月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第26話 1966 『アフリカ大陸、漢華帝国の予感・・・』

 中華民国雲南省

 ドイツ帝国が雲南省に追い出した東欧・バルカン諸民族棄民が巨大なシンジケート帝国を築いていた。

 米英ソ独は共謀して、雲南省の白人社会に武器弾薬を供給し、地歩を確立していく、

 雲南省の白人諸民族は結束しつつ根を張り、

 中華民国最強の軍事組織を形成していた。

 雲南省昆明市は、シンジケート系列の近代的なカジノビル群が建ち、

 シンジケートが表社会に立つと集客のため暴力は影を薄め、

 漢字に混ざってポーランド語、セルビア語、ギリシャ語、英語、ドイツ語、イタリア語の標識が並ぶ、

 白人と漢民族が群れをなし、混沌として躍動的な社会を作り上げていた。

 日系建設会社は水力発電と道路の建設などで進出していた。

 日系ホテル

 「アメリカ系シンジケートが強くなってないか」

 「ラスベガスの規制が強くなって、こっちに流れてきたらしい」

 「悪党ってやめられんのかね」

 「中国人はカジノが好きだし」

 「中華民国は資源売却とカジノ税収で成り立ってるような節もあるからね」

 「夢と交換に税金を払ってるわけか」

 「それに刺激があって甘い汁もあるんだろうな」

 「そういえばポーランド人もずいぶん増えてきたみたいだな」

 「ポーランドマフィアは強いよ。イタリアンマフィアといい勝負してる」

 「しかし、あまり、日本じゃ 意識されてない民族だ」

 「ポーランド人はジョークネタにされているほど酷くはない」

 「人柄はいいと思うね」

 「漢民族や儒陀人と比べてだろう」

 「まぁ それもある」

 「あと、日露戦争で日本人が好かれてる部分と日独同盟でやや不信されてる部分が混在してるようだ」

 「雲南省の白人社会は一見バラバラだが漢民族に包囲されてる状態で結束してる」

 「組みやすいと思ったね」

 「代わりにシンジケートにアフリカ大陸に送り込まれた中国人は1億を下らない」

 「アフリカ大陸が中国人に支配されそうな勢いではある」

 「それで、外資シンジケートの中国支配が維持されて」

 「イギリスは植民地独立を防いでいるようなところもあるし」

 「どちらが良いとも、悪いとも言えないな」

 「東欧じゃ ドイツ同盟のルーマニア、ブルガリア、ハンガリーが強くなってるらしいよ」

 「邪魔者を中国に追い出したからだろう」

 「日本も朝鮮人をインドに送ったけどね」

 「儒陀藩皇国はアメリカの支援で潤ってるらしいけど」

 「へぇ〜 どの程度?」

 「アメリカから支援されてる分だけ」

 「ふっ 資本を生産力に転換できなけりゃどうしようもないのにな」

 「あの国は、儒教の洗礼を受けて商業と工業を軽視する傾向が強いからね」

 「結局、日本が建設した水力発電を維持しているだけで真似して水力発電を建設してる節もないし」

 「戦争で全部、浪費してしまう気かね」

 「取り敢えず、再建需要が楽しみだ」

 「ふっ あまりかかわりたくないな」

 「直撃くらっていないの爆震だけで橋が倒壊してるらしい」

 「金になるなら橋くらい作ってやってもいいさ」

 「ただで?」

 「まさか。ドルがある方がいいからね」

 「政府は国内投資を求めてるようだが」

 「ふっ 政府はそうかもしれなけどね」

 「国内投資すると強豪相手を育てるようなものだ」

 「海外の後進国投資なら強豪が生まれにくいだろう」

 「国内の強豪相手は生まれないまま、国内市場を独占できるし」

 「海外需要が大きければ債権が得られて、海外市場も優位に立てる」

 「外資シンジケートの中国支配が確実なら、中華民国投資は、やめられないと思うね」

 「ふっ 露鳳の歴史で、なぜ、敗戦した日本が高度成長したのか、分かった気がするね」

 「逸脱した歴史は、国士バリバリの日本じゃなく、無印の中華民国が高度成長に入ったわけだ」

 「国士か、日本を侍だけの国と思い込んでるような連中は駄目だよ」

 「日本人はいろんな職業の人たちが責任を持って勤勉に働いている、それでいいと思うね」

 「それに成長はスローペースだけど日本だって捨てたもんじゃないさ」

 

