月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第36話 1976 『銀河盆栽祭り』

  宇宙、それは人類に残された最後の・・・

 地球は、アメリカ合衆国、ドイツ帝国、日本、ソビエトの4強が黄道十二星座を4分割し、

 アメリカ合衆国 フリーダムゾーン  牡羊座(Aries) − 牡牛座(Taurus) − 双子座(Gemini) 

 ドイツ帝国 オーダーゾーン  蟹座(Cancer) − 獅子座(Leo) − 乙女座(Virgo) 

 日本 ハーモニーゾーン  天秤座(Libra) − 蠍座(Scorpio) − 射手座(Sagittarius) 

 ソビエト イコールゾーン  山羊座(Capricornus) − 水瓶座(Aquarius) − 魚座(Pisces) 

 地球圏100光年圏を分割中立地帯とし

 4強を除く諸国は、4強の宇宙株を買うことで配当を受けられるシステムにすることで、

 地球は、公宇宙の進出を可能にしていた。

 そして、幾つかの異星人と惑星連合を結んでいた。

 宇宙戦艦エンタープライズは未知領域を飛んでいた。

 艦橋

 「カーク提督。日本のナガト型戦艦が後方一光年を追尾しています」

 「どういうつもりだろう」

 「我々が出し抜くとでも思ってるのでしょう」

 「公宇宙での勢力争いが地球の力関係に及ぼす影響が大きいからね」

 「だいたい、先にロミュラン人と組んだのは日本だよ」

 「おかげで、アメリカはバルカン人。ドイツ帝国はカーデシア人」

 「ソビエトはクリンゴン人と別々の星と連合し、それが元で惑星連合にまで発展した」

 「いまの宇宙になったのは、そもそも日本が悪い」

 「そうニダ。日本人が悪いニダ」

 「すぐ、日本に宣戦布告してアメリカと惑星連合1000年の禍根を取り除くニダ」

 「キム少尉・・・」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 宇宙、それは人類に残された最後の・・・

 「「「「「・・・・」」」」」 キラキラ

 子供たちはテレビに釘づけ

 

 

 

 満州帝国

 首都ハルピン

 市庁を中心に整然と街並みが広げられていく、

 計画的で広大な区画、

 大規模土木建設機械の投入、

 人海戦術の3点セットの効果は大きく、

 日本本土の半分の費用で5倍の施設を建設させてしまう。

 そして、中華民国の市場と採掘場が陸続きである利益も大きく、

 漢民族の賃金上昇率を上回る速度で、国力が伸びていく、

 日本語と中国語が併記した標識が立ち、

 日本人と漢民族が行き交う。

 言語・文化の違いからくる民族対立は隠然と

 しかし、商品・サービスで売上が上がるなら購入者が日本人でなくても

 地位名誉財産と将来の安寧に繋がる、と誰もが考え、政策を誘導する、

 国民の多くは、私欲を追及し、営利増加を望み、

 同時に競合に対し、排他的権益を望む、

 葛藤の代弁者が、売り上げを望む左翼と、排他的権益を望む右翼であり、

 どちらも矛盾する葛藤の捌け口から生じた鬼子で、国勢を二分し、

 さらに各論の離合集散で政党を細分化させていく、

 彼らは大衆の代弁者に過ぎなかった。

 しかし、不信感を増大させ、葛藤を後押しする勢力が現れ、

 右翼と左翼の対立は深刻なほど広がっていく、

 左翼勢力

 “横暴な軍隊なんて必要ないニダ!!! 非武装中立ニダ!!!!”

 “世界平和ニダ!!!! 戦争反対ニダ!!!!!”

 

 右翼勢力

 “満州帝国が外資の国有化を画策してるニダ!!!!”

 “中華民国は敵ニダ!!!”

 “ソビエトが攻めてくるニダ!!!! 軍拡ニダ!!!!”

 “アメリカが核ミサイルを撃ち込んでくるニダ!! アメリカは滅ぼさないといけないニダ

 “今すぐ、対米開戦ニダ!!!!”

 

 右翼左翼とも極端な方向に走り、一般的な国民感情を逸脱していく、 

 葬儀会場

 「総理。あんねど!!!」

 ぼこっ!

