月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第32話 1972 『それは陰謀論にすぎないニダ』

 満州帝国

 料理皿がテーブルの上に載せられていく、

 満州帝国の北半分は、固有・郷土料理といえるものはないものの

 チョウザメ、ワラビ、黒スグリを使った料理が増えていた。

 そして、南半分は北京料理圏に入る。

 北京ダック、饅頭、餃子、葱油餅(ツォンユーピン)、皮蛋(ピータン)、

 涮羊肉(シュアンヤンロウ)、肉末焼餅(ローモーシャオピン)・・・

 また、至る所にロシア料理が痕跡を残し、

 日本料理も北上し、一般的な料理として親しまれていた。

 幾つもの料理文化が重なって融合し、風土に合った満州料理も作られていく、

 経済関係者の人たち

 「ニクソンは、スペースシャトル計画を推し進めるようだ」

 「ICがまた売れるね。助かる助かる」

 「LSIの開発もだ」

 「上手く追いかけてるの?」

 「追いかけてというよりレベルを落として、試作品を渡してる」

 「実ははるか先を行ってるなんて思われてないだろうね」

 「疑われている節はあるが証拠はないはず」

 「しかし、スペースシャトルの開発も同じとは、発想が貧困だね」

 「インド戦争を誤魔化そうと必死なんだろう」

 「国民の目をインド戦から、宇宙に、か」

 「アメリカ人は、そんなんで誤魔化されるのかな」

 「アメリカ人の生活水準は世界最高峰だし」

 「海外利権で生活水準が向上しても貧富の格差は縮まらない」

 「中間層以下は戦争の損失も多いし、労の割に得るものは少ない」

 「誤魔化すのは無理だと思うけどな」

 「しかし、反戦機運は今一つ伸びてないようだが」

 「日本の戦時中と同じだろう。表通りじゃ目立たないよ」

 「アメリカを回ってきたけど。反戦機運を隠してもいないし強いよ」

 「反戦機運が強いにも関わらず、地球の裏側に大戦力を送り込めるのだから呆れるよ」

 「しかし、インド戦争に勝って足場を築けてもインド洋で有利になるだけ」

 「中東油田を押さえられるとは限らない」

 「足場がなければ何もできないと思うけど」

 「少なくとも国民を誤魔化せなければ、インド戦争を継続できないのでは?」

 「まぁ 軍産複合体が圧倒的なら強いだろうけど」

 「だけど、インド戦争でもアメリカ航空産業の統廃合は避けられないと思うね」

 「しかし、民間機とはいえ、日本のアメリカ航空産業依存は面白くないですな」

 「アメリカは航空産業のために、日本との交易で妥協している」

 「ここで民間機の自主開発を進めると、戦前の保護貿易に逆戻りだ」

 「それに日本も中級品以下の対米貿易黒字を思えばやめられん」

 「いまの景気と自由貿易を維持するため、それは避けたいね」

 「だがアメリカは日本の自動車輸出で自主規制を求める動きもある」

 「航空技術はあるのだから国産民間機の開発で牽制すればよかろう」

 「アメリカの農産物と畜産物の日本輸出は?」

 「満州の農産物と畜産物が強いから大したことはないよ」

 「しかし、アメリカとイギリスは日本を軍事的に追い詰めるためソビエトを支援してるし」

 「中華民国への協力も遠慮がない」

 「大陸の外資シンジケートがいつ追い出されるか気が気じゃないね」

 「中国の有力者は、外資シンジケート支配に対して、口で遺憾の意だが」

 「大陸が統一していない方が圧政が小さく、身の安全を保てると知ってるよ」

 「だといいけど」

 「国民も、強い政府による圧政で、いまの自由が破壊されることを望まない勢力が少なからずいる」

 「日本人の一部も中華民国の自由に羨望してる勢力があるからね」

 「自由か。モラルが高ければ自由を強くできるし」

 「モラルが低ければ自由は制限しないと」

 「統制と自由は、バランスが必要だよ」

 「それにしても、規制緩和で羽目を外す連中も増えているようだが」

 「社会基盤が整い始めてるから社会資本も増えるよ」

 「民間活力も得られるし」

 「どこに流れていくのやら」

 「「「「・・・・・・」」」」

 

 