 

 呉

 45000t級若狭(わかさ)型強襲母艦の建造がはじまっていた。

 全長260m×全幅32m×吃水12m

 空母型の飛行甲板と格納庫に朱雀(Ka54)10機、海燕(Ka31)30機を艦載し、

 艦隊上空の対空哨戒、対潜哨戒とヘリによる敵地強襲を目的とした艦艇だった。

 都合、若狭(わかさ)、播磨(はりま)、因幡(いなば)の3隻が5年ごとに建造される。

 性能で優位にあるヘリを利用した艦艇だったものの固定翼機が配備されておらず、

 対空能力、対艦能力の欠如は大きく、

 制空権内仕様で外征力が劣ることも議論を呼ぶ、

 関係者たち

 「巷は外征力の無さを外交力の喪失と考えてるようだ」

 「瑞燕(MiG29K)を運用させてくれたらいいのに」

 「まぁ 離着艦させることはできるよ」

 「しかし、侵略する予定もないし、固定翼機は高くつくからね」

 「だいたい、対艦攻撃の主力は航空機か、潜水艦だからな」

 「ていうか、アメリカ航空隊の空襲に対して、本当に不利なのか?」

 「海燕(Ka31)を滞空させているならIC回路で誘導する対空ミサイルは圧倒的だからな」

 「F4ファントムとA6イントルーダーはそれほど怖くない」

 「実のところ、F111アイドバーグ、F14トムキャットが出てくるまで余裕があると思うよ」

 「CVよりICってか」

 「少ない予算だから投資する数を集中させないとねぇ」

 「機関は?」

 「ガスタービン・エレトニック方式で100000万馬力で30kt」

 「別に小型原子炉が補助電力で一つ」

 「原子炉は小型ほど馬力比重が悪いだろう」

 「表向きで5000馬力(3680kw)もないが、例の技術でそれほどでもない」

 「位相シールドは鉛100mmほどだが艦から1mほど外側に張れる」

 「対艦ミサイルが高速であるほど衝撃は大きくなるし」

 「成形炸薬弾(HEAT)がメインならほぼ無力化できるだろう」

 「そういうのを聞くと戦艦を建造したくなるねぇ」

 「ふっ 位相シールドをもっと強靭にできないと難しいな」

 「やっぱりコンピュータの問題?」

 「結局、次元テスラコイルユニットの数と電力に比例するからね」

 

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 露鳳の+コアを中心として、海底から採取した精製−プラズマが周囲を覆う。

 そして、テスラコイルの調整に合わせてプラズマの形が変化していく、

 研究者たち

 「プラズマの形を固定させるのは簡単だが」

 「形を変化させるとなると膨大な処理速度と容量が必要になるな」

 「ええ、ですが、面白い素材ですね」

 「いまのところ、核1に対し、プラズマは最大100ほどか」

 「露鳳を38000tとしたら、その100倍・・・」

 「潜在的な可能性は物凄く高いですね」

 「それもこれもテスラ回路と電算能力次第なんだがな」

 「軍の無駄遣いには呆れますね」

 「あった方が安心程度ならこっちに予算を回せばいいものを」

 「ですよねぇ〜」

 

 

