月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第35話 1975 『愚行の果て・・・』

 オイルショック後、竜鳳(大慶)油田と東シナ海ガス油田は採掘枠を拡大し、

 燃料の高騰を押さえようとしていたものの、

 中東の石油価格に比べれば、割高になってしまう。

 燃料は高騰し、利益率は低下し、投機的な投資は控えられていく、

 満州帝国 (113万3437ku)

 行政の安定と経済が豊かになるにつれ、生産力は高まり、

 公共設備は増え、人々の生活は豊かになっていた。

 日本人の人口は1000万ほどで、漢民族が残りの6000万人のほとんどを占め、

 ほか、満州族、朝鮮族、ロシア人など住んでいた。

 日本語と北京語が話され、日本語人口は5割を超えていた。

 満州・中華民国国境

 山海関から内陸い向かって万里の長城が再建され、漢民族の流入を防いでいた。

 周囲は商店が並び、観光客で賑わっていた。

 満州帝国ハルピン発の国際列車が山海関を抜け、中華民国を走り出した。

 新幹線は、ハルピン、陵陽、山海関、北京、天津、

 石家荘、鄭州、武漢、長沙、貴陽、昆明の3400kmの行程を18時間弱で走破してしまう。

 新幹線は寝台車、レストラン車、個室を備え、人気があった。

 日本人乗客者たち

 「在日儒陀が反対してたらしいけど、意外に安全そうじゃないか」

 「儒陀にとっちゃ日中友好なんて悪夢だろうからな」

 「しかし、中国人の気質は問題だし」

 「運行の一部は中国人だし、一抹の不安はあるね」

 「外資系シンジケートに難癖付けられたからな」

 「こっちはオイルショック前に作りたかったのと、安全基準の板挟みだったらしいからね」

 「あと、山海関でいま作ってるカジノ車を連結することを合意させられたらしいけど」

 「やめてくれよ。日本人らしさがどっか行きそうだ」

 「まぁ 上限は付けられるらしいけどね」

 「でも内陸の新幹線は昆明に届いたけど、沿海の新幹線は香港どまり」

 「もうちょっとで、昆明で環状線にできたのにな」

 「本当は、シンガポールまで延長させたいんだけど、オイルショックで駄目か」

 「軍艦なんか作るからだ」

 「欲しかったんだろう。軍艦」

 「まぁ 中国の人件費は安いから昆明までは、やっつけで作るだろう」

 「基礎工事はこっちでやるとしても人海戦術の工事は見たくないねぇ」

 「非人道的だからね」

 「しかし、督戦隊と囚人部隊の組織作りの参考になったのは確かだね」

 「問題は、運行で支障なければいいんだが・・・」

 「外資シンジケート系列の漢民族ならマシだと思うよ」

 「列強も中華民国利権から排斥されたくない」

 「それでいて、雲南省だけは守りたい、だからね」

 「雲南省の白人社会は、強くなってるんじゃないのか」

 「まぁ 周囲を漢民族や黄色人種に囲まれたら、誰だって必死になるだろう」

 「ロシア人とどっちがましか、見聞しておかないとな」

 「雲南省は雑多だからね」

 「しかし、白人系外資シンジケートの総本山になってるじゃないか」

 「悪くないよ」

 「欧米列強は、対日友好関係を雲南省の保険にしたがってるし」

 「雲南省は列強の対日拠点だったらしいけど」

 「いまだって、あの狭い省にB52爆撃機を配備してるよ」

 「あそこ、一応、中華民国、中華民国軍なんだけどな」

 「独立してないだけで、得体のしれない完全自治国だろう」

 「いい手だと思うよ。大手振って中華民国領空を飛べるんだから」

 「しかし、中華民国の潜在的な脅威は増して、対日不信より、対中不信が強くなった」

 「それだけだろうな」

 「実際、大陸に住まないと脅威がわからないからね」

 「しかし、カジノ権益で新幹線を建設できるなんて、とんでもな国だよ」

 「それだけ、国民が投機的なんだろう」

 「堅実な中国人もいるみたいだけど」

 「川向こうの村は方言が違うっていう国だからね・・・」

 「大型の工場が増えてるな」

 「ああ、外資系もだけど華僑系、民族系資本も増えてる」

 「賃金なくても衣食住だけで働かせるっていうし、産業用ロボットより割安か・・・」

 「じゃ ここで買ったモノを国内で売り捌くだけで巨万の富?」

 「このままだと国内の低級品産業は軒並み、やられてしまうね」

 「アメリカの空洞化を笑えなくなるな」

 「安全基準を引き上げないと」

 「まぁ 輸入制限を正当化できるとしたら安全だよね」

 

