメラで撮影しただけで、女子高生は行方不明で処分したニダ」

 「そ、そんな・・・」

 「大丈夫ニダ。先生は日本を救う人ニダ。小さな犠牲ニダ」

 「そ、そんな・・・」

 「誰にも言わないニダ〜♪」 

 「「「「・・・・・」」」」

 「その代わり、仲間を出世させて欲しいニダ〜♪」

 「「「「・・・・・」」」」 ごっくん!

 「総出で応援するニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 

 

 

 東京を選挙車が走り回っていた。

 “保守党の○○をよろしく、日本の平和と国民の安全を守る。○○です”

 “○○は全身全霊を尽くして、日本と日本国民のために働きます”

 

 “革新党の××をよろしく、皆様の福祉と生活のために働きます。××です”

 “××は全身全霊を尽くして、市民の皆様のために戦います”

 

 木陰の怪しげな男たち

 「上手く弱みを握ったニダ。どっちが勝っても出世できるニダ」

 「日本人は儒陀人のため、馬車馬みたいに働けばいいニダ」

 !?

 「と、特高ニダ! 逃げるニダ!」

 バタバタ バタバタ

 「まてぇ〜!」

 バタバタ バタバタ

 

 

 経済的な鎖国は既得権益の寡頭と封建的な老害により衰退する。

 しかし、外資を含めた自由競争は経済を活性化させるものの弱肉強食となり、

 国内産業が敗北すると経済は外資に支配される。

 民族資本が強ければ自由競争を望み、

 民族資本が弱ければ産業を保護するため、経済障壁を高める。

 とはいえ、搾取された庶民は生活が苦しく、

 民族資本が強ければ経済障壁が高くてもよく、

 民族資本が弱い時は外資参入でも生き残りたかった。

 そして、老害化した民族資本と、どこまで付き合う分水嶺で政策が分かれ、

 国内産業と国民生活のどちらの保護を優先するか派閥が作られていく、

 封建社会と初期資本主義によって庶民が搾取され尽くし、

 民衆の離反によって外資と暴力が結託したシンジケートに国が支配された社会もあれば、

 民族資本が弱体化し、国内法の枠内で外資に頼るウィンブルドン現象化した社会も存在する。

 もちろん、民族資本を主力とした社会が理想であるものの、

 聖域化されてしまうと、大企業であれ、零細企業であれ劣化する。

 そして、民族国家でも大企業の防衛は可能でも零細企業の防衛は困難であり、

 どこの国でも起こる事は、日本国内でも起こった。

 アメリカ資本系の旅館

 近代化と時代の流れに取り残され生存競争に敗北した老舗。

 世代の確執と相続争いを利用して外渦資本が浸透する。

 清流の流れる音、獅子落としの音が心地よい響きを和室に流し込んでいた。

 白人たちが懐石料理に箸を伸ばし、器用に口に運ぶ、

 「日本はどうだね」

 「欧米諸国にない繊細さがあるが内向きで保守的な国だね」

 「既得権益と結びついた勢力が強く」

 「マニュアル化された中での技巧は優れているが権威主義的でステレオタイプばかりだ」

 「新しいモノは生まれにくいだろう」

 「八木レーダーが輸出されたのも頷けるよ」

 「とはいえ、いまのところ、国土が広がってるから余地がある」

 「しかし、年月が長くなるほど社会全体がマンネリ化し、軋轢が増すだろう」

 「だが日本は新しいモノが開発されてもすぐに吸収し、世界に輸出している」

 「まるで、そうなるであろうと最初からわかっていたかのように・・・」

 「国民の数パーセントが機密に守られた工場で働いていて」

 「そこで生産されたモノは日本国内の一部だけで消費されている」

 「開発から工業化までの年月が早過ぎるから、分かっていたと考えるべきだな」

 「不健康な産業だな」

 「だが日本は好景気で設備投資が続いている」

 「見ざる聞かざる言わざるで賃金格差を利用した輸出社会か」