 とある建設現場

 “建設反対集会” と書かれた文字

 「任せろニダ! 絶対に建設させないニダ!!」

 「「「「・・・・」」」」

 「建設反対募金を募るニダ!!!」

 「「「「・・・・」」」」

 

 とある建設事務所

 「納期が迫ってるというのに困った困った」

 「反対運動をしてる連中を追い出せるニダ」

 「本当に?」

 「本当ニダ。楽勝ニダ。だから金が欲しいニダ」

 「しょうがない・・・」

 

 とあるヤクザ事務所

 「土木建設は反対するだけで儲かるニダ」

 「自作自演で金のなる木ニダ」

 「でも土地転がししないとうまみが半減ニダ」

 「まだ人口が少ないから難しいニダ」

 「残念ニダ」

 

 日本のとある料亭

 「我々に敵対する企業と個人が幾つも存在するニダ」

 「詐欺、泥棒、殺しは、ほどほどにしたまえ」

 「国防産業に協力してるニダ。基幹産業にも協力してるニダ」

 「親方日の丸の味方ニダ」

 「暴力だけじゃ足りないニダ」

 「上からも圧力をかけて欲しいニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「どうせ、中小零細企業と個人ニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「穏便に対処するようには言うが、それ以上は、無理だ」

 「それでいいニダ」

 日本経済の中心は、大陸・半島経済に引っ張られ、西日本へ移動していた。

 そして、少しずつ儒陀・漢民族の毒気に晒されてく、

 彼らは有力者に媚び、下々を犬畜生のように扱う。

 有力者は、クリーンなイメージが要求され、常に競争と批判に晒される、

 アウトローと結べば運命共同体という絆で結ばれ、

 善悪で批判されることのない手駒が得られた。

 もっとも同時に致命的な弱みを握られてしまうことに気付いていく、

 彼らと握手するたびに日本人の弱者が虐げられ、

 強姦される娘が増え、彼らの聖域は広がり

 組織内に不公平と高慢と卑屈な関係の階層が作られ軋轢が増していく、

 公正な競争と評価が行われなくなり、

 努力と誠意が愚か者の象徴となって信頼と協力関係が崩れていく、

 いつの間にか、組織が嘘、横奪、内輪揉め、特権層同士の党派争いに支配され、

 勝ち上ったとしても罪悪感に苛まれ、卑屈な視線と嫌悪感に囲まれる、

 取引が大きくなるほど発覚は致命的となり、対処はより恐怖に満ちていく、

 その光景は、中華民国の縮小版であり、

 日常的な儒陀社会と漢民族社会といえた。

 救いがあるとするなら日系シンジケートの大陸買収は成功率が高く、

 大陸側の日本買収は成功効率が低かった。

 

 

 日本警察 取調室

 「さてと、窃盗の現行犯で捕まったわけだが」

 「ほかにも余罪があるんじゃないのか」

 「違うニダ。窃盗なんてしてないニダ」

 「しかし、こういうモノをポケットに入れてたんじゃ」

 ひらひら〜 ひらひら〜

 「ち、違うニダ!!!」

 「それが勝手にポケットに入ってきたニダ」

 「しかし、こういうモノが勝手にポケットに入ってきたりはしないだろう」

 「勝手にポケットに入ってきたニダ」

 「きっと、日本人の陰謀に違いないニダ」

 「そうかな。君の部屋にもあったぞ」

 「お、女が関係を持ちたがって部屋に押し寄せて、勝ってに置いて帰ったニダ」

 「とっても迷惑してるニダ」

 「ほぉ モテるんだなぁ」

 「とってもモテるニダ」

 「・・・んなわけあるか!!!」

 「あるニダ!!!!!」

 「どこかに売ったなんてことはないのか?」

 「無いニダ」

 「売ったんだろう」

 「売ってないニダ」

 「いっぱい、楽しんだあと売った」

 「それは陰謀論にすぎないニダ」

 「正直に言えよ。どこに売ったんだ」

 「知らないニダ・・・」

 ドアが開く

 「警部。持ってきました」

 「御苦労」

 ことっ!

 「・・・・・」 ごっくん!!!!

 「さぁてとぉ 延辺朝鮮族がやってる店で買ってきたぞ。美味しそうなキムチだぁ」

 「・・・・・」 ごっくん!!!!