 

 

 アメリカ合衆国

 デトロイト西方28kmのウェストランド、

 ワシントン北西54km。ボルチモア西方10kmのウッドラーン。

 大都市の周辺にある小さな町に過ぎなかった僻地は、原子爆弾投下により、

 アメリカだけでなく、世界で知らぬ者の無い地名となっていた。

 ドイツより被害が小さくともアメリカ国民が受けた衝撃は、日本の真珠湾攻撃と並び、

 ドイツ帝国のベルリン、ウィルヘルムスハーフェンと並ぶ反核の温床になっていた。

 そして、世界中から人々が訪れる。

 無論、反核だけでなく、容核運動組織も組織され活動していた。

 ウェストランド

 日本人たち

 「へぇ ドイツ人も少なくないようだな」

 「同じ痛みで共感するところがあるのだろう」

 「しかし “放射能で土地は死ぬだろう” と言われたものだが、いまでは、青々だな」

 「原爆遺跡で食べてる者もいるし、ちょっとした産業でもある」

 「事実でも公言したら、打ん殴られるぞ」

 「ヒロシマとナガサキじゃなくて良かったとも言えるがね」

 「無神経な日本人観光客が増えたら困ると思うけどな」

 「取り敢えず、日米関係の草の根でもあるし、社交辞令的で頭を垂れておくか・・・」

 “全世界は核の脅威に晒されてるニダ!!!”

 “しかし、恐怖に屈してはならないニダ”

 “アメリカ国民はドイツ国民と共に苦しみを克服し、和解しなければならないニダ”

 “そして、真の人類の敵、日本を打倒するため結束しなければならないニダ”

 “それがアメリカとドイツの天命ニダ”

 “アメリカは、日本に対し、敵国条項を付きつけなければならないニダ”

 “日本は核ミサイルを常にアメリカに向けてるニダ”

 “このままでは、アメリカ経済は、日本資本に蹂躙されてしまうニダ・・・”

 「・・・日にちを間違えたか」

 「どうして反核が反日にすり替わるのか謎だが、相変わらず勢力的だな」

 「あの儒陀人のバイタリティーは世界最強だよ。真似できん」

 「まぁ 半分、当たってなくもないような・・・」

 「しかし、どこまでも他力本願だな」

 「出直そう」

 「「「・・・・」」」 こくんこくん

 “・・あ・・・な、なにするニダ?”

 “なぜ、連れ去ろうとするニダ〜〜!!!”

 “や、やめるニダ。儒陀とアメリカは同盟国ニダ”

 “儒陀人とアメリカ人は共に戦った戦友ニダ”

 “なんでわからないニダ”

 “儒陀人は、アメリカとアメリカ人のためを思って・・・うぁ・・・わ・・・わあわわ・・・”

 “どこに連れていく気ニダ”

 “助けてニダ! この警官は暴力をふるってるニダ!!”

 “アメリカのためを思ってやってるニダ”

 “じ、自分は・・・”

 “自分は、日本人ニダ!!”

 「「「「「・・・・・」」」」」 呆然

 “日本人ニダ!!! 日本人ニダ!!!!”

 “なぜ、連れ去ろうとするニダ〜〜!!!!!!”

 “そ、そこの日本人。助けるニダ!!!”

 「「「「へっ?」」」」

 “同胞の人権がアメリカの国家権力に蹂躙されてるニダ!!!”

 “同胞を助けるニダ〜〜〜!!!”