 航空技研

 瑞燕の改良に合わせ、

 瑞鶴(Su33)の開発も始まっていた。

 複合素材、光ファイバーなど

 2012年の先端技術であっても生産可能であれば一部が使われていた。

 航続距離が長く、外洋制空能力の高い瑞鶴は本命中の本命であり、

 前線戦闘機仕様から発展させたMiG29Kは技術を慣らすための試金石に近かった。

 「意外と早く、作れる部品もあるんだな」

 「露鳳の翻訳が進めば、手探りで軌道に載せられるものはありますよ」

 「一番厄介なのは、電子技術かな」

 「小指大の集積回路を作るのに最大級の工場だろう」

 「それも山を刳り抜いて・・・」

 「防衛費の肩代わりみたいなものだよ」

 「戦闘機が少ないんだから無理な作戦をさせずに済む」

 「戦闘機が少なくなったのは、山を刳り抜いたからという説もある」

 「まぁ それは言えなくもない・・・」

 サチュルン/リューリカAL31K (推力 74500kg / 126000kg) が炎を噴き出していた。

 推力偏向ノズルが±15度の範囲で動き、

 そのたびに噴出される炎の向きが変わる。

 機能を先行させることができても

 姿勢制御に至る電子回路とプログラムはまだ先だった。

 「悪くないじゃないか」

 「クリーモフRD33を複製できるなら、同じ技術レベルの拡大モノだからね」

 「オリジナルよりマシなモノを飛ばせそうか?」

 「チタンと複合素材の比重に比例するから予算次第だね」

 「「「「「・・・・・」」」」」 むっすぅううう〜

 「どいつもこいつも、予算泥棒どもが・・・」

 「瑞鶴までは、いいですけど」

 「それ以降は、PAK FAの概略図があるだけで、ほとんど未知領域ですからね」

 「開発にかかる費用と年月は、数十倍になると思ってください」

 「「「「「・・・・・」」」」」 くらぁ〜〜

 「むしろ、露鳳の未知領域分野の技術を積極的に取り入れていくべきでしょう」

 「瑞鶴(Su33)の次は、UFO型になるかもしれないな」

 「あまり隔絶してるとまずいのでは?」

 「そう・・なんだよねぇ・・・」

 

 

 満州帝国 延辺朝鮮族自治区

 「ケンチャナ」

 どかーん! 事故

 「ケンチャナ」

 泥棒! 殴り合い

 「ケンチャナ」

 キャー! 強姦

 「ケンチャナ」

 がちゃん! 強盗

 「ケンチャナ」

 ぼこっ! 殺人

 「延辺朝鮮族は日本の下僕ニダ」

 「下僕の下僕なら儒陀主族が自由にしていいニダ」

 「「「「・・・・」」」」 唖然

 「出世したいのなら、娘や妻を差し出すのが常識ニダ」

 「「「「・・・・」」」」 唖然

 

 延辺朝鮮族の良識派たち

 「インドの儒陀人は嘘吐きと泥棒と人殺し、ゴミのような人間ばかりニダ」

 「儒陀の言うことは全部ウソで、モラルと誠実の欠片もない、この世の地獄ニダ」

 「なぜニダ。新生児死亡率の高さはだてじゃないはずニダ」

 「障害児を間引きして平均は、知力と体力で日本人より優れてるはずニダ」

 「おかしいニダ」

 「親の世代が駄目ニダ」

 「新しいモノを作っても奪われて殺されるだけニダ。もう駄目ニダ」

 「このままだと儒陀だけじゃなく、延辺朝鮮族も同属嫌悪で滅ぶニダ」

 「朝鮮の自治権を捨てて日本人に行政を任せるか。血統を変えるしかないニダ」

 「儒陀の女を日本に出して孕ませて、儒陀人として育てるニダ」

 「日本人は、シャイでナイーブなところがあってなかなか声を掛けてこないニダ」

 「観光で歩かせたくらいで孕まないニダ」

 「うちの娘は深夜、駅を三つ分歩いても襲われなかったと言ったニダ」

 「信じられないニダ」

 「日本は一度も強姦されず成人する娘が圧倒的に多いらしいニダ」

 「日本の男は腰抜けの機能障害野郎ニダ」

 「赤線に送るしかないニダ」

 「そんなとこに行くのは低俗な家の娘と日本のモテないクズ男だけニダ」

 「そんな血いらないニダ」

 「そんな血でもファビョ孫らないだけ、儒陀の男よりマシニダ」

 「日本の赤線は廃止されたニダ」

 「残ってるの満州帝国ニダ」

 「漢民族は窃盗野郎で嫌ニダ」

 「満州帝国も5年後に廃止が決まってるニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 「まだ、ドイツ人、イギリス人がましニダ」

 「白人の血が入ってると社会的に差別されて殺されるニダ」

 「正気な朝鮮族なら娘を朝鮮人と結婚させないニダ。日本に行かせるニダ」

 

 