 「どこに売ったか。吐くよなぁ」

 「し、しょうがないニダ。池袋の・・・」

 「」

 「」

 

 

 予備役教習所

 月に一度、戦術教習を受け、銃の分解と組み立てを繰り返す、

 その後、射撃場で56式突撃銃(6mm×45)の銃口を標的に向ける、

 連射音が響き、連なる銃弾が微かな放物線を描いて、標的をハチの巣にしていく、

 開戦後、一週間で50万人の予備役が召集され核になる基幹師団編入される。

 予備役証明書は、20代から40代までで、自動車免許と同様の身分証明書だった。

 満州帝国は、経済的な要因で督戦部隊と囚人部隊を主力としていた。

 しかし、産業基盤と社会基盤が大きくなり列強の仲間入りするにつれ、

 守るべき威信も高まっていく、

 まだ時期早々という声があるものの、

 領内核使用や予備役増強を前提に基幹師団が編成され、

 近代的な軍隊に変貌していた。

 将校たちが射撃の様子を見ていた。

 「ペーパー・ソルジャーか・・・」

 「ソビエト・中国式だよ。実戦で生き残った者が自然にベテラン将兵になっていく」

 「ソビエトと中国しかできないことと思うがね」

 「大陸は懐が大きいし、人口が多いから堅実だ」

 「自己完結を求める島国根性だと性に合わないね」

 「それだと、消耗戦になった時、辛い」

 「ソビエトはT72戦車を開発したらしい」

  T72戦車

   重量41.5t 全長 9.53m(車体長6.86m)×全幅3.59m×全高2.19m

   馬力780hp 速度 60km/h(整地)/45km/h(不整地)

   行動距離450km/600km(外部タンク搭載時)

   125mm滑腔砲

   副武装7.62mm機関銃PKT(同軸) 12.7mm機関銃NSVT(対空)

   乗員3人

 「質と量を最大公約数的に評価するとソビエトにとって最良の戦車だと思うよ」

 「数で負けてるから昼間戦うと危険だな」

 「ドイツ経由の情報だと、アメリカとイギリスが赤外線スコープ装置をソビエトに売却した節があってね」

 「夜でも苦戦する可能性があるらしい」

 「どこまでも厭らしい国だな」

 「ところで、こちらの新型戦車は?」

 「74式は50t級で1200馬力、45口径120mm砲になるそうだ」

 「46t級の61式の砲塔と載せ換えることができる」

 「ドイツは60t級で1500馬力、44口径120mm砲だと聞いたぞ」

 「予算はともかく、滑空砲と複合装甲は蓄積してきた年季が違うよ」

 「もう少し早く、開発できないのか?」

 「ラインに載せるなら、まず、工場を新しくしないとだろう」

 「鉄道やら橋やら歓楽街やら作ってるから国防の整備が遅れるんだ」

 「結局、自分の人生と家族と私財と共有利益と歴史を守りたい気持ちが愛国心に繋がるからね」

 「愛すべきモノが少ないと捨て鉢になるか。逃亡しやすくなる」

 「勝ってる時は立身出世と栄達がかかってるから勢いがある」

 「しかし、負け始めると愛するモノ、守るべきモノが無い」

 「国家の奴隷だと気付いて総崩れ」

 「人権の保障と社会資本は、国防で重要な要素だよ」

 「どうにも子供の軟弱が目立つがね」

 「しかし、昔より銃を使える人間は増えてるぞ」

 「だがむかしのような貧しさを知らない」

 「負けるとどうなるかなんて、想像できなくなるのは困るね」

 「最近の修学旅行は、日本行きより、中華民国行きが増えてる」

 「少しは貧しさっていうやつを見てくるんじゃないのか」

 「中華民国も少しずつ近代化してるらしいけど」

 「地方はそうでもないらしいよ」

 「悪癖を学ばなきゃいいけど」

 「儒陀人もそうだけど、中国人の手の内くらいは知っておくべきだろうね」

 「戦力比較なら馬鹿でもできるが」

 「彼らの戦略に気付いてないと国民ごと騙されかねない」

 