 「「「「・・・・」」」」 呆然

 「あの〜 日本人のみなさん、失礼しました。どうぞ・・・」 警官

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 ニューヨーク沖

 100000t級ニミッツ型原子力空母

  全長333m×全幅76.8m×吃水11.3m

  260000hp 30kt以上

  艦載機90機  対空ミサイル×4基

 世界最大の軍艦が就航する。

 原子力機関であることから自艦を動かす燃料は少なくて済み、

 武器弾薬・航空機燃料や備品類を多く装備することができた。

 新型F14トムキャット戦闘機がタッチ&ゴーを繰り返し、

 パイロットは日々練度を高めていた。

 そして、当然の如く、完成したばかりの巨大空母の音紋を取ろうと

 ドイツ、ソビエト、イギリス、フランス、イタリアの潜水艦が周辺海域に集まっており、

 アメリカ艦隊全体が緊張状態にあった。

 艦橋

 「世界最大最強の空母か」

 「最大はともかく、本当に最強なのか不安に思うね」

 「F14トムキャットのAN/AWG9レーダーは最大探知能力200km」

 「AIM54フェニックス空対空ミサイルは6発装備」

 「大型戦闘機でも可変翼なので格闘戦に優れています」

 「十分、ドイツのTaFフレイア、MeF12トール」

 「日本の瑞燕に対抗できるかと思われます」

 「日本は、F14、F15クラスの瑞鶴を開発したそうだ」

 「公式性能が本当ならF14でも対応できそうだが、どうも日本の公式性能は信用できんよ」

 「未だにベーリング海戦での日本ヘリの模倣ができないとか」

 「それもあるが日本の基礎工業力は広がってるし、底がしれん」

 「まだ総合で勝っているのだが、要所要所で日本に先行されてる」

 「幹で張り合わず、枝葉に投資するのは商法の一つでは?」

 「かもしれんがね。日本のライセンス生産は速過ぎるよ」

 「そういえば日本側からボーイング747の部品供給の打診もあったそうですよ」

 「日本の方が安く?」

 「ええ・・・」

 「ポンポン、高品質の部品を作りやがって」

 「いくら人件費が安いからって非常識な国だ」

 「電子関連産業で、日本に負けてると仮定した方がいいでしょう」

 「開発はこちらが先だろう」

 「日本が公表していないだけかもしれませんし」

 「まぁ ドイツもそういうところがあるな」

 「ドル安にすれば済むのでしょうけどね」

 「お金持ちは海外権益を得やすいドル高を望むからな」

 「白人は貧乏人でさえ、有色人種より賃金が低いことを恥じる傾向がある」

 「結果的に国内産業が空洞化して、雇用が悪化してしまうのだから愚かだよ」

 「中級品以下を日本、満州帝国、中華民国に頼るのは面白くないですね」

 「利権に胡坐をかくようになったら、人も国も終わりだな」

 「日本とドイツがそうでないことが不思議ですよ」

 「米ソに囲まれていたら危機感から働くだろうよ」

 「新大陸の合衆国は、聖域みたいなものですから」

 「だが、プレゼンスを発揮するには、巨大な艦隊を維持しなければならない」

 「そして、潜水艦を発見できなければ、こっちが危機感だ」

 「6隻ほど発見しましたが、いずれもドイツ、イギリス、ソビエト、フランス、イタリア艦でした」

 「おそらく、日本の潜水艦は来ていないのでは?」

 「だといいがね」

 「太平洋艦隊の報告では日本潜水艦をロストすることが多いそうだ」

 「本艦もX海域に回されるのでしょうか」

 「エンタープライズと交替に太平洋配備になるかもしれないな」

 

 

 