 「いたっ!」

 右翼の総理への暴行を一人の刑事が盾になって防いだ。

 

 特高取調室

 「うんだも わいたちゃ 暴力とか脅迫とか、そげんとばっかだな」

 「ち、違うニダ! 天皇万歳ニダ。愛国ニダ」

 「世界は悪意に満ちてるニダ」

 「日本は天皇を中心に八紘一宇、五族協和、王道楽土を築くため戦うニダ」

 「生存圏のため、戦争するニダ」

 「しゃん むりなことを・・・」

 「特高は、天皇万歳をないがしろにしてるニダ!!!!!」

 「このがんたれが・・・」

 

 

 演習場

 砲声と爆音が響き、大地が吹き飛ばされていく、

 塹壕の兵士が機銃掃射で射的を粉砕し、

 朱雀(Ka54)編隊が一斉射を繰り返す74式戦車上空を越えていく、

 天幕

 「満州帝国軍将兵も練度が上がってきてるな」

 「ええ、将兵は、いい眼してますよ」

 「拘束具は必要ないかもしれないな」

 「そうですね。督戦隊と囚人部隊なんて士気にかかわりますからね・・・」

 白衣の男たちが軍隊式の儀礼の大半を省いて入ってくる。

 天幕に尊大そうな彼らは、頭脳で機嫌を損なわれると巡り巡って自分の首を絞めかねず、

 軍上層部の忍耐心が試される。

 「師団長。例の開発に成功しました」

 「ほぉ 正面戦力の方が好きなんだがね」

 「まぁ 副産物ということで・・・」

 「すぐ、見られるのかね?」

 「はい、スイッチ一つですから・・・」

 天幕が閉められ、下士官以下が追い出され、歩哨の人数が増える。

 白衣の男たちに囲まれた一人の男に視線が集まる、

 彼は、ベルトのスイッチを押すと、一瞬にして白人に変わる。

 『『『『『・・・・・』』』』』 呆然

 「こ、これほどとは・・・・」

 「骨格が違うじゃないか、眼も髪も皮膚も白人だぞ」

 「いまのところ、携帯できるモデルは一つです」

 「触っても?」

 「ええ、どうぞ、少し違和感があると思います」

 さわ さわ さわ

 将校たちは、自分の手の甲と被験者の手の甲を何度も確認する。

 「んん・・・人工的な・・・木に近い気がするな」

 「強度を強める技術が優先された結果で・・・」

 「それは、わかったって」

 「もっといい、電子部品があれば、数種類のモデルに化けることができるはずです」

 「どいつもこいつも、二言目には電子部品というんだな」

 「計算機を使い始めたのは日露戦争以前からですよ」

 「目測じゃ戦争になりませんからね」

 「切り替えは、すぐにできるのか」

 「はい」

 被験者がベルトのスイッチを触ると、黄色人と白人が瞬時に入れ替わる、

 「んん・・・軍服さえ用意すれば」

 「性能のいいコンピューターならオーラーの範囲ならソビエト製軍服に変えられます」

 「わかった。わかった。何度も言わんでもいい」

 「それで、軍が要求した迷彩モノは、何時になったら」

 「特高のモデルが後、数人分ですので、その後ということに」

 『どいつもこいつも軍を後回しにしやがる』

 「・・・まぁ 特高にとっては便利なものだろうな」

 「密偵のとき、顔を覚えられたくないそうで、優先順位が上でした」

 「んん・・・透明にすることも可能なのかね」

 「変身を固定させる方が処理が少なくて済みます」

 「透明にする場合、体の対角線の光を交差させて反転させることになります」

 「現在の電子処理能力では困難でした」

 「「「「・・・・・」」」」 ちんぷんかんぷん

 「・・・あと、体積分の距離が反転して誤差が生じます」

 「なので、夜間はともかく、至近距離だとばれますね」

 「軍はその手の人材が不足だからな」

 「今度、特高と軍部共同で組織するそうじゃないですか」

 「正面装備揃えりゃいいのに・・・」

 「明石機関並みの活躍を期待されてるのでは?」

 「語学力でほかの才能が削がれるだろうし」

 「だれでも明石大佐やゾルゲのようなことはできないよ」

 「特に日本人は、個人だと意識が低下する傾向があるし。軍は組織力で成り立つ」

 「一匹オオカミのあぶれ者はどこの組織にでもいるのでは?」

 「「「・・・・」」」 ふっ

 「まぁ 何人か心当たりの者はいるがね」 苦笑い

 「そうそう、異星人と異世界人は、これ以上の技術を持ってるかもしれません」

 「そう、考えた方がいいので注意しておいてください」

 「ち、注意って・・・」

 「時間がかかるかも知れませが対抗処置を検討しています」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 木のようなモデルが作られ、