 アフリカ大陸

 中国人は人口を増加させていた。

 ドイツ帝国とイギリスとフランスの利害が一致したことで起きた現象であり、

 政府は表向き関与しておらず、中華民国の外資シンジケートが行っていた。

 日本、アメリカ、ドイツ、イギリス、ソビエトとにとって

 雲南省の白人世界は有益と判断されたのか黙認され、

 代替のアフリカ大陸への中国人移民も必然となった。

 そして、多数派とはいえないまでも10人一人は漢民族となってしまい、

 最多人種勢力となった中国人はアフリカ大陸の独立運動をことごとく押し潰し、

 イギリス、フランスの植民地のまま取り残してしまう。

 各国政府は億単位の人口移動にもかかわらず、口を閉ざし、

 マスコミも圧力を受けたのか、

 報道されても国際問題にも、社会問題にもならなかった。

 南アフリカ共和国 ケープタウン

 それまでインド人が占めていたイギリス人の次席を中国人が占め始めていた。

 中華料理店

 日本人たち

 「漢民族はイギリスとフランスの利権代理人で街全体が漢字一色か・・・」

 「悪いことに中華民国の漢民族よりモラルが高い」

 「というより地の利がないから契約違反のリスクが大きいからだろう」

 「借家人の漢民族は働き者。大家のイギリスは安定収入で左内輪だな」

 「先にインド大陸に移民した儒陀でさえ、これだけの町並みは作ってないし」

 「これほどの商品とサービスもない」

 「こちら向けの商船も増えてるよ」

 「なんか、ヤバい雰囲気だな」

 「だけど、中華料理なら生活しやすいし助かる」

 「それに黒人みたいに粗野じゃないし」

 「狡猾な中国人とどっちがいいかと言われると悩む」

 「在阿(在アフリカ)中国人は、アフリカ大陸の資源を得るのに役立ってるし」

 「彼らの発注してくれる公共工事は金になる」

 「水力発電ダム建設だけでも50近い発注騒ぎだし」

 「大陸縦断・横断鉄道の建設も舞い込んでる」

 「でもアフリカ大陸の生産力も向上しているね」

 「インド大陸のインド人と儒陀人。アフリカ大陸の黒人と中国人」

 「どうなるか、楽しみではあるね」

 「アフリカ大陸も内戦になる?」

 「アフリカ大陸全域に中華ネットワークが作られてるよ」

 「黒人は部族ごとの烏合の衆だから勝てないだろうし」

 「アフリカ大陸が巨大な漢華帝国になりかねない」

 「ドイツもイギリスも目先の利益に囚われたんだろう」

 「日本の利益も大きいからね」

 「どいつもこいつも戦後再建で悪どいことしやがって」

 「日本が先に朝鮮人をインドに流したからあまり言えないけどね」

 「だけど、儒陀は、儒陀創世記でインド移民を正当化してる」

 「儒陀は、インド大陸支配の野望を隠そうともしてないからな」

 「漢民族は、そういう素振りを見せてないがアフリカ大陸は漢華帝国になると思ってるようだ」

 「儒陀は実力がないから、口に出さないと不安になる」

 「漢民族は、敵に意図を悟らせないため口にしないだけだろう」

 「怖いのは漢民族かな」

 「怖いのは数だろうね」

 「個人の才覚も優れてるよ。漢民族の内輪揉めで世界が助かってる」

 「おかげで雲南省は、白人と少数民族ばかりか」

 「雲南省も需要が多いから助かるよ・・・」

 上質のチャイナ服を着た中国人たちが現れる、

 東アジアで互いの不信感で背を向けあう日本人と漢民族が東アジア以外で手を握る。

 アフリカ大陸で共に不安定な地位にあり、

 補完関係が築ける場合、明日の成功を思って共闘する。

 呉越同舟は、珍しい光景でもなかった。

 「ダム建設の件、考えていただけたあるか?」

 「現地の下見をしました」

 「風土病検疫の確認がまだですが」

 「安全が確認されれば、予算内で大丈夫だと思われます」

 「それは良かったある」

 「アフリカ大陸は、今後、伸びていくある」

 「是非とも日本企業の工事参入を求めたいある」

 「中華民国の参入もあるのですか?」

 「いえ、来るとしても労働者だけある」

 「いまの中華民国の技術と勤労意欲で恒久的な土木工事なんて怖くて怖くて・・・」

 「「「「「・・・・・」」」」」 苦笑

 「こちらも資源が得られるなら、今後とも協力関係を維持していきたいと思っています」

 「そういえばアメリカとドイツの代理人が日本からチタン部品を買う方が安いと聞いてますよ」

 「おかげで南アフリカでもチタンが買えるようになったようです」

 「素晴らしい技術ある」

 「中華民国でも製鉄の生産が伸びてるのでは?」

 「まだまだ、低級品ある」

 「加工で負けてるのでインゴットのまま日本に輸出するしかないある」

 「いまのところ、ですか」

 「わたしたちは、お互い、外地で苦労する身ある」

 「国境の内側に引き篭もった両政府のお偉方に振り回されない関係を築きたいある」

 「ふっ 確かに・・・」

 中国人が合図すると満漢全席が運ばれてくる。

 規模も味も日本の中華街の満漢全席と変わらず、

 華僑の底力を思い知らされる。

 国外に出ている華僑は多かれ少なかれ外資シンジケートで経験を積み、

 ノウハウを習得していた。

 持って生まれた商才と欧米のビジネスルールを理解している華僑は強く、

 アフリカ経済の牽引者となっていた。

 多くの外資企業が在阿華僑に投資し、利益を得ていた。

 