 どのような体制制度であろうと権力層の敵は仮想敵国ではなく、

 権力の座から引き摺り降ろそうとする国民層といえた。

 国権が強ければ仕事がしやすく、民意は等閑にできる、

 民権が強ければ利害が衝突し、

 仕事が進まないものの民意は反映されやすい、

 無論、民意を取り入れることが国益になるとは限らず、

 その場凌ぎの民意が問題先送りなら国民の利益であるとは限らない、

 ただ、国民から権力者が選出され、任期があるのなら民意が反映され、

 同時に国益も考えるだろうというのが民主主義といえた。

 仮に権力層が国民から選出されることなく、

 外国資本と結託した匪賊が国家を支配していたとしても、

 その国の国力が大きくなり、

 最大公約数的に国民生活が豊かになっていくとしたら・・・・

 中華(シンジケート)民国

 武漢

 近代的な公共施設が建ち並ぶ。

 これらの施設の多くがカジノ収益によって作られたもの、は公然のだった。

 中華民国は、ラスベガスを拡大させたような繁栄を見せ、

 中小規模国家予算が一夜にして行き交った。

 アメリカ合衆国ラスベガスでカジノビルのオーナーは、

 中華民国だと、街全体のカジノビルを支配するオーナーに変わる。

 カジノ本店はラスベガスから中華民国に移動し、

 本店だったラスベガスのカジノビルは、支店に格下げされていた。

 多くのカジノビル建設が日本の建設会社に発注され、

 利益の大きさに受注騒ぎが起きていた。

 カジノビル

 ビル全体が除湿と冷房され、

 武漢特有の蒸し暑さは微塵も感じられなかった。

 華やかで煌びやかなショーが繰り広げられていた。

 満州と雲南省を結ぶ新幹線が武漢を経由すると日本語表記が増えていた。

 日本人たち

 「やれやれ、真面目に稼いだ金が一夜にして消えてしまったよ」

 「ふっ 中華民国の発展に寄与したわけだ」

 「外資系の取り分が4割で日系が1割投資してる」

 「だから1割は日系に還元されてるんじゃないかな」

 「そんなの列強の利害を一致させる連帯保険みたいなものだろう」

 「しかし、世界中の投資家が中華民国カジノ株を当てにしてるようじゃ先はないな」

 「でも、おれも株、持ってるよ」

 「ふっ 賭けの才能ないから、胴元で儲ける方が堅実だな」

 「日本はカジノをどうするって?」

 「反対意見は根強いよ」

 「まぁ 過保護がいいとは言わんけど、賭博は進められたもんじゃないからね」

 「しかし、好き者が中華民国でスッカラカンになって帰ってくるのを見るのは忍びないねぇ」

 「まぁ それは言えるがね・・・あれはなに?」

 “虫王は中華コオロギの “劉備” ある”

 ““““おおお〜!!!””””

 “なんの大英帝国が誇るコオロギ王 “プリンス・オブ・アーサー” こそ、一番に決まってる”

 ““““おおお〜!!!””””

 ““うぬぬぬぅ・・・””  バチッ! バチッ! バチツ!

 どどどどどどどど!!!!

 「闘蟋(とうしつ)。蟋蟀(コオロギ)を使った賭博だろう」

 「よし、一丁、負けを取り戻す」

 「いい加減、愚行に気付け」

 「日本にない賭博だし。愚行する権利くらいあるだろう」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 中華民国雲南省

 ウォーヴィチ、ジェーシェフ、ルブリン、

 クラクフ、クルピエ、カシュビ、シロンスク、

 セルビア、マケドニア、モンテネグロ、ギリシャ、

 地名を冠した色取り取りの民族衣装が混在し、

 数カ国語の標識が並ぶ、

 欧州を追い出された東欧・バルカン諸民族は、雲南省で少なからず成功し、

 外資シンジケートの中核的な人材を占めるようになっていた。

 活動範囲はシンジケート資本領域全域に及び、

 シンジケート支配の楔ともなっていた。

 一方、扶漢滅洋運動の急先鋒になるべき、漢民族の有力者は、

 アフリカ大陸権益の甘い汁で押し黙り、

 庶民の多くは、北狄(ほくてき)の満州帝国、南蛮の雲南省と陰口をたたきつつも、

 漢民族行政と漢民族資本の社会福祉をまったく信用しておらず、

 したたかなことに、民族資本と外資シンジケートの待遇を競わせてさえいた。

 中国人にとって最優先は生活保障と治安であり、

 外資シンジケートは、漢民族資本より良質の衣食住と雇用を提供することが可能で、

 扶漢滅洋運動を恐れるあまり、中華民族資本よりワンランク上の待遇を強いられていた。

 そして、結果的に中華民国の国力が引き上げられてしまう。

 昆明の日系ホテル

 「本当に白人世界になってしまったんだな」

 「漢民族はアフリカ大陸で領主みたいな生活らしいよ」

 「はなっから近代産業で競争する気がないわけか」

 「前人未到の開発競争より、目先の儲けなんだろう」

 「狡いの・・・」

 「しかし、識字率が上がってくると開発も可能になるよな」

 「手っ取り早く、開発されたものを贈収賄で手に入れるかもよ」

 「いろんな意味でヤバい国だな」

 

 