 研究者、政府関係者、軍関係者たちが囲む

 「これまでの研究と探査の結果」

 「時空潮流の中に132ほどの生態分岐世界が確認されています」

 「そのうち14世界は、近生態分岐世界でバックフラッシュが強く関与できないようです」

 「生態分岐世界は多細胞生物以上で起こる可能性が高く」

 「原生代以前からの生態分岐世界は発見されていません」

 「その為、時空潮流世界のモデルは、ご覧になってるように木の様な形になって見えます」

 「生態分岐は、主に大型生態系が生まれる古生代以降から始まっています」

 「確認された未確認飛行物体は8種で」

 「便宜上、紀を使ってUFOの名称としています」

 「古生代生態分岐からカンブリア紀UFO2種、デボン紀UFO1種」

 「中生代生態分岐から三畳紀UFO1種、白亜紀1UFO種」

 「新生代生態分岐から始新世UFO2種、漸新世UFO1種」

 「これは、あくまでもUFOが確認された範囲で完全ではありません・・・」

 「あのぉ ちょっといいですか?」

 「はい」

 「UFOは宇宙からも飛来してると伺ってますが」

 「そういう世界でも似たような・・・」

 「はい、宇宙から飛来してると思われるUFOは4種ほどです」

 「後から説明しようと思ってましたが32ページをご覧ください」

 銀河系が描かれ、その上に何本もの木のモデルが立っていた。

 「「「「・・・・・」」」」

 その光景は、銀河という盆栽に載せられた多様多彩な樹木のようにもみえた。

 「これは、仮定の生態分岐世界を含んだ宇宙観といえるものです」

 「「「「おおお〜〜〜!!!」」」」

 「これを世界に公表しないのはまずいのでは?」

 「しかし、これを証明せよとなると、機密が・・・」

 「まぁ そうではあるが・・・」

 「例えば、他の生態分岐世界に行って、どんな利益があると思われますか?」

 「そうですね」

 「一番は、固有のDNA素粒子は物理的に大きな飛躍が考えられます」

 「もう一つは生態系の違いから生じる化学物質の採取も大きな利益に繋がるかもしれません」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「競合相手と戦争になる可能性は?」

 「あるともいえますし、ないともいえます」

 「この図を見ますとバックフラッシュこそありませんが」

 「同じ天体の時空潮流ですと、連続する分岐世界に波紋のような影響が現れ」

 「最終的には自分たちの時空潮流にも影響が出てくるかと」

 「つまり、この世界観と法則を認識した場合、必然的に制約とか抑制が作られるわけか」

 「様々な生態系知的生命体のUFOが似た行動原理を取るのは、そのためでしょうか」

 ざわ ざわ ざわ ざわ

 「例えば、平行世界の距離をどう考えたらいいのだろうか」

 「時空潮流で距離という概念を考えると危険かもしれません」

 「なのでテレビのチャンネルを変える」

 「あるいは周波数を変えると考えてください」

 「その精度と消費エネルギーが距離のようなものに当たります」

 「あの瞬間移動の技術もかね」

 「はい」

 「しかし、深夜のみの稼働とはいえ、日本全土の余剰電力をほぼ使ってる」

 「チャネルを変えた向こうを調べるのに大変なエネルギーを消費してるようだが」

 「はい、それでも平行時空移動のみでごく一部です」

 「さらなる成果のため、追加の高速電算装置の開発と発電所建設を期待してます・・・」

 『『『『この野郎、作ったばかりで、なに言ってやがる』』』』 怒々

 『冗談じゃねぇぞ、てめぇ こっちゃ尉官以下の老後保障なんてないんだからな』 ふるふる

 『ばっかやろう、いくら金注ぎ込んでると思う、ふざけんな』 ぶっすぅううう〜

 『負ける、増税したら負ける。絶対に負ける・・・』 ぶつぶつ ぶつぶつ

 『与野党合意で粉飾決算してんの国民ばれたら・・・』 ぞぉおお〜〜〜

 『俺っちの経費余剰分根こそぎ持って行ったくせ、まだ欲しいってか、もう殺す、まじ殺す』 どどどどど

 ご、ごほんっ!