 「盲目的で従順で潰しの利く国民を抱えた国は羨ましいねぇ」

 「少なくとも日本は数十年先の情報と技術的な蓄積を知ってる」

 「あと、こちらの方が重要なのだがタイムマシンに関しての研究も進んでるはず」

 「脅威だな」

 「ああ・・・脅威だ」

 「日本の戦争勢力は?」

 「経済的に困窮していなければ自棄になって戦争する必要はないし」

 「いまのところ、軍拡もない」

 「むしろ日ソ戦争で日本の国力を削ぎ落して欲しいくらいだ」

 「ふっ そこまで馬鹿とは思えないがな」

 「右翼勢力がいるだろう。アレルギー反応だけが強い盗賊連中・・・」

 「セクト主義の狂犬がどっちに咬み付くか、分からんからな」

 「日本を軍事的に暴走させたがってるのは、いまのところ儒陀だけだよ」

 「とはいえ、連中を使わないと情報収集は半分以下だ」

 「困ったものだ」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 円盤ドームを載せた4発機が雲の中を飛ぶ、

 早期警戒機アマテラス

    自重26000t/全備重56000t

    ユモ224水冷ディーゼルエンジン改5000馬力4基

    全長32m×全幅28m×全高9m

    速度740km 航続距離18000km

    対空哨戒管制機材一式

 外は暗闇で、計器だけで飛んでいた。

 そして、コクピットのモニターに8個の影が点滅していた。

 「・・・少佐。ECCM正常に作動、ECMの妨害を排除しました」

 「ほぉ この距離で・・・」

 「今回の更新はいいみたいですね」

 「熱線追尾ミサイルもフレアを見分けられましたし」

 「妨害電波を潜り抜けられるならレーダーホーミングの命中率も高まります」

 「まぁ 相手がこちら以上の電力を出してきたら困るがね」

 「しかし、深夜の雲の中で編隊飛行か。世の中も変わったな」

 「瑞燕編隊に揺れがあるのが気になります」

 「もう少し速度を上げればまっすぐ飛べるだろう」

 「安定速度の差がアマテラス唯一の欠点ですね」

 「戦争になったらアマテラスは後方。瑞燕は先行する」

 「護衛機を付けるとしても、一緒に飛ぶことは少ないだろうな」

 

 

 厚木航空基地

 瑞燕(MiG29ラーストチュカ)が整然と並んでいた。

 航空機は国力で割り出せる範囲内の質で、数を揃えなければならない、

 兵器体系思想に基づいた目標と妥協の分水量で機体が設計され、

 基本的に一つの航空基地で40機ほどが配備される、

 4機がスクランブル機として常時待機し、

 年間180時間を割り振った時間枠で訓練機が飛び立っていく、

 1日換算すれば30分ほどしかなく、数日に一回飛んで消化する。

 残りの時間は地上訓練で練度を維持するしかなかった。

 当然、アフターバーナーなど滅多にできない。

 「壮観だなぁ」

 「来月あたり、アビオニックスが更新されて性能がよくなるらしいよ」

 「いいねぇ いいねぇ」

 「ところで、儒陀側で参戦する話しは?」

 「はぁ? 行かないよ。関係ないし」

 「まぁ 予算得とくのための戦争じゃ 昔に逆戻りだしな」

 「だけど、定数決められて能力査定があって、最下層は除隊させられるのが辛い」

 「いつも競争じゃ くたびれるよ」

 「年功序列式で出世したいのも事実だけどねぇ」

 「それだと劣化するし、軍組織が肥大化するだけだろう」

 「民間はいつも競争して、潰し合ってるよ」

 「官僚だけがトコロテン方式じゃ 怠け者の巣窟になってしまうし」

 「血税取られてる国民は納得できないだろう」

 「だけど土建官僚は、予算分捕って、豚みたいに肥え太ってるじゃないか」

 「まぁ 社会基盤は必要だからね」

 「ふん! 官営資本で公民館より、社会資本で酒場で自棄酒って気分だ」

 「あはははは・・・」

 

 