 

 ドイツ帝国

 ナチスが構築した中央集権は、旧帝政貴族の復権と

 戦中功績者の新貴族と合わせた有力者が帝国の権力基盤を引き継ぎ、

 やや、分権化しつつ新帝政を機能させていた。

 封建的な治世は、特権階層か、権力に忠誠を誓う人材に制限させられる、

 どちらの選出法も公平な競争を阻害させ、特権強化と失望を蔓延させ、

 社会全体を無能と怠惰と停滞に向かわせる、

 とはいえ、選挙は行われており、

 共産主義体制のように教条主義でなく、

 競争を誘発させる程度、貧富の格差が認められていた。

 また作られたばかりの帝政は、淀みが少なく、若葉のように息づき活性化していた。

 ウストカ演習場

 ソビエト連邦が滑空砲装備の戦車を開発したことが知れると

 重戦車の存在価値は掠れてしまう。

 日本の外交武官がドイツ陸軍の演習の様子を眺めていた。

 主力戦車のレオパルド戦車に混ざって、2種類の一際大きな戦車も現れる。

 巨大さの割に機動力があり、その火力は重砲だった。

 「やっぱり、でかいのは目立つね」

 

  100t級リーゼ(巨人)戦車

   全長12m 車体長10m×全幅4.2m×全高3m

   2500馬力 速力65km/h  航続距離260km

   PaK44 55口径128mm砲  7.92mm機銃2丁

 

  180t級ドラッヘ(龍)戦車

   全長14m 車体長12m×全幅5.2m×全高4m

   4500馬力 速力65km/h  航続距離260km

   K39クルップ製52口径149.1mm砲  7.92mm機銃2丁

 

 「だけど、大型重戦車も黄昏かな」

 「どうかな。月1両で量産を継続してるなら、複合装甲を使ってると考えるべきだろう」

 「敢えて不利な大型重戦車生産で、強靭な複合装甲を張ってると思わせてるのかもしれない」

 「敵の目を大型戦車に集中させたいだけじゃないのか」

 「被害担当戦車? ドイツ人らしくない発想だ」

 「しかし、巨大な戦車をあの速度で走らせるのだから大したものだ」

 「エンジンの差だろうね」

 「エンジンか・・・」

 「そういえばドイツが新型航空エンジンと瑞燕のエンジンをライセンス交換したいと」

 「嫌だ」

 「だよねぇ」

 「しかし、軍事費で手抜きしてるからアメリカ、ドイツ、ソビエトに追い付かれそうだな」

 「しょうがないよ。基礎の社会基盤が根底で負けてたからね」

 「それに教育なんて何十年も先の投資だし」

 

 

 

 日本の空港

 3発エンジンの中距離旅客機ボーイング727が並び始めていた。

 日本航空格納庫 日本人関係者たち

 「国内線仕様なら707より改装しやすいと思うな」

 「まぁ 徐々に複合素材に張り替えていけば軽量化で利潤が上がるからいいけど」

 「中身はともかく、2012年までの旅客機図鑑を見てるからデザインは微妙だな」

 「ドイツの中距離旅客機がよくないか」

 「ドイツよりアメリカの貿易量が多いし、お得様だからねぇ」

 「どちらかというと軍需はドイツ。民需はアメリカかな」

 「でも車はドイツ車の方が・・・」

 「工作機械は負けてないはずなんだけどな」

 「仕様の差じゃないかな」

 

 

 どこかの平和団体

 「愛国心は、権力を固めるための方便に過ぎないニダ」

 「愛国者は虎の威を借る寄生虫ニダ」

 「愛国者は自由と平等の敵。人民を搾取する敵ニダ」

 「古臭い伝統を否定し、新たな秩序で日本を再生させるニダ」

 「国を愛せない国民が国のために戦うわけがないニダ」

 「みんなで人権を得るため横暴な権力者と戦うニダ」

 「何でもするニダ」

 