 大興安嶺山脈

 シラカバとカラマツ樹林に覆われた標高1200〜1300mの山脈が南北に走っていた。

 山脈の西はハイラル平原が広がり、

 満州北東地域(ハバロフスク側)と同様、防衛不能地域と呼ばれ、

 核地雷が仕掛けられ、免税されていた。

 大興安嶺山脈は、ソビエト軍の侵攻を阻む要衝域として計画されていた。

 無線の張りぼての戦車が山道を進むと、

 三角板状の鉄板が道路から競り上がり、

 底が突き破られ戦車が傾いたまま、無残にキャタピラを空転させる。

 さらに道路から競り上がった筒状のカプセルが機銃掃射すると

 マネキン歩兵がズタズタに引き裂かれていく、

 日本軍将校たち

 「悪くないね」

 「半分だけ通して、各個撃破することもできそうだな」

 「ばれてなければね」

 「たぶん、進撃ルートは核で焼き払われそうな気もする」

 「そんなことしたら将兵は放射能にやられてしまうのでは?」

 「ソビエト軍将兵が消耗品なのは、常識だろう」

 「まぁ そうだが・・・」

 「しかし、ここで守れないと、後が大変だな」

 「渓谷で孤立した山岳に攻撃ヘリ部隊を配備すれば、夜襲で進撃速度を遅らせられないか」

 「進撃ルートはだいたい決まってるから、地対地ミサイルでもよさそうだが」

 「産業用ロボットに機関銃を撃たせてデモンストレーションしてたけど。あれが完成品か」

 「電線と有線を繋げてユニット式の筒を埋めるだけで掃射と狙撃ができる」

 「衣食住を考えずに済むから、ある意味、安上がりだな」

 「兵隊さんに守られてるというありがたみが無い」

 「とはいってもねぇ 青田買いで人材取られてるし。給与の占める比率も増えてる」

 「それに予備役が主力歩兵じゃな」

 「産業用ロボットに狙撃させた方がましといえなくもないね」

 「そういや、警備会社が簡易型で警備ユニットの販売を考えてるみたいよ」

 「鎮圧用のゴム弾を撃つんだと」

 「売れるのか?」

 「視界幅は自由に設定できて、プライベートを守りやすいそうだ」

 「日本国内は法的いろいろあるらしいけど」

 「海外とか。中華民国の外資シンジケートが喜んでるらしい」

 「あいつら恨まれてること知っててやってんだな」

 

 

 ハイラル (25万3000ku)

 蒼い空、棚引く白雲、広大な大草原が広がり地平線まで続く、

 少数民族のパオの集落がフルンボイル高原の所々に点在していた。

 満ソ国境地帯は、緊張しており、

 中央域にハイラル要塞があるものの平坦な大地に地の利はなく、

 対ソ戦力比で防衛不能な地域とされていた。

 とはいえ、広大な大地で牛、羊、馬の畜産が行われ、

 林業と小麦、大豆、トウモロコシなど作物生産力は高く、

 家電・自動車などの工業品を含め、

 年間400万トンがソビエトへと輸出され、東欧へも供給されていた。

 そして、ソビエト側から鉱物資源と毛皮が輸入され、

 満州里は国境の街として栄えていた。

 膨大な利益の一部は、公共設備に回され徐々に近代化していた。

 戦力で勝る極東ソビエト軍侵攻の可能性は常にあった。

 しかし、ロシア人の戦略ドクトリンの根底には冬将軍と焦土作戦があり、

 奇襲による開戦と相反する。

 満州帝国に住むロシア人の総数は40万に達し、

 戦前から住むロシア人と、

 黒竜江を渡って亡命してきたロシア人もいた。

 亡命ロシア人の半分は欧米諸国へと亡命し、

 半分はそのまま、満州に住んだ。

 反共政策のためか、衣食住と日本語学校と雇用が準備され、

 ロシア人が街を歩いてる光景も珍しくなかった。

 日本語学校

 授業が終わるとロシア人の生徒たちが帰っていく、

 教員たち

 「あんな小さな子供が飢えて、黒竜江を渡ってきたのか」

 「最近、ロシア人の亡命が増えてないか」

 「食糧が無いんじゃないかな」 ロシア人教師

 「穀物とか、結構、輸出してるはずだけどな」

 「川向こうまではね」

 「その後の流通は軍とマフィアが絡んで酷い」

 「金があっても価値が低いから、体で払えとかね」

 「拝金主義も嫌だが。そういうのはもっと嫌だな」

 「拝金主義の方がましだね」

 

 

 

