月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第29話 1969 『生態系分岐世界は・・・』

 日本海側の都市が徐々に近代化していく、

 新潟

 「ずいぶん、華やかになってきたな」

 「一番大きいのは水稲農林1号かな」

 「あと関東と交通が結ばれたし」

 「儒陀人の密入国で犯罪も減ったから、治安が良くなると都市化も進むのかな」

 「でも在日は土地収用で役に立つんだけどね」

 「土地は一杯あるからもういいよ」

 「でも他の生業を見つけたみたいだけど・・・」

 「ああいう連中は、法に縛られた警察じゃ手に負えんよ」

 「特高じゃないとな・・・」

 日の丸が描かれた黒塗りの車に

 “アメリカに報復せよ”

 “ソビエトに先制攻撃せよ”

 “中華民国を再占領して制裁せよ”

 “インド洋の制海権を守れ”

 “天皇万歳”

 “日儒友好”

 の白文字が記載されていた。

 警察官たちとガラの悪い男たちが問答を始める

 「おい、ここで、なにしてる?」

 「尊王攘夷ニダ

 「・・・・」

 「・・・・」

 「こんな政策誘導みたいなのはいかん」

 「日本は政策を語れない国なのニカ

 「そ、そいうわけではないが・・・」

 「それに、これは、文字じゃないニダ。模様ニダ

 「ふざけんな」

 「真面目ニダ

 「日の丸を勝手に使うな」

 「そんな法律はないニダ

 「とにかく迷惑だから、どっかにいけ」

 「なにをいうニダ。愛国ニダ。天皇万歳ニダ

 「この警察官が愛国を排斥しようとしてるニダ!!!!!!!!」

 「わ、わかった。わかった」

 「とにかく、交通ルールを守れ」

 「わかったニダ」 にや〜

 「警察官は、愛国献金しないのニカ

 「お前にはしない!!!」

 

 

 中華民国雲南省

 南にありながら高山地域で程よい気候だった。

 ヨーロッパ風の建物が建ち並び、ラテン系の文字が看板を埋めていく、

 ポーランド人、セルビア人、アルバニア人、ギリシャ人が支配層を形成し、

 中華民国内に完全自治区を作っていた。

 少数民族が白人の次席に付き、漢民族は少数派になっていた。

 列強資本が次々と参入し、中華民国で最も洗練され近代化してると言われ、

 満州帝国と並んで、中華民国のクビキとなっていた。

 日系ホテル 扶桑

 日本人たち

 「今日は、何か集まりがあるのかな」

 「高校野球だよ。東アジア大会をやるらしいよ」

 「東欧人が多いのに野球・・・」

 「中華民国のアメリカ系シンジケートはカジノ税収でウハウハらしくてね」

 「野球用具を学校に寄付したらしいよ」

 「サッカーが安上がりなだけで、野球が嫌いというわけじゃないようだ」

 「アメリカは、野球人口を増やしたいわけか」

 「野球宗国だからうまみがあるんだろうね」

 「欧州資本シンジケートはサッカーで巻き返すんじゃないのか」

 「どちらにしろ、国際競技で動くだけなら平和でいい」

 「政治と軍事で牙を抜かれた中華民国は、経済で巻き返しを図ってる」

 「アフリカ大陸の漢華ネットワークと結んだ時が怖いな」

 「中華民族総華僑なら軍事費を手抜きして、民間活力を最大限に生かすだろうから」

 「中国大陸共産化より手強いかもね」

 「漢民族同士の不信だけが頼りだな」

 「まったく・・・」

 

 

 