 どこかの保守団体

 「平和主義者は、国を弱体化させてる国賊ニダ」

 「貧富の格差を維持しなければ、勤労意欲は低下し、権力構造を崩され、財閥は解体されるニダ」

 「連中は日本を中華民国とソビエトとアメリカに売り渡そうとしてる売国奴ニダ」

 「平和団体を潰し、国防費を増額させ。対米、対ソ、対中の侵攻に備えるニダ」

 「何でもするニダ」

 

 ウヨサヨ討論会

 「戦艦の建造は戦争反対ニダ!!!」

 「いまどき、戦艦なんてないニダ!!! おかしいニダ!!!」

 「全部、戦艦ニダ!! 全部、空母ニダ!!」

 「日本は共産化して民主化すればいいニダ!!」

 「馬鹿を言うなニダ!!! 国防を万全にするニダ!! でも核兵器は反対ニダ!!」

 「天皇なんてくそっくらえニダ!!」

 「な、なんと言うこというニダ!!! 非国民ニダ!」

 「国防愛国者と愛国献金を募るニダ!!」

 「そして、同胞の儒陀を守るためインドに参戦するニダ!!!」

 「世界平和同志と平和献金を募るニダ!!」

 「そして、平和を守るためインドに参戦するニダ!!!」

 

 

 在日たちの集会

 「日本人同士をいがみ合せて、正常な思考を失わせるニダ」

 「その上、省庁を不信させ、派閥抗争と貧富の対立を煽って、お金をたんまりニダ」

 「裏の仕事を引き受ければ権力層の弱みも握れるニダ」

 「そして、テレビ、新聞、雑誌、ラジオを押さえて日本人の目と耳と口を支配するニダ」

 「そして、右翼を煽って日本をアメリカ、ソビエト、中国と戦争させて解体させるニダ」

 「駄目でも左翼を煽って性欲と食欲と怠惰で、日本人を堕落させることができるニダ」

 「日本を暴走させて滅ぼさせるか、日本人を豚にして自滅させるニダ」

 「インド参戦も急がせるニダ。ソビエトには話しを通してるニダ」

 「アメリカ側にも通したニダ」

 「日本がインドに参戦したらそのまま、日本はお終いニダ」

 「きっと、上手くいくニダ」

 

 

 日本 総理官邸

 総理は椅子の座り心地に酔いしれていた。

 少し離れたテーブルで事務次官が封筒を切って、文書を開き・・・・

 「総理。儒陀から、また謝罪と賠償請求が来ました」

 「何か、やったのか?」

 「日本で仕立てた軍服を儒陀将兵が取り合って怪我を・・・」

 「・・・・」 ため息

 「いつものように、真に遺憾と返してやってくれ」

 「いい加減、相手にしない方がよいのでは?」

 「んん・・・」

 「まぁ 日本は郵送代もないとか、他の国に言い触らされても面倒だからな」

 「儒陀人の言うことを真に受ける人はいないかと」

 「しかし、インド内戦で私腹を肥やした儒陀人はアメリカ合衆国に逃げ出してるそうじゃないか」

 「そこそこ、成功してる者もいると聞く」

 「きっと周囲は、呆れてることでしょう」

 「自分の国から逃げ出したくなる国って、どういう国なんだろうな」

 「不正腐敗、人種差別、治安と生命の不安でしょうか」

 「不正腐敗か・・・」

 「日本国民が我慢強くて助かるよ」

 「日本が島国というのもありますが、天引き分が後進国より少ないのでしょう」

 「使途不明金は、世界最大なんだけどね」

 「その一点だけは、野党と話しが付いてますから」

 「それはそうと儒陀がまた工作してるって?」

 「特高から関係各所に警告を通達させてますので大事には至らないと思いますが」

 「在日に生殺与奪権を握られてる有力者もいるようです」

 「使っていたはずが、いつの間にやら使われる側か・・・」

 「火遊びもほどほどにしないとなぁ」

 「ええ、とはいっても競争が激しいですからねぇ」

 「日本人は荒事を避けたがる傾向がありますし、潰しの利かないこともありますし」

 「悪いことに潔癖症と小心が災いしたのか、同和と儒陀を結びつけて、数が増してるようで・・・」

 「そうなんだよねぇ」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 

 