 戦前・戦中の建造艦は、時代の流れに逆らえず、

 次々と解体、売却、モスボール化されるか、記念艦にされていた。

 生き残った旧艦艇もほとんど活動していなかった。

 過去、世界第3位を占めた日本海軍の栄華が失われていく中、

 代艦の9000t級相模(さがみ)型巡洋艦が58年から年間1隻ずつ建造され、

 相模、讃岐、薩摩、駿河、

 三河、尾張、信濃、因幡、

 摂津、河内、伯耆、常陸、

 近江、但馬の14隻に達し、日本海軍の主力艦艇となっていた。

  全長190m×全幅18m×吃水6m

  M70ガスタービンエンジン(10000馬力)2基+M8KFガスタービン(45000馬力)2基

  110000馬力 速度34kt 航続距離10000km/16kt   300人

  AK100 70口径100mm単装砲2基 AK630 65口径30mmCIWS4基

  91式航空魚雷型(5.270mm×450mm)対空対潜対艦ミサイル VSLサイロ60基

  海燕(Ka31)2機

 

 そして、新たに45000t級若狭型強襲母艦 “若狭” が就航する。

 全長260m×全幅32m×吃水12m、

 100000馬力、30kt、

 朱雀(Ka54)10機、海燕(Ka31)30機

 洋上に浮かぶ若狭は、ヘリによる対空対潜哨戒と対地強襲を目的とした艦艇だった。

 45000t級若狭型強襲母艦 “若狭” 艦橋

 「大鳳、利根も、いよいよ退役か。寂しくなるねぇ」

 「旧型艦艇は、戦力外の上に存在するだけで赤字ですから」

 「大所帯だった将兵の数もめっきり少なくなって・・・」

 「大陸でさえ、簡単な講習と教習を受けた予備役が頼りですから」

 「そんなに経済が大切かね」

 「戦功艦の大和建造より東海道新幹線建設が良かった、が定説になるくらいの巻き返しでしょ」

 「ひと昔前なら売国奴、非国民扱いですよ」

 「性能の優位性がなかったら、黙っちゃいないのに」

 「電子生産工場、新素材工場を建設するから金寄越せは脅迫ですけどね」

 「だいたい、特定産業向けだけの工場なんて・・・」

 「しかし、軍も恩恵を受けていますから」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 OSを介した電子システムが作られていた。