 アフリカ大陸イギリス領ナイジェリア

 アフリカ大陸で最大の人口を誇る豊かな熱帯雨林の大地が広がっていた。

 イギリスと、中華民国を支配する外資系シンジケートとの密約により、

 大量の漢民族をナイジェリアに移民させていた。

 イギリス権益の代理人となった漢民族の人海戦術により、

 250もの民族人種と、520の言語の独立運動を押し潰してしまう。

 ナイジェリアの総人口8600万のうち、5700万が現地人で多数を占めていたものの、

 北部のハウサ人およびフラニ人が全人口の29パーセント、

 南西部のヨルバ人が21パーセント、

 南東部のイボ人が18パーセント。

 以下、イジョ 10パーセント、カヌリ 4パーセント、

 イビビオ 3.5パーセント、チヴ 2.5パーセント

 と人種ごと細分化すれば、漢民族2900万は最大勢力となっていた。

 この状況は、アフリカ大陸の植民地の多くがそうであり、

 毎日のように民族紛争が起こり、血が流され、

 漢民族は、人種で比較するならアフリカ大陸最大の勢力となっていた。

 内陸中央部のアブジャに新総督府が建設されつつあった。

 中枢区画にイギリス総督府がおかれ、周囲は漢民族に守られていた。

 植民地支配と石油権益の強化のためであり、

 公共工事では日本も植民地支配の片棒を担いでいた。

 アブジャ

 日本人たち

 「アフリカ大陸最大の人口を誇っていても、中国人に飲み込まれてしまうわけか」

 「桁違いだしね。公用語は中国語になるかも」

 「中華民国官僚は私腹の限りを尽くして、子弟を世界中に避難させてるらしい」

 「そういえば日本でも中国人が増えてるっていってたな」

 「制限すりゃいいだろう」

 「国家予算を持ち逃げしてくるんだから、門戸開放しない方が馬鹿だろう」

 「そう言われてもなぁ 特権層が何百万って数だぞ」

 「「「「・・・・」」」」

 「そういえば、漢民族にヤシ油、ラッカセイ、ココア、ゴムを作らないかって誘われたぞ」

 「中国人は、日本人を原住民の盾代わりに使おうと思ってるな」

 「アフリカ大陸全体が漢華帝国になるなら取引額は大きいだろうな」

 「そんな。首つり用の縄を自分で用意するようなもんだ」

 「でも漢民族と現地民の抗争が起きてるからうまくバランスを取れたら・・・」

 「まぁ そうだがね」

 「・・・それにしても漢民族が多過ぎるよ」

 漢字の標識が街を埋めて行こうとしていた。

 

 

 ソビエト連邦

 ソビエトは、欧州側をドイツ帝国に押さえられ、極東側を日本に押さえられていた。

 安全な造船所は、白海のアルハンゲリスクと

 カムチャッカ半島のペトロパブロフスクカムチャツキーに集中するしかなく、

 どちらも極寒地だった。

 ソビエト連邦は海軍を増強する前に、

 全天候型造船所の建設から始めなくてはならず、

 二つの軍港でドームい覆われたドーム造船所の建設を成し遂げたのだった。

 と同時に通商破壊巡洋艦の建造も開始していた。

 その艦型は、どの日本艦艇よりも露鳳と似ており、

 ソビエト連邦海軍が置かれた国情に合わせた艦艇だったことが判明してしまう。

 白海のアルハンゲリスク

 ソビエト海軍将校たち

 「・・・日本のX艦と似てるな」

  36000t級キエフ型航空巡洋艦

   全長273.1m×全幅53m×吃水8.2m、

   180000hp 32kt 航続距離 8,000海里(巡航速度:18ノット)