 世界の4強の一角、

 ソビエト連邦は、世界赤化の国家目標を抱えていながら、

 共産主義世界の宗主国としての地位を保つ保身と品位も同時に要求されていた。

 支配確立と離反防止の二つは相反し、矛盾した言動を強いられる。

 成り上がった国家と成り上がろうとする国家は、その行動原理で著しい相違があった。

 クレムリン カザコフ館

 「例のX艦の情報は?」

 「まだニダ」

 「それより、在日儒陀は日本の政官財に食い込んでるニダ。もっと資本がいるニダ」

 「儒陀人は日本社会で敬遠されて聞くが」

 「いま、カッコウ作戦を発動中ニダ」

 「カッコウ作戦?」

 「日本の主婦をやるニダ」

 「そしたら、儒陀の子供を日本人に育てさせることができるニダ」

 「日本人は目先の生活と利益のために生きてるから足元に気付かないニダ」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「しかし、それでも日本人として教育されるのじゃないのかね」

 「脅迫しながら日教組合から教育界に入り込むニダ」

 「そして、日本人を馬鹿に作り替えてやるニダ」

 「もっと資本があれば日本右翼を煽って、日本とアメリカを戦争させられるニダ」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「日本とアメリカが戦争すれば、儒陀とソビエトはインドをいいようにできるニダ」

 「その時は、延辺朝鮮族と日本の在日儒陀が一斉蜂起して、ソビエト軍を案内するニダ」

 『『『『『この野郎・・・ソビエトを戦争に巻き込もうとしてやがる』』』』』

 「上手くいけば、ソビエトはインドと日本の半分を手に入れることができるニダ」

 「満州を奪えばソビエトの国力は倍増ニダ」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「ソビエトと儒陀で日本とインドを支配するニダ」

 「そしたらX艦はソビエトの自由にできるニダ」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「時に儒陀マフィアは国内のロシアン・マフィアと接触があると聞いてるが」

 「接触なんてないニダ!」

 「イズマイロフシンジケートを討伐しようと考えてるのだが」

 「いけないニダ!」

 「イズマイロフ・シンジケートはソビエトの中華民国支配の要ニダ」

 「しかし、イズマイロフ・シンジケートは銃を国内のイスラム勢力に密輸してる節がある」

 「あれはソンツェヴォ・シンジケートがやってることニダ」

 「ソンツェヴォ・シンジケートを討伐するなら全力で支援できるニダ」

 『『『『『やっぱり、イズマイロフ・シンジケートと接触してやがるのか』』』』』

 『雲南省のイズマイロフは、ドイツ帝国にソビエトの情報をリークしてると聞いてます』

 『儒陀も一枚咬んでるのでは?』

 ひそ ひそ ひそ ひそ

 「時に・・・儒陀文学は素晴らしいと聞いてるが」

 「そうニダ。儒陀文学は世界最高峯の儒陀言語で書かれてるニダ」

 「スウェーデンが儒陀文学の素晴らしさに気付かないとは情けない」

 「その通りニダ。ノーベル賞とれる作品がごろごろしてるニダ」

 「何だったかな。雨は “ピ” だったかな。とっても情感のある発音に驚いたよ」

 「その通りニダ。誰でもどんな民族でも “ピ” で雨をイメージできるニダ」

 「宣伝が足りないのではないか」

 「そんなことないニダ」

 「いま、雲南省の友人を通じてスウェーデンに働きかけてるニダ」

 「スウェーデンに顔が利く有力者じゃないと難しいのではないか」

 「大丈夫ニダ。儒陀は欧州シンジケートとも仲がいいニダ」

 『繋がったな』

 『『『『・・・・・』』』』 こくん & ため息

 「時に儒陀ネットワークは、ドイツ帝国の情報も得られるかね」

 「もちろんニダ。儒陀ネットワークは世界一優秀ニダ」

 『ヤバい・・・』

 『『『『・・・・・』』』』 こくん & ため息

 この頃、アメリカ、ソビエト、ドイツは日本のX艦情報を得んとするため儒陀人と通じていた。

 しかし、同時に自国の情報が別の列強に横流しされていることにも気付きはじめる。

 

 

 

 インド大陸

 儒陀 日本語学校

 “日本は日露戦争で勝つと1905年朝鮮半島を日本国に併合し・・・”