 「ま、まぁ〜・・・前向きに善処するとして・・・」

 『『『『『駄目って事だな・・・』』』』』 こくん、こくん

 「露鳳の時の時間移動とは、違うのかね」

 「あれは、周囲100km天球の物質をエネルギーに転換したようなものですから」

 「違う計算になってしまいます」

 「そのような爆発的なエネルギーが作れるものなのかね」

 「あれは、時空潮流の歪みとUFOも巻き込んでる可能性もあるようですが」

 「幾つもの偶然が重なって起きた事故でイレギュラーと思われます」

 「修正されてないのならタイムパトロールの介在はないようだな」

 「一旦作られた生態分岐世界はなくせないと思われます」

 「露鳳の場合は、人為的だが生態分岐世界と言えるものなのかね」

 「はい、人が関わって起きた発生ですので」

 「なるほど・・・」

 「時に、彼らとの交流はどうしたら?」

 「思考形態、声帯、言語体系、通信方式が違うので意思疎通は難しいかと」

 「では、好むと好まざるに関わらず、一定の距離が作られるのか」

 「はい」

 「しかし、向こうからコンタクトをとってきた場合は、外務省になるのかね?」

 「未確認飛行物体なら文部省では?」

 「いや、確認されてるのだから外務省だろう」

 「安全のため先に軍が接触すべきでは?」

 「制服組が国家の代表権を取ったら困るよ」

 「やはり民主的に国民から選出された背広組が代表して接触すべきだろう」

 「しかし、危険が伴いますし、専門的な知識が必要なのでは?」

 「んん・・・各省庁の合議で対策室を作る必要があるかもしれない」

 「「「「・・・・」」」」 こくん

 日本人らしく、落ち着くところに落ち着く、

 

 

 儒陀秘密基地

 「では “日本銀行を襲撃して日本社会を不安に陥れる作戦” の開始ニダ」

 「集合は、13時の公園ニダ」

 「日本チョッパリにケンチャナ魂を見せてやるニダ」

 「「「「まんせー!!! まんせー!!! まんせー!!!」」」」

 ・・・・・・・

 ・・・・

 「時間まで、あと3時間あるニダ・・・暇ニダ・・・」

 「あっ! お嬢ちゃん、一緒に猫探してニダ」

 「猫ぉ〜♪」

 「とってもかわいい猫ニダ♪」

 「いいよ」

 ・・・・・・

 ・・・・

 「うひょ! ひょ! ひょ!・・・」

 「お、おじちゃん、や、やめて・・・」

 きゃー! やめてー!

 「おい!」

 !?

 「はっ だれニダ!」

 がしっ!

 「な、なにするニダ」

 「“なにするニダ” は、ないだろう」

 「銀行強盗はどうした!!」

 「はっ! なぜ知ってるニダ」

 「アホが!」

 がちゃ! 手錠がかけられる。

 「はっ 刑事・・・」

 「婦女暴行未遂だ」

 「・・・・」 しょんぼり

 『警部・・・』

 『とてもじゃないが見てられなかったよ』

 『わかります。査定アップと金一封はなしですね』

 『住宅ローンが・・・』 脱力

 「この馬鹿が、小学生に手を出してどうする」

 「だ、大丈夫ニダ。儒陀は情が深くて博愛主義ニダ」

 「幼女から老婆までとっても範囲が広いニダ」

 「老婆はともかく、幼女なんて可哀想過ぎてとてもできんわ」

 「だから日本人は駄目ニダ。そこを一歩踏み出す勇気が大切ニダ」

 「勇気って・・・ほかにも余罪がありそうだな・・・」

 「しょ 初犯ニダ。出来心ニダ。魔が差したニダ」

 「・・・・・」 ぐすん ぐすん ぶるぶる

 「おいで、もう大丈夫だ。家まで送ろう」

 「・・・・・」 こくん

 「どうせ、チョッパリ庶民の娘ニダ」

 「新型戦闘機の増強と平和塔の建設を手伝ってるし」

 「危ない仕事も、選挙も応援してるから庇ってくれる偉い人が多いニダ」

 「警察の偉い人にもコネがあるニダ」

 「利権社会が儒陀に味方して、みんな目を瞑るニダ」

 「善人ぶって、庶民なんか助けてたら、そのうち警察の方が孤立するニダ」

 「いい加減、黙ったらどうだ」

 「儒陀人は静かにできないニダ!!!」

 ビクッ!