   対艦ミサイル4基、対潜ミサイル4基、

   533mm魚雷5連装2基、対潜ロケット2基、対空ミサイル1基、

   76.2mm砲2基、30mm機銃6基、

   Yak38シュトゥルモヴィーク12機、Ka27対潜ヘリ16機

 「国情と予算に合わせて、巡洋艦半分、空母半分にすると艦型がこうなってしまう」

 「Ka25、Ka27も日本のワイバーンと似ている」

 「じゃ ソビエト海軍と日本海軍は求めてる機能が同じということか」

 「いや、日本の45000t級若狭(わかさ)型強襲母艦は、通常、ヘリ空母として運用し」

 「状況に応じてヘリ強襲揚陸艦に切り替えられるが制空権下の運用を前提にしてる」

 「ソビエト海軍のキエフ型航空巡洋艦は対艦、対潜、対空装備を有する万能艦で」

 「制空域から離れた海域での運用を想定している」

 「日本の新規開発中のヘリは、機内容積より、機動性を重視して細身になってる」

 「じゃ 日本軍は電子装備の優勢を確信してるから機体性能を向上させるわけか」

 「大変な電子技術だな」

 「ソビエトと違って、民生の下支えがあるのだ」

 「8ビットマイクロプロセッサーで個人用パソコンを売りらしてるし」

 「大企業では軍と同様に32ビットから64ビットのコンピューターを使ってるとも聞く」

 「企業収益を利用して、次の開発をしている・・・」

 「「「「・・・・・」」」」

 話題が危険な兆候に近付くと保身で押し黙る、

 「我々のキエフ型航空巡洋艦は、人為的であれ、不可抗力であれ」

 「1942年に行く日が近いということか」

 「キエフ型航空巡洋艦を建造しなければ、いまの歴史は存在しないのではないのか」

 「それはどうかな」

 「日本の大使館を見張っているが、何がしかの行動をとっていない様に思う」

 「では、X艦は人為的ではないということか?」

 「さぁ しかし、この中に時間移動のルールに付いて知ってる者はいなかったと思うが」

 「確かに」

 「しかし、時間移動や平行次元の研究はすべきだろうな」

 「例のプラズマは?」

 「抽出すると、火や光のような一種だが核になるものがない妙なモノらしい」

 「使い道はあるのか?」

 「工業で一部使う研究をしてるがね。まだなんとも・・・」

 「儒陀で情報収集してると聞いたが」

 「あいつら、ソビエトを焚きつけて日本と戦争させようとするからな」

 「ふっ 戦争しなくともソビエトは世界最大の帝国だ」

 「機会が訪れるまで待てばいい」

 「しかし、ドイツ海軍のように移動ドック型巡洋艦にする手もあったのでは?」

 「ドイツ野郎の真似なんかしてやるか」

 「それじゃ 大型原子力潜水艦を建造して長期洋上勤務にするしかないな」

 「ロシア人は毎年、極寒の冬を越冬している。閉じ込められることは慣れているよ」

 「放射能には慣れないと思うな」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 水無月(ミッドウェー)島(8ku)

 埋め立てで拡張された飛行場

 駐機場に対空哨戒機アマテラス3機、対潜哨戒機3機、海燕3機が寂しげに並んでいた。

 ボーイング707の就航で、軍民両用の水無月飛行場は、中継として使われることも少なくなり、

 時折、補給船と海軍艦艇が立ち寄るだけの島となっていた。

 地下深くに設置された小型原子炉は、初期投資は大きく、発電量が低くかった。

 代わりに自然循環冷却で世話いらず。

 長期的に考えるなら割安らしく、

 人数分の淡水プラントを動かし、基地の電力を賄っていた。

 小型原子炉は、風力発電、太陽熱発電と並んで島礁で使われ、

 日本人の離島人口を増やす要因にもなっていた。

 こういう島に配属されると、艦隊と違って板子一枚下は地獄といった危機意識が弱く、

 内地との繋がりが気薄で士気が上がり難い弊害がある、

 しかし、釣りが上手くなるらしく、

 多くの将兵が休憩時間になると釣り糸を垂れる。

 その日の気分で刺身にする時もあれば、塩を振って七輪で焼いて食べることもある。

 魚が焼けた匂いに気付いたクロアシアホウドリが近付いてくる。

 茶褐色した生意気な海鳥は人間をほとんど恐れず、

 時に攻撃的で、何匹か釣り上げてるとシャバ代で持って行こうとする。

 菜園も囲ってないと荒らされる、

 「ほぉ 今日はツボダイか・・・」

 「あ、軍曹もどうですか」

 「そうだな・・・」

 軍曹も釣り仲間で、時々並んで釣る。

 釣り師もいろいろで、決まった場所で釣る一点集中型、

 数か所を渡り歩く回遊型、仲間と一緒の群型、舟釣り型、

 軍曹は、回遊型に当たる。

 「最近は、釣り人が減ってるな」

 「ケーブルテレビを見る将兵も増えましたからね」

 「いまは本土と同じテレビが見れるんだな。電話も早いし」

 「光ファイバーですよね。便利になったものです」

 「あっ 来週、第2艦隊と合同演習するらしいぞ」

 「来週ですか、デートの予定はキャンセルですね」

 「あははは・・・」

 「時々演習しないと島って、だらけちゃいますからね」

 「そうだな」

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 コツッ! コツッ! コツッ!