 満州帝国

 国務院

 日本人と漢民族が行政に携わっていた。

 日本軍将校たちが肩で風を切って室内に入ってくる。

 「おい、軍事費が足りないぞ」

 「もう、予算ないある」

 「他のところから回せばよかろう」

 「駄目ある」

 「だ、駄目って。こっちは子供のお使いしてんじゃないぞ」

 「次はもう少し色を付けるある。今回はこれだけある」

 「この戦力比を見ろ」

 ばさりと一覧表がテーブルに叩きつけられる。

 「何とかしろ」

 「そういう近視眼なセクト主義はうんざりある」

 「なっ なにをいう。満州帝国の国防だぞ」

 「お前たちの国でもあるんだからな」

 「知ってるある」

 「しかし、国民は軍人と違って国防だけで生活してないある」

 「お、おまえ、着服してないだろうな」

 「「「「・・・・・」」」」

 「なにをいうある。失礼ある」

 「疑わしいな」

 「あなたの方こそ。朝鮮人、軍属と結んで軍事クーデターを起こそうとしてないあるか」

 「なっ! なんだと!」

 「・・・・」

 「大丈夫なのか。こいつ」

 「諸葛孔明みたいに誠実な中国人もいるよ」

 「少ないけど・・・あっ もしもし、国務院の財務室だけど」

 「いま、第5師団の将校が来て騒いでるんだけど、あんたの会社が嗾けさせてるの?・・・」

 「ばっ 馬鹿!」

 「えっ 違う? 本当に・・・何日か前、街宣車が走ってたみたいだけど」

 「・・・違う・・・」

 「ほぉ・・ただのボランティアで街宣やってるって思えってか・・・」

 「本当は、あんたらの会社がダミー会社使って、やらせてんじゃない?」

 「・・・違うって?・・・」

 「あんたの会社。国防担ってる企業だからって、なにやっていいとか、思ってないだろうな」

 「・・・わ、悪かったな!」

 「こっちも言い過ぎたある」

 「次は期待してる。忘れるな!」

 すたすた すたすた すたすた

 「助かったる」

 「諸葛孔明はなかったかな」

 「彼よりはちょっと落ちるある・・・」

 「まぁ 確かに戦力比的に危ないんだけどねぇ・・・」

 「ソビエトだって口実がなきゃ 将兵の戦意を保てないだろうし・・・」

 「核地雷あるし。こちらが相当弱ってないと攻め込みたくないよな」

 「そうある」

 

 

 奉天

 社会資本が増えると娯楽施設が必要になるだろうと考える投資家が現れる。

 そして、ボウリング場が建設されていた。

 関係者たち

 「ボウリングのブームとやらは来ますかね」

 「富裕層も増えているし、子供も増えている」

 「ボウリング場は当たると思うけどな」

 「競争が激しくなると大変じゃないですか」

 「まず独走して開拓する」

 「まぁ 既存のボウリング場はブーム以前で息切れしてる」

 「こちらは、既存のボウリング場でノウハウは掴んでるし、改善もできる」

 「軌道に乗ったら客が来てガッポリだ」

 「でも競争が激しくなるんじゃないですか」

 「競争が激しくなれば集客のため投資が増えるし」

 「サービス過剰で賃金負担も大きくなる」

 「切磋琢磨で徒労が増えるのに利潤が落ちる」

 「まぁ どの辺で、他の投資家にババを掴ませて、ボウリングから撤退するかだね」

 「独占できればある程度、調整できるんですがね」

 「消費者はサービス競争を望むし、独占禁止法もあるからね」

 「国が冷や水をかけるんじゃないですか」

 「まさか、ボウリング需要がどのくらいあるのか国が知るわけないし」

 「正確な情報を知ってるのは経営者だけ」

 「それだって、見込みに過ぎないし、下駄を履くまでわからない」

 「ちょっとした創意工夫で、延命できるかも見当つかないしね」

 「儲かるぞって、ボウリングバブルを膨らませるだけ膨らませて」

 「あとは、他の資本家に押しつければいい」

 「いいんですかね。気が引けますが」

 「構うもんか」

 「こっちだって、ボウリングブームが来るかもしれないって見込みだけでやってる」

 「こういう事業は、利益の条件がどれだけ重なってるかで決まる」

 「ブームが来なければ大損なんだからな」

 「あとは、投資するタイミングと “腹” だよ」

 「こういうのはな」

 「儲かってそうだ。安定収入が見込めそうだ、って」

 「あとから参入する臆病者と卑怯者が損するのさ」

 「ところで、なんで、マンボウの看板がトレードマークに?」

 「満蒙・・・まんもう・・・まんぼう・・・」

 「「「「・・・・・」」」」 しら〜

 

 