 大元の露鳳にブラックボックスがあったとしても

 中身の計算が別物でも出力が正しければよく、

 完成品から逆算する方が思考錯誤しながらコツコツ積み上げていくより効率的だった。

 新しいコンピューターシステムが持ち込まれる。

 研究員たちが数枚の写真を検討していた。

 「これは?」

 「白亜紀辺りからの生態分岐世界のようだが、随分と違った世界になってる」

 「クモとかタコに似た生物だけど、念写のような写り方だな」

 「揺らぎが強くて、焦点を合わせにくいんだよ」

 「知的生命体は?」

 「この中では、写ってないな」

 「生態分岐世界に行っても、重要なのは食用になるか、だね」

 「シーラカンスは食用に向かなかったらしいよ」

 「いまの生態系でも食用は限られるよ。その辺に生えてる雑草は食べられないだろう」

 「まぁ そうだけど」

 「少しでも食用可なら何とかなるよ」

 「しかし、環境の激変で確実に絶滅するのは肉食動物だ」

 「なぜなら、生態系の基礎が変わってしまう」

 「なので、比較的、小型の雑食性の生き物が次の肉食動物に進化する」

 「植物相が食用に耐えるなら何とかなりそうだけど」

 「生態系の絶滅回数は同じなんだろう」

 「ああ、それは自然災害の類で生態系じゃないからね」

 「似て非なる世界か。非て似なる世界か・・・」

 「知的生命体は、2足歩行で人型に近いものになるかもしれないね」

 「どちらにしろ、サンプルも欲しい」

 「だねぇ・・・」

 「所長。設置が終わりました」

 ・・・・・・

 ・・・

 「ほぉ 面白いくらい楽なオぺレーションシステムだな」

 「予算持っていかれただけはあるね」

 「今度はこっちに予算が欲しい」

 「みんなそう思ってるだろう」

 「どいつもこいつも自画自賛と我田引水しやがって・・・」

 「露鳳のC4Iレゲンダ・システムと将校室のパソコンが無かったら」

 「電子関連予算はもっと低かっただろうね」

 「そうなると研究も進まなかっただろうな」

 「議院内閣制と資格任用制は、膠着しやすいから既得権の運用で勝るけど」

 「開発と新規性は、大統領制と猟官制に及ばない」

 「日本の軍事技術が露鳳を追い抜いてしまうと野心的な開発でアメリカに追い抜かれそうだな」

 「でもまぁ そうなると、残るフロンティアは、こっちだから予算くらい出るだろう・・・」

 「時間だ。新型の次元探査機を射出しますか」

 「これより、次元探査機射出を行う」

 「設備は一新されてるが理論上、支障はない」

 「もし、問題が生じた際には直ちに中止する」

 「では、次元異動開始」

 “次元空芯式共振コイル及び次元スパークギャップスタンバイ”

 “次元テスラコイル移送器共振モード準備完了”

 “原子共有結合のサーチに入ります”

 “原子軌道及び分子軌道の変数は、許容範囲内です”

 “次元探知機の固有振動数と原子共有結合を一致させます”

 “価電子波長の同調性は、80パーセント・・・”

 「しかし、探査機は一回りしか大きくなっていないのに消費電力10倍か」

 「人間サイズを送るだけで発電所一つ建設しないといけないらしいけど」

 「まったく、金食い虫だな」

 

 

 

 アメリカ合衆国 エリア51

 アメリカは、X海域の海底を浚った物質の精製に成功し、

 プラズマを集積していた。

 研究者たち

 「どう思うね」

 「面白い物質ですが使い道が・・・」

 「まぁ 毒性はないし、不燃だし、軽いし。工業、医療で緩衝材になるくらいか」

 「噂では、日本にプラズマの核になるモノがあると」

 「核ねぇ・・・」

 「ドイツ、ソビエト、イギリス、フランスは、同水準の研究をしてるはず」

 「日本は?」

 「あてにならんよ。窓口の担当は二流で予算も最下位」

 「何より、何かを隠してる」

 「一度、日本に視察しに行ってみるべきだろうか」

 「日本の赤字旅館を数件買い取っますから足場はありますよ」

 「問題は、機密に近付けないことですかね」

 「在日より、日系アメリカ人が役に立ちそうだな」

 「それは言えますがね。どうにも日本は閉鎖的で・・・」

 「閉鎖的な民族か。デメリットもあるしメリットもある」

 「大陸出身の日本人は、開放的で我々に近いですよ」

 「どちらにしろ、情報を収集できないのではな」

 「せめて、X艦がどこから来たのかわかれば、研究も集中できるし、進められるのだが」

 「未だに未来から来たものか。平行世界から来たものかわからないのでは・・・」

 「全体像が掴めないのでは、目隠しで手探りしてるようなものだ」

 「・・・局長。インド洋の調査船でも確認しました」

 「やはり、プラズマは同じ時間。日本にむかって、反応を見せてるようです」

 「不定期な揺らぎじゃないのか」

 「場所は特定できるか?」

 「いえ、範囲が広過ぎて大まかにしか・・・」

 世界地図数カ所から伸びるベクトルは日本列島にとどまらず、

 扶桑半島を含む巨大な円を描いていた。

 「ほう、レーダーというか。ソナーのような・・・」

 「対日作戦計画で有益かもしれませんね」

 「んん・・・」

 

 

 アメリカ空軍基地

 真新しい双発戦闘機が滑走し、浮かび上がると垂直に近い角度で上昇していく、

  F15イーグル

   重量12973kg/最大離陸重量30845kg

   全長19.43m×全幅13.05m×全高5.63m  翼面積56.5u

   推力6520kg/10590kg  速度3062km/h

   航続距離3450km(フェリー)/4630km(増槽)/5750km(CFT装着)

   バルカン20mm×1  ハードポイント×8基

 日本空軍の瑞燕より一回り大型の機体は、それに見合うだけのポテンシャルを秘めていた。

 アメリカ軍将校たち

 「日本空軍の瑞燕より、ましな戦闘機なんだろうね」

  瑞燕(MiG29K)

   重量10900kg/最大離陸重量18550kg

   全長17.32m×全幅11.36m×全高4.73m  翼面積38u

   推力5040kg/8300kg  速度2445km/h

   航続距離2000km(フェリー)/3200km(増槽)