 「・・・DPPシールドも、ようやく銅(3.0)から鉄(4.0)程度の硬度か」

  ※次元(Dimension) + 位相(Phase) + 粒子(Particle) 

 「国防省は、こんなものでは軍用で不足だと」

 「そりゃ APFSDS弾、HEAT弾は脅威だ」

 「複合素材やチタンと比べたら劣るかも知れないが足しにはなるはずだろう」

 「それに制御装置、発信板、エネルギーが無事なら、破損個所を一時的に修復できるし」

 「装甲と違って、気体分子、液体分子の出入りも調整できる」

 「剥き出しの歩兵は、質量のないむかしの鎧を着てるようなもので、心強いはずだ」

 「突撃銃で撃ち抜けるのが問題ですがね」

 「それでも馬鹿な命令でも受けない限り、死傷率は激減するはずだよ」

 「国防省は、列強が同様の研究がされてないか気にしてるようですが」

 「研究しているだろうが次元位相粒子は、露鳳というコアがないこといはどうにもならないよ」

 「それにもっと強力にしたかったら、もっと大きなLSI工場でも建てるんだな」

 「そういえば、露鳳ですが、戦功艦ですので、解体に反対してる動きがあるようですが」

 「とてもじゃないが中身を見せられるはずがないだろう」

 「記念艦にした瞬間にソビエト艦とばれてしまいますからね」

 「それに解体しないことには、材料に困る」

 「じゃ いよいよ。ですか」

 「時空艦の開発と実験をしないとな」

 

 

 儒陀藩皇国 日本語学校

 “欧州から始まった戦争は、太平洋戦争開戦により”

 “全世界を巻き込んだ第二次世界大戦と成ってしまいました”

 “近代戦は戦場の戦力比だけにとどまらず”

 “生産力、輸送力など国民の戦意まで加味され”

 “国家総合戦となっていきます”

 “日本は資源、人材、資本、科学技術、工業力、軍事力の全てでアメリカに劣ってました”

 “しかし、日本軍と日本国民は結束し、勇敢に戦いました”

 “戦争は日本がアメリカに決闘状を突き付け”

 “アリューシャン海戦で終わりました”

 “日本は、決闘に勝利したことにより、ハワイ州を得とくし”

 “西太平洋における権益圏を広げることができました”

 “ドイツとアメリカの原子爆弾の応酬は、双方の国民の戦意を削ぎ”

 “ドイツは、ヒットラー率いるナチス党そのものを消滅させました”

 “欧州の戦いは、ドイツ帝国が独ソ権益線まで後退し、終息しました”

 “この戦争は、世界恐慌後の国際的な枠組みの中で”

 “持てる大国と持たざる工業国の間で起きたものでした”

 “ですが、同時になぜ戦争に至ったのか、考えさせられました”

 “日本の周囲は、中華民国、ソビエト連邦、アメリカ合衆国と大国に囲まれています”

 “ですが日本国民の一人一人、これらの国々諸国民に直接恨みを持つ者はいません”

 “利益と組織拡大のため、対外を憎むよう仕向ける勢力に注意深くあるべきです”

 “日本は、戦後処理のため朝鮮人をインドに移送しました”

 “これは、戦時下における凶行でしたが”

 “このことにより、戦争に至った外患誘致と内紛の要因を戦後、減ずる事ができ”

 “同時に日本人の半島と満州に至る生活圏の拡大に成功したのです”

 “日本は戦後の国際社会において、過去の・・・”