 日漢野球大会

 高校生たちが球技を繰り広げていた。

 3回  隋帝 1 − 1 聖徳

 スタンドは8割ほど埋まり、双方の応援が熱を帯びていた。

 ホーム側の天幕

 隋帝高校の用務員が校長に電報を手渡す。

 「・・・中華民国の代表が雲南のワルシャワ高校に決まったある」

 「では、聖徳と隋帝で勝った方が満州帝国の代表でワルシャワ高校と戦うわけですね」

 「負けないある」

 「自信が御有りのようで」

 「当然ある。勝ったら焼き肉を御馳走する約束ある」

 聖徳高校の校長がコーチを呼び、

 「勝ったら焼き肉食べ放題と選手たちに・・・」

 「はい」

 「あっ ずるいある。真似してはいけないある」

 「勝つのは焼き肉じゃなく、実力ですよ。実力」

 聖徳側ベンチから歓声が上がり、

 聖徳高校の校長が手を振って応え、

 カキンッー!

 聖徳のバッターがバット振り切り、

 白球が1塁と2塁の間を抜けていく、

 隋帝の野手が懸命に追い付いて、ボールを取ると、

 聖徳の2番は1塁で止まる。

 「・・・・・」 にやり

 「・・・・・」 むっすぅうう〜

 「ふっ こういうスポーツ交流は悪くないですな」

 「清国時代には考えられなかったある」

 「大変な時代だったそうですね」

 「わたしは清王朝高官の庶子だったある」

 「物心ついた頃、義和団に殺されそうになって家族と一緒に満州に逃げてきたある」

 「義和団は、扶清滅洋だったのでは?」

 「科挙の関係者は恨まれていたある」

 「というより、大陸全土が無法地帯で官吏が強盗だったある」

 「そして、転々としながら日本が取り付いた満州に落ち着いたある」

 「どうして、満州を?」

 「兄が決めたことある」

 「その頃、いろんな情報が行き交ってたある」

 「共通してるのは、租界が安全だったことある」

 「なので外国勢力に近い方がいいと思ったある」

 「正解だったある」

 「いまも中華民国に行くとあまりの無法ぶりに驚くある」

 「あっ 雲南省は、満州の次に良かったある」

 「中華民国のお金持ちは満州国と雲南省に私腹を肥やした金を貯め込んでるある」

 「聖徳の校長もいざという時のこと、考えておいた方がいいある」

 「いざというときですか・・・」

 「そうある」

 「いざというときは中華民国の友人を助ける約束で、少しお金を貰ってるある」

 「あははは・・・」

 「笑い事じゃないある」

 「満州が危なくなった時は、こっちが中華民国の友人に助けてもらうある」

 「そのために中華民国の友人にお金を預けてるある」

 「生きる知恵ですね」

 「そうある」

 「中華民国でナショナリズムが復活したら大変ある」

 「資源と海外資本が国有化されるだけでは?」

 「まさか。外資シンジケートと組んでる漢民族の半分くらいはやられて」

 「財産を巻き上げられるある」

 「それは怖い」

 「墓も残らないある。命がけある」

 「お金持ちの一部は、アフリカにも足場を作ってるある」

 「大変なお金持ちで」

 「中華民国の漢民族の私利私欲は、凄いある」

 「貧富の格差も物凄く大きくて、毎日、事件が起きてるある」

 「大陸の満州族は、もう、満州族の漢民族と別の人種ある・・・」

 かきーん!

 日本人と漢民族の視線が一つの白球を追い、

 走り、投げ、打った。

 共通するルールの中で汗を流し、声を掛け合う。

 「・・・隋帝が勝つと5万で、聖徳が勝つと3万ある。聖徳の校長はどうある」

 「わ、わたしは、聖徳一本で7万ですよ」

 「それが漢民族と日本民族の違いある」

 「・・・・」

 

 