 中東

 戦後、中東のイギリス、フランスの勢力圏は弱体化し、

 日米独ソの勢力均衡な空白地帯となっていた。

 アラブ諸国は石油精製、石油コンビナートなど工業力を持ってなかったものの

 産油国であることを利用し、日米独ソと有利な取引を行い、利益を上げていた。

 幸運なことに産油国は、宗教国家で封建社会だったことから近代化が遅れており、

 近代化の芽は、宗教的な伝統と封建的な世襲社会によって潰されてしまう。

 石油消費国は産油国に商品を輸出し、対価で石油を購入することができた。

 日本は油田の場所をおおよそ知っていた事から、

 中東の石油権益は拡大していた。

 無論、産油国側の配分があり採掘期限は50年ほどで

 期限を超えると延長される可能性は低いとみられていた。

 とはいえ、中東石油は、アメリカに集中していた石油事情を分散化させ、

 さらに価格を引き下げてしまう。

 バーレーン王国

 砂漠でありながらビルが立ち並び、樹木が植えられ、

 王家御用達のブランド店が軒を連ねていた。

 日本は、満州油田と東シナ海油田を押さえていたものの、

 石油価格でアラブ石油は圧倒的だった。

 日系ホテルと併設して寝殿造り風の別荘と日本庭園が作られていた。

 日本人たち

 「本物のお金持って凄いねぇ」

 「日本のお金持ちが姑息に思える」

 「腐るほどお金があれば、そうだろうね」

 「それはそうと、中東で戦争が起こる予定に変更はありそう?」

 「戦後の情勢が全く違うから、どうかな・・・」

 「アメリカがインド内戦を勝ち抜いて儒陀を押さえれば、インド洋に艦隊を展開できると思うけど」

 「中東の軍事支配が不可能ならこのままだと思うな」

 「アメリカが石油依存の戦略を続けるのなら中東に干渉すると思うけど」

 「日本は?」

 「別に満州と東シナ海の油田があれば何とかなりそうだし」

 「東南アジアの海底油田開発も手掛けられそうだからな」

 「危険分散で安定供給なら、公共投資が続けられて良いんだけど」

 「やっぱ、戦争で石油が高騰すると影響でるか」

 「そりゃ 優先順位の低い公共事業の半分が採算不良で、お流れになるだろうね」

 「設備投資したところは軒並み潰れる?」

 「んん・・・」

 「財政投資でカンフル剤を打っても固定費が大きくなって、利潤が上がらないと厳しいよね」

 「アメリカは軍産複合体で。日本は民間産業か・・・」

 「政治的な歯止めとかできないと辛いよね」

 「結局、地域の利益代表で、一票取ってたら、どうにもならんかも」

 「まぁ 気持ちはわかるけどねぇ」

 「政治家なら経済だけじゃなくて哲学的な規範も欲しいね」

 「相反する規範なんじゃないの経済と哲学」

 「ふっ・・・」

 

 

 インド大陸

 赤茶けた原野と山岳と森林・・・

 軍将兵が前線へと向かい、難民たちが逃げ惑う、

 砲煙が戦場全体に漂い、火薬の臭いに包まれていた。

 インド藩王諸国はゲリラ戦術に切り替えていた。

 昼間は隠れ、夜になると豹変して奇襲する。

 民間人と敵兵の区別がつかず、

 インド人の難民に向かってUH1イロコイが編隊が爆弾を投下し、

 機銃掃射を繰り返した。

 もっともインド軍将兵ですら言語が通じず、

 さらにカーストが違えば会話すらも禁じられ、

 有象無象でバラバラな組織のまま戦わされていた。

 

 ニュー・デリーのホテル

 日本人たち

 「インド藩王諸国は苦戦してるようだな」

 「ソビエトの武器がインドに流れ込んでるらしいよ」

 「米ソは仲違いか、助かるねぇ」

 「というより、余った武器弾薬を処分したがってるみたいだ」

 「日本はみみっちく訓練で弾薬と燃料を消費してるのに、羨ましい国だ」

 「まぁ 民需品だけという事でアメリカと協定を結んでるし」

 「日本も輸出品が増えて、資源開発できるから美味いけどね」

 「儒陀側は手伝わなくていいの?」

 「なんか・・・嫌・・」

 「人を貶めて侵害することを生業にしてるし、儒陀というより呪蛇だからねぇ」

 「それより、政府はどうするって?」

 「貿易が阻害されない限り、日本はインド内戦に不介入ということらしい」

 「高みの見物か・・・それもいいねぇ」

 「問題はドイツかな。どうする気だろう」

 「またキューバの時みたいに嫌がらせでもするのかな」

 「ドイツ海軍はアメリカ海軍より劣ってるし、英ソに挟撃されてるからな」

 「それに北海油田をイギリスと分け合ってるから本音は戦争したくないだろう」

 

 

 

 アメリカ駐留軍 日本語街

 日本語学校 教室

 “・・・維新後、明治政府は、五箇条の御誓文を公布しました”

 “1、広く会議を興し、万機公論に決すべし”