 「もう、いいニダ」

 「日本の教科書は嘘ばっかりニダ」

 「燃やしてしまいたいニダ・・・」

 「日本が勝てるわけなかったニダ」

 「それも決闘状を突き付けて勝てるはずなんかなかったニダ」

 「これは、何かの間違いニダ」

 「日本は世界中から集中攻撃され、原爆を落とされ」

 「惨めに滅んでいなければならなかったニダ」

 「天皇は、惨めに国民に八つ裂きにされてなけば成らなかったニダ」

 「もう一度、やるニダ」

 「左翼に入ったら、権力者と国民を憎み合わせるニダ」

 「特権を作って、警察を無力化して、日本を無法国家にするニダ」

 「性欲、食欲、財欲で人間不信に陥れ」

 「全ての価値を崩壊させて日本人と日本社会を自滅させるニダ」

 「日本の馬鹿な左翼を焚きつけて、馬鹿な右翼と軍属を反発させるニダ」

 「日本軍は国と国民を殺しても組織権益を守るはずニダ」

 「日本軍を煽って増長させ、軍事クーデターを起こさせるニダ」

 「そして、日本と中華民国を戦争させるニダ」

 「日本とソビエトを戦争させるニダ」

 「日本とアメリカを戦争させるニダ」

 「今度こそ、日本に原爆の雨を降らせ」

 「日本と日本人を地上から消し去ってしまうニダ」

 

 

 ムンバイ港

 某国貨物船

 「アボジ・・・」

 「日本語を教えたニダ。覚えてるニダカ?」

 「・・・・」 コクリ

 「もう、まともな職はないニダ」

 「軍隊に徴兵されたら軍隊に殺されるニダ」

 「日本に逃げるニダ」

 「・・・・」 コクリ

 「この船は日本の瀬戸内海を通るニダ」

 「夜中、島が近くに見えたら泳いで日本に渡るニダ」

 「日本に行ったら仕事を探すニダ」

 「なかったら右翼か左翼に入るニダ」

 「成功したら家族を呼び寄せて欲しいニダ」

 「わかったニダ」 コクリ

 

 

 儒陀空軍基地

 ノースロップF5が並ぶ、

 インド戦争で儒陀空軍はコルセアやF86セイバーを運用していたものの

 インド藩王諸国軍がドイツ空軍のTa152やMe262を運用し、苦戦したことから、

 新型軽戦闘機の配備が決まる。

 「これで、儒陀空軍は、列強の仲間入りニダ」

 「この機体なら日本の瑞鶴、瑞燕も一捻りニダ」

 「日本空軍と戦う機会は少ないニダ」

 ばしっんんん〜ん!!!

 「反日精神が足りないニダ」

 「す、すみませんニダ!」

 「そこで、日本沈没10回ニダ」

 「日本沈没10回いくニダ!!」

 シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! 

 シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! 

 

 

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「皇帝。F5ノースロップのライセンス製造が上手くいかないニダ」

 「なぜニダ。設計図は貰ったはずニダ」

 「上手くいかないニダ」

 「設計図が悪いニダ。ノースロップ社にクレームを付けるニダ」

 「ノースロップ社は、設計図に間違いないと」

 「に、日本の陰謀ニダ」

 「きっと日本人が設計図を摩り替えたに違いないニダ」

 「ノースロップ社に設計図を確認させたところ、間違いないと・・・」

 「・・・日本に部品を発注して作らせてみるニダ」

 「こ。皇帝、大変ニダ」

 「儒陀陸軍で乱射事件が起きたニダ」

 「またニダカ・・・」

 「儒陀の若者のパキスタンとハイデラバードに亡命が続出してるニダ」

 「徴兵逃れは死刑ニダ」

 「パキスタンとハイデラバードに引き渡しを要求するニダ」

 「それが人道上、難しいと・・・」

 「このままでは、儒陀藩皇国は崩壊してしまうニダ」

 「逃亡した儒陀人を殺す部隊をパキスタンとハイデラバードに潜入させるニダ」

 「・・・・」

 「有力者の子弟だけは、外すニダ」

 「了解したニダ」

 「虐め体質を儒陀軍に染み付かせた日本に謝罪と賠償を要求するニダ」

 「インド藩王諸国の脅威が悪いニダ。謝罪と賠償を要求するニダ」

 「インド人を出来損ないに教育したイギリスにも謝罪と賠償を要求するニダ」

 

 

 

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 月夜裏 野々香です

 人間ですから馬鹿な賭けと思いつつ、やっちゃいますね (笑

 

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第34話 1974 『儒陀皇帝漫遊記』

第35話 1975 『愚行の果て・・・』
第36話 1976 『銀河盆栽祭り』