 日本人の扶桑半島移民と満州定住が増えていくにつれ、

 資産価値が大陸側に引き寄せられ、人口と経済だけでなく、

 国防の中心も島国型から半島・大陸型へと変貌していた。

 赤レンガの住人たち

 「やれやれ、海洋型国家から大陸型国家か・・・」

 「国力が増えて、予算増加が見込めてもこれじゃ・・・」

 「古来、大海軍国と大陸軍国の両方は兼ねられない」

 「ベネチア、フランスみたいになってしまいそうだな」

 「航空戦力を拡充すれば?」

 「瑞燕で歩兵を機銃掃射するようになったら負けだよ」

 「ったくぅ 教育費の取り過ぎだろう」

 「婆さん爺さんが孫の面倒なんて見たくないんだとさ」

 「大家族制が崩れると意識が変わるねぇ」

 「忠成らんとすれば孝ならず。孝成らんとすれば忠成らず」

 「権威と家族の関係は、むかしからだよ」

 「婆さんと爺さんと孫の面倒も同じ」

 「下手に面倒をみるようになると母親と孫の奪いになる」

 「ご都合主義に面倒見てもらう、って・・・ないか・・・」

 「身につまされる現象だからね」

 「しかし、国家予算で教育の負担なんてな」

 「近代化の生んだ悲劇ってやつじゃなの」

 「電気と上下水道、洗濯機、冷蔵庫、自動車、テレビ」

 「恩恵は受けてるんだから我慢して欲しいものだけど」

 「娯楽の味をしめるとやめられないし」

 「楽になるほど、人は世間体に合わせて苦労の限界を引き下げるからね」

 「巡洋艦と強襲母艦の艦齢は30年」

 「年間2隻と10年1隻ずつなら63隻体制はいけそうだけど・・・」

 「電子関連費が膨れ上がってる。無理だな」

 「そういえば、右翼が軍需産業を抱き込んで軍国化させたがってるらしいよ」

 「まぁ 予算は大きいからね」

 「軍国化で経済支配なら左団扇で苦労しなくてもいい」

 「だけど、一時的だろう」

 「軍人に財界が牛耳られるし」

 「戦前戦中の経験則で懲りてるからなさそうだけどな」

 「それに実行犯は死刑に決まってるし」

 「一番、得するのは混乱に乗じて伸し上がるアウトローだし・・・」

 「では、中途半端なフランス型じゃなく、ドイツ風の通商破壊型海軍?」

 「航路防衛できる予算はなさそうだね」

 「それなら日本と戦争は通商破壊で痛手を被る通商破壊型海軍が益し」

 「大陸軍相手には効果薄そうだな」

 「そうなんだよね。中華民国も、ソビエトも、アメリカも大陸国家」

 「通商破壊されても痛手は小さい」

 「例の瞬間物質移送は?」

 「銃弾くらいの大きさなら一発ずつ送れるらしいよ」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 「もっと大きくしろよ」

 「どこの予算を削るんだろう」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 「銃弾より、電力を送る方がましというなら潜水艦だけどね」

 「海中移動中も供給できるの?」

 「次元探知機で可能らしいけど、設備投資が必要になるね。つまり予算・・・」

 「可否の選択肢が広がっても予算の縛りだけはどうしようもないか」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 「やっぱり、潜水艦の比重を上げるのがいいのかな」

 「軍事プレゼンスは、水上艦艇だろう」

 「もう、実質的に潜水艦が強いよ」

 「でも、潜水艦より師団が欲しいってよ」

 「軍艦作ってる間に満州と半島を占領されたら事だ」

 「陸軍はそうだろうけど・・・」

 「だから、陸海両用で転用できる航空戦力を・・・」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 カプセルが非物理的な世界を通過して、ラバウルの研究所に送られ、