 “2、上下心を一にして、さかんに経綸を行うべし”

 “3、官武一途庶民にいたるまで、おのおのその志を遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す”

 “4、旧来の陋習を破り、天地の公道に基づくべし”

 “5、智識を世界に求め、大いに皇基を振起すべし”

 “また天皇は勅語を発しました”

 “我が国未曾有の変革を為んとし”

 “朕、躬を以て衆に先んじ天地神明に誓い”

 “大にこの国是を定め、万民保全の道を立んとす”

 “衆またこの趣旨に基き協心努力せよ”

 “政府は、明治天皇の勅語を受け奉答書を発布しました”

 “勅意宏遠、誠に以て感銘に堪えず”

 “今日の急務、永世の基礎、この他に出べからず”

 “臣等謹んで叡旨を奉戴し死を誓い、黽勉従事、冀くは以て宸襟を安じ奉らん”

 “維新政府は五箇条の御誓文を基準に明治憲法を制定”

 “学制、税制、軍制を整備し、日本近代化の礎と・・・”

 「もう、いいニダ」

 「全部、捏造ニダ」

 「こんな歴史は信じてはいけないニダ・・・」

 「「「「「・・・・」」」」」

 「みんな。戦争が起きてるニダ」

 「「「「「・・・・」」」」」 ごっくん!

 「この内戦は、全部、日本の陰謀ニダ」

 「日本がインド大陸に野心を持ち、儒陀を貶めようとした陰謀で起きた内戦ニダ」

 「許せないニダ」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「しかし、この教育は重要ニダ」

 「この日本語街と日本語教室は徴兵されないことが決まったニダ」

 「「「「「・・・・」」」」」 ほっ・・・

 「今日はとってもいい夢を見たニダ」

 「屑の文化泥棒国の日本が第二次世界大戦で焼け野原になって滅ぶ夢ニダ」

 「日本艦隊は全滅ニダ」

 「アメリカのB29に東京が爆撃されて」

 「世界中の国から嫌われて宣戦布告されて原爆10発落とされる夢ニダ」

 「そして、日本は儒陀に委任統治領にされるニダ」

 「日本の天皇は日本人に処刑されたニダ」

 「みんな笑うニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 「みんなも同じ夢を見て喜ぶニダ」

 「最高の夢を現実にするニダ」

 「そして、今日は世界最悪の屑国家、日本の悪口を言う祝日ニダ」

 「でも祝日以外の日でも日本の悪口は歓迎ニダ。毎日言っていいニダ」

 「今日は、世界地図から消すニダ」

 教師がハサミで日本列島を切り取っていく。

 「みんな笑うニダ」

 「歴史からも日本を消すニダ」

 日本の年表がゴミ箱に投げられた。

 「みんな笑うニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「日本の参戦は、まだニカ」

 「まだニダ」

 「何とか、日本を参戦させて日本軍将兵を肉壁で使うニダ・・・」

 「皇帝。儒陀軍が戦線で苦戦してるニダ」

 「なんでニダ。アメリカ軍は何をしてるニダ」

 「補給で、一時、後退したニダ」

 「同盟のハイデラバード藩王国とパキスタンお軍隊はなにしてるニダ」

 「そちらも前線で苦戦してるニダ」

 「ハイデラバードとパキスタンは儒陀の盾になって命懸けで戦うニダ」

 「儒陀は、同盟のハイデラバード藩王国とパキスタンのために参戦したニダ」

 「両国が儒陀を守るのは当然ニダ」

 「天孫の儒陀を攻撃するなんて、インド藩王諸国はいけないことをしてるニダ」

 「インド藩王諸国に謝罪と賠償を要求するニダ」

 「イギリスは、もう一度、インド藩王諸国を植民地にして再教育しないといけないニダ」

 「イギリスに謝罪と賠償を要求するニダ」

 「儒陀を守りに来ない、儒陀支族の下等日本支族に謝罪と賠償を要求するニダ」

 

 

 

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 月夜裏 野々香です

 次元移動の手段は、人間大砲、カタパルト方式になりそうです (笑

 うまく目的地に着地させられるでしょうか (笑

 

 

 

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第22話 1962 『自分より馬鹿が安心』

第23話 1963 『みんな、あの夕陽に向かって・・・』
第24話 1964 『い・く・ニ・ダ〜』