 「うっ ぅうぁ・あぁぁああああ〜!!!」

 「うるさい、チョッパリが!! 日本は、もうお終いニダ!!!!」

 「お前たちチョッパリ女は、毎日、儒陀の男に犯されて一生を送るニダ!!!」

 「あぁぁああああ〜 あああああ〜!!!」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 未遂の罪はとても軽かった。

 

 

 

 

 東シナ海

 世界各国の貿易船が行き来していた。

 半分は日本圏で、もう半分は中華民国を経由する。

 中華民国は外資に支配され、覇権力がないためか、急速に経済が伸びていた。

 45000t級若狭(わかさ)型強襲母艦に新型哨戒管制ヘリが着艦する。

  幻鷹(げんよう)

   重量9500kg/15600lg

   胴体19.5m×胴体幅4.6m×全高6.63m

   同軸反転式メインローター直径18.6m 1633馬力4基

   積載量6000kg (3人+30人)

   航続距離1200km  速度320km/h

 対空哨戒用、対潜哨戒用、強襲用の3機種があり、

 海燕(Ka31)を大型にし精悍にしたような機体だった。

 若狭 艦橋

 「随分、精悍になったな」

 「本当は箱型機体の方が無駄なく収容しやすいのですがね」

 「まぁ 機動性がいい方が飛行が安定するし」

 「それにデザインがいい方が士気も上がるだろう・・・」

 「艦長。ヘリから航空機2機が北東400kmより780km/hで接近」

 「機種は・・・F14トムキャットです」

 「新型機じゃないか」

 「慣熟訓練が終わったから見せにきたのかな」

 「30分で艦隊近くを通過しますよ」

 この時代、30分も前に接近が知れるのなら上出来で、

 新型哨戒管制ヘリの幻鷹のデーターリンクの成果だった。

 「第一次警戒警報」

 警報と同時に待機組が走って所定に付く、

 接近する戦闘機に照準を合わせる準備を始める。

 戦闘態勢に移行すると、スイッチを押すだけ、

 航空機に向かって対空ミサイルが発射される。

 そこに上官の命令以外の判断は生じない。

 軍隊は上意下達が徹底され勝手に戦争を始めることはない、

 個人は鈍重な歯車の一つの様でも、自我を殺せる軍組織は信頼され強かった。

 秒針の動きに合わせて緊迫感が迫り、

 レーダーに捕捉された光の影が艦隊に近付く、

 空に小さな粒が二つ現れ、大きくなっていく、

 そして、あっという間に数キロ離れた洋上を通過していく、

 「・・・・」

 「こういう経験をすると戦闘機を載せたくなりますね」

 「載せられなくはないがね」

 「対空ミサイルでも十分に撃墜できたよ」

 「不安なのは潜水艦の方だ」

 「艦長。トムキャットが引き返してきます」

 「警戒態勢は維持だ」

 低空のトムキャット2機が2度バンクを見せると悠然と北東方向に戻っていく、

 「向こうは奇襲できたと思ってるのでしょうか」

 「さぁ どうかな。しかし、上から見下ろせば気分もいいだろう」

 

 

 

 排他的な組織であるほど外部の目を気にしなくともよく、

 正義より力関係を行使しやすく、内部に膿が溜まり、皺寄せは弱者に向く、

 だらけた軍組織であってはならないものの、

 無意味で理不尽が横行しては逆効果になる。

 そういった負の部分があるためか、経済的なためか、

 駐屯地は民間の近くが選ばれる。

 とはいえ、機密が全てに優先する部署もあった。

 歯舞諸島 水晶島(21ku)