   30mm×1  ハードポイント×9基(4500kg)

 「公式スペックだけならやや有利だけどね」

 「電子装備が本当に勝っているのか、わからないからな」

 「ペンタゴンは疑ってると?」

 「おれでさえ疑ってる。本職ならなおさら疑ってるだろう」

 「だいたい、日本の瑞燕は機体として完成してる」

 「F14とF15は機体として完成するまであと5、6年が必要だよ」

 「日本は、新型戦闘機を開発してるらしいが」

 「瑞鶴だろう。F15イーグルと同クラスの戦闘機らしい」

 「不気味ではあるがね」

 「ワイバーン(海燕Ka31)やグリフォン(朱雀Ka54)の時のような未知の脅威は感じないね」

 「つまり、射程圏内に追い詰めたわけか」

 「まぁ 汎用ヘリCH53シースタリオン。攻撃ヘリAH56シャイアンは、まだ、ワイバーンやグリフォンに及ばない」

 

 汎用ヘリCH53シースタリオン

   備重10740kg/全備重33369kg  3925hp×2基

   全長26.97m×幅4.7m×全高7.6m  回転翼22.01m

   速度240.76km/h  航続距離1000km  30mm×1  乗員2人(兵員37人)

 

  ワイバーン(海燕:カモフKa31)

   備重5520kg/全備重12200kg  1638hp×2基

   全長11.60m×幅3.80m×全高5.50m  回転翼15.90mm

   速度255km/h  航続距離680km  30mm×1  ハードポイント×4基4000〜5000kg

 

 

  攻撃ヘリAH56シャイアン

   備重5320kg/全備重11739kg  3925hp

   全長16.66m×全高4.18m 回転翼15.62m

   速度393km/h  航続距離1971km  30mm×1  ハードポイント×4基4000kg

 

  グリフォン(朱雀:カモフKa54)

   備重7800kg/全備重10400kg  1638hp×2

   全長13.50m×全高4.90m 回転翼14.50m

   速度300km/h  航続距離1160km  30mm×1  ハードポイント×4基2000kg

 

 「しかし、次元が全く違うわけじゃない。いい線いってる」

 「だといいけど」

 「アメリカが開発に回せる予算、人材、資材の総量は日本より大きいはずだ」

 「日本人がいくら低賃金で働いたからって」

 「アメリカとイギリスがソビエトと中華民国に肩入れしているから」

 「日本は大海軍と大陸軍は兼ねることができないし」

 「対ソ対中で消耗してるから、魔法じゃなきゃ追い抜けるよ」

 「だといいがね」

 「どうにも日本は国防費で手抜きして、国力を付けているようにしか思えないが」

 「日本人は小心で神経質で、軍事的脅威を受けると、過敏に反応しやすいし」

 「縦割り利権構造体は無駄にでかくなる傾向があるはず」

 「もう少し軍事増強になってもいいはずだが」

 「いまは、産業基盤と社会基盤の縦割り利権構造体が強いよ」

 「土木造成工事でソビエト戦車の展開を狭めてるくらいだからね」

 「そういえば、黒竜江は、日本側ばかり堤防を築いてるから、ソビエト側が洪水になるらしいよ」

 「国内の共産主義が強まってるから、いい気味だ」

 「インドで戦争してるとはいえ、軍産複合体を守るために無理してるからな」

 

 

 

 

 インド大陸 儒陀藩皇国

 皇帝府建設現場で騒乱が起きていた。

 「これは、呪いの杭ニダ」

 「いや、これは測量用の水準点・三角点とか、作業用の杭で、そういうのと違うから」

 「違わないニダ」

 「日本人は、世界一優秀な儒陀民族の精気を抹殺しようとしてるニダ」

 「儒陀に災いをもたらすための日帝風水謀略ニダ」

 「まさか、そんな・・・」

 「そうニダ!」

 「でもこれは、皇帝府を建てるのに必要だから」

 「儒陀皇帝府を呪うなんて日本人は本当に恐ろしいニダ」

 ざわざわ ざわざわ

 「日帝が儒陀を恐れ、朝鮮の優秀さと力強さを気脈で切断するつもりニダ」

 「だから鉄杭を打ち込んでるニダ」

 「これは経度・緯度・標高の基準になる点で、建物を建設する時に必要な・・・」

 「儒陀では、そんなモノ使わなくても建物くらい建設できるニダ」

 「ええぇえ〜」

 「これは呪いの杭ニダ!!!」

 「日本に謝罪と賠償を要求するニダ!!!!」

 「「「「・・・」」」」 呆然

 ざわざわ ざわざわ・・・

 