 ラバウルからは、別のカプセルが送られてくる。

 物質をエネルギーに変換し、エネルギーを空間と時間に変換する縮宙航法。

 移動する物体の視観でそう思えるだけで厳密に違う。

 しかし、他に適当な言葉が見つからない。

 さらに、そういう現象に思えるため済し崩し的に言われ始める。

 世紀の実験なのだが人知れず行われ、成果も公開されない、

 国家予算に計上されてもおかしくない金額が、

 各省庁と財閥の辻褄を合わせが得意な会計が結託し、

 別の項目に書き換えられて運営されていた。

 男たち

 「これは凄い・・・手品?」

 「まさか」

 「これが露鳳で得た技術か・・・だろうねぇ・・・」

 「議員。このことは内密に」

 「わかってるよ」

 「遺書まで書かされたということは、そういうことなんだろう」

 「ええ・・・まぁ・・・」

 「歴代政府が対外的に無頓着に見えたのはこういうことか」

 「実用化は遠いですが、実用化されれば圧倒的ですから」

 「他の国も追随してるのではないのか」

 「ええ、ですが露鳳の技術と素材がない限り、この成果に至りません」

 「技術的な優位性が確立されているのなら、のらりくらりとした外交も悪くない」

 「機密では大した還元にならないが・・・まぁ 予算の件は、何とかしよう」

 「助かります」

 「地球近傍の恒星系に行ける目処が立つのだな」

 「単純にいいますと、総量を燃料になる物質の光速の2乗で割るだけですので」

 「通信だけなら仮に26光年離れたベガまで0.028秒なのですが」

 「1000t船で1000gずつ空間と時間に転化しますと1秒で898km強」

 「26光年離れたベガに行くなら8679秒で145分。2時間と41分」

 「もっとも、宇宙を流れる放射線が光速で船体に当たるわけですから耐えられません」

 「ですので船体が耐えられる光速以下の速度で30年くらいかけて航行することになります」

 「単純に小型が良いというわけじゃないのか」

 「はい、実用化の段階でさらに遅くなると思いますが、理論上は、恒星間航行も可能になります」

 「・・・この写真は他の恒星の?」

 「いえ、もう一つのあり得たかもしれない地球です」

 「どうして、こういう世界に?」

 「近傍恒星系と違って」

 「我々の時空潮流軸に近い世界はバックフラッシュが強過ぎて、干渉できないのですが」

 「我々の世界からかけ離れた時空潮流はバックフラッシュが弱く干渉しやすいことがわかってきました」

 「この時空潮流の地球は、約5億4500万年前のカンブリア紀からの生態系時空分岐のようです」

 「なぜ、こうなったのかは、まだ不明ですが主役になる生態系が別種になったようです」

 「他に三畳紀、ジュラ紀、白亜紀の絶滅分岐もあるようです」

 「人間じゃないじゃないか」

 「はい、グレイと呼ばれ、カンブリア紀からの生態系時空潮流分岐の生物と考えられています」

 「そこに行けるのか?」

 「いまは、まだ」

 「ですがバックフラッシュが少ないので干渉しやすいかと」

 「ただ、時空の狭間に巻き込まれ、こちらの世界に出現してしまうこともあるようです」

 「本当に?」

 「時空の狭間、自体珍しいことですが」

 「・・・ところで、バックフラッシュとは?」

 「時空潮流が近いと、素粒子のベクトルが似ています」

 「磁石の+と+。−と−ように反発というか逆流してしまうので、こちらの世界にも歪みが作られます」

 「なんかようわからんが、信じるしかなさそうだな」

 「まだ研究中ですが、信じていただけると助かります」

 「・・・ひょっとして、UFOとかいうのは?」

 「3分の2は、時空潮流からの来訪者ということになりそうです」

 「彼らと交流はあるのかね」

 「監視されてるようですが幾つもの勢力に分かれ」

 「勢力均衡状態にあるようで、直接行動はないようです」

 「攻撃されることは?」

 「いまのところありません」

 「この研究所の防備は大丈夫なんだろうな」

 「いまのところは・・・」

 「「「「・・・・」」」」

 「慎重に頼むよ。他の世界と戦争なんてしたくない」

 「はい。ほとんどの世界がそう思っていると思いたいものです」

 「だといいがな」

 

 

 太平洋

 赤道から南に150kmに月巳(南洋)諸島の最北ムッサウ島(414ku)があった。

 ドイツ、アメリカ、ソビエトは、宇宙開発で後発の日本が気になるのか。

 設備建設に紛れ、諜報員を送り込んでいた。

 日系の諜報員たち

 「防諜は平均的だが予算が二桁ほど少なさそうだ」

 「監視衛星の戦略的利益は大きいはずだが」

 「赤ちょうちんで、研究所の職員に当たりを付けたところ」

 「“最低限の宇宙ロケット技術があればいい”」

 「“ドイツ、アメリカ、ソビエトは設備投資と維持費の回収をしなければならないから”」

 「“外国の衛星打ち上げ受注を当てにするはず”」

 「と見込んでるようだ」

 「ちっ 当たってるから癪に障る」

 「X艦に宇宙開発の費用対効果が薄いと記載されてるとか」

 「いや、むしろ、宇宙開発に至る技術が足りないと静観する気なのだろう」

 「高度先端技術より、人材を育てる方が得と考えてるのかな」

 「宇宙ロケット打ち上げで得られる技術もあるはずだろう」

 「既にX艦から得られてるとか」

 「宇宙ロケットに頼らなくてもいいとか」

 「「・・・・・」」

 

 