 瑞鶴が運動能力向上機(CCV)試験飛行を繰り返していた。

 将校たちが見上げる。

 「予算が少ない割に頑張ってるじゃないか」

 「公共設備ばかりに回されてますからね」

 「アメリカはF16でフライ・バイ・ワイヤ・システムを成功させてると聞いてますし」

 「最短距離で開発してても規模が小さいので心配ですよ」

 「まぁ 設備投資もある程度、進めばこっちに回るだろう」

 「放漫財政で赤字だって聞いてますよ」

 「まぁ いずれは民間に移行させるだろう」

 軍が保有する島は機密性が高い、

 しかし、娯楽性と利便性に乏しく、

 民間人のいない小島に赴任が当たると軽い舌打ちをする。

 特に機密に厳しい2島は、そこそこの広さがあるにもかかわらず歓楽街がなく、

 休日でさえ、外出が制限され、

 機密を知る下士官以上は、志が高くとも

 一般兵卒は、飽きてくる、

 最悪カホオラウェ島、最低水晶島と陰口を叩きたくなる、

 娯楽室はゲームセンター並みに充実したものの気休めでしかなく、

 割り増し手当がなければくさりたくなる赴任地と言える。

 退役軍人が老後でバーをやり始めると、少しは気が紛れる。

 水晶島

 bar “枯れすすき”

 中間色のランプの光が和風の装飾を照らしていた。

 香ばしい匂いが充満し、

 野郎たちがほろ酔い気分で焼き鳥を頬張る。

 趣味だった料理は、磨きがかけられ、

 海鮮物も少しずつ洗練されたものになっていた。

 命令と服従の世界から抜け出して清々してるくせに

 ちりん!

 「いやっしゃい」

 「少佐。今日も寒いっすねぇ」

 半生を軍で費やし、退役後も少佐と呼ばれ、微かに喜んでいた。

 元上官もいれば、元部下もいる。

 兵卒上がりで少佐にまで出世し、

 軍組織の内情を知ってる立場で仲介に入ることもあった。

 また、そういった人柄であることから居られる。

 「大佐。なんにしましょう」

 「ビールとサザエの塩焼きを頼むよ」

 「かしこまりました」

 「少佐。今度、民間のテレビが取材に来るけど、ここに寄らせてもらってもいいかな」

 「機密だったのでは?」

 「まぁ 機密なのだが、逆に大したものはないと、思わせたい」

 「それで、工事を・・・」

 「まぁ そういうことだ」

 「じゃ 私は何も知らないというわけですね」

 「兵卒上がりの浪花節を聞かせてやってくれないか」

 「どうしても誤魔化したい」

 「では、いよいよ」

 「始める前に見せておけば内外の疑いを消し易いからな」

 

 

 

 露鳳の情報でナノマシンの文献が知られ、

 その利用でもっとも注目されたのは電子産業と人体だった。

 無論、ナノマシンの危険性は危惧されたものの、

 健康でない者にとって医療用ナノマシンは希望の一つだった。

 日本の病院

 医者たち

 「予算削減だぁ?」

 「決まったそうですよ」

 「上は脳みそ腐ってんじゃないのか」

 「数ミリグラムで数万の外貨にあるかもしれないのに?」

 「無資源国家でこれほどありがたい投資なんてないだろうが」

 「戦前戦中となんら変わらん馬鹿どもだ」

 電話が鳴る

 「はい・・・里見先生・・・」

 「ん?」

 

 病室

 母は俯いてリンゴを剥き、父は夕暮れを見つめる。

 ベットの少女は震える手で日記を書き綴っていた。

 もの言いたげな静寂が理不尽に抗議しながら過ぎて行こうとしていた。

 不意に扉が開くと、

 「適合しする臓器が見つかったよ」

 驚きの波紋は喜びに変わり、静寂が破られていく、

 「里見先生。臓器が、あったんですか?」

 「あ、ああ・・・」

 「本当に?」

 『大声では言えないがね』

 『明日、中華民国から直送されてくる』

 『『『・・・・・』』』

 里見先生は、そういうと静かに去っていく、

 「お、お父さん・・・」

 「あ、キョウコ。良かったね。きっと治るよ」

 そう、中華民国は外資シンジケートが支配する国・・・

 命を代償に莫大な外貨が流れ込む、

 

 