 「もういいニダ!!!!!!」

 「こんなのは捏造歴史ニダ!!」

 「日本は小さくて弱かったけど頑張った? ロシアを馬鹿にしてるニダ」

 「日本が韓国を併合????」

 「奇形のくせに! 奇形のくせに!」

 「こんな教科書は、敵国を舐めてるクズの三流架空戦記以下ニダ」

 「ロシア帝国は、もっと精強で世界最大の帝国ニダ」

 「ロシア帝国海軍は海戦と同時に通商破壊で日本海軍を翻弄したニダ」

 「そして、旅順艦隊はバルチック艦隊と合流して、日本艦隊を壊滅させたのが史実ニダ」

 「ロシア帝国海軍は、奇形の日本海軍に負けるはずがないニダ」

 「開国したばかりの日本如き弱小奇形民族が勝てるはずがないニダ」

 「弱小日本が世界最強のロシア帝国に勝つなんてことはあってならないニダ」

 「本当は、日本はロシア帝国に負けて天皇は自殺して、ロシアの属国に成り果てていたニダ」

 「そして、儒陀は可哀想な日本人を庇う為にロシア帝国と一緒に日本を支配していたニダ」

 「せ、せんせい・・・」

 「日本人は、狂って奇形でとっても可哀想だったニダ」

 「ロシア語も英語もまともに発音できない哀れな生き物だったニダ」

 「日本人は、先生の糞を食べた豚をポークカレーにして喜んで食べていたニダ」

 「先生は哀れ過ぎて泣いたニダ」

 「それを見て、日本人は本当に嘘吐きで、泥棒で、クズだと実感したニダ」

 「いつか、嘘吐きの日本人にロシア帝国の属国だった真実の歴史を書かせてやるニダ」

 「みんなも、大きくなったら真実の日本史を日本人に教えてやるニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 アメリカ人教師たち

 「変だな。なんで歴史の点数が悪いんだろう」

 「特に日本史は酷い、わざと間違ってるとしか思えん」

 「歴史だけは、日本人教師に教えさせた方がいいかもしれないな」

 「しかし、儒陀人は間違った回答に丸をつけようとするし猛烈に反対するぞ」

 「日本人と歴史認識で共感性がないとスパイとして役に立たないんだがな」

 「まさか、儒陀創世記なんて教えてないだろうな」

 「そんなバカ教師はクビにしてやる」

 「クビにしようとすると、なぜか、アメリカ本国から圧力がかかるという・・・」

 「なんじゃそりゃ ロビー活動してるのか」

 「在日が握ってるかもしれないX艦情報が欲しいんだろう」

 「あんの野郎・・・人の弱みに付け込みやがって・・・」

 「本当は知っててもゆすりネタだから教えないつもりなんじゃないのか」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「日本軍の参戦はまだニカ?」

 「まだニダ」

 「儒陀権益を餌に日本軍を出兵させるニダ」

 「日本軍将兵を肉壁にしてインド軍に勝つニダ」

 「日本軍が疲弊して弱体化したらソビエトに満州を攻めさせるニダ」

 「日本が参戦してこないのは支族としての意識に欠落してるからニダ」

 「日本に謝罪と賠償を要求するニダ」

 「皇帝。大変ニダ」

 「第3師団が後退するニダ」

 「なぜニダ?」

 「インド軍の大攻勢ニダ」

 「アメリカはどうしたニダ」

 「苦戦してるニダ」

 「インド軍は督戦隊と囚人部隊を使い始めたニダ」

 「督戦隊と囚人部隊はソビエト軍の戦術ニダ」

 「ほかの国が使ったらいけないニダ」

 「儒陀も使ってるニダ」

 「儒陀は世界文明の発祥ニダ」

 「督戦隊と囚人部隊は、儒陀がロシアに教えてあげたものニダ」

 「インド藩王諸国に断固抗議するニダ。謝罪と賠償を要求するニダ」

 

 

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 月夜裏 野々香です

 アフリカ大陸の中国社会、

 雲南省の白人世界、

 ぜ〜んぶ、中華民国の外資シンジケートがやったことですが、

 イギリス、フランス、ドイツは陰で結託、

 日本、アメリカ、ソビエト、ドイツも雲南省の白人世界に地歩を築くため見て見ぬ振りです。

 アフリカ大陸は漢華帝国の予感です。

 

 そうそう、勧善懲悪は書きやすいかな。

 なんも考えなくてもスラスラと・・・

 

 

 

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第25話 1965 『十 日 十 韋』

第26話 1966 『アフリカ大陸、漢華帝国の予感・・・』
第27話 1967 『史上最強の兵器は・・・』