 中東

 世界4強のドイツ、アメリカ、ソビエト、日本の利権が複雑に絡み、

 その様相は中華民国の外資シンジケートを彷彿とさせる、

 しかし、アラブ・イスラム部族の結束は固く、王制支配を切り崩すまでに至らず、

 石油開発で権益の半分が取り分なだけで、

 他の有望な権益はなく、必要以上の干渉もなかった。

 不確定要素があるとするなら戦後に入植したユダヤ人国家イスラエルで、

 反独勢力が加担していた。

 砂漠と蒼い海と蒼い空が広がっていた。

 比較的、風の凪ぐ場所に王族経営のホテルが建設され、

 ホテルの周りだけが水に溢れ、緑の木々が潤っていた。

 日本人たち

 「次の中東戦争で、石油危機らしいけど、本当かねぇ」

 「ユダヤ人の入植もイスラエル建国も露鳳の歴史通り」

 「ただユダヤとアラブの戦争は、ずれがあるようだ」

 「いまのところ、利権の差はともかく、勝ち負けは変わらないよ」

 「結局、背後の戦力がどこであれ、当事国の戦闘意欲がモノをいうわけか」

 「中国人は、アラブ圏を除くアフリカ大陸全域に広がってる」

 「イスラエルもアラブも、南の中国人の方を気にすべきだと思うね」

 「イギリスとドイツの華漢勢力で植民地の独立を押さえた手は見事だけど」

 「漢民族にアフリカ大陸全域が呑み込まれかねない状況を作ってる」

 「単一勢力的に可能だし、情勢は漢民族有利になってきてる」

 「まぁ 中華民国がその分、弱体化してるならいいけど」

 「あの発展をみると弱体化してるようには見えないね」

 「しかし、圧政じゃないし、捌け口で反日教育はされていないから悪くないと思うよ」

 「だといいけど」

 「問題は、石油危機に対してどうするかだ」

 「石油は満州と東シナ海にあるよ」

 「湯水のように出てくるわけじゃない」

 「バレルあたりの単価が違うだろう。単価が」

 「公共事業の下半分が延期だよ」

 「財界は?」

 「まぁ 可能性は理解してるし、石油危機の警鐘も流してるけどね」

 「歴史は変わってるし、財界は金に目が眩んでるから・・・」

 「箱モノもなぁ 再生産に繋がる部分はあるんだけど」

 「親方日の丸でやられたら財政補填させられっぱなしだし、赤字なんだよね」

 「でも、下手に民営化されると安全基準手抜きされないか」

 「利便性と安全基準は反比例するもんだし、まぁ それはあるよねぇ」

 

 

 

 インド大陸

 マドラスのホテル

 日本人、ドイツ人、ロシア人

 「アメリカ空軍は凄いねぇ インド空軍を圧倒してる」

 「我が国の戦闘機はアメリカ軍機を撃墜してるよ」

 「我が国の地対空ミサイルもアメリカ軍機を撃墜してる」

 「じゃ 物量で負けてるだけか」

 「戦況は、ハイデラバード藩王国は、インド藩王諸国に周囲を囲まれ」

 「アメリカ空挺部隊に戦線を支えられている」

 「儒陀藩皇国は、文字通りアメリカ軍の基地として守られてるし」

 「パキスタンは攻撃力を欠いてる」

 「もっとも、インド藩王諸国も攻撃力を欠いてるのは事実だけどね」

 「このまま泥沼なら中東の均衡は保てるけどね」

 「儒陀、パキスタン、ハイデラバードが勝つとアメリカのインド洋支配は強くなって」

 「中東石油が危ぶまれるな」

 「一番被害を受けるのは日本かな」

 「ドイツもアラビア海をアメリカに抑えられると苦しい」

 「ソビエトは?」

 「ん? ただの嫌がらせ、っていうか、インドに売り込み」

 「ふ〜ん、しかし、儒陀の新聞が一番、勇ましいな」

 「“容赦のない連続打撃” だって」

 「儒陀語の翻訳はコツがあって」

 「“際限の無い” と “連続打撃” の間に “ケンチャナ” が入るんだよ」

 「「ははははは・・・」」

 「急に弱くなったぞ」

 「しかし、アメリカも航空産業の統廃合を嫌がって参戦か」

 「時間の問題だと思うけどな」

 「各企業を縮小させて航空機開発を分担するか」

 「部門ごと統廃合するか、だよ」

 「よほどヘリで負けたくないんだな・・・」

 「「・・・・」」

 「コストパフォーマンス重視で作ったって勝てないと思うんだけどね」

 「「・・・・」」

 「なに?」

 「日本のヘリは、オーパーツなんだけどねぇ」

 「い、いや・・・滅私奉公で行きついた成果ですよ」

 「本当かな」

 「本当、本当・・・」

 「「・・・・」」

 