 戦後のイギリスは、アフリカ大陸権益を伸ばすことで、国家再建を推し進めていた。

 アフリカ大陸の生産力の半分は、南アフリカ(英)、ナイジェリア(英)、アルジェリア(仏)に集中しており、

 その三つを押さえるだけで、アフリカ支配に王手をかけたようなものだった。

 イギリス、フランスの代理人の漢民族が大量に入植すると、

 アフリカ大陸の独立運動を抑え込んだ。

 この時期のイギリスのGDPは140億ドルで、

 アフリカ大陸全体のGDPとほぼ同規模だった。

 華僑資本は、アフリカ大陸のGDPの10パーセントを支配し、

 そのうちの数パーセントがイギリスに転がり込んだ 

 イギリス ダウニング街10番地

 閣僚たち

 「アフリカ大陸の植民地ですが維持されているのはいいのですが」

 「中華民国からアフリカ大陸への移民は急増してますし」

 「今後とも続く勢いです」

 「漢民族が強くなりつつあるな」

 「いまのところこちらに従っていますが大陸の紛争で漢民族が勝ち」

 「まともな軍隊を持つようになったら・・・」

 「漢民族は優勢なのかね?」

 「アフリカ大陸の20パーセントの人口に過ぎませんが単一民族としてみるなら最大最強です」

 「梯子を外す時が来たかな」

 「・・・利益が莫大ですし、そうとばかりとも」

 「「「「・・・・」」」」

 「それに日本やドイツとも貿易が増えてるようですし」

 「つまり地主、大家はイギリス、フランスでなくともいいということか」

 「その危険性は入植をはじめる前から危惧されてましたよ」

 「現地人とのパイプは?」

 「軒並み寸断され敵側に回ってます、漢民族しかイギリスの代理人はいません」

 「消耗戦になる前に手を打たれてるわけか」

 「イギリス軍は、地上兵力で劣ってますし、ほかの勢力上げにできないとなれば」

 「今後は、漢民族との対応を検討しなければなりません」

 「いろいろ張り合わせた化け物ですよ」

 「フランケンシュタインのように暴れなければいいがね」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 儒陀藩皇国 日本語学校

 “戦後日本は、日本人の高いモラルと”

 “絶え間ない勤勉と勤労により国際的な地位を確立していきました”

 “懸念だった満州帝国は承認され”

 “中華民国は、外資参画社会を国是とした経済大国となっていきます”

 “日本は、西太平洋・東アジアの一角を保ち”

 “戦後国際社会の一員として・・・”

 「もう、いいニダ」

 「日本に潜入したら、毎日、日本人を殺し、日本を滅ぼす夢を見るニダ」

 「左翼運動を起こし、反発を利用して右翼を覆るニダ」

 「右翼で成功したら軍事クーデターを起こし」

 「日本を中華民国、ソビエト、アメリカと戦争させるよう仕向けるニダ」

 「ドサクサに紛れて天皇をやるのもいいニダ」

 「何としても日本をぶっ潰してやるニダ!!!!」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「皇帝。モヘンジョダロの遺跡で新たな発掘がなされたニダ」

 「日本の卑弥呼は、儒陀の女だったニダ」

 「おおお〜 やはり、そうだったニダ」

 「むかしからそうじゃないかと思っていたニダ」

 扉が開けられる

 「皇帝。大変ニダ」

 「どうしたニダ」

 「パキスタンが儒陀のモヘンジョダロ遺跡の調査は間違った歴史の拡大と」

 「古代遺跡破壊に繋がるとして儒陀考古学者の入場禁止を言い渡されたニダ」

 がたっ!

 「ゆ、許せないニダ!」

 「パキスタンは、儒陀の歴史探究を妨害してるニダ」

 「パキスタンは、真実の世界史が知られることを恐れてるニダ」

 「パキスタンと戦争ニダ」

 「皇帝。財政難で戦争できないニダ」

 「日本に成り済ましてパキスタンに宣戦布告してやるニダ」

 「こ、皇帝。それはさすがに不味いニダ」

 「・・・・」 むっすぅううう〜

 「国際社会から真実を隠そうとするパキスタンに謝罪と賠償を要求するニダ」

 「パキスタンに宣戦布告しない日本に謝罪と賠償を請求するニダ」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 バックフラッシュの強い生態系分岐14世界は、史実を含め、

 いままで書いてきた戦記モノです (笑

 史実以外の世界に引っ越してぇ (笑

 

 

 

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第36話 1976 『銀河盆栽祭り』
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