 

 儒陀 日本語学校

 “世界恐慌後、各国は、国内企業を守るため保護貿易を強めます”

 “アメリカのルーズベルト大統領はニューディール政策で雇用を作り”

 “イギリスはブロック経済で国内産業を保護しました”

 “工業社会と近代的な生活を維持するには、石炭、石油、鉄鉱石など資源が必要でした”

 “そして、生産したモノを買ってくれる市場が必要だったのです”

 “海外の資源と市場に頼るドイツ、イタリアの経済は悪化し”

 “日本も生糸が暴落して外貨が得られなくなっていきます”

 “中国大陸に輸出先を求めましたが反日と不買運動が増大していきます”

 “この時期、経済が困窮したイタリアでムッソリーニのファシスト党が政権を握り”

 “ドイツはヒットラー率いるナチスが政権を執ってファシズムが台頭していきます”

 “日本でも軍国主義が強まり、軍事力を背景にした対中強硬路線を執ります・・・”

 「もういいニダ」

 「いま、儒陀は戦争で兵員を取られ、社会を動かすための人材が不足してるニダ」

 「事故が増え、いろんなサービスが滞ってるニダ」

 「しかし、それは、戦争だけが原因じゃなかったニダ」

 「儒陀のあちらこちらで、日本が埋めた呪いの杭が発見されてるニダ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「戦争中で弱ってるのに、痛ましいことニダ」

 「きっとこの戦争も日本の呪いによって引き起こされたに違いないニダ・・・」

 「「「「・・・・・」」」」

 「そう、モヘンジョ・ダロ遺跡で儒陀黙示録が発掘されたニダ」

 「それによると、儒陀は日本であるゴクと日本と組みするマゴクと戦わなければならないニダ」

 「儒陀は聖徒として、日本を打倒し、ハルマゲドンの戦いに勝たなければならないニダ」

 「みんなは、先兵として日本に行くニダ」

 「そして、日本を打倒し」

 「儒陀黙示録を完成させ、新しい天と地を地上に降臨させるニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 「戦うニダ!!」

 「日本沈没〜!!!!」

 「「「「日本沈没〜!!!!!」」」」

 「日本沈没〜!!!!」

 「「「「日本沈没〜!!!!!」」」」

 「日本沈没〜!!!!」

 「「「「日本沈没〜!!!!!」」」」

 

 

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「戦況はどうニカ?」

 「苦戦してるニダ」

 「日本の参戦はまだニカ」

 「まだニダ」

 「早く参戦させるニダ」

 「前のインド藩王諸国軍と後の儒陀藩皇国軍で日本軍を挟み撃ちにして殲滅させてやるニダ」

 「一部の勢力が参戦を拒んでるようで」

 「金を右翼、軍属、軍部にバラ撒いてでも日本を参戦させるニダ」

 「日本と中国。日本とアメリカ。日本とドイツ。日本とソビエトの友好を妨害するニダ」

 「日本人に成り済まして、外国で悪いことするニダ」

 「外国が日本を侵略したがってると思い込ませるニダ」

 「日本に友好国が儒陀藩皇国しかないと思い込ませるニダ」

 「そして、日本を孤立させ、鬼畜米英させて、世界中と戦争させるニダ」

 「日本民族は戦闘馬鹿だからきっと引っかかるニダ」

 「儒陀流無手勝流ニダ」

 

 

 

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 月夜裏 野々香です

 早く生態分岐世界に行きたいな。

 フューチャー・イズ・ワイルドと恐竜人間はちょっと参考になったかな。

 進化元がどんな生物であれ、知的生命体は人型の形に似てくるとか。

 しかし、早過ぎるとリアル感が薄れるし、難しいところ。

 もう少し、ダラダラと続けるので、儒陀に頑張ってもらいましょう (笑

 

 

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第31話 1971 『嘘でも現実は押し付けるニダ』

第32話 1972 『それは陰謀論にすぎないニダ』
第33話 1973 『新高山登らない!』