 

 儒陀 日本語学校

 “第一次世界大戦後、アメリカ大統領ウィルソンが提案した国際機構”

 “国際連盟がスイスのジュネーブに設立され、42カ国が加盟しました”

 “発起人のアメリカ合衆国はモンロー主義により加盟を見送り”

 “日本は、イギリス、フランス、イタリアと共に常任理事国となりました・・・”

 「もういいニダ!!」

 「日本が国際連盟の常任理事国なんてあり得ないニダ」

 「ノーベル賞も物理学賞2つ、文学賞1つ・・・」

 「あり得ないニダ!!!」

 「儒陀語は、世界文明発祥の天孫言語ニダ」

 「儒陀の物理学と文学が認められないのは、世界が儒陀語を理解してないからニダ」

 「そうニダ・・・間違ってるのは儒陀じゃない、世界ニダ!!!」

 「「「「・・・・・」」」」

 

 

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「皇帝。日本のインド参戦勢力は行き詰ってるニダ」

 「なぜニダ」

 「味方が少ないニダ」

 「在日左翼は、日本軍が大陸で一杯悪いことした事を強調するニダ」

 「男を殺し、女を殺し、子供を騙して働かせたニダ」

 「日本人に日本の嫌悪感を染み込ませて、自虐史観に追い込むニダ」

 「日本人に成り済まして同和に恥をかかせ、虐めまくって、日本と日本人を憎ませるニダ」

 「同和に犯罪を起こさせて、日本人と同和を憎み合わせるニダ」

 「そして、右翼と左翼で同和に手を差し伸べ、味方に取り込むニダ」

 「わかったニダ」

 「頭数を揃えたら日本の党派閥の対立を利用して成り上がるニダ」

 「どっちの側にも付くニダ」

 「党派閥を越えた情報交換ができる在日が選挙を支配し」

 「日本の権力層をコントロールするニダ」

 「インド戦の英霊の復讐でインド参戦に持ち込むニダ」

 「最近の日本人は金に目が眩んで英霊が通じないニダ」

 「では、インド人に成り済まして日本人を拉致するニダ」

 「日本人は馬鹿だから怒ってインドに参戦するニダ」

 「日本の軍部は勢力拡大のため」

 「日本の軍財閥もアメリカの軍財閥と同じニダ」

 「将兵がどうなろうと知ったことじゃないニダ」

 「利益のためにインド参戦に味方するニダ」

 「参戦してきた日本軍将兵は肉壁ニダ・・・」

 ひゅるるるる〜

 どかーーーーん!

 がたがた がたがた がたがた

 「どうしたニダ」

 「インド空軍に爆撃されたニダ」

 がたがた がたがた がたがた

 「ど、どうしたニダ」

 「建物が崩れそうニダ」

 「基礎工事をちゃんとしないからニダ」

 「ケンチャナで完璧にやったニダ」

 「皇帝の官邸をケンチャナで作ってはいけないニダ!!」

 がたがた がたがた がたがた

 「に、逃げるニダ〜!」

 直撃を外れた爆弾の爆発が皇帝官邸の基礎を破壊させ、

 建物を崩れ落とさせた。

 「インド藩王諸国に官邸崩壊の謝罪と賠償を要求するニダ」

 「爆弾を落としたインド空軍パイロットは、万年万々回死罪ニダ!!!!!」

 「アメリカ空軍も謝罪と賠償を要求するニダ!!!!!」

 「参戦しない日本も謝罪と賠償と復興資金を要求するニダ!!!!!」

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 いつになったら、分岐世界に行けるんだろう。

 

 儒陀がルルーシュぽくなってきました。

 というか、独善と個性が強過ぎて世界の主役ですね。

 

 

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第28話 1968 『徒然なるままに』

第29話 1969 『生態系分岐世界は・・・』
第30話 1970 『嘘をつかないと生